【文献】
山中克之,他,HAP含有PLGA多孔質ブロックを用いた骨組織の再生,メディカル・サイエンス・ダイジェスト,2011年 7月30日,Vol. 37, No. 8,p. 36-39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移植体の前記支持体が、ハイドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、β−TCP、OCP、及びリン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1つを含有して形成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の組織再生コンストラクト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1乃至3に記載のような従来の技術では、治療の効果が期待するほど得られないケースが存在する。組織再生対象部位の状態によっては、移植体の生着が良好でなく、その結果、組織再生対象部位と移植体とが物理的、生物学的に架橋されないため治療効果が限定される、又は効果が得られないことがあった。
【0005】
例えば、骨組織の再生を挙げると、組織再生対象部位の骨髄組織が露出し、出血があり、血管や骨髄細胞が露出している(いわゆる新鮮な創面)欠損である場合の移植に際しては組織再生対象部位側からの移植体への生着能力が高く、移植体と組織再生対象部位とが一体となり、良好に組織再生が起こることが期待される。しかしながら、再生医療において治癒が期待される対象はこのような部位に限らない。組織が損傷を受けて時間が経過し、萎縮性(atrophic)の状態であったり、血管などの露出がない組織表面、熱や物理的、化学的な障害により表面の一部組織が壊死してしまったような表面、物理的形状の影響で安定しにくい状態であったりなどするもの、又はこれらが混在するものもある。このような場合、従来の移植体では十分な生着を得ることができないことが多かった。また、いわゆる新鮮な創面のように、組織再生対象部位の表面が組織再生に好ましい状況であったとしても、欠損のサイズが大きい、つまり、再生を期待する領域が大きい場合には一般に速やかな生着が実現しないと組織再生が困難である。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、生着性に優れ、対象部位に安定して良好な再生を促すことを可能とする組織再生コンストラクトを提供することを課題とする。また、組織再生コンストラクトの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて、研究開発を行った。その結果、組織再生対象部位と移植体との生着を図るために、両者の間に生着層を介した形態となるような組織再生コンストラクトとすることが有効であることを見出して本発明を完成させた。以下、本発明について説明する。
【0008】
第一の本発明は、移植再生対象部位へ適用されて組織を再生する部材である組織再生コンストラクトであって、移植体、及び該移植体の外表面の少なくとも一部に重なって配置される生着層を有し、移植体は、支持体と、支持体間の空間部分、及び支持体の内側に形成された空孔による空間部分の少なくとも一方に配置された組織を再生するための細胞と、を有し、生着層は、組織を再生するための細胞と、細胞を保持するための基材と、を含み、生着層の基材はゲル状とされているとともに、生着層は支持体が存在しない層である、組織再生コンストラクトである。
【0009】
上記組織再生コンストラクトにおいて、生着層に含まれる細胞は細胞間基質が分解されて分散された状態であってもよい。
【0010】
上記組織再生コンストラクトにおいて、生着層に含まれる基材は、凝固反応により高分子化した血漿フィブリンを含有することができる。
【0011】
上記組織再生コンストラクトにおいて、生着層に含まれる基材は、ゼラチン、コラーゲン、細胞外マトリクスたんぱく質、人工たんぱく質、及びペプチドから選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0012】
上記組織再生コンストラクトにおいて、移植体に含まれる細胞、及び生着層に含まれる細胞のうち少なくとも一方の細胞が未分化の間葉系幹細胞であってもよい。
【0013】
上記組織再生コンストラクトにおいて、移植体に含まれる細胞、及び生着層に含まれる細胞のうち少なくとも一方の細胞が分化細胞であってもよい。
【0014】
上記組織再生コンストラクトにおいて、移植体に含まれる細胞、及び生着層に含まれる細胞のうち少なくとも一方の細胞が幹細胞から分化培養した組織前駆細胞であってもよい。
【0015】
上記組織再生コンストラクトにおいて、移植体の支持体が、ハイドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、β−TCP、OCP、及びリン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1つを含有して形成されてもよい。
【0016】
上記組織再生コンストラクトにおいて、移植体の支持体が、PLGA、PLLA、PLC、及び生体親和性の人工ポリマーから選ばれる少なくとも1つを含有して形成されてもよい。
【0017】
第二の本発明は、上記組織再生コンストラクトを製造する方法であって、型の中に支持体を配置する工程と、支持体を配置した型の中に、組織を再生する細胞及び該細胞を保持する基材を含有した基材懸濁液を支持体の上面より水位が上となるように注ぐ工程と、基材をゲル状とする工程と、を含む、組織再生コンストラクトの製造方法である。
【0018】
第三の本発明は、上記組織再生コンストラクトを製造する方法であって、型の中に、該型の内面の少なくとも1つに支持体が接触することなく間隙を有して支持体を配置する工程と、支持体を配置した型の中に、組織を再生する細胞及び該細胞を保持する基材を含有した基材懸濁液を注ぐ工程と、基材をゲル状とする工程と、を含む、組織再生コンストラクトの製造方法である。
【0019】
第四の本発明は、上記組織再生コンストラクトを製造する方法であって、型の中に移植体を配置する工程と、移植体を配置した型の中に、組織を再生する細胞及び該細胞を保持する基材を含有した基材懸濁液を支持体の上面より水位が上となるように注ぐ工程と、基材をゲル状とする工程と、を含む、組織再生コンストラクトの製造方法である。
【0020】
第五の本発明は、上記組織再生コンストラクトを製造する方法であって、型の中に、該型の壁面の少なくとも1つに移植体が接触することなく間隙を有して移植体を配置する工程と、移植体を配置した型の中に、組織を再生する細胞及び該細胞を保持する基材を含有した基材懸濁液を注ぐ工程と、基材をゲル状とする工程と、を含む、組織再生コンストラクトの製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の組織再生コンストラクトによれば、生着層が組織再生対象部位と移植体との間に介在した状態で当該対象部位に移植されることより、生着が促進され、組織再生コンストラクトと組織再生対象部位との物理的、生物学的な架橋が速やかになされる。これにより、移植体に組織からの分化などの刺激が加わることや早期の血管組織浸潤が期待され、組織再生対象部位側からの栄養や細胞の供給も容易となり、安定して良好かつ、より広範囲の組織再生を図ることが可能となる。
また、本発明の組織再生コンストラクトの製造方法によれば、このような組織再生コンストラクトを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。ただし本発明はこれら形態に限定されるものではない。
【0024】
<組織再生コンストラクト10>
(組織再生コンストラクト10の構造)
図1は1つの形態に係る組織再生コンストラクト10の外観を模式的に示した図である。
図1からわかるように組織再生コンストラクト10は、移植体11及び生着層15を有している。
【0025】
移植体11は、支持体12及び組織再生を担う細胞を含んで構成されている。
【0026】
支持体12は、その内部に細胞を保持可能な多孔質構造を有した人工又は生体由来の高分子、又はリン酸カルシウムなどの無機材料により形成されている。例えば、ハイドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、β−TCP、OCP、リン酸カルシウム、PLGA、PLLA、PLC、及び生体親和性の人工ポリマーなどを挙げることができる。支持体を構成する材料は非吸収性であっても、吸収性であってもよい。非吸収性材料の場合には支持体間や支持体内部の空孔部分で組織が再生され、吸収性材料の場合にはそれに加えて支持体が吸収してできた領域にも組織が再生される。
【0027】
従って、支持体12は移植体11の骨格をなすものであることから、組織再生対象部位の形状に合わせるとさらに効率のよい組織再生を行うことができる。かかる観点からは支持体12の全体としての形状は特に限定されることはないが、移植される組織再生対象部位の形状に見合った形状とすることもできる。ただし汎用的な形態として立方体、直方体、半球、円板、柱状など、各種基本的な形状が準備されていてもよい。また、支持体の最小部の厚さは好ましくは2.2mm乃至100mm、さらに好ましくは3mm乃至100mmである。本発明ではこのような大きな形状も可能であり、組織再生対象部位が大きい場合にも適切に対応することができる。
【0028】
また支持体は、所定の粒度にまで細かく粒子状にされた顆粒状が集合したものであってもよく、所定の形状を有するブロック状であってもよい。以下に例として顆粒状が集合した支持体の1つの例、及び、ブロック状の支持体の1つの例の構成をそれぞれ説明する。
【0029】
顆粒状が集合したものである一つの例としての支持体12は各粒が多孔質形状のものであっても、空孔を有さない緻密体であってもよい。多孔質形状の顆粒の場合、各粒に含まれる空孔の平均孔径は50μm乃至500μmであることが好ましい。空孔を有さない緻密体、及び空孔を有した粒であっても、無数の顆粒間に形成される間隙により空間が形成され、これが多孔質形状の空孔と同様に機能する。
多孔質形状であっても緻密体のものであっても、顆粒径は300μm乃至2000μmのものが好ましい。また、顆粒を適当な容器いっぱいに入れた場合の顆粒間及び顆粒内部の空孔の体積の和の同容器の容積に対する比率(充填時の空孔率)は40%乃至90%であることが好ましい。なお、この充填時の空孔率はX線CT撮影データを用いた3次元形態解析により算出することができる。
【0030】
ブロック状である1つの例としての支持体12は、多孔質体である。その孔径は180μm乃至3500μm、平均孔径が350μm乃至2000μmの連通した小孔構造を有し、気孔率が60%乃至95%とされていることが好ましい。また、支持体の圧縮強度は0.05MPa以上となるように構成されていることが好ましい。ここで、支持体の孔の孔径とは、10μmを下回るような液体のみを通す微小気孔は考慮に入れず、支持体全体において10μm以上の気孔の80%以上が孔径180μm乃至3500μmであることを意味している。なお、「気孔率」は、支持体に使用された原料塊の重量に対する同体積の支持体の重量から算出できる。
【0031】
移植体11に含まれる細胞は、支持体12内に含まれて目的とする組織再生に適したものであれば特に限定されることはない。例えば、骨、軟骨、脂肪組織の再生を図る場合には、それらに分化する能力を有した未分化の間葉系幹細胞などの幹細胞、間葉系などの幹細胞から分化培養した組織前駆細胞、又は、再生したい組織を通常構成している分化細胞などを用いることができる。
【0032】
支持体12の内部又は外周表面の細胞はそれ自身単独、又は外部から侵入してきた血管などの細胞と共同して支持体12が確保した空間に再生組織を構築する。
【0033】
生着層15は、移植体11の外表面のうちの少なくとも一部に重なって配置された層で、支持体12を含まず、その分細胞が基材に高い密度で分散、保持された層である。生着層15は、細胞と基材との混合物(通常は培養液との混合液)であって、基材がゲル状とされている。組織再生コンストラクトを組織再生対象部位に適用したとき、この生着層が組織再生対象部位における、生着を促進して組織が再生されるべき表面の少なくとも一部に接触して配置される。
【0034】
生着層15に含まれる細胞の種類は、移植体11に含まれる細胞と同様である。ただし、生着層15に含まれる細胞は、酵素処理などにより、細胞間を繋ぎ止めているたんぱく質(細胞間基質)を分解してほぐし、分散された(バラバラにした)細胞である。ここでいう分散とは、必ずしも全てが単一な状態で分散された細胞である必要はない。このように分散された細胞を生着層15に含むことで、組織再生コンストラクト10の生着を促進することができる。
これは、分散された細胞は、基材中を自由に遊走可能であり、それにより、生着層15内の細胞が組織再生対象部位、及び移植体11の方向へ増生(アウトグロース)することが可能となることによる。そして、これにより移植体11と組織再生対象部位とが生着し、移植体11と組織再生対象部位とが架橋される。
かかる観点から、より効率のよい生着の促進のために、単一に分散された細胞が多いほうが好ましい。
【0035】
生着層15に含まれる基材は、細胞を高い密度で生着層に分散、保持する機能を有し、ゲル状とする(以後、単に「ゲル状化」と表現することがある。)前の状態は液状である。基材の材料としては、フィブリン(再凝固反応により高分子化した血漿フィブリン(PRP(Platelet rich plasma)、PPP(Platelet Poor Plasma)、及び、フィブリン糊を含む。))、ゼラチン、コラーゲン、その他の細胞外マトリクスたんぱく質(マトリゲルなど)、人工タンパク質、及びペプチドを水溶液として(通常は培養液に加えて)用いることができる。いずれもゲル状化可能なものであり、最終的に組織再生コンストラクトとされた際にはゲル状化されている。そして、このゲル状化により基材は収縮する。生着層15には支持体を含まないことに加えて、この収縮により、生着層15内の細胞密度が上昇することで、生着層15内の高い細胞密度を維持することができ、生着層としての能力向上が期待できる。また、このゲル状化により、組織再生コンストラクトは使用時において流動性を有さない状態となり、組織再生対象部位に安定して適用することが可能となる。
【0036】
生着層15の厚さは0mmより大きく、1mm以下が好ましく、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下である。又は、生着層15の厚さtの方向と同じ方向の移植体11の大きさTに対し、t/Tが0.03乃至1.0であることが好ましい。さらに好ましくは0.03乃至0.5である。
【0037】
生着層15の細胞密度は、組織再生対象部位との接触面積あたりの細胞密度が濃いほどよく、0.2×10
4細胞/mm
2以上が好ましく、より好ましくは0.5×10
4細胞/mm
2以上、さらに好ましくは1.0×10
4細胞/mm
2以上、最も好ましくは1.5×10
4細胞/mm
2以上である。
【0038】
生着層15には支持体12が存在せず、細胞が高密度で存在することから、それらが産生する液性因子(成長因子などのタンパク質)の局所濃度も高いため、組織再生対象部位からの細胞動員の促進、及びそれらに対する活性化刺激を与えることも可能である。
【0039】
以上説明した組織再生コンストラクト10において、移植体11と生着層15とは一体で作製して組織再生コンストラクト10としてもよいし、生着層15のみを予めいずれかの部位(例えば組織再生対象部位でもよい。)の表面に設置しておき、そこに移植体11を直接接触させて組織再生コンストラクト10としてもよい。以下に組織再生コンストラクト10の製造方法の例を説明する。
【0040】
(組織再生コンストラクトの製造方法例1)
図2、
図3に組織再生コンストラクト10の製造方法例1を説明する概念図を表した。
図2(a)に示したように、顆粒状の支持体12を所定の体積になるように型4の中に入れておく。
次に、組織再生に用いる細胞を基材に分散させた懸濁液(基材懸濁液)を型4の中に注ぐ。その際、
図2(b)に示したように、型4内に配置された支持体12の上面よりも懸濁液の上面の方が高くなるように注ぐ。これにより、型4内のうち下部は支持体12と懸濁液の層になり、上部は支持体12が存在しない懸濁液のみの層となる。
支持体12間や支持体12の内部の孔に懸濁液が行き渡るように、よく攪拌(ピペッティング)する。
【0041】
次に、基材のゲル状化を行う。例えば、基材の材料として血漿フィブリンを用いた場合には、塩化カルシウム水溶液、場合によってはトロンビン水溶液を加えて攪拌する(ピペッティング)する。これによりゲル状化される。また、基材の材料としてコラーゲン、マトリゲル、ゼラチンを用いる場合には温度を調整することでゲル状化させる。コラーゲン、マトリゲルについては37℃付近、ゼラチンについては4℃付近に調整することによりゲル状化が可能である。
このようなゲル状化により、
図3に示したように上記収縮が起こり、生着層内の細胞密度が上昇する。また、ゲル状化により3次元網目に細胞を閉じ込めるため細胞が保持される。
図3に示した破線はゲル状化前の基材懸濁液の水位である。このようにゲル状化により収縮が起こることがわかる。
【0042】
これにより型4内に、上部がゲル状化された基材と細胞からなる生着層15であり、下部が支持体12、細胞、基材からなる移植体11である、組織再生コンストラクト10が完成する。本例では、移植体11と生着層15の細胞及び基材は同じものとなる。
【0043】
(組織再生コンストラクトの製造方法例2)
次に組織再生コンストラクト10の製造方法の他の例(組織再生コンストラクトの製造方法例2)を説明する。
この方法は、生着層15のみを予め組織再生対象部位の表面に設置しておき、そこに移植体11を直接接触させて組織再生対象部位で組織再生コンストラクト10を作製する方法である。
【0044】
本方法では、予め、顆粒状の集合である支持体と細胞の基材懸濁液とを均一に分散混合させ、ゲル状化などの方法により一体として成型しておいたもの、又は、予め、多孔質ブロック状の支持体の内部孔に細胞を導入しておいたものを準備しておき、これを移植体11とする。移植体11は細胞を導入した状態で培養を経たものでもよい。
ここで「顆粒状の集合である支持体と細胞の基材懸濁液とを均一に分散混合させ、ゲル状化などの方法により成型しておいたもの」の作製は、例えば組織再生コンストラクトの製造方法例1で説明したように、型に納めた顆粒状の集合である支持体に懸濁液を注ぎ、組織再生コンストラクトの製造方法例1のようにゲル状化することにより形成することができる。その際には顆粒状の集合である支持体の上面と注いだ懸濁液の上面との位置を概ね同じとすれば移植体のみを作製することができる。
また、組織再生コンストラクトの製造方法例1で形成した組織再生コンストラクト10をそのまま使用しても良い。
【0045】
「多孔質ブロック状の支持体の内部孔に細胞を導入しておいたもの」については、細胞は支持体内に均一に分散していることが好ましく、そのために圧入、脱泡、及びその他の方法を用いることができる。具体的には例えば次のように作製することができる。
図4、
図5に作製の過程を説明するための模式図を表した。
はじめに、
図4(a)に示したように、水に対する接触角が15°乃至90°であるような樹脂板又はガラス板である保持板5上に支持体12を載置する。
次に
図4(b)に示したように支持体12に基材懸濁液を例えば滴下や注入などの方法によって導入する。これにより、
図5(a)に示したように、懸濁液が支持体12内に浸透するとともに、支持体12が懸濁液により全体が満たされた状態となる。
さらに
図5(a)で示した状態から、保持板5が上、懸濁液が含まれた支持体12が下となるように反転させ、
図5(b)に示したような姿勢とする。すなわち、重力方向から見て保持板5が支持体12の上側となり、且つ保持板5の重さが支持体12に加わらない状態で気体中で静止させる。この状態で静止を維持し、導入された細胞を支持体12の孔の内壁に接着させて播種が完了する。これにより移植体11を作製することができる。支持体12に細胞を接着させるために気体中で静止させる時間は、支持体12の材質や播種する細胞の種類により異なるが、20分乃至300分である。
【0046】
一方、上記した移植体11とは別に、生着層15となる部材を作製しておく。これは、生着層15に用いる細胞を基材に分散させた基材懸濁液を準備して必要な面積、厚さになるように型に流し込む。その後、基材のゲル状化操作を行う。ゲル状化は組織再生コンストラクトの製造方法例1と同様の方法で行うことができる。これにより生着層15となる部材が移植体11とは別に調製される。
【0047】
以上のように、移植体11と生着層15とを別に準備しておき、組織再生対象部位を露出させ、ここに組織再生コンストラクト10を形成する。
図6に説明のための図を示した。
図6(a)に示したように、露出させた組織再生対象部位のうち生着を促進して組織を再生すべき表面の少なくとも一部に上記作製した生着層15をはじめに配置する。次に
図6(b)に示したように、配置した生着層15上に作製しておいた移植体11を乗せて、組織再生対象部位上で組織再生コンストラクト10を完成させる。本例により製造した組織再生コンストラクト10は、移植体11の細胞及び生着層15の細胞の種類は同一でもよいし、異なってもよい。また、本例により製造した組織再生コンストラクト10では、移植体11及び生着層15に含まれる基材の種類についても同一でもよいし、異なってもよい。
また、本例では、組織再生対象部位に直接組織再生コンストラクトを形成する例を説明したが、必ずしも組織再生対象部位に直接である必要はなく、例えば型の中や何らかの板上で同様に組織再生コンストラクトを作製することもできる。
【0048】
<組織再生コンストラクト20>
(組織再生コンストラクト20の構造)
図7には、他の形態に係る組織再生コンストラクト20の外観を模式的に示した。
図7からわかるように組織再生コンストラクト20も、移植体21及び生着層25を有している。組織再生コンストラクト20は、移植体21の外表面のうち複数の面に生着層25が設けられている。生着層25が設けられる移植体21の外表面は特に限定されることはなく、全ての面であってもよいし、一部の複数の面であってもよい。
移植体21、生着層25を構成する材料については上記した移植体11、生着層15と同様である。
【0049】
組織再生コンストラクト20を作製する方法は特に限定されることはないが、例えば次のように作製することができる。
【0050】
(組織再生コンストラクトの製造方法例3)
図8、
図9に組織再生コンストラクトの製造方法例3について説明する図を示した。
本方法例3では、予め、顆粒状の集合である支持体と細胞の基材懸濁液とを均一に分散混合させ、ゲル状化などの方法により一体として成型しておいたもの、又は、予め、多孔質ブロック状の支持体の内部孔に細胞を導入しておいたものを準備しておき、これを移植体21とする。移植体21は細胞を導入した状態で培養を経たものでもよい。これら移植体21の作製は、上記した組織再生コンストラクトの製造方法例2で説明した移植体11の製造方法の例と同様に行うことができる。又は、組織再生コンストラクトの製造方法例1で作製した組織再生コンストラクト10をそのまま使用しても良い。
【0051】
作製した移植体21を該移植体21の高さよりも深さが深い型4の中に入れる。
図8(a)に模式的に示した。このとき、生着層25を形成しようとする面は型4の壁面との間に間隙を設けておく、一方生着層25を形成しない面は型4の内面に接触するように移植体21を配置する。型4の内面のうち底面に対向する移植体21の外表面に生着層25が必要な場合には、型4の底面から移植体21を点又は線で支えるような支えを用いることができる。又はピンセットのようなもので移植体21を上から把持し、型4の底面から移植体21浮かせた状態を維持してもよい。
【0052】
その後、生着層25に用いる細胞を分散させた基材懸濁液を型4内に注ぐ。
図8(b)に模式的に示した。懸濁液に浸っている高さまで生着層25が形成されるため、懸濁液の量を移植体21の高さよりも高くなるよう設定すると、支持体21の上面側にも生着層25が形成できる。このように必要に応じて生着層25を設定する。
【0053】
その後、基材のゲル状化操作を実施する。ゲル状化は上記組織再生コンストラクトの製造方法例1で説明した方法と同様の方法を適用することが可能である。
このようなゲル状化により、
図9に示したように上記収縮が起こり、生着層内の細胞密度が上昇する。また、ゲル状化により3次元網目に細胞を閉じ込めるため細胞が保持される。
図9に示した破線はゲル状化前の基材懸濁液の水位である。このようにゲル状化により収縮が起こることがわかる。
【0054】
以上により、移植体21周囲の任意の面に生着層25が形成された組織再生コンストラクト20を効率的に製造することができる。本例により作製した組織再生コンストラクト20では、移植体21及び生着層25に含まれる細胞の種類は同一でもよいし、異なってもよい。また、本例により製造した組織再生コンストラクト20では、移植体21及び生着層25に含まれる基材の種類についても同一でもよいし、異なってもよい。
【0055】
<組織再生コンストラクト30>
(組織再生コンストラクト30の構造)
図10には、他の形態に係る組織再生コンストラクト30の外観を模式的に示した。
図10からわかるように組織再生コンストラクト30も、移植体31及び生着層35を有している。組織再生コンストラクト30は、移植体31の外表面のうち複数の面に生着層35が設けられ、少なくとも1つの面には生着層が設けられていない。生着層35が設けられる移植体31の外表面は特に限定されることはなく、1つの面を除いた全ての面であってもよいし、他にも生着層が設けられていない面があってもよい。
移植体31、生着層35を構成する材料については上記した移植体11、生着層15と同様である。
【0056】
組織再生コンストラクト30を作製する方法は特に限定されることはないが、例えば次のように作製することができる。
【0057】
(組織再生コンストラクトの製造方法例4)
図11、
図12に組織再生コンストラクトの製造方法例4について説明する図を示した。
本方法例4では、予め、顆粒状の集合である支持体と基材懸濁液とを均一に分散混合させ、ゲル状化などの方法により成型しておいたもの、又は、予め、多孔質ブロック状の支持体の内部孔に細胞を導入しておいたものを準備しておき、これを移植体31とする。移植体31は細胞を導入した状態で培養を経たものでもよい。これら移植体31の作製は、上記した組織再生コンストラクトの製造方法例2で説明した移植体11の製造方法の例と同様に行うことができる。又は、組織再生コンストラクトの製造方法例1で作製した組織再生コンストラクト10をそのまま使用しても良い。
【0058】
作製した移植体31を型4の中に入れる。
図11(a)に模式的に示した。このとき、生着層35を形成しようとする面は型4の内面との間に間隙を設けておく、一方生着層25を形成しない面は型4の内面に接触するように移植体31を配置する。型4の内面のうち底面に対向する移植体31の外表面に生着層35が必要な場合には、型4の底面から移植体31を点又は線で支えるような支えを用いることができる。又はピンセットのようなもので移植体31を上から把持し、型4の底面から移植体31浮かせた状態を維持してもよい。
【0059】
その後、生着層35に用いる細胞を分散させた基材懸濁液を型4内に注ぐ。
図11(b)に模式的に示した。懸濁液に浸っている高さまで生着層35が形成されるため、本例では、その水位を移植体31の上面と同じとした。これにより少なくとも
図11(b)で上面側には生着層35は形成されない。
【0060】
その後、基材のゲル状化操作を実施する。ゲル状化は上記組織再生コンストラクトの製造方法例1で説明した方法と同様の方法を適用することが可能である。
このようなゲル状化により、
図12に示したように上記収縮が起こり、生着層内の細胞密度が上昇する。また、ゲル状化により3次元網目に細胞を閉じ込めるため細胞が保持される。
図12に示した破線はゲル状化前の懸濁液の水位である。このようにゲル状化により収縮が起こることがわかる。
【0061】
以上により、
図10に示したような、移植体31周囲の所定の面に生着層35が形成された組織再生コンストラクト30を効率的に製造することができる。本例により製造した組織再生コンストラクト30では、移植体31及び生着層35に含まれる細胞の種類は同一でもよいし、異なってもよい。また、本例により製造した組織再生コンストラクト30では、移植体31及び生着層35に含まれる基材の種類についても同一でもよいし、異なってもよい。
【0062】
<組織再生コンストラクトの作用>
組織再生コンストラクト10、20、30によれば、再生すべき対象となる細胞を保持した支持体を具備した移植体に加え、支持体を有することなく細胞が高い密度で含まれた生着層を備えている。生着層が組織再生対象部位のうち、生着を促進して組織を再生すべき面の少なくとも一部に接して配置されることにより、生着が促進され、組織再生コンストラクトと組織再生対象部位との物理的・生物学的な架橋が速やかに行われるので、再生の促進を図ることができる。
移植体に組織からの分化などの刺激が加わることや早期の血管組織浸潤、栄養や細胞の供給が容易となる。また、産生する液性因子(成長因子などのタンパク質)による組織再生対象部位からの細胞動員の促進、及びそれらに対する活性化刺激を与えることもできると考えらえる。
【0063】
また、生着層中の細胞が酵素処理などにより分散されていることにより、細胞は生着層中を自由に遊走可能であり、生着層内の細胞が組織再生対象部位、移植体へと向かって増生することができ、移植体と組織再生対象部位との生着、及び架橋が促進される。
【0064】
また、組織再生対象部位が比較的大きい場合にも、生着層を介した生着層中の細胞及び、組織再生対象部位の細胞の遊走、増生が効率的に起こり、移植体の細胞を良く刺激し、さらにその効果が移植体全域の細胞へと効率的に伝播するため、再生の促進が図られる。従って、組織再生コンストラクト10、20、30によれば、組織再生対象部位の大きさの許容範囲が広げられる。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく解説するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0066】
<実施例1>
実施例1は次のような過程を経て組織再生コンストラクトを作製し、その後移植を行った。
(ラット骨髄由来間葉系幹細胞の培養)
4週齢F344ラットの大腿骨、脛骨を採取し、培養液を用いて骨髄を洗い流して(flush out)回収した骨髄細胞(大腿骨2本分、脛骨2本分)を、10%FBS、1%ペニシリンストレプトマイシンを含むαMEM培地30mlを入れた培地に播種した。37℃、5%炭酸ガス雰囲気の条件下で増殖培養した。3日目に培地を交換し非接着細胞を取り除き、以後3日に1回の割合で培地交換をした。最初の培地交換の際から培地にbFGF3ng/mlを添加して培養した。10日前後でほぼ集密(コンフルエント)状態となったことを確認した。その後、培地を除去し、トリプシン(0.05%)+EDTA(0.2mM)で2分間培養(インキュベート)して振動を与えて、可及的速やかに細胞を剥がしてバラバラにし、即座に培地を加えてトリプシン活性を止めた。
細胞数を計測し、5000細胞/cm
2で継代して培養した。さらに5日間培養したところで上記と同様に細胞を剥がして分散させて(バラバラにして)以下の実験に用いた。
【0067】
(組織再生コンストラクトの製造)
Nunc社製のラブテックチャンバースライド16ウェル(型として使用、内径7mm、底面積38.5mm
2)の1ウェルあたりに高さ3mmとなるように、支持体とするハイドロキシアパタイト多孔質体顆粒(φ0.5mm乃至φ2.0mm)を充填した。ウェルの内径は7mmで容量は115μlである。ウェルへの充填状態での支持体の空孔率は75%であったので、全容量115μl中の86.25μlが隙間として存在することになる。
そこへ、F344ラット由来の血漿120μlに、上記のように作製したラット骨髄由来の間葉系幹細胞を200×10
4細胞懸濁したものを添加し、細胞が全体に行き渡るように攪拌(ピペッティング)した。ここに、12μlの3.3%塩化カルシウム水溶液を添加して良く行き渡るように攪拌(ピペッティング)した。それを37℃で培養(インキュベート)して、凝固反応である血漿中のフィブリノゲンのポリマー化を促進させフィブリン化した。その結果、ウェル内で血漿内に細胞と支持体が封入された塊が形成された。ウェル内に充填された支持体の上面には、凝固したフィブリンに細胞が封入された支持体が存在しない厚さ約1.2mmの層が乗って重なっている状態である。この層が生着層である。生着層中の細胞数は約69×10
4細胞であり、面積あたり約1.8×10
4細胞/mm
2であった。
【0068】
(移植)
イソフルランを用いた全身麻酔下でラットの頭蓋部の毛を刈り、イソジンにて消毒した後、骨膜まで達するよう1.5cm程度メスを入れ、その切開線から骨膜剥離子を入れて骨膜と上皮を一緒にトンネル状に骨から剥離した。作製した組織再生コンストラクトは直前まで37℃にて維持し、移植直前にチャンバースライドのウェルの壁を外し、組織再生コンストラクトを取り出した。その後、組織再生コンストラクト上部の生着層を頭蓋骨側に向けて剥離したトンネル内に設置した。本実施例1は、頭蓋骨上に組織再生コンストラクトが生着し、組織再生コンストラクトが移植された領域が骨となり、骨が盛り上がったような形状に増生されることを期待するものである。
移植後には切開線を縫合し、ラットをケージに返した。
【0069】
<比較例1>
上記した実施例1と同様に作製した組織再生コンストラクトを用意し、同様にラット頭蓋骨上に設置して移植した。ただし、本比較例1では生着層を頭蓋骨側に向けず、上側の骨膜側に向けて設置した。
すなわち、比較例1は、上記実施例1との対比で投与した細胞数は同じであるが、組織再生対象部位に対して生着層が、組織再生対象部位のうち生着を促進して組織を再生させるべき表面には接しておらず、生着層の介在がない例である。従って本比較例1は実質的に生着層を設けなかった組織再生コンストラクトの例である。
移植後には上記と同様に切開線を縫合糸してラットをケージに返した。
【0070】
[組織学的評価]
(標本の準備)
実施例1、比較例1における実験動物は8週の治癒期間の後、屠殺して組織を回収し、ホルマリン固定、パラフィン包埋後、移植した組織再生コンストラクトの中央部の薄切標本を5つ作製した。その後、HE染色を施し、組織学的評価を行った。
【0071】
(結果)
図13に実施例1の標本のうちの1つを表した。
図13(a)は全体像を表した図、
図13(b)は
図13(a)のうち四角で囲んだ部位の拡大図である。また、
図14には比較例1の標本のうちの1つを同様に示した。
その結果、実施例1では、広範囲で頭蓋骨と組織再生コンストラクトが連続した骨形成が見られた。
図13(b)からわかるように実施例1では新生骨(「N」で表した。)が多く形成されていることもわかる。また、新生骨領域の表面には活性の高い骨芽細胞が配列しており、更なる骨新生が期待された。
一方、比較例1では、コンストラクト中の支持体の周囲に散発的に骨形成が見られる程度であった。
図14(b)からわかるように骨形成が見られなかった領域は、繊維性組織(「F」で表した。)で満たされていた。
【0072】
さらに、定量的には次のような結果を得ることができた。
(1)上記薄切標本の観察で、支持体を除いた領域における新生骨の面積割合が60%以上である標本は、5つの例のうち、実施例1では5つ(全て)、比較例1では1つのみであった。
(2)上記薄切標本の観察で、組織再生コンストラクトの底面と既存頭蓋骨とが、新生骨により連続して生着し、既存頭蓋骨から組織再生コンストラクト内部の支持体にまで骨架橋を示した界面の長さが50%以上である標本は、5つの例のうち、実施例1では5つ(全て)、比較例1では1つのみであった。
【0073】
以上より、組織再生コンストラクトに生体層が備えられ、組織再生対象部位との間に生着層が介在することで骨形成が促進されていることが確認され、本発明の組織再生コンストラクトが骨の増生に有効であることが明らかになった。
【0074】
<実施例2>
実施例2では次のような過程を経て組織再生コンストラクトを作製し移植を行った。
(ラット骨髄由来間葉系幹細胞の培養)
4週齢F344ラットの大腿骨、脛骨を採取し、培養液を用いて骨髄を洗い流して(flush out)回収した骨髄細胞(大腿骨2本分、脛骨2本分)を、10%FBS、1%ペニシリンストレプトマイシンを含むαMEM培地30mlを入れた培地に播種した。37℃、5%炭酸ガス雰囲気の条件下で増殖培養した。3日目に培地を交換し非接着細胞を取り除き、以後3日に1回の割合で培地交換をした。最初の培地交換の際から培地にbFGF3ng/mlを添加して培養した。10日前後でほぼ集密(コンフルエント)状態となったことを確認した。その後、培地を除去し、トリプシン(0.05%)+EDTA(0.2mM)で2分間インキュベートして、その後振動を与えて、可及的速やかに細胞を剥がしてバラバラにし、即座に培地を加えてトリプシン活性を止めた。
細胞数を計測し、5000細胞/cm
2で継代して培養した。さらに5日間培養したところで上記と同様に細胞を剥がして分散させて(バラバラにして)以下の実験に用いた。
【0075】
(組織再生コンストラクトの製造)
ニプロ社製の1mlシリンジ(内径4.5mm)の先端を切断したものを型として用意した。先端を切断したシリンジの端から長さ10mmの部分にピストン先端を合わせ、そこに支持体とするハイドロキシアパタイト多孔質体顆粒(φ0.5mm以上φ2.0mm以下)を充填した。先端を切断したシリンジの端からピストン先端までの体積は159μlとなる。容器充填状態での支持体の空孔率は75%であったので、119μlが隙間として存在することになる。そこへ、F344ラットの血漿107μlに上記のように培養したF344ラット骨髄由来の間葉系幹細胞を200×10
4細胞懸濁したものを添加した。全体に均一に細胞が行き渡るように、27G注射針をつけたシリンジで攪拌(ピペッティング)した。さらに、12μlの3.3%塩化カルシウム水溶液を添加して良く行き渡るように、攪拌(ピペッティング)した。それを37℃で培養(インキュベート)して、凝固反応である血漿中のフィブリノゲンのポリマー化を促進させた。その結果、1mlシリンジ内に血漿フィブリン内に細胞と支持体が封入された塊(移植体本体部分)が形成された。この場合、この時点で生着層に相当するものは存在しない。
【0076】
次に、上記により作製した移植体をシリンジのピストンを押すことにより、円柱状の塊として取り出した。これを滅菌済みのφ10mm円柱状容器内に入れ、ピンセットで把持し、円形の容器底面から3mm浮かせた状態で保持した。そこに、F344ラットの血漿に上記F344ラット骨髄由来の間葉系幹細胞を200×10
4細胞/1000μlで懸濁させたもの1097μlを注いで良く攪拌(ピペッティング)した。そこにさらに110μlの3.3%塩化カルシウム水溶液を添加して、良く攪拌(ピペッティング)した。これにより凝固反応が進んできた頃を見計らって、さらに37℃で培養(インキュベート)して、凝固反応である血漿中のフィブリノゲンのポリマー化を促進させた。これにより、移植体の上下3mm厚に生着層が形成された。また、同時に円柱状移植体部分の側面にも生着層が形成された。生着層は経時的に収縮し、最終的に約0.3mm以下の厚みになった。こうして完成した円柱状の組織再生コンストラクトの上下面に存在する生着層の細胞密度は約0.5×10
4細胞/mm
2となる。
【0077】
(移植及びその評価)
F344ラット大腿部の上皮を切開し、大腿骨周囲の筋膜、筋肉を裂き大腿骨を露出させた。引き続き露出した大腿骨を創外固定器で固定して隙間10mmの骨欠損を作製した。この骨欠損のモデルに対し、上記円柱状の組織再生コンストラクトを骨断面にちょうど円柱状の上下にある生着層が接するように入れ込み移植した。
組織再生コンストラクトは一塊であり、骨断面に挟み込まれることで固定性が良好であった。
【0078】
筋肉と筋膜を縫合し、さらに上皮も縫合して創を閉じた。治癒過程は1、2、4、8週目の欠損部のレントゲン撮影により評価した。移植後4週目には骨断端と組織再生コンストラクトの端との境界が不明瞭となり、骨架橋が起こっていることが示唆された。また、移植後8週で大腿骨を摘出し、μCT及び病理組織学的に評価した。
【0079】
その結果、組織再生コンストラクトと残存大腿骨が骨架橋しているのが確認された。また、組織再生コンストラクトの移植体にも支持体として使用したハイドロキシアパタイト顆粒を覆うように成熟した骨形成が見られ、一部骨髄様の組織の形成も見られた。ちょうど移植した組織再生コンストラクト全体が一塊で大腿骨に置き換わった格好であった。
以上により、本発明の組織再生コンストラクトを移植することにより、自然治癒が到底不可能な程に大規模なラット大腿骨欠損の治癒が可能であることが確認された。