特許第5876971号(P5876971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876971
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】銅粉
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20060101AFI20160218BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20160218BHJP
   H01B 1/02 20060101ALI20160218BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20160218BHJP
   C25C 1/12 20060101ALN20160218BHJP
【FI】
   B22F1/00 L
   C22C9/00
   H01B1/02 A
   H01B5/00 A
   !C25C1/12
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-523333(P2015-523333)
(86)(22)【出願日】2015年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2015050261
(87)【国際公開番号】WO2015115139
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2015年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2014-14219(P2014-14219)
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森中 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】織田 晃祐
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−019034(JP,A)
【文献】 特開2013−100592(JP,A)
【文献】 特開平02−122001(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/046666(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00− 1/02
C22C 9/00− 9/10
H01B 1/02
H01B 5/00
C25C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粉中に含まれる塩素の濃度が5wtppm〜150wtppmであり、
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50が0.5μm〜5.0μmであり、
タップ嵩密度が0.3〜1.5g/cm3であり、
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて銅粉粒子を観察した際、一本の主軸を備えており、該主軸から複数の枝が斜めに分岐して、二次元的或いは三次元的に成長したデンドライト状を呈し、かつ、主軸の長径Lに対する分岐枝の本数(枝本数/主軸長径L)が3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(以下「特殊デンドライト状銅粉粒子」と称する)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めることを特徴とする銅粉。
【請求項2】
吸油量(JISK5101)が30〜100mL/100gであることを特徴とする請求項1に記載の銅粉。
【請求項3】
銅粉中に含まれる塩素の濃度が5wtppm〜150wtppmであり、
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50が0.5μm〜5.0μmであり、
吸油量(JISK5101)が30〜100mL/100gであり、
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて銅粉粒子を観察した際、一本の主軸を備えており、該主軸から複数の枝が斜めに分岐して、二次元的或いは三次元的に成長したデンドライト状を呈し、かつ、主軸の長径Lに対する分岐枝の本数(枝本数/主軸長径L)が3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(以下「特殊デンドライト状銅粉粒子」と称する)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めることを特徴とする銅粉。
【請求項4】
上記特殊デンドライト状銅粉粒子は、主軸の長径Lが0.5〜5.0μmであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の銅粉。
【請求項5】
BET一点法で測定される比表面積が1.2〜4.0m2/gであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の銅粉。
【請求項6】
上記D50に対する比表面積(SSA)の比率が0.3〜2.0m2/(g・μm)であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の銅粉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストや導電性フィルムなどに含有される導電フィラーとして好適に用いることができる銅粉に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ペーストは、樹脂系バインダと溶媒からなるビヒクル中に導電フィラーを分散させた流動性組成物であり、電気回路の形成や、セラミックコンデンサの外部電極の形成、各種導電性フィルムの形成などに広く用いられている。
【0003】
この種の導電性ペーストに含有される導電フィラーとして、従来は、銀粉が多用されてきた。しかし、銅粉を用いた方が安価である上、マイグレーションが生じ難く、耐ハンダ性にも優れているため、銅粉を用いた導電性ペーストが汎用化されつつある。
【0004】
電解法によって得られるデンドライト状の銅粉粒子は、球状の銅粉粒子に比べて、粒子同士の接点の数が多くなるため、導電性ペーストの導電フィラーとして用いた場合、導電フィラーの量を少なくしても導電特性を高めることができるという利点を有している。
【0005】
このようなデンドライト状の銅粉に関しては、例えば特許文献1において、半田付け可能な導電性塗料用銅粉として、粒子形状の樹枝状銅粉を解砕してえられた棒状であって、吸油量(JIS K5101)が20ml/100g以下、最大粒径が44μm以下でかつその平均粒径が10μm以下、水素還元減量が0.5%以下であることを特徴とする銅粉が開示されている。
【0006】
特許文献2には、平均粒径20〜35μm、嵩密度0.5〜0.8g/cm3の樹枝状電解銅粉に油脂を添加、混合し、該電解銅粉表面に油脂を被覆した後、衝突板方式ジェットミルによって粉砕、微粉化することを特徴とする微小銅粉の製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献3及び特許文献4には、ヒートパイプ構成原料として、デンドライト状を呈する電解銅粉粒子が開示されている。
【0008】
特許文献5には、デンドライト状電解銅粉の製造方法に関し、電解銅粉のデンドライト形態を整えるための製法として、電解液に塩素を添加して電解する方法が知られている旨が記載されている。
【0009】
特許文献6には、一本の主軸を備えており、該主軸から複数の枝が斜めに分岐して、二次元的或いは三次元的に成長したデンドライト状を呈し、かつ、主軸の太さaが0.3μm〜5.0μmであり、主軸から伸びた枝の中で最も長い枝の長さbが0.6μm〜10.0μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子を含有するデンドライト状銅粉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−158103号公報
【特許文献2】特開2000−80408号公報
【特許文献3】特開2008−122030号公報
【特許文献4】特開2009−047383号公報
【特許文献5】特開平1−247584号公報
【特許文献6】特開2013−019034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
導電性ペーストや導電性フィルムにおいて、ファイン化及び薄型化が進められており、そのような用途には、従来は、導電フィラーとして、球状で且つ粒径の小さな微粒銅粉が通常用いられてきた。ところが、球状の微粒銅粉は、含有量を多くしないと、導通性を得られないという問題点を抱えていた。
【0012】
これに対し、デンドライト状銅粉は、上述のように、球状の銅粉粒子に比べて、粒子同士の接点の数が多くなるため、量が少なくても導通性を確保できるという利点を有している。しかしその反面、デンドライト状銅粉は、その形状ゆえに、球状の銅粉粒子に比べて、導電性フィルムや導電膜の厚さを薄くすることが難しいという課題を抱えていた。
【0013】
そこで本発明は、導電性フィルムや導電膜を十分に薄くすることができ、しかも、微粒であっても少ない量で導通性を確保することができる、新たな銅粉を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、銅粉中に含まれる塩素の濃度が5wtppm〜150wtppmであり、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50が0.5μm〜5.0μmであり、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて銅粉粒子を観察した際、一本の主軸を備えており、該主軸から複数の枝が斜めに分岐して、二次元的或いは三次元的に成長したデンドライト状を呈し、かつ、主軸の長径Lに対する分岐枝の本数(枝本数/主軸長径L)が3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(以下「特殊デンドライト状銅粉粒子」とも称する)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めることを特徴とする銅粉を提案するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明が提案する銅粉は、微粒で且つ特殊なデンドライト状の粒子が80個数%以上を占める銅粉であるため、従来のデンドライト状銅粉に比べて、導電性フィルムや導電膜を十分に薄くすることができ、しかも、従来の微粒球状銅粉に比べて、少ない量で導通性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】デンドライト状銅粉粒子の粒子形状を説明するためのモデル図である。
図2】実施例5で得られた銅粉の電子顕微鏡写真である。
図3】実施例6で得られた銅粉の電子顕微鏡写真である。
図4】比較例4で得られた銅粉の電子顕微鏡写真である。
図5】比較例5で得られた銅粉の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳述する。但し、本発明の範囲が以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<本銅粉の特徴>
本実施形態に係る銅粉(「本銅粉」と称する)は、所定の特殊なデンドライト状を呈する銅粉粒子(「本銅粉粒子」と称する)を含有する銅粉である。
【0019】
本銅粉において「デンドライト状銅粉粒子」とは、電子顕微鏡(500〜20000倍)で観察した際に、図1に示されるように、一本の主軸を備えており、該主軸から複数の枝が垂直若しくは斜めに分岐して、二次元的或いは三次元的に成長した形状を呈する銅粉粒子である。この際、主軸とは、複数の枝がそこから分岐している基となる棒状部分を示す。
【0020】
中でも、本銅粉粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて銅粉粒子を観察した際(500〜20,000倍)、次のような所定の特徴を有するデンドライト状を呈するのが特に好ましい。
【0021】
・主軸の長径Lに対する分岐枝の本数(枝本数/主軸長径L)は、デンドライトの枝の多さを示しており、3.0〜20.0本/μmであるのが好ましい。枝本数/主軸長径Lが3.0本/μm以上であれば、主軸の長径Lが短くても、分岐枝の本数が十分に多いため、導電フィラー同士の接点を十分に確保することができ、少ない量で導通の確保が可能となる。他方、枝本数/長径Lが20.0本/μm以下であれば、分岐枝の数が多過ぎることがないため、銅粉の流動性が劣るのを防ぐことができる。
このような観点から、本銅粉粒子の枝本数/主軸長径Lは、3.0〜20.0本/μmであるのが好ましく、中でも4.0本/μm以上或いは19.0本/μm以下、その中でも5.0本/μm以上或いは18.0本/μm以下であるのがさらに好ましい。その中でも特に6.0本/μm以上或いは18.0本/μm以下、その中でも特に6.0本/μm以上或いは16.0本/μm以下であることがさらに好ましい。
なお、分岐枝の本数は、写真で確認できる本数であり、隠れた分岐枝の本数は無視した本数である。
【0022】
・主軸の長径Lは0.5μm〜5.0μmであるのが好ましい。主軸の長径Lが0.5μm以上であれば十分な導電性を確保でき、5.0μm以下であれば、導電性フィルムや導電膜の厚さを十分に薄くすることができる。
このような観点から、本銅粉粒子の主軸の長径Lは0.5μm〜5.0μmであるのが好ましく、中でも1.0μm以上或いは4.5μm以下、その中でも1.5μm以上或いは4.0μm以下、その中でも3.5μm以下、その中でも3.0μm以下、その中でも2.0μm以下であるのがさらに好ましい。
【0023】
但し、電子顕微鏡(500〜20,000倍)で観察した際、多くの粒子が上記の如き特殊デンドライト状銅粉粒子で占められていれば、それ以外の形状の粒子が混じっていても、特殊デンドライト状銅粉粒子のみからなる銅粉と同様の効果を得ることができる。よって、かかる観点から、本銅粉は、電子顕微鏡(500〜20,000倍)で観察した際、上記のような形状、すなわち特殊デンドライト状銅粉粒子が全銅粉粒子のうちの80個数%以上、好ましくは90個数%以上、さらに好ましくは95個数%以上を占めていれば、他の形状の銅粉粒子が含まれていてもよい。
【0024】
上記のような特殊デンドライト状銅粉粒子を作製するためには、後述するように、所定の表面粗度の電極を備えた電解装置を使用して所定の電解条件下で、電解液に塩素を添加して電解を行うことが好ましい。但し、この方法に限定するものではない。
【0025】
また、本銅粉を構成する銅粉粒子のうち、デンドライト状粒子と認められる粒子における、主軸の長径Lに対する分岐枝の本数(枝本数/主軸長径L)の平均値は、4.0〜30.0本/μmであるのが好ましく、中でも5.0本/μm以上或いは28.0本/μm以下、その中でも6.0本/μm以上或いは25.0本/μm以下、その中でも8.0本/μm以上或いは23.0本/μm以であるのがさらに好ましい。
この際、平均値の求め方としては、本銅粉を構成する銅粉粒子のうち、任意に50個以上のデンドライト状粒子を計測して、その平均値を求めればよい。
【0026】
(含有塩素濃度)
本銅粉は、銅粉中に含まれる塩素の濃度(「含有塩素濃度」とも称する)、すなわち銅粉粒子の表面ではなくて粒子内部に含まれる塩素の濃度が5wtppm〜150wtppmであるのが好ましく、中でも10wtppm以上或いは140wtppm以下、その中でも20wtppm以上或いは130wtppm以下、その中でも30wtppm以上或いは100wtppm以下、その中でも特に30wtppm以上或いは80wtppm以下であるのがさらに好ましい。
本銅粉の含有塩素濃度が150wtppm以下であれば、接触抵抗を低く抑えることができる。なお、本銅粉の含有塩素濃度は5wtppm未満でも構わないが、5wtppm程度が含有塩素濃度の検出限界である。
本銅粉の含有塩素濃度を5wtppm〜150wtppmとするには、塩素を添加した電解液を用いて電解を行い、電解して得られた直後の銅粉を水で洗浄するのが好ましい。
【0027】
(D50)
本銅粉のD50、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50は、0.5μm〜5.0μmであるのが好ましい。本銅粉のD50が0.5μm以上であれば、十分な導電性を確保するために必要なデンドライト状の形状を確保することが可能であり、5.0μm以下であれば、導電性フィルムや導電膜の厚さを十分に薄くすることができる。
このような観点から、本銅粉のD50は0.5μm〜5.0μmであるのが好ましく、中でも1.0μm以上或いは4.5μm以下、その中でも1.5μm以上或いは4.0μm以下、その中でも3.0μm以下、その中でも2.5μm以下であるのがさらに好ましい。
なお、本銅粉のD50を調整するには、例えばD50を小さくするには、例えば電解時間を短くする、すなわち短時間のうちに電極板に析出した銅粉を掻き落とすようにするのが好ましい。但し、このような方法に限定するものではない。
【0028】
(比表面積)
本銅粉のBET一点法で測定される比表面積(SSA)は、1.20〜4.00m2/gであるのが好ましい。1.20m2/gより著しく小さいと、枝が発達しておらず、特殊デンドライト状銅粉粒子が奏する効果を得られ難くなる。他方、4.00m2/gよりも著しく大きくなると、デンドライトの枝が細くなりすぎて、ペースト加工工程で枝が折れるなどの不具合が発生して、かえって導電性を阻害する可能性がある。
よって、本銅粉のBET一点法で測定される比表面積は1.20〜4.00m2/gであるのが好しく、中でも1.50m2/g以上或いは3.50m2/g以下、その中でも特に3.00m2/g以下、その中でも2.00m2/g以上或いは3.00m2/g以下であるのがさらに好ましい。
【0029】
(SSA/D50)
本銅粉は、D50に対する比表面積(SSA)の比率が、0.3〜2.0m2/(g・μm)であるのが好ましい。SSA/D50が0.3m2/(g・μm)以上であれば、分岐枝が発達しているために導電フィラー同士の接点確保が十分であり、2.0以下であれば、枝が細くなり過ぎず導電フィラーとしてロール混練やフィルタリングした際に形状が崩れてしまうこともない。
よって、本銅粉のSSA/D50は0.3〜2.0m2/(g・μm)であるのが好しく、中でも0.4m2/(g・μm)以上或いは1.8m2/(g・μm)以下、その中でも0.5m2/(g・μm)以上或いは1.6m2/(g・μm)以下であるのがさらに好ましい。特に0.7m2/(g・μm)以上或いは1.5m2/(g・μm)以下であるのがさらに好ましい。
【0030】
(タップ嵩密度:TD)
本銅粉のタップ嵩密度は、0.3〜1.5g/cm3であるのが好ましい。本銅粉の粒子形状がデンドライト状において、分岐枝が密に形成されているので、タップ嵩密度は比較的低く、1.5g/cm3以下となる。他方、タップ嵩密度が0.5g/cm3以上であれば、吸油量を少なくすることができ、ペースト作成時に高い導電性を得ることができる。
かかる観点から、本銅粉のタップ嵩密度は0.3〜1.5g/cm3であるのが好ましく、中でも0.50g/cm3以上或いは1.2g/cm3以下、その中でも特に0.60g/cm3以上或いは1.10g/cm3以下、その中でも特に0.70g/cm3以上或いは1.00g/cm3以下であるのがさらに好ましい。
【0031】
(吸油量)
本銅粉の吸油量(JISK5101)は、30〜100mL/100gであるのが好ましい。
銅粉の吸油量(JISK5101)が30mL/100g以上であれば、通常の銅粉に比べて、少ない銅粉で多くの油を吸収することができると言えるから、微粒であっても少ない量の導電材で機能を発揮することができる。
かかる観点から、本銅粉の吸油量(JISK5101)は30〜100mL/100gであるのが好ましく、中でも40mL/100g以上或いは90mL/100g以下、その中でも特に50mL/100g以上或いは80mL/100g以下であるのがさらに好ましい。
【0032】
<本銅粉の製造方法>
本銅粉は、所定の電解法によって製造することができる。
電解法としては、例えば、銅イオンを含む硫酸酸性の電解液に陽極と陰極を浸漬し、これに直流電流を流して電気分解を行い、陰極表面に粉末状に銅を析出させ、機械的又は電気的方法により掻き落として回収し、水で洗浄し、乾燥し、必要に応じて篩別工程などを経て電解銅粉を製造する方法を例示できる。
この際、電解液に少量の塩素を添加し、所定の表面粗度を備えた電極を用いて、析出後短時間のうちに掻き落とすことが本銅粉を製造するために好ましい。
【0033】
電解液の塩素濃度は3〜200mg/L、中でも5mg/L以上或いは150mg/L以下に調整するのが好ましい。
電極、特に陰極には、Ti電極などを使用するのが好ましい。但し、Tiに限定するものではない。
また、電極、特に陰極の表面粗度Rzは、2.0μm以下であるのが好ましく、中でも1.0μm以下であるのが特に好ましい。陰極の表面粗度Rzは小さい程好ましいと考えられるが、実際には0.001μm以上、経済性を特に考慮すれば0.1μm以上であるのが工業的には実用的であると考えられる。
表面粗度の高い通常の銅板を使用すると、表面凹凸の凸部において集中して銅粉粒子が成長してしまうため、本銅粉を得ることが難しい。
【0034】
また、本銅粉の製造においては、電解槽の大きさ、電極枚数、電極間距離及び電解液の循環量を調整し、電極付近の電解液の銅イオン濃度が常に高くなるように調整するのが好ましい。
ここで、一つのモデルケースを紹介すると、電解槽の大きさが2m3〜10m3で、電極枚数が10〜40枚で、電極間距離が5cm〜50cmである場合に、液温を20〜60℃好ましくは30℃以上或いは50℃以下とし、電流密度を10A/m2〜5000A/m2好ましくは100A/m以上或いは4000A/m以下とし、銅イオン濃度を5g/L〜50g/L好ましくは10g/L以上或いは30g/L以下とし、硫酸濃度を50〜300g/L好ましくは100g/L以上或いは200g/L以下とし、電解液の循環量を100〜1000L/分、好ましくは150L/分以上或いは500L/分以下とするように調整するのが好ましい。
【0035】
このように電解した後、電解析出した銅粉を、通常より短時間のうちに、具体的には10秒〜5分のうちに1回の頻度で、スクレーパなどで掻き落とすのが好ましい。
そして、掻き落として回収した銅粉を、水で洗浄した後、水と混合してスラリーとするか、或いは、銅粉ケーキとした後、必要に応じて撹拌して、水などで洗浄することにより、銅粉の含有塩素濃度を低減させるのが好ましい。
【0036】
また、電解銅粉粒子の表面は、必要に応じて、有機物を用いて耐酸化処理を施し、銅粉粒子表面に有機物層を形成するようにしてもよい。必ずしも有機物層を形成する必要はないが、銅粉粒子表面の酸化による経時変化を考慮すると形成した方がより好ましい。
この耐酸化処理に用いる有機物は、特にその種類を限定するものではなく、例えば膠、ゼラチン、有機脂肪酸、カップリング剤等を挙げることができる。
耐酸化処理の方法、すなわち有機物層の形成方法は、乾式法でも湿式法でもよい。乾式法であれば、有機物と銅粉粒子をV型混合器等で混合する方法、湿式法であれば水−銅粉粒子スラリーに有機物を添加し表面に吸着させる方法等を挙げることができる。但し、これらに限ったものではない。
例えば、電解銅粉析出後に水洗した後、銅粉ケーキ及び所望の有機物を含んだ水溶液と、有機溶媒とを混合して、銅粉表面に有機物を付着させる方法は好ましい一例である。
【0037】
<用途>
本銅粉を、導電性フィルムや導電膜の導電フィラーとして用いれば、当該導電性フィルムや導電膜を十分に薄くすることができ、しかも、少ない量で導通性を確保することができる。よって、本銅粉は、導電性ペーストや導電性フィルムの導電フィラーとして特に好適である。
【0038】
本銅粉を用いて導電性ペーストを作製する方法の一例としては、本銅粉をバインダ及び溶剤、さらに必要に応じて硬化剤やカップリング剤、腐食抑制剤などと混合して導電性ペーストを作製することができる。
本銅粉と、他の形状又は大きさの銅粉とを混合して導電性ペーストを作製することも可能である。
【0039】
この際、バインダとしては、液状のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
溶剤としては、テルピネオール、エチルカルビトール、カルビトールアセテート、ブチルセロソルブ等が挙げることができる。
硬化剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどを挙げることができる。
腐食抑制剤としては、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール等を挙げることができる。
【0040】
導電性ペーストは、これを用いて基板上に回路パターンを形成して各種電気回路を形成することができる。例えば焼成済み基板或いは未焼成基板に塗布又は印刷し、加熱し、必要に応じて加圧して焼き付けることでプリント配線板や各種電子部品の電気回路や外部電極などを形成することができる。
【0041】
また、本銅粉粒子を芯材としてこれらの表面の一部又は全部を異種導電性材料、例えば金、銀、ニッケル、スズなどで被覆することができる。
この際、本銅粉は、残留塩素を低減しているため、例えば置換法によって銅粉粒子に銀を被覆する際に、銀を均一に被覆させることができる。
【0042】
<用語の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>
2.5m×1.1m×1.5mの大きさ(約4m3)の電解槽内に、それぞれ大きさ(1.0m×1.0m)9枚のTi製陰極板(表面粗度Rz=0.7μm)と不溶性陽極板とを電極間距離5cmとなるように吊設し、電解液としての硫酸銅溶液を300L/分で循環させて、この電解液に陽極と陰極を浸漬し、これに直流電流を流して電気分解を行い、陰極表面に粉末状の銅を析出させた。
この際、循環させる電解液の液温40℃、Cu濃度を15g/L、硫酸(H2SO4)濃度を150g/L、塩素濃度を50mg/Lとし、且つ、電流密度を100A/mに調整して30分間電解を実施した。
【0045】
そして、陰極表面に析出した銅を、スクレーパを用いて30秒に1回の頻度で掻き落として回収し、その後、洗浄し、銅粉1kg相当の含水銅粉ケーキを得た。このケーキを水3Lに分散させてスラリーとし、その後、純水で洗浄して不純物を取り除いた。
次に、工業用ゼラチン(新田ゼラチン社製)10g/Lの水溶液1Lを加えて撹拌した後、減圧状態(1×10-3Pa)で80℃、6時間乾燥させ、電解銅粉(サンプル)を得た。
【0046】
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが0.5〜5.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていることを確認できた。
【0047】
(実施例2)
実施例1において、Cu濃度を10g/L、塩素濃度を150mg/Lにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが0.5〜5.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていることを確認できた。
【0048】
(実施例3)
実施例1において、Cu濃度を20g/L、電流密度を200A/mにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが1.0〜4.5μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていることを確認できた。
【0049】
(実施例4)
実施例1において、塩素濃度を150mg/L、硫酸濃度100g/L、電流密度を200A/mにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが1.5〜4.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.5〜19.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていることを確認できた。
【0050】
(実施例5)
実施例1において、塩素濃度を200mg/L、硫酸濃度200g/Lにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが1.0〜5.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが6.0〜18.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていることを確認できた。
【0051】
(実施例6)
実施例1において、電解液の液温30℃、塩素濃度を200mg/L、硫酸濃度200g/Lにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが1.5〜4.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.5〜19.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていることを確認できた。
【0052】
(実施例7)
実施例1において、電解液の液温50℃、塩素濃度を15mg/L、Cu濃度を10g/Lとした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが0.5〜5.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていることを確認できた。
【0053】
(実施例8)
実施例1において、塩素濃度を100mg/L、Cu濃度を10g/L、電流密度を200A/m、硫酸濃度200g/Lにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが0.5〜5.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていることを確認できた。
【0054】
(実施例9)
実施例1において、塩素濃度を200mg/L、Cu濃度を3g/L、硫酸濃度200g/Lにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが0.5〜5.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていることを確認できた。
【0055】
(実施例10)
実施例1において、塩素濃度を100mg/L、Cu濃度を2g/L、電流密度を200A/mにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが0.5〜5.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていることを確認できた。
【0056】
(比較例1)
実施例1において、塩素濃度を1000mg/L、Cu濃度を10g/L、電流密度を50A/m、硫酸濃度100g/Lにした以外は実施例1と同様に製造した。陰極表面に析出した銅を、機械的に掻き落として回収し、その後、洗浄し、銅粉1kg相当の含水銅粉ケーキを得た。このケーキを純水で洗浄して不純物を取り除いた後、工業用ゼラチン(新田ゼラチン社製)10g/Lの水溶液1Lを加えて撹拌した後、減圧状態(1×10-3Pa)で80℃、6時間乾燥させ、電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、ほとんどの銅粉粒子が針状又は棒状を呈していることを確認できた。
【0057】
(比較例2)
実施例1において、塩素濃度を500mg/L、Cu濃度を10g/L、電流密度を200A/m、硫酸濃度100g/Lにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、ほとんどの銅粉粒子は針状又は棒状を呈していることを確認できた。
【0058】
(比較例3)
実施例1において、塩素濃度を400mg/L、Cu濃度を10g/L、電流密度を200A/m、硫酸濃度100g/Lにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、ほとんどの銅粉粒子は針状又は棒状を呈していることを確認できた。
【0059】
(比較例4)
実施例1において、塩素濃度を300mg/L、Cu濃度を5g/L、電流密度を50A/m、硫酸濃度50g/Lにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが0.5〜5.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちに占める割合は80個数%未満であった。
【0060】
(比較例5)
実施例1において、Ti製陰極板の表面粗度Rz=3.0μm、塩素濃度を150mg/L、Cu濃度を5g/Lにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが0.5〜5.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちに占める割合は80個数%未満であった。
【0061】
(比較例6)
実施例1において、Ti製陰極板の表面粗度Rz=5.5μm、塩素濃度を100mg/L、電流密度を50A/m、硫酸濃度100g/Lにした以外は、実施例1と同様に電解銅粉(サンプル)を得た。
こうして得られた電解銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、主軸の長径Lが0.5〜5.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちに占める割合は80個数%未満であった。
【0062】
(比較例7)
市販のアトマイズ銅粉(三井金属社製アトマイズ銅粉、非デンドライト状、D50:3.4μm)を入手し、実施例1と同様に評価してその結果を表に示した。
アトマイズ銅粉とは、電解法ではなく、アトマイズ法によって作製した銅粉の意味である。
【0063】
=評価方法=
実施例・比較例で得られた銅粉(サンプル)を次のように評価した。
【0064】
<粒子形状の観察>
実施例・比較例で得た銅粉(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(2,000倍)にて、任意の500個の粒子の形状をそれぞれ観察し、主軸の太さa(「主軸太さa」)、主軸から伸びた枝の中で最も長い枝の長さb(「枝長b」)、主軸の長径Lに対する分岐枝の本数(枝本数/主軸長径L)を測定し、その平均値を表1に示した。
なお、平均値は、デンドライト状銅粉粒子と認められる粒子の平均値である。
【0065】
また、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状銅粉粒子(「特殊デンドライト状銅粉粒子」と称する)が、全銅粉粒子のうちに占める個数割合を「全粒子中の特殊デンドライトの個数割合」として表1に示した。
また、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μmである前記特殊デンドライト状銅粉粒子が、デンドライト状銅粉粒子のうちに占める個数割合を、「デンドライト中の特殊デンドライトの個数割合」として表1に示した。
なお、粒子形状の観察の際、粒子同士が重ならないように、カーボンテープ上に少量の銅粉(サンプル)を付けて測定を行った。
【0066】
<粒度測定>
実施例・比較例で得た銅粉(サンプル)を少量ビーカーに取り、3%トリトンX溶液(関東化学製)を2、3滴添加し、粉末になじませてから、0.1%SNディスパーサント41溶液(サンノプコ製)50mLを添加し、その後、超音波分散器TIPφ20(日本精機製作所製)を用いて2分間分散処理して測定用サンプルを調製した。
この測定用サンプルを、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300(日機装製)を用いて、体積累積基準D50を測定し、表1に示した。
【0067】
<比表面積の測定>
比表面積(SSA)は、マウンテック社製モノソーブにて、BET一点法で測定し、SSAとして表1に示した。
【0068】
<含有塩素濃度の測定>
実施例・比較例で得た銅粉(サンプル)を硝酸で全溶解し、得られた溶液中の塩素濃度を分光光度計で測定することにより、含有塩素濃度を測定した。
なお、上記実施例では、電析した銅粉を洗浄して銅粉粒子表面の塩素を除去しているため、実施例で得た銅粉(サンプル)で測定される含有塩素濃度は銅粉粒子内部に存在する塩素の濃度である。
【0069】
<タップ嵩密度(TD)測定>
実施例・比較例で得た銅粉(サンプル)のタップ嵩密度(g/cm3)は、試料200gを用いてパウダーテスターPT−E型(ホソカワミクロン製)により測定した。
【0070】
<吸油量の測定>
実施例・比較例で得た銅粉(サンプル)の吸油量(ml/100g)は、JIS5101に準じて測定した。
【0071】
<薄膜化評価>
実施例・比較例で得た銅粉(サンプル)55gと、バインダとしてエポキシ樹脂(DIC製 EPICLON850)20gと、有機溶剤としてトルエン25gとを混合してペーストを作成した。
次いで、バーコーターで幅200mm、ギャップが15μmとなるように、PET基材の上に、前記ペーストを塗工した後、大気熱風乾燥炉にて120℃10分で乾燥させ、厚さ5μmの塗膜を得た。
得られた塗膜を、光学顕微鏡(倍率100倍)によって観察し、塗膜外観評価を行った。
評価ランクとしては、塗工長100mmのエリアで塗膜カスレ不良が5箇所未満のモードを「◎(良好)」、5以上10以下を「○(合格)」、11以上を「×(不良)」と判定した。
【0072】
<体積抵抗率の測定>
圧粉抵抗測定システム(三菱化学PD−41)と抵抗率測定器(三菱化学MCP−T600)を用いて圧粉抵抗値を測定した。試料5gをプローブシリンダへ投入し、プローブユニットをPD−41へセットした。4探針法により、油圧ジャッキによって10kNの荷重をかけたときの抵抗値を、MCP−T600を用いて測定した。そして、測定した抵抗値と試料厚みから、体積抵抗率を算出した。
【0073】
<シート抵抗粉測定時の粉充填量>
実施例・比較例で得た銅粉(サンプル)適量と、バインダとしてエポキシ樹脂(DIC製 EPICLON850)20gと、有機溶剤としてトルエン25gとを混合してペーストを作成した。
次いで、バーコーターで幅200mm、ギャップが15μmとなるように、PET基材の上に、前記ペーストを塗工した後、大気熱風乾燥炉にて120℃10分で乾燥させ、厚さ5μmの塗膜を得た。
得られた塗膜を、抵抗率測定器(三菱化学MCP−T600)を用いて、4探針法によりシート抵抗値を測定した。
この際、シート抵抗値と測定された際の銅粉(サンプル)の充填量を測定し、測定して得られた銅粉の充填量(重量)を、銅粉とエポキシ樹脂の合計重量(100wt%)で除算し、その値を表中に「シート抵抗粉測定時の粉充填量(wt%)」として示した。
なお、実施例1〜10で得られた銅粉に関しては、粉同士が十分に接触して抵抗値を測定することができたが、比較例1〜7で得られた銅粉に関しては、抵抗値が高すぎてオーバーレンジとなり測定できなかった(表には「−」と示した)。
【0074】
【表1】
【0075】
(考察)
上記実施例及びこれまで発明が行ってきた試験結果から、電解液に少量の塩素を添加し、所定の表面粗度を備えた電極を用いて電解を行い、析出後短時間のうちに掻き落として水で洗浄することにより、上記実施例のような銅粉を製造できることが分かった。
【0076】
実施例1〜10で得られた銅粉の粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果、いずれの銅粉も、主軸の長径Lが0.5〜5.0μmであり、枝本数/主軸長径Lが3.0〜20.0本/μm、中でも4.0本/μm以上或いは19.0本/μm以下、その中でも5.0本/μm以上或いは18.0本/μm以下、その中でも特に6.0本/μm以上或いは18.0本/μm以下であるデンドライト状を呈する銅粉粒子が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていることを確認できた。
【0077】
上記実施例及び比較例、並びにこれまで行ってきた試験結果から、塩素の濃度が5wtppm〜150wtppmであり、D50が0.5μm〜5.0μmであり、主軸の長径Lに対する分岐枝の本数(枝本数/主軸長径L)が3.0〜20.0本/μmであるデンドライト状を呈する銅粉粒子(特殊デンドライト状銅粉粒子)が、全銅粉粒子のうちの80個数%以上を占めていれば、導電性フィルムや導電膜を十分に薄くすることができ、しかも、少ない量で導電特性を得ることができるものと考えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5