(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉄道車両の乗降口に設置されて、ドアリーフの開閉動作、及び前記鉄道車両の幅方向に前記ドアリーフを移動させるプラグ動作を行うプラグドア装置において、前記ドアリーフを含むドア構造として用いられる、鉄道車両用プラグドアであって、
前記鉄道車両における側壁構造部である側構体において前記乗降口を構成する部分に対して、機械的締結構造によって取り付けられる枠体と、
前記乗降口を開閉する前記ドアリーフと、
前記ドアリーフ及び前記枠体の少なくとも一方に取り付けられて、前記ドアリーフが前記乗降口を閉鎖する際に前記ドアリーフ及び前記枠体の両方に対して密着するシール部材と、
を備え、
前記ドアリーフと前記枠体とを仮組立てするために、仮組立て用ネジが螺合可能なネジ穴が前記ドアリーフに形成され、かつ、前記仮組立て用ネジが貫通可能な貫通孔が前記枠体に形成され、
前記ネジ穴および前記貫通孔は、前記シール部材に対して前記乗降口の中央側に配置されていることを特徴とする、鉄道車両用プラグドア。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。本発明は、鉄道車両の乗降口に設置されて、ドアリーフの開閉動作、及び鉄道車両の幅方向にドアリーフを移動させるプラグ動作を行う鉄道車両用プラグドア装置、及び鉄道車両用プラグドア装置においてドア構造として用いられる鉄道車両用プラグドアとして適用できるものである。尚、本実施形態では、ドアリーフを1枚有する構成の片引きのドア構造に関して本発明が適用される形態を例にとって説明する。しかし、この例に限らず、ドアリーフを2枚有する構成の両引きの引き分けドア構造に関して本発明が適用されてもよい。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る鉄道車両用プラグドア装置1(以下、単に「プラグドア装置1」とも称する)の全体を示す模式図である。
図2は、
図1のA−A線矢視位置から見たプラグドア装置1を示す模式図である。また、
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る鉄道車両用プラグドア2(以下、単に「プラグドア2」とも称する)は、プラグドア装置1においてドア構造として用いられる。
【0025】
図1及び
図2に示すプラグドア装置1は、ドアリーフを1枚有する構成の片引きのドア構造としてのプラグドア2を含むプラグドア装置として構成されている。プラグドア装置1は、鉄道車両の乗降口101に設置される。
図1は、鉄道車両の内側から見た模式図であり、鉄道車両の乗降口101にプラグドア装置1が設置された状態を示す図である。
図2では、鉄道車両における側壁構造部である側構体100の一部が、二点鎖線で図示されている。一方、
図1では、側構体100の図示は省略されている。尚、側構体100は、複数の構造部材が溶接によって接合されることで組み立てられた構造を有するとともに、屈曲した部分を含む側構体として構成されている。
【0026】
また、
図1及び
図2は、プラグドア装置1或いは側構体100の一部について模式的に図示しており、本実施形態の説明の趣旨に関連しない部材、部品、等の図示が適宜省略されている。また、後述する
図3乃至
図10についても同様に、模式的に図示されており、本実施形態の説明の趣旨に関連しない部材、部品、等の図示が適宜省略されている。
【0027】
以下、プラグドア装置1及び、そのプラグドア装置1に用いられるプラグドア2について説明する。尚、以下の説明においては、まず、プラグドア装置1について説明し、次いで、プラグドア2について説明する。
【0028】
図1及び
図2に示すプラグドア装置1は、ドア構造としてのプラグドア2のドアリーフ11の開閉動作、及び鉄道車両の幅方向にドアリーフ11を移動させるプラグ動作を行う装置として構成されている。
図1及び
図2は、ドアリーフ11が乗降口101を閉鎖した状態を示している。また、
図2では、乗降口101が開放された状態のドアリーフ11の位置についても、二点鎖線で図示されている。尚、上述した鉄道車両の幅方向(以下、「車幅方向」とも称する)とは、鉄道車両の前後方向及び上下方向に対して垂直な方向であり、
図2において両端矢印Dで示される方向である。鉄道車両の前後方向は、鉄道車両の進行方向に平行な方向である。
【0029】
プラグドア装置1は、プラグドア2、ドア駆動機構21、ガイドレール22、引き込みアクチュエータ23、固定ベース、スライドベース、等を備えて構成されている。尚、固定ベース及びスライドベースは、図示が省略されている。
【0030】
固定ベースは、側構体100に取り付けられ、スライドベース及びドア駆動機構21を支持する支持部材として設けられている。固定ベースは、側構体100に対して相対移動しないように固定されている。また、固定ベースには、例えば、スライドベースを車幅方向にスライド移動自在に支持するためのレール機構が設けられている。
【0031】
スライドベースは、固定ベースに設置されており、固定ベースに対して車幅方向にスライド移動自在に設置されている。スライドベースには、例えば、固定ベースのレール機構に対して転動して移動する車輪が設けられている。また、スライドベースには、ドア駆動機構21の一部が設置されている。これにより、プラグドア装置1は、ドア駆動機構21の作動の際に、後述のガイドレール22による誘導に伴って、ドア駆動機構21の一部がスライドベースとともに固定ベースに対して車幅方向に移動可能に構成されている。
【0032】
図3は、
図1の一部を拡大して示す図であって、プラグドア装置1の上部を示す模式図である。
図1乃至
図3に示すドア駆動機構21は、ドアリーフ11を開閉駆動する機構として設けられている。そして、ドア駆動機構21は、乗降口101の上部の近傍に設置され、二点鎖線で示す収納空間24を区画する筐体(図示を省略)にスライドベースとともに収納されている。
【0033】
ドア駆動機構21は、開閉駆動モータ25、駆動プーリ26、従動プーリ27、ベルト28、ガイドパイプ29、ガイドブロック30、ドアハンガー31、リニアガイド51、等を備えて構成されている。開閉駆動モータ25及び従動プーリ27は、固定ベースに対して固定されている。ガイドパイプ29は、スライドベースに対して固定されている。
【0034】
開閉駆動モータ25は、電動モータとして設けられ、駆動プーリ26を駆動する。駆動プーリ26は、例えば、開閉駆動モータ25の出力軸に連結され、開閉駆動モータ25の出力軸とともに回転するように構成されている。従動プーリ27は、ベルト28を介して駆動プーリ26の駆動力が伝達され、駆動プーリ26の回転に伴って回転するように構成されている。
【0035】
ベルト28は、駆動プーリ26及び従動プーリ27に対して巻き掛けられた無端状の周回ベルトとして構成されている。駆動プーリ26及び従動プーリ27に巻き掛けられたベルト28は、駆動プーリ26と従動プーリ27との間において、鉄道車両の前後方向に対して略平行に延びるように配置されている。また、ベルト28は、リニアガイド51を介してガイドブロック30に対して相対変位可能に連結されている。
【0036】
ガイドパイプ29は、中空円筒状の管材として設けられており、その長手方向である軸方向が鉄道車両の前後方向に対して略平行に延びるように配置されている。ガイドパイプ29の両端部は、スライドベースに対して固定されている。
【0037】
ガイドブロック30は、ガイドパイプ29が挿通される円形断面の貫通孔が設けられたブロック部材として設けられている。そして、ガイドブロック30は、ガイドパイプ29に対して、ガイドパイプ29の軸方向に沿ってスライド移動自在に設置されている。また、ガイドブロック30は、リニアガイド51を介して、ベルト28に連結されている。
【0038】
リニアガイド51は、ガイドブロック30とベルト28とを互いに相対変位可能に連結する連結機構として設けられている。そして、リニアガイド51は、ベルト28の周回方向における動作時に、ガイドブロック30のベルト28に対する車幅方向への相対変位を許容するように構成されている。また、リニアガイド51は、リニアスライド支持部51a、ベルト取付部51b、リニアスライダ51c、等を備えて構成されている。
【0039】
リニアスライド支持部51aは、ガイドブロック30に対して固定されている。そして、リニアスライド支持部51aには、ブロック状に設けられたスライダ51cをスライド支持するレール状のガイド部が設けられている。このガイド部は、リニアスライド支持部51aにおいて、直線状に延びるように設けられている。これにより、スライダ51cがリニアスライド支持部51aに対して直線方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。
【0040】
ベルト取付部51bは、ベルト28に対して固定されて取り付けられる部分を有するとともに、ベルト28とスライダ51cとを連結する部材として設けられている。ベルト取付部51bにおいてベルト28に取り付けられる部分は、駆動プーリ26及び従動プーリ27の間で平行に延びる一対の帯状部分の一方において、ベルト28に対して固定されている。
【0041】
上記の構成により、ベルト28の周回方向における動作時に、ベルト28とともに鉄道車両の前後方向に変位するベルト取付部51bに固定されたスライダ51cに対して、リニアスライド支持部51aが車幅方向にスライド移動可能となる。そして、後述するガイドレール22による誘導に伴ってドアハンガー31とともにガイドブロック30が車幅方向に移動すると、ガイドブロック30に固定されたリニアスライド支持部51aがスライダ51cに対して車幅方向にスライド移動することになる。このように、ベルト28の周回方向における動作時に、ベルト28に対するガイドブロック30の車幅方向における相対移動が許容されることになる。
【0042】
ドアハンガー31は、ドアリーフ11を吊下げた状態でこのドアリーフ11を支持するとともに、ガイドブロック30とドアリーフ11とを連結する部材として設けられている。ドアハンガー31は、例えば、屈曲部分を有するとともに板状に延びる部材によって構成されている。ドアハンガー31は、その一方の端部側がガイドブロック30に固定され、その他方の端部側がドアリーフ11に固定されている。これにより、ドアハンガー31は、ガイドブロック30とともに移動し、ドアリーフ11を駆動するように構成されている。
【0043】
ドア駆動機構21は、上述した構成を備えていることにより、ドアリーフ11を開閉駆動可能に構成されている。即ち、ドア駆動機構21の作動の際には、開閉駆動モータ25が作動することで、駆動プーリ26が回転し、駆動プーリ26及び従動プーリ27に巻き掛けられたベルト28が周回方向に変位する。これに伴い、リニアガイド51を介してベルト28に連結されたガイドブロック30が、スライドベースに支持されたガイドパイプ29に誘導されながら移動する。そして、リニアガイド51を介してベルト28に対して車幅方向に相対変位可能に連結されたガイドブロック30がドアハンガー31とともに移動し、ドアハンガー31とともにドアリーフ11が移動することになる。これにより、ドアリーフ11の開閉動作が行われることになる。
【0044】
ガイドレール22は、ドアハンガー31の移動方向をガイドするレール部材として設けられている。そして、ガイドレール22は、車幅方向におけるドアリーフ11の移動をガイドする本実施形態のガイド機構として設けられている。ガイドレール22は、固定ベース或いは側構体100に対して固定されている。ガイドレール22は、例えば、細長い板状の部材において長手方向に平行に延びる両縁部分が折り曲げられることで溝状の凹み面が形成された部材として構成されている。
【0045】
また、ガイドレール22は、溝状の凹み面が下方に向かって開口した状態で、水平方向に延びるように、固定ベース或いは側構体100に設置される。そして、ガイドレール22には、上記の凹み面において、ドアハンガー31に対して回転自在に取り付けられたローラ32が転動する転動面が設けられている。ガイドブロック30とともにドアハンガー31が移動する際に、ローラ32がガイドレール22の転動面に沿って転動することで、ドアハンガー31及びガイドブロック30の移動方向が、ガイドレール22に沿った方向にガイドされることになる。尚、ローラ32は、ドアハンガー31の上部に設けられ、ドアハンガー31に対して、鉛直方向に軸方向が延びる回転軸を中心として回転自在に取り付けられている。また、ローラ32は、ガイドレール22の凹み面の内側に挿入された状態で配置されている。
【0046】
また、ガイドレール22には、開閉動作用レール部分22aと、プラグ動作用レール部分22bとが設けられている。開閉動作用レール部分22aは、鉄道車両の前後方向に沿って平行に長く延びる部分として設けられている。プラグ動作用レール部分22bは、開閉動作用レール部分22aの長手方向における一方の端部側に設けられ、開閉動作用レール部分22aに対して屈曲して斜めに延びる部分として設けられている。開閉動作用レール部分22a及びプラグ動作用レール部分22bのいずれにも、滑らかに連続する上記の転動面が形成されている。
【0047】
また、プラグ動作用レール部分22bは、ドア駆動機構21によるドアリーフ11の開閉駆動時に、ドアリーフ11を車幅方向に移動させるプラグ動作のために設けられている。このため、プラグ動作用レール部分22bは、開閉動作用レール部分22aに対して、戸先側に配置されている。ここで、戸先側は、ドアリーフ11が閉鎖される際に移動する方向におけるドアリーフ11の端部側、即ち、ドアリーフ11の閉方向における端部側となる。尚、戸尻側は、ドアリーフ11が開放される際に移動する方向におけるドアリーフ11の端部側、即ち、ドアリーフ11の開方向における端部側となる。
【0048】
上記のように、ガイドレール22が設けられていることで、ドア駆動機構21の作動時に、ドアリーフ11の開閉動作及びプラグ動作が円滑に行われることになる。例えば、ドアリーフ11が閉鎖された状態から開放される際には、ドア駆動機構21が作動してドアハンガー31が移動を開始すると、ドアハンガー31とともにローラ32が移動する。ローラ32は、ガイドレール22に沿って転動しながら移動する。そして、ローラ32がプラグ動作用レール部分22bに沿って移動する際には、ローラ32とともに、ドアハンガー31、ガイドブロック30、ガイドパイプ29、リニアガイド51のリニアスライド支持部51a、及びドアリーフ11が車幅方向に移動することになる。また、このとき、ドア駆動機構21の一部が設置されたスライドベースが、固定ベースに対して車幅方向にスライド移動する。このように、ドアリーフ11のプラグ動作が行われることになる。尚、ドアリーフ11が閉鎖される場合のプラグ動作は、上記と反対方向に移動することで行われることになる。
【0049】
図4は、
図2の一部を拡大して示す図であって、引き込みアクチュエータ23の近傍を示す模式図である。
図1乃至
図4に示す引き込みアクチュエータ23は、ドアリーフ11が閉鎖された際に、ドアリーフ11を側構体100側に引き込む方向に向かって押し付けるように付勢するアクチュエータとして構成されている。引き込みアクチュエータ23の作動によってドアリーフ11が引き込まれる方向に付勢される動作は、例えば、ドアリーフ11の閉鎖時のプラグ動作が完了したタイミングで行われる。
【0050】
引き込みアクチュエータ23は、側構体100に設置されている。そして、引き込みアクチュエータ23は、引き込み駆動モータ33、小径の平歯車34、大径の平歯車35、回転軸36、複数のラッチ部材37、等を備えて構成されている。
【0051】
引き込み駆動モータ33は、電動モータとして設けられ、平歯車34及び平歯車35を介して、回転軸36をその中心軸線を中心として回転駆動するように構成されている。尚、回転軸36は、その中心軸線を中心とする回転方向における所定の角度範囲で回転駆動される。平歯車34は、外周に歯が形成され、引き込み駆動モータ33の出力軸に連結されている。そして、平歯車34は、引き込み駆動モータ33の出力軸とともに回転するように構成されている。
【0052】
平歯車35は、回転軸36の中心軸線を中心とする回転方向に回転可能に支持された歯車として設けられている。そして、平歯車35は、回転軸36の中心軸線を中心とする円の円弧状に延びるように配置される外周部分を有している。この外周部分には、平歯車34に噛み合う歯が形成されている。
【0053】
回転軸36は、その中心軸線が上下方向に沿って延びるように設置されている。回転軸36の上端部には、平歯車35が取り付けられている。
図5は、
図1のB−B線矢視位置から見たプラグドア装置1の一部の断面を示す模式図である。
図5に示すように、回転軸36は、側構体100に対して、ブラケット38を介して、取り付けられている。例えば、ブラケット38は、上下方向に沿って3か所に設けられており、回転軸36は、側構体100に対して、3個のブラケット38を介して取り付けられている(
図1を参照)。そして、回転軸36は、各ブラケット38に対して回転自在に支持されており、その中心軸線を中心とする回転方向において回転自在に設置されている。
【0054】
ラッチ部材37は、回転軸36の中心軸線を中心として回転軸36とともに回転するように設けられ、ドアリーフ11を車幅方向における内側に引き込んで保持するための部材として設けられている。ラッチ部材37は、回転軸36の上下方向に沿って複数設けられ、本実施形態では、3つ設けられている。そして、各ラッチ部材37は、その一方の端部が回転軸36に対して片持ち状に固定されている。これにより、回転軸36の回転動作とともに、各ラッチ部材37も回転するように構成されている。尚、
図5では、ドアリーフ11が閉鎖した状態におけるラッチ部材37の位置が実線で図示され、ドアリーフ11が解放された状態におけるラッチ部材37の位置が二点鎖線で図示されている。
【0055】
また、ラッチ部材37の他方の端部、即ち、ラッチ部材37における回転軸36に固定されている端部とは反対側の端部には、ドアリーフ11に設けられた引き込み用ローラ39に係合する凹み部37aが設けられている。引き込み用ローラ39は、ドアリーフ11の戸尻側の部分に設けられている。また、引き込み用ローラ39は、ドアリーフ11の上下方向において、各ラッチ部材37に対応する位置に設けられ、複数(本実施形態では、3つ)設けられている。
【0056】
引き込みアクチュエータ23は、上述した構成を備えていることにより、ドアリーフ11が閉鎖された際に、ドアリーフ11を側構体100側に引き込む方向に向かって押し付けるように付勢するように設けられている。まず、ドアリーフ11が閉鎖された際、図示が省略されたコントローラからの指令信号に基づいて、引き込み駆動モータ33が作動する。これに伴い、引き込み駆動モータ33の出力軸に連結された平歯車34が回転方向において回転し、平歯車34に噛み合う平歯車35も回転する。
【0057】
上記により、平歯車35とともに回転軸36がその中心軸線を中心として回転し、各ラッチ部材37も回転する。回転した各ラッチ部材37は、乗降口101を閉鎖した状態のドアリーフ11に設けられた各引き込み用ローラ39に対して、その凹み部37aにおいて係合する。これにより、ドアリーフ11が側構体100側に引き込まれる方向に向かって付勢されて保持されることになる。尚、ドアリーフ11の開放動作が行われる際には、上記と逆の動作が行われ、ラッチ部材37と引き込み用ローラ39との係合状態が解除されることになる。
【0058】
次に、本実施形態に係るプラグドア2について説明する。プラグドア2は、乗降口101を開閉するドアリーフ11、枠体12、シール部材13、等を備えて構成されている。
図6は、プラグドア2を模式的に示す斜視図である。また、
図7は、枠体12を模式的に示す斜視図である。
図8は、
図2の一部を拡大して示す図であって、ドアリーフ11の戸先側の端部の近傍を示す模式図である。
【0059】
本実施形態では、プラグドア2は、片引きのドア構造として構成されており、乗降口101を覆うドアリーフ11は、プラグドア2において1枚設けられている。また、ドアリーフ11は、屈曲した部分を含む側構体100の形状に対応して屈曲した部分が設けられている。本実施形態では、ドアリーフ11は、その下方側において、屈曲した部分が形成されている。尚、この屈曲した部分は、ドアリーフ11の下方から上方に向かうにつれて車幅方向の外側に向かって緩やかに湾曲して張り出すように屈曲した部分として形成されている。また、ドアリーフ11には、車幅方向の内側に対向する面における縁部分に沿って、後述のシール部材13が嵌め込まれる溝が設けられている。
【0060】
枠体12は、乗降口101に沿って乗降口101の全周に亘って設置される枠構造体として設けられている。枠体12は、例えば、鋼製の部材によって形成される。そして、枠体12は、本体部40、複数のリブ41、引き込み保持部42、等を備えて構成されている。
【0061】
本体部40は、乗降口101の全周に亘って略矩形状に延びる環状の構造体として構成されている。そして、本体部40には、一体に設けられたシール密着壁部40aと取付壁部40bとが設けられている。シール密着壁部40a及び取付壁部40bは、ともに乗降口101の全周に亘って略矩形状の環状に延びる板状の部分として設けられている。尚、シール密着壁部40a及び取付壁部40bによって構成される本体部40は、屈曲した部分を含む側構体100の形状に対応して屈曲した屈曲部43が設けられている。
【0062】
シール密着壁部40aは、車幅方向外側に対向する面であって後述するシール部材13が密着する面を有している。一方、取付壁部40bは、シール密着壁部40aに対して略垂直な方向に沿って延びる面を有している。そして、取付壁部40bは、側構体100に枠体12が取り付けられる際に側構体100に対して取り付けられる部分を構成している。尚、上記構成のため、本体部40は、シール密着壁部40aの面方向及び取付壁部40bの面方向に対して略垂直な断面において、直角三角形の二辺に沿って延びる断面を有するように構成されている。
【0063】
リブ41は、本体部40を補強する板状の補強部材として設けられ、本体部40の周方向に亘って複数個所に取り付けられている。各リブ41は、本体部40に対して、シール密着壁部40aと取付壁部40bとが一体に交差して成す角のうちの劣角側において、即ち、本体部40の内側において、取り付けられている。そして、各リブ41は、略三角形状の外形の板状部材として設けられ、シール密着壁部40aと取付壁部40bとに対して固定されている。尚、各リブ41は、シール密着壁部40a及び取付壁部40bに対して、板状の各リブ41が広がる面方向がシール密着壁部40aの面方向及び取付壁部40bの面方向の両方に対して略垂直な方向に沿って延びるように、取り付けられている。
【0064】
引き込み保持部42は、
図7に示すように、湾曲するように屈曲形成された板部材として設けられ、本体部40の戸先側における複数個所に取り付けられている。そして、
図8に示すように、引き込み保持部42には、車幅方向に対して斜めに延びる面が設けられている。これにより、引き込み保持部42は、ドアリーフ11が閉鎖されてプラグ動作も完了したタイミングで、上記の斜めに延びる面において、ドアリーフ11における戸先側の端部の一部と係合するように構成されている。このため、乗降口101を閉鎖してプラグ動作が完了したドアリーフ11は、その戸先側の端部が、車幅方向内側に引き込まれる方向に向かって押圧されて保持されることになる。
【0065】
上述した枠体12は、側構体100において乗降口101を構成する部分に対して、機械的締結構造によって取り付けられる。また、本実施形態では、上記の機械的締結構造は、側構体100及び枠体12とは別体に設けられた締結部材44を有し、締結部材44を介して、側構体100及び枠体12を締結するように構成されている。締結部材44は、例えば、ボルトとして構成されている(
図4乃至
図8を参照)。
【0066】
枠体12が側構体100に取り付けられる際には、まず、枠体12は、側構体100において乗降口101を構成する部分に対して嵌め込まれる。このとき、枠体12は、本体部40における取付壁部40bにおいて、側構体100に嵌め込まれる。そして、締結部材44が、枠体12の取り付け壁部40bに設けられた貫通孔に対して、乗降口101の内側から挿通され、側構体100に対して螺合して取り付けられる。側構体100に螺合するボルトとして設けられた締結部材44のボルト頭部が取付壁部40bに当接して取付壁部40bを締め付けることで、締結部材44による枠体12の側構体100への機械的締結による固定が完了することになる。尚、枠体12の取付壁部40bと側構体100との間において隙間が生じる場合は、この隙間に対して、コーキング材45等が適宜充填される(
図5及び
図8を参照)。これにより、枠体12と側構体100との間における気密性が確保される。尚、コーキング材45としては、隙間に充填可能な充填材であればよく、種々の充填材を用いることができる。また、コーキング材は、シーリング材と称されてもよい。
【0067】
図1乃至
図6、及び
図8に示すシール部材13は、ドアリーフ11が乗降口101を閉鎖する際にドアリーフ11及び枠体12の両方に対して密着することで、ドアリーフ11と枠体12との間の気密性を確保するゴム製のシール部材として設けられている。即ち、シール部材13は、側構体100に取り付けられた枠体12にドアリーフ11がプラグ動作によって押し付けられる際に、枠体12とドアリーフ11との両方に対して密着した状態となる。これにより、シール部材13は、ドアリーフと枠体12との間の気密性を確保する。また、本実施形態では、シール部材13は、ドアリーフ11に取り付けられている。ドアリーフ11には、前述のように、車幅方向の内側に対向する面における縁部分に沿って溝が設けられており、この溝に対して、シール部材13が嵌め込まれる。
【0068】
また、シール部材13は、ドアリーフ11の縁部分に沿って略矩形状に延びる環状のシール部材として構成されている。そして、シール部材13は、ドアリーフ11が乗降口101を閉鎖した状態で、乗降口101に沿って乗降口101の全周に亘って対応するように、設置される。即ち、シール部材13は、ドアリーフ11の閉鎖時に、乗降口101の全周に亘って対応して枠体12に密着するように、ドアリーフ11に設置されている。
【0069】
図9は、
図1のC−C線矢視位置から見たプラグドア2の枠体12及びシール部材13の断面を模式的に示す図である。また、
図10は、
図9に示す枠体12及びシール部材13が互いに離間した状態を模式的に示す図である。
図9及び
図10に示すように、シール部材13には、取付部46、環状密着部47、一対の凸状密着部(48a、48b)が設けられている。
【0070】
取付部46は、ドアリーフ11に対して取り付けられる部分として設けられており、略矩形状に環状に延びる一対の嵌め込み壁部(46a、46b)を備えて構成されている。ドアリーフ11には、車幅方向の内側に対向する面における縁部分に沿って、一対の嵌め込み壁部(46a、46b)が嵌め込まれる一対の溝(49a、49b)が設けられている。乗降口101の内側に対応する溝49aに対して嵌め込み壁部46aが嵌め込まれ、乗降口101の外側に対応する溝49bに対して嵌め込み壁部46bが嵌め込まれている。
【0071】
また、一対の嵌め込み壁部(46a、46b)は、一対の溝(49a、49b)の間でドアリーフ11の縁部分に沿って延びる凸状壁部50を挟み込んだ状態で、凸状壁部50に対して取り付けられている。尚、各嵌め込み壁部(46a、46b)には、互いに対向する側において、凸状壁部50の側面に対してその全周に亘って引っ掛かるようにして密着する複数のフィン状の突起がそれぞれ設けられている。各フィン状の突起は、各嵌め込み壁部(46a、46b)の全周に亘って連続して設けられており、凸状壁部50が一対の嵌め込み壁部(46a、46b)の間に嵌め込まれた状態では、車幅方向の内側に向かって倒れ込んだ姿勢で弾性変形して凸状壁部50に密着している。これにより、シール部材13がドアリーフ11から脱落することが防止されている。
【0072】
環状密着部47は、ドアリーフ11の閉鎖時に枠体12のシール密着壁部40aに密着する部分として設けられており、ドアリーフ11の縁部分に沿って略矩形状に環状に延びるように設けられている。また、環状密着部47は、略矩形状に環状に延びる部分の断面が、中空の環状の断面として構成されている。
【0073】
また、環状密着部47は、
図10に示すように、枠体12及びシール部材13が互いに離間した状態では、略円形の断面を構成するように形成されている。一方、ドアリーフ11が閉鎖されてシール部材13が枠体12に密着した状態では、
図9に示すように、環状密着部47は、略円形の断面が潰れるように弾性変形し、略楕円形の断面を構成することになる。
【0074】
一対の凸状密着部(48a、48b)は、環状密着部47からフィン状に突出するとともに、環状密着部47に沿って略矩形状に環状に延びる凸状の部分として設けられている。そして、各凸状密着部(48a、48b)は、環状密着部47とともに、ドアリーフ11の閉鎖時に枠体12のシール密着壁部40aに密着する部分として設けられている。
【0075】
また、各凸状密着部(48a、48b)は、環状密着部47に対して、例えば、環状密着部47の略円形の断面の半径方向に沿って突出するように設けられている。そして、環状密着部47に対して一方の凸状密着部48aが突出する方向と、環状密着部47に対して他方の凸状密着部48bとが突出する方向との成す角の角度が、劣角側において、例えば、約120°に設定されている。そして、一対の凸状密着部(48a、48b)は、一対の凸状密着部(48a、48b)の突出方向の成す角の角度を二等分する二等分線がシール密着壁部40aの壁面に対して略垂直となるように、環状密着部47に対して設けられている。
【0076】
また、一対の凸状密着部(48a、48b)は、シール密着壁部40aに密着する際には、一対の凸状密着部(48a、48b)が成す角の角度が外側に向かって広がるように弾性変形することになる。即ち、一対の凸状密着部(48a、48b)は、それらの先端側が外側に開いて離間するように弾性変形した状態で、シール密着壁部40aに密着する(
図9を参照)。
【0077】
ドアリーフ11に取り付けられたシール部材13は、上述した断面構造を有することで、
図9に示すように、環状密着部47及び一対の凸状密着部(48a、48b)の3カ所で枠体12のシール密着壁部40aに密着することになる。即ち、シール部材13は、ドアリーフ11が乗降口101を閉鎖することで枠体12に対して押し付けられて接触する際に、シール部材13が枠体12に押し付けられる方向に平行な方向と乗降口101から側構体100に沿って外側に向かう方向とに沿った断面において、3箇所で枠体12に対して接触することになる。
【0078】
尚、枠体12には、上記のようにシール部材13が弾性変形してシール密着壁部40aに密着した際にその弾性変形量がシール部材13において設計上許容される最大圧縮量を超えないようにするため、ドアストッパ52が取り付けられている(
図5を参照)。ドアストッパ52は、例えば、ゴム部材によって形成され、ドアリーフ11から作用する圧力を十分に受け止められる材質及び寸法で構成されている。そして、ドアストッパ52は、枠体12のシール密着壁部40aに対して、枠体12の周方向に沿って全周に亘る複数個所(例えば、10か所)に分散して取り付けられている。
【0079】
以上説明したように、鉄道車両用プラグドア装置1によると、鉄道車両の側構体100において乗降口101を構成する部分に対して、側構体100とは別体に設けられた枠体12が取り付けられる。そして、枠体12は、側構体100に対して、機械的締結構造によって取り付けられる。このため、側構体100が、構造部材が溶接によって接合されることで組み立てられた構造を有するとともに屈曲した部分を含んで複雑化した断面形状の場合であっても、溶接による残留応力によって生じた側構体100の歪が、枠体12に影響を与えることを容易に低減することができる。そして、シール部材13は、ドアリーフ11に取り付けられて枠体12に密着する構成のため、溶接による残留応力によって生じた側構体100の歪が、シール部材13の密着性に影響が生じることも大幅に低減される。これにより、上記の歪が側構体100とドアリーフ11との間における気密性に対して影響を与えてしまうことが容易に低減される構造が、実現されることになる。よって、側構体100とドアリーフ11との間における気密性が容易に確保される鉄道車両用プラグドア装置1を提供することができる。
【0080】
以上のように、本実施形態によると、構造部材が溶接によって接合されることで組み立てられた構造を有するとともに屈曲した部分を含む側構体100に対して設置される鉄道車両用プラグドア装置1であっても、側構体100とドアリーフ11との間における気密性を容易に確保することができる。
【0081】
また、鉄道車両用プラグドア2によっても、上記と同様に効果を奏することができる。即ち、構造部材が溶接によって接合されることで組み立てられた構造を有するとともに屈曲した部分を含む側構体100に対して設置される鉄道車両用プラグドア2であっても、側構体100とドアリーフ11との間における気密性を容易に確保することができる。
【0082】
また、鉄道車両用プラグドア装置1によると、ドアリーフ11の閉鎖状態で、枠体12及びシール部材13が乗降口101に沿って乗降口101の全周に亘って配置されるため、側構体100とドアリーフ11との間における気密性を更に容易に確保することができる。
【0083】
また、鉄道車両用プラグドア装置1によると、側構体100及び枠体12が、側構体100及び枠体12とは別体の締結部材44を介して機械的に締結されるため、側構体100に対して枠体12を容易に取り付けることができる。また、別体の締結部材44を介して側構体100に枠体12が締結されるため、溶接による残留応力によって生じた側構体100の歪が枠体12に影響を与えることを低減できる構造を、更に容易に実現することができる。
【0084】
また、鉄道車両用プラグドア装置1によると、シール部材13は、シール部材13が枠体12に押し付けられる方向に平行な方向と乗降口101から側構体100に沿って外側に向かう方向とに沿った断面において、3箇所で枠体12に接触する。このため、シール部材13は、枠体12に対して、1箇所又は2箇所のみで接触する場合に比して、3個所に分散して効率よく接触状態を確保することができる。これにより、側構体100とドアリーフ11との間における気密性を更に容易に確保することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0086】
(1)前述の実施形態では、ドアリーフを1枚有する構成の片引きのドア構造に関して本発明が適用される形態を例にとって説明したが、この例に限らず、ドアリーフを2枚有する構成の両引きの引き分けドア構造に関して本発明が適用されてもよい。
【0087】
(2)前述の実施形態では、シール部材がドアリーフに取り付けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。シール部材は、ドアリーフ及び枠体の少なくとも一方に取り付けられる構成であればよい。
【0088】
(3)前述の実施形態では、シール部材が乗降口の全周に亘って対応するように設置される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。シール部材が、乗降口の周方向において部分的に対応するように設置される形態が実施されてもよい。
【0089】
(4)前述の実施形態では、ドアリーフに取り付けられたシール部材が、所定の断面において、3箇所で枠体に対して接触する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ドアリーフ及び枠体の一方に取り付けられたシール部材が、所定の断面において、ドアリーフ及び枠体の他方に対して、1箇所、2箇所、或いは、4箇所以上で接触する形態が実施されてもよい。
【0090】
(5)枠体が機械的締結構造によって側構体に取り付けられる形態については、前述の実施形態で例示した形態に限らず、種々変更されて実施されてもよい。例えば、側構体及び枠体とは別体に設けられた締結部材として、ボルト及びナット、或いは、リベット、等が備えられた機械的締結構造によって、枠体が側構体に取り付けられる形態が実施されてもよい。また、側構体及び枠体とは別体に設けられた締結部材が設けられず、枠体が側構体に対して嵌め込まれて嵌合する機械的締結構造によって、枠体が側構体に取り付けられる形態が実施されてもよい。
【0091】
(6)前述の実施形態では、ドア駆動機構が、電動モータ、駆動プーリ、従動プーリ、ベルトを備えて構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、電動モータ、ラックアンドピニオン機構を備えて構成されたドア駆動機構が実施されてもよい。また、電動モータ、スクリュー軸、スクリュー軸に螺合して移動するナット部材、を備えて構成されたドア駆動機構が実施されてもよい。また、電動モータが設けられておらず、油圧作動式アクチュエータ、空圧作動式アクチュエータを備えて構成されたドア駆動機構が実施されてもよい。
【0092】
(7)前述の実施形態では、引き込みアクチュエータとして、電動モータ、小径の平歯車、大径の平歯車、回転軸、ラッチ部材を備えて構成された形態を例にとって説明したが、この例に限らず、種々変更された引き込みアクチュエータが実施されてもよい。例えば、電動モータが設けられておらず、油圧作動式アクチュエータ、空圧作動式アクチュエータを備えて構成された引き込みアクチュエータが実施されてもよい。また、ドア駆動機構に対して独立した引き込みアクチュエータではなく、ドア駆動機構に連動する引き込みアクチュエータの機構が実施されてもよい。
【0093】
(8)前述の実施形態では、ガイド機構として、ドアハンガーの移動方向をガイドするレール部材として構成されたガイドレールを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、ガイド機構は、車幅方向におけるドアリーフの移動をガイドする機構であればよく、レール部材以外の形態の部材としてガイド機構が実施されてもよい。また、ドアリーフを車幅方向に駆動可能なアクチュエータを備えたガイド機構が実施されてもよい。
【0094】
(9)枠体が側構体に取り付けられる際、枠体は、種々の形態で側構体に対して取り付けられてもよい。例えば、枠体とドアリーフとが、別々に、側構体に取り付けられてもよい。また、枠体とドアリーフとが仮組立てされた状態で、枠体が側構体に取り付けられてもよい。ここで、枠体とドアリーフとが仮組立てされた状態で、枠体が側構体に取り付けられる形態について、更に説明する。
【0095】
図11は、
図1に示すプラグドア2における枠体12とドアリーフ11とが仮組立てされた状態で側構体100に取り付けられる形態について説明するための図である。また、
図11は、プラグドア2における
図10に対応する断面を示す模式図として図示されている。尚、以下の説明においては、前述の実施形態と同様に構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、説明を省略する。
【0096】
枠体12とドアリーフ11とが仮組立てされる際には、
図11に示すように、離隔体53が用いられる。離隔体53は、例えば、細長い板状の部材として構成される。即ち、この離隔体53は、断面の外形が
図11に示されるような長方形で、長手方向を有する細長い板状の部材として構成される。また、離隔体53は、例えば、樹脂材料によって形成されている。
【0097】
枠体12とドアリーフ11とが仮組立てされる際には、離隔体53は、シール密着壁部40aとドアリーフ11との間に配置される。また、この場合、離隔体53は、複数用いられ、略矩形状に延びる本体部40に沿って配置される。例えば、4つの長尺の離隔体53が用いられ、略矩形状の本体部40における4つの各辺に対応する部分に沿って、各離隔体53が配置される。即ち、4つのうちの2つの離隔体53が、枠体12の上側部分及び下側部分のそれぞれにおいて、シール密着壁部40aに沿って且つ枠体12の前後方向(鉄道車両の前後方向と平行な方向)に沿って延びるように配置される。また、残りの2つの離隔体53が、枠体12の前側部分及び後側部分のそれぞれにおいて、シール密着壁部40aに沿って且つ枠体12の上下方向(鉄道車両の前後方向と平行な方向)に沿って延びるように配置される。
【0098】
また、離隔体53は、同一の厚みで延びる板状の部材として設けられ、厚み方向における一方の面53aがシール密着壁部40aに密着し、厚み方向における他方の面53bがドアリーフ11に密着するように配置される。このように離隔体53が配置されることで、枠体12とドアリーフ11とが仮組立てされた状態では、枠体12とドアリーフ11との間の隙間の間隔が、離隔体53の厚みによって定まる所定の間隔に保たれることになる。
【0099】
枠体12とドアリーフ11との仮組立てが行われる際には、枠体12とドアリーフ11との間に離隔体53が挟み込まれた状態で、枠体12とドアリーフ11とが仮組立て用ネジ54を用いて、仮固定状態として一時的に固定される。即ち、枠体12とドアリーフ11とが離隔体53を介して仮組立て用ネジ54で仮固定されることで、枠体12とドアリーフ11との仮組立てが行われる。
【0100】
離隔体53には、仮組立て用ネジ54のネジ軸部が貫通する貫通孔53cが貫通形成されている。そして、枠体12のシール密着壁部40aにも、貫通孔53cに対応するように、仮組立て用ネジ54が貫通する貫通孔55が貫通形成されている。更に、ドアリーフ11には、仮組立て用ネジ54のオネジ部分であるネジ軸部が螺合するメネジ穴としてのネジ穴56が設けられている。枠体12とドアリーフ11との間に離隔体53が挟み込まれた状態で、仮組立て用ネジ54が、貫通孔55及び貫通孔53cを貫通してネジ穴56に螺合することで、枠体12とドアリーフ11とが仮組立てされることになる。
【0101】
上記のように仮組立てが行われる状態では、枠体12とドアリーフ11との間の隙間の間隔が離隔体53によって所定の間隔に保たれるため、シール部材13がシール密着壁部40aに押し付けられる際のシール部材13の弾性変形量も略一定の変形量に保たれることになる。即ち、枠体12とドアリーフ11とが仮組立てされる際に、シール部材13が、シール密着壁部40aに対して略一定の圧力のシール圧で押し付けられることになる。このように、枠体12とドアリーフ11とは、離隔体53によって、シール部材13によるシールつぶし代が略均一に保たれながら、仮組立て用ネジ54によって仮組立てされる。
【0102】
また、離隔体53は、シール部材13に対して、乗降口101の中央側に配置される。即ち、離隔体53は、ドアリーフ11の縁部分に沿って略矩形状に延びる環状のシール部材13の内側に配置される。このため、枠体12及びドアリーフ11の側構体100への取り付けが完了した際に貫通孔55を塞ぐためのシールキャップ部材等を設ける必要がなく、シール構造を簡素化することができる。尚、枠体12及びドアリーフ11の側構体100への取り付けが完了すると、離隔体53及び仮組立て用ネジ54が取り外され、枠体12とドアリーフ11との仮組立て状態が解除される。このとき、貫通孔55が環状のシール部材13の内側に配置されているため、上記のように、貫通孔55を塞ぐためのシールキャップ部材等を設ける必要がない。
【0103】
次に、上記のように仮組立てが行われた枠体12及びドアリーフ11を側構体100に取り付ける作業について説明する。
図12は、仮組立てが行われた枠体12及びドアリーフ11が側構体100に取り付けられた後、枠体12とドアリーフ11との仮組立てが解除された状態における枠体12を模式的に示す斜視図である。仮組立てが行われた枠体12及びドアリーフ11が側構体100に取り付けられる際には、枠体12及びドアリーフ11の側構体100に対する鉄道車両の上下方向及び前後方向の位置が調整される。枠体12及びドアリーフ11の側構体100に対する上記の位置調整の際には、
図12に示す複数のブロック57が用いられる。
【0104】
ブロック57は、例えば、
図12に示すように、枠体12の下側部分の取付壁部40bと、枠体12の前側部分の取付壁部40bと、枠体12の後側部分の取付壁部40bとのそれぞれに、2つずつ固定されている。
図13は、
図12の一部を拡大して示す図であって、枠体12の下側部分の取付壁部40bに設置されたブロック57とその近傍の部分とを示す模式図である。
図13に示すように、ブロック57には、枠体12の側構体100に対する位置を調整するための位置調整ボルト(
図13では、位置調整ボルトの図示は省略されている)に螺合するネジ孔57aが設けられている。ネジ孔57aは、位置調整ボルトのオネジ部分が貫通して螺合するメネジ孔として形成されている。尚、枠体12に設置された6つの各ブロック57は、
図13に示すブロック57と同様に構成される。また、枠体12の取付壁部40bには、各ネジ孔57aに対応する位置に、位置調整ボルトが貫通する貫通孔59(
図12及び後述の
図14を参照)が設けられている。
【0105】
枠体12及びドアリーフ11の側構体100への取り付け時には、まず、側構体100における乗降口101の周囲に相当する部分に対して、仮組立てされた枠体12及びドアリーフ11が配置される。そして、ブロック57に螺合した位置調整ボルトのブロック57に対する螺合位置が調整されることで、側構体100に対する枠体12及びドアリーフ11の位置が調整される。このとき、位置調整ボルトの先端部が側構体100に当接した状態で、位置調整ボルトのブロック57に対する螺合位置が調整されることで、枠体12及びドアリーフ11の側構体100に対する相対位置が調整されることになる。
【0106】
また、枠体12の前側部分及び後側部分の各取付壁部40bに設置された各ブロック57に螺合した各位置調整ボルトの各ブロック57に対する螺合位置が調整されることで、側構体100に対する枠体12及びドアリーフ11の鉄道車両の前後方向における位置が調整される。そして、枠体12の下側部分の取付壁部40bに設置されたブロック57に螺合した位置調整ボルトのブロック57に対する螺合位置が調整されることで、側構体100に対する枠体12及びドアリーフ11の鉄道車両の上下方向における位置が調整される。
【0107】
上記のように、鉄道車両の前後方向及び上下方向における側構体100に対する枠体12及びドアリーフ11の位置が調整される。これにより、側構体100とドアリーフ11との間における気密性の確保のための位置調整が行われることになる。より具体的には、側構体100の屈曲した部分の位置に対して、枠体12及びドアリーフ11の屈曲した部分の位置が対応するように、側構体100に対する枠体12及びドアリーフ11の位置が調整されることになる。
【0108】
ここで、更に、上記の位置調整作業について、枠体12の下側部分に設置されたブロック57を用いた位置調整作業を例にとって説明する。
図14は、
図13に示すブロック57を用いた位置調整作業を説明するための図であって、
図13のE−E線矢視位置から見た断面に対応する模式図である。
【0109】
前述した位置調整ボルトとして構成された位置調整ボルト58は、ブロック57のネジ孔57aに螺合した状態でブロック57を貫通している。そして、位置調整ボルト58におけるオネジ部分としてのネジ軸は、その先端部58aが枠体12の内側から外側に向かって突出するように、貫通孔59を貫通している。更に、位置調整ボルト58の先端部58aは、側構体100に当接している。
【0110】
上記の状態で、位置調整ボルト58のブロック57に対する螺合位置が調整されることで、側構体100に対する枠体12及びドアリーフ11の位置が調整される。即ち、位置調整ボルト58の先端部58aの側構体100に対する当接位置は変化しないため、ブロック57の位置調整ボルト58に対する螺合位置の変化に伴って、枠体12及びドアリーフ11の側構体100に対する位置が変化することになる。
【0111】
尚、位置調整ボルト58には、ブロック57に対して位置調整ボルト58のボルト頭部側に配置されるナット60が螺合している。位置調整ボルト57に螺合したナット60がブロック57に当接した状態では、位置調整ボルト58とブロック57との螺合位置がずれてしまうことが防止される。一方、位置調整ボルト58とブロック57との螺合位置が変更される際には、ナット60がブロック57から離間するように操作されることになる。
【0112】
位置調整ボルト58とブロック57との螺合位置の調整による枠体12及びドアリーフ11の側構体100に対する位置調整作業が終了すると、枠体12が側構体100に固定される本固定作業が行われる。即ち、締結部材44による枠体12の側構体100への機械的締結による固定が行われる。そして、ドアリーフ11のハンガー31等を介した鉄道車両への設置作業も行われる。
【0113】
また、上記の本固定作業の際には、
図14にて隙間61として示すような枠体12と側構体100との間の隙間に、シム等の板材が設置される。更に、上記の本固定作業が終了すると、離隔体53及び仮組立て用ネジ54が取り外され、枠体12とドアリーフ11との仮組立て状態が解除される。尚、シム等の板材が上記の隙間に設置され、上記の本固定作業も終了した状態になると、更に、コーキング材或いはシーリング材等の充填剤が上記の隙間におけるシム等の板材が配置されていない空間に充填される。以上により、枠体12及びドアリーフ11の側構体100への取り付け作業が完了する。
【0114】
上述した作業形態によると、枠体12とドアリーフ11とが仮組立てされた状態で側構体100に取り付けられるため、プラグドア2を鉄道車両に艤装する際の艤装工数を減らすことができる。