特許第5876930号(P5876930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5876930炎症性腸疾患の予防および治療のための薬物の調製におけるサルモネラフラゲリン誘導体の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876930
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】炎症性腸疾患の予防および治療のための薬物の調製におけるサルモネラフラゲリン誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20160218BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20160218BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   A61K37/02ZNA
   A61K9/02
   A61K9/08
   A61K9/14
   A61K9/20
   A61K9/28
   A61K9/48
   A61K47/02
   A61K47/26
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61P1/04
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-517394(P2014-517394)
(86)(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公表番号】特表2014-522819(P2014-522819A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】CN2012000097
(87)【国際公開番号】WO2013004069
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年1月16日
(31)【優先権主張番号】201110186065.6
(32)【優先日】2011年7月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514005456
【氏名又は名称】蘇州科景生物医薬科技有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】508007916
【氏名又は名称】中国人民解放軍軍事医学科学院放射及び輻射医学研究所
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF RADIATION MEDICINE, ACADEMY OF MILITARY MEDICAL SCIENCES, PEOPLE’S LIBRATION ARMY OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 成崗
(72)【発明者】
【氏名】李 軍懐
(72)【発明者】
【氏名】徐 陽
(72)【発明者】
【氏名】呉 永紅
(72)【発明者】
【氏名】李 偉光
(72)【発明者】
【氏名】張 艶春
(72)【発明者】
【氏名】高 艶
(72)【発明者】
【氏名】李 志慧
【審査官】 加藤 文彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−525472(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/130618(WO,A1)
【文献】 特表2009−520810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 9/02
A61K 9/08
A61K 9/14
A61K 9/20
A61K 9/28
A61K 9/48
A61K 47/02
A61K 47/26
A61K 47/32
A61K 47/36
A61K 47/38
A61P 1/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CZLC331と称するサルモネラフラゲリン誘導体を含有する、炎症性腸疾患(IBD)の予防または治療用医薬組成物
【請求項2】
前記IBDが潰瘍性大腸炎(UC)またはクローン病(CD)である、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
前記CZLC331が、Tatタンパク質伝達ペプチド、N末端からサルモネラフラゲリンのアミノ酸残基1〜176および402〜505を含み、該N末端からサルモネラフラゲリンのアミノ酸残基1〜176と402〜505がフレキシブルリンカーペプチドによって連結されている、請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項4】
前記医薬組成物が、注射剤、経口剤、浣腸剤、カプセル、腸溶コーティング錠、散剤または錠剤の形態にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が、カプセル、腸溶コーティング錠、散剤、または顆粒の形態にある場合、活性薬学的成分CZLC331は1〜35重量%存在し、注射用、経口用または浣腸用液体剤形の形態にある場合、CZLC331の濃度が2〜64g/Lである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物がタンパク質注射剤であり、前記医薬組成物がCZLC331(重量/体積の、発現された、比が5%(5g/100ml))、塩化ナトリウム(0.85%、すなわち、0.85g/100ml)および注射用水からなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
のステップを含む、CZLC331と称するサルモネラフラゲリン誘導体を含有する炎症性腸疾患(IBD)の予防または治療用医薬組成物の製造方法
1)CZLC296のコーディング遺伝子を合成するステップ、そのヌクレオチド配列は配列番号1で示され、ここで該CZLC296は、フレキシブルリンカーペプチドを介して、N末端1〜176アミノ酸残基とN末端402〜505アミノ酸残基を連結することにより構成される、
2)CZLC296の合成されたコーディング遺伝子を、Tatタンパク質伝達ペプチドのコーディング配列を保持する原核細胞発現ベクターにクローニングするステップ、pET28b−Tat−CZLC331と称する組換え発現ベクターが結果として生じる、これは、CZLC296コーディング遺伝子とTatタンパク質伝達ペプチドのコーディング配列の両方を保持し、サルモネラフラゲリン誘導体CZLC331をコードし、ここで、CZLC331のコーディング遺伝子のヌクレオチド配列は配列番号2で示される、
3)組換え発現ベクターpET28b−Tat−CZLC331を宿主細菌内に形質転換するステップ、
4)発現のために、前記組換え発現ベクターpET28b−Tat−CZLC331を保持する宿主細菌を誘導するステップ、ならびに
5)タンパク質CZLC331を得るために、産生されたタンパク質を単離および精製するステップ。
【請求項8】
前記ステップ4)において、前記CZLC331が、従来の原核細胞発現方法を使用して調製され、純度が95%を上回る、請求項に記載の製造方法
【請求項9】
前記ステップ2)において使用したTatタンパク質伝達ペプチドのコーディング配列を保持する前記原核細胞発現ベクターが、原核細胞発現ベクターpET−22b、pET−28またはpET−15から構築され、及び、ステップ3)において宿主細菌が大腸菌である、請求項またはに記載の製造方法
【請求項10】
更に以下のステップを含有し、前記医薬組成物が腸溶コーティング錠の形態にある、請求項7〜9のいずれか一項に記載の製造方法;
(重量で)、CZLC331 100、ラクトース 60、微結晶セルロース 20、カルボキシメチルスターチナトリウム 20、ポビドンK30 10を混合及び顆粒化し、その後、顆粒化された混合物にタルク粉を、顆粒化された混合物とタルク粉の重量比2500:50で添加し、得られたものを錠剤化に供し、その後、得られた錠剤を腸溶フィルムコーティング層で噴霧コーティングするステッ
【請求項11】
炎症性腸疾患(IBD)の予防または治療のための医薬組成物を製造するための、サルモネラフラゲリン誘導体CZLC331の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性腸疾患(IBD)の予防および治療における、医薬および薬物における組換えタンパク質の新たな適用、特にCZLC331と称するサルモネラ由来のフラゲリン誘導体の新たな適用に属する。
【背景技術】
【0002】
特発性潰瘍性大腸炎または慢性の非特異性潰瘍性大腸炎としても知られる潰瘍性大腸炎(UC)は、粘膜の浸潤および慢性非特異性炎症を伴う大腸の疾患である。主要な臨床症状は、腹痛、下痢、粘液便および血便であり、視神経炎、神経炎および骨粗鬆症を随伴する。治療が困難で、時間がかかり、再発しやすいので、世界保健機関(WHO)によって難病と指定された。現在、IBDを治癒させるためにアミノサリチル酸、グルココルチコイドおよび免疫抑制剤など様々な薬物があるが、不十分な有効性(特に重度のUCに対して)、遅い作用発現、長い治療期間および広範な副作用など多くの欠点を有する。したがって、効果的で、作用発現が迅速で、治療期間が短く、安全性が高く、副作用が少なく、IBD(特に、慢性の非特異性潰瘍性大腸炎)に対して簡便な薬物が緊急に必要とされている。
【0003】
サルモネラのフラゲリン誘導体の1つであるCBLB502は、造血系に対して保護効果を有し、高用量放射線損傷に対するマウスの生存時間を延長させ、低用量照射マウスの生存率を改善し得ることが示されている(Lyudmila G.Burdelyaら、An Agonist of Toll−Like Receptor 5 Has Radioprotective Activity in Mouse and Primate Models.、Science 2008年、320(5873):226〜230頁)。研究によって、サルモネラのフラゲリンタンパク質誘導体ならびにNおよびC末端に保存されたドメインを含有するその他の誘導体は放射線保護を有し、マウスの骨髄中の造血幹細胞の数を効果的に改善させることができ、致死的照射によって引き起こされるマウスの死を効果的に予防することが見出された。その機構は、NF−κBシグナル経路による抗アポトーシスの役割である可能性がある。これは、このタンパク質は抗放射線薬の開発に応用できることを意味する。抗放射線薬以外にサルモネラフラゲリン誘導体に関する報告はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lyudmila G.Burdelyaら、An Agonist of Toll−Like Receptor 5 Has Radioprotective Activity in Mouse and Primate Models.、Science 2008年、320(5873):226〜230頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、IBDの予防および治療において、CZLC331と称するサルモネラのフラゲリン誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
CZLC331は、本発明において、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)などのIBDに対して優れた予防および治療効果を有する。したがって、このタンパク質は、IBDの予防および治療のための候補薬物として開発することができる。
【0007】
本発明におけるCZLC331は、Tatタンパク質伝達ペプチド(Tat protein transduction peptide)、サルモネラフラゲリンのN末端からアミノ酸残基1〜176および402〜505を含む。融合タンパク質は、フレキシブルリンカーペプチドによって連結することができる。
【0008】
CZLC331は、従来の原核細胞発現を使用して調製することができ、その純度は95%を上回る。CZLC331の調製方法には、以下のステップが含まれる。
【0009】
1)CZLC296のコーディング遺伝子を合成し、ヌクレオチド配列は配列Iに示される。CZLC296は、N末端1〜176とN末端402〜505のアミノ酸残基との間のフレキシブルアームによって連結される。
【0010】
2)サルモネラフラゲリン誘導体CZLC296をコードするDNA配列を、Tatタンパク質伝達ペプチドのコーディング配列を保持する原核細胞発現ベクターにサブクローニングした。サルモネラフラゲリン誘導体CZLC296をコードする人工的に合成されたDNA配列を、Tatタンパク質伝達ペプチドのコーディング配列を保持する原核細胞発現ベクターにサブクローニングした。これにより、Tatタンパク質伝達ペプチドとサルモネラフラゲリン誘導体CZLC296のコーディングジーンの両方を保持する原核細胞発現ベクターを作製できる。フラゲリン誘導体はCZLC331と称され、ヌクレオチド配列を配列IIに示す。
【0011】
3)組換え発現ベクターpET28b−Tat−CZLC331を宿主細胞内に形質転換した。
【0012】
4)Tatタンパク質伝達ペプチドのコーディング配列およびCZLC296の原核細胞発現ベクターを保持する宿主細菌を誘導し、発現させた。
【0013】
5)組換えタンパク質を単離および精製し、CZLC331のタンパク質を得た。
【0014】
Tatタンパク質伝達ペプチドのコーディング配列を保持する原核細胞発現ベクターは、CZLC331、pET−22b、pET−28またはpET−15の調製における大腸菌の1つの原核細胞発現ベクターであり、pET28b−Tatが最も良い。CZLC331の原核細胞発現ベクターは、Tatタンパク質伝達ペプチドのコーディング配列を保持するpET28b−Tat−CZLC331である。
【0015】
宿主細菌は、ステップ3)において大腸菌BL2l(DE3)、大腸菌ER2566(DE3)、大腸菌BL2l(DE3)plysS、大腸菌JM109、大腸菌HB101または大腸菌Topl0である。最も良い宿主細菌は、大腸菌BL21(DE3)である。
【0016】
CZLC331タンパク質を含有する薬物は、注射剤、経口剤、浣腸剤、カプセル、腸溶コーティング錠、散剤または錠剤に調製することができ、本発明では、注射剤、浣腸剤または腸溶コーティング錠がより良い。
【0017】
前述の薬物は、薬学分野における従来の方法に従って、様々な剤形で投与することができる。
【0018】
CZLC331の活性薬学成分は、カプセル、腸溶コーティング錠、散剤、または顆粒中1〜35%であってもよい。
【0019】
CZLC331の濃度は、注射、経口および浣腸用液体剤形中2〜64g/Lであってもよい。
【0020】
必要ならば、吸収促進剤、界面活性剤、滑沢剤、安定化剤、希釈剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、希釈剤、吸着担体および賦形剤を含む1種または複数の薬学的に許容される賦形剤も、前記薬物に添加することができる。必要ならば、着色剤、甘味料および香味料も添加することができる。
【0021】
具体的に、薬物はタンパク質注射剤であり、この薬物の成分は、質量/体積の比が5%(5g/100ml)のCZLC331、塩化ナトリウム(0.85%、0.85g/100ml)および注射用水である。
【0022】
あるいは、薬物はコーティング錠であり、その成分の重量比は、CZLC331 100、ラクトース 60、微結晶セルロース 20、カルボキシメチルスターチナトリウム 20、ポビドンK30 10である。混合後の成分を粒状にする。次いで、均一に混合された錠剤を乾燥粒子2500:タルク錠剤化剤50によって作製し(重量比)、噴霧コーティングされた腸溶フィルムコーティング層をテーブルサイド(table side)に作製する。
【0023】
この薬物の用量は一般的に、CZLC331タンパク質0.2〜6.4mg/kg体重で、1日1〜2回投与され、期間は5〜10日間である。注射は、筋肉内注射、腹腔内注射または静脈内注射によって投与することができる。
【0024】
本発明では、IBDにおけるCZLC331の新たな適用を示す。CZLC331は、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)の投与によるヒト潰瘍性大腸炎の模倣実験を通して、IBDに対して明らかな予防および治療効果を有する。結果は、1)モデル群:マウスの摂食/摂水が著しく低下し、活動が低下し、便中に血液が伴う。結腸において鬱血、浮腫、出血および潰瘍が明らかに認められる。顕微鏡下で、細胞構造障害、杯状細胞の消失、リンパ球および好中球の浸潤が明らかに認められる。2)腹腔内投与群:マウスの摂食/摂水は正常まで回復し、活動は著しく増加し、便中の血液は低下する。結腸における明らかな鬱血、浮腫、出血および潰瘍は著しく低下する。さらに、顕微鏡下での細胞構造障害、杯状細胞の消失、リンパ球および好中球の浸潤は著しく低下する。実験結果によって、CZLC331の腹腔内注射は腸損傷における結腸の炎症に対して有効であり、マウスにおける炎症に保護的役割を果たしていることが示される。したがって、CZLC331タンパク質は、IBDに対して活性のある薬物として作製することが可能である。この薬物は以下の利点を有する:1)著しい効果(有効率は100%で、治癒率は70%である)、一方、臨床薬スルファサラジン(sulfasalazineis)の有効率は約90%にすぎず、著効率は50%のみであった;2)迅速な作用発現(投与後、作用発現まで24時間)、スルファサラジンでは約2週間、その後、症状は改善した;3)短い治療期間(治療は通常5〜10日間)、スルファサラジン治療は通常約6週間;4)安全(非毒性)、スルファサラジンアラニンを服用した患者はアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が上昇し、これらは肝毒性があることを示唆する;5)少ない副作用(著しい副作用がない)、しかし、スルファサラジン服用後では、悪心、発疹、好中球減少がある、6)簡便な処方(1日1回の腹腔内注射)、スルファサラジンでは経口的に3〜4g/日、1日3〜4回である。要約すると、CZLC331は、IBDの既存の治療薬の不十分な有効性、遅い作用発現、長い治療期間、副作用を解決することができ、患者の苦痛を著しく低下させ、身体的リハビリテーションを促進し、患者の生活の質を向上させることができる。これは本発明のIBDの予防および治療において重要な役割を果たし、広範な応用が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるモデル化において、CZLC331タンパク質0.2mg/kgで0.5時間治療した後のUCを有するマウスの結腸外観を示した図である。
図2】トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるモデル化において、CZLC331タンパク質0.2mg/kgで0.5時間治療した後のUCを有するマウスの結腸粘膜を示した図である。
図3】トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるモデル化において、CZLC331タンパク質0.2mg/kgで0.5時間治療した後のUCを有するマウスの結腸粘膜HE染色を示した図である。
図4】トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるモデル化において、様々な濃度のCZLC331タンパク質で0.5時間治療した後のUCを有するマウスの結腸外観および結腸粘膜を示した図である。
図5】トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるモデル化において、様々な濃度のCZLC331タンパク質で様々な時間治療した後のUCを有するマウスの結腸外観を示した図である。
図6】トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるモデル化において、様々な濃度のCZLC331タンパク質で様々な時間治療した後のUCを有するマウスの結腸外観および結腸粘膜を示した図である。
図7】トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるモデル化において、様々な濃度のCZLC331タンパク質で様々な時間治療した後のUCを有するマウスの結腸粘膜HE染色を示した図である。
図8】トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるモデル化において、CZLC331タンパク質3.2mg/kgで4時間治療した後のUCで、RT−PCRを使用したTLR1〜4遺伝子の発現を示した図である。
図9】トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるモデル化において、CZLC331タンパク質3.2mg/kgで4時間治療した後のUCで、RT−PCRを使用したTLR6〜9遺伝子の発現を示した図である。
図10】トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるモデル化において、モデル化0.5時間前にCZLC331タンパク質0.2mg/kgを与えた、UCを有するマウスの結腸外観を示した図である。
図11】トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるモデル化において、モデル化0.5時間前にCZLC331タンパク質0.2mg/kgを与えた、UCを有するマウスの結腸粘膜を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
サルモネラフラゲリンの新たな特性を研究し、新たな薬物として開発するために、CZLC331がUCおよびクローン病などのIBDにおいてTLRs発現を遮断し、優れた予防および治療効果を有することを見出した。
【0027】
腸上皮細胞は、TLR4の発現を下方制御することによって腸の免疫寛容を維持できることが報告された(Abreu MT、Vora P、Faure E、Thomas LS、Arnold ET、Ardit i M.、Decreased expression of Toll like receptor−4 and MD−2 correlates with intestinal epithelial cell protection against dysregulated proinflammatory gene expression in response to bacterial lipopolysaccharide.、J Immunol、2001年8月1日;167(3):1609〜16頁)。予期せぬことに、サルモネラフラゲリンは、UCの予防および治療に役割を果たしており、さらなる証拠によって、この効果は結腸におけるTLRの発現のダウン−レギュレーティングによって達成されることが示唆された。
【0028】
Toll様受容体(TLR)ファミリーは、ショウジョウバエTollタンパク質と相同性を有する受容体タンパク質で、パターン認識受容体に属する。主な機能は、病原体微生物の保存された構造を確認し、様々なシグナル伝達方法によって免疫系を改善することである。TLRファミリーは、抗感染免疫および先天性免疫において重要な役割を果たし、後天性免疫調節因子にも重要である。病原体を確認した後、TLRは活性化シグナルを細胞内に送達し、NF−κBを含む転写因子を活性化し、TL−1、IL−6、IL−8などを含む炎症反応促進因子(proinflammatory factors)の産生を誘導し、IL−12やTNFのような重要な炎症性因子(inflammatory factors)の発現レベルや病原体に対する殺傷レベル(killing level)をアップレギュレートする。IL−12は細胞性免疫応答におけるTおよびBリンパ球の誘導において主要調節因子である。これは、病原体に対するT細胞応答に特異的な生物学的アジュバントとして使用することができる。したがって、TLRファミリーは、免疫応答に関与するIL−12およびThl細胞の早期シグナルということができる。TLRと正常な細菌叢の間のバランスが壊れると、病理学的な腸の炎症が引き起こされる。特に、サルモネラフラゲリンは、結腸組織におけるTLRファミリーの発現のダウン−レギュレーティングに効果があり、UCの治療においてはその役割のため重要な機構であり得る。
【0029】
サルモネラフラゲリンの1〜176および402〜505アミノ酸のコーディング配列を合成し、全長331のサルモネラフラゲリンアミノ酸を原核細胞発現によって調製し、CZLC331と称した。これは、UCおよびクローン病などのIBDの優れた予防および治療となることがわかった。これはIBDの予防および治療に重要な関連性を提供する。
【0030】
詳細な実施形態および具体的な方法を以下に挙げるが、本発明の保護範囲は以下の実施形態に限定されない。本発明で使用した方法は、従来の方法である。
【実施例1】
【0031】
サルモネラフラゲリンCZLC331の調製
1.CZLC331を発現するための原核細胞発現ベクターpET28b−Tat−CZLC331の構築
1)CZLC296のコーディング遺伝子を合成し、ヌクレオチド配列は配列リスト1に示される。ヌクレオチド配列の長さは891bpであり、Beijing Bo Mai De Science and Technology Development Co.,Ltdによって合成された。遺伝子は、2%アガロースゲル電気泳動を使用して試験し、その結果、標的遺伝子891bpが予測された結果と一致することが示された。
【0032】
2)組換え発現ベクターpET28b−Tat−CZLC331の構築
a)CZLC296タンパク質のコーディング遺伝子をPCRによって増幅した。
【0033】
配列が891bpであるCZLC331のコーディング遺伝子は、従来のPCRを使用して増幅した。反応系は50μlである:プラスミド鋳型は0.5μlで、CZLC331コーディング遺伝子を有するクローニングベクターpGH−CZLC296であり、その方法は、CZLC296コーディング遺伝子をクローニングベクターpGHのSmaI制限部位に挿入する。10×dNTP 5μ1、10×Ex Taq緩衝液5μ1、上流および下流プライマー0.5μ1で、上流プライマー配列は5’−CGCGGGATCCATGGCTCAAGTTATCA−3’であり、リバースプライマー配列は5’−CCGCTCGAGTCTCAACAAAGACAAGTT−3’である。Ex Taq酵素0.25μ1、ddHO 38.25μl。PCRの反応条件は、95℃4分、95℃45秒、56℃30秒、72℃45秒、全30サイクルで、その後72℃で7分である。反応完了後、PCR生成物は1%アガロースゲル電気泳動を行い、その結果、891bpの増幅DNA断片は予測した結果と一致していることが示され、その後、標的断片を回収し、精製した。
【0034】
b)制限エンドヌクレアーゼを使用した標的遺伝子CZLC296およびpET28b−TaTベクターの消化。
【0035】
CZLC296およびpET28b−TaTベクターは、制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびXhoIを使用して消化した。pET28b−TaTベクターの構築物は、上流にNcoIおよび下流にNdeIを有するようにTAT配列を合成し、その後、制限エンドヌクレアーゼを使用してTAT配列およびpET28bを消化した。回収した断片をTDNAリガーゼおよび制限消化によって再生した。配列は、Invitrogen Co.,Ltdによって確認された。その後、消化した生成物をコンピテント細胞大腸菌DH5α内にTDNAリガーゼを使用して16℃で形質転換した。
【0036】
c)確認
培養増殖させたクローンを制限酵素による消化および配列決定によって確認した。
【0037】
配列決定の結果によって、得られた配列および挿入位置は正しく、Tatタンパク質伝達ペプチドおよびCZLC296のコーディング配列のための組換え発現ベクターを有していることが示され、pET28b−Tat−CZLC331と称した。N末端がCZLC296のTatタンパク質伝達ペプチドであるタンパク質はCZLC331と称した。このコーディングタンパク質配列のヌクレオチド配列を配列リストNo.2に示す。
【0038】
2.形質転換および細菌の回収
正しく構築された原核細胞発現ベクターpET28b−Tat−CZLC331を大腸菌BL21(DE3)内に形質転換し、次にKana100μg/mlを含有するLBプレートにコーティングした。その後、クローンをKana100μg/mLを含有する5mL LBに接種し、細菌を完全に回収するため220rpmで16時間振盪した。
【0039】
3.原核細胞発現ベクターpET28b−Tat−CZLC331の誘導性発現。
【0040】
細菌を回収し、OD600=0.8まで希釈した。次に、細菌(5ml)をKana(最終濃度100μg/ml)を含有するLB150mlに接種した。細菌を37℃、220rpmで約4〜5時間振盪した。OD600が0.6〜1.0の時に、誘導剤IPTG(最終濃度1mM)を細菌に迅速に添加し、30℃、220rpmで8時間誘導させ発現させた。
【0041】
4.CZLC331タンパク質の調製
誘導し発現した細菌は、4℃、12000rpm、10分間で収集した。細菌を20mMリン酸ナトリウム緩衝液を使用して超音波によって壊して、CZLC331タンパク質を調製し、その後CZLC331タンパク質を分離して精製した。
【0042】
5.CZLC331タンパク質の分離および精製
未精製のCZLC331を直接HisTrap HP 5mlカラム(GE Corporationから購入)に添加し、その後、前記の緩衝液4〜5カラム体積を使用してピークベースライン(peak baseline)を洗浄した。最後に、タンパク質は溶出緩衝液(20mM NaPO+0.5M NaCl+0.5M イミダゾール、pH7.4)を使用して洗浄し、その後CZLC331を得、純度は95%を上回っていた。
【実施例2】
【0043】
IBDを治療するためのCZLC331の効果
実験動物:雄BALB/cマウス(7〜8週齢、25±5g)を軍事医学科学院の実験動物センター(北京、中華人民共和国)から得た。マウスには滅菌した食餌および水を与え、12時間明/12時間暗サイクルにした。全動物実験は、軍事医学科学院の動物実験委員会によって承認された。
【0044】
試薬:2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBSはSigma Chemical Co.から購入した)、CZLC331(実施例1において調製)、RT PCRキット (IDはFSK100であり、Toyobo Biotechnology Co.,Ltd.から購入)。
【0045】
モデルの作製:麻酔器を使用してマウス(36時間絶食)をイソフルランで麻酔した。IBDを誘導するため、38%エタノール中のTNBS(Sigma−Aldrich)150mg/kg(腸上皮バリアを破壊するため)を、1mlシリンジを装着した、直径2.0mm、長さ約10cmのシリコンチューブのマウス強制栄養針(gavage needle)によって投与し、強制栄養針は先端が肛門縁の近位4cmに位置するまで直腸内に進めた。全注射量は100μlであった。
【0046】
実験動物群:モデル群、治療群および対照群(n=8)。対照マウスには、前述と同じ方法を使用して38%エタノールのみを投与し、2日間通常に給餌した。治療群:BALB/cマウスは、TNBS投与の0.5時間後、CZLC331(3.2mg/kg)で治療的に処置した。同時に、BALB/cマウスは、TNBS投与の0.5時間から8時間後にCZLC331(0.2〜6.4mg/kg)で治療的に処置し、2日間通常に給餌した。モデル群のマウスは、TNBS投与後、2日間通常に給餌した。
【0047】
マウスは、下痢の出現、体重の変化および全体の死亡数をモニターした。TNBS投与2日間の実験終了時に、生存したマウスを殺処分し、血液試料を心臓穿刺によって収集し、結腸の7cm部分を肉眼的(図1図4左および図5)および顕微鏡的(図2図4右および図6)損傷評価のために取り出した。そして、生理食塩水を使用して洗浄した後の結腸の端を追跡試験のために−80℃で凍結維持した。
【0048】
1.結果によって、モデルマウスにおいて摂食/摂水および活動は著しく低下し、便中に血液があることが示された。モデル化によって、著しい鬱血、浮腫、出血および潰瘍が認められた。TNBSモデル化における、CZLC331タンパク質0.2mg/kgでの0.5時間治療後の、潰瘍性大腸炎を有するマウスの結腸外観および結腸粘膜を図1および2に示し、Aは対照群、Bはモデル群、Cは治療群である。結果は、モデル群において、顕微鏡下で、細胞の構造障害、杯状細胞の消失、リンパ球および好中球の浸潤があった。TNBSモデル化において、CZLC331タンパク質0.2mg/kgでの0.5時間治療後の潰瘍性大腸炎を有するマウスの結腸粘膜HE染色を図3に示し、Aは対照群、Bはモデル群、Cは治療群である。便中の血液、摂食の減少および動きの減少の現象は低下した。鬱血、浮腫、出血の現象は低下し始めた、例えば、図1図2図4(TNBSモデル化において様々な濃度のCZLC331タンパク質での0.5時間治療後の潰瘍性大腸炎を有するマウスの結腸外観および結腸粘膜。A.CZLC331 0.2mg/kg、B.CZLC331 0.4mg/kg、C.CZLC331 0.8mg/kg、D.CZLC331 1.6mg/kg)、図5(TNBSモデル化において様々な濃度のCZLC331タンパク質で様々な時間治療した後の潰瘍性大腸炎を有するマウスの結腸外観。A.CZLC331 0.2mg/kg、B.CZLC331 0.4mg/kg、C.CZLC331 0.8mg/kg、D.CZLC331 1.6mg/kg、E.CZLC331 3.2mg/kg、F.CZLC331 6.4mg/kg)図6(TNBSモデル化において様々な濃度のCZLC331タンパク質で様々な時間治療した後の潰瘍性大腸炎を有するマウスの結腸外観および結腸粘膜。A.CZLC331 0.2mg/kg、B.CZLC331 0.4mg/kg、C.CZLC331 0.8mg/kg、D.CZLC331 1.6mg/kg、E.CZLC331 3.2mg/kg、F.CZLC331 6.4mg/kg)。細胞の構造はきちんと整列し、杯状細胞の数は少なく、リンパ球および好中球浸潤が消失した(図3および図7)。
【0049】
対照マウスでは、食餌摂取および水摂取は正常で、便中の血液および活動の低下はなかった。細胞はきちんと列に並び、杯状細胞の減少およびリンパ球および好中球の浸潤はなかった。
【0050】
2.組織学的検査:結腸試料を4%緩衝化ホルマリンで一晩固定し、その後70%エタノールに移し、切片を作製するためにパラフィンに封入し、次いで組織学的差違を調べるためにヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)で染色した。
【0051】
TNBSモデル化においてCZLC331タンパク質0.2mg/kgで0.5時間治療した後の潰瘍性大腸炎を有するマウスの結腸粘膜HE染色を図3に示す。TNBSモデル化において様々な濃度のCZLC331タンパク質で様々な時間治療した後の潰瘍性大腸炎を有するマウスの結腸粘膜HE染色を図7に示す(A.CZLC331 0.2mg/kg、B.CZLC331 0.4mg/kg、C.CZLC331 0.8mg/kg、D.CZLC331 1.6mg/kg、E.CZLC331 3.2mg/kg、F.CZLC331 6.4mg/kg)。細胞はきちんと列に並び、杯状細胞の減少およびリンパ球および好中球の浸潤がないことは、十分な治療結果であったことを意味する。
【0052】
3.TLRファミリーの発現
結腸試料を指示された時間に取り出し、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)で洗浄し、小片に切断した。対照群、モデル化群および治療群である結腸試料の全RNAをTotalRNAキットII(Omega、日本)によって、製造者の使用説明書に従って抽出し、次いで逆転写システム(Reverse Transcription System(Sigma、USA))によって逆転写した。その後、TLRsおよびβ−アクチンを、以下のプライマー(表1)を使用してPCRによって増幅した。PCRの反応系は50μlで、Ex Taq 0.25μl、10×緩衝液 5μl、dNTP 5μl、鋳型 2μl、上流および下流プライマー 1μ1、ddHO 35.75μlであった。PCRの反応条件は、95℃5分、95℃45秒、62℃45秒、72℃1分、全25サイクルで、その後72℃で5分である。PCR生成物は、2%アガロースゲル電気泳動に続いて画像分析ソフトウェアによって確認した。
【0053】
結果は、TLRファミリーの発現は、図8および図9において、CZLC331治療後のモデル群で著しく異なっていた。TLR2、TLR3、TLR4、TLR8およびTLR9の発現はモデル群では著しく上昇し、発現はCZLC331療法後に変化した。TLR6およびTLR7の発現もモデル群で著しく上昇したが、CZLC331療法後に著しい差違はなかった。
【0054】
治療および機構はまた、TLRファミリーの発現の低下と関連する可能性がある。さらに、IBDのCZLC331による療法がTLRファミリーの経路によって有効となり、これはIBD治療用の薬物となり得ることが示唆された。
【0055】
【表1】
【実施例3】
【0056】
IBDに対するCZLC331タンパク質の予防効果
実験動物:実施例2と同じ。
【0057】
試薬:実施例2と同じ。
【0058】
モデル作製:実施例2と同じ。
【0059】
実験動物群:モデル群、予防群および対照群(n=8)。予防群:BALB/cマウスはTNBS投与前にCZLC331(3.2mg/kg)で治療的に処置し、次いで、マウスにTNBSおよび通常の食餌2日間を与えた。モデル群には、TNBS投与後、2日間通常に給餌した。対照マウスには、前述と同じ方法を使用して38%エタノールのみを投与し、通常に給餌した。
【0060】
試験内容および試験方法:実施例2と同じ。
【0061】
結果によって、モデルマウスにおいて摂食/摂水および活動は著しく低下し、便中に血液があることが示された。モデル化において著しい鬱血、浮腫、出血および潰瘍が認められた(図10、A.対照群、B.モデル化群、C.予防群)。便中の血液、摂食の減少および動きの減少は低下し、鬱血、浮腫、出血は低下し始めた(図11、A.対照群、B.モデル化群、C.予防群)。これらの結果は、CZLC331がIBDの予防に予防効果を有し、IBDを予防するための薬物となり得ることを示した。
【実施例4】
【0062】
CZLC331注射の調製
1.組成物:CZLC331注射(5質量/体積%(mg/mL)CZLC331タンパク質)、0.85%塩化ナトリウムおよび注射用水。
【0063】
2.CZLC331タンパク質注射の調製法:
1)正しく構築された原核細胞発現ベクターpET28b−Tat−CZLC331を大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、次にKana100μg/mlを含有するLBプレートにコーティングした。その後、クローンをKana100μg/mlを含有する5mL LBに接種し、細菌を220rpmで16時間振盪した。
【0064】
2)細菌を回収し、OD600=0.8まで希釈した。次いで、細菌(5ml)をKanaを含有するLB150mlに接種した(Kana最終濃度100μg/ml)。細菌を37℃、220rpmで約4〜5時間振盪した。誘導剤IPTG(最終濃度1mM)を、OD600が0.6〜1.0の時に細菌に迅速に添加し、30℃、220rpmで8時間誘導させ発現させた。
【0065】
3)誘導し発現した細菌は、4℃、12000rpm、10分間で収集した。細菌は20mMリン酸ナトリウム緩衝液を使用して超音波で破壊してCZLC331タンパク質を調製した。未精製のCZLC331を直接HisTrap HP 5mlカラム(GE Corporationから購入)に添加し、その後、前記の緩衝液4〜5カラム体積を使用してピークベースラインを洗浄した。最後に、タンパク質は溶出緩衝液(20mM NaPO+0.5M NaCl+0.5M イミダゾール、pH7.4)を使用して洗浄し、その後CZLC331を得た。
【0066】
4)CZLC331タンパク質を注射水に溶解し、次いで塩化ナトリウムを添加し、均一に撹拌した。0.3%(質量/体積)で乾燥加熱処理した活性炭を、15分間吸着させるためにこの溶液に添加し、この溶液を濾過して透明にして保管した。フィルターは3種類のフィルター:脱炭用のチタンフィルター、0.45μmカートリッジフィルターフィルタリングおよび0.22μmドラムフィルタークリーニング濾過器を含む。
【実施例5】
【0067】
CZLC331タンパク質腸溶コーティング錠の調製
1.CZLC331タンパク質100gを計量し、100メッシュの篩に通す。ラクトース60g、微結晶セルロース20g、カルボキシメチルスターチナトリウム20g、ポビドンK30 10gを80メッシュの篩に通す。主要な薬物および付属物を等分に増加させる(equal increments)原理に従って混合し、その後その他の材料を30%体積比で添加した。最後に、薬物を20メッシュに通して顆粒化し、湿式顆粒を得る。
【0068】
2.CZLC331タンパク質を55〜65℃で3時間乾燥し、20メッシュで篩った後乾燥ペレットを得た。タルク50gをCZLC331のペレット2500gに添加し、混合した。混合されたタンパク質の含量を決定した。決定したペレットを速度および加圧に適する錠剤機に送り、直径1.2cmのプラトデ(platode)CZLC331タンパク質錠に圧縮した。
【0069】
3.腸溶コーティングは、platode CZLC331錠に約1.0mm塗布した。コーティング材料はE0BS68で、この腸溶コーティングは気密で水分を含み、コーティング強度は強く、胃液に耐性がある。薬物の効果的かつ安全な放出は、溶液のpHを変化させることによって実施される。
【0070】
有効性の分析:
活性成分としてのCZLC331タンパク質を、IBDを予防し治癒させるための薬物に調製した。これは以下の特性を有する:
1)高効率:実験データは、実施例2および実施例3において、摂食および活動が少なく、便中の血液がある動物は全て、治療群および予防群において著しく改善されたことを示している。これらの結果は、有効率が100%であることを示した。回収した結腸粘膜の有効率は、治療群では75%である。臨床薬スルファサラジンの有効率は約90%にすぎず、著効率は50%のみであった。
【0071】
2)迅速な作用発現:実験データは、実施例2および実施例3において全動物が治療後24時間で効果を示し、一方、スルファサラジンの服用では約2週間かかることを示す。
【0072】
3)治療期間は短い(通常5〜10日):スルファサラジン治療は一般的に約6週間である。この薬物を使用する治療期間は1〜2日であり、スルファサラジンの効果はほぼ1週間で、臨床的作用発現は6週間である。したがって、治療期間は本発明では5〜10日である。
【0073】
4)高い安全性(非毒性):スルファサラジンを服用した患者のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は増加したので、肝毒性があることが示唆される。CZLC331はタンパク質薬に属し、抗放射線薬として使用されており、身体に対して非毒性である。
【0074】
5)副作用(著しい副作用はない):スルファサラジン服用後、悪心、発疹、好中球減少があるが、これはタンパク質薬で、抗放射線薬として使用されており、身体に対して著しい副作用はない。
【0075】
6)簡便(1日1回の腹腔内注射):スルファサラジンの使用は経口的に3〜4g/dで、1日3〜4回に分ける必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、IBDの予防および治療において、サルモネラCZLC331のフラゲリン誘導体を提供する。これは、有効性が高く、作用発現が早く、治療期間が短く、非毒性で、副作用が少なく、処方が簡便である。CZLC331は、IBDの既存の治療薬の不十分な有効性、遅い作用発現、長い治療期間、副作用を解決することができ、患者の苦痛を著しく低下させ、身体的リハビリテーションを促進し、患者の生活の質を向上させることができる。CZLC331は本発明におけるIBDの予防および治療において重要な役割を果たし、広範な応用が見込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]