(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールは、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グルコース、ソルビトール、ソルビタン又はスクロースである請求項1に記載の非イオン性界面活性剤。
前記3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールは、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グルコース、ソルビトール、ソルビタン又はスクロースである請求項6に記載の非イオン性界面活性剤の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
消泡剤として知られているシリコーン系消泡剤はアルカリに弱い。そのため、アルカリを配合したアルカリ洗浄剤組成物用の消泡剤としては適さないという問題があった。また、パラフィン系消泡剤は「パラフィン」であり、実質的に油成分であることから、油汚れを落とすための洗浄剤組成物の成分としては不適当と考えられる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、アルカリ洗浄剤組成物中で消泡剤として好ましい特性を発揮することができる物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決することのできる物質の構造について鋭意検討した結果、
特定の構造を有する非イオン性界面活性剤が、適した特性を発揮することを見出し本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明の非イオン性界面活性剤は、下記一般式(1)で示される構造であることを特徴とする。
【化1】
(一般式(1)中、Xは3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールからヒドロキシル基を除いた残基であり、aは3以上の整数であり、R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していてもよく、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、オキシアルキレン基の合計付加モル数は1〜1000の数であり、n≧0である。)
【0010】
本発明の非イオン性界面活性剤の元となる基本骨格は、3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールである。ここで、化合物の末端にヒドロキシル基が存在すると、アルカリ性下でヒドロキシル基が酸化されてカルボキシル基となり、アニオン界面活性剤と類似した起泡性を示すため、消泡剤としての使用は難しい。
そこで、本発明の非イオン性界面活性剤では、末端のヒドロキシル基をアセタール構造として封鎖している。
アセタール構造は、中性下及びアルカリ性下では安定である。従って、本発明の非イオン性界面活性剤は中性及びアルカリ性の環境下において消泡剤として好ましい特性を発揮することができる。
さらに、界面活性剤としても機能するので、消泡剤としての働きに加え、洗浄性の向上にも寄与する。
【0011】
また、本発明の非イオン性界面活性剤は、塩素安定性に優れている。
界面活性剤の末端がヒドロキシル基であると、塩素剤と反応して塩素剤が失活することがあるが、本発明の非イオン性界面活性剤は末端にヒドロキシル基を有しておらず、アセタール構造は塩素剤とは反応しないため、塩素剤の失活を防止し高い塩素安定性を示すという効果も発揮される。そのため、塩素剤と共存させることに適した界面活性剤である。
【0012】
一般式(1)において、アセタール構造は、R
1、R
2と結合している炭素原子と、上記炭素原子の右隣りの酸素原子、及び、(AO)
nで示す(ポリ)オキシアルキレン鎖の右末端の酸素原子(n=0のときに限り、(AO)
nで示す(ポリ)オキシアルキレン鎖の左に位置する酸素原子)で構成される。
【0013】
また、本明細書におけるアセタール構造とは、R
1が水素原子であるアセタール、R
1がアルキル基であるケタールの両方を含む概念である。
【0014】
本発明の非イオン性界面活性剤において、上記3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールは、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グルコース、ソルビトール、ソルビタン又はスクロースであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の非イオン性界面活性剤は、下記一般式(2)で示される構造であることが好ましい。
【化2】
(一般式(2)中、n
1、n
2、n
3は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
1、n
2、n
3の合計は1〜1000の数であり、n
1≧0、n
2≧0、n
3≧0である。)
上記構造は、基本骨格としての3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールがトリメチロールプロパンであり、化合物の末端のヒドロキシル基にジヒドロピランを付加させることによりで末端のヒドロキシル基をアセタール構造として封鎖した構造である。
なお、本明細書におけるジヒドロピランとは3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)を意味する。
【0016】
また、本発明の非イオン性界面活性剤は、下記一般式(3)で示される構造であることが好ましい。
【化3】
(一般式(3)中、n
4、n
5、n
6、n
7は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
4、n
5、n
6、n
7の合計は1〜1000の数であり、n
4≧0、n
5≧0、n
6≧0、n
7≧0である。)
上記構造は、基本骨格としての3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールがペンタエリスリトールであり、化合物の末端のヒドロキシル基にジヒドロピランを付加させることによりで末端のヒドロキシル基をアセタール構造として封鎖した構造である。
【0017】
また、本発明の非イオン性界面活性剤は、下記一般式(4)で示される構造であることが好ましい。
【化4】
(一般式(4)中、n
8、n
9、n
10は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
8、n
9、n
10の合計は1〜1000の数であり、n
8≧0、n
9≧0、n
10≧0である。)
上記構造は、基本骨格としての3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールがグリセリンであり、化合物の末端のヒドロキシル基にジヒドロピランを付加させることによりで末端のヒドロキシル基をアセタール構造として封鎖した構造である。
【0018】
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法は、本発明の非イオン性界面活性剤を製造する方法であって、下記一般式(5)で示される構造である非イオン性界面活性剤のアルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基に対して付加反応を行うことにより一般式(1)で示される非イオン性界面活性剤とすることを特徴とする。
【化5】
(一般式(5)中、Xは3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールからヒドロキシル基を除いた残基であり、aは3以上の整数であり、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、オキシアルキレン基の合計付加モル数は1〜1000の数であり、n≧0である。)
【0019】
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法では、一般式(5)で示される構造である非イオン性界面活性剤のアルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基に対して置換反応ではなく付加反応を行い、アセタール構造によりヒドロキシル基末端を封鎖する。
そのため、副生成物が生じることがなく、分子末端にヒドロキシル基が残存していない非イオン性界面活性剤を製造することができる。また、硫酸ジメチルのような危険な化合物を使用することなく、安全に、中性及びアルカリ性の環境下において消泡剤として好ましい特性を発揮することができ、塩素安定性に優れている非イオン性界面活性剤を製造することができる。
【0020】
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法において、上記3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールは、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グルコース、ソルビトール、ソルビタン又はスクロースであることが好ましい。
【0021】
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法においては、上記一般式(5)で示される非イオン性界面活性剤が、下記一般式(6)で示される構造であることが好ましい。
【化6】
(一般式(6)中、n
1、n
2、n
3は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
1、n
2、n
3の合計は1〜1000の数であり、n
1≧0、n
2≧0、n
3≧0である。)
【0022】
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法においては、上記一般式(5)で示される非イオン性界面活性剤が、下記一般式(7)で示される構造であることが好ましい。
【化7】
(一般式(7)中、n
4、n
5、n
6、n
7は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
4、n
5、n
6、n
7の合計は1〜1000の数であり、n
4≧0、n
5≧0、n
6≧0、n
7≧0である。)
【0023】
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法においては、上記一般式(5)で示される非イオン性界面活性剤が、下記一般式(8)で示される構造であることが好ましい。
【化8】
(一般式(8)中、n
8、n
9、n
10は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
8、n
9、n
10の合計は1〜1000の数であり、n
8≧0、n
9≧0、n
10≧0である。)
【0024】
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法において、上記付加反応は、酸触媒下でヒドロキシル基にジヒドロピランを付加させる反応であることが好ましい。
また、上記付加反応は、酸触媒下でヒドロキシル基にエチルビニルエーテルを付加させる反応であることも好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の非イオン性界面活性剤は、中性及びアルカリ性の環境下において消泡剤として好ましい特性を発揮することができる。また、中性及びアルカリ性の環境下において高い塩素安定性を示すことができる。
また、本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法は、副生成物が生じることがなく、かつ、安全に、中性及びアルカリ性の環境下において消泡剤として好ましい特性を発揮することができ、塩素安定性に優れている非イオン性界面活性剤を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の非イオン性界面活性剤は、下記一般式(1)で示される構造を有することを特徴とする。
【化9】
(一般式(1)中、Xは3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールからヒドロキシル基を除いた残基であり、aは3以上の整数であり、R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していてもよく、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、オキシアルキレン基の合計付加モル数は1〜1000の数であり、n≧0である。)
【0028】
本明細書において、AO(オキシアルキレン基)としては、オキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、又は、オキシブチレン基(BO)が挙げられる。本発明の非イオン性界面活性剤には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、又は、オキシブチレン基のうちの1種類のみが含まれていてもよく、これらのうちの複数種類が含まれていてもよい。オキシエチレン基、オキシプロピレン基、又は、オキシブチレン基の繰り返し構造の単位も特に限定されるものではない。
【0029】
一般式(1)で示される非イオン性界面活性剤では、オキシアルキレン基の合計付加モル数が1〜1000の数となっている。
一般式(1)においては(AO)nで示される構造が3箇所以上に存在することになり、オキシアルキレン基の合計付加モル数はすべてのnの合計値であり、この数が1〜1000の数となる。
【0030】
本発明の対象物である非イオン性界面活性剤のAOの付加モル数を測定した場合、非イオン性界面活性剤に含まれるAOの付加モル数の合計値として測定される。
そして、非イオン性界面活性剤の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数の合計値は整数値であるが、実際には、非イオン性界面活性剤の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数の合計値には分布があり、値は異なるので、AOの付加モル数の合計値は非イオン性界面活性剤の分子のそれぞれに含まれるAOの付加モル数の合計値の平均(平均付加モル数)として測定される。この測定値(合計値の平均)が1〜1000の間に入っていることを確認できれば、オキシアルキレン基の合計付加モル数が1〜1000の数であると判断できる。
【0031】
本発明の非イオン性界面活性剤の元となる基本骨格は、3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールである。
3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グルコース、ソルビトール、ソルビタン又はスクロースが挙げられる。
一般式(1)におけるXは、これらのポリオールからヒドロキシル基を除いた残基であるので、例えば、ポリオールがグリセリンの場合は下記式(9)で示されるような構造が挙げられる。
【化10】
【0032】
そして、3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールに、さらにアルキレンオキサイドを付加してなる、一般式(5)で示される構造である非イオン性界面活性剤が、本発明の非イオン性界面活性剤を製造するための原料としての非イオン性界面活性剤となる。
【化11】
(一般式(5)中、Xは3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールからヒドロキシル基を除いた残基であり、aは3以上の整数であり、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、オキシアルキレン基の合計付加モル数は1〜1000の数であり、n≧0である。)
【0033】
一般式(5)で示される非イオン性界面活性剤の例としては、多鎖型のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられ、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシブチレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレントリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン、ポリオキシブチレントリメチロールプロパン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパン、ポリオキシブチレンポリオキシエチレントリメチロールプロパン、ポリオキシブチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパン、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパン、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシブチレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンジグリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシブチレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシエチレンジトリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレンジトリメチロールプロパン、ポリオキシブチレンジトリメチロールプロパン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジトリメチロールプロパン、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンジトリメチロールプロパン、ポリオキシブチレンポリオキシプロピレンジトリメチロールプロパン、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジトリメチロールプロパン、ポリオキシエチレンジペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシプロピレンジペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシブチレンジペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンジペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシプロピレンジペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシプロピレンソルビット、ポリオキシブチレンソルビット、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンソルビット、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシブチレンポリオキシプロピレンソルビット、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレンソルビットが挙げられる。
また、グルコース、ソルビトール又はスクロースのヒドロキシル基にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドが付加してなる、グルコース、ソルビトール又はスクロースのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ブチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物、ブチレンオキサイドエチレンオキサイド付加物、ブチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物、ブチレンオキサイドエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物も挙げられる。
【0034】
ポリオキシエチレングリセリルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレン(EO数26)グリセリルエーテル等が挙げられる。
なお、EOはオキシエチレン基を意味し、(EO数26)とは、ポリオキシエチレングリセリルエーテルにおけるオキシエチレン基の合計付加モル数が26であることを意味しており、本明細書における以下の例示においても、同様の形式で対象となる物質中におけるオキシアルキレン基の合計付加モル数を表す。
【0035】
ポリオキシプロピレングリセリルエーテルの具体例としては、ポリオキシプロピレン(PO数8)グリセリルエーテル、ポリオキシプロピレン(PO数16)グリセリルエーテル、ポリオキシプロピレン(PO数33)グリセリルエーテル、ポリオキシプロピレン(PO数50)グリセリルエーテル、ポリオキシプロピレン(PO数70)グリセリルエーテル等が挙げられる。
なお、POはオキシプロピレン基を意味し、(PO数26)とは、オキシプロピレン基の合計付加モル数が26であることを意味している。
【0036】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレン(EO数24)ポリオキシプロピレン(PO数24)グリセリルエーテル等が挙げられる。
上記構造の場合等、本明細書においてオキシアルキレン鎖がオキシエチレン基とオキシプロピレン基の両方を含む場合には、オキシアルキレン鎖はオキシエチレン基とオキシプロピレン基がランダム重合してなる構造であってもよく、ブロック重合してなる構造であってもよい。
【0037】
ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルの具体例としては、ポリオキシブチレン(BO数3)ポリオキシエチレン(EO数8)ポリオキシプロピレン(PO数5)グリセリルエーテル等が挙げられる。
なお、BOはオキシブチレン基を意味し、(BO数3)とは、オキシブチレン基の合計付加モル数が3であることを意味している。
上記構造の場合等、本明細書においてオキシアルキレン鎖がオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基のうち2種類以上を含む場合には、オキシアルキレン鎖はオキシエチレン基、オキシプロピレン基及び/又はオキシブチレン基がランダム重合してなる構造であってもよく、ブロック重合してなる構造であってもよい。
【0038】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパンの具体例としては、ポリオキシエチレン(EO数25)ポリオキシプロピレン(PO数25)トリメチロールプロパン、ポリオキシエチレン(EO数10)ポリオキシプロピレン(PO数68)トリメチロールプロパン、ポリオキシエチレン(EO数40)ポリオキシプロピレン(PO数40)トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0039】
ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルの具体例としては、ポリオキシプロピレン(PO数9)ジグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレン(PO数14)ジグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0040】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレン(EO数5)ポリオキシプロピレン(PO数65)ペンタエリスリトールエーテル等が挙げられる。
【0041】
ポリオキシプロピレンソルビットの具体例としては、ポリオキシプロピレン(PO数25)ソルビット、ポリオキシプロピレン(PO数33)ソルビット等が挙げられる。
【0042】
3つ以上のヒドロキシル基を有する市販のポリオール、アルキレンオキサイドを付加させることにより一般式(5)で示される構造となる市販の非イオン性界面活性剤、又は、一般式(5)で示される構造の市販の非イオン性界面活性剤にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドをさらに付加させて、オキシアルキレン基の平均付加モル数やオキシアルキレン基に含まれるオキシエチレン基の割合を調整した上で、一般式(5)で示される非イオン性界面活性剤として使用してもよい。
例えば、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基のみを有する市販の非イオン性界面活性剤にプロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドを付加させる方法等が挙げられる。
【0043】
上記一般式(5)で示される非イオン性界面活性剤の例のなかでも、下記一般式(6)〜(8)で示される構造の非イオン性界面活性剤が好ましい。
【化12】
(一般式(6)中、n
1、n
2、n
3は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
1、n
2、n
3の合計は1〜1000の数であり、n
1≧0、n
2≧0、n
3≧0である。)
【化13】
(一般式(7)中、n
4、n
5、n
6、n
7は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
4、n
5、n
6、n
7の合計は1〜1000の数であり、n
4≧0、n
5≧0、n
6≧0、n
7≧0である。)
【化14】
(一般式(8)中、n
8、n
9、n
10は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
8、n
9、n
10の合計は1〜1000の数であり、n
8≧0、n
9≧0、n
10≧0である。)
一般式(6)〜(8)で示される構造の非イオン性界面活性剤はそれぞれ、一般式(5)においてXがトリメチロールプロパンの残基、ペンタエリスリトールの残基、グリセリンの残基であり、aが3、4、3である場合に相当する。
【0044】
一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤のヒドロキシル基末端をアセタール化した構造の非イオン性界面活性剤が、下記一般式(1)で示される構造の非イオン性界面活性剤である。
【化15】
(一般式(1)中、Xは3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールからヒドロキシル基を除いた残基であり、aは3以上の整数であり、R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していてもよく、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、オキシアルキレン基の合計付加モル数は1〜1000の数であり、n≧0である。)
【0045】
以下、一般式(1)で示される本発明の非イオン性界面活性剤として、アセタール構造の説明を行う。
また、一般式(1)で示される本発明の非イオン性界面活性剤において、複数箇所にあるアセタール構造は、一般式(1)で示される構造を有していれば、それぞれの末端の構造は、同じであってもよく、異なっていてもよい。以下の説明においては、1つの末端の構造に着目して説明する。
【0046】
一般式(1)におけるR
1は、水素原子またはアルキル基である。
R
1がアルキル基である場合、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であれば特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0047】
一般式(1)で示される構造には、R
2とR
3が環を形成してなる環状アセタール構造とR
2とR
3が環を形成していない鎖状アセタール構造が含まれる。
はじめに、環状アセタール構造について説明する。
【0048】
環状アセタール構造は、末端に一般式(10)で示される構造を有することが望ましい。
【化16】
(R
1は水素原子またはアルキル基、R
2はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
5は環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子又は置換基であって、R
5は複数個存在していてもよい。)
一般式(10)におけるR
2は、エーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、一般式(1)においてR
2とR
3が結合して環を形成した部分をまとめてR
2と示している。R
2は炭素及び水素のみからなるアルキレン基であってもよく、エーテル結合を含むアルキレン基であってもよい。また、R
2自体に環状構造が含まれていてもよく、環状構造の例としては、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
R
2自体に環状構造が含まれる場合は、一般式(10)で示される構造の末端が縮合環となっていてもよい。また、R
5は環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子又は置換基であって、R
5は複数個存在していてもよい。
【0049】
環構造を形成する炭素原子のいずれかに結合する水素原子以外の置換基(R
5)としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)又はハロゲン(F−、Cl−、Br−又はI−)が望ましい。
【0050】
一般式(10)に含まれるアセタール構造として望ましい構造は、一般式(10)においてR
2が炭素及び水素のみからなるアルキレン基である構造である。
また、R
1が水素原子であることが望ましい。
具体的な例としては、下記一般式(11)に示される6員環構造、又は、下記一般式(12)に示される5員環構造であることが望ましい。
【化17】
【化18】
【0051】
一般式(11)で示す6員環構造は、テトラヒドロピラニルエーテルである。
テトラヒドロピラニルエーテルは、中性及びアルカリ性環境下での安定性が高く、また、アセタール構造の原料となるジヒドロピランが安価で入手しやすいため、好ましい。
この構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にジヒドロピランを付加させることにより得られる。
【0052】
一般式(12)で示す5員環構造は、テトラヒドロフラニルエーテルである。
この構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2,3−ジヒドロフランを付加させることにより得られる。
【0053】
一般式(10)に含まれるアセタール構造としては、下記一般式(13)、(14)で示される構造も挙げられる。
【化19】
【化20】
【0054】
式(13)で示す構造は、一般式(10)において、R
2がエーテル結合を含むアルキレン基である構造であり、酸触媒下でヒドロキシル基に2,3−ジヒドロ―1,4−ジオキシンを付加させることにより得られる。
式(14)で示す構造は、一般式(10)において、R
2がR
2自体に環状構造を含む構造であり、一般式(10)で示される構造の末端が縮合環となる構造の一例である。
この構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2,3−ベンゾフランを付加させることにより得られる。
【0055】
環状アセタール構造(特に、末端がテトラヒドロピラニルエーテル)を有する、本発明の非イオン性界面活性剤の好ましい例としては、下記一般式(2)〜(4)で示される構造の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【化21】
(一般式(2)中、n
1、n
2、n
3は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
1、n
2、n
3の合計は1〜1000の数であり、n
1≧0、n
2≧0、n
3≧0である。)
【化22】
(一般式(3)中、n
4、n
5、n
6、n
7は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
4、n
5、n
6、n
7の合計は1〜1000の数であり、n
4≧0、n
5≧0、n
6≧0、n
7≧0である。)
【化23】
(一般式(4)中、n
8、n
9、n
10は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、n
8、n
9、n
10の合計は1〜1000の数であり、n
8≧0、n
9≧0、n
10≧0である。)
一般式(2)〜(4)で示される構造の非イオン性界面活性剤はそれぞれ、一般式(1)においてXがそれぞれトリメチロールプロパンの残基、ペンタエリスリトールの残基、グリセリンの残基であり、aが3、4、3であり、末端がテトラヒドロピラニルエーテルになったものである。
【0056】
続いて、一般式(1)で示される構造が、R
2とR
3が環を形成していない鎖状アセタール構造である場合について説明する。
【0057】
鎖状アセタール構造は、末尾に下記一般式(15)で示される構造を有することが望ましい。
【化24】
(一般式(15)中、R
1は水素原子またはアルキル基、R
2及びR
3はエーテル結合を含んでもよい炭化水素基であり、R
2とR
3は環を形成していない。)
【0058】
上記一般式(15)におけるR
2及びR
3は、R
1がアルキル基であるか否かに関係なく、炭化水素基であれば特に限定されるものではなく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、環状炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
また、R
2及びR
3は、エーテル結合を含む炭化水素基であってもよい。
【0059】
上記一般式(15)で示される構造の具体的な例としては、下記一般式(16)〜(26)で示される構造等が挙げられる。
【化25】
上記一般式(16)で示される構造は、一般式(15)においてR
1がメチル基、R
2がメチル基、R
3がエチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にエチルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0060】
【化26】
上記一般式(17)で示される構造は、一般式(15)においてR
1がメチル基、R
2がメチル基、R
3がシクロヘキシル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にシクロヘキシルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0061】
【化27】
上記一般式(18)で示される構造は、一般式(15)においてR
1がメチル基、R
2がメチル基、R
3がフェニル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にフェニルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0062】
【化28】
上記一般式(19)で示される構造は、一般式(15)においてR
1がメチル基、R
2がメチル基、R
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にメチルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0063】
【化29】
上記一般式(20)で示される構造は、一般式(15)においてR
1がメチル基、R
2がメチル基、R
3がベンジル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にベンジルイソプロぺニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0064】
【化30】
上記一般式(21)で示される構造は、一般式(15)においてR
1が水素原子、R
2がメチル基、R
3がエチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にエチルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0065】
【化31】
上記一般式(22)で示される構造は、一般式(15)においてR
1が水素原子、R
2がメチル基、R
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にメチルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0066】
【化32】
上記一般式(23)で示される構造は、一般式(15)においてR
1が水素原子、R
2がメチル基、R
3がイソプロピル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にイソプロピルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0067】
【化33】
上記一般式(24)で示される構造は、一般式(15)においてR
1が水素原子、R
2がメチル基、R
3がイソブチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基にイソブチルビニルエーテルを付加させることにより得られる。
【0068】
【化34】
上記一般式(25)で示される構造は、一般式(15)においてR
1がメチル基、R
2がエチル基、R
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2−メトキシ−1−ブテンを付加させることにより得られる。
【0069】
【化35】
上記一般式(26)で示される構造は、一般式(15)においてR
1がメチル基、R
2がペンチル基、R
3がメチル基である構造である。
上記構造は、酸触媒下でヒドロキシル基に2−メトキシ−1−ヘプテンを付加させることにより得られる。
【0070】
上記一般式(15)で示される鎖状アセタール構造を得るために、ヒドロキシル基に付加させることができるその他の化合物の例としては、ジビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−アミルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−オクタデシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0071】
鎖状アセタール構造を有する本発明の非イオン性界面活性剤の好ましい例としては、上記一般式(15)に示す末端構造に、一般式(1)におけるXとして例示した、3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールからヒドロキシル基を除いた残基が結合したものが挙げられる。
【0072】
本発明の非イオン性界面活性剤はアセタール構造を有し、末端にヒドロキシル基を有していない。
アセタール構造は中性及びアルカリ性下で安定な構造であるため、中性及びアルカリ性の洗浄剤組成物用の消泡剤として適した界面活性剤とすることができる。
また、アセタール構造は、ヒドロキシル基末端に付加反応することによって生成させることができる。この付加反応は反応率が高いため、末端のヒドロキシル基が残存しないように末端を封鎖させることができる。
すなわち、アセタール構造は、「中性及びアルカリ性環境下での安定性が高い」という特徴と「付加反応により形成されるためヒドロキシル基が残存しない」という特徴を有する。
【0073】
有機合成の分野で用いられる、ヒドロキシル基を保護するための保護基としてアセタール構造以外の保護基(例えば、メチル基、ベンジル基、アセチル基、トリメチルシリル基等)が挙げられる。しかしながら、アセタール構造以外の保護基は、アセタール構造の特徴である「中性及びアルカリ性環境下での安定性が高い」という特徴、又は、「付加反応により形成されるためヒドロキシル基が残存しない」という特徴のいずれかを満足しないため、ヒドロキシル基末端を封鎖するための構造として適していない。すなわち、アセタール構造でヒドロキシル基末端を封鎖している本発明の界面活性剤には、他の保護基でヒドロキシル基末端を封鎖した界面活性剤にはない有利な効果が存在する。
【0074】
以下、本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法について説明する。
本発明の非イオン性界面活性剤の製造方法は、本発明の非イオン性界面活性剤を製造する方法であって、下記一般式(5)で示される構造である非イオン性界面活性剤のアルキレンオキサイド末端のヒドロキシル基に対して付加反応を行うことにより一般式(1)で示される非イオン性界面活性剤とすることを特徴とする。
【化36】
(一般式(5)中、Xは3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールからヒドロキシル基を除いた残基であり、aは3以上の整数であり、AOは、同一又は異なっていてもよいオキシアルキレン基であり、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、オキシアルキレン基の合計付加モル数は1〜1000の数であり、n≧0である。)
【0075】
出発物質としての一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤については、既に説明したのでその詳細な説明は省略する。
【0076】
一般式(5)で示される構造の非イオン性界面活性剤の分子末端のヒドロキシル基に対して、付加反応を行うことによりヒドロキシル基を封鎖して、一般式(1)で示されるアセタール構造を得る。付加反応の具体的な手順は、ヒドロキシル基に付加反応させて得られるアセタール構造によって異なるが、例えば、末端をテトラヒドロピラニルエーテル[一般式(11)で示す構造]にする場合は、分子末端のヒドロキシル基にジヒドロピランを酸触媒と共に有機溶媒下で反応させることにより得ることができる。
【0077】
上記酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、塩酸、酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。この中では、扱いが容易であり、安価であるためp−トルエンスルホン酸が望ましい。
【0078】
上記反応に用いる有機溶媒としては、一般的な有機溶媒を用いることができ、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、メチルtert−ブチルエーテル等を用いることができる。
【0079】
反応の終了は、酸触媒の中和により行う。中和に用いる塩基としては特に限定されるものではないが、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の粉末またはそれらの溶液等を用いることができる。
【0080】
反応条件は、出発物質の種類や量により適宜定めることができるが、例えば、分子末端にヒドロキシル基を3つ有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパン50〜100gを塩化メチレン溶液25〜100ml中で反応させる場合、上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパンの全てのヒドロキシル基と反応させるのに充分な量(モル比でポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパンに対して3〜10倍)のジヒドロピランと、酸触媒として1〜10mol%のp−トルエンスルホン酸とを加えて、0.5時間〜終夜(10時間)室温にて撹拌した後、炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、溶媒及び未反応のジヒドロピランを留去する方法が挙げられる。
【0081】
続いて、本発明の非イオン性界面活性剤を消泡剤として用いた洗浄剤組成物の一例について説明する。
洗浄剤組成物には、例えば、本発明の非イオン性界面活性剤(A)、アルカリ剤(B)を配合することができる。また、塩素剤(C)を配合してもよい。
【0082】
洗浄剤組成物中における非イオン性界面活性剤(A)の濃度は、特に限定されるものではないが、0.1〜5.0重量%であることが望ましい。
界面活性剤が複数種類用いられている場合、界面活性剤の濃度は各界面活性剤の濃度の合計値として定められる。
【0083】
アルカリ剤(B)としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を用いることができ、その種類は特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が望ましい。
これらのアルカリ剤は、水和物となっていてもよい。
これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルソケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム及びこれらの水和物からなる群から選択された少なくとも1種が望ましい。これらのアルカリ剤を使用するとpHを12を超えて高くしやすくなるためである。
また、これらのアルカリ剤のうちの1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
洗浄剤組成物中におけるアルカリ剤(B)の濃度は、特に限定されるものではないが、2〜90重量%であることが望ましく、5〜80重量%であることがより望ましく、12〜80重量%であることがさらに望ましい。
アルカリ剤が複数種類用いられている場合、アルカリ剤の濃度は各アルカリ剤の濃度の合計値として定められる。
【0084】
塩素剤(C)としては、例えば、塩素化イソシアヌール酸塩(塩素化イソシアヌール酸ナトリウム、塩素化イソシアヌール酸カリウム等)、トリクロロイソシアヌール酸、次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等)等が挙げられる。
また、これらの塩素剤のうちの1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の非イオン性界面活性剤はその末端にヒドロキシル基を有さず、アセタール構造を有しており、アセタール構造は塩素剤(C)と反応しないので、洗浄剤組成物中の塩素剤(C)の失活が防止される。その結果、消泡剤による泡立ち抑制効果と塩素剤による漂白、殺菌効果をともに発揮することのできる洗浄剤組成物となる。
洗浄剤組成物中における塩素剤の濃度は、特に限定されるものではないが、洗浄剤組成物100重量%中、純分で0.1〜30重量%であることが望ましく、4.0〜20重量%であることがより望ましい。
塩素剤が複数種類用いられている場合、塩素剤の濃度は各塩素剤の濃度の合計値として定められる。
【0085】
洗浄剤組成物はpHが12以上であることが望ましく、13以上であることがより望ましいい。
pHが12以上と高い洗浄剤組成物は、アルカリ性洗浄剤として油汚れ等の除去に特に効果的である。洗浄剤組成物に含まれる本発明の非イオン性界面活性剤のアセタール構造は、このような高いpHの下においても安定であるため、泡立ち抑制効果の高いアルカリ性の洗浄剤組成物とすることができる。また、非イオン性界面活性剤と塩素剤が高いpHの下で共に安定に存在することもできるため、塩素剤を配合することによって界面活性剤による泡立ち抑制効果と塩素剤による漂白、殺菌効果をともに発揮させることができる。
pHの測定は、市販のpHメーター等を用いて行えばよいが、例えば、株式会社堀場製作所製、D−21型を用いて測定することができる。
【0086】
洗浄剤組成物は、必要に応じて高分子分散剤(D)、キレート剤(E)、溶媒/工程剤(F)、可溶化剤(G)等の、洗浄剤組成物に配合される他の成分を含有してもよい。また、非イオン性界面活性剤(A)以外の界面活性剤を含有していてもよい。
高分子分散剤(D)としては、ポリアクリル酸、ポリアコニット酸、ポリイタコン酸、ポリシトラコン酸、ポリフマル酸、ポリマレイン酸、ポリメタコン酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、ポリビニルホスホン酸、スルホン化ポリマレイン酸、オレフィン−マレイン酸共重合体、無水マレイン酸ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸スチレン共重合体、無水マレイン酸メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸エチレン共重合体、無水マレイン酸エチレンクロスリンク共重合体、無水マレイン酸酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸アクリロニトリル共重合体、無水マレイン酸アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸ブタジエン共重合体、無水マレイン酸イソプレン共重合体、無水マレイン酸と一酸化炭素から誘導されるポリ−β−ケトカルボン酸、イタコン酸、エチレン共重合体、イタコン酸アコニット酸共重合体、イタコン酸マレイン酸共重合体、イタコン酸アクリル酸共重合体、マロン酸メチレン共重合体、イタコン酸フマール酸共重合体、エチレングリコールエチレンテレフタレート共重合体、ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、これらの金属塩等があげられる。なかでも、コスト面、経済性の点から、ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量Mw=3,000〜30,000)、ポリマレイン酸−アクリル酸ナトリウム、オレフィン−マレイン酸ナトリウム共重合体等が好適に用いられる。
キレート剤(E)としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、トリポリリン酸、ポリアクリル酸及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、並びに、下記式(27)で示されるポリアスパラギン酸系化合物、下記式(28)で示されるイミノジコハク酸系化合物、下記式(29)で示されるイミノジ酢酸系化合物が挙げられる。
【0087】
【化37】
[式(27)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。s、tは整数である。]
【化38】
[式(28)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。]
【化39】
[式(29)中、Mは同一又は異なって−H、−Na、−K又は−NH
4である。]
【0088】
洗浄剤組成物中におけるキレート剤の濃度は、特に限定されるものではないが、0〜80重量%であることが望ましく、0〜70重量%であることがより望ましく、15〜50重量%であることがさらに望ましい。
溶媒(F)としては、水や一般的に用いられる有機溶媒が挙げられる。工程剤(F)は、剤形が固体の場合の増量剤であり、pHが中性であるものが望ましく、硫酸ナトリウム、粉末シリカ等が挙げられる。
可溶化剤(G)としては、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、カプリル酸、オクチル酸及びこれらの塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0089】
洗浄剤組成物の剤形は、液体、固体(錠剤、粉末等)のいずれでもよく、液体に限定されるものではない。
洗浄剤組成物が固体であり、洗浄剤組成物のpHを直接測定できない場合、洗浄剤組成物のpHは、洗浄剤組成物10gを水90gと混合した状態(洗浄剤組成物の濃度が10重量%)で測定したpHと定める。
【実施例】
【0090】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
原料としての非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパン(50g)を準備し、上記非イオン性界面活性剤の塩化メチレン溶液(50ml)に10gのジヒドロピランと、触媒として3mol%のp−トルエンスルホン酸を加えて、終夜(10時間)、室温にて撹拌した。炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、余剰のジヒドロピラン及び溶媒を留去して目的生成物としての非イオン性界面活性剤を得た。
使用したポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパンは、ポリオキシエチレン(EO数40)ポリオキシプロピレン(PO数40)トリメチロールプロパンであり、一般式(6)においてn
1、n
2、n
3の合計が80のものである。
【0092】
(実施例2)
原料としての非イオン性界面活性剤を日油株式会社製ユニルーブ50TP−300KBに変更した他は、実施例1と同様にして目的生成物としての非イオン性界面活性剤を得た。
日油株式会社製ユニルーブ50TP−300KBは、ポリオキシエチレン(EO数5)ポリオキシプロピレン(PO数65)ペンタエリスリトールエーテルである。
【0093】
(実施例3)
実施例2において、ジヒドロピランをエチルビニルエーテルに変更した他は同様にして目的生成物としての非イオン性界面活性剤を得た。
【0094】
(実施例4)
実施例2において、ジヒドロピランを2,3−ジヒドロフランに変更した他は同様にして目的生成物としての非イオン性界面活性剤を得た。
【0095】
(実施例5)
原料としての非イオン性界面活性剤を日油株式会社製ユニルーブ50TG−32に変更した他は、実施例1と同様にして目的生成物としての非イオン性界面活性剤を得た。
日油株式会社製ユニルーブ50TG−32は、ポリオキシエチレン(EO数24)ポリオキシプロピレン(PO数24)グリセリルエーテルである。
【0096】
(実施例6)
原料としての非イオン性界面活性剤を日油株式会社製ユニオールHS−1600Dに、ジヒドロピランの添加量を20gに変更した他は、実施例1と同様にして目的生成物としての非イオン性界面活性剤を得た。
日油株式会社製ユニオールHS−1600Dは、ポリオキシプロピレン(PO数25)ソルビットである。
【0097】
(実施例7)
原料としての非イオン性界面活性剤として、日油株式会社製ユニルーブ50TG−32(50g)に10gのブチレンオキサイドと、触媒として10mol%のカリウムtert−ブトキシドを加えて4日間室温にて撹拌した。硫酸を加えて反応を終了させ、未反応のブチレンオキサイドを留去して、オキシブチレン基付加物を得た。加えたブチレンオキサイドと留去されたブチレンオキサイドの重量差から、オキシブチレン基付加物のオキシブチレン基の平均付加モル数が3であることを確認した。上記オキシブチレン基付加物25gの塩化メチレン溶液(50ml)に5gのジヒドロピランと、触媒として3mol%のp−トルエンスルホン酸を加えて、終夜(10時間)、室温にて撹拌した。炭酸水素ナトリウムを加えて反応を終了させ、ろ過したのち、余剰のジヒドロピラン及び溶媒を留去して目的生成物としての非イオン性界面活性剤を得た。
得られた非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン(EO数24)ポリオキシプロピレン(PO数24)ポリオキシブチレン(BO数3)グリセリルエーテルである。
【0098】
(比較例1〜4)
実施例1、2、5、6でそれぞれ使用した原料としての非イオン性界面活性剤をそれぞれ準備して比較例1〜4の非イオン性界面活性剤とした。
【0099】
(比較例5)
実施例7で用いた、日油株式会社製ユニルーブ50TG−32のオキシブチレン基付加物を準備した。
【0100】
(耐アルカリ性試験)
各実施例及び比較例で準備した非イオン性界面活性剤を、アルカリ剤の粉末にまぶして所定時間放置し、変色の具合を観察することにより行った。
具体的には、各非イオン性界面活性剤を、水酸化ナトリウム100重量%に対して10重量%まぶした。その後、80℃で2時間静置し、目視により混合物の色を確認した。変色していない場合は、「変色なし」と、褐色に変色していた場合は「褐色に変色」と評価した。
表1には、使用した非イオン性界面活性剤の構造の概要及び耐アルカリ性試験の結果をまとめて示した。
【0101】
【表1】
【0102】
実施例1〜7では変色が生じていなかったのに対し、比較例1〜5では変色が生じていた。このことから、実施例1〜7の非イオン性界面活性剤のアルカリ安定性が高いことがわかる。
【0103】
(アルカリ剤存在下での泡立ち性試験)
各実施例及び比較例で準備した非イオン性界面活性剤を純分換算で5重量%、水酸化ナトリウム(顆粒)を10重量%、GENAMINOX MY(アミンオキサイド系界面活性剤)を10重量%、水を75重量%混合して、アルカリ剤を配合した洗浄剤組成物を調製した。
これらの洗浄剤組成物について、調製直後及び45℃で6日間保管後の泡立ち性を測定した。
泡立ち性の測定は、調製直後の洗浄剤組成物の10%水溶液100mLを500mLメスシリンダーに加え、攪拌機を用いて2000rpmで1分間撹拌した直後の泡量を測定することにより行った。
さらに、洗浄剤組成物の調製後に45℃で6日間保管した後の洗浄剤組成物の10%水溶液の泡立ち性も同様に測定した。
また、比較例6では非イオン性界面活性剤に代えてシリコーン系消泡剤(信越化学工業株式会社製KM−75)を同じ量用いた。
結果を表2に示した。
【0104】
【表2】
【0105】
実施例1〜7では泡量が調製直後、6日間保管後のいずれでも低くなっており、泡立ちが少なく、アルカリ安定性に優れていた。
一方、比較例1〜5では非イオン性界面活性剤の末端がヒドロキシル基であるので泡立ち性が高く、アルカリ安定性も悪くなっていた。
比較例6で使用したシリコーン系消泡剤は調製直後の泡立ち性は悪くなかったがアルカリ安定性が悪く、6日保管後に泡立ち抑制効果が低下していた。
【0106】
(塩素安定性試験)
塩素安定性試験では、実施例1及び比較例1の非イオン性界面活性剤のいずれかを含む洗浄剤組成物を調製し、各洗浄剤組成物について塩素安定性を評価した。
洗浄剤組成物の組成は、非イオン性界面活性剤を純分換算で2重量%、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度12%)を44重量%、水酸化ナトリウム水溶液(濃度48重量%)を16重量%、可溶化剤(キシレンスルホン酸塩水溶液(濃度40重量%))を30重量%、水を8重量%とした。
【0107】
有効塩素濃度を下記に示すヨウ素滴定法で測定した。
上記洗浄剤組成物約1gに、ヨウ化カリウム水溶液(濃度約2重量%)50mL及び酢酸10mLを添加して充分に混合することにより混合液を作製した。次に、0.1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で混合液を滴定し、褐色が消えて無色になった点を終点とした。その時のチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量に基づき、次式(1)によって有効塩素濃度を算出した。
有効塩素濃度[%]=チオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量[mL]×0.3546/洗浄剤組成物採取量[g]・・・(1)
【0108】
上記方法による有効塩素濃度の測定を、洗浄剤組成物の調製直後(0日)、3日、6日経過後にそれぞれ実施した。
洗浄剤組成物は、45℃のインキュベータ内で所定日数保管した。
洗浄剤組成物の調製直後(0日)の有効塩素濃度を100(%)とし、洗浄剤組成物の調製直後の有効塩素濃度に対する、3日、6日経過後の有効塩素濃度の割合(%)を有効塩素残存率(%)として求め、表3に示した。
図1には、塩素安定性試験における有効塩素残存率の経時変化を示すグラフを示した。
【0109】
【表3】
【0110】
表3及び
図1に示すように、非イオン性界面活性剤の末端がアセタール構造である実施例1では、非イオン性界面活性剤の末端がヒドロキシル基である比較例1の場合に比べて有効塩素残存率が高くなっている。
は環を形成していてもよい;AOは各々独立にオキシアルキレン基;nはオキシアルキレン基の平均付加モル数;オキシアルキレン基の合計付加モル数は1〜1000の数;n≧0)