【実施例】
【0035】
以下、実施例で本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
<元素Aの回収(吸着)量の測定>
元素Aのイオンを粒子化後に、難溶性ポリシランと元素Aの粒子とを濾別した後の溶液(固形物を濾過後の濾液)の元素Aの量を、ICP発光分析装置IRIS Intrepid II XDL(Thermo Elemental社製)により測定した。難溶性ポリシラン添加前に溶液中に存在していた元素Aの量から得られた測定値を差し引いた値を、元素Aの回収(吸着)量として算出した。
【0037】
[実施例1]
ポリジメチルシラン(25.10g)と金の1000ppm水溶液(1776.81g、金として1776.81mg、塩化金酸を塩酸に溶解して調製)をフラスコに加えた。当該フラスコを、室温で2週間撹拌した。当該撹拌により、フラスコ下部に金の沈殿が発生した。当該溶液は下部から、金の沈殿、液体部分、ポリジメチルシラン粉末の順に分離していた。溶液下部から金の沈殿と液体部分の混在物を抜き出し、濾過により金の沈殿と液体部分を濾別した。次いで、溶液の残存部から、濾過により液体部分とポリジメチルシラン粉末を濾別した。この金の沈殿とポリジメチルシラン粉末を減圧下60℃で乾燥して、金の沈殿(1167.24mg)と紫色粉末(23.72g)を得た。この結果、金の沈殿の回収率は66%であった。また、金の沈殿及びポリジメチルシラン粉末回収後の濾液中の金の量を測定し、ポリジメチルシラン添加前の量からの減少分(沈殿した量)を算出したところ、得られた紫色粉末の金吸着量は122μmol/gで、当該紫色粉末中の金の回収率は34%であった。
【0038】
[実施例2]
ポリジメチルシラン(5.13g)と金の1000ppm水溶液(20.10g、金として20.10mg、塩化金酸を塩酸に溶解して調製)をフラスコに加えた。当該フラスコに、窒素気流下、氷冷で攪拌しながらメタノール(50mL)を滴下した。当該フラスコ内の溶液を室温に戻した後、90分間撹拌した。次いで、当該溶液を濾過し、回収した粉末をメタノール(5mL)で3回洗浄した。この粉末を減圧下60℃で乾燥して、紫色粉末(5.10g)を得た。粉末回収後の濾液中の金の量を測定し、ポリジメチルシラン添加前の量からの減少分(ポリジメチルシランに吸着した量)を算出した。得られた粉末の金吸着量と金の回収率を表1に示す。
【0039】
得られた粉末について、広角X線回折測定を行った。当該測定は、リガク社製、X線回折装置SmartLab9kWを使用し、電圧45kV、電流200mA、線源CuKα(波長λ=1.54Å)、平行ビーム法にて、行った。
当該測定により得られたX線回析パターンを
図1に示し、回析角2θが38.17°、面指数(111)における結晶子の直径に対する体積の比率を表す結晶子体積分布の結果を
図2に示す。
図1に示されるX線回析パターンより、測定された粉末は金粒子を含む複合体であることが確認された。また、
図2に示される面指数(111)における結晶子体積分布の結果より、金粒子直径の再頻値が9nm、平均値が54nm、中央値が30nmであることが確認された。
【0040】
[実施例3]
ポリジメチルシランの使用量を5.09gとし、金の1000ppm水溶液に代えて白金の1000ppm水溶液(20.12g、白金として20.12mg、塩化白金酸を塩酸に溶解して調製)を使用し、66時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして灰色粉末(5.02g)を得た。得られた粉末の白金吸着量と白金の回収率を表1に示す。
【0041】
[実施例4]
ポリジメチルシランの使用量を5.18gとし、金の1000ppm水溶液に代えて銀の1000ppm水溶液(20.09g、銀として20.09mg、硝酸銀を硝酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして黄色粉末(5.12g)を得た。得られた粉末の銀吸着量と銀の回収率を表1に示す。
【0042】
[実施例5]
ポリジメチルシランの使用量を5.09gとし、金の1000ppm水溶液に代えて水銀の1000ppm水溶液(20.22g、水銀として20.22mg、塩化水銀を硝酸に溶解して調製)を使用した以外は、実施例2と同様にして白色粉末(5.05g)を得た。得られた粉末の水銀吸着量と水銀の回収率を表1に示す。
【0043】
[実施例6]
ポリジメチルシランの使用量を5.05gとし、金の1000ppm水溶液に代えてロジウムの1000ppm水溶液(20.06g、ロジウムとして20.06mg、塩化ロジウムを塩酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして灰色粉末(5.05g)を得た。得られた粉末のロジウム吸着量とロジウムの回収率を表1に示す。
【0044】
[実施例7]
ポリジメチルシランの使用量を5.21gとし、金の1000ppm水溶液に代えてヨウ素の1269ppm水溶液(20.21g、ヨウ素として25.65mg、ヨウ化カリウムを水に溶解して調製)を使用した以外は、実施例2と同様にして淡黄色粉末(5.17g)を得た。得られた粉末のヨウ素吸着量とヨウ素の回収率を表1に示す。
【0045】
[実施例8]
ポリジメチルシランの使用量を5.09gとし、金の1000ppm水溶液に代えてビスマスの1000ppm水溶液(20.21g、ビスマスとして20.12mg、硝酸ビスマスを硝酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして白色粉末(5.10g)を得た。得られた粉末のビスマス吸着量とビスマスの回収率を表1に示す。
【0046】
[実施例9]
ポリジメチルシランの使用量を5.07gとし、金の1000ppm水溶液に代えてゲルマニウムの1010ppm水溶液(20.17g、ゲルマニウムとして20.37mg、酸化ゲルマニウムを塩酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして白色粉末(5.02g)を得た。得られた粉末のゲルマニウム吸着量とゲルマニウムの回収率を表1に示す。
【0047】
[実施例10]
ポリジメチルシランの使用量を5.02gとし、金の1000ppm水溶液に代えて硫黄の1000ppm水溶液(20.05g、硫黄として20.05mg、硫酸ナトリウムを水に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして白色粉末(5.02g)を得た。得られた粉末の硫黄吸着量と硫黄の回収率を表1に示す。
【0048】
[実施例11]
ポリジメチルシランの使用量を5.02gとし、金の1000ppm水溶液に代えてルテニウムの1000ppm水溶液(20.06g、ルテニウムとして20.06mg、酸化ルテニウムを塩酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして灰色粉末(5.03g)を得た。得られた粉末のルテニウム吸着量とルテニウムの回収率を表1に示す。
【0049】
[実施例12]
ポリジメチルシランの使用量を5.07gとし、金の1000ppm水溶液に代えてオスミウムの1000ppm水溶液(20.47g、オスミウムとして20.47mg、酸化オスミウムを水に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして灰色粉末(5.03g)を得た。得られた粉末のオスミウム吸着量とオスミウムの回収率を表1に示す。
【0050】
[実施例13]
ポリジメチルシランの使用量を5.17gとし、金の1000ppm水溶液に代えてイリジウムの1100ppm水溶液(20.14g、イリジウムとして22.15mg、塩化イリジウムを水に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして白色粉末(5.13g)を得た。得られた粉末のイリジウム吸着量とイリジウムの回収率を表1に示す。
【0051】
[実施例14]
ポリジメチルシランの使用量を5.08gとし、金の1000ppm水溶液に代えてレニウムの1280ppm水溶液(20.31g、レニウムとして26.00mg、過レニウム酸カリウムを塩酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして白色粉末(5.13g)を得た。得られた粉末のレニウム吸着量とレニウムの回収率を表1に示す。
【0052】
[実施例15]
ポリジメチルシランの使用量を5.11gとし、金の1000ppm水溶液に代えて銅の1010ppm水溶液(20.07g、銅として20.27mg、酢酸銅を酢酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして白色粉末(5.13g)を得た。得られた粉末の銅吸着量と銅の回収率を表1に示す。
【0053】
[実施例16]
ポリジメチルシランの使用量を5.25gとし、金の1000ppm水溶液に代えてテルルの1230ppm水溶液(20.29g、テルルとして24.96mg、酸化テルルを塩酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして灰色粉末(5.21g)を得た。得られた粉末のテルル吸着量とテルルの回収率を表1に示す。
【0054】
[実施例17]
ポリジメチルシランの使用量を5.41gとし、金の1000ppm水溶液に代えて鉛の1000ppm水溶液(20.76g、鉛として20.76mg、硝酸鉛を硝酸に溶解して調製)を使用した以外は、実施例2と同様にして白色粉末(5.40g)を得た。得られた粉末の鉛吸着量と鉛の回収率を表1に示す。
【0055】
[実施例18]
ポリジメチルシランの使用量を5.05gとし、金の1000ppm水溶液に代えてひ素の1060ppm水溶液(20.40g、ひ素として21.62mg、メタ亜ひ素酸ナトリウムを水に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして白色粉末(5.03g)を得た。得られた粉末のひ素吸着量とひ素の回収率を表1に示す。
【0056】
[実施例19]
ポリジメチルシランの使用量を5.14gとし、金の1000ppm水溶液に代えてパラジウムの1000ppm水溶液(20.31g、パラジウムとして20.31mg、塩化パラジウムを塩酸に溶解して調製)を使用した以外は、実施例2と同様にして灰色粉末(5.11g)を得た。得られた粉末のパラジウム吸着量とパラジウムの回収率を表1に示す。
【0057】
[実施例20]
ポリジメチルシランの使用量を5.18gとし、金の1000ppm水溶液に代えて金とナトリウム(標準電極電位:−2.714V)の含有水溶液(20.18g、金として9.89mgとナトリウムとして10.29mg含有、塩化金酸と塩化ナトリウムを塩酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして紫色粉末(5.16g)を得た。得られた粉末の金及びナトリウム吸着量と金及びナトリウムの回収率を表1に示す。
【0058】
[実施例21]
ポリジメチルシランに代えてポリジフェニルシラン(15.55g)使用し、金の1000ppm水溶液に代えてパラジウムの1000ppm水溶液(20.35g、パラジウムとして20.35mg、塩化パラジウムを塩酸に溶解して調製)を使用した以外は、実施例2と同様にして灰色粉末(15.13g)を得た。得られた粉末のパラジウム吸着量とパラジウムの回収率を表1に示す。
【0059】
[実施例22]
ポリジメチルシランに代えて下記式(e)で表されるポリシラン(e)(ジフェニルシランとモノフェニルシランの50:50モル%のポリマー)(5.07g)を使用し、金の1000ppm水溶液に代えてパラジウムの100ppm水溶液(20.16g、パラジウムとして2.02mg、塩化パラジウムを塩酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして灰色粉末(5.02g)を得た。得られた粉末のパラジウム吸着量とパラジウムの回収率を表1に示す。
【0060】
[実施例23]
ポリジメチルシランに代えて下記式(f)で表されるポリシラン(f)(ジメチルシランとジフェニルシランの50:50モル%のポリマー)(5.03g)を使用し、金の1000ppm水溶液に代えてパラジウムの100ppm水溶液(20.20g、パラジウムとして2.02mg、塩化パラジウムを塩酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして灰色粉末(5.02g)を得た。得られた粉末のパラジウム吸着量とパラジウムの回収率を表1に示す。
【0061】
【化2】
【0062】
[実施例24]
ポリジメチルシランに代えてポリジフェニルシラン(5.00g)を使用し、金の1000ppm水溶液に代えて金の90ppm水溶液(20.43g、金として1.84mg、塩化金酸を塩酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして紫色粉末(4.98g)を得た。得られた粉末の金吸着量と金の回収率を表1に示す。
【0063】
[実施例25]
ポリジメチルシランに代えて前記ポリシラン(e)(5.03g)を使用し、金の1000ppm水溶液に代えて金の90ppm水溶液(20.27g、金として1.82mg、塩化金酸を塩酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして紫色粉末(4.93g)を得た。得られた粉末の金吸着量と金の回収率を表1に示す。
【0064】
[実施例26]
ポリジメチルシランに代えて前記ポリシラン(f)(5.01g)を使用し、金の1000ppm水溶液に代えて金の90ppm水溶液(20.47g、金として1.84mg、塩化金酸を塩酸に溶解して調製)を使用し、24時間撹拌した以外は、実施例2と同様にして紫色粉末(5.01g)を得た。得られた粉末の金吸着量と金の回収率を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例1〜11に示すように、標準電極電位が0.2V以上であるこれらの元素は、水やメタノール等のプロトン性溶媒溶液中において、ポリジメチルシランによって還元され、得られた粒子をポリジメチルシランに吸着させることができた。また、実施例1においては、金粒子をポリジメチルシランとは独立した沈殿としても回収できた。特に、金、白金、銀、ロジウム、ヨウ素、ゲルマニウム、ルテニウム、オスミウム、及びパラジウムは、回収率が非常に高かった。また、実施例20の結果から、プロトン性溶媒溶液に、標準電極電位が0V以下の元素のイオンと標準電極電位が0Vよりも大きい元素のイオンが含まれている場合においても、標準電極電位が0Vよりも大きい元素の粒子を選択的に製造できることが分かった。さらに、実施例19、21、22及び23を比較したところ、ポリジメチルシラン、ジフェニルシランとモノフェニルシランのポリマー、及びジメチルシランとジフェニルシランのポリマーのほうが、ポリジフェニルシランよりもパラジウムの回収率が明らかに高く、難溶性ポリシランの種類によって回収率に差が出ることもわかった。