(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ノズル昇降部材は、前記ノズルを下降させる押圧片を有するとともに、前記複数のノズルの上方に配置されており、上下方向の係合位置で前記第1状態に切り替えられるとともに前記押圧片が前記ノズルを下降させ、前記係合位置よりも上方の固定位置で前記第2状態に切り替えられるように構成されている、請求項2に記載の部品実装装置。
前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記回転軸に対する前記ノズル昇降部材の相対的な回転角度が、前記ノズルの数と同数の複数の第1回転角度のいずれかの場合に係合可能に構成され、
前記ノズル昇降部材は、前記複数のノズルの内、前記第1状態に切り替えられたときの前記第1回転角度に対応する前記ノズルを個別に昇降可能に構成されている、請求項4に記載の部品実装装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特開2012−212947号公報の部品実装装置では、昇降させるノズルを選択するためのR軸モータを含むR軸回転機構と、選択したノズルを昇降させるためのZ軸モータを含むZ軸昇降機構と、ノズルの向き(部品実装角度)を変えるためのθ軸モータを含むθ軸回転機構とが必要となり、複数のノズルを切り替えて部品実装を行うための装置構成が複雑化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、複数のノズルを切り替えて部品実装を行うための装置構成が複雑化するのを抑制することが可能な部品実装装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における部品実装装置は、複数のノズルにより部品を吸着して基板に実装可能な部品装着ヘッドを備え、部品装着ヘッドは、中心軸回りに回転可能な回転軸と、回転軸の周囲に配置され、回転軸と一体で回転可能に設けられた複数のノズルと、回転軸を回転させる回転駆動部と、上下移動に伴ってノズルを昇降させるノズル昇降部材と、ノズル昇降部材を上下移動させる昇降駆動部とを含み、ノズル昇降部材は、回転軸と係合して回転軸と一体回転可能であるとともに、ノズルを昇降させることが可能な第1状態と、回転方向に固定されることにより、回転軸および複数のノズルをノズル昇降部材に対して回転させることが可能な第2状態とに切り替え可能に構成されている。
【0008】
この発明の一の局面による部品実装装置では、上記のように、ノズル昇降部材を、回転軸と係合して回転軸と一体回転可能であるとともに、ノズルを昇降させることが可能な第1状態と、回転方向に固定されることにより、回転軸および複数のノズルをノズル昇降部材に対して回転させることが可能な第2状態とに切り替え可能に構成することによって、ノズルを選択するための機構と、ノズルの向き(部品実装角度)を変えるための機構とを、共通の回転駆動部を用いて構成することができる。すなわち、ノズル昇降部材を第2状態に切り替えれば、複数のノズルをノズル昇降部材に対して回転させて、昇降させるノズルを選択することができ、ノズル昇降部材を第1状態に切り替えれば、昇降させるノズルとノズル昇降部材とを回転軸と一体で回転させてノズルの向き(部品実装角度)を変えることができる。このため、同じ回転駆動部によって、昇降させるノズルを選択し、ノズルの向き(部品実装角度)を変更することができるので、昇降させるノズルを選択するためのR軸駆動部と、ノズルの向き(部品実装角度)を変更するためのθ軸駆動部とを別個に設ける構成と比較して、複数のノズルを切り替えて部品実装を行うための装置構成が複雑化するのを抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による部品実装装置において、好ましくは、ノズル昇降部材は、上下方向の位置に応じて、第1状態および第2状態のそれぞれに切り替え可能に構成されている。このように構成すれば、昇降駆動部によりノズルを上下移動させるだけの簡素な構成でノズル昇降部材の第1状態および第2状態の切り替えを行うことができるので、ノズル昇降部材の状態切り替えのために専用の切替機構を設ける場合と異なり、装置構成が複雑化するのを抑制することができる。
【0010】
この場合において、好ましくは、ノズル昇降部材は、ノズルを下降させる押圧片を有するとともに、複数のノズルの上方に配置されており、上下方向の係合位置で第1状態に切り替えられるとともに押圧片がノズルを下降させ、係合位置よりも上方の固定位置で第2状態に切り替えられるように構成されている。このように構成すれば、ノズル昇降部材を係合位置よりも上方の固定位置に位置付けて昇降させるノズルを選択すれば、そのままノズル昇降部材を下降させるだけで係合位置で第1状態に切り替えることができるとともに部品実装のためにノズルを下降させることができる。このため、状態切り替えや部品実装のためにノズル昇降部材を何度も上下移動させる必要がないので、ノズル昇降部材の上下方向の位置に応じて状態切り替えを行う構成においても、ノズル昇降部材の昇降動作が複雑になるのを抑制することができる。
【0011】
上記ノズル昇降部材が上下方向の位置に応じて第1状態および第2状態に切り替え可能な構成において、好ましくは、回転軸は、上下方向の係合位置に設けられた第1係合部を有し、ノズル昇降部材は、上下方向の係合位置で第1係合部と係合することによってノズル昇降部材を第1状態に切り替える第2係合部を有する。このように構成すれば、上下方向の係合位置で係合する第1係合部と第2係合部とによって、容易に、ノズル昇降部材の上下方向の位置に応じて第1状態に切り替わる構成を得ることができる。
【0012】
この場合において、好ましくは、回転軸の第1係合部は、回転軸の外周部に設けられたスプライン軸部であり、ノズル昇降部材の第2係合部は、回転軸が内側に配置され、スプライン軸部と上下方向には相対移動可能で回転方向に係合するスプライン孔部である。このように構成すれば、ノズル昇降部材のスプライン孔部に回転軸のスプライン軸部を係合させるだけの簡単な構成で、ノズル昇降部材と回転軸とが上下方向には相対移動可能で回転方向に一体回転する第1状態を容易に実現することができる。
【0013】
上記回転軸が第1係合部を有し、ノズル昇降部材が第2係合部を有する構成において、好ましくは、第1係合部と第2係合部とは、回転軸に対するノズル昇降部材の相対的な回転角度が、ノズルの数と同数の複数の第1回転角度のいずれかの場合に係合可能に構成され、ノズル昇降部材は、複数のノズルの内、第1状態に切り替えられたときの第1回転角度に対応するノズルを昇降可能に構成されている。このように構成すれば、第1係合部と第2係合部とが係合可能な第1回転角度と個々のノズルとを一対一で対応させることができるので、いずれかの第1回転角度で第1係合部と第2係合部とを係合させれば、確実に、その第1回転角度に対応するノズルを個別に昇降させることができる。
【0014】
上記ノズル昇降部材が上下方向の位置に応じて、第1状態および第2状態に切り替え可能な構成において、好ましくは、部品装着ヘッドは、ノズル昇降部材と係合して回転移動を規制する回転規制部材をさらに含み、ノズル昇降部材は、上下方向の所定の固定位置で回転規制部材と係合することによって、ノズル昇降部材を第2状態に切り替える第3係合部を有する。このように構成すれば、ノズル昇降部材を固定位置に移動させて第3係合部を回転規制部材と係合させるだけの簡素な構成で、ノズル昇降部材を第2状態に切り替えることができる。
【0015】
この場合において、好ましくは、回転規制部材は、第4係合部として第1歯部を有し、ノズル昇降部材の第3係合部は、第1歯部と噛み合う第2歯部を有し、第1歯部と第2歯部とが噛み合うことにより、第3係合部と第4係合部とが係合し、ノズル昇降部材が第2状態に切り替えられるように構成されている。このように構成すれば、互いに噛み合う第1歯部と第2歯部とを設けることにより、容易に、固定位置で第3係合部と回転規制部材とを係合させる構成を得ることができる。
【0016】
上記部品装着ヘッドがノズル昇降部材と係合して回転移動を規制する回転規制部材を含む構成において、好ましくは、回転規制部材と第3係合部とは、部品装着ヘッドに対する回転軸回りの複数の第2回転角度で係合可能に構成され、ノズル昇降部材は、回転規制部材と第3係合部とが係合することによって、複数の第2回転角度のいずれかで第2状態に切り替え可能に構成されている。このように構成すれば、第1状態で部品を搭載した後、次のノズルを下降させるために第2状態に切り替える際、複数の第2回転角度のうちから、次に部品を搭載する時の回転角度に近い第2回転角度を選択してノズル昇降部材を第2状態に切り替えることができる。すなわち、たとえば第2回転角度が1つのみ(0度とする)の場合、次の部品を180度の回転角度で搭載する場合、ノズル昇降部材を0度の位置で第2状態に切り替え、次のノズルを下降させた後、0度の位置から180度の位置まで180度分回転させなければ部品を搭載することができない。これに対して、本発明のように、第2回転角度が複数であれば、次の部品の実装角度により近い方の第2回転角度でノズル昇降部材を第2状態に切り替えることができる。これにより、次のノズルの部品を搭載する時に、ノズルを下降させてから実装角度に位置付けるまでの回転量を減少させることができるので、無駄な回転動作を少なくすることができる。
【0017】
この場合において、好ましくは、複数の第2回転角度は、部品を基板に実装する際の部品の複数の実装角度に対応した回転角度である。このように構成すれば、第1状態で部品を搭載した後、次のノズルを下降させるために第2状態に切り替える際、直前のノズルでの部品の実装角度のままノズル昇降部材を回転させずに第2状態に切り替えることができる。そして、次のノズルでの部品の実装角度が直前のノズルでの部品の実装角度と一致する場合には、第2状態から第1状態に切り替えた後、そのままの角度で次の部品も搭載することができる。このため、特に各ノズルに吸着された部品を同じ実装角度で搭載する場合に、ノズル回転量を抑制して速やかに部品実装を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、複数のノズルを切り替えて部品実装を行うための装置構成が複雑化するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜
図12を参照して、本発明の一実施形態による部品実装装置100の構成について説明する。
【0022】
本実施形態による部品実装装置100は、
図1に示すように、基台1と、基台1上に配置されX方向に基板110を搬送する基板搬送部2と、部品供給部3と、3つの部品装着ヘッド4aが設けられたヘッドユニット4とを備えている。
【0023】
基板搬送部2は、基板110の搬送方向(X方向)に延びる一対のコンベア2aを有している。一対のコンベア2aは、X1方向側から基板110を受け入れて所定の作業位置に搬送するとともに、作業後に、作業済みの基板110をX2方向側に搬出するように構成されている。また、作業時には、基板110は、図示しないクランプ機構により基台1の上方の所定位置で保持(固定)されるように構成されている。
【0024】
部品供給部3は、基板搬送部2の前方側(Y2方向側)および後方側(Y1方向側)に配置されている。部品供給部3には、複数のテープフィーダ3aが基板搬送部2に沿ってX方向に並べて配置されている。これらのテープフィーダ3aには、IC、トランジスタおよびコンデンサ等の部品10が収納されたテープ(図示せず)を保持している。そして、テープフィーダ3aは、間欠的にテープを繰り出しながら部品10を基板搬送部2近傍の所定の部品供給位置に供給するように構成されている。
【0025】
図1および
図2に示すように、ヘッドユニット4は、部品吸着用のノズル(部品吸着ノズル)41(
図2参照)を有する3つの部品装着ヘッド4aを含み、部品供給部3から供給される部品10をノズル41に吸着して基板110に実装する機能を有している。ヘッドユニット4は、基板搬送部2および部品供給部3よりも上方の位置で、基板110の搬送方向(X方向)および前後方向(Y方向)に移動可能に構成されている。具体的には、ヘッドユニット4は、X方向に延びるユニット支持部材5によりX方向に移動可能に支持されている。また、ヘッドユニット4は、ボールねじ軸6bに螺合するナット(図示せず)を有しており、X軸モータ6aによりボールねじ軸6bが回動されることによって、ユニット支持部材5に沿ったX方向に移動される。また、ユニット支持部材5は、Y方向に延びる一対の固定レール1bを介して、基板搬送部2の上方を跨ぐ一対の高架フレーム1aによりY方向に移動可能に支持されている。ユニット支持部材5は、ボールねじ軸7bに螺合するナット(図示せず)を有しており、Y軸モータ7aによりボールねじ軸7bが回動されることによって固定レール1bに沿ったY方向に移動される。
【0026】
3つの部品装着ヘッド4aは、X方向に沿って等間隔に配置されている。複数の部品装着ヘッド4aは、それぞれ複数(8本)のノズル41(
図2参照)を有し、ノズル41ごとに個別に部品吸着および部品実装が可能なように構成されている。これにより、ヘッドユニット4は、基板搬送部2および部品供給部3の上方で3つの部品装着ヘッド4aを水平方向の任意の位置に位置付け、それぞれの部品装着ヘッド4aにより部品10の吸着と、基板110への部品10の搭載(実装)とを行う。
【0027】
また、
図1に示すように、ヘッドユニット4は、基板110を撮像して認識するための基板撮像部4bを含む。基板撮像部4bは、クランプ機構(図示せず)により固定された基板110のフィデューシャルマーク(図示せず)を撮像して基板110の位置および姿勢を認識するように構成されている。これにより、基板110の任意の実装位置の上方に部品装着ヘッド4aのノズル41を位置付け、部品実装を行うことが可能である。
【0028】
また、部品実装装置100には、部品装着ヘッド4aのノズル41に吸着された状態の部品10を撮像して認識する部品撮像部8が、基台1上の前方側(Y2方向側)および後方側(Y1方向側)にそれぞれ設けられている。部品撮像部8は、部品装着ヘッド4aにより吸着された部品10を下方から撮像することにより、部品装着ヘッド4a(ノズル41)により部品供給部3から取り出された部品10の保持状態を認識するために設けられている。これにより、吸着部品の吸着位置ずれや向きが認識され、認識結果に基づいて基板110の実装位置に適切な位置および向きで部品実装を行うことが可能である。
【0029】
次に、ヘッドユニット4の部品装着ヘッド4aの構成について説明する。ヘッドユニット4の3つの部品装着ヘッド4aは、いずれも同一構成を有するので、ここでは、1つの部品装着ヘッド4aについてのみ説明する。
【0030】
図2〜
図4に示すように、部品装着ヘッド4aは、回転軸42と、回転軸42の周囲に円周状に配列された複数(8本)のノズル41とを含んでおり、ノズル41を個別に昇降させて部品10を吸着させ、各ノズル41の部品10を基板110に個別に搭載することが可能である。なお、各ノズル41は同時に部品10を保持しておくことが可能であり、ノズル41ごとに合計8回の部品吸着を行った後、各ノズル41に吸着された部品10を順次搭載することが可能である。部品装着ヘッド4aは、回転軸42を鉛直方向の中心軸C回りに回転させる回転用モータ43と、ノズル41を昇降させるノズル昇降部材44と、ノズル昇降部材44を上下移動させる上下用モータ45と、ノズル昇降部材44と係合してノズル昇降部材44の回転移動を規制する回転規制部材46とを含む。これらの各部は、3つの部品装着ヘッド4aに共通のハウジング40に組み付けられている。なお、3つの部品装着ヘッド4aは、互いに独立して動作可能に構成されている。回転用モータ43および上下用モータ45は、それぞれ、本発明の「回転駆動部」および「昇降駆動部」の一例である。
【0031】
回転軸42は、ハウジング40の手前側(Y2方向側)の位置で上下方向(Z方向)に延びるとともに、上下方向には固定され、中心軸C回りに回動可能な状態でハウジング40に取り付けられている。回転軸42の周囲には、先端(下端)にノズル41が装着された8本のノズルシャフト47が円周状に等角度間隔(45度間隔)で配置されている。
図7に示すように、回転軸42の外周面には、それぞれのノズルシャフト47と係合する上下に延びる溝状のガイド部42aが設けられている。これにより、ノズルシャフト47は回転軸42と一体で中心軸C回りに回転するとともに、回転軸42に対して上下方向に移動可能になっている。また、回転軸42の外周面には、多角形(8角形)のスプライン軸部42bが上下に延びるように一体形成されている。
図5および
図6に示すように、スプライン軸部42bは、回転軸42の上下方向の係合開始位置P1から、ガイド部42a(
図7参照)の上端部までの長さL1の範囲に形成されている。また、回転軸42のうちスプライン軸部42bよりも上方には、スプライン軸部42bよりも外径の小さい丸軸部分42cが形成されている。なお、スプライン軸部42bは、本発明の「第1係合部」の一例である。
【0032】
図3に示すように、回転用モータ43は、ハウジング40の上面の手前側の位置に設けられている。また、回転用モータ43は、出力軸の先端の出力ギア43aと、回転軸42の上端の従動ギア42cとを介して回転軸42を回転駆動するように構成されている。
【0033】
ノズル昇降部材44は、回転軸42が挿入された筒状部材であり、部品10の吸着や部品実装のために、上下移動に伴ってノズル41を昇降させるように構成されている。本実施形態では、ノズル昇降部材44は、回転軸42と係合して回転軸42と一体回転可能であるとともに、ノズル41(ノズルシャフト47)を昇降させることが可能な第1状態と、回転方向に固定されることにより、回転軸42および8本のノズル41をノズル昇降部材44に対して(相対)回転させることが可能な第2状態とに切り替え可能に構成されている。また、ノズル昇降部材44は、上下方向の位置に応じて、第1状態および第2状態のそれぞれに切り替え可能に構成されている。具体的には、ノズル昇降部材44は、
図5および
図6に示すように、係合開始位置P1から下方の位置(係合位置)で第1状態(
図6参照)に切り替えられ、係合開始位置P1よりも上方の固定位置P2で第2状態(
図5参照)に切り替えられる。
【0034】
図8および
図4に示すように、ノズル昇降部材44は、上下(Z方向)に延びる筒状部44aと、筒状部44aの下端面に配置された押圧片44bと、筒状部44aの上端面に配置された歯部44cとを一体的に有している。
図3および
図4に示すように、筒状部44aには、回転軸42が挿入されており、ノズル昇降部材44は、8本のノズルシャフト47(ノズル41)の上方(Z1方向)の位置に配置されている。ノズル昇降部材44は、筒状部44aの外周面で軸受を介してアーム部48に保持されており、回転軸42と同軸の中心軸C回りに回転可能となっている。後述するように、このアーム部48が上下用モータ45によって上下移動するように構成されており、ノズル昇降部材44は、アーム部48の上下に伴って、中心を貫通する回転軸42に沿って上下移動するように構成されている。なお、歯部44cは、本発明の「第3係合部」および「第2歯部」の一例である。
【0035】
具体的には、アーム部48は、ハウジング40の奥側(Y1方向側)からノズル昇降部材44を保持している。アーム部48には、上下に延びるボールねじ軸49がアーム部48を貫通するように配置されており、アーム部48に取り付けられたナット部48aがボールねじ軸49に螺合することにより、アーム部48がボールねじ軸49に昇降可能に支持されている。ボールねじ軸49は、ハウジング40に軸受を介して回転可能に組み付けられており、上端部で上下用モータ45の出力軸と連結されている。上下用モータ45は、回転用モータ43と前後(Y方向)に並ぶように、ハウジング40の上面に設置されている。なお、ハウジング40の奥側には、上下に延びるように設けられたガイドレール50が設けられており、アーム部48にはガイドレール50に沿って上下に移動するスライダ48bが取り付けられている。これにより、上下用モータ45がボールねじ軸49を回転駆動すると、ナット部48aを介してアーム部48がガイドレール50に沿って上下移動し、アーム部48に保持されたノズル昇降部材44も上下移動する。
【0036】
図3、
図4および
図8に示すように、ノズル昇降部材44の押圧片44bは、筒状部44aの下端面から下方に延びる柱状形状を有している。押圧片44bは、中心軸Cからの距離が回転軸42の周囲のノズルシャフト47の中心軸Cからの距離と一致するように配置されており、ノズル昇降部材44の移動に伴って押圧片44bの真下の位置に配置された1本のノズルシャフト47を個別に押し下げて下方に突出させる機能を有する。
【0037】
ここで、本実施形態では、ノズル昇降部材44は、係合開始位置P1から下方の位置でスプライン軸部42bと係合することによって、ノズル昇降部材44を第1状態に切り替えるスプライン孔部44d(
図8参照)を有する。なお、スプライン孔部44dは、本発明の「第2係合部」の一例である。スプライン孔部44dは、筒状部44aの内周面において下端部から中央部までの上下に延びる部分に設けられており、スプライン軸部42bの外形形状に対応する多角形(8角形)の断面形状を有する。スプライン孔部44dは、内側に配置された回転軸42のスプライン軸部42bと、上下方向には相対移動可能で、回転方向にのみ係合するように形成されている。そのため、スプライン軸部42bの形成された係合開始位置P1にノズル昇降部材44が移動すると、スプライン孔部44dとスプライン軸部42bとが係合することにより、ノズル昇降部材44が回転軸42と係合して回転軸42と一体回転するようになる。なお、ここでは、ノズル昇降部材44の位置を、スプライン孔部44dの下端部(筒状部44aの下端部)を基準に説明する。すなわち、ノズル昇降部材44が係合開始位置P1にあるというとき、ノズル昇降部材44のスプライン孔部44dの下端部の位置が係合開始位置P1にある。
【0038】
ノズル昇降部材44は、スプライン軸部42bの上端の係合開始位置P1から下端部(ノズルシャフト47の上端近傍)までの長さL1の範囲(スプライン軸部42bの形成範囲)が、ノズル昇降部材44と回動軸42との係合位置になるとともに、長さL1範囲で第1状態(係合状態)のまま上下移動可能である。これにより、ノズル昇降部材44が第1状態のときには、押圧片44bによってノズルシャフト47を押し下げ、部品10の吸着や、部品実装のためにノズル41を下方に突出させることが可能であるとともに、部品実装角度への角度合わせのためにノズル昇降部材44とノズルシャフト47とが回転軸42とともに一体回転することが可能である。なお、スプライン軸部42bよりも上方の丸軸部分42c(
図4参照)はスプライン孔部44dとは係合せず、係合開始位置P1よりも上方の位置では、ノズル昇降部材44と回転軸42とが自由に相対回転可能である。
【0039】
また、8角形のスプライン形状を有するスプライン孔部44dとスプライン軸部42bとは、45度の相対角度間隔(回転軸42に対するノズル昇降部材44の相対的な回転角度)で係合可能となる。このため、
図9に示すように、スプライン軸部42bとスプライン孔部44dとは、回転軸42に対するノズル昇降部材44の相対的な回転角度が、ノズル41の数と同数(8つ)の第1回転角度α1〜α8のいずれかの場合に係合可能である。これらの45度間隔の第1回転角度α1〜α8は、回転軸42の周囲に配置された各ノズル41(ノズルシャフト47)の回転軸42に対する回転角度位置に一致する。すなわち、8本のノズル41を1番〜8番ノズルとし、1番ノズルを基準(0度)とすると、各ノズル41の位置はα1=0度(1番ノズル)、α2=45度(2番ノズル)、α3=90度(3番ノズル)、α4=135度(4番ノズル)、α5=180度(5番ノズル)、α6=225度(6番ノズル)、α7=270度(7番ノズル)、α8=315度(8番ノズル)となる。これにより、スプライン孔部44dとスプライン軸部42bとが係合する第1状態では、押圧片44bがいずれかのノズル41の上方位置に必ず配置され、他の相対角度ではスプライン孔部44dとスプライン軸部42bとが係合できずに第1状態にならない。
【0040】
図5、
図6および
図8に示すように、ノズル昇降部材44の歯部44cは、筒状部44aの上端面から上方に突出するように筒状部44aと一体形成されており、筒状部44aの上端面には、4つの歯部44cが等角度間隔(90度間隔)で円周状に配置されている。歯部44cは、上下方向の所定の固定位置P2で回転規制部材46の歯部46bと噛み合い係合することによって、ノズル昇降部材44を中心軸C回りの回転方向に固定された第2状態(
図5参照)に切り替えるように構成されている。なお、歯部46bは、本発明の「第1歯部」および「第4係合部」の一例である。固定位置P2は、係合開始位置P1よりも上方に配置されているので、ノズル昇降部材44と回転規制部材46とは、ノズル昇降部材44と回転軸42との係合(すなわち、第1状態)が解除された状態でのみ、係合可能に構成されている。なお、固定位置P2は、ノズル昇降部材44の歯部44cが回転規制部材46の歯部46bと噛み合うときの、筒状部44aの下端面の位置として示している。係合開始位置P1と固定位置P2とは、上下に近接する位置に配置されている。このため、係合開始位置P1と固定位置P2との間でノズル昇降部材44が第1状態および第2状態のいずれにも該当しない状態(回転軸42および回転規制部材46のいずれとも係合しない状態)となる位置範囲がごく僅かとなっている。これにより、第1状態と第2状態とを切り替えるためのノズル昇降部材44の上下移動距離が極力小さくなり、状態切り替えに要する時間の短縮化が図られている。
【0041】
図5、
図6および
図10に示すように、回転規制部材46は、回転軸42が挿入される貫通孔46aと、貫通孔46aの周囲に下向きに突出する複数(8つ)の歯部46bとを有する。回転規制部材46は、貫通孔46aに回転軸42が挿入された状態で、ノズル昇降部材44の上方で歯部46bを下向きにしてハウジング40に固定されている。このため、ノズル昇降部材44の歯部44cと回転規制部材46の歯部46bとが係合する固定位置P2は、ノズル昇降部材44の移動範囲の上端位置に相当する。8つの歯部46bは、等角度間隔(45度間隔)で中心軸C回りに円周状に配置されている。これにより、
図11に示すように、ノズル昇降部材44の歯部44cと回転規制部材46の歯部46bとは、部品装着ヘッド4aに対する回転軸42回り(中心軸C回り)の8つの第2回転角度β1〜β8で係合可能となっている。すなわち、歯部44cと歯部46bとは、45度間隔の8角度(β1〜β8)で係合可能となっている。
【0042】
回転規制部材46は、X方向(X軸)およびY方向(Y軸)の座標系において、歯部44cと歯部46bとが係合可能な8つの第2回転角度β1〜β8が、部品10を基板110に実装する際の部品10の実装角度に対応した回転角度となるように、ハウジング40に固定されている。具体的には、部品10の実装角度(すなわち、押圧片44bの向き)が0度(=β1)、45度(=β2)、90度(=β3)、135度(=β4)、180度(=β5)、225度(=β6)、270度(=β7)、315度(=β8)の8角度の時に、歯部44cと歯部46bとが係合可能となる。なお、ここでは便宜的にX2方向を0度にとっている。基板110へ実装する部品10の実装角度が8つの第2回転角度β1〜β8のいずれかに一致する場合、実装される部品10の実装角度(たとえば90度)に一致する第2回転角度β3(90度)でノズル昇降部材44を第2状態に切り替えれば、実装される部品10を吸着したノズル41をノズル昇降部材44の押圧片44bの下方に位置付けた場合に、部品10の実装角度に略一致する状態でノズル41を下降させることができる。
【0043】
なお、基板110へ実装される部品10の実装角度は、基板110上の回路レイアウト設計に起因して、通常、90度間隔の4角度(0度、90度、180度、270度)が最も多く。さらに45度傾いた他の4角度(45度、135度、225度、315度)を加えた8角度のいずれかで実装されることが、その他の角度(たとえば30度や80度など)で部品10が基板110へ実装されるケースと比較して非常に多い。
【0044】
以上のような構成により、ノズル昇降部材44は、
図4および
図6に示すように、複数のノズル41(ノズルシャフト47)の上方の係合開始位置P1から下方の位置では、第1状態に切り替えられるとともに押圧片44bがノズル41を下降させる。そして、ノズル昇降部材44は、
図3および
図5に示すように、係合開始位置P1よりも上方の固定位置P2で第2状態に切り替えられる。第2状態では、ノズル昇降部材44が各ノズルシャフト47の上方で、中心軸C回りの回転を固定される。このため、第2状態で回転軸42(および、各ノズル41)を回転させることにより、ノズル昇降部材44の押圧片44bの真下に配置されるノズル41が選択される。そして、ノズル41が選択された後でノズル昇降部材44を下降させて第1状態に切り替えることにより、選択されたノズル41が下降されるとともに、部品10の実装角度に合わせてノズル41をノズル昇降部材44ごと中心軸C回りに回転させることが可能となる。
【0045】
なお、
図4に示すように、8本のノズルシャフト47は、円筒状のノズル保持部材51に回転軸42とともに挿入された状態で、回転軸42に保持されている。ノズルシャフト47はバネ部材52(
図5参照)によって、上方に付勢されている。これにより、ノズルシャフト47がノズル昇降部材44の押圧片44bに押し下げられた後、ノズル昇降部材44が上方に移動すると、バネ部材52の付勢力によってノズルシャフト47が上昇位置(回転軸42のガイド部42aの上端位置)に復帰する。また、ノズルシャフト47の内部には空気通路47aが設けられ、ノズルシャフト47の先端に装着されたノズル41と連通している。空気通路47aの上部には横向きの連通口47bおよび47cが上下2カ所に設けられており、それぞれノズル保持部材51およびハウジング40の上下2箇所の導入路53および54(
図2参照)を介して、空気圧供給部60(
図12参照)と2系統で接続可能に構成されている。ノズル保持部材51には周状の空気経路(図示せず)が設けられており、8本すべてのノズルシャフト47の空気通路47aと導入路53および54を接続している。
【0046】
詳細は省略するが、上側の導入路53からは、常時負圧が供給されており、ノズルシャフト47が上昇位置にある場合に、導入路53と空気通路47aの上側の連通口47bとが接続され、下側の連通口47cはノズル保持部材51の内壁により塞がれる。このため、上昇位置にあるノズルシャフト47には、連通口47bを介してノズル41の先端に負圧が供給される。
【0047】
一方、下側の導入路54からは、負圧、正圧および圧力なしを切り替えて供給可能となっている。ノズル昇降部材44によってノズルシャフト47が上昇位置から押し下げられると、空気通路47aは、連通口47bおよび47cがそれぞれ導入路53および54と接続される切替位置に到達し、切替位置よりも下方では、連通口47cのみ(または連通口47bおよび47cの両方)が導入路54と接続され、導入路53がノズルシャフト47の外周面により閉塞される。このため、ノズル昇降部材44によって下降されたノズル41(ノズルシャフト47)は、導入路54からの負圧供給によって部品10を吸着し、正圧供給によって部品10を搭載することが可能である。このようにして、上昇位置にある他のノズル41には負圧を供給して吸着部品10を保持させたまま、ノズル昇降部材44によって下降させた1本のノズル41について独立して部品吸着および搭載を行うことが可能となっている。
【0048】
次に、部品実装装置100の制御的な構成について説明する。
【0049】
部品実装装置100は、
図12に示すように、その動作を統括的に制御する制御装置9をさらに備えている。制御装置9は、CPUからなる主制御部91と、駆動制御部92と、撮像制御部93と、バルブ制御部94と、記憶部95とを含む。
【0050】
主制御部91は、記憶部95に記憶されている実装プログラムに従い、駆動制御部92を介して部品実装装置100の各駆動機構を制御する。また、主制御部91は、撮像制御部93を介して、基板撮像部4bおよび部品撮像部8の撮像動作を制御し、得られた画像に基づいて、基板110の位置および姿勢や、吸着ノズル41に吸着された部品10の保持状態を認識する。
【0051】
また、主制御部91は、バルブ制御部94を介して、ヘッドユニット4に設けられた空気圧供給部60を制御することにより、吸着ノズルによる部品10の吸着動作を制御するように構成されている。また、記憶部95には、実装部品の種類やサイズなどの情報を含む部品情報や実装プログラムが格納されている。
【0052】
駆動制御部92は、基板搬送部2による基板110の搬送や、ヘッドユニット4の水平方向移動(X軸モータ6aおよびY軸モータ7a)を制御するように構成されている。また、駆動制御部92は、それぞれの部品装着ヘッド4aの上下用モータ45の駆動を制御して、ノズル41を昇降(ノズル昇降部材44を昇降)させるとともに、回転用モータ43の駆動を制御して、ノズル41(回転軸42)を中心軸C回りに回動(回転)させるように構成されている。
【0053】
次に、
図1、
図4〜
図6、
図9および
図11を参照して、部品実装装置100の部品実装動作について説明する。
【0054】
まず、
図1に示すように、基板搬送部2による基板110の作業位置への搬送およびクランプと、基板撮像部4bによる基板撮像(基板位置認識)が実行された後、部品10の搭載が開始される。
【0055】
最初に、部品10の吸着動作が行われる。ヘッドユニット4がXY方向に移動し、各部品装着ヘッド4aが部品供給位置の上方に位置付けられる。この移動の際、部品装着ヘッド4aは、最初に部品10を吸着するノズル41(たとえば、
図9の1番ノズル)を下降させる。ノズル41の下降動作は、下降させるノズル41の選択動作と、選択したノズル41の下降動作とに分けられる。
【0056】
すなわち、ノズル昇降部材44を固定位置P2に上昇させることにより、第2状態(
図5参照)に切り替える。次に、第2状態のままノズル昇降部材44に対して回転軸42を回動させて、ノズル41(1番ノズル)をノズル昇降部材44の押圧片44bの下方位置に配置する(
図9参照)。これにより、下降させるノズル41(1番ノズル)が選択される。
【0057】
その後、ノズル昇降部材44を下降させる。
図4および
図6に示すように、ノズル昇降部材44を係合開始位置P1よりもさらに下降させることにより、選択したノズル41(1番ノズル)が下降して、下方に突出する。これにより、突出させたノズル41(1番ノズル)により、部品供給位置の部品10の吸着が可能となる。2番ノズル〜8番ノズルについても、同様にして、それぞれ吸着させる部品10が配置された部品供給位置の上方で対象のノズル41が下降され、順次部品10が吸着される。
【0058】
3つの部品装着ヘッド4aの各8本のノズル41にそれぞれ部品10が吸着されると、
図1に示すように、ヘッドユニット4が部品撮像部8の上方に移動し、吸着部品10の撮像(吸着状態認識)が行われた後、基板110への搭載が行われる。
【0059】
まず、ヘッドユニット4がXY方向に移動し、部品装着ヘッド4aが基板110の部品実装位置の上方に位置付けられる。この移動の際、部品装着ヘッド4aは、最初に部品10を搭載するノズル41(たとえば、
図9の1番ノズル)を下降させる。
【0060】
部品実装時には、下降させるノズル41(1番ノズル)を選択する際、ノズル昇降部材44が8つの第2回転角度β1〜β8のうち、搭載する部品10の実装角度に最も近い角度で、第2状態に切り替えられる。たとえば、
図11に示すように、1番ノズルの部品10を実装角度90度で搭載する場合、ノズル昇降部材44も同じ90度(β3)にした状態で第2状態(β3)に切り替えられる。次に、第2状態(β3)のままノズル昇降部材44に対して回転軸42を回動させて、選択したノズル41(1番ノズル)をノズル昇降部材44の押圧片44bの下方位置に配置する。すると、ノズル41(1番ノズル)は部品10の実装角度90度と同じ向き(β3)に向けられることになる。
【0061】
その後、ノズル昇降部材44を係合開始位置P1に移動させて第1状態に切り替えるとともに、係合開始位置P1よりもさらに下降させることにより、押圧片44bに押圧されたノズル41(1番ノズル)が突出する(
図4参照)。この場合、ノズル41(1番ノズル)は90度の回転角度の状態(β3)で下降されるため、第1状態に切り替えてからノズル41(1番ノズル)を回転させるのは、部品撮像部8によって認識した部品10の吸着角度ずれの補正などの微調整程度で済む。第1状態でのノズル41(1番ノズル)の角度の微調整を行った後、部品10が基板110に搭載される。このため、8つの第2回転角度β1〜β8のいずれかと部品10の実装角度とが一致する場合、第1状態での回転量を減少させて部品10を速やかに搭載することができる。部品実装後、ノズル昇降部材44が係合開始位置P1まで上昇され、ノズル41(1番ノズル)は上昇位置に復帰する。
【0062】
続けて、次に部品10を搭載するノズル41(たとえば、
図9の2番ノズル)を下降させる。この際には、2番ノズルに吸着された次に搭載する部品10の実装角度に最も近い角度で、ノズル昇降部材44が第2状態に切り替えられる。たとえば、
図11に示すように、2番目の部品10を実装角度180度で搭載する場合、ノズル昇降部材44は、90度(β3)から180度(β5)に回動された後で固定位置P2に上昇されて第2状態(β5)に切り替えられる。そして、第2状態(β5)のままノズル昇降部材44に対して回転軸42を回動させて、選択したノズル41(2番ノズル)をノズル昇降部材44の押圧片44bの下方位置に配置する。この状態で、ノズル41(2番ノズル)は部品10の実装角度180度と同じ向き(β5)に向けられる。その後の下降から部品実装までの動作は1番ノズルと同様である。
【0063】
なお、複数の部品10の搭載が第2回転角度β1〜β8のいずれかの実装角度で続く場合には、第2状態に切り替える際のノズル昇降部材44の回転が不要となる。すなわち、上記のように1番ノズルの部品10を90度(β3)で搭載した後、2番ノズルの部品10を90度(β3)で搭載する場合には、1番ノズルの部品10の搭載後、ノズル昇降部材44は90度(β3)のまま固定位置P2に上昇されて第2状態に切り替えられる。そして、2番ノズルを押圧片44bの下方位置に配置した後、ノズル昇降部材44を下降させれば、そのまま2番ノズルの部品10の実装角度で第1状態に切り替えられることになる。このため、ノズル41の切り替えに要する時間が短縮される。
【0064】
以上を繰り返すことにより、部品装着ヘッド4aの各8本のノズル41による部品実装が行われる。3つの部品装着ヘッド4aの各8本のノズル41に吸着されたそれぞれの部品10が搭載されると、再度部品吸着を行う。このようにして、部品実装装置100の部品実装動作が実施される。
【0065】
本実施形態では、上記のように、ノズル昇降部材44を、回転軸42と係合して回転軸42と一体回転可能であるとともに、ノズル41を昇降させることが可能な第1状態と、回転方向に固定されることにより、回転軸42および複数のノズル41をノズル昇降部材44に対して回転させることが可能な第2状態とに切り替え可能に構成することによって、ノズルを選択するための機構と、ノズルの向き(部品実装角度)を変えるための機構とを、共通の回転用モータ43を用いて構成することができる。すなわち、ノズル昇降部材44を第2状態に切り替えれば、複数のノズル41をノズル昇降部材44に対して回転させて、昇降させるノズル41を選択することができ、ノズル昇降部材44を第1状態に切り替えれば、昇降させるノズル41とノズル昇降部材44とを回転軸42と一体で回転させてノズル41の向き(部品実装角度)を変えることができる。このため、同じ回転用モータ43によって、昇降させるノズル41を選択し、ノズル41の向き(部品実装角度)を変更することができるので、昇降させるノズル41を選択するためのR軸駆動部と、ノズル41の向き(部品実装角度)を変更するためのθ軸駆動部とを別個に設ける構成と比較して、複数のノズル41を切り替えて部品実装を行うための装置構成が複雑化するのを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、ノズル昇降部材44を、上下方向の位置に応じて、第1状態および第2状態のそれぞれに切り替え可能に構成する。これにより、上下用モータ45によりノズル41を上下移動させるだけの簡素な構成でノズル昇降部材44の第1状態および第2状態の切り替えを行うことができるので、ノズル昇降部材44の状態切り替えのために専用の切替機構を設ける場合と異なり、装置構成が複雑化するのを抑制することができる
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、ノズル昇降部材44を、ノズル41(ノズルシャフト47)の上方に配置する。そして、ノズル昇降部材44を、係合開始位置P1から下方の長さL1の範囲(係合位置)で第1状態に切り替えられるとともに押圧片44bがノズル41を下降させ、係合開始位置P1よりも上方の固定位置P2で第2状態に切り替えられるように構成する。これにより、ノズル昇降部材44を係合開始位置P1よりも上方の固定位置P2に位置付けて昇降させるノズル41を選択すれば、そのままノズル昇降部材44を下降させるだけで第1状態に切り替えることができるとともに部品実装のためにノズルを下降させることができる。このため、状態切り替えや部品実装のためにノズル昇降部材44を何度も上下移動させる必要がないので、ノズル昇降部材44の上下方向の位置に応じて状態切り替えを行う構成においても、ノズル昇降部材44の昇降動作が複雑になるのを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、回転軸42にスプライン軸部42bを設け、ノズル昇降部材44に、係合開始位置P1から下方の長さL1の範囲(係合位置)でスプライン軸部42bと係合することによってノズル昇降部材44を第1状態に切り替えるスプライン孔部44dを設ける。これにより、係合位置で係合するスプライン軸部42bとスプライン孔部44dとによって、容易に、ノズル昇降部材44の上下方向の位置に応じて第1状態に切り替わる構成を得ることができる。また、ノズル昇降部材44のスプライン孔部44dに回転軸42のスプライン軸部42bを係合させるだけの簡単な構成で、ノズル昇降部材44と回転軸42とが上下方向には相対移動可能で回転方向に一体回転する第1状態を容易に実現することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、スプライン軸部42bとスプライン孔部44dとを、回転軸42に対するノズル昇降部材44の相対的な回転角度が、ノズル41の数と同数(8つ)の複数の第1回転角度α1〜α8のいずれかの場合に係合可能に構成する。そして、ノズル昇降部材44を、複数のノズル41(1番ノズル〜8番ノズル)の内、第1状態に切り替えられたときの第1回転角度(たとえばα1=0度)に対応するノズル41(1番ノズル)を昇降可能に構成する。これにより、スプライン軸部42bとスプライン孔部44dとが係合可能な第1回転角度(0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度)と個々のノズル41(1番ノズル〜8番ノズル)とを一対一で対応させることができるので、いずれかの第1回転角度(たとえばα1=0度)でスプライン軸部42bとスプライン孔部44dとを係合させれば、確実に、その第1回転角度α1(0度)に対応するノズル41(1番ノズル)を個別に昇降させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、部品装着ヘッド4aに歯部46bを有する回転規制部材46を設ける。そして、ノズル昇降部材44に、固定位置P2で回転規制部材46と係合することによって、ノズル昇降部材44を第2状態に切り替える歯部44cを設ける。これにより、ノズル昇降部材44を固定位置P2に移動させて歯部44cを回転規制部材46と係合させるだけの簡素な構成で、ノズル昇降部材44を第2状態に切り替えることができる。また、互いに噛み合う歯部44cと歯部46bとを設けることにより、容易に、固定位置P2でノズル昇降部材44を第2状態に切り替える構成を得ることができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、回転規制部材46(歯部46b)と歯部44cとを、部品装着ヘッド4aに対する回転軸42回りの複数(8つ)の第2回転角度β1〜β8で係合可能に構成する。そして、ノズル昇降部材44を、回転規制部材46(歯部46b)と歯部44cとが係合することによって、8つの第2回転角度β1〜β8のいずれかで第2状態に切り替え可能に構成する。これにより、第1状態で部品10を搭載した後、次のノズル41(たとえば、2番ノズル)を下降させるために第2状態に切り替える際、8つの第2回転角度β1〜β8のうちから、次に部品10を搭載する時の実装角度に近い第2回転角度を選択してノズル昇降部材44を第2状態に切り替えることができる。これにより、次のノズル41(2番ノズル)の部品10を搭載する時に、ノズル昇降部材44を下降させるだけでよく、無駄な回転動作を少なくすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、8つの第2回転角度β1〜β8を、部品10を基板110に実装する際の部品10の複数の実装角度に対応した回転角度(0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度)とする。これにより、第1状態で部品10を搭載した後、次のノズル41(たとえば、2番ノズル)を下降させるために第2状態に切り替える際、直前のノズル41(たとえば、1番ノズル)での部品10の実装角度のままノズル昇降部材44を回転させずに第2状態に切り替えることができる。そして、次のノズル41(2番ノズル)での部品10の実装角度が直前のノズル41(1番ノズル)での部品10の実装角度と一致する場合には、第2状態から第1状態に切り替えた後、そのままの角度で次の部品10も搭載することができる。このため、特に各ノズル41に吸着された部品10を同じ実装角度で搭載する場合に、ノズル回転量を抑制して速やかに部品実装を行うことができる。
【0073】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0074】
たとえば、上記実施形態では、3つの部品装着ヘッドを備えた部品実装装置の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1、2または4つ以上の部品装着ヘッドを部品実装装置に設けてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、1つの部品装着ヘッドに8本のノズルを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ノズルは複数(2本以上)であればよい。
【0076】
また、上記実施形態では、ノズル昇降部材を、上下方向の位置に応じて第1状態と第2状態とに切り替えるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ノズル昇降部材の上下方向の位置によらずに、ノズル昇降部材を第1状態と第2状態とに切り替え可能に構成してもよい。
【0077】
たとえば、固定位置P2でノズル昇降部材44と係合する回転規制部材46を設ける代わりに、アーム部材48にノズル昇降部材44の回転を固定するブレーキ機構を設けてもよい。この場合、ノズル昇降部材44と回転軸42とが係合していなければ、上下方向のどの位置でも第2状態に切り替えることが可能である。同様に、ノズル昇降部材44と回転軸42とに、それぞれスプライン孔部44dとスプライン軸部42bとを設ける代わりに、たとえば回転軸に、空気圧などにより半径方向に作動する係合機構を設けてノズル昇降部材と係合させてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、ノズル昇降部材44と回転軸42とに、それぞれスプライン孔部44dとスプライン軸部42bとを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ノズル昇降部材に複数の係合溝を設け、係合溝と係合する係合ピンを回転軸に設けてもよい。他にも、ノズル昇降部材に内歯車を設け、内歯車と噛み合い係合する外歯車を回転軸に設けてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、ノズル昇降部材44(スプライン孔部44d)と回転軸42(スプライン軸部42b)とを、ノズルと同数の第1回転角度α1〜α8で係合可能に構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ノズル昇降部材と回転軸とは、個々のノズルの配置された回転角度位置で係合可能となればよいので、ノズル数の整数倍の相対回転角度で係合可能であればよい。また、ノズル昇降部材と回転軸とが任意の角度で係合可能であってもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、ノズル昇降部材44と回転規制部材46とを、部品の実装角度に対応した第2回転角度β1〜β8で係合可能となるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ノズル昇降部材44と回転規制部材46との第2回転角度が、部品の実装角度に対応していなくともよい。ただし、第2回転角度が、部品の実装角度に対応していない他の角度(たとえば72度間隔の5角度など)の場合、下降させるノズルを選択する度(第2状態に切り替える度)に、部品の実装角度と第2回転角度との間での回転を略必ず行う必要があるので、上記実施形態の構成と比較して時間的なロスが大きくなる。
【0081】
また、上記実施形態では、ノズル昇降部材44と回転規制部材46とを、8つの第2回転角度β1〜β8で係合可能となるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ノズル昇降部材44と回転規制部材46との係合可能な第2回転角度が8つでなくともよい。すなわち、ノズル昇降部材44と回転規制部材46との係合可能な第2回転角度が、1つ(1角度)のみでもよい。また、第2回転角度を等角度間隔にしなくともよい。
【0082】
この他、ノズル昇降部材44と回転規制部材46とを任意の第2回転角度で係合可能に構成してもよい。具体的には、回転規制部材46の代わりに、回転規制部材を電磁クラッチにより構成し、固定位置P2で電磁クラッチがノズル昇降部材を電磁力で吸着固定するようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、ノズル昇降部材44と回転規制部材46とにそれぞれ歯部44cと歯部46bとを設けて、互いに係合するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ノズル昇降部材の上端部分の外周面を、回転軸のスプライン軸部と同じような多角形スプライン形状にして、回転規制部材に、ノズル昇降部材の上端部分の多角形スプライン形状の外周部が嵌り込んで係合するスプライン孔を設けてもよい。また、回転規制部材にスプライン軸部と同じ形状の係合部を下方に向けて延びるように形成してもよい。この場合、ノズル昇降部材は共通のスプライン孔部で、固定位置ではクラッチ部材の係合部が嵌り込み、係合開始位置から下方の係合位置では回転軸のスプライン軸部が嵌り込む。