(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂封止部が、前記接着部に対し前記突起部と反対側に拡張し、前記無機封止部の前記本体部のうち前記接着部が接着されていない領域に接着される拡張部をさらに有する、請求項3に記載の色素増感太陽電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1に記載の光電変換装置は、高温環境下における耐久性の点でいまだ改善の余地を有していた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温環境下においても、優れた耐久性を有する色素増感太陽電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を生じさせる原因について検討した。まず上記特許文献1記載の光電変換装置は、高温環境下に置かれ、樹脂封止部が過度に軟らかくなると、作用極の導電性基板と対極との間の距離(以下、「極間距離」と呼ぶ)は、樹脂封止部が過度に軟らかくなる前の極間距離に比べて大きく減少するおそれがあり、このことが、上記課題を生じさせる原因になり得るのではないかと本発明者は考えた。ここで、樹脂封止部の厚さを小さくすることも考えられる。樹脂封止部の厚さを小さくすれば、樹脂封止部が高温環境下で過度に軟らかくなっても、樹脂封止部の厚さの最大減少量を小さくすることができるため、樹脂封止部が過度に軟らかくなる前の極間距離に比べて極間距離が大きく減少することを抑制できるためである。しかし、この場合、樹脂封止部の厚さが小さくなるために、対極に対する樹脂封止部の接着力が低下してしまい、樹脂封止部が対極から剥離しやすくなるおそれがある。そこで、本発明者は、さらに鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、導電性基板と、前記導電性基板に対向する対向基板と、前記導電性基板及び前記対向基板の間に配置される電解質と、前記導電性基板及び前記対向基板と共に前記電解質を包囲し、前記導電性基板及び前記対向基板を連結する環状の封止部とを備え、前記封止部が、前記導電性基板に固定され、無機材料からなる無機封止部と、前記対向基板に固定され、樹脂材料からなる樹脂封止部とを有し、前記無機封止部が、前記導電性基板上に設けられる本体部と、前記本体部から前記導電性基板と反対側に向かって延びる突起部とを有し、前記樹脂封止部が、前記本体部と前記対向基板とを接着し且つ前記突起部の延び方向に沿った側面に接着される接着部を有
し、前記無機材料が、前記樹脂封止部に含まれる前記接着部が軟らかくなる温度になっても硬い状態を保持する、色素増感太陽電池である。
【0010】
この色素増感太陽電池によれば、当該色素増感太陽電池が高温環境下に置かれると、樹脂封止部に含まれる接着部が軟らかくなる。このとき、本発明の色素増感太陽電池では、無機封止部が、本体部から導電性基板と反対側に向かって延びる突起部を有している。ここで、無機封止部に含まれる本体部および突起部は無機材料からなるため、樹脂封止部に含まれる接着部が軟らかくなっても、本体部および突起部は硬い状態を保持することが可能となる。従って、樹脂封止部に含まれる接着部が軟らかくなって接着部の厚さが減少し、対向基板が無機封止部の本体部に近づこうとしても、対向基板が突起部に当接するため、対向基板が本体部に近づくことが阻止される。このため、樹脂封止部の接着部の厚さが減少することが十分に抑制され、対向基板に対する接着部の接着性の低下が十分に抑制される。従って、接着部が対向基板から剥離することが十分に抑制される。よって、本発明の色素増感太陽電池によれば、高温環境下においても、優れた耐久性を有することが可能となる。
【0011】
上記色素増感太陽電池においては、前記突起部の融点が、前記接着部の融点よりも高いことが好ましい。
【0012】
上記色素増感太陽電池においては、前記接着部の少なくとも一部が前記突起部に対して前記電解質と反対側に設けられていることが好ましい。
【0013】
この場合、接着部の全部が、突起部に対して電解質側にある場合に比べて、電解質による接着部の劣化がより十分に抑制される。このため、色素増感太陽電池は、より優れた耐久性を有することが可能となる。
【0014】
上記色素増感太陽電池においては、前記樹脂封止部が、前記接着部に対し前記突起部と反対側に拡張し、前記無機封止部の前記本体部のうち前記接着部が接着されていない領域に接着される拡張部をさらに有することが好ましい。
【0015】
この場合、樹脂封止部は、接着部によって無機封止部の本体部に接着されることに加えて、拡張部によって無機封止部の本体部のうち接着部が接着されていない領域に接着されることになる。このため、樹脂封止部が拡張部を有すると、拡張部を有しない場合に比べて、接着部が補強される。すなわち、接着部に過大な応力が加えられても、接着部が拡張部によって補強されているため、接着部は対向基板から剥離しにくくなる。従って、色素増感太陽電池は、より優れた耐久性を有することが可能となる。
【0016】
上記色素増感太陽電池においては、前記本体部からの前記突起部の高さが20〜100μmであることが好ましい。
【0017】
この場合、色素増感太陽電池が高温環境下に置かれ、樹脂封止部に含まれる接着部が軟らかくなっても、接着部の厚さを最低限20〜100μmに保持することが可能となる。このため、突起部の高さが20μm未満である場合に比べて、対向基板に対する接着部の接着性をより十分に確保することができる。また突起部の高さが100μmを超える場合に比べて、導電性基板と対向基板との間の間隔(以下、「基板間距離」と呼ぶこともある。)がより狭くなるため、色素増感太陽電池の薄型化が可能となる。
【0018】
上記色素増感太陽電池は、前記導電性基板を有する第1電極を有し、前記対向基板が第2電極で構成されていてもよい。
【0019】
また本発明は、導電性基板導電性基板上に、無機材料からなる無機封止部を形成する無機封止部形成工程と、対向基板を準備する対向基板準備工程と、前記導電性基板又は前記対向基板の上に電解質を配置する電解質配置工程と、前記導電性基板及び前記対向基板を
貼合せて、前記導電性基板と前記対向基板との間に封止部を形成する貼合せ工程とを含み、前記無機封止部形成工程において、前記無機封止部が、前記導電性基板上に設けられる本体部と、前記本体部から前記導電性基板と反対側に向かって延びる突起部とを有するように形成され、前記貼合せ工程において、前記封止部が、前記無機封止部と、前記対向基板に固定され、樹脂材料からなる樹脂封止部とを有し、前記樹脂封止部が、前記本体部と前記対向基板とを接着し且つ前記突起部の延び方向に沿った側面に接着される接着部を有するように形成され、前記無機材料が、前記樹脂封止部に含まれる前記接着部が軟らかくなる温度になっても硬い状態を保持する、色素増感太陽電池の製造方法である。
【0020】
この製造方法では、得られる色素増感太陽電池において、以下の効果が得られる。すなわち、上記製造方法によって得られる色素増感太陽電池は、高温環境下に置かれると、樹脂封止部に含まれる接着部が軟らかくなる。このとき、本発明の色素増感太陽電池の製造方法で得られる色素増感太陽電池では、無機封止部が、本体部から導電性基板と反対側に向かって延びる突起部を有している。ここで、無機封止部に含まれる本体部および突起部は無機材料からなるため、樹脂封止部に含まれる接着部が軟らかくなっても、本体部および突起部は硬い状態を保持することが可能となる。従って、樹脂封止部に含まれる接着部が軟らかくなって接着部の厚さが減少し、対向基板が無機封止部の本体部に近づこうとしても、対向基板が突起部に当接するため、対向基板が本体部に近づくことが阻止される。このため、樹脂封止部の接着部の厚さが減少することが十分に抑制され、対向基板に対する接着部の接着性の低下が十分に抑制される。従って、接着部が対向基板から剥離することが十分に抑制される。よって、本発明の製造方法によって得られる色素増感太陽電池によれば、高温環境下においても、優れた耐久性を有することが可能となる。また、一般に作用極と対極とを貼り合せる貼合せ工程においては、温度や圧力を精密に制御しないと、各色素増感太陽電池における封止部の厚さにばらつきが生じる。その点、本発明の製造方法では、無機封止部が本体部と本体部から延びる突起部とで構成されているため、貼り合せの際の温度を高めに設定したり、圧力を高めに設定しても、対向基板が突起部に当接し、封止部の厚さが減少しにくい。このため、導電性基板と対向基板とを貼り合わせる貼合せ工程において、温度や圧力の精密なコントロールを行わなくても、封止部の厚さのばらつきを十分に抑制することができる。このため、貼合せ工程を簡便に行うことが可能となり、優れた耐久性を有する色素増感太陽電池を簡便に得ることができる。
【0021】
上記色素増感太陽電池の製造方法においては、前記突起部の融点が、前記接着部の融点よりも高いことが好ましい。
【0022】
上記色素増感太陽電池の製造方法においては、前記貼合せ工程においては、前記接着部の少なくとも一部が、前記突起部に対して前記電解質と反対側に設けられるように前記封止部が形成されることが好ましい。
【0023】
この場合、得られる色素増感太陽電池において、接着部の全部が、突起部に対して前記電解質側にある場合に比べて、電解質による接着部の劣化がより十分に抑制される。このため、得られる色素増感太陽電池は、より優れた耐久性を有することが可能となる。また、貼合せ工程においては、接着部の少なくとも一部が、突起部に対して電解質と反対側に設けられるように封止部が形成されるため、接着部の全部が突起部に対して電解質側にある場合に比べて、接着部に含まれる樹脂材料が流動化して多孔質酸化物半導体層を覆い、多孔質酸化物半導体層中に含浸されることがより十分に抑制される。その結果、電解質が多孔質酸化物半導体層中により十分に含浸されることとなり、得られる色素増感太陽電池が、より優れた光電変換特性を有することが可能となる。
【0024】
上記色素増感太陽電池の製造方法においては、前記無機封止部形成工程において、前記本体部からの前記突起部の高さが20〜100μmとなるように前記無機封止部が形成されることが好ましい。
【0025】
この場合、得られる色素増感太陽電池が高温環境下に置かれ、樹脂封止部に含まれる接着部が軟らかくなっても、接着部の厚さを最低限20〜100μmに保持することが可能となる。このため、突起部の高さが20μm未満である場合に比べて、対向基板に対する接着部の接着性をより十分に確保することができる。また突起部の高さが100μmを超える場合に比べて、基板間距離がより狭くなるため、色素増感太陽電池の薄型化が可能となる。
【0026】
上記色素増感太陽電池の製造方法は、前記導電性基板を有する第1電極を準備する第1電極準備工程を有し、前記対向基板が第2電極で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高温環境下においても、優れた耐久性を有する色素増感太陽電池及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
<第1実施形態>
まず本発明の色素増感太陽電池の第1実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る色素増感太陽電池の第1実施形態を示す断面図、
図2は、
図1の部分拡大断面図である。
【0031】
図1に示すように、色素増感太陽電池100は、作用極(第1電極)10と、作用極10に対向して配置される対極(第2電極)20と、作用極10と対極20との間に配置される電解質30と、作用極10及び対極20と共に電解質30を包囲する環状の封止部40とを備えている。また作用極10と対極20と封止部40とによって囲まれるセル空間の内圧は大気圧未満となっている。
【0032】
作用極10は、対極20との間に電解質30を有する透明な導電性基板14と、導電性基板14の表面に接合される多孔質酸化物半導体層13とを備えている。導電性基板14は、透明基板11と、透明基板11の対極20側に設けられ、多孔質酸化物半導体層13と接合される透明導電膜(以下、「透明導電層」と呼ぶ)12とで構成されている。多孔質酸化物半導体層13には光増感色素が担持されている。
【0033】
対極20は、導電性基板14に対向しており、対極基板21と、対極基板21のうち電解質30側の面に設けられる触媒層22とで構成されている。
【0034】
図2に示すように、環状の封止部40は、無機材料からなる連続状で且つ環状の無機封止部41と、樹脂材料からなる連続状で且つ環状の樹脂封止部42と、無機封止部41の内周面S
1を覆い電解質30から無機封止部41を保護する熱硬化樹脂45とを有している。
【0035】
環状の無機封止部41は、作用極10のうち透明な導電性基板14上に設けられる連続状で且つ環状の本体部41aと、本体部41aの一部から導電性基板14と反対側に向かって延びる連続状で且つ環状の突起部41bとを有する。本体部41aは、透明導電層12上に設けられる集電配線43と、集電配線43を覆って電解質30から保護する配線保護部44とで構成されている。また突起部41bは、本体部41aにおける導電性基板14と反対側の領域S
3のうち電解質30寄りの領域から導電性基板14と反対側、すなわち対極20側に向かって延びている。
【0036】
一方、樹脂封止部42は、無機封止部41と対極20とを接着させる接着部42aと、接着部42aに対し突起部41bと反対側に拡張し、無機封止部41の本体部41aのうち接着部42aが接着されていない領域S
4に接着される拡張部42bとで構成されている。ここで、接着部42aの一部は突起部41bに対して電解質30と反対側に設けられる、突起部41bの延び方向に沿った外周面S
2と接着されている。接着部42aの残部は、突起部41bと対極20との間に入り込んでおり、突起部41bおよび対極20に接着されている。また拡張部42bは、作用極10の透明導電層12と対極20とを連結している。
【0037】
この色素増感太陽電池100によれば、色素増感太陽電池100が高温環境下に置かれると、樹脂封止部42に含まれる接着部42aが軟らかくなる。このとき、色素増感太陽電池100では、無機封止部41が、本体部41aから導電性基板14と反対側に延びる突起部41bを有している。ここで、無機封止部41に含まれる本体部41aおよび突起部41bは無機材料からなるため、樹脂封止部42に含まれる接着部42aが軟らかくなっても、本体部41aおよび突起部41bは硬い状態を保持することが可能となる。従って、樹脂封止部42に含まれる接着部42aが軟らかくなって接着部42aの厚さが減少し、対極20が無機封止部41の本体部41aに近づこうとしても、そのうち対極20が突起部41bに当接するため、それ以降、対極20が本体部41aに近づくことが阻止される。このため、樹脂封止部42の接着部42aの厚さが減少することが十分に抑制され、対極20に対する接着部42aの接着性の低下が十分に抑制される。従って、接着部42aが対極20から剥離することが十分に抑制される。よって、色素増感太陽電池100によれば、高温環境下においても、優れた耐久性を有することが可能となる。
【0038】
また色素増感太陽電池100では、接着部42aの一部が突起部41bに対して電解質30と反対側に設けられている。このため、接着部42aの全部が、突起部41bに対して電解質30側にある場合に比べて、電解質30による接着部42aの劣化がより十分に抑制される。このため、色素増感太陽電池100は、より優れた耐久性を有することが可能となる。
【0039】
また色素増感太陽電池100では、突起部41bと対極20との間に接着部42aの残部が入り込んでおり、突起部41bおよび対極20に接着されている。このため、突起部41bと対極20との間に接着部42aの残部が入り込んでいない場合に比べて、樹脂封止部42と対極20との接着面積を増加させることができる。このため、対極20に対する樹脂封止部42の接着性がより向上し、樹脂封止部42が対極20からより剥離しにくくなる。その結果、色素増感太陽電池100は、より優れた耐久性を有することが可能となる。
【0040】
また色素増感太陽電池100では、樹脂封止部42が、無機封止部41の本体部41aのうち接着部42aが接着されていない領域S
4に接着される拡張部42bをさらに有している。このため、樹脂封止部42は、接着部42aによって無機封止部41の本体部41aに接着されることに加えて、拡張部42bによって無機封止部41の本体部41aのうち接着部42aが接着されていない領域S
4に接着されることになる。このため、樹脂封止部42が拡張部42bを有すると、拡張部42bを有しない場合に比べて、接着部42aが補強される。すなわち、接着部42aに過大な応力が加えられても、接着部42aが拡張部42bによって補強されているため、接着部42aは対極20から剥離しにくくなる。従って、色素増感太陽電池100は、より優れた耐久性を有することが可能となる。特に本実施形態では、拡張部42bは、導電性基板14と対極20とを連結している。このため、接着部42aに対する補強効果は一層大きくなる。加えて、封止部40と対極20との界面、又は、封止部40と作用極10との界面に沿って過大な応力が加わっても、対極20又は作用極10に対する封止部40の剥離が十分に抑制される。その結果、色素増感太陽電池100の耐久性をより一層優れたものとすることが可能となる。
【0041】
次に、作用極10、光増感色素、対極20、電解質30、封止部40及び熱硬化樹脂45について詳細に説明する。
【0042】
(作用極)
作用極10は、上述したように、導電性基板14と、導電性基板14の表面上に設けられる多孔質酸化物半導体層13とを備えており、導電性基板14は、透明基板11と、透明基板11の対極20側に設けられる透明導電層12とで構成されている。
【0043】
透明基板11を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)などの樹脂フィルムが挙げられる。透明基板11の厚さは、色素増感太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50〜10000μmの範囲にすればよい。
【0044】
透明導電層12を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO
2)、フッ素添加酸化スズ(FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電層12は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電層12が単層で構成される場合、透明導電層12は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。透明導電層12の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
【0045】
多孔質酸化物半導体層13は、酸化物半導体粒子で構成される。酸化物半導体粒子としては、例えば酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO
5)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
5)、酸化スズ(SnO
2)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化タリウム(Ta
2O
5)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ホルミウム(Ho
2O
3)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)又はこれらの2種以上で構成される酸化物半導体粒子が挙げられる。これら酸化物半導体粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが、色素で覆われた酸化物半導体の表面積が大きくなり、より多くの電子を生成することができることから好ましい。多孔質酸化物半導体層13の厚さは、例えば0.5〜50μmとすればよい。なお、多孔質酸化物半導体層13は、異なる材料からなる複数の半導体層の積層体で構成することもできる。
【0046】
(光増感色素)
光増感色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。
【0047】
(対極)
対極20は、上述したように、対極基板21と、対極基板21のうち電解質30側の面に設けられる触媒層22とで構成されている。
【0048】
対極基板21は、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、SUS等の耐食性の金属材料や、上述した透明基板11にITO、FTO等の導電性酸化物からなる膜を形成したもので構成される。対極基板21の厚さは、色素増感太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005〜0.1mmとすればよい。
【0049】
触媒層22は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。ここで、炭素系材料としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブが挙げられ、その中でも特にカーボンナノチューブが好適に用いられる。
【0050】
対極20は、可撓性を有していても有していなくてもよいが、可撓性を有していることが好ましい。この場合、セル空間の内圧が高まった場合でも、セル空間が膨張することが可能となり、対極20と封止部40との界面に加わる応力を低減することができる。このため、色素増感太陽電池100は、より耐久性に優れることが可能となる。
【0051】
なお、本明細書において、「可撓性を有する」電極とは、20℃の環境下で50mm×200mmのシート状電極の長辺側の両縁部(それぞれ幅5mm)を張力1Nで水平に固定し、電極の中央に20g重の荷重をかけた際の電極の撓みの最大変形率が20%を超える電極を言うものとする。ここで、最大変形率とは、下記式:
最大変形率(%)=100×(最大変位量/シート状電極の厚さ)
に基づいて算出される値を言う。従って、例えば厚さ0.04mmのシート状電極が上記のようにして荷重をかけることにより撓み、最大変位量が0.01mmとなった場合、最大変形率は25%となり、このシート状電極は「可撓性を有する」こととなる。
【0052】
(電解質)
電解質30は、例えばI
−/I
3−などの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリル、グルタロニトリル、メタクリロニトリル、イソブチロニトリル、フェニルアセトニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、オキサロニトリル、ペンタニトリル、アジポニトリルなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI
−/I
3−のほか、臭素/臭化物イオン、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。また電解質30は、有機溶媒に代えて、イオン液体を用いてもよい。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド、ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、エチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、ブチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、メチルプロピルイミダゾリウムアイオダイドが好適に用いられる。
【0053】
また、電解質30は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
【0054】
また電解質30には添加剤を加えることができる。添加剤としては、LiI、I
2、4−t−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネート、1−メチルベンゾイミダゾール、1-ブチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0055】
さらに電解質30としては、上記電解質にSiO
2、TiO
2、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
【0056】
(封止部)
封止部40は、上述したように、無機封止部41と、樹脂封止部42とで構成されている。
【0057】
無機封止部41は、上述したように、本体部41aと、突起部41bとで構成されている。
【0058】
本体部41aは、本実施形態では、集電配線43と、配線保護部44とで構成されている。集電配線43は、透明導電層12よりも低い電気抵抗を有する材料で構成されていればよく、例えば銀などで構成される。
【0059】
配線保護部44は、集電配線43を電解質30から保護することが可能な材料で構成されていればよく、例えば非鉛系の透明な低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料からなる。低融点ガラスフリットとしては、150〜550℃の軟化点を有するものを用いることができる。
【0060】
突起部41bは、接着部42aの融点(T1)よりも高い融点(T2)を有することが好ましい。この場合、(T2−T1)は、0℃より大きければよく、特に限定されるものではないが、好ましくは50〜700℃であり、より好ましくは300〜500℃である。
【0061】
突起部41bは、例えば非鉛系の透明な低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料からなる。
【0062】
本体部41aからの突起部41bの高さ(
図4B参照)Hは特に制限されるものではないが、通常は20〜300μmである。
【0063】
本体部41aからの突起部41bの高さHは20〜100μmであることが好ましい。この場合、色素増感太陽電池100が高温環境下に置かれ、樹脂封止部42に含まれる接着部42aが軟らかくなっても、接着部42aの厚さを最低限20〜100μmに保持することが可能となる。このため、突起部41bの高さHが20μm未満である場合に比べて、対極20に対する接着部42aの接着性をより十分に確保することができる。また突起部41bの高さHが100μmを超える場合に比べて、作用極10と対極20との間の間隔がより狭くなるため、色素増感太陽電池100の薄型化が可能になるとともに、より高い発電効率が得られる。
【0064】
本体部41aからの突起部41bの高さHは、より好ましくは40〜80μmである。
【0065】
突起部41bの幅は、好ましくは10〜1000μmであり、より好ましくは50〜500μmである。突起部41bの幅が上記範囲内にあると、上記範囲を外れる場合に比べて、突起部41bと対極20との間の接着部42aの幅が十分に確保でき且つ突起部41bがスペーサーとしての役割をより十分に果たすことができると共に、色素増感太陽電池100の発電面積をより増加させることができる。ここで、突起部41bの幅とは、突起部41bを導電性基板14の表面に直交する方向から見た場合に、突起部41bの最大幅を言うものとする。
【0066】
樹脂封止部42は樹脂材料からなる。樹脂材料としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などを含む各種変性ポリオレフィン樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などが挙げられる。
【0067】
(熱硬化樹脂)
熱硬化樹脂45は、突起部41b及び配線保護部44を覆って電解質30から保護することが可能であればよく、熱硬化樹脂45の具体例としては、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0068】
次に、色素増感太陽電池100の製造方法について
図3〜9を参照しながら説明する。
図3〜9は、色素増感太陽電池100を製造する一連の工程を示す断面図である。
【0069】
[第1電極準備工程]
まず作用極10を以下のようにして準備する(
図3参照)。
【0070】
はじめに透明基板11の上に、1枚の連続した透明導電層12を形成することにより透明な導電性基板14を作製する。透明導電層12の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD)又はCVD法などが用いられる。
【0071】
次に、導電性基板14のうちの透明導電層12の表面における多孔質酸化物半導体層13を形成する予定の領域に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷する。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストは、既に述べた酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、バーコート法などを用いることができる。
【0072】
次に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを焼成して多孔質酸化物半導体層13を形成し、作用極10を得る。
【0073】
焼成温度は酸化物半導体粒子により異なるが、通常は350〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子により異なるが、通常は1〜5時間である。
【0074】
[無機封止部形成工程]
次に、
図4Aに示すように、多孔質酸化物半導体層13を包囲するように連続状で且つ環状の本体部41aを形成する。本体部41aは、多孔質酸化物半導体層13を包囲するように集電配線43を形成し、続いて集電配線43を被覆するように配線保護部44を形成することにより得ることができる。
【0075】
集電配線43は、例えば、金属粒子とポリエチレングルコールなどの増粘剤とを配合してペーストとし、そのペーストを、スクリーン印刷法などを用いて多孔質酸化物半導体層13を囲むように塗膜し、加熱して焼成することによって得ることができる。配線保護部44は、例えば、低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料に、必要に応じて増粘剤、結合剤、分散剤、溶剤などを配合してなる配線保護層形成用ペーストを、スクリーン印刷法などにより集電配線43の全体を被覆するように塗布し、加熱し焼成することによって得ることができる。
【0076】
次に、
図4Bに示すように、本体部41aの上に連続状で且つ環状の突起部41bを形成する。このとき、突起部41bは、本体部41aの導電性基板14と反対側の面S
3のうち多孔質酸化物半導体層13寄りの位置に形成する。突起部41bは、例えば低融点ガラスフリットを含む突起部形成用ペーストをスクリーン印刷法などにより本体部41aの導電性基板14と反対側の面S
3のうち多孔質酸化物半導体層13寄りの位置に塗布し、加熱して焼成することにより形成することができる。なお、突起部形成用ペーストとしては、例えば上述した配線保護層形成用ペーストと同様のものを用いることができる。
【0077】
次に、環状の突起部41bの内周面を熱硬化樹脂45で被覆する。熱硬化樹脂45は、例えばスクリーン印刷法、ディスペンス法などを用いて形成することができる(
図2参照)。
【0078】
[色素担持工程]
次に、作用極10の多孔質酸化物半導体層13に光増感色素を担持させる。このためには、作用極10を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、光増感色素を多孔質酸化物半導体層13に吸着させるか又は光増感色素を含有する溶液を多孔質酸化物半導体層13に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を多孔質酸化物半導体層13に吸着させればよい。
【0079】
[対向基板準備工程]
一方、以下のようにして対向基板としての対極20を準備する。
【0080】
すなわちまず
図5に示すように、対極基板21を準備する。そして、対極基板21の上に触媒層22を形成する。触媒層22の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法などが用いられる。これらのうちスパッタ法が膜の均一性の点から好ましい。
【0081】
[第1封止材固定工程]
次に、
図6に示すように、作用極10に固定された無機封止部41の上に連続状で且つ環状の第1封止材42Aを固定する。第1封止材42Aは、例えば熱可塑性樹脂を加熱により溶融させて無機封止部41に接着させることによって無機封止部41に固定することができる。具体的には、第1封止材42Aは、導電性基板14の表面のうち本体部41aよりも外側にある領域S
5、および、本体部41aのうち突起部41bに対して電解質30と反対側にある表面S
3,S
4の全体を覆うと共に、突起部41bの延び方向に沿った外周面S
2をも覆うように配置した後、加熱により溶融させて無機封止部41に接着させることによって無機封止部41に固定する。このとき、第1封止材42Aの融点は、突起部41bの融点(T2)よりも小さいことが好ましい。
【0082】
[第2封止材固定工程]
次に、
図7に示すように、対極20のうち触媒層22の表面上の環状部位B2に第2封止材42Bを固定する。第2封止材42Bは、例えば熱可塑性樹脂を加熱により溶融させて触媒層22に接着させることによって固定することができる。第2封止材42Bとしては、第1封止材42Aと同様のものを用いることができる。第2封止材42Bの融点は、突起部41bの融点(T2)よりも小さいことが好ましい。
【0083】
[電解質配置工程]
続いて、
図8に示すように、作用極10上であって無機封止部41の内側に電解質30を配置する。電解質30は、作用極10上であって無機封止部41の内側に多孔質酸化物半導体層13を覆うように注入したり、印刷したりすることによって得ることができる。
【0084】
[貼合せ工程]
次に、
図9に示すように、作用極10と対極20とを例えば減圧下に貼り合わせる。こうして、作用極10と対極20との間に封止部40を形成する(
図1参照)。
【0085】
このとき、第1封止材42Aと第2封止材42Bとが重なり合った部分を局所的に加圧しながら加熱し、第1封止材42Aと第2封止材42Bとを熱溶融させる。こうして、第1封止材42Aと第2封止材42Bとにより樹脂封止部42が形成され、封止部40が形成される(
図1参照)。
【0086】
このとき、第1封止材42A及び第2封止材42Bの加圧は通常、1〜50MPaで行い、好ましくは2〜30MPa、より好ましくは3〜20MPaで行う。
【0087】
また第1封止材42A及び第2封止材42Bを溶融させるときの温度は、第1封止材42A及び第2封止材42Bを形成する熱可塑性樹脂の融点以上であればよい。上記温度が熱可塑性樹脂の融点未満では、第1封止材42A及び第2封止材42Bを形成する熱可塑性樹脂が溶融しないため、第1封止材42A及び第2封止材42Bを接着させて封止部40を形成させることができなくなる。なお、第1封止材42A及び第2封止材42Bを形成する熱可塑性樹脂が互いに異なる場合には、熱可塑性樹脂の融点とは、より高い融点を有する熱可塑性樹脂の融点を言うものとする。
【0088】
但し、第1封止材42A及び第2封止材42Bを溶融させるときの温度は、(熱可塑性樹脂の融点+200℃)以下であることが好ましい。上記温度が(熱可塑性樹脂の融点+200℃)を超えると、第1封止材42A及び第2封止材42Bに含まれる熱可塑性樹脂が熱によって分解するおそれがある。
【0089】
こうして色素増感太陽電池100が得られ、色素増感太陽電池100の製造が完了する。
【0090】
上記製造方法によれば、高温環境下でも優れた耐久性を有する色素増感太陽電池100を得ることができる。
【0091】
また一般に作用極と対極とを貼り合せる貼合せ工程においては、温度や圧力を精密に制御しないと、各色素増感太陽電池における封止部の厚さにばらつきが生じる。その点、上記製造方法では、無機封止部41が本体部41aと本体部41aから延びる突起部41bとで構成されているため、貼り合せの際の温度を高めに設定したり、圧力を高めに設定しても、対極20が突起部41bに当接し、それ以降は、封止部40の厚さが減少しない。このため、作用極10と対極20とを貼り合わせる貼合せ工程において、温度や圧力の精密なコントロールを行わなくても、封止部40の厚さのばらつきを十分に抑制することができる。このため、貼合せ工程を簡便に行うことが可能となり、優れた耐久性を有する色素増感太陽電池100を簡便に得ることができる。
【0092】
さらに、上記製造方法においては、接着部42aの全部が、突起部41bに対して電解質30側にある場合に比べて、電解質30による接着部42aの劣化がより十分に抑制される。このため、得られる色素増感太陽電池100は、より優れた耐久性を有することが可能となる。また、貼合せ工程においては、接着部42aの一部が、突起部41bに対して電解質30と反対側に設けられるように封止部40が形成されるため、接着部42aの全部が突起部41bに対して電解質30側にある場合に比べて、接着部42aに含まれる樹脂材料が流動化して多孔質酸化物半導体層13を覆い、多孔質酸化物半導体層13中に含浸されることがより十分に抑制される。その結果、電解質30が多孔質酸化物半導体層13中により十分に含浸されることとなり、得られる色素増感太陽電池100が、より優れた光電変換特性を有することが可能となる。
【0093】
なお、対極20の準備は、作用極10と対極20との貼合せ工程の前に行えばよく、必ずしも、上記製造方法のように、作用極10の後に行う場合に限られるものではない。例えば、対極20の準備は、作用極10の前に行ってもよい。また、対極20への第2封止材42Bの固定も、対極20の準備後、作用極10と対極20との貼合せ工程の前に行えばよく、必ずしも、上記製造方法のように、作用極10への第1封止材42Aの固定の後に行う場合に限られるものではない。例えば、対極20を作用極10の前に準備する場合には、対極20への第2封止材42Bの固定は、対極20の準備後、作用極10の準備前に行ってもよいし、作用極10の準備後、作用極10への第1封止材42Aの固定の前に行ってもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、第1封止材42Aが無機封止部41上に固定され、第2封止材42Bが対極20のうち触媒層22上に固定されているが、第1封止材42A及び第2封止材42Bのいずれか一方のみが無機封止部41上又は対極20のうち触媒層22上に固定されていてもよい。すなわち、第1封止材固定工程又は第2封止材固定工程のいずれか一方は省略されてもよい。
【0095】
<第2実施形態>
次に、本発明の色素増感太陽電池の第2実施形態について説明する。
図10は、本発明の色素増感太陽電池の第2実施形態を示す部分断面図である。
【0096】
図10に示すように、本実施形態の色素増感太陽電池200は、無機封止部41と、無機封止部41に接着される樹脂封止部242とを有する封止部240を備え、環状の樹脂封止部242の外周面42cが内側に向かって、すなわち電解質30側に向かって湾曲している点で第1実施形態の色素増感太陽電池100と相違する。ここで、樹脂封止部242を構成する材料は、第1実施形態の樹脂封止部42を構成する材料と同様である。
【0097】
この場合、対極20のうち多孔質酸化物半導体層13に対向する部分に応力が加わり、対極20と多孔質酸化物半導体層13との間の距離が減少すると、対極20のうち突起部41bよりも外側に張り出している張出し部201と導電性基板14との距離が拡大する。このとき、樹脂封止部242と導電性基板14との界面、及び、樹脂封止部242と対極20との界面には大きな応力が加わりやすい。ここで、本実施形態の色素増感太陽電池200では、環状の樹脂封止部242の外周面42cが内側に向かって、すなわち電解質30側に向かって湾曲している。言い換えると、樹脂封止部242の外周面42cが電解質30と反対側に凸となるように張り出しておらず、導電性基板14と樹脂封止部242の外周面42cとによって、応力が集中しやすくなるクサビ状の狭い隙間が形成されていない。また対極20と樹脂封止部242の外周面42cとによってもクサビ状の狭い隙間が形成されていない。このため、樹脂封止部242と導電性基板14との界面、及び、樹脂封止部242と対極20との界面に大きな応力が加わっても、これらの界面への応力の集中を抑制することができる。よって、本実施形態の色素増感太陽電池200は、優れた耐久性を有することが可能となる。
【0098】
なお、環状の樹脂封止部242の外周面42cが内側に向かって、すなわち電解質30側に向かって湾曲するようにするには、例えば減圧環境下で作用極10と対極20とを貼り合せて作用極10と対極20との間に封止部を有する構造体を得た後、この構造体を大気圧環境下に取り出せばよい。
【0099】
本発明は、上記第1及び第2実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1実施形態では、樹脂封止部42の接着部42aの一部が、突起部41bと対極20との間にも入り込んでいるが、
図11に示す第3実施形態に係る色素増感太陽電池300のように、封止部340が無機封止部41と樹脂封止部342とで構成され、樹脂封止部342の接着部342aの一部が、突起部41bと対極20との間に入り込んでいなくてもよい。すなわち、突起部41bと対極20とが直接接触していてもよい。この場合、突起部41bと対極20とが直接接触しているため、色素増感太陽電池300が高温環境下に置かれ、樹脂封止部342が軟らかくなって接着部342aの厚さが減少しようとしても、接着部342aの厚さは一定に保持される。このため、色素増感太陽電池300が高温環境下に置かれても、対極20に対する接着部342aの接着性の低下が十分に抑制される。従って、色素増感太陽電池300は、優れた耐久性を有することが可能となる。なお、樹脂封止部342を構成する材料は、第1実施形態の樹脂封止部42を構成する材料と同様である。
【0100】
また上記第1実施形態では、樹脂封止部42が接着部42aと拡張部42bとで構成されているが、
図12に示す第4実施形態に係る色素増感太陽電池400のように、拡張部42bは必ずしも必要なものではなく、省略が可能である。すなわち、色素増感太陽電池400では、封止部440が無機封止部41と樹脂封止部442とで構成され、樹脂封止部442は、接着部442aのみで構成されていてもよい。なお、樹脂封止部442を構成する材料は、第1実施形態の樹脂封止部42を構成する材料と同様である。
【0101】
上記のような接着部442aのみで構成される樹脂封止部442を形成するには、例えば第1封止材42Aを無機封止部41に固定する際、第1封止材42Aを、突起部41bの延び方向に沿った外周面S
2と、本体部41aのうち突起部41bに対して電解質30と反対側にあって且つ本体部41aに対し導電性基板14と反対側にある表面S
3のみを覆うように配置した後、加熱により溶融させて無機封止部41に接着させればよい。
【0102】
さらに上記第1〜第4実施形態では、突起部41bは連続状となっているが、不連続状であってもよい。すなわち、複数の突起部41bが、所定の間隔をあけて環状に配置されていてもよい。この場合、各突起部41bは、円柱状、球状等、種々の形状を有してもよい。
【0103】
さらに上記第1実施形態では、本体部41aが集電配線43と配線保護部44とで構成されているが、
図13に示す第5実施形態に係る色素増感太陽電池500のように、封止部540が、無機封止部541と樹脂封止部42とで構成され、無機封止部541が、本体部541aと、突起部41bとで構成されてもよい。すなわち、本体部541aは、集電配線43を含まなくてもよい。ここで、本体部541aは、配線保護部44と同様の材料で構成される。
【0104】
さらに上記第1〜第5実施形態では、対極20が対向基板を構成しているが、
図14に示す第6実施形態に係る色素増感太陽電池600のように、対向基板として、対極20に代えて、絶縁性基板601を用いてもよい。この場合、絶縁性基板601と封止部40と導電性基板14との間の空間には構造体602が配置される。構造体602は、導電性基板14のうち対向基板601側の面上に設けられている。構造体602は、導電性基板14側から順に、多孔質酸化物半導体層13、多孔質絶縁層603及び対極620で構成される。また上記空間には電解質30が配置されている。電解質30は、多孔質酸化物半導体層13及び多孔質絶縁層603の内部にまで含浸されている。ここで、絶縁性基板601としては、例えばガラス基板又は樹脂フィルムなどを用いることができる。また対極620としては、対極20と同様のものを用いることができる。あるいは、対極620は、例えばカーボン等を含む多孔質の単一の層で構成されてもよい。多孔質絶縁層603は、主として、多孔質酸化物半導体層13と対極620との物理的接触を防ぎ、電解質30を内部に含浸させるためのものである。このような多孔質絶縁層603としては、例えば酸化物の焼成体を用いることができる。なお、
図14に示す色素増感太陽電池600においては、封止部40と導電性基板14と対向基板601との間の空間に構造体602が1つのみ設けられているが、構造体602は複数設けられていてもよい。また、多孔質絶縁層603は、多孔質酸化物半導体層13と対極620との間に設けられているが、多孔質酸化物半導体層13を囲むように、導電性基板14と対極620の間に設けてもよい。この構成でも、多孔質酸化物半導体層13と対極620との物理的接触を防ぐことができる。
【0105】
また上記第1及び第5実施形態では、環状の無機封止部41の内周面S
1が熱硬化樹脂45で覆われ電解質30から保護されているが、熱硬化樹脂45は必ずしも必要ではなく、省略が可能である。
【0106】
さらに上記第1〜第5実施形態では、接着部42a,342a,442aの全部または一部が突起部41bに対して電解質30と反対側に設けられているが、接着部42a,342a,442aと突起部41bの位置が逆であってもよい。すなわち、突起部41bが接着部42a,342a,442aの全部または一部に対し電解質30と反対側に設けられていてもよい。この場合、第1〜第3及び第5実施形態の色素増感太陽電池100,200,300,500においては、拡張部42bは、接着部42aよりも電解質30側に配置されることになる。
【0107】
また上記第1〜第3及び第5実施形態では、拡張部42bが作用極10と対極20とを連結しているが、拡張部42bは、作用極10および対極20のうちいずれか一方にのみ接着されていてもよいし、両方に接着されていなくてもよい。
【0108】
さらに上記第1〜第5実施形態では、セル空間の内圧が大気圧未満になっているが、セル空間の内圧は大気圧以上であってもよい。
【実施例】
【0109】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0110】
(実施例1)
はじめに、10cm×10cm×4mm(厚さ)のフッ素ドープ酸化錫からなるFTO膜をガラス基板上に設けてなる透明導電ガラス基板(FTO基板)を準備した。続いて、FTO基板のうちFTO膜上に、平均粒径20nmの酸化チタンを含む多孔質酸化物半導体層形成用ペーストをスクリーン印刷により塗布し、乾燥後、500℃にて1時間加熱処理することにより、厚さ約20μmの多孔質酸化物半導体層を形成した。こうして作用極を作製した。
【0111】
次に、作用極のFTO基板の上に、銀ペーストを、スクリーン印刷により多孔質酸化物半導体層を包囲するように塗布し、乾燥後、500℃にて1時間加熱処理することにより幅500μm、高さ25μmの連続状で且つ環状の集電配線を形成した。
【0112】
次に、ガラスフリット(融点:510℃)を含むペーストを、スクリーン印刷により、集電配線を覆うように塗布し、乾燥後、480℃にて1時間加熱処理することにより、幅800μm、FTO基板からの高さ40μmの連続状で且つ環状の配線保護部を形成した。こうして連続状で且つ環状の本体部を形成した。続いて、本体部の形成に用いたペーストと同様のガラスフリットを含むペーストを、スクリーン印刷により、本体部におけるFTO基板の反対側の面のうち多孔質酸化物半導体層寄りの領域に塗布し、乾燥後、480℃にて1時間加熱処理することにより連続状で且つ環状の突起部を形成した。このとき、突起部は、本体部からの高さHが40μm、幅が100μmとなるように形成した。こうして、作用極の上に環状の無機封止部を形成した。
【0113】
続いて、作用極を、アセトニトリルとt−ブチルアルコールとを体積比1:1で混合して得られる混合溶媒中に光増感色素であるルテニウムピリジン錯体色素(N719色素)を0.3mM溶かした溶液中に一昼夜浸漬して作用極に光増感色素を担持させた。
【0114】
一方、5.5cm×5.5cm×40μm(厚さ)の純金属チタン箔からなる金属基板を用意し、この金属基板の全面に、スパッタリング法により、厚さ約10nmの白金触媒層を形成し、対極を得た。
【0115】
次に、第1封止材として、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂からなり、10cm×10cmのシートに1個の四角形状の開口(5cm×5cm)が形成され幅が5mmとなる四角環状体を用意した。次いで、第1封止材を、作用極の無機封止部上に配置した後、溶融接着した。具体的には、第1封止材は、FTO基板の表面のうち本体部よりも外側にある領域、および、本体部のうち突起部に対して電解質と反対側にある表面の全体を覆うと共に、突起部の延び方向に沿った外周面をも覆うように配置した後、加熱により溶融させて無機封止部に接着させることによって無機封止部に固定した。こうして作用極に第1封止材を形成した。このとき、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂としては、アイオノマーであるハイミラン(商品名、三井デュポンポリケミカル社製、融点:98℃)を用いた。
【0116】
次に、第2封止材として、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂からなり、10cm×10cmのシートに1個の四角形状の開口(5cm×5cm)が形成され幅が5mmとなる四角環状体を用意した。次いで、第2封止材を、対極の白金触媒層上に配置した後、溶融接着した。こうして対極に第2封止材を形成した。このとき、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂としては、第1封止材の形成に用いたポリオレフィン系ホットメルト樹脂と同様、ハイミラン(融点:98℃)を用いた。
【0117】
次いで、環状の無機封止部の内側に電解質を滴下した。このとき、電解質としては、ヨウ素/ヨウ化物イオンレドックス対を含有するイオン液体(ヘキシルイミダゾリウムアイオダイド)とメトキシプロピオニトリルとからなる電解質を用いた。
【0118】
そして、第1封止材を固定した作用極と、第2封止材を固定した対極とを、減圧環境下(500Pa)に置いた後、第1封止材と第2封止材とを重ね合わせた。そして、ヒータによって、3MPaで第1封止材及び第2封止材を加圧しながら160℃で加熱して溶融させて封止部を形成した。こうして色素増感太陽電池を得た。なお、得られた色素増感太陽電池の断面をSEMにて観察したところ、突起部と対極との間に樹脂封止部の一部が入り込んでいることが分かった。また樹脂封止部は、接着部に対し電解質と反対側にも拡張する拡張部を有しており、拡張部はFTO基板及び対極の両方に接着していることが分かった。
【0119】
(実施例2〜6)
本体部からの突起部の高さHを表1に示す通りとしたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。なお、実施例2〜6で得られた色素増感太陽電池の断面をSEMにて観察したところ、突起部と対極との間に樹脂封止部の一部が入り込んでいることが分かった。また樹脂封止部は、接着部に対し電解質と反対側にも拡張する拡張部を有しており、拡張部はFTO基板及び対極の両方に接着していることが分かった。
【0120】
(実施例7)
封止部を形成する際、第1封止材及び第2封止材を5MPaの圧力で加圧して突起部と対極とが接触するようにしたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。なお、実施例7で得られた色素増感太陽電池の断面をSEMにて観察したところ、樹脂封止部は、接着部に対し電解質と反対側にも拡張する拡張部を有しており、拡張部はFTO基板及び対極の両方に接着していることが分かった。
【0121】
(実施例8)
第1封止材を無機封止部に固定する際、第1封止材を、突起部の延び方向に沿った外周面と、本体部のうち突起部に対して電解質と反対側にあって且つ本体部に対しFTO基板と反対側にある表面のみを覆うように配置した後、加熱により溶融させて無機封止部に接着させることにより拡張部が形成されないようにしたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。なお、実施例8で得られた色素増感太陽電池の断面をSEMにて観察したところ、突起部と対極との間に樹脂封止部の一部が入り込んでいることが分かった。また樹脂封止部は、接着部に対し電解質と反対側に拡張する拡張部を有していないことも分かった。
【0122】
(実施例9)
突起部を、本体部におけるFTO基板と反対側の表面のうち多孔質酸化物半導体層から最も遠い位置に形成し、第1封止材を無機封止部に固定する際、第1封止材を、突起部の延び方向に沿った内周面と、本体部のうち突起部に対して電解質側にあって且つ本体部に対しFTO基板と反対側にある表面のみを覆うように配置した後、加熱により溶融させて無機封止部に接着させることにより拡張部が形成されないようにしたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。なお、実施例9で得られた色素増感太陽電池の断面をSEMにて観察したところ、突起部と対極との間に樹脂封止部の一部が入り込んでいることが分かった。また樹脂封止部は、接着部に対し電解質側に拡張する拡張部を有していないことも分かった。
【0123】
(比較例1)
本体部の上に突起部を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0124】
[耐久性についての評価]
色素増感太陽電池の耐久性について以下のようにして評価した。すなわち、まず実施例1〜9及び比較例1で得られた色素増感太陽電池について、85℃58%RH環境下で1000h放置した後の光電変換効率を測定し、下記式:
光電変換効率の低下率(%)=初期の光電変換効率(100%)−1000h放置後の光電変換効率)
に基づいて光電変換効率の低下率を算出した。結果を表1に示す。なお、光電変換効率の低下率が10%以下である場合には耐久性に優れるとして「合格」とし、10%を超える場合には耐久性に劣るとして「不合格」とした。
【0125】
【表1】
【0126】
表1に示す結果より、実施例1〜9の色素増感太陽電池は、耐久性の点で合格基準を満たしていた。これに対し、比較例1の色素増感太陽電池は、耐久性の点で合格基準を満たさないことが分かった。
【0127】
よって、本発明の色素増感太陽電池によれば、高温環境下においても、優れた耐久性を有することが確認された。