(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記止水シートの展伸時に、前記浸水領域からの水圧を前記止水シートの保護領域側から支える支持部材を備えることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の止水具。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る止水具の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態に係る止水具は、浸水領域側からの浸水を阻止したい所望の場所に止水設備を構築するための部材であり、本実施形態では
図1に示すように、地下鉄の地上出口と地下改札口とを連絡する地下通路Uの中途部に、止水設備Aを構築している。
【0023】
具体的には、地下通路Uの両側の壁面Wに隣接して床面Fに立設した一対の左右レール40L,40Rに止水シート30が上部に連設された止水パネル20を配置して、浸水領域X側から保護領域Y側への水の流入を防ぐ止水設備Aを構築している。
【0024】
止水パネル20は、金属にて形成した矩形板状のパネル本体21を備えている。また、パネル本体21の上端縁には、伸延するように可撓性の樹脂で柔軟性のある素材で構成した止水シート30が連設されている。
【0025】
止水パネル20は、平常時には別途設けた図示しない収容倉庫に保管されており、
図2に示すように、止水パネル20を受ける左右レール40L,40Rのみが設置された状態として地下通路U内の人や物の往来を可能としている。
【0026】
止水シート30は、
図3(a)に示すように、非浸水時には、パネル本体21の上縁部に連設されて収束して小容積に形成され、かつ、パネル本体21上端縁に設けた結束バンド22によって巻回状態に結束されており、使用時には結束バンド22を解舒し、
図3(b)及び
図3(c)に示すように止水パネル20上端縁からシート状に展伸し、
図1にて示したように左右レール40L,40R間に架設し張設状態とする。
【0027】
また、
図3(b)に示すように、止水パネル20の上端面の左右端部、すなわち、左右レール40L,40Rの浸水側面に対応する部位には、シート圧着レール70(
図1参照)の下端が嵌入する方形状のアンカー部材24が設けられている。
【0028】
従って、止水シート30を左右レール40L,40R間に張設するに際しては、まず
図4に示すように、止水シート30を収束した止水パネル20を左右レール40L,40R間に架設し、ロックハンドル23で圧着固定する。なお、以下の説明において、
図4に示すような状態(左右レール40L,40Rに止水パネル20が配置されているものの、止水シート30は展伸されていない状態)を「低水位防護状態」と称する。
【0029】
次いで、
図1に示したように、左右レール40L,40R間に止水シート30を展伸して張設し、止水シート30の両側縁部を、左右レール40L,40Rの止水側面において、シート圧着レール70を介して挟持した状態とする。
【0030】
この際、シート圧着レール70は、止水パネル20の上端のアンカー部材24中に嵌入立設されており、上端面に設けた支点越え係合金具72を左右レール40L,40Rの上端面に設けた係合金具受片44を介して圧着状態で左右レール40L,40R及び止水シート30を上部で連設した止水パネル20と一体に組立てられる。
【0031】
また、止水シート30の保護領域Y側には、床面Fに形成された中間レール立設孔80に立設した中間レール50と、この中間レール50及び左右レール40L,40R間に架設した複数の補強バー60とにより略格子状の支持部90が構築される。
【0032】
この支持部90は、展伸した止水シート30に付与される浸水領域Xからの水圧を支えるためのものである。以下、この
図1に示すような状態(左右レール40L,40R間に止水パネル20と止水シート30が展設され、支持部90やシート圧着レール70が配置されている状態)を「高水位防護状態」と称する。
【0033】
そして、このような構成を備える止水具によれば、従来のシート式止水具の如く止水境界部の床面全体に亘って施工を施す必要はなく、中間レール50を立設するための中間レール立設孔80を形成する程度であるため、設置場所が限定されずより様々な場所で止水設備Aを構築することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る止水具にて構築した止水設備Aは、
図4にて示した低水位防護状態や、
図1にて示した高水位防護状態のように、止水面の高さを変更することが可能である。
【0035】
したがって、浸水領域Xの水位が低いときは、低水位防護状態とすることにより保護領域Y側への浸水を阻止しつつも避難者Pの往来を妨げることがないため、より多様な避難行動を許容することができる。
【0036】
また、浸水領域Xの水位が上昇したときには、高水位防護状態とすれば、保護領域Yへの浸水を阻止することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る止水具の更なる特徴点として、高い水位に対応可能でありながら、止水設備Aを構築する際の止水パネル20の運搬に要する負担が少ないという点が挙げられる。
【0038】
例えば、特開2001−98792号公報のように、パネルを止水境界部に配置して浸水を阻止するものは過去に提案されており、浸水領域の水嵩が増した場合には、既設のパネルの上に別のパネルを更に設置し、パネルを高く積み重ねることで保護領域内への水の侵入防止を図っていた。
【0039】
しかし、想定される水位に応じた枚数のパネルを止水場所の近傍に保管しておく必要があり、場所によっては、保管すべき枚数分の収容スペースの確保が困難となる。また、少し離れた場所に保管スペースを確保した場合、止水境界部から離れてしまうために、緊急時にパネルを運搬する時間が余計に必要となってしまうという別の問題が生じてしまう。
【0040】
一方、本実施形態に係る止水具は、高水位の浸水の際に止水面を構築する止水シート30が、普段は止水パネル20の上部に収束された状態となっており、小容積であることから平常時における保管スペースが狭くてすむ。また、想定される水位に応じた枚数のパネルを運搬する必要もなく、止水設備Aを構築する際の負担が極めて少ないという効果がある。
【0041】
次に、上述した本実施形態に係る止水具の各構成部材について更に詳細に説明する。
【0042】
〔1.左右レール〕
まず、
図5を参照しつつ、左右レール40L,40Rの構成について説明する。
図5は、右レール40Rの構成を示す説明図である。
図5(a)は、右レール40Rの全体を示し、
図5(b)は、右レール40Rの上部を拡大して示している。なお、左レール40Lは右レール40Rと左右対照に同様の構成を備えているため、ここでは右レール40Rを例に説明し、左レール40Lの図面を省略して説明する。
【0043】
左右レール40L,40Rは、断面視方形状に形成した角棒部材であり、
図5(a)に示すように、左右レール40L,40Rが互いに対向する側、すなわち対向面40Tの下部にはアーム受溝41が凹状に刻設され、アーム受溝41の上方位置にはバー受金具42が配設されている。また、左右レール40L,40Rの浸水側、すなわち浸水領域側面40Sの中央寄りには上下長溝のシート受溝43を設け、シート受溝43の上方位置にはシート引掛突起45を突設している。また、左右レール40L,40Rの上端面には、フック状の係合金具受片44を突設している。
【0044】
アーム受溝41は、止水パネル20の保護側面に配設した止水パネル20固定操作用のロックハンドル23の先端の作用部を係合させて止水パネル20の両側縁部を左右レール40L,40R下部の浸水領域側面40Sに圧着させるように構成している。また、アーム受溝41は、下方から上方へ向けて漸次狭窄状のテーパーとし、ハンドルの作用部を嵌入して、上方に変位操作した場合に、ハンドルの作用部が緊密にアーム受溝41に嵌着して止水パネル20と左右レール40L,40Rとの架設連結を強固に行うものである。
【0045】
アーム受溝41の上方位置には、所定間隔を隔てて複数(本実施形態では2つ)のバー受金具42を配設している。
図5(b)に示すように、バー受金具42は、板体を横断面視コ字状に折曲して形成しており、対向面40T側の略中央部分に連通孔42aが穿設されている。また、バー受金具42の配設により、左右レール40L,40Rの対向面40Tとの間には間隙部42bが形成される。
【0046】
シート受溝43は、止水設備Aの高水位防護状態において、シート圧着レール70を用いて左右レール40L,40Rとの間に止水シート30の両側縁を挟持するための部位であり、上下方向に形成した凹溝43aの全域に亘って弾性体43bを嵌着して構成している。
【0047】
シート受溝43の上方位置には、シート引掛突起45が所定厚みで突出して形成されており、止水シート30の左右上端部に設けたシート係合板33と係合可能としている。
【0048】
係合金具受片44は、止水設備Aの高水位防護状態において、左右のシート受溝43にて止水シート30の両側縁を挟持状態に立設したシート圧着レール70を係止固定するためのものであり、左右レール40L,40Rの上端面に設けたベース基板44aの一部を打ち起こしてフック部44bを形成し、シート圧着レール70の上端面に設けた支点越え係合金具72の引掛け片72aと係合可能としている。
【0049】
〔2.止水パネル〕
次に、
図3を参照しつつ、止水パネル20の構成について説明する。止水パネル20は、一対の左右レール40L,40Rの浸水領域側面40S、及び境界部の床面Fに水密状に密着させて配置し、低水位防護状態及び高水位防護状態において止水面を構成する部材である。
【0050】
止水パネル20は、正面視矩形状でアルミニウム合金製の中空の板体に形成したパネル本体21を備えており、左右レール40L,40Rの間の幅よりも幅広に形成している。また、パネル本体21の高さは前述の避難者Pが跨ぐことのできる高さとしており、本実施形態では約20cmとしている。
【0051】
パネル本体21の止水側面左右両端の上下方向及び下面略全域には、止水パネル20と左右レール40L,40Rとの間で圧縮させて、止水パネル20の左右両端及び下面における水密性を確保するための止水弾性材25が貼着されている。なお、本実施形態において、止水弾性材25は水密ゴムを採用している。
【0052】
パネル本体21の左右に亘り複数本(本実施形態では3本)の結束バンド22が配設されており、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、雌の面ファスナー22aと雄の面ファスナー22bとの組み合わせにて構成している。なお、この結束バンド22は、パネル本体21の止水面側上部に配設した雄の面ファスナー22bに対し、長紐状の雌の面ファスナー22aで収束状態の止水シート30を抱え込むように係止させることにより、止水パネル20の止水面側上部に収束状態で保持可能としている。
【0053】
パネル本体21の保護側面の左右端近傍には、
図3(c)に示すように、左右レール40L,40Rに形成したアーム受溝41と係合可能に構成した一対のロックハンドル23が設けられている。このロックハンドル23は、
図6に示すように、アーム軸23bにハンドルアーム23aを回動可能に軸止し、一端を作業者が把持するハンドル23dとし、他端をアーム受溝41に係合させるハンドル先端部23cとしている。なお、左右レール40L,40Rに形成したアーム受溝41やロックハンドル23の数や位置は、パネル本体21の高さに応じて適宜設けることができる。
【0054】
ここで、止水パネル20と左右レール40L,40Rとの架設連結は、
図6(a)にて二点鎖線で示す解除位置にあるハンドルアーム23aのハンドル23dを把持し、アーム軸23bを中心に実線で示すロック位置に変位させ、ハンドル先端部23cをアーム受溝41に係合させることで行う。
【0055】
このとき、ハンドル先端部23cがアーム受溝41のテーパー側面41aに沿って上方に摺動するに伴い、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、止水パネル20が左右レール40L,40Rの浸水領域側面40Sに引き寄せられて、止水パネル20の左右端縁の止水弾性材25と左右レール40L,40Rの浸水領域側面40Sとが圧接する。
【0056】
さらに、ハンドル先端部23cがアーム受溝41の受溝上部端面41bに当接すると、
図6(b)に示すように、ハンドル先端部23cの受溝上部端面41bに対する押上力に応じた反力が生じて止水パネル20が下方に押下げられ、止水パネル20の下面に貼着した止水弾性材25が境界部の床面Fに圧接する。
【0057】
このようにして、ハンドル先端部23cがテーパー側面41a及び受溝上部端面41bに当接した状態で止水パネル20と左右レール40L,40Rとが圧接状態で固定され、しかも、止水弾性材25を止水パネル20と左右レール40L,40Rとの間に圧縮させて止水パネル20と左右レール40L,40Rとの間の水密状態を堅実として、
図4で示したように、良好な止水を実現しつつ避難者Pが止水パネル20を跨いで避難することを阻害しない低水位防護状態の止水設備Aが構築される。
【0058】
引き続き、
図3を参照しながら止水パネル20の構成の説明をする。パネル本体21の上端面の左右端部には、左右レール40L,40Rのシート受溝43との間で止水シート30の両端縁を挟持するためのシート圧着レール70の下部に下方凸状に形成した嵌着下端部73が嵌入する上方開口凹状のアンカー部材24を設けている。このアンカー部材24は、
図7(b)に示すように、パネル本体21上端面左右端に止水シート30の下端縁左右端を介してボルト24aにより螺着されている。
【0059】
止水パネル20の設置時や撤去時に作業者が把持するための部位として機能する把持部26は、
図3(c)に示すように、ベースプレート26aと、ベースプレート26aの略中央に揺動自在に配設した把持片26bとで構成している。この把持部26は、パネル本体21の保護側面の上部に所定間隔を隔てて複数(本実施形態では2つ)配設している。
【0060】
パネル本体21の上縁部の止水シート30は、止水シート30の下端縁をパネル本体21の上端面全域に亘って水密状に挟持固定する連設部27により、止水パネル20の止水面と略面一となるように水密状に連設されている。
【0061】
この連設部27は、
図8及び
図9(c)に示すように、パネル本体21上端面と略同一面積の矩形状のステー27aをパネル本体21の上端面略全域に止水シート30のシート本体31下端縁を介し、所定間隔を隔てて複数のボルト27bによりパネル本体21の上端面に螺合して構成しており、止水シート30のシート本体31下端縁をパネル本体21の上端面に水密状に圧接固定している。なお、連設された止水シート30のシート本体31下端縁のうち先端部全域は、
図7(b)及び
図9(c)に示すように、連設部27から浸水領域Xに折曲させて所定厚みに形成し、シート抜け止めとしてアンカー部材24やステー27aに係止可能としている。
【0062】
止水シート30のシート本体31は伸延可能な可撓性の樹脂素材で形成されており、止水シート30は平常時には、止水パネル20と共に一体に別途設けた図示しない収納倉庫に収納保管されている。
【0063】
シート本体31の幅は、左右レール40L,40Rの間の幅よりも幅広に形成しており、シート本体31の高さは止水パネル20の高さと合わせて、立設した左右レール40L,40Rと略同一の高さとなるように形成している。なお、本実施形態における止水シート30の高さは、止水パネル20の上部で伸延した状態で約90cmに形成しており、下部の止水パネル20と上部の止水シート30を展設した際の高さは約110cmとしている。
【0064】
シート本体31の上縁には、
図3(b)、
図3(c)及び
図10(a)に示すように、止水シート30の巻き取り芯となる棒状の横軸杆32が、シート本体31の上縁を左右方向へ間欠的にループ状に縫合して形成したトンネル部32cに挿貫されている。
【0065】
この横軸杆32は、ターンバックル32aと、ターンバックル32aの両端に螺合した軸杆分割体32bとで構成している。ターンバックル32aは、各軸杆分割体32bの螺合部において一方を正ネジ、他方は逆ネジとして締緩回動方向が同一となるよう螺合しており、このターンバックル32aの回動により横軸杆32の長さを伸縮自在としている。
【0066】
止水シート30上縁の横軸杆32の両端部には、
図10(b)に示すように、各々略中央に係合孔33aが貫設されたシート係合板33が接続固定されており、左右レール40L,40Rのシート引掛突起45と係合可能としている。
【0067】
また、止水シート30上縁の横軸杆32の略中央位置には、
図10(c)に示すように、略中央に係合孔34aが貫設されたシート係止リング34が前後回動自在に接続固定されており、後述する中間レール50の上端面に設けたシート引掛突起片52と係合可能としている。
【0068】
従って、止水シート30は、止水パネル20の上縁で連設されて、横軸杆32をもって上方に引き上げ、横軸杆32の両端のシート係合板33、33の係合孔33a、33aを左右レール40L,40Rのシート引掛突起45に、また、横軸杆32の略中央のシート係止リング34の係合孔34aを立設した中間レール50のシート引掛突起片52に、それぞれ係合することにより左右レール40L,40Rの浸水領域X側に止水パネル20の止水面と略面一に展伸させて、左右レール40L,40R間を止水シート30にて閉鎖できるように構成されている。
【0069】
〔3.シート圧着レール〕
次に、
図11を参照しつつ、シート圧着レール70の構成について説明する。
図11(a)は、シート圧着レールの浸水領域X側を示している。また、
図11(b)は保護領域Y側を示し、
図11(c)はその拡大図である。
【0070】
シート圧着レール70は、止水シート30を上方に引き上げて、止水シート30の両端のシート係合板33の係合孔33aをそれぞれシート引掛突起45に係合して左右レール40L,40R間を止水シート30にて閉鎖した状態で、左右レール40L,40Rの浸水領域X側面と止水シート30の両側縁に沿って付設し、左右レール40L,40Rの浸水領域X側面に止水シート30の両側縁を上下方向全域に亘って水密状に圧着させるものである。
【0071】
シート圧着レール70は、方形状の角棒部材であり、左右レール40L,40Rとの間に伸展した止水シート30の上下長さと略同じ長さに形成して左レール40L及び右レール40Rにそれぞれ対応するように2本設けられている。
【0072】
図11(b)及び(c)に示すように、シート圧着レール70の側面のうち、左右レール40L,40Rの浸水領域側面40Sと対応する圧着面70Sの下部から上部にかけてシート受溝43に嵌入自在の横断面略三角状の突条71を連設している。
【0073】
また、シート圧着レール70の上端面には、左右レール40L,40Rの係合金具受片44に係合可能な支点越え係合金具72が設けられている。
【0074】
〔4.中間レール〕
次に、
図12を参照しつつ、
図1で示した支持部90を構築する部材である中間レール50の構成について説明する。
図12(a)は、中間レール50の全体を示し、
図12(b)は、中間レール50の上部を拡大して示している。
【0075】
中間レール50は、展伸状態の止水シート30を保護領域Y側から支持する方形状の角棒部材であって、床面Fの境界部に形成した中間レール立設孔80(
図1参照)に装着して左右レール40L,40Rと並行に立設した際に、左右レール40L,40Rの高さと略同じ高さとなるように形成している。
【0076】
図12(a)に示すように、中間レール50の左右レール40L,40Rと中間レール50との対向する両側面であるレール対向面50Tには、左右レール40L,40Rの対向面40T上の上下2箇所のバー受金具42,42に対応する水平位置において、上下2箇所の同一水準位置にバー受金具51が設けられている。
【0077】
バー受金具51は、左右レール40L,40Rのバー受金具42(
図5参照)と略同様の形状を有する部材であり、
図12(b)に示すように、バー受金具51のレール対向面50T略中央に連通孔51aが穿設されている。また、バー受金具51の配設により、中間レール50のレール対向面50Tとバー受金具51の間には間隙部51bが形成されている。
【0078】
また、中間レール50の上端面には、止水シート30を展伸状態に保つように横軸杆32のシート係止リング34と係合するシート引掛突起片52が設けられている。シート引掛突起片52は、上方へL字状に折曲させて形成したベース基板52cと、同ベース基板52c上に形成した横軸杆32に配設されているシート係止リング34の係合孔34aを係合させる引掛突起52aとで構成している。
【0079】
なお、ベース基板52cは、
図10(c)及び
図10(d)に示すように、中間レール50の上端面から浸水領域X側へせり出した状態で配設し、せり出した水平部分は展伸した止水シート30の横軸杆32のシート係止リング34を載置する載置部52bとしており、ベース基板52cに形成した上方L字状折曲部により載置部52bに載置した横軸杆32が落下することを防止している。
【0080】
〔5.補強バー〕
次に、
図13を参照しつつ、
図1で示した支持部90を構築する部材である補強バー60の構成について説明する。
図13は、補強バー60の構成を示す説明図である。
【0081】
補強バー60は、立設した中間レール50と左右レール40L,40Rとの間に横架して中間レール50や左右レール40L,40Rと一体的に保護領域Y側から展伸した止水シート30を支持する方形状の角棒部材であり、中間レール50と左右レール40L,40Rとの間の幅の長さに形成している。
図13(a)に示すように、補強バー60の両端には、係止金具61とプッシュボルト62とを設けている。
【0082】
係止金具61は、対向するように同じ高さ位置に設けた左右レール40L,40Rの対向面40Tのバー受金具42や中間レール50のレール対向面50Tのバー受金具51と係合する方形状の板状部材であり、補強バー60の下面よりも下方へ伸延させて下方突出部61bを形成した状態で左右端面に固設している。
【0083】
下方突出部61bは、バー受金具51により中間レール50のレール対向面50Tとの間に形成された間隙部51bや、バー受金具42により左右レール40L,40Rの対向面40Tとの間に形成された間隙部42bに挿通係合させる部位であり、挿通係合させた際に、
図13(b)及び
図13(c)に示すように、バー受金具51の連通孔51aやバー受金具42の連通孔42aと対応する位置にはプッシュボルト孔61aが穿設されている。
【0084】
また、補強バー60の左右端の下端面には、左右レール40L,40Rや中間レール50の間に横架した補強バー60を固定するために中間レール50や左右レール40L,40Rに対して出没自在としたプッシュボルト62が固設されており、同プッシュボルト62の先端ロッド62aを中間レール50や左右レール40L,40Rのバー受金具51の連通孔51aやバー受金具42の連通孔42aを介して係止金具61のプッシュボルト孔61aに出没自在に挿通可能としている。
【0085】
〔6.高水位防護状態の構築手順〕
次に、
図14を参照しつつ、高水位防護状態の構築手順について説明する。
図14は、本実施形態における高水位状態の止水設備Aの構築手順を示した説明図である。
図14(a)は、保護領域Y側における中間レール50の立設状態を示し、
図14(b)は、保護領域Y側における補強バー60の横設状態を示している。また、
図14(c)は、浸水領域X側における止水シート30の伸展掛止状態を示し示し、
図14(d)は、浸水領域X側におけるシート圧着レール70を付設した状態を示している。
【0086】
中間レール50は、低水位状態の止水設備A(
図4参照)が既設している境界部の床面Fに設けた中間レール立設孔80に嵌着し(
図1及び
図2参照)、
図14(a)に示すように、左右レール40L,40Rと平行に立設する。
【0087】
次いで、複数の補強バー60(本実施形態では4本)を、左右レール40L,40Rと中間レール50との間の所定位置に横設する。
【0088】
具体的には、補強バー60の左右端の係止金具61を中間レール50と左右レール40L,40Rとにそれぞれ設けた対向するバー受金具51、42に上方から挿嵌して架け渡し、次いでプッシュボルト62にて嵌着状態を係止する。
【0089】
プッシュボルト62は、ロック解除時には、プッシュボルト62本体に内蔵した図示しない弾性体の付勢力により、
図13(c)に示すように、係止金具61と反対側に先端ロッド62aが移動した状態で、プッシュボルト孔61a及び連通孔51a又は連通孔42aから解除されている。
【0090】
そして、
図13(b)に示すように、ロック時には、押部ロッド62bを係止金具61側に押し込み、先端ロッド62aを連通孔42aまたは連通孔51aを介してプッシュボルト孔61aまで挿通し、プッシュボルト62本体部から係止ボタン62cを表出させて弾性体の付勢力に抗した状態で係止固定することでなされる。なお、この固定状態は、表出した係止ボタン62cを押すことで弾性体の付勢力により解除される。
【0091】
このように、プッシュボルト62を、それぞれのバー受金具51、42の連通孔51a、42aを介して係止金具61のプッシュボルト孔61aまで押し込み、係止金具61とバー受金具51、42との嵌着状態をロックすることにより、補強バー60が中間レール50と左右レール40L,40Rから離脱することを防止して、補強バー60の設置状態を維持している。
【0092】
次に、結束バンド22を解除し、止水シート30の横軸杆32を把持して止水シート30を上方に伸展し、止水シート30のシート係合板33及びシート係止リング34を、それぞれ左右レール40L,40Rの上部に設けたシート引掛突起45及び中間レール50の上部に設けたシート引掛突起片52に係合にして伸展状態を維持する。
【0093】
具体的には、中間レール50の上部では、
図10(c)及び(d)に示すように、載置部52bに横軸杆32を載せてシート係止リング34を引掛突起52aに係合する一方、左右レール40L,40Rの上部では、
図10(b)に示すように、止水シート30上縁両端のシート係合板33をそれぞれシート引掛突起45に係合して、
図14(c)に示すように、止水シート30を左右上下方向に伸展した状態に維持する。
【0094】
次に、シート圧着レール70の嵌着下端部73を止水パネル20の上部左右端に設けたアンカー部材24に嵌着し、シート圧着レール70を伸展状態の止水シート30の両端縁を左右レール40L,40Rの浸水領域側面40Sに沿って止水パネル上部に立設する。
【0095】
このとき、
図15の断面図に示すように、シート圧着レール70は、シート圧着レール70の突条71が止水シート30の左右縁を介して左右レール40L,40Rの弾性体43bと係合圧接するとともに、圧着面70Sと左右レール40L,40Rの浸水領域側面40Sとの間に止水シート30の左右縁を挟持圧着させることにより、左右レール40L,40Rに止水シート30の左右縁を止水状態に挟着させる。
【0096】
このように、突条71が止水シート30の左右縁を介して弾性体43bを圧縮することにより、弾性体43bの反発力により圧着を堅実とし、止水シート30の左右縁を突条71と弾性体43bとの間に密着状に挟持可能としている。
【0097】
そして、
図7(a)に示すように、支点越え係合金具72の引掛け片72a(
図11(c)参照)を左右レール40L,40Rの係合金具受片44のフック部44b(
図10(b)参照)に係合し、把持片72bを支軸を中心に保護領域Y側に回動してシート圧着レール70を左右レール40L,40Rに固定することにより、止水シート30の左右縁を挟着した状態に維持する。
【0098】
また、シート圧着レール70の封鎖凹部74(
図11参照)に、左右レール40L,40R上部との間にある止水シート30の横軸杆32、シート係合板33、左右レール40L,40Rのシート引掛突起45を挟持している。
【0099】
このように、本実施形態に係る止水具により構築された止水設備Aでは、止水境界部の床面F全体に亘って施工を施すことなく、比較的狭い保管スペースで保管することができ、また、設置が容易で、しかも止水面の高さを変更することができる止水具を提供することができる。
【0100】
〔8.他の実施例1〕
次に、更なる他の実施例1に係る止水設備Bについて説明する。本実施例2に係る止水設備Bは、比較的広い通路等に構築される。
図16は、本実施例2に係る高水位防護状態の止水設備Bの浸水領域Xの側を示す説明図である。
【0101】
止水設備Bは、建物や地下通路などの比較的横幅広い出入り口や地下通路の左右側壁にそれぞれ隣接させて立設する一対の左レール40L及び右レール40Rの間に、止水シート30を上部に連設した止水パネル20を水密状に配置して構築する。左右レール40L,40R間の床面Fには複数の中間レール立設孔80が、所定間隔を隔てて穿設されている。
【0102】
また、本実施例3に係る止水パネル20及びその上部に連設した止水シート30の横幅は、左右レール40L,40Rとの間の幅より略幅広に形成している。
【0103】
そして、複数の中間レール50(本実施例2では3本)を中間レール立設孔80に嵌着して立設し、補強バー60(本実施例2では8本)を横架し、止水パネル20の左右上端部に一対のシート圧着レール70を立設係止して止水シート30の左右縁を左右レール40L,40Rとの間に圧着固定することにより、本実施例3に係る止水設備Bの構築がなされる。
【0104】
このような止水設備Bとすれば、比較的横幅の広い場所であっても、止水設備Bを低水位防護状態として保護領域内への浸水を防止しつつも避難経路の確保ができ、止水設備Bを高水位棒状態として保護領域への浸水を防ぐことの可能な止水構造を提供することができる。
【0105】
〔9.他の実施例2〕
次に、他の実施例2として境界部の対向する壁面Wに刻設された受溝100により構築される止水設備Cについて説明する。
【0106】
図17は本実施例2に係る止水シート30を上部に連設した止水パネル20と左右レール40L,40Rとの圧着状態を示した説明図である。なお、上述した実施例と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0107】
受溝100は、地下通路Uの対向する壁面Wに、
図1で示した地下通路U側に対して、平面視コの字状の溝を開口して刻設されており、溝幅を止水パネル20のロックハンドル23のハンドル先端部23cの保護領域Y側から止水パネル20の止水側面までの厚み幅以上として、止水パネル20を横臥した際に嵌着可能としている。
【0108】
受溝100の保護領域Y側の内壁面には、
図17(b)に示すように、止水パネル20のロックハンドル23と係合可能な位置にアーム受部材200を設け、浸水領域X側の内壁面を止水パネル20の左右端を圧着させる圧着面110としている。
【0109】
このアーム受部材200は、
図17(a)及び(b)に示すように、漸次下方狭窄状に形成したテーパー面210と、上部端面220とで構成されており、ハンドルアーム23aの下方回動によりハンドル先端部23cの位置を変位させることでハンドル先端部23cをアーム受部材200に係合可能としている。
【0110】
すなわち、ハンドル先端部23cがアーム受部材200のテーパー面210に沿って上方に摺動するに伴い、
図17(a)及び
図17(b)に示すように、止水パネル20が圧着面110側に押されて止水パネル20の止水側面の左右端縁が圧着面110に圧接するとともに、ハンドル先端部23cが上部端面220に当接して押圧力に対して生じる反力により止水パネル20が下方に押下げられて止水パネル20の下面が境界部の床面Fに圧接する。
【0111】
また、ハンドル先端部23cがテーパー面210及び上部端面220に当接した状態で、止水パネル20と左右レール40L,40Rとの圧接状態を固定している。
【0112】
このような構成とすれば、止水パネル20の左右端縁を左右レール40L,40Rに堅実に圧着することができ、避難者Pが止水パネル20を跨いで避難することを阻害しない止水設備Bが構築される。
【0113】
また、受溝100の圧着面110にシート圧着レール70の突条71や支点越え係合金具72を受けるためのシート受溝43や係合金具受片44に相当する部位を刻設して、シート圧着レール70と圧着面110との間に延伸状態の止水シート30の左右端を挟持可能とし、受溝100の内壁面のうち地下通路Uの壁面Wに対向する基端壁面120に補強バー60の受部に相当する受金具を設けて補強バー60を横設可能に構成することで、高水位防護状態の止水設備Cの構築が実現できる。
【0114】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【解決手段】通路に設置して浸水領域の水が保護領域に流入するのを阻止する止水具において、前記通路の左右側壁にそれぞれ隣接させて立設する一対の左右レールと、前記左右レールの間に水密状に配置する止水パネルと、同止水パネルの上縁の略全域に亘って連設され、前記止水パネルの止水面と略面一で上方へ前記左右レールに対して水密状に展伸自在に構成した可撓性の止水シートとを備えてなることとした。