(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脂肪酸ジエタノールアミド(A)とアルカンスルホン酸塩(B)の合計量が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.05〜2質量部である、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
アルカンスルホン酸塩(B)と脂肪酸ジエタノールアミド(A)の質量比〔(A)/(B)〕が、70/30〜30/70である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
フェノール系酸化防止剤(C)の量が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.001〜1質量部である、請求項1〜3いずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法は、以下に述べる工程(1)〜(3)を有するものである。
【0010】
<工程(1)(反応工程)>
工程(1)では、炭素数が8〜22である脂肪酸及び/又はそのメチルエステル(a)(以下、「(a)成分」ともいう)とジエタノールアミン(b)(以下、「(b)成分」ともいう)とを、モル比〔(b)/(a)〕0.95〜1.2で仕込み、未反応の脂肪酸及び/又はそのメチルエステル(a)が仕込んだ脂肪酸及び/又はそのメチルエステル(a)の未反応率が2モル%以下になるまで縮合反応させて、脂肪酸ジエタノールアミド粗製物を得る。
この縮合反応は、(a)成分が脂肪酸のときは脱水反応となり、(a)成分が脂肪酸のメチルエステルのときは脱メタノール反応となり、それぞれ、脂肪酸ジエタノールアミドの他に水又はメタノールが生じる。
【0011】
((a)成分及び(b)成分)
(a)成分は、炭素数が8〜22である脂肪酸及び/又はそのメチルエステルである。炭素数が8〜22の範囲から外れると十分な帯電防止効果を得ることができない。この炭素数は、好ましくは10〜20であり、より好ましくは11〜19であり、更に好ましくは12〜18である。この(a)成分としては、ラウリル酸、ステアリン酸、ラウリン酸メチル、ステアリン酸メチル等が挙げられる。
(a)成分と(b)成分のモル比〔(b)/(a)〕は、0.95〜1.2である必要がある。この範囲から外れると、(a)成分又は(b)成分が未反応物として残留し、臭気、発泡、黄変の原因となる。モル比〔(b)/(a)〕は、好ましくは0.98〜1.2であり、より好ましくは1〜1.2である。
【0012】
((a)成分の未反応率)
未反応の(a)成分が2モル%以下になるまで反応させる必要がある。未反応の(a)成分が2モル%よりも多いと、(b)成分及び/又は(a)成分が未反応物として残留し、臭気、発泡、黄変の原因となる。未反応の(a)成分は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー等で測定することが可能であるが、ガスクロマトグラフィーがその簡便さから好適である。
【0013】
(反応条件)
工程(1)における反応温度は、未反応物の残留を抑制し、脂肪酸ジエタノールアミド粗製物の着色を抑制し、ひいては得られるポリオレフィン樹脂組成物の着色(製造時における着色)又は黄変(製造後における経時的な黄色変化)を抑制すると共に、生産性を向上させる観点から、好ましくは90〜150℃であり、より好ましくは90〜130℃であり、更に好ましくは90〜120℃である。
また、同様の観点から、反応圧力は、好ましくは1013hPa以下であり、より好ましくは100hPa以下であり、更に好ましくは30hPa以下である。
反応時間は、ポリオレフィン樹脂組成物の着色防止や突沸防止等の反応制御の観点から、好ましくは0.5〜10時間であり、より好ましくは1〜8時間であり、更に好ましくは2〜4時間である。
工程(1)では、反応時の温度の均一性の確保及び生成する水またはメタノールによる突沸抑制の観点から、撹拌しながら反応させることが好ましい。
また、ポリオレフィン樹脂組成物の着色抑制の観点から窒素気流下で行うことが好ましい。
【0014】
≪触媒≫
また工程(1)では、反応を促進する観点から、一般に知られている縮合反応触媒を用いることができる。縮合触媒としては、チタン系触媒、金属アルコラート触媒、スズ系触媒、ブレンステッド酸系触媒等が挙げられる。
チタン系触媒としては、チタン酸テトラメチル、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラ−n−ブチル、四塩化チタン、四臭化チタン等が挙げられる。
金属アルコラート触媒としては、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムプロピラート、ナトリウム−t−ブチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラート、カリウムプロピラート、カリウム−t−ブチラート等が挙げられる。
スズ系触媒としては、酢酸第一スズ、水酸化第一スズ、臭化第一スズ、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、ヨウ化第一スズ、オキシ塩化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第一スズ、ラウリン酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、オレイン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、第一スズブトキシド、第一スズ−2−エチルヘキソキシド、第一スズフェノキシド、第一スズクレゾキシド等の第一スズ化合物、塩化第二スズ、臭化第二スズ、フッ化第二スズ、オキシ塩化第二スズ等の第二スズ化合物等が挙げられる。
ブレンステッド酸系触媒としては、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
これらの縮合反応触媒のうち、金属アルコラート触媒が好ましく、ナトリウムアルコラートがより好ましく、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムプロピラート、及びナトリウム−t−ブチラートが更に好ましい。
上記縮合触媒の使用量は、(b)成分100モル部に対して、好ましくは0.1〜20モル部であり、より好ましくは1〜10モル部であり、更に好ましくは1.5〜5モル部であり、更に好ましくは1.5〜2モル部である。
【0015】
<工程(2)(熟成工程)>
工程(2)では、工程(1)で得られた粗製物を、40〜80℃で1日(24時間)以上保持して、脂肪酸ジエタノールアミド(A)を得る。
通常、加温すると脂肪酸ジエタノールアミド(A)は着色し易くなるため、工程(2)のように加温した脂肪酸ジエタノールアミド(A)を用いて得られたポリオレフィン樹脂組成物も、着色及び黄変が生じ易くなると予測される。しかしながら、本発明においては、このような予測に反し、工程(2)のように加温して熟成すると、脂肪酸ジエタノールアミド(A)の着色及び黄変が抑制されることによってポリオレフィン樹脂組成物の着色及び黄変が抑制されることを見出した。この理由は、工程(2)によって、着色、黄変の原因となる物質が減少することにあると推定される。
【0016】
(熟成条件)
工程(2)における熟成温度は、ポリオレフィン樹脂組成物の着色又は黄変抑制の観点から80℃以下である必要があり、かつ脂肪酸ジエタノールアミド(A)の安定化の観点から40℃以上である必要がある。また、脂肪酸ジエタノールアミド(A)の安定化の観点からは、融点を超える温度が好ましい。(B)成分の炭素数によって適正温度は異なるが、熟成温度は、好ましくは45〜70℃であり、より好ましくは50〜65℃であり、更に好ましくは50〜60℃である。
工程(2)における熟成圧力は、脂肪酸ジエタノールアミド(A)を安定化させる観点から、好ましくは50〜1100hPaであり、より好ましくは500〜1100hPaである。コストの観点から、更に好ましくは常圧近傍(900〜1100hPa)である。
工程(2)における熟成時間は、ポリオレフィン樹脂組成物の着色及び黄変抑制の観点から、1日(24時間)以上である必要があり、好ましくは2日以上であり、より好ましくは3日(72時間)以上であり、更に好ましくは4(96時間)日以上である。上限は特にないが、10(240時間)日であれば十分である。
【0017】
工程(2)は、ポリオレフィン樹脂組成物の着色及び黄変抑制の観点から、窒素気流下で行うことが好ましい。
また、脂肪酸ジエタノールアミド(A)の安定化促進の観点から、撹拌しながら工程(2)(熟成工程)を行うことが好ましい。
工程(1)と工程(2)は同じ反応容器で行ってもよく、工程(1)で得られた粗製物を輸送し別の反応容器で行ってもよい。
【0018】
なお、工程(1)後に脂肪酸ジエタノールアミド粗製物が固化し、取り扱い性が悪化したり、再溶解などによりコストアップや着色したりすることを回避する観点から、工程(1)の実施後から工程(2)の実施開始までの時間は、10時間以内とすることが好ましく、5時間以内とすることがより好ましく、1時間以内とすることが更に好ましい。
【0019】
<工程(3)>
工程(3)では、工程(2)で得られた脂肪酸ジエタノールアミド(A)(以下、「(A)成分」ともいう)と、炭素数が8〜18のアルキル基を持つアルカンスルホン酸塩(B)(以下、「(B)成分」ともいう)と、フェノール系酸化防止剤(C)(以下、「(C)成分」ともいう)と、ポリオレフィン樹脂(D)(以下、「(D)成分」ともいう)とを混合する。
このようにして(A)〜(D)成分を混合することにより、ポリオレフィン樹脂組成物が得られる。このポリオレフィン樹脂組成物は、帯電防止剤として脂肪酸ジエタノールアミド(A)及びアルカンスルホン酸塩(B)を含むために帯電防止性能に優れており、またフェノール系酸化防止剤(C)を含むために酸化劣化が抑制される。また、このポリオレフィン樹脂組成物は、工程(2)で加温された脂肪酸ジエタノールアミド(A)を用いるため、前記のとおり着色及び黄変が抑制される。
【0020】
((B)成分)
本発明で用いられる炭素数が8〜22のアルキル基を有するアルカンスルホン酸塩(B)は一般式(I)で表される。
R
1−SO
3M (I)
(R
1は炭素数8〜22のアルキル基、Mはアルカリ金属を示す。)
【0021】
帯電防止性能の発現の観点から、アルキル基の炭素数は、好ましくは8〜18であり、より好ましくは10〜18であり、更に好ましくは11〜15である。入手の容易性の観点から、アルカンスルホン酸塩(B)は、複数の混合物であることが好ましい。Mは、好ましくはナトリウム及びカリウムであり、入手の容易性及びコストの観点からナトリウムがより好ましい。
【0022】
アルカンスルホン酸塩(B)としては、市販品を用いることができる。また、アルカンスルホン酸塩(B)の前駆体であるR
1−SO
3Hは、例えば、オレフィンとSO
3との反応等により得ることができる。このアルカンスルホン酸塩(B)を直接的に得る方法としては、シュツレッガー(Strecker)反応に代表されるアルキルハライドと亜硫酸塩との反応や、リード(Reed)反応に代表される、パラフィンにSO
2とCl
2との混合ガスを紫外線照射下で作用させてスルホクロライドを生成し、アルカリ存在下で加水分解する方法等が挙げられる。
【0023】
これらアルカンスルホン酸塩(B)の具体例としては、オクタンスルホン酸ナトリウム、デカンスルホン酸ナトリウム、ウンデカンスルホン酸ナトリウム、ドデカンスルホン酸ナトリウム、トリデカンスルホン酸ナトリウム、テトラデカンスルホン酸ナトリウム、ペンタデカンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、オクタデカンスルホン酸ナトリウム等のアルカンスルホン酸ナトリウム;ウンデカンスルホン酸カリウム等のアルカンスルホン酸カリウム;デカンスルホン酸リチウム等のアルカンスルホン酸リチウム等が挙げられる。これらの中で、アルカンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。これらの化合物は単独でも2種以上を混合して用いてもよい。アルカンスルホン酸塩(B)の平均炭素数は、好ましくは10〜16であり、より好ましくは11〜15である。
【0024】
((A)成分と(B)成分の合計量)
(A)成分と(B)成分の合計量は、ポリオレフィン樹脂組成物の帯電防止性能発現の観点から、ポリオレフィン樹脂(D)100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上であり、更に好ましくは0.2質量部以上である。また、ポリオレフィン樹脂組成物の表面のべとつき、強度等の樹脂物性の観点から、(A)成分と(B)成分の合計量は、ポリオレフィン樹脂(D)100質量部に対して、好ましくは2質量部以下であり、より好ましくは1.5質量部以下であり、更に好ましくは1.0質量部以下である。
上記の観点から、(A)成分と(B)成分の合計量は、ポリオレフィン樹脂(D)100質量部に対して、好ましくは0.05〜2質量部であり、より好ましくは0.1〜1.5質量部であり、更に好ましくは0.2〜1.0質量部である。
【0025】
((B)成分と(A)成分の質量比〔(A)/(B)〕)
(B)成分と(A)成分の質量比〔(A)/(B)〕は、帯電防止性能の発現の観点から、好ましくは70/30〜30/70であり、より好ましくは60/40〜40/60であり、更に好ましくは55/45〜45/55である。
【0026】
((C)成分)
フェノール系酸化防止剤(C)は、ポリオレフィン樹脂組成物の酸化劣化及び熱劣化を抑制するために配合される。
(C)成分の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−エチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコールービス[(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ヘキサンジオール−ビス−[3'−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェエル)プロピオネート]、2,4−ビス[(N―オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−プチルアニリノ)]−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェエル)プロピオネート]、2,2'−チオビス(4−メチル−6−t−ブチル)フェノール、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチル)フェノール、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル等が挙げられる。これらのうち、好ましくは2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネートであり、より好ましくは2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
(C)成分の添加量は、酸化劣化防止、熱劣化防止及びコスト削減の観点から、ポリオレフィン樹脂(D)100質量部に対して、好ましくは0.001〜1質量部であり、より好ましくは0.005〜0.5質量部であり、更に好ましくは0.01〜0.2質量部である。
【0027】
(ポリオレフィン樹脂(D))
本発明に使用されるポリオレフィン樹脂(D)としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体、ポリ−4−メチルペンテン−1等が挙げられる。これらのうち、より好ましくは低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体であり、更に好ましくは低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンである。これらポリオレフィン樹脂は、単独でも2種以上を併用して用いてもよい。
本発明に使用されるポリオレフィン樹脂の製造方法は特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒、酸素、過酸化物等のラジカル開始剤等を用いる方法が挙げられる。
【0028】
(任意成分)
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、前記の(A)〜(D)成分の他に、他の成分が添加されてもよい。
たとえば、上記(C)成分の他に、フェノール系以外の酸化防止剤や熱劣化抑制剤を添加してもよい。具体例としては、トリスノニルフェニルホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0029】
このように(C)成分以外の酸化防止剤や熱劣化抑制剤を混合する場合も、酸化劣化防止、熱劣化防止及びコスト削減の観点から、(C)成分及びその他の酸化防止剤及び熱劣化抑制剤の合計量が、ポリオレフィン樹脂(D)100質量部に対して、好ましくは0.001〜1質量部であり、より好ましくは0.005〜0.5質量部であり、更に好ましくは0.01〜0.1質量部である。
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、必要に応じて、更に無機顔料、有機顔料、合成ゴム、無機充填剤、難燃剤等の添加剤を含有することが可能である。
【0030】
(混合条件)
混合条件としては、(A)〜(D)成分及び必要に応じて任意成分を一括して加熱混練する方法;予め帯電防止剤である(A)成分及び(B)成分を混合及び必要に応じて溶融し、この混合物とポリオレフィン樹脂(D)、(C)成分及び必要に応じて任意成分を加熱混練する方法;予め帯電防止剤である(A)成分及び(B)成分をポリオレフィン樹脂(D)中に混合して第1のポリオレフィン樹脂組成物を作成すると共に(C)成分及び必要に応じて任意成分をポリオレフィン樹脂(D)中に混合して第2のポリオレフィン樹脂組成物を作成し、次いで、これら第1のポリオレフィン樹脂組成物及び第2のポリオレフィン樹脂組成物を加熱混錬する方法;(C)成分とポリオレフィン樹脂(D)とを予め混合したポリオレフィン樹脂組成物と帯電防止剤である(A)成分及び(B)成分と加熱混練する方法等が挙げられる。
【0031】
加熱混錬装置としては公知の混錬機、例えば各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール等が使用できる。成形機用の押出機の中で成形と同時に加熱混錬することも可能である。また、加熱混錬の前に予備混合することも好ましい。予備混合の装置としては通常使用される混合機、より具体的にはドラムブレンダー、V型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等が使用できる。
【0032】
ポリオレフィン樹脂組成物の混錬温度は公知の温度で行うことができるが、ポリオレフィン樹脂組成物の着色の抑制、帯電防止性能の発現、酸化劣化の抑制及び作業性を考慮すると、好ましくは130〜280℃であり、より好ましくは170〜240℃であり、更に好ましくは190〜240℃である。特に、ポリオレフィン樹脂(D)がポリエチレン樹脂である場合、混練温度は、好ましくは130〜250℃であり、より好ましくは170〜230℃であり、更に好ましくは190〜230℃である。ポリオレフィン樹脂(D)がポリプロピレン樹脂である場合、混練温度は、好ましくは180〜280℃であり、より好ましくは200〜240℃であり、更に好ましくは200〜230℃である。ここで混練には、射出成形や押出成形等の成形も含まれる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定した。
【0034】
[評価項目]
<表面抵抗値>
温度25℃、相対湿度50%に調整した室内で、ハイレジスタンスメータ(A−4329型 横河YHP社製)により、テストピース(5cm×7cm×3mm)の表面固有抵抗値を測定した。なお、表面固有抵抗値は、数値が小さいほど帯電防止性に優れることを示す。
【0035】
<帯電圧半減期>
温度25℃、相対湿度50%に調整した室内で、スタティックオネストメーター(S−5109型 シシド静電気社製)により、テストピースをコロナ放電場(電圧10kV印加)で2分間帯電させ、帯電圧が1/2に減衰するまでの時間(半減期)を測定した。なお、帯電圧半減期の値は、数値が小さいほど帯電防止性が優れることを示す。
【0036】
<黄色性(色相(b値))の評価>
テストピースを遮光状態の暗所に40℃、2ヶ月保管し、保管前後の色相(b値)をJIS Z 8722に基づいて、Spectoro Color Meter(SE−2000 日本電色工業株式会社製)で測定した。色相(b値)は黄色度合いを表し、数値が大きいほど黄色が強いことを示す。
【0037】
<脂肪酸ジエタノールアミド製造時の未反応率>
(i)未反応分測定
(1)サンプルが脂肪酸の場合
サンプル20mgをスクリュー管に移し、トリメチルシリルジアゾメタンのジエチルエーテル溶液でメチルエステル化し、ジエチルエーテルを除去後、アセトン2mlを添加、溶解し、ガスクロマトグラフィー用サンプルとした。また、サンプルと同一種の脂肪酸の既知質量をスクリュー管に移し、同様の操作を行って高純度の脂肪酸メチルエステルを作成して、検量線サンプルとする。
未反応の脂肪酸量は、次の装置及び温度条件で、脂肪酸メチルエステル量を測定し、絶対検量法により求める。
(2)サンプルが脂肪酸メチルエステルの場合
サンプル20mgをスクリュー管に移し、アセトン2mlを添加、溶解し、ガスクロマトグラフィー用サンプルとした。また、サンプルと同一種の脂肪酸メチルエステルを既知質量用い、同様の操作を行って高純度の脂肪酸メチルエステルを作成して、検量線サンプルとする。
未反応の脂肪酸メチルエステル量は、次の装置及び温度条件で、脂肪酸メチルエステル量を測定し、絶対検量法により求める。
【0038】
装置 :Agilent Technologies社製6890N
カラム:Agilent Technologies社製DB−1 HT
(100%ジメチルポリシロキサン; 型番Agilent 122−1031;
長さ30m、径0.25mm、膜厚0.1μm)
温度条件:初期範囲100℃、昇温速度10℃/min、最終温度300℃、
300℃保持時間10分
【0039】
(ii)反応分測定
サンプル10mgをスクリュー管に移し、トリメチルシリル化剤(TMSI-H、ジーエルサイエンス株式会社製)1mlを入れて末端水酸基をトリメチルシリル化した後、水1mlを添加し、次にヘキサン1mlで抽出後、ヘキサン層をガスクロマトグラフィー用サンプルとする。
また、サンプルと同一種の脂肪酸ジエタノールアミドの既知質量をスクリュー管に移し、同様の操作を行って高純度の脂肪酸ジエタノールアミドを作成して、検量線サンプルとする。
脂肪酸ジエタノールアミド量は、上記の未反応分測定と同様に装置及び温度条件で、脂肪酸ジエタノールアミド量を測定し、絶対検量法により求める。
【0040】
(iii)未反応率の算出
上記の反応測定分と反応測定分とから、次の式により未反応率を算出した。
未反応率(%)=(未反応測定分質量÷理論脂肪酸又はメチルエステル分子量)
÷[(未反応測定分質量÷理論脂肪酸又はメチルエステル分子量)
+(反応測定分質量÷理論脂肪酸ジエタノールアミド分子量)]
×100
【0041】
実施例1〜2、及び比較例1〜2
(1)脂肪酸ジエタノールアミド(A1)の製造
ラウリン酸メチル(和光純薬工業株式会社製)400g(1.87モル)とジエタノールアミン(和光純薬工業株式会社製)197g(1.87モル)を仕込んだ、攪拌装置、真空ポンプにつながった冷却管とトラップ用のナスフラスコを備えた4口フラスコに、窒素気流下、ナトリウムメチラート(和光純薬工業株式会社製)2g(0.037モル)を撹拌しながら入れた。マントルヒーターを用い、100℃まで30分かけて昇温した。突沸に注意しながら真空ポンプを用いて減圧を開始し、脱メタノールをしながら徐々に真空度を上げ20hPaにした。真空度が20hPaに達してから2時間、100℃、20hPaにて反応を行った。この時、サンプルリングを行い、ラウリン酸メチルの未反応率が2モル%以下であることを確認した。
【0042】
次に窒素気流下にて常圧にもどし、マントルヒーターを外し、冷水にて60℃まで冷却した。次いで、時間をおかずに、撹拌装置を備えた4口フラスコを3つ用意し、それぞれに生成物を130gずつ仕込んだ。余った生成物は熟成0時間生成物とした。また、フラスコに移したサンプルを窒素気流下、55℃、常圧でそれぞれ12時間、1日、5日撹拌しながら熟成した。
それぞれの条件の生成物は、氷冷したSUS容器に薄く広げることにより急激に固化させ、すぐに使用した。
【0043】
(2)ポリオレフィン樹脂組成物の製造
表1に示す組成にて配合、成形を行った。ただし、各化合物量は質量比を示す。
すなわち、ポリオレフィン樹脂、粉末化した脂肪酸ジエタノールアミド、フレーク状に加工したアルカンスルホン酸塩、フェノール系酸化防止剤を20Lヘンシルミキサー(日本コークス工業株式会社製)に入れて室温にて600rpm、2分間混合し、混合物を得た。この混合物を用い、200℃に設定したラボプラストミル2軸押し出し機(東洋精機株式会社製)にて樹脂ペレットを製造した。更に得られた樹脂ペレットを、シリンダー温度230℃とした射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J75E-D)を用いて射出し、金型温度80℃、成形時間10分でテストピース(5cm×7cm×3mm)を成形した。得られたテストピースについて前述の各種評価を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例3〜4、比較例3〜4
(1)脂肪酸ジエタノールアミド(A2)の製造
ジエタノールアミン(和光純薬工業株式会社製)の仕込み量を227g(2.16モル)としたこと以外は実施例1と同様にして脂肪酸ジエタノールアミド(A2)を作成した。
【0046】
(2)ポリオレフィン樹脂組成物の製造
表2に示す組成にて配合、成形を行った。ただし、各化合物量は質量比を示す。
すなわち、ポリオレフィン樹脂、粉末化した脂肪酸ジエタノールアミド、フレーク状に加工したアルカンスルホン酸塩、フェノール系酸化防止剤を20Lヘンシルミキサー(日本コークス工業株式会社製)に入れて室温にて600rpm、0.5分間混合し、混合物を得た。この混合物を用い、200℃に設定したラボプラストミル2軸押し出し機(東洋精機株式会社製)にて樹脂ペレットを作成した。更に得られた樹脂ペレットを、押出成形機(株式会社プラスチック工学研究所製、PLABOR、単軸20mmφ、T-ダイ20cm幅)に導入し、200℃にて0.5mm厚のシートを押出成形した。得られたテストピースについて前述の各種評価を行った。その結果を表1に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
[結果]
実施例1〜4のポリオレフィン樹脂組成物は、比較例1〜4のポリオレフィン樹脂組成物よりも、長期にわたり黄変が少なかった。また、実施例1〜4のポリオレフィン樹脂組成物は比較例1〜4のポリオレフィン樹脂組成物と同様に、帯電防止性能に優れていた。