特許第5876940号(P5876940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876940
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
   H02M3/155 FZHV
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-545518(P2014-545518)
(86)(22)【出願日】2012年11月9日
(86)【国際出願番号】JP2012079065
(87)【国際公開番号】WO2014073087
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100157473
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 啓
(72)【発明者】
【氏名】山田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】土屋 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】肥喜里 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】井谷 幸一
(72)【発明者】
【氏名】遠山 洋
(72)【発明者】
【氏名】三宅 範明
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−515212(JP,A)
【文献】 特開2001−136607(JP,A)
【文献】 特開2008−061492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池とキャパシタとを組み合わせて負荷に電源を供給する電源装置であって、
前記キャパシタからの前記負荷への電源の供給をスイッチングするスイッチング素子と、
前記二次電池の電圧を昇圧して前記負荷に供給可能とするDC−DCコンバータと、
前記キャパシタの電圧が前記負荷を駆動可能な最低電圧を下回った場合に、前記スイッチング素子をパルス制御するとともに、前記DC−DCコンバータを前記スイッチング素子と交互にパルス電流を出力するように制御し、交互に出力されるパルス電流を合成して前記負荷に電源を供給可能とする制御部と、を備える電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記DC−DCコンバータは、前記キャパシタの電圧の降下に応じて前記二次電池の電圧を昇圧するゲインを大きくする電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電源装置において、
前記スイッチング素子は、前記キャパシタの電圧が前記負荷を駆動可能な電圧である場合には、前記キャパシタから前記負荷に連続的に電源を供給可能とする電源装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電源装置において、
前記制御部は、前記キャパシタの電圧が前記負荷を駆動可能な最低電圧と比較して余裕電圧分だけ高い電圧よりも低くなった場合に、前記スイッチング素子をパルス制御するとともに、前記DC−DCコンバータを前記スイッチング素子と交互にパルス電流を出力するように制御し、交互に出力されるパルス電流を合成して前記負荷に電源を供給可能とする電源装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電源装置において、
前記制御部は、前記キャパシタの電圧が当該キャパシタの最低作動電圧と比較して余裕電圧分だけ高い電圧よりも低くなった場合に、前記スイッチング素子を遮断状態に切り換えるとともに、前記DC−DCコンバータを制御して前記二次電池から前記負荷に連続的に電源を供給可能とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に電源を供給する電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、バッテリとキャパシタとを組み合わせて負荷に電源を供給する電源装置が用いられている。JP2006−345606Aには、バッテリとキャパシタとが並列に接続される車両用電源システムが開示されている。この電源システムでは、キャパシタとバッテリとから供給される電気エネルギによって、電動モータのインバータを駆動している。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、JP2006−345606Aの電源システムでは、キャパシタの電圧がインバータを駆動可能な電圧よりも低下すると、キャパシタからの電気エネルギではモータの駆動ができなくなる。また、キャパシタは、放電時に電圧が緩やかに降下する二次電池とは異なり、放電時に電圧が直線的に降下する特性を有する。そのため、キャパシタの電圧が降下すると、電気エネルギが残存しているにも関わらず、キャパシタから電気エネルギを供給してインバータを駆動することができなくなっていた。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、キャパシタの電気エネルギを有効に活用することを目的とする。
【0005】
本発明のある形態によれば、二次電池とキャパシタとを組み合わせて負荷に電源を供給する電源装置であって、前記キャパシタからの前記負荷への電源の供給をスイッチングするスイッチング素子と、前記二次電池の電圧を昇圧して前記負荷に供給可能とするDC−DCコンバータと、前記キャパシタの電圧が前記負荷を駆動可能な最低電圧を下回った場合に、前記スイッチング素子をパルス制御するとともに、前記DC−DCコンバータを前記スイッチング素子と交互にパルス電流を出力するように制御し、交互に出力されるパルス電流を合成して前記負荷に電源を供給可能とする制御部と、を備える電源装置が提供される。
【0006】
本発明の実施形態、本発明の利点については、添付された図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施の形態による電源装置の電気回路図である。
図2図2は、本発明の実施の形態による電源装置のブロック図である。
図3図3は、電源装置から負荷への電源供給制御を示すフローチャートである。
図4図4は、電源装置の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1から図4を参照して、本発明の実施の形態による電源装置100について説明する。
【0009】
まず、図1及び図2を参照して、電源装置100の構成について説明する。
【0010】
電源装置100は、二次電池1とキャパシタ2とを組み合わせて負荷に電源を供給するものである。この負荷は、二次電池1とキャパシタ2とから電源が供給されて電動機5を駆動するインバータ50である。電源装置100は、HEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド車両)やEV(Electric Vehicle:電動車両)などに適用される。
【0011】
最初に、電源装置100から電源が供給されるインバータ50と、インバータ50によって駆動される電動機5とについて説明する。
【0012】
電動機5は、HEVやEVに搭載される駆動用モータである。電動機5は、三相交流で回転磁界を生成して駆動される三相誘導モータジェネレータである。電動機5は、U相,V相,及びW相をそれぞれ構成する複数のコイル(図示省略)を内周に有する固定子と、永久磁石を有し固定子の内周を回転する回転子とを備える。電動機5は、固定子が車体(図示省略)に固定され、回転子の回転軸が車輪の車軸(図示省略)に連結される。電動機5は、電気エネルギを車輪の回転に変換することが可能であるとともに、車輪の回転を電気エネルギに変換することが可能である。
【0013】
インバータ50は、二次電池1とキャパシタ2とから供給された直流電力から交流電力を生成する電流変換機である。インバータ50は、定格電圧が600Vであり、駆動可能な最低電圧が350Vである。この最低電圧が、負荷を駆動可能な最低電圧に該当する。
【0014】
インバータ50は、二次電池1とキャパシタ2とから供給された直流電力を、120度ずつ位相のずれたU相,V相,及びW相からなる三層の交流に変換して電動機5に供給する。
【0015】
インバータ50は、正側電力線51aと、負側電力線51bと、U相電力線51uと、V相電力線51vと、W相電力線51wとを有する。正側電力線51aは、二次電池1及びキャパシタ2の正極に接続される。負側電力線51bは、二次電池1及びキャパシタ2の負極に接続される。正側電力線51aと負側電力線51bとの間には、U相電力線51u,V相電力線51v,及びW相電力線51wが設けられる。また、正側電力線51aと負側電力線51bとの間には、二次電池1及びキャパシタ2とインバータ50との間で授受される直流電力を平滑化する平滑コンデンサ55が並列接続される。
【0016】
インバータ50は、六つのスイッチング素子としてのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)53u,54u,53v,54v,53w,及び54wを有している。これらのIGBT53u〜54wは、逆方向に並列接続される整流ダイオードを有するダイオード付きIGBTである。
【0017】
IGBT53uとIGBT54uとは、U相電力線51uに直列に設けられる。U相電力線51uは、IGBT53uとIGBT54uとの間が、電動機5のU相を構成するコイルに接続される。IGBT53vとIGBT54vとは、V相電力線51vに直列に設けられる。V相電力線51vは、IGBT53vとIGBT54vとの間が、電動機5のV相を構成するコイルに接続される。IGBT53wとIGBT54wとは、W相電力線51wに直列に設けられる。W相電力線51wは、IGBT53wとIGBT54wとの間が、電動機5のW相を構成するコイルに接続される。
【0018】
インバータ50は、IGBT53u,54u,53v,54v,53w,及び54wが、モータコントローラ(図示省略)によって制御されることによって、交流電流を生成して電動機5を駆動している。
【0019】
次に、電源装置100の構成について説明する。
【0020】
電源装置100は、二次電池1を有する二次電池電源部11と、キャパシタ2を有するキャパシタ電源部21と、二次電池1とキャパシタ2とからのインバータ50への電源の供給を制御する制御部としてのコントローラ30(図2参照)とを備える。二次電池電源部11とキャパシタ電源部21とは、並列に接続される。つまり、二次電池1とキャパシタ2とは、並列に接続される。
【0021】
二次電池1は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池などの化学電池である。ここでは、二次電池1の電圧は、300Vに設定される。二次電池1には、SOC(State of Charge:充電状態)を検出し、対応する信号をコントローラ30に送信する二次電池SOC検出器1a(図2参照)が設けられる。
【0022】
キャパシタ2は、直列に複数接続して所望の電圧に設定されるとともに、並列に複数接続して所望の蓄電容量に設定される電気二重層キャパシタである。ここでは、キャパシタ2の電圧は、600Vに設定される。キャパシタ2には、電圧を検出し、対応する信号をコントローラ30に送信するキャパシタ電圧検出器2a(図2参照)が設けられる。
【0023】
キャパシタ電源部21は、キャパシタ2からのインバータ50への電源の供給をスイッチングするスイッチング素子25を備える。
【0024】
スイッチング素子25は、コントローラ30によって開閉制御される。スイッチング素子25は、接続状態に切り換えられたときに、キャパシタ2からインバータ50に電源を直接供給可能とするものである。スイッチング素子25は、例えばIGBTやMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などの電気的に高速で開閉制御可能なスイッチである。
【0025】
スイッチング素子25は、キャパシタ2の電圧が電動機5を駆動可能な電圧である場合には、キャパシタ2からインバータ50に連続的に電源を供給するように接続状態に切り換えられる。スイッチング素子25が遮断状態に切り換えられると、キャパシタ2からインバータ50に電源を供給することはできなくなる。
【0026】
また、スイッチング素子25は、接続状態に切り換えられたときに、電動機5によって発電された電力をキャパシタ2に直接充電可能とする。これにより、キャパシタ2の充電時のエネルギロスを減らすことができる。
【0027】
二次電池電源部11は、キャパシタ2からの電源だけではインバータ50を駆動できなくなった場合に、二次電池1の電圧を昇圧して電動機5に供給可能とするDC−DCコンバータ15を備える。
【0028】
DC−DCコンバータ15は、二次電池1の電圧を昇圧して電動機5に供給可能とするとともに、電動機5によって発電された電力を降圧して二次電池1に充電することが可能である。
【0029】
DC−DCコンバータ15は、二次電池1の下流に設けられるリアクトル16と、リアクトル16と電動機5の上流との間に設けられ、スイッチングによって電動機5からの充電電圧を降圧可能な降圧制御トランジスタ17と、リアクトル16と電動機5の下流との間に設けられ、リアクトル16の電流をスイッチングして、電動機5へ供給される供給電圧を誘導起電力によって昇圧可能な昇圧制御トランジスタ18とを備える。
【0030】
リアクトル16は、昇圧制御トランジスタ18がオンのときにエネルギを蓄積する。そして、昇圧制御トランジスタ18がオフになったときには、キャパシタ2から入力される電圧と、リアクトル16に蓄積されたエネルギによる誘導起電力とが出力される。これにより、リアクトル16は、昇圧制御トランジスタ18によるスイッチングによって、入力電圧を昇圧して出力することが可能である。
【0031】
昇圧制御トランジスタ18は、コントローラ30によってスイッチングされる。昇圧制御トランジスタ18は、逆方向に並列接続される整流ダイオードを有するダイオード付きIGBTである。昇圧制御トランジスタ18は、リアクトル16の電流をスイッチングして、電動機5へ供給される供給電圧を誘導起電力によって昇圧することが可能である。
【0032】
昇圧制御トランジスタ18がオンにスイッチングされると、キャパシタ2の正極からの電流は、リアクトル16と昇圧制御トランジスタ18とを経由してキャパシタ2の負極に流れる。この電流のループによって、リアクトル16にエネルギが蓄積される。
【0033】
降圧制御トランジスタ17は、コントローラ30によってスイッチングされる。降圧制御トランジスタ17は、逆方向に並列接続される整流ダイオードを有するダイオード付きIGBTである。降圧制御トランジスタ17は、スイッチングによって電動機5からの充電電圧を降圧可能なものである。降圧制御トランジスタ17は、電動機5が発電した電力を、チョッパ制御によって降圧してキャパシタ2に充電するものである。
【0034】
平滑コンデンサ19は、降圧制御トランジスタ17がチョッパ制御を行って出力された電圧を平滑化するものである。これにより、電動機5によって発電された電力をキャパシタ2に充電する際の電圧を平滑化して安定させることができる。
【0035】
コントローラ30(図2参照)は、電源装置100の制御を行うものである。コントローラ30は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータである。RAMは、CPUの処理におけるデータを記憶する。ROMは、CPUの制御プログラム等を予め記憶する。I/Oインターフェースは、接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどを、ROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって、電源装置100の制御が実現される。
【0036】
次に、図3及び図4を参照して、コントローラ30による電源装置100の制御について説明する。コントローラ30は、図3に示されるルーチンを、例えば10ミリ秒ごとの一定時間隔で繰り返し実行する。図4では、横軸は時間であり、縦軸は上から順に電動機5の駆動力,キャパシタ2の出力電圧,二次電池1の出力電圧,及びインバータ50の入力電圧である。
【0037】
ステップ101では、コントローラ30は、キャパシタ電圧検出器2aが検出したキャパシタ2の電圧を読み込む。
【0038】
ステップ102では、コントローラ30は、キャパシタ2の電圧が第一設定電圧以上であるか否かを判定する。ステップ102にて、キャパシタ2の電圧が第一設定電圧以上であると判定された場合には、ステップ103に移行して、リターンする。
【0039】
この第一設定電圧は、インバータ50を駆動可能な最低電圧と比較して余裕電圧分だけ高い値に設定される。ここでは、インバータ50を駆動可能な最低電圧は350Vであるため、第一設定電圧は、350Vよりも少し高い値に設定される。
【0040】
ステップ103では、コントローラ30は、スイッチング素子25を接続状態とする。これにより、キャパシタ2からインバータ50に連続的に電源が供給されて、電動機5が駆動されることとなる。
【0041】
この状態は、図4におけるtからtの間の時間に相当する。具体的には、tから電動機5によるEV走行が開始され、キャパシタ2の電圧は、消費された電気エネルギの分だけ比例的に降下する。そして、このEV走行は、キャパシタ2の電圧がインバータ50を駆動可能な最低電圧に近づき、上述した第一設定電圧を下回るまで継続される。
【0042】
このとき、キャパシタ2からインバータ50に電源が直接供給されるため、エネルギロスが小さい。よって、キャパシタ2の特性を活かして、大電流を瞬時にインバータ50に供給することが可能である。
【0043】
一方、ステップ102にて、キャパシタの電圧が第一設定電圧よりも低いと判定された場合には、ステップ104に移行する。このとき、キャパシタ2内には、電気エネルギが残存している。電気エネルギの減少が電圧の降下に比例すると考えた場合、600Vから350Vまで降圧したキャパシタ2内には、フル充電のときを100%とすると約34%の電気エネルギが残存していることとなる。
【0044】
従来は、キャパシタ2の電圧がインバータ50を駆動可能な最低電圧を下回ると、キャパシタ2内に電気エネルギが残存しているにも関わらず、キャパシタ2からのインバータ50の駆動は行われなかった。そこで、電源装置100では、以下のようにして、キャパシタ2内に残存する電気エネルギを利用している。
【0045】
ステップ104では、コントローラ30は、キャパシタ2の電圧が第二設定電圧以上であるか否かを判定する。ステップ104にて、キャパシタ2の電圧が第二設定電圧以上であると判定された場合には、ステップ105に移行して、リターンする。一方、ステップ104にて、キャパシタの電圧が第二設定電圧よりも低いと判定された場合には、ステップ106に移行して、リターンする。
【0046】
この第二設定電圧は、キャパシタ2が作動可能な最低電圧である最低作動電圧と比較して余裕電圧分だけ高い値に設定される。また、第二設定電圧は、上述した第一設定電圧と比較して低い値に設定される。
【0047】
ステップ105では、コントローラ30は、スイッチング素子25をパルス制御するとともに、DC−DCコンバータ15をスイッチング素子25と交互にパルス電流を出力するように制御し、交互に出力されるパルス電流を合成してインバータ50に電源を供給可能とする。
【0048】
この状態は、図4におけるtからtの間の時間に相当する。具体的には、tにおいて、キャパシタ2の電圧が第一設定電圧よりも低くなると、まず、コントローラ30は、スイッチング素子25を遮断状態とし、キャパシタ2からインバータ50への電源の供給を停止する。同時に、コントローラ30は、DC−DCコンバータ15を制御して、二次電池1からの電源を第一設定電圧よりも高い電圧まで昇圧して、二次電池1からインバータ50へ電源を供給させる。次に、コントローラ30は、DC−DCコンバータ15を制御して、二次電池1からインバータ50への電源の供給を停止する。同時に、コントローラ30は、スイッチング素子25を接続状態とし、キャパシタ2からインバータ50へ電源を供給させる。
【0049】
コントローラ30は、これらの動作を高速で繰り返して実行することで、キャパシタ2からのパルス電流と二次電池1からのパルス電流とを合成する。これにより、インバータ50へは、インバータ50を駆動可能な最低電圧よりも高い電圧となった電源が供給されることとなる。よって、tから開始されたEV走行がtを過ぎてもtまで継続されることとなる。このEV走行は、キャパシタ2の電圧が最低作動電圧に近づき、上述した第二設定電圧を下回るまで継続される。
【0050】
このとき、インバータ50へ入力される電源は、平滑コンデンサ55によって電圧の増減が平滑化される。また、DC−DCコンバータ15は、キャパシタ2の電圧の降下に応じて二次電池1の電圧を昇圧するゲインを大きくする。これにより、キャパシタ2の電圧が降下してきても、その分を補うことができる。
【0051】
以上のように、コントローラ30は、キャパシタ2の電圧がインバータ50を駆動可能な最低電圧を下回った場合に、スイッチング素子25をパルス制御するとともに、DC−DCコンバータ15をスイッチング素子25と交互にパルス電流を出力するように制御し、交互に出力されるパルス電流を合成してインバータ50に電源を供給可能とする。
【0052】
これにより、キャパシタ2の電圧がインバータ50を駆動可能な最低電圧を下回っても、スイッチング素子25とDC−DCコンバータ15との制御によって、キャパシタ2と二次電池1とから交互に出力されるパルス電流が合成されてインバータ50に電源が供給される。したがって、キャパシタ2内に残存した電気エネルギを用いてインバータ50を駆動することができ、キャパシタ2の電気エネルギを有効に活用することができる。
【0053】
また、キャパシタ2の電気エネルギを有効に活用できるため、同じ電気エネルギをインバータ50に出力するために必要なキャパシタ2の容量を小さくできる。よって、キャパシタ2の小型軽量化が可能である。また、電源装置100がHEVに適用される場合には、従来と比較してEV走行可能な距離が長くなるため、エンジンによる燃料消費量を低減することができる。
【0054】
一方、ステップ106では、コントローラ30は、スイッチング素子25を遮断状態に切り換えるとともに、DC−DCコンバータ15を制御して二次電池1からインバータ50に連続的に電源を供給可能とする。ステップ106では、キャパシタ2内の電気エネルギは既に使用不可能なレベルまで減少しているため、二次電池1を用いてインバータ50を駆動する。具体的には、二次電池1の電圧を300Vから上述した第一設定電圧まで昇圧させて、インバータ50を駆動する。
【0055】
つまり、キャパシタ2の電圧が第二設定電圧よりも低くなった場合には、キャパシタ2からインバータ50への電源の供給が停止され、DC−DCコンバータ15を介して二次電池1のみからインバータ50へ電源が供給される。
【0056】
この状態は、図4におけるtからtの間の時間に相当する。具体的には、二次電池1の電圧がDC−DCコンバータ15によって昇圧されてインバータ50に供給されるため、tから開始されたEV走行がtを過ぎてもtまで継続されることとなる。
【0057】
そして、このEV走行は、二次電池SOC検出器1aによって検出された二次電池1のSOCが設定値を下回るまで継続可能である。なお、HEVの場合には、二次電池SOC検出器1aによって検出された二次電池1のSOCが設定値を下回っても、車両のエンジン(図示省略)が作動して、エンジンからの駆動力によって走行することが可能である。
【0058】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0059】
電源装置100では、キャパシタ2の電圧がインバータ50を駆動可能な最低電圧を下回った場合には、コントローラ30は、スイッチング素子25とDC−DCコンバータ15とを制御し、キャパシタ2と二次電池1とから交互に出力されるパルス電流を合成してインバータ50に電源を供給可能とする。このとき、DC−DCコンバータ15は、二次電池1の電圧を昇圧することができる。
【0060】
そのため、キャパシタ2からのパルス電流に、昇圧された二次電池1からのパルス電流を合成することで、インバータ50に供給される電源の電圧を、インバータ50を駆動可能な電圧まで昇圧することが可能である。したがって、キャパシタ2内に残存した電気エネルギを用いてインバータ50を駆動することができ、キャパシタ2の電気エネルギを有効に活用することができる。
【0061】
また、キャパシタ2の電気エネルギを有効に活用できるため、同じ電気エネルギをインバータ50に出力するために必要なキャパシタ2の容量を小さくできる。よって、キャパシタ2の小型軽量化が可能である。また、電源装置100がHEVに適用される場合には、従来と比較してEV走行可能な距離が長くなるため、エンジンによる燃料消費量を低減することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0063】
例えば、上述した実施の形態における電圧などの数値は例示したものであり、これらの数値に限定されるものではない。
【0064】
また、上述した実施の形態では、電源装置100はコントローラ30によって制御され、インバータ50はモータコントローラ(図示省略)によって制御される。これに代えて、電源装置100とインバータ50とを単一のコントローラによって制御するようにしてもよい。
【0065】
また、上述した各々のIGBTは、逆方向に並列接続される整流ダイオードを有するダイオード付きIGBTである。これに代えて、ダイオードを内蔵しないIGBTと、IGBTに逆方向に並列接続される整流ダイオードとを、それぞれ別々に設けてもよい。
【0066】
この発明の実施例が包含する排他的性質又は特徴は、以下のようにクレームされる。
図1
図2
図3
図4