(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876938
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】コンバータ回路の少なくとも1つの相電圧源によって励振されるアークを除去するための方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
H02M7/12 H
H02M7/12 601D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-545163(P2014-545163)
(86)(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公表番号】特表2015-500621(P2015-500621A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2012073360
(87)【国際公開番号】WO2013083414
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2014年7月1日
(31)【優先権主張番号】11191935.3
(32)【優先日】2011年12月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508346767
【氏名又は名称】アーベーベー・テクノロジー・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グギスベルク,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】エッカレ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バルストローム,ジョナス
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−121060(JP,A)
【文献】
特表2012−530897(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/023276(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00−11/00
H02M 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバータ回路(1)の少なくとも1つの相電圧源(3)によって励振されるアークを除去するための方法であって、当該方法において、コンバータ回路(1)は、コンバータユニット(2)とエネルギ蓄積回路(4)とを有し、少なくとも1つの相電圧源(3)は、コンバータユニット(2)の交流電圧側に接続され、コンバータユニット(2)は、多数の作動可能な電力用半導体スイッチを有し、
コンバータ回路(1)の動作中に、発生するアークが検出され、その後少なくとも1つの相電圧源(3)が短絡され、
アークを検出するために、コンバータ回路(1)の状態変数が、状態変数のあらかじめ決定可能なしきい値について観察されることと、
状態変数とあらかじめ決定可能なしきい値とが一致しない場合、少なくとも1つの相電圧源(3)を短絡させるためにコンバータユニット(2)を介して少なくとも1つの短絡経路が形成されるように、コンバータユニット(2)の作動可能な電力用半導体スイッチのうち少なくともいくつかが作動されることとを特徴とする、方法。
【請求項2】
エネルギ蓄積回路(4)はコンバータユニット(2)の直流電圧側に接続され、状態変数は、エネルギ蓄積回路(4)の両端の電圧であり、状態変数のあらかじめ決定可能なしきい値は、エネルギ蓄積回路(4)の両端の電圧のあらかじめ決定可能なしきい値であり、エネルギ蓄積回路(4)の両端の電圧があらかじめ決定可能なしきい値をアンダーシュートする場合、少なくとも1つの相電圧源(3)を短絡させるためにコンバータユニット(2)を介して少なくとも1つの短絡経路が形成されるように、コンバータユニット(2)の作動可能な電力用半導体スイッチのうち少なくともいくつかが作動されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
状態変数は、コンバータユニット(2)の交流電圧側の位相接続(A)における電圧であり、状態変数のあらかじめ決定可能なしきい値は、コンバータユニット(2)の交流電圧側の位相接続(A)における電圧のあらかじめ決定可能なしきい値であり、コンバータユニット(2)の交流電圧側の位相接続(A)における電圧があらかじめ決定可能なしきい値をアンダーシュートする場合、少なくとも1つの相電圧源(3)を短絡させるためにコンバータユニット(2)を介して少なくとも1つの短絡経路が形成されるように、コンバータユニット(2)の作動可能な電力用半導体スイッチのうち少なくともいくつかが作動されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コンバータ回路(1)の少なくとも1つの相電圧源(3)によって励振されるアークを除去するための方法であって、当該方法において、コンバータ回路は、コンバータユニット(2)とエネルギ蓄積回路(4)とを有し、少なくとも1つの相電圧源(3)は、コンバータユニット(2)の交流電圧側に接続され、エネルギ蓄積回路(4)は、コンバータユニット(2)の直流電圧側に接続され、コンバータユニット(2)は、多数の作動可能な電力用半導体スイッチを有し、
コンバータ回路(1)の動作中に、発生するアークが検出され、その後少なくとも1つの相電圧源(3)が短絡され、
アークを検出するために、コンバータ回路の周囲環境が、アーク光の発生について視覚的に観察されることと、
アーク光が発生した場合には、少なくとも1つの相電圧源(3)を短絡させるためにコンバータユニット(2)を介して少なくとも1つの短絡経路が形成されるように、コンバータユニット(2)の作動可能な電力用半導体スイッチのうち少なくともいくつかが作動されることとを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
技術分野
本発明は、パワーエレクトロニクスの分野に関する。独立請求項の序文に係る、コンバータ回路の少なくとも1つの相電圧源によって励振されるアークを除去するための方法に基づく。
【背景技術】
【0002】
先行技術
コンバータ回路は、今日では典型的にコンバータユニットを有し、前記コンバータユニットの交流電圧側には少なくとも2つの位相接続が設けられ、それにより対応する交流電圧を提供するための相電圧源を前記位相接続に接続することが可能となる。コンバータユニットの直流電圧側では、コンバータ回路は、たとえば1つ以上の容量性エネルギ蓄積装置によって形成されるエネルギ蓄積回路を典型的に備える。
【0003】
コンバータ回路の動作中、すなわちコンバータユニットの交流電圧側からコンバータユニットの直流電圧側に電気エネルギが流れ、交流電圧がその過程で整流されている場合、またはコンバータユニットの直流電圧側からコンバータユニットの交流電圧側に電気エネルギが流れ、直流電圧がその過程で反転されている場合、故障の結果、相電圧源によって電流に関して励振されるアークが、たとえばコンバータユニットの交流電圧側、さもなければコンバータユニットの直流電圧側で生じることが起こり得る。そのようなアークは極めて望ましくない。なぜなら、コンバータユニットだけでなく、コンバータ回路全体を破損したり、破壊すらする可能性があるからである。
【0004】
一般に、相電圧源を短絡させるために、位相接続においてメカニカルスイッチが使用される。発生するアークがコンバータ回路において検出された場合、相電圧源によって電流に関して励振されるアークを除去するために相電圧源を短絡させるために、メカニカルスイッチが閉じられる。しかし、そのようなメカニカルスイッチは、応答時間が遅く、物理的サイズが非常に大きく、高度な保守を必要とし、コンバータ回路の設計の複雑度が高い。
【0005】
DE102009002684A1に開示されているように、プラズマ負荷を供給するためのコンバータ回路においても望ましくないアークが生じる可能性がある。DE102009002684A1の段落[0006]および[0007]に
図1aと合わせて記載されているように、コンバータ回路のMFコイルL1,L2によってアークが生成される。DE102009002684A1の段落[0045]に記載されているように、コンバータ回路のMFコイルL1,L2によって生成されるアークを除去するために、出力接続13,14における電圧の極性が逆にされ、これに先立ち、電圧が0Vの領域の値に設定され、出力接続13,14間の電流が0Aの領域の値に設定される。すなわち、接続されているプラズマ負荷が供給源から切離され、電源が切られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の説明
したがって発明の目的は、コンバータ回路の少なくとも1つの相電圧源によって励振されるアークを除去するための方法を特定することにあり、当該方法により、コンバータ回路で生じるアークを特に容易かつ迅速に除去することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴または請求項4の特徴によって実現される。発明の有利な展開は従属請求項で特定される。
【0008】
発明に係る方法において、コンバータ回路は、コンバータユニットと、少なくとも1つの相電圧源と、エネルギ蓄積回路とを有し、少なくとも1つの相電圧源は、コンバータユニットの交流電圧側に接続される。また、コンバータユニットは、多数の作動可能な電力用半導体スイッチを含む。当該方法によれば、動作中に、コンバータ回路が、発生するアークを検出し、次いで少なくとも1つの相電圧源が短絡される。発明によれば、アークを検出するために、コンバータ回路の状態変数が、状態変数のあらかじめ決定可能なしきい値について観察される。状態変数とあらかじめ決定可能なしきい値とが一致しない場合、少なくとも1つの相電圧源を短絡させるためにコンバータユニットを介して少なくとも1つの短絡経路が形成されるように、コンバータユニットの作動可能な電力用半導体スイッチのうち少なくともいくつかが作動される。発生しているアークの上述の検出と、コンバータユニットを介する少なくとも1つの短絡経路の形成とによって、発生するアークを特に容易かつ迅速に有利に消滅させ、ゆえに除去することができる。少なくとも1つの相電圧源を短絡させるための、先行技術から公知のメカニカルスイッチなどの追加的な短絡装置は必要とされない。
【0009】
コンバータ回路の状態変数による上述の検出の代替例として、アークを検出するために、コンバータ回路の周囲環境が、アーク光の発生について視覚的に観察される。アーク光が発生した場合には、少なくとも1つの相電圧源を短絡させるためにコンバータユニットを介して少なくとも1つの短絡経路が形成されるように、コンバータユニットの作動可能な電力用半導体スイッチのうち少なくともいくつかが同様に作動される。発生しているアークのこの代替的な検出と、少なくとも1つの短絡経路のコンバータユニットを介する形成とによっても、発生しているアークを特に容易かつ迅速に有利に消滅させ、したがって除去することができる。この場合にも、追加的な短絡装置は必要とされない。
【0010】
本発明のこれらのおよびさらなる目的、利点および特徴は、図面と合わせて、発明の好ましい実施の形態に関する以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】発明に係る方法に従った、例示される短絡電流経路を有するコンバータ回路の第1の実施の形態を示す図である。
【
図2】発明に係る方法に従った、例示される短絡電流経路を有するコンバータ回路の第2の実施の形態を示す図である。
【
図3】発明に係る方法に従った、例示される短絡電流経路を有するコンバータ回路の第3の実施の形態を示す図である。
【
図4】発明に係る方法に従った、例示される短絡電流経路を有するコンバータ回路の第4の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面中で使用される参照符号およびその意味は、参照符号のリストの要約によって列挙される。原則として、同一の部品には図において同じ参照符号を付している。記載される実施の形態は、発明の主題を例として示し、いずれの限定的な効果も有さない。
【0013】
発明を実施するための手法
図1は、発明に係る方法に従った、例示される短絡電流経路を有するコンバータ回路の第1の実施の形態を示す。
図2〜
図4は、コンバータ回路の第2、第3、および第4の実施の形態をそれぞれ示し、これらのコンバータ回路の各々において、発明に係る方法に従った、想定される短絡経路が例示される。
図1〜
図4に示されるコンバータ回路のそれぞれの想定される短絡経路は、太字で例示される。概して、コンバータ回路1は、コンバータユニット2、少なくとも1つの相電圧源3、およびエネルギ蓄積回路4を有し、少なくとも1つの相電圧源3は、コンバータユニット2の交流電圧側に接続される。相電圧源3の接続は、コンバータユニット2の交流電圧側の位相接続Aにおいて行われる。
図1〜
図4に示されるコンバータ回路はすべて三相設計を有するため、いずれの場合も三相電圧源3も設けられ、概して、上述したように、少なくとも1つの相電圧源3が設けられる。さらに、コンバータユニット2は概して多数の作動可能な電力用半導体スイッチを有し、
図1によれば、作動可能な電力用半導体スイッチとしてサイリスタが使用され、
図2によれば、ゲート転流型ターンオフサイリスタ(integrated gate-commutated thyristors)(IGCTs)が使用される。対照的に、
図3に示されるコンバータ回路の場合、好ましくは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)およびサイリスタが作動可能な電力用半導体スイッチとして使用され、想定される短絡経路はその場合、
図3に例示されるサイリスタを介して動作する。好ましくは、
図4に示されるコンバータ回路の場合も、作動可能な電力用半導体スイッチとしてIGCTを使用することができ、その場合、想定される短絡経路はIGCTを介して動作する。
【0014】
当該方法によれば、動作中にアークが発生した場合、このアークが検出され、その後少なくとも1つの相電圧源3が短絡される。そのようなアークは故障の結果として生じることがあり、アークは、少なくとも1つの相電圧源3によって、電流に関して典型的に励振される。発明によれば、アークを検出するために、状態変数のあらかじめ決定可能なしきい値について、コンバータ回路1の状態変数が観察される。状態変数とあらかじめ決定可能なしきい値とが一致しない場合、少なくとも1つの相電圧源3を短絡させるためにコンバータユニット2を介して少なくとも1つの短絡経路が形成されるように、コンバータユニット2の作動可能な電力用半導体スイッチのうち少なくともいくつかが作動される。発生しているアークの上述の検出と、少なくとも1つの短絡経路のコンバータユニット2を介する形成とによって、発生しているアークを特に容易かつ迅速に有利に消滅させ、したがって除去することができる。追加的な短絡装置を有利に省くことができる。
【0015】
コンバータ回路1の状態変数による上述の検出の代替例として、アークを検出するために、コンバータ回路1の周囲環境がアーク光の発生について視覚的に観察され、アーク光が発生した場合には、少なくとも1つの相電圧源3を短絡させるためにコンバータユニット2を介して再び少なくとも1つの短絡経路が形成されるように、コンバータユニット2の作動可能な電力用半導体スイッチのうち少なくともいくつかが同様に作動される。視覚的な観察のために、たとえばフォトダイオードまたは別の感光性電子部品、さもなければカメラを使用することができる。発生しているアークのこの代替的な検出と、少なくとも1つの短絡経路のコンバータユニット2を介する形成とによっても、発生しているアークを特に容易かつ迅速に有利に消滅させ、したがって除去することができる。この代替例の場合でも、追加的な短絡装置は必要とされない。
【0016】
例として
図1〜
図4に例示されるように、エネルギ蓄積回路4がコンバータ回路1に関してコンバータユニットの直流電圧側に接続される場合、状態変数は、好ましく
はエネルギ蓄積回路4の両端の電圧であり、状態変数のあらかじめ決定可能なしきい
値は、エネルギ蓄積回路4の両端の電圧のあらかじめ決定可能なしきい値である。エネルギ蓄積回路は、たとえばコンデンサなどの1つ以上の容量性エネルギ蓄積装置を備える。エネルギ蓄積回路4の両端の電圧
があらかじめ決定可能なしきい値
をアンダーシュートする場合、少なくとも1つの相電圧源3を短絡させるためにコンバータユニット2を介して少なくとも1つの短絡経路が形成されるように、コンバータユニット2の作動可能な電力用半導体スイッチのうち少なくともいくつかが作動される。
【0017】
状態変数であるエネルギ蓄積回路4の両端の電圧の代替例として、状態変数をコンバータユニット2の交流電圧側の位相接続Aにおける電圧とし、状態変数のあらかじめ決定可能なしきい値を、コンバータユニット2の交流電圧側の位相接続Aにおける電圧のあらかじめ決定可能なしきい値とすることも考えられる。コンバータユニット2の交流電圧側の位相接続Aにおける電圧
があらかじめ決定可能なしきい値
をアンダーシュートする場合、少なくとも1つの相電圧源3を短絡させるためにコンバータユニット2を介して少なくとも1つの短絡経路が形成されるように、コンバータユニット2の作動可能な電力用半導体スイッチのうち少なくともいくつかが作動される。
【0018】
図3および
図4に示されるコンバータ回路の場合、状態変数であるエネルギ蓄積回路4の両端の電圧の代替例として、または状態変数であるコンバータユニット2の交流電圧側の位相接続Aにおける電圧の代替例として、状態変数を、コンバータユニット2の、
図3および
図4に例示されるようにコンバータ回路要素5の両端の電圧とし、状態変数のあらかじめ決定可能なしきい値を、コンバータ回路要素5の両端の電圧のあらかじめ決定可能なしきい値とすることも考えられる。不一致の場合、特にコンバータ回路要素5の両端の電圧
があらかじめ決定可能なしきい値
をアンダーシュートする場合、少なくとも1つの相電圧源3を短絡させるためにコンバータユニット2を介して少なくとも1つの短絡経路が形成されるように、コンバータユニット2の作動可能な電力用半導体スイッチのうち少なくともいくつかが作動される。
【符号の説明】
【0020】
1 コンバータ回路
2 コンバータユニット
3 相電圧源
4 エネルギ蓄積回路
5 コンバータ回路要素
A 位相接続