特許第5877060号(P5877060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877060
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20160218BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   G03G9/08 381
   G03G9/08 331
   G03G9/08 365
   G03G9/08 311
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2011-286957(P2011-286957)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-134488(P2013-134488A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】水畑 浩司
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−186053(JP,A)
【文献】 特開2007−025525(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/074580(WO,A1)
【文献】 特開2010−079277(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/027071(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 − 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)〜(3)を含む、コアシェル型の静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程(1):結晶性ポリエステル(a)からなる樹脂粒子(A)、着色剤及び非晶質ポリエステル(b)を含有する樹脂粒子(B)、及び離型剤を含有する離型剤粒子を凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程
工程(2):非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂粒子(C)を添加して、凝集粒子(2)を得る工程
工程(3):凝集粒子(2)を、非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点より10℃低い温度以上の温度であって、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移点より10℃低い温度以上の温度であって、結晶性ポリエステル(a)の融点未満の温度に保持して、融着したコアシェル粒子を得る工程
【請求項2】
結晶性ポリエステル(a)の融点が60〜90℃である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
樹脂粒子(A)がオキサゾリン基を有する化合物で架橋してなるものである、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
結晶性ポリエステル(a)が、炭素数4〜12のα,ω−アルカンジオールと炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸とを縮重合して得られる結晶性ポリエステルである、請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点が50〜70℃である、請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点が、結晶性ポリエステル(a)の融点より低い温度である、請求項1〜5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項7】
離型剤が、2種以上の、融点が60〜90℃である離型剤からなる、請求項1〜6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項8】
樹脂粒子(B)中の着色剤の含有量が、樹脂粒子(B)を構成する樹脂100重量部に対して1〜20重量部である、請求項1〜7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーの製造方法、及びそれにより得られる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した電子写真用のトナーの開発が要求されている。
近年では、高画質化や低温定着に対応した、粒径制御や小粒径化、構造制御のなされたトナーを製造する方法として、微細な樹脂粒子等を水系媒体中で凝集、融着させてトナーを得る、凝集合一法(乳化凝集法、凝集融着法)が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、低温定着性、帯電性、保存安定性の改善を目的として、着色剤、結晶性ポリエステルを含有する樹脂粒子、離型剤粒子を凝集してコア凝集粒子を得、それに、非晶性ポリエステルを含有する樹脂粒子を付着させて、コアシェル凝集粒子を得、更に水性媒体中、特定の温度、特に結晶性ポリエステルの融点より5℃以上低い温度で保持し、コアシェル粒子を得る工程を含む電子写真用トナーの製造方法が開示されている。
特許文献2には、定着範囲、印刷品質、光沢、帯電等に優れたトナーを製造することを目的として、非結晶性ポリエステル、結晶性ポリエステル、着色剤の凝集を含み、更に結晶性ポリエステルの溶融開始点温度より低い温度で合一することを含むトナーの製造方法が開示されている。
また、特許文献3には、印刷光沢を向上させることを目的として、非晶質樹脂と、約850nmから約1100nmまでの波長において最大吸光度を有する赤外線吸収体と、結晶性樹脂と、随意の着色剤と、随意のワックスとを含むトナーが開示されている。
特許文献4には、トナーの帯電性の低下を抑制することを目的として、アルケニル基を有し、前記アルケニル基のうち分岐構造を有するアルケニル基の数が5%以上である非晶性ポルエステル樹脂と、特定のエステル基濃度の結晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂を含む静電荷像現像用トナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−186053号公報
【特許文献2】特開2008−250320号公報
【特許文献3】特開2011−81374号公報
【特許文献4】特開2011−81355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トナー中に結晶性ポリエステルや離型剤を含有させることで、これらの溶融特性により、得られるトナーの定着温度を低下することができる。それによって、印刷機の消費電力を低減し、高速印刷に適するトナーを得ることができる。しかし、定着温度を下げるために、融点の低い結晶性ポリエステルや離型剤を用いると、トナーの高温での保存性(耐熱保存性)が低下してしまうという問題がある。
一方、凝集合一法(乳化凝集法)で得られたトナーは、結晶性ポリエステルや離型剤を内包するのには適しているが、従来から公知の溶融混練法に比べると着色剤として用いられる顔料等を樹脂中に分散しにくく、発色性を向上させるのが困難であり、得られる印刷物の画像濃度が低下するという問題もある。
本発明の課題は、画像濃度に優れ、低温定着性と耐熱保存性を両立できる静電荷像現像用トナー並びにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、画像濃度、低温定着性及び耐熱保存性に影響する要因は、樹脂の種類と着色剤との関係特に樹脂中における着色剤の存在状態にあると考えて検討を行った。その結果、結晶性ポリエステルからなる樹脂粒子、着色剤及び非晶質ポリエステルからなる樹脂粒子、及び離型剤粒子を凝集させ、非晶質ポリエステルを含有する樹脂粒子を添加し、特定の温度に保持して、コアシェル構造を形成することにより、画像濃度に優れ、低温定着性と耐熱保存性を両立できる静電荷像現像用トナーを得ることができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕下記の工程(1)〜(3)を含む、コアシェル型の静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程(1):結晶性ポリエステル(a)からなる樹脂粒子(A)、着色剤及び非晶質ポリエステル(b)を含有する樹脂粒子(B)、及び離型剤を含有する離型剤粒子を凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程
工程(2):非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂粒子(C)を添加して、凝集粒子(2)を得る工程
工程(3):凝集粒子(2)を、非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点より10℃低い温度以上の温度であって、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移点より10℃低い温度以上の温度であって、結晶性ポリエステル(a)の融点未満の温度に保持して、融着したコアシェル粒子を得る工程
〔2〕前記〔1〕に記載の製造方法により得られる静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像濃度に優れ、低温定着性と耐熱保存性を両立できる静電荷像現像用トナー並びにその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、下記の工程(1)〜(3)を含む。
工程(1):結晶性ポリエステル(a)からなる樹脂粒子(A)、着色剤及び非晶質ポリエステル(b)を含有する樹脂粒子(B)、及び離型剤を含有する離型剤粒子を凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程
工程(2):非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂粒子(C)を添加して、凝集粒子(2)を得る工程
工程(3):凝集粒子(2)を、非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点より10℃低い温度以上の温度であって、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移点より10℃低い温度以上の温度であって、結晶性ポリエステル(a)の融点未満の温度に保持して、融着したコアシェル粒子を得る工程
【0010】
本発明の製造方法によって得られた静電荷像現像用トナーが、画像濃度に優れ、低温定着性と耐熱保存性を両立できる理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明の方法における工程(1)では、得られるトナーのコアとなる成分を凝集させる。ここでは、着色剤及び非晶質ポリエステル(b)からなる樹脂粒子(B)を用いる。非晶質ポリエステルは結晶性を有さないため、溶融時にも粘度が高い。このため、着色剤と混合して樹脂粒子(B)を得る際に着色剤の分散性を高めることができ、トナーを得る際の融着工程においても、着色剤の高い分散性を維持することが可能であると考えられる。このトナー中における着色剤の高い分散性のために、得られるトナーの画像濃度が高まるものと考えられる。また、コアとなる成分には、更に結晶性ポリエステル(a)からなる樹脂粒子(A)と、離型剤を含有する離型剤粒子を用いる。これらは結晶性を有する粒子である。これらは、融点付近で急激に粘度が低下するため、トナーの低温での定着性を高めることが可能になると考えられる。
工程(2)では更にシェル部分として、非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂粒子(C)を添加し、工程(3)ではそれらを融着させてコアシェル粒子を得る。ここで、非晶質ポリエステル(b)及び(c)のガラス転移点より10℃低い温度以上の温度、かつ結晶性ポリエステル(a)の融点未満の温度に保持することによって、結晶性ポリエステルが粒子形状の結晶状態を維持したまま、非晶質ポリエステルの分子運動性が向上して融着する。このため、得られるトナーは、非晶質ポリエステル中に結晶性ポリエステルがその結晶のドメインを有した状態で存在する粒子となり、耐熱保存性が高く、低温定着性に優れるものと考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分及び工程等について説明する。
【0011】
[樹脂粒子(A)]
本発明において、樹脂粒子(A)は結晶性ポリエステル(a)からなる。
【0012】
(結晶性ポリエステル(a))
本発明の結晶性ポリエステル(a)は、結晶性を有するポリエステルである。
ここで、本発明における「結晶性」とは、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される結晶性指数が0.6〜1.4のものであり、結晶性指数は、トナーの低温定着性の観点から、0.8〜1.3のものが好ましく、0.9〜1.2のものがより好ましく、0.9〜1.1のものが更に好ましい。
結晶性ポリエステル(a)は、アルコール成分と酸成分を縮重合して得られる。なかでも、ポリエステルの結晶性を促進させ、トナーの低温定着性を向上させる観点から、炭素数2〜12のα,ω−アルカンジオールと酸成分である炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸とを縮重合して得ることが好ましく、炭素数4〜12のα,ω−アルカンジオールと炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸とを縮重合して得られる結晶性ポリエステルであることがより好ましく、炭素数6〜12のα,ω−アルカンジオールと炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸とを縮重合して得られる結晶性ポリエステルであることが更に好ましい。
なお、本発明においては、結晶性ポリエステル(a)の原料モノマーである酸成分のカルボン酸には、酸無水物及び炭素数1〜3のアルキルエステルも含まれる。
【0013】
炭素数2〜12のα,ω−アルカンジオールとしては、ポリエステルの結晶性を促進させ、トナーの低温定着性を向上させる観点から、炭素数6〜12のものが好ましい。
炭素数2〜12のα,ω−アルカンジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられ、なかでもトナーの低温定着性と耐熱保存性を両立する観点から、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオールが好ましい。
炭素数2〜12のα,ω−アルカンジオールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸としては、ポリエステルの結晶性を促進させ、トナーの低温定着性を向上させる観点から、炭素数8〜12のものが好ましい。
炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、アゼライン酸等が挙げられ、なかでもトナーの低温定着性と耐熱保存性を両立する観点から、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。
これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記炭素数2〜12のα,ω−アルカンジオール以外のアルコール成分や炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸以外の酸成分を含有してもよい。
【0015】
結晶性ポリエステル(a)は、乳化性の観点から、分子末端に酸基を有することが好ましい。該酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸基等が挙げられる。これらの中でも、樹脂の分散性と樹脂粒子の凝集性および得られるトナーの耐熱保存性との両立の観点から、カルボキシル基が好ましい。
【0016】
結晶性ポリエステル(a)の融点は、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立する観点から、45〜120℃が好ましく、60〜90℃がより好ましく、70〜80℃が更に好ましい。なかでも低温定着性の観点から、70〜75℃が好ましく、耐熱保存性の観点から、75〜80℃が好ましい。
結晶性ポリエステル(a)の軟化点は、同様の観点から、50〜150℃が好ましく、70〜100℃がより好ましく、75〜90℃が更に好ましい。なかでも低温定着性の観点から、75〜80℃が好ましく、耐熱保存性の観点から、80〜90℃が好ましい。
結晶性ポリエステル(a)の酸価は、トナーの帯電量の観点から、5〜30mgKOH/gが好ましく、10〜27mgKOH/gがより好ましく、10〜25mgKOH/gが更に好ましい。
なお、結晶性ポリエステル(a)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、結晶性ポリエステル(a)の融点及び軟化点は、実施例記載の方法によって求められる。2種以上併用する場合、融点は、得られるトナーに含有される結晶性ポリエステル(a)中、最も重量比の大きい結晶性ポリエステル(a)の融点を、本発明における結晶性ポリエステル(a)の融点とする。なお、全てが同一の比率の場合は、最も低い値とする。軟化点は、結晶性ポリエステル(a)の混合物として、実施例に記載の方法によって求められる。
【0017】
結晶性ポリエステル(a)は、前記アルコール成分と酸成分とを、好ましくは触媒存在下、好ましくは180〜250℃で重縮合反応させることによって製造することができる。
触媒としては、縮重合反応の効率の観点から、錫化合物、チタン化合物等が好ましく、錫化合物がより好ましく、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫、酸化ジブチル錫等が挙げられる。チタン化合物としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等が挙げられる。
触媒の使用量に制限はないが、アルコール成分と酸成分との総量100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、0.1〜0.7重量部がより好ましい。
【0018】
縮重合反応は、反応容器に、アルコール成分と酸成分を入れ、140〜200℃で5〜15時間維持して行うことが好ましく、更にその後、触媒を加え140〜200℃で1〜5時間維持して反応を進行させ、5.0〜20kPaに減圧して1〜10時間維持することで、結晶性ポリエステルを得る方法が好ましい。
【0019】
(樹脂粒子(A)の製造)
樹脂粒子(A)は、結晶性ポリエステル(a)を水性媒体中に分散させ、樹脂粒子(A)を含有する分散液として得る方法によって製造することが好ましい。
分散液を得る方法としては、ポリエステルを水性媒体に添加し、分散機等によって分散処理を行う方法、ポリエステルに水性媒体を徐々に添加して転相乳化させる方法等が挙げられ、得られるトナーの低温定着性の観点から、転相乳化による方法が好ましい。以下、転相乳化による方法について述べる。
【0020】
まず、結晶性ポリエステル(a)、アルカリ水溶液を溶融して混合し、樹脂混合物を得る。
また、混合の際には、樹脂の乳化安定性の観点から、界面活性剤を添加することが好ましい。
アルカリ水溶液中のアルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等やアンモニア等が挙げられるが、樹脂の分散性向上の観点から、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。また、アルカリ水溶液中のアルカリの濃度は、1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましく、1.5〜10重量%が更に好ましい。
【0021】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、なかでもノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤を併用することがより好ましく、樹脂を十分に乳化させる観点から、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とを併用することが更に好ましい。
ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とを併用する場合、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との重量比(ノニオン性界面活性剤/アニオン性界面活性剤)は、樹脂を十分に乳化させる観点から、0.3〜10が好ましく、0.5〜5がより好ましい。
【0022】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられ、なかでも樹脂の乳化安定性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類が好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル類としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類としては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等が挙げられる。
【0023】
アニオン性界面活性剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等が挙げられ、樹脂の乳化安定性を向上させる観点から、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩が好ましい。
ドデシルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。ドデシル硫酸塩としては、ドデシル硫酸のアルカリ金属塩が好ましく、ドデシル硫酸ナトリウムがより好ましい。アルキルエーテル硫酸塩としては、アルキルエーテル硫酸のアルカリ金属塩が好ましく、アルキルエーテル硫酸ナトリウムがより好ましい。
界面活性剤の含有量は、樹脂粒子(A)を構成する樹脂100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、0.1〜10重量部が更に好ましく、0.5〜10重量部が更に好ましい。
【0024】
樹脂混合物を得る方法としては、結晶性ポリエステル(a)を含む樹脂、アルカリ水溶液、及び前記の任意成分、好ましくは界面活性剤を容器に入れ、撹拌器によって撹拌しながら、樹脂を溶融して均一に混合する方法が好ましい。
樹脂を溶融し混合する際の温度は、均質な樹脂粒子を得る観点から、より好ましくは結晶性ポリエステル(a)の融点以上がより好ましい。
【0025】
次に、前記の樹脂混合物に水性媒体を添加して、転相し、樹脂粒子(A)を含有する分散液を得る。
水性媒体としては水を主成分とするものが好ましく、環境性の観点から、水性媒体中の水の含有量は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上が更に好ましく、実質100重量%が更に好ましい。水としては、脱イオン水又は蒸留水が好ましく用いられる。
水以外の成分としては、炭素数1〜5の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のジアルキル(炭素数1〜3)ケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。これらの中でも、トナーへの混入を防止する観点から、ポリエステルを溶解しない炭素数1〜5の脂肪族アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールがより好ましい。
水性媒体を添加する際の温度は、均質な樹脂粒子を得る観点から、結晶性ポリエステル(a)の融点以上がより好ましい。
【0026】
水性媒体の添加速度は、樹脂粒子を小粒径とする観点から、転相が終了するまでは、樹脂粒子(A)を構成する樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部/分であること好ましく、0.1〜30重量部/分であることがより好ましく、0.5〜10重量部/分であることが更に好ましく、0.5〜5重量部/分であることが更に好ましい。転相後の水性媒体の添加速度には制限はない。
【0027】
水性媒体の使用量は、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、樹脂粒子(A)を構成する樹脂100重量部に対して100〜2000重量部が好ましく、150〜1500重量部がより好ましく、150〜500重量部が更に好ましい。得られる樹脂粒子分散液の安定性及び取扱い容易性等の観点から、その固形分濃度は、好ましくは7〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは20〜40重量%、更に好ましくは25〜35重量%である。なお、固形分は樹脂、界面活性剤等の不揮発性成分の総量である。
【0028】
トナーの耐熱保存性及び定着性を向上する観点から、樹脂粒子(A)に含まれるポリエステル樹脂を架橋することが好ましく、樹脂粒子(A)は、オキサゾリン基を有する化合物で架橋してなるものであることがより好ましい。
オキサゾリン基を有する化合物としては、分子内にオキサゾリン基を複数含有するものを使用することができるが、オキサゾリン基を含有するポリマーが好ましい。その重量平均分子量は、ポリエステル樹脂との反応性の観点から、好ましくは500〜2,000,000、より好ましくは1,000〜1,000,000である。
オキサゾリン基を含有するポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスWSシリーズ(水溶性タイプ、主鎖アクリル)、Kシリーズ(エマルションタイプ、主鎖スチレン/アクリル)等が挙げられる。
前記オキサゾリン基を有する化合物の含有量あるいは添加量は、樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、樹脂分散液中、樹脂100重量部に対して、固形分として好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.5〜20重量部、更に好ましくは1〜10重量部である。
オキサゾリン基を有する化合物を添加し、かつ所定温度で混合することにより、樹脂分散液に分散している樹脂粒子の一部が架橋される。この時の温度は、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜98℃である。オキサゾリン基を有する化合物による樹脂の架橋の存在は、架橋によって生成するアミド基により確認することができる。
【0029】
得られた樹脂粒子(A)を含有する分散液中の樹脂粒子(A)の体積中位粒径は0.02〜2μmであることが好ましい。高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、0.02〜1.5μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.05〜0.5μmが更に好ましい。ここで、体積中位粒径とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径である。
また、樹脂粒子の粒度分布の変動係数(CV値)(%)は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、40%以下であることが好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましく、28%以下が更に好ましい。なお、CV値は、下記式で表される値であり、具体的には実施例記載の方法で求められる。
CV値(%)=[粒度分布の標準偏差(μm)/体積平均粒径(μm)]×100
【0030】
[樹脂粒子(B)]
本発明において、樹脂粒子(B)は着色剤及び非晶質ポリエステル(b)からなる。樹脂粒子(B)には本発明の効果を損なわない範囲で他のポリエステル等を含んでもよいが、実質的に着色剤及び非晶質ポリエステル(b)のみからなることが好ましい。
樹脂粒子(B)中における着色剤及び非晶質ポリエステル(b)の合計含有量は、好ましくは99重量%以上であり、より好ましくは99.5重量%以上であり、更に好ましくは99.9重量%以上である。
【0031】
[非晶質ポリエステル(b)]
非晶質ポリエステル(b)は、非晶質のポリエステルである。
本発明における「非晶質」とは、前述の結晶性指数が、1.4を超える、あるいは0.6未満であることをいう。
非晶質ポリエステル(b)は、この結晶性指数が、トナーの画像濃度及び低温定着性の観点から、0.6未満又は1.4を超え4以下であることが好ましく、より好ましくは0.6未満又は1.5以上4以下、更に好ましくは0.6未満又は1.5以上3以下、更に好ましくは0.6未満又は1.5以上2以下である。結晶性指数は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。
【0032】
樹脂粒子(B)に含まれる非晶質ポリエステル(b)は、後述の非晶質ポリエステル(c)と同様のポリエステルを好ましく用いることができる。非晶質ポリエステル(c)と同一モノマーからなる樹脂を用いてもよく、異なるモノマーからなる樹脂を用いてもよいが、同一モノマーからなる樹脂を用いることが凝集制御及びトナーの低温定着性の観点から好ましい。
【0033】
非晶質ポリエステル(b)は、前記の結晶性ポリエステル(a)と同様の方法で、酸成分とアルコール成分とを重縮合反応させることによって製造することができる。好ましい酸成分及びアルコール成分の具体例は、後述する非晶質ポリエステル(c)の場合と同様である。
【0034】
非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点、軟化点、数平均分子量及び酸価は、非晶質ポリエステル(c)と同じ範囲が好ましい。
なかでも、非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点は、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させる観点から、50〜70℃が好ましく、55〜68℃がより好ましく、58〜66℃が更に好ましい。また、非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点は、結晶性ポリエステル(a)の結晶性を維持したまま、融着させることにより、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させる観点から、結晶性ポリエステル(a)の融点より低い温度であることがより好ましい。
【0035】
非晶質ポリエステル(b)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよく、トナーの低温定着性、耐オフセット性及び耐久性の観点から、軟化点が異なる2種類のポリエステルを含有することが好ましい。軟化点が異なる2種類のポリエステルをそれぞれポリエステル(b−1)及び(b−2)とした場合、一方のポリエステル(b−1)の軟化点は70℃以上115℃未満が好ましく、他方のポリエステル(b−2)の軟化点は115℃以上165℃以下が好ましい。ポリエステル(b−1)とポリエステル(b−2)との重量比((b−1)/(b−2))は、10/90〜90/10が好ましく、50/50〜90/10がより好ましい。
【0036】
(着色剤)
樹脂粒子(B)は、トナーの粒度分布をシャープにし、画像濃度を向上させる観点から、着色剤を含有する着色剤含有樹脂粒子であることが必要である。
樹脂粒子(B)中の着色剤の含有量は、得られる印刷物の画像濃度の観点から、樹脂粒子(B)を構成する樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましく、5〜10重量部が更に好ましい。
なお、着色剤は、樹脂粒子(B)以外に含有していてもよいが、耐熱保存性、帯電性及び画像濃度の観点から、実質的に樹脂粒子(B)のみに含有することが好ましい。その理由は次のとおりと考えられる。着色剤を含有する樹脂粒子(B)は、トナー粒子のコア側(内部側)に存在することに結果、トナー粒子の表面に耐熱保存性及び帯電性に優れる非晶質ポリエステル(c)が良好に存在することになり、トナーの耐熱保存性や帯電性が向上する。更に、樹脂粒子(B)は非晶質ポリエステル(b)を含有するため、着色剤がこの非晶質ポリエステル(b)と良好に分散し、得られる印刷物の画像濃度が向上する。
【0037】
本発明に用いられる着色剤としては、顔料及び染料が挙げられ、得られる印刷物の画像濃度を向上させる観点から、顔料が好ましい。
顔料としては、シアン顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、黒色顔料が挙げられる。
シアン顔料は、フタロシアニン顔料が好ましく、銅フタロシアニンがより好ましい。イエロー顔料は、モノアゾ顔料、イソインドリン顔料、ベンズイミダゾロン顔料が好ましく、マゼンタ顔料は、キナクリドン顔料、BONAレーキ顔料等の溶性アゾ顔料、ナフトールAS顔料等の不溶性アゾ顔料が好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックが好ましい。
染料の例としては、アクリジン染料、アゾ染料、ベンゾキノン染料、アジン染料、アントラキノン染料、インジコ染料、フタロシアニン染料、アニリンブラック染料等が挙げられる。
着色剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
(樹脂粒子(B)の製造)
樹脂粒子(B)は、前述の樹脂粒子(A)の製造方法と同様の方法によって得ることができる。用いられるアルカリ水溶液、界面活性剤、水性媒体も同様のものを好適に用いることができるが、以下に特に好ましい態様を具体的に示す。
分散液を得る方法としては、得られるトナーの低温定着性の観点から、以下のように、転相乳化による方法が好ましい。
まず、非晶質ポリエステル(b)、アルカリ水溶液、及び着色剤を溶融して混合し、樹脂混合物を得る。
また、混合の際には、樹脂の乳化安定性の観点から、界面活性剤を添加することが好ましい。
具体的には、結晶性ポリエステル(b)、アルカリ水溶液、及び着色剤、好ましくは界面活性剤を容器に入れ、撹拌器によって撹拌しながら、樹脂を溶融して均一に混合する方法が好ましい。
樹脂を溶融し混合する際の温度は、非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点以上が好ましい。
【0039】
アルカリ水溶液中のアルカリとしては、樹脂の分散性向上の観点から、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。また、アルカリ水溶液中のアルカリの濃度は、1〜30重量%が好ましく、1〜25重量%がより好ましく、1.5〜20重量%が更に好ましい。
界面活性剤の種類については、前述の「樹脂微粒子(A)の製造」において説明したとおりである。
界面活性剤の含有量は、樹脂粒子(B)を構成する樹脂100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、0.1〜10重量部が更に好ましく、0.5〜10重量部が更に好ましい。
【0040】
次に、前記の樹脂混合物に水性媒体を添加して、転相し、樹脂粒子(B)を含有する分散液を得る。
水性媒体の種類及び含有量については、前述の「樹脂微粒子(A)の製造」において説明したとおりである。
水性媒体を添加する際の温度は、均質な樹脂粒子を得る観点から、非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点以上が好ましい。
水性媒体の添加速度は、樹脂粒子を小粒径とする観点から、転相が終了するまでは、樹脂粒子(B)を構成する樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部/分であること好ましく、0.1〜30重量部/分であることがより好ましく、0.5〜10重量部/分であることが更に好ましく、0.5〜5重量部/分であることが更に好ましい。
水性媒体の使用量は、後の凝集工程で均一な凝集粒子を得る観点から、樹脂粒子(B)を構成する樹脂100重量部に対して100〜2000重量部が好ましく、150〜1500重量部がより好ましく、150〜500重量部が更に好ましい。得られる樹脂粒子分散液の安定性及び取扱い容易性等の観点から、その固形分濃度は、好ましくは7〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは20〜40重量%、更に好ましくは25〜35重量%である。
【0041】
得られた樹脂粒子(B)を含有する分散液中の樹脂粒子(B)の体積中位粒径は0.02〜2μmであることが好ましい。高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、0.02〜1.5μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.05〜0.5μmが更に好ましい。
また、樹脂粒子の粒度分布の変動係数(CV値)(%)は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、40%以下であることが好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましく、28%以下が更に好ましい。
【0042】
[離型剤粒子]
本発明に用いられる離型剤粒子は、凝集性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を使用する場合の含有量は、凝集性および得られるトナーの帯電性の観点から、離型剤100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
離型剤粒子の体積中位粒径は、得られるトナーの帯電性および耐高温オフセットの観点から0.1〜1μmが好ましく、0.1〜0.7μmがより好ましく、0.1〜0.5μmが更に好ましい。
離型剤粒子のCV値は、得られるトナーの帯電性の観点から、15〜50%が好ましく、15〜40%がより好ましく、15〜35%が更に好ましい。
【0043】
離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等が挙げられる。
離型剤の融点は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、60〜100℃が好ましく、60〜90℃がより好ましく、70℃〜90℃がさらに好ましく、73〜85℃がより更に好ましい。これらの、離型剤は、単独で又は2種以上を併用することができ、2種以上の、融点が60〜90℃である離型剤を用いることが、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましい。
本発明において、離型剤の融点は、実施例記載の方法によって求められる。
離型剤の使用量は、トナーの離型性を向上して低温定着性を向上させる観点から、トナー中の樹脂100重量部に対して、通常1〜20重量部が好ましく、2〜15重量部がより好ましい。
離型剤粒子は、離型剤を水系媒体に分散して離型剤粒子の分散液として得ることが好ましい。
離型剤粒子の分散液は、離型剤と水系媒体とを、界面活性剤の存在下、離型剤の融点以上の温度で、分散機を用いて分散することによって得ることが好ましい。用いる分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機等が好ましい。
本製造で用いる水系媒体は樹脂混合物を得る際に用いられるものが好ましく用いられ、界面活性剤はアニオン性界面活性剤が好ましく、親水基がカルボキシ基であるものがより好ましく、ポリカルボン酸塩が好ましく用いられる。
【0044】
[樹脂粒子(C)]
本発明において、樹脂粒子(C)は、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させる観点から、非晶質ポリエステル(c)を含有することが必要である。
樹脂粒子(C)のガラス転移点は、樹脂粒子(C)を構成する非晶質ポリエステル(c)等の樹脂のガラス転移点、添加剤等の種類や量によって適宜決定されるが、トナーの耐久性、低温定着性、帯電性、飛散性及び耐熱保存性の観点から、45℃以上であることが好ましく、45〜70℃がより好ましく、50〜70℃が更に好ましく、55〜65℃が更に好ましい。
【0045】
樹脂粒子(C)は、トナーの耐熱保存性、飛散性及び帯電性の観点から、非晶質ポリエステル(c)を70重量%以上含有することが好ましく、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、更に好ましくは実質100重量%含有する。
【0046】
(非晶質ポリエステル(c))
本発明において、非晶質ポリエステル(b)とは、前述の結晶性指数が、1.4を超える、あるいは0.6未満のポリエステルである。
非晶質ポリエステル(c)は、この結晶性指数が、トナーの低温定着性の観点から、0.6未満又は1.4を超え4以下であることが好ましく、より好ましくは0.6未満又は1.5以上4以下、更に好ましくは0.6未満又は1.5以上3以下、更に好ましくは0.6未満又は1.5以上2以下である。結晶性指数は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。
非晶質ポリエステル(c)としては、分子末端に酸基を有する非晶質ポリエステル(b)が好ましい。該酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルの乳化をしやすくする観点から、カルボキシル基が好ましい。
【0047】
非晶質ポリエステル(c)は、前記の結晶性ポリエステル(a)と同様の方法で、酸成分とアルコール成分とを、重縮合反応させることによって製造することができる。
【0048】
酸成分としては、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、なかでもジカルボン酸が好ましい。
ジカルボン酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられ、なかでもフマル酸、ドデセニルコハク酸及びテレフタル酸が好ましく、ドデセニルコハク酸及びテレフタル酸がより好ましい。
3価以上の多価カルボン酸の具体例としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられ、なかでも耐オフセット性の観点から、トリメリット酸及びその酸無水物が好ましい。
酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
非晶質ポリエステル(c)は、トナーの耐高温オフセット性の観点から、3価以上の多価カルボン酸並びにその酸無水物又はそのアルキルエステル、好ましくはトリメリット酸又はその無水物を含有する酸成分を用いて得られた非晶質ポリエステル(c)を少なくとも1種使用することが好ましい。
【0049】
アルコール成分としては、結晶性ポリエステル(a)に用いた前記アルコール成分と同様のものが挙げられる。これらの中でも、非晶質のポリエステルを得る観点から、芳香族ジオールを用いることが好ましく、ポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)を用いることがより好ましい。
アルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
非晶質ポリエステル(c)のガラス転移点は、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させる観点から、50〜70℃が好ましく、55〜68℃がより好ましく、58〜66℃が更に好ましい。
非晶質ポリエステル(c)の軟化点は、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させる観点から、70〜165℃が好ましく、70〜140℃がより好ましく、90〜140℃が更に好ましく、100〜130℃が特に好ましい。
なお、非晶質ポリエステル(c)を2種以上混合して使用する場合は、そのガラス転移点及び軟化点は、各々2種以上の非晶質ポリエステル(c)の混合物として、実施例記載の方法によって得られた値である。
【0051】
非晶質ポリエステル(c)の酸価は、樹脂の水性媒体中における乳化性の観点から、6〜35mgKOH/gが好ましく、10〜35mgKOH/gがより好ましく、15〜35mgKOH/gが更に好ましい。
【0052】
非晶質ポリエステル(c)は、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させる観点から、軟化点が異なる2種類のポリエステルを含有することが好ましい。軟化点が異なる2種類のポリエステルをそれぞれポリエステル(c−1)及び(c−2)とした場合、一方のポリエステル(c−1)の軟化点は70℃以上115℃未満が好ましく、他方のポリエステル(c−2)の軟化点は115℃以上165℃以下が好ましい。ポリエステル(c−1)とポリエステル(c−2)との重量比((c−1)/(c−2))は、10/90〜90/10が好ましく、50/50〜90/10がより好ましい。
【0053】
(樹脂粒子(C)の製造)
樹脂粒子(C)は、前述の樹脂粒子(A)の製造方法と同様の方法によって得ることができる。用いられるアルカリ水溶液、界面活性剤、水性媒体も同様のものを好適に用いることができるが、以下に特に好ましい態様を具体的に示す。
分散液を得る方法としては、得られるトナーの低温定着性の観点から、以下のように、転相乳化による方法が好ましい。
まず、非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂、アルカリ水溶液、及び着色剤等の任意成分を溶融して混合し、樹脂混合物を得る。
ここで任意成分としては、着色剤、帯電制御剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等が挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で用いてもよい。なかでもトナーの画像濃度を向上させる観点から、着色剤を用いることが好ましい。
また、混合の際には、樹脂の乳化安定性の観点から、界面活性剤を添加することが好ましい。
具体的には、結晶性ポリエステル(c)、アルカリ水溶液、及び着色剤等の任意成分、好ましくは界面活性剤を容器に入れ、撹拌器によって撹拌しながら、樹脂を溶融して均一に混合する方法が好ましい。
樹脂を溶融し混合する際の温度は、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移点以上が好ましい。
【0054】
アルカリ水溶液中のアルカリとしては、樹脂の分散性向上の観点から、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。また、アルカリ水溶液中のアルカリの濃度は、1〜30重量%が好ましく、1〜25重量%がより好ましく、1.5〜20重量%が更に好ましい。
界面活性剤の種類及び含有量については、前述の「樹脂微粒子(A)の製造」において説明したとおりである。
【0055】
次に、前記の樹脂混合物に水性媒体を添加して、転相し、樹脂粒子(C)を含有する分散液を得る。
水性媒体の種類及び含有量については、前述の「樹脂微粒子(A)の製造」において説明したとおりである。
水性媒体を添加する際の温度は、均質な樹脂粒子を得る観点から、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移点以上が好ましい。
水性媒体の添加速度、使用量、及び固形濃度については、前述の「樹脂微粒子(A)の製造」において説明したとおりである。
【0056】
得られた樹脂粒子(C)を含有する分散液中の樹脂粒子(C)の体積中位粒径は0.02〜2μmであることが好ましい。高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、0.02〜1.5μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.05〜0.5μmが更に好ましい。
また、樹脂粒子の粒度分布の変動係数(CV値)(%)は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、40%以下であることが好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましく、28%以下が更に好ましい。
【0057】
[電子写真用トナーの製造方法]
本発明の電子写真用トナーの製造方法は、下記工程(1)〜(3)を含有するものである。以下、各工程について説明する。
【0058】
[工程(1)]
工程(1)は、結晶性ポリエステル(a)からなる樹脂粒子(A)、着色剤及び非晶質ポリエステル(b)からなる樹脂粒子(B)、及び離型剤を含有する離型剤粒子を凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程である。
【0059】
本工程においては、まず、樹脂粒子(A)、樹脂粒子(B)及び離型剤粒子を水性媒体中で混合して、混合分散液を得る。
混合の順に制限はなく、いずれかを順に添加してもよいし、同時に添加してもよい。
混合分散液中、樹脂粒子(A)は、1〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。樹脂粒子(B)は、5〜30重量部が好ましく、10〜20重量部がより好ましい。水性媒体は60〜90重量部が好ましく、70〜80重量部となるように混合することがより好ましい。離型剤粒子は、トナーの離型性及び低温定着性の観点から、樹脂と着色剤との合計100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
混合温度は、凝集制御の観点から、0〜40℃が好ましい。
【0060】
次に、混合分散液中の粒子を凝集させて、凝集粒子(1)の分散液を得る。凝集を効率的に行うために凝集剤を添加することが好ましい。
凝集剤としては、第四級塩のカチオン性界面活性剤;無機金属塩、無機アンモニウム塩、2価以上の金属錯体等の無機系凝集剤が好適に用いられる。
無機金属塩としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等の無機金属塩重合体が挙げられる。無機アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられ、硫酸アンモニウムがより好ましい。
凝集剤の使用量は、トナーの帯電性の観点から、樹脂粒子(A)及び(B)を構成する樹脂100重量部に対して、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下、更に好ましくは30重量部以下である。また、樹脂粒子の凝集性の観点から、樹脂粒子(A)及び(B)を構成する樹脂100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上、更に好ましくは5重量部以上である。以上の点を考慮して、1価の塩の使用量は、樹脂粒子(A)及び(B)を構成する樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは3〜40重量部、更に好ましくは5〜30重量部である。
【0061】
凝集の方法としては、混合分散液の入った容器に、凝集剤を好ましくは水溶液として滴下する。凝集剤は一時に添加してもよいし、断続的あるいは連続的に添加してもよいが、添加時及び添加終了後には、十分な撹拌を行うことが好ましい。凝集制御およびトナー製造時間短縮の観点から、凝集剤の滴下時間は1〜120分が好ましい。また、滴下温度は凝集制御の観点から0〜50℃が好ましい。
【0062】
得られた凝集粒子(1)の体積中位粒径は、小粒径化及び高画質化、粒子としての取り扱いの観点から、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜9μm、更に好ましくは3〜6μmである。また、CV値は、好ましくは30%以下、より好ましくは28%以下、更に好ましくは25%以下である。
【0063】
[工程(2)]
工程(2)は、工程(1)で得られた凝集粒子(1)に、非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂粒子(C)を添加して、凝集粒子(2)を得る工程である。
本工程においては、工程(1)で得られた凝集粒子(1)の分散液に、非晶質ポリエステル(c)を含有する樹脂粒子(C)の分散液を添加して、凝集粒子(1)に更に樹脂粒子(C)を付着させ、凝集粒子(2)を得ることが好ましい。
【0064】
凝集粒子(1)を含有する分散液(凝集粒子(1)分散液)に樹脂粒子(C)を含有する分散液(樹脂粒子(C)分散液)を添加する前に、凝集粒子(1)分散液に水性媒体を添加して希釈してもよく、水性媒体を添加することが好ましい。水性媒体を添加することで、凝集粒子(1)に樹脂粒子(C)をより均一に付着させることができる。
凝集粒子(1)分散液に樹脂粒子(C)分散液を添加するときには、凝集粒子(1)に樹脂粒子(C)を効率的に付着させるために、前記凝集剤を用いてもよい。
凝集粒子(1)分散液に樹脂粒子(C)分散液を添加する場合の好ましい添加方法としては、凝集剤と樹脂粒子(C)分散液とを同時に添加する方法、凝集剤と樹脂粒子(C)分散液とを交互に添加する方法、凝集粒子(1)分散液の温度を徐々に上げながら、樹脂粒子(C)分散液を添加する方法が挙げられる。このようにすることで、凝集剤濃度低下による凝集粒子(1)及び樹脂粒子(C)の凝集性の低下を防ぐことができる。トナーの生産性及び製造簡便性の観点から、凝集粒子(1)分散液の温度を徐々に上げながら、樹脂粒子(C)分散液を添加することが好ましい。
【0065】
本工程における系内の温度は、トナーの低温定着性、耐熱保存性の観点から、樹脂粒子(A)に含まれる結晶性ポリエステル(a)の融点より5℃以上低く、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移点より3℃以上低いことが好ましく、5℃以上低いことがより好ましい。当該温度範囲で凝集粒子(2)の製造を行うと、得られるトナーの低温定着性や耐熱保存性が良好になる。その理由は定かではないが、凝集粒子(2)同士の融着が生じないために、粗大粒子の発生が抑制されることと、結晶性ポリエステル(a)の結晶性が維持できるためであると考えられる。
【0066】
樹脂粒子(C)の添加量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、樹脂粒子(C)と樹脂粒子(A)及び(B)の合計量との重量比(樹脂粒子(C)/(樹脂粒子(A)+(B)))が、好ましくは0.3〜1.5、より好ましくは0.3〜1.0、更に好ましくは0.35〜0.75となる量が好ましい。
【0067】
樹脂粒子(C)分散液は、一定の時間をかけて連続的に添加してもよく、一時に添加してもよく、複数回に分割して添加してもよいが、一定の時間をかけて連続的に添加するか、複数回に分割して添加することが好ましい。前記のように添加することで、樹脂粒子(C)が凝集粒子(1)に選択的に付着しやすくなる。なかでも選択的な付着を促進する観点及び製造の効率化の観点から一定の時間を掛けて連続的に添加することが好ましい。連続的に添加する場合の時間は、均一な凝集粒子(2)を得る観点および製造時間短縮の観点から、1〜10時間が好ましく、3〜8時間がより好ましい。
【0068】
工程(2)で得られる凝集粒子(2)の体積中位粒径は、高画質な画像が得られるトナーを得る観点から、1〜10μmであることが好ましく、2〜10μmがより好ましく、3〜9μmが更に好ましく、4〜6μmが更に好ましい。
【0069】
[工程(3)]
工程(3)は、凝集粒子(2)を、非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点より10℃低い温度以上の温度であって、非晶質ポリエステル(c)のガラス転移点より10℃低い温度以上の温度であって、結晶性ポリエステル(a)の融点未満の温度に保持して、融着したコアシェル粒子を得る工程である。
本工程においては、凝集粒子(2)中の、主として物理的にお互いに付着している状態であった各粒子が融着されて一体となり、コアシェル粒子が形成される。
【0070】
融着性及びトナー生産性の観点から、本工程においては、非晶質ポリエステル(b)及び(c)のガラス転移点より10℃低い温度以上で保持することが必要である。非晶質ポリエステル(b)及び(c)のガラス転移点より、8℃低い温度以上の温度、好ましくは6℃低い温度以上の温度、より好ましくは5℃低い温度以上の温度で保持することがより好ましく、耐熱保存性を良好にする観点から、本工程においては、非晶質ポリエステル(b)のガラス転移点より10℃高い温度以下の温度、好ましくは8℃高い温度以下の温度、より好ましくは6℃高い温度以下の温度で保持することがより好ましい。
また、トナーの耐熱保存性の観点から、本工程においては、結晶性ポリエステル(a)の融点未満で保持することが必要である。好ましくは3℃低い温度以下、より好ましくは5℃低い温度以下で保持することがより好ましい。
また、トナーの低温定着性の観点から、本工程においては、離型剤の融点より5℃以上低い温度、好ましくは7℃低い温度以下、より好ましくは10℃低い温度以下で保持することがより好ましい。
本工程においては、粒子融着性の観点から、好ましくは55〜70℃、より好ましくは57〜65℃、更に好ましくは58〜64℃で保持する。
【0071】
本工程における保持時間は、粒子融着性、耐熱保存性及びトナー生産性の観点から、好ましくは1〜24時間、より好ましくは1〜18時間、更に好ましくは2〜12時間、更に好ましくは2〜5時間である。
【0072】
本工程においては、生成するコアシェル粒子の円形度をモニタリングすることによって、融着の進行を確認することが好ましい。円形度が0.955以上になったところで冷却し、融着を停止する。最終的に得られるコアシェル粒子の円形度は、得られるトナーのクリーニング性の観点から0.955〜0.995であり、0.958〜0.985が好ましく、0.960〜0.985がより好ましく、0.965〜0.980が更により好ましい。
なお、円形度のモニタリングは次に記載の方法によって好適に行うことができる。
・分散液の調製:コアシェル粒子の分散液は、コアシェル粒子の固形分濃度が0.001〜0.05%になるように脱イオン水で希釈して調製する。またトナーの分散液は、5重量%ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エマルゲン109P)水溶液5mlにトナー50mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させたのち、蒸留水20mlを添加し、さらに超音波分散機にて1分間分散させて調製する。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置(シスメックス(株)製、商品名:FPIA−3000)
・測定モード:HPF測定モード
【0073】
トナーの高画質化の観点から、本工程で得られるコアシェル粒子の体積中位粒径は、好ましくは2〜10μm、より好ましくは2〜8μm、より好ましくは2〜7μm、更に好ましくは3〜8μm、更に好ましくは4〜6μmである。
なお、本工程で得られる融着したコアシェル粒子の体積中位粒径は、凝集粒子(2)の体積中位粒径以下であることが好ましい。すなわち、本工程において、コアシェル粒子同士の凝集、融着が生じないことが好ましい。
【0074】
[後処理工程]
本発明においては、工程(3)の後に後処理工程を行ってもよく、コアシェル粒子を単離することによってトナー粒子を得ることが好ましい。
工程(3)で得られたコアシェル粒子は、水性媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、吸引濾過法等が好ましく用いられる。
固液分離後に洗浄を行うことが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
次に乾燥を行うことが好ましいが、乾燥時の温度は、コアシェル粒子自体の温度が結晶性ポリエステルの融点より5℃以上低くなるように設定することが好ましく、10℃以上低くなるように設定することがより好ましい。乾燥方法としては、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等を用いることが好ましい。乾燥後の水分含量は、トナーの飛散量の低減及び帯電性の観点から、好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下に調整される。
【0075】
[静電荷像現像用トナー]
(トナー)
乾燥等を行うことによって得られたトナー粒子を本発明の静電荷像現像用トナーとしてそのまま用いることもできるが、後述のようにトナー粒子の表面を処理したものを静電荷像現像用トナーとして用いることが好ましい。
得られたトナーの軟化点は、トナーの低温定着性の観点から、好ましくは60〜140℃、より好ましくは60〜130℃、更に好ましくは60〜120℃である。また、ガラス転移点は、低温定着性、耐久性及び保存安定性の観点から、好ましくは30〜80℃、より好ましくは40〜70℃である。
本発明の方法により得られたトナーはコアシェル構造であり、シェル部分に、非晶質ポリエステル(c)を、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%、更に好ましくは90〜100重量%含有する。
トナーの体積中位粒径は、トナーの高画質化と生産性の観点から、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜8μm、更に好ましくは3〜7μm、更に好ましくは4〜6μmである。
トナーのCV値は、高画質化と生産性の観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは27%以下、更に好ましくは25%以下、更に好ましくは22%以下である。
【0076】
(外添剤)
本発明の静電荷像現像用トナーは、前記トナー粒子をトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
外添剤としては、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子等の無機微粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、任意の微粒子が挙げられ、これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、外添剤による処理前のトナー粒子100重量部に対して、好ましくは1〜6重量部、より好ましくは2〜5重量部である。
【0077】
本発明により得られる静電荷像現像用トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例】
【0078】
ポリエステル、樹脂粒子、トナー等の各性状値については次の方法により測定、評価した。
【0079】
[ポリエステルの酸価]
JIS K0070に従って測定した。但し、測定溶媒をアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))とした。
【0080】
[ポリエステルの軟化点、吸熱の最大ピーク温度、融点及びガラス転移点]
(1)軟化点
フローテスター((株)島津製作所製、商品名:CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)吸熱の最大ピーク温度、融点及びガラス転移点
示差走査熱量計(PerkinElmer社製、商品名:Pyris 6 DSC)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度50℃/分で0℃まで冷却した試料を昇温速度10℃/分で測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とした。結晶性ポリエステルの場合には該ピーク温度を融点とした。また、非晶質ポリエステルの場合には吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線と、該ピークの立ち上がり部分からピークの頂点まで最大傾斜を示す接線との交点温度をガラス転移点とした。
【0081】
[樹脂粒子及び離型剤粒子の体積中位粒径(D50)、体積平均粒径(Dv)及び粒度分布]
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機((株)堀場製作所製、商品名:LA−920)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)を測定した。また、粒度分布としてCV値は前記粒径測定機で表示される体積平均粒径と標準偏差から下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
【0082】
[樹脂粒子分散液、離型剤粒子分散液の固形分濃度]
赤外線水分計((株)ケツト科学研究所製、商品名:FD−230)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)にて、水分%を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(重量%)=100−M
M:水分(%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
【0083】
[トナーの体積中位粒径(D50)]
トナーの体積中位粒径は以下の通り測定した。
・測定機:コールターマルチサイザーIII(商品名、ベックマンコールター社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:マルチサイザーIIIバージョン3.51(商品名、ベックマンコールター社製)
・電解液:アイソトンII(商品名、ベックマンコールター社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製、商品名:エマルゲン109P、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5重量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLにトナー測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、体積中位粒径(D50)を求めた。
【0084】
[トナーの耐熱保存性評価]
内容積100mlの広口ポリビンにトナー20gを入れて密封し、温度50℃環境下で12時間静置した。その後、25℃の温度下で密封したまま12時間以上静置して冷却し、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社(株))製、商品名)の振動台に、目開き250μmのフルイをセットし、その上に前記トナー20gを乗せ30秒間振動を行い、フルイ上に残ったトナー重量を測定した。数値が小さいほど、トナーがブロッキングしておらず耐熱保存性に優れることを表す。
【0085】
[トナーの低温定着性(最低定着温度)評価]
上質紙(富士ゼロックス(株)製、J紙A4サイズ)に市販のプリンタ((株)沖データ製、商品名:MicroLine5400)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.42〜0.48mg/cm2となるベタ画像をA4紙の上端から5mmの余白部分を残し、50mmの長さで定着させずに出力した。
次に、定着器を温度可変に改造した同プリンタを用意し、定着器の温度を90℃にし、A4縦方向に1枚あたり1.5秒の速度で定着し、印刷物を得た。
同様の方法で定着器の温度を5℃ずつ上げて、定着し、印刷物を得た。
印刷物の余白部分から画像部分にかけて、メンディングテープ(3M社製、商品名:Scotchメンディングテープ810、幅18mm)を軽く貼り付けた後、500gのおもりを載せ、速さ10mm/秒で1往復押し当てた。その後、貼付したテープを下端側から剥離角度180度、速さ10mm/秒で1往復押し当てた。その後、貼付したテープを下端側から剥離角度180度、速さ10mm/秒で剥がし、テープ剥離後の印刷物を得た。テープ貼付前及び剥離後の印刷物の下に上質紙((株)沖データ製、エクセレントホワイト紙A4サイズ)を30枚敷き、各印刷物のテープ貼付前及び剥離後の定着画像部分の反射画像濃度を、測色計(GretagMacbeth社製、商品名:SpectroEye、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定し、これから下記の式で定着率を算出した。
定着率=(テープ剥離後の反射画像濃度/テープ貼付前の反射画像濃度)×100
定着率が90%以上となる温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。
【0086】
[画像濃度]
上質紙(富士ゼロックス(株)製、J紙A4サイズ)に市販のプリンタ((株)沖データ製、商品名:MicroLine5400)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.42〜0.48mg/cm2となるベタ画像を出力し、印刷物を得た。
印刷物の下に上質紙(沖データ社製、エクセレントホワイト紙A4サイズ)を30枚敷き、出力した印刷物のベタ画像部分の反射画像濃度を、測色計(商品名:SpectroEye,Gretag−Macbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて、画像上の任意の3点を測定した値を平均し画像濃度とした。反射画像濃度の値が大きいほど、画像濃度に優れる。
【0087】
[ポリエステルの製造]
製造例1
(結晶性ポリエステルX1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,10−デカンジオール4350g、セバシン酸5310gを入れた。撹拌しながら、140℃に昇温し、140℃で3時間維持した後、140℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫48gを加え、更に200℃にて1時間維持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間維持し、結晶性ポリエステルX1を得た。得られたポリエステルの物性を表1に示す。
【0088】
製造例2
(結晶性ポリエステルX2の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,9−ノナンジオール4008g、フマル酸2900g、tert−ブチルカテコール10g、を入れた。撹拌しながら、140℃に昇温し、140℃で3時間維持した後、140℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫20gを加え、更に200℃にて1時間維持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間維持し、結晶性ポリエステルX2を得た。得られたポリエステルの物性を表1に示す。
【0089】
製造例3
(結晶性ポリエステルX3の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,12−ドデカンジオール1971g、セバシン酸2029g、を入れた。撹拌しながら、140℃に昇温し、140℃で3時間維持した後、140℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫12gを加え、更に200℃にて1時間維持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間維持し、結晶性ポリエステルX3を得た。得られたポリエステルの物性を表1に示す。
【0090】
製造例4
(非晶質ポリエステルY1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3374g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン33g、テレフタル酸672g、及び酸化ジブチル錫10gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、5時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間維持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸696g、tert−ブチルカテコール0.49gを加え、210℃の温度下で5時間維持した後に、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて4時間維持させて、非晶質ポリエステルY1を得た。得られたポリエステルの物性を表1に示す。
【0091】
製造例5
(非晶質ポリエステルY2の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3528g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1404g、テレフタル酸1248g、ドデセニルコハク酸無水物1541g、及び酸化ジブチル錫20gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、230℃で6時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間維持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物300gを入れ、215℃で1時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて3時間維持させて、非晶質ポリエステルY2を得た。得られたポリエステルの物性を表1に示す。
【0092】
製造例6
(非晶質ポリエステルY3の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1750g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1625g、テレフタル酸1145g、ドデセニルコハク酸無水物161g、トリメリット酸無水物480g、及び酸化ジブチル錫10gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、220℃に昇温し、220℃で5時間維持した後、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が120℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、非晶質ポリエステルY3を得た。得られたポリエステルの物性を表1に示す。
【0093】
製造例7
(非晶質ポリエステルY4の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3004g、フマル酸996g、tert−ブチルカテコール2g、及び酸化ジブチル錫8gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、5時間かけて210℃まで昇温し、210℃で2時間維持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3KPaにて1時間維持した後、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が100℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、非晶質ポリエステルY4を得た。得られたポリエステルの物性を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
[樹脂粒子の製造]
製造例8
(樹脂粒子分散液1の製造)
撹拌機を装備した2リットル容のステンレスフラスコに、結晶性ポリエステルX1 600g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム15重量%水溶液(花王(株)製、商品名:ネオペレックスG−15、アニオン性界面活性剤)120.0g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製、商品名:エマルゲン150、非イオン性界面活性剤)25.6g、及び5重量%水酸化カリウム水溶液276.0gを入れ、撹拌しながら、85℃に昇温して溶融し、85℃で2時間混合した。次に、系の温度を85℃に保持し、撹拌しながら、1137.8gの脱イオン水を6g/分の速度で滴下し、乳化物を得た。得られた乳化物を冷却し、25℃で撹拌しながら、オキサゾリン基含有ポリマー水溶液((株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS−700、不揮発分25重量%、アクリル主鎖)28gを添加し、その後95℃に温度を上げ95℃で1時間保持した。次に、25℃に冷却し、得られた乳化物を200メッシュ(目開き105μm)の金網を通して、樹脂粒子分散液1を得た。
樹脂粒子分散液1の固形分濃度は31%であり、樹脂粒子分散液1中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は153nm、CV値は27%であった。
【0096】
製造例9
(樹脂粒子分散液2の製造)
製造例8において、結晶性ポリエステルX1を結晶性ポリエステルX2に変更した以外は同様にして樹脂粒子分散液2を得た。
樹脂粒子分散液2の固形分濃度は31%であり、樹脂粒子分散液2中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は319nm、CV値は27%であった。
【0097】
製造例10
(樹脂粒子分散液3の製造)
製造例8において、結晶性ポリエステルX1を結晶性ポリエステルX3に変更した以外は同様にして樹脂粒子分散液3を得た。
樹脂粒子分散液3の固形分濃度は31%であり、樹脂粒子分散液3中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は214nm、CV値は32%であった。
【0098】
製造例11
(樹脂粒子分散液4の製造)
製造例8において、結晶性ポリエステルX1を結晶性ポリエステルX2に変更し、オキサゾリン基含有ポリマー水溶液の添加と95℃での温度保持を行わなかった以外は同様にして樹脂粒子分散液4を得た。
樹脂粒子分散液4の固形分濃度は31%であり、樹脂粒子分散液4中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は160nm、CV値は28%であった。
【0099】
製造例12
(樹脂粒子分散液5の製造)
製造例8において、結晶性ポリエステルX1 600gに加えて銅フタロシアニン顔料(大日精化工業(株)製、商品名:ECB301)45gを添加した以外は同様にして樹脂粒子分散液5を得た。
樹脂粒子分散液5の固形分濃度は31%であり、樹脂粒子分散液5中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は185nm、CV値は28%であった。
【0100】
製造例13
(樹脂粒子分散液6の製造)
撹拌機を装備したフラスコに、非晶質ポリエステルY2 210g、非晶質ポリエステルY1 300g、結晶性ポリエステルX1 90g、銅フタロシアニン顔料(商品名:ECB301、大日精化工業(株)製)45g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤、商品名:エマルゲン150、花王(株)製)8.5g、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(アニオン性界面活性剤、商品名:ネオペレックスG−15、花王(株)製)80.0g、5重量%水酸化カリウム水溶液278.5gを入れ、撹拌しながら、95℃に昇温して溶融し、95℃で2時間混合して、樹脂混合物を得た。
次に、系の温度を95℃に保持し、撹拌しながら、脱イオン水1222gを6g/分の速度で滴下し、乳化物を得た。次に、得られた乳化物を25℃に冷却し、25℃で撹拌しながら、オキサゾリン基含有ポリマー水溶液((株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS−700、不揮発分25重量%、アクリル主鎖)28gを添加し、その後95℃に温度を上げ95℃で1時間保持した。次に、25℃に冷却し、得られた乳化物を200メッシュ(目開き105μm)の金網を通して、樹脂粒子分散液6を得た。固形分濃度は32%であり、樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は320nm、CV値は25%であった。
【0101】
製造例14
(樹脂粒子分散液7の製造)
内容積5リットルのフラスコに、非晶質ポリエステルY2 210g、非晶質ポリエステルY1 390g、銅フタロシアニン顔料(大日精化工業(株)製、商品名:ECB301)53g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤、商品名:エマルゲン430、花王(株)製)6g、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(アニオン性界面活性剤、花王(株)製、商品名:ネオペレックスG−15)40g及び5重量%水酸化カリウム268gを入れ、撹拌しながら、95℃に昇温して溶融し、95℃で2時間混合して、樹脂混合物を得た。
次に、撹拌しながら、1146gの脱イオン水を6g/分の速度で滴下し、乳化物を得た。得られた乳化物を25℃に冷却し、200メッシュ(目開き105μm)の金網を通して、樹脂粒子分散液7を得た。得られた分散液の固形分濃度は32重量%であり、体積中位粒径(D50)は180nm、CV値は28%であった。
【0102】
製造例15
(樹脂粒子分散液8の製造)
内容積5リットルのフラスコに、非晶質ポリエステルY3 210g、非晶質ポリエステルY1 390g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン性界面活性剤、商品名:エマルゲン430、花王(株)製)6g、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(アニオン性界面活性剤、花王(株)製、商品名:ネオペレックスG−15)40g及び5重量%水酸化カリウム268gを入れ、撹拌しながら、95℃に昇温して溶融し、95℃で2時間混合して、樹脂混合物を得た。
次に、撹拌しながら、1145gの脱イオン水を6g/分の速度で滴下し、乳化物を得た。得られた乳化物を25℃に冷却し、200メッシュの金網を通し、脱イオン水を加えて、固形分を23重量%に調整して、非晶質ポリエステルを含有する樹脂粒子分散液8を得た。分散液中の樹脂粒子のガラス転移点は60℃、体積中位粒径(D50)は158nm、CV値は24%であった。
【0103】
製造例16
(樹脂粒子分散液9の製造)
製造例14において、非晶質ポリエステルY2 210g、非晶質ポリエステルY1 390gを、非晶質ポリエステルY4 600gへと変更した以外は同様にして、樹脂粒子分散液9を得た。
樹脂粒子分散液9の固形分濃度は31%であり、樹脂粒子分散液9中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は162nm、CV値は26%であった。
【0104】
製造例17
(樹脂粒子分散液10の製造)
製造例15において、非晶質ポリエステルY3 210g、非晶質ポリエステルY1 390gを、非晶質ポリエステルY4 600gに変更した以外は製造例15と同様にして、樹脂粒子分散液10を得た。
樹脂粒子分散液10の固形分濃度は31%であり、樹脂粒子分散液10中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は128nm、CV値は24%であった。
【0105】
製造例18
(樹脂粒子分散液11の製造)
製造例14において、銅フタロシアニン顔料45gを、33gとした以外は製造例14と同様にして樹脂粒子分散液11を得た。
樹脂粒子分散液11の固形分濃度は32%であり、樹脂粒子分散液11中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は175nm、CV値は27%であった。
【0106】
製造例19
(樹脂粒子分散液12の製造)
製造例14において、銅フタロシアニン顔料を添加しなかった以外は製造例14と同様にして樹脂粒子分散液12を得た。樹脂粒子分散液12の固形分濃度は31%であり、体積中位粒径(D50)は134nm、CV値は25%であった。
【0107】
製造例20
(離型剤粒子分散液の製造)
1リットル容のビーカーで、脱イオン水200gにポリカルボン酸ナトリウム水溶液としてアクリル酸ナトリウム−マレイン酸ナトリウム共重合体水溶液(花王(株)製、商品名:ポイズ521、有効濃度40重量%)3.8gを溶解させた後、これにカルナウバワックス((株)加藤洋行製、商品名:カルナウバワックス1号、融点83℃)5gとパラフィンワックス(日本精鑞(株)製、商品名:HNP−9、融点75℃)45gを添加し、90〜95℃に温度を保持して溶融させて撹拌し、カルナウバワックスとパラフィンワックスとが一体となって溶融した溶融混合物を得た。
得られた溶融混合物を含んだ水溶液を更に90〜95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名:US−600T)で30分間分散処理を行った後に室温まで冷却し、ここにイオン交換水を加え、離型剤固形分20重量%に調整し、離型剤粒子分散液を得た。離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径(D50)は450nm、CV値は30%、融点は75℃であった。
【0108】
製造例21
(着色剤粒子分散液の製造)
2L容のビーカーに銅フタロシアニン顔料(商品名:ECB301、大日精化工業(株)製)60g、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(アニオン性界面活性剤、花王(株)製、商品名:ネオペレックスG−15)80g、脱イオン水112gを投入し、ホモミキサー(プライミクス株式会社製 2M−03型)を用いて、5000rpmで20分間混合した。更に、この混合液を超音波ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名:US−600T)で20分間分散処理を行い、着色剤粒子分散液を得た。得られた着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は150nm、CV値は31%、固形分濃度は26%であった。
【0109】
[トナーの製造]
実施例1
(トナーAの製造)
脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した3リットル容4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液7 212gと、樹脂粒子分散液1 38gと脱イオン水71gと、離型剤粒子分散液18gを入れ、25℃で混合した。次に、25℃で撹拌しながら、この混合物に、硫酸アンモニウム20.1gを脱イオン水196gに溶解させた水溶液を30分かけて滴下した。次いで、得られた混合液を55℃まで昇温し、55℃で保持することで、体積中位粒径が4.5μmの凝集粒子を含む分散液を得た(工程(1))。
続いて、分散液を52℃に調整した後、樹脂粒子分散液8 115gと脱イオン水36gとを混合した混合液を、前記分散液に300分かけて滴下した。なお、本工程では凝集粒子を含む分散液を52℃から1℃/60分の速度で昇温しながら行った。その結果、体積中位粒径が5.4μmの凝集粒子を含む分散液を得た(工程(2))。
得られた分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王(株)製、商品名:エマールE27C、固形分:28重量%)18g及び脱イオン水1397gを混合した水溶液を添加した後、2時間かけて63℃まで昇温した。次に63℃の分散液に1mol/L硫酸を滴下して分散液のpHを5.7とした後、63℃を3時間保持し、体積中位粒径が5.3μmの融着した粒子を得た。その後、25℃まで冷却した。(工程(3))
得られた融着粒子を、濾過し、乾燥し、洗浄して、トナー粒子を得た。このトナー粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:RY50、個数平均粒径;0.04μm)2.5重量部、疎水性シリカ(キャボット社製、商品名:キャボシールTS720、個数平均粒径;0.012μm)1.0重量部、及びポリマー微粒子(日本ペイント(株)製、商品名:ファインスフェアP2000、個数平均粒径;0.5μm)0.8重量部をヘンシェルミキサーで外添処理し、150メッシュの篩いを通過し、トナーAを得た。得られたトナーの物性及び評価を表2に示す。
【0110】
実施例2、3、5、6及び比較例1〜3
(トナーB、C及びE〜Iの製造)
実施例1において、使用する樹脂粒子分散液および凝集粒子の融着温度を、表2のように変更した以外は実施例1と同様にして、トナーB、C及びE〜Iを得た。得られたトナーの物性及び評価を表2に示す。
【0111】
実施例4
(トナーDの製造)
実施例1において、工程(1)を以下のように行った以外は、実施例1と同様にしてトナーDを得た。得られたトナーの物性及び評価を表2に示す。
脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した3リットル容4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液4 212gと、樹脂粒子分散液7 38gと脱イオン水60gと、離型剤粒子分散液 18gと、15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(アニオン性界面活性剤、花王(株)製、商品名:ネオペレックスG−15)11gを入れ、25℃で混合した。その後、攪拌しながら、この混合物に、硫酸アンモニウム20.1gを脱イオン水196gに溶解させた水溶液を30分かけて滴下した。次いで、得られた混合液を55℃まで昇温し、55℃で保持することで、体積中位粒径が4.2μmの凝集粒子を含む分散液を得た(工程(1))。
【0112】
比較例4
(トナーJの製造)
実施例1において、樹脂粒子分散液7を樹脂粒子分散液12へ、脱イオン水71gを脱イオン水46gと着色剤粒子分散液34gへと変更した以外は実施例1と同様にして、トナーJを得た。得られたトナーの物性及び評価を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
表2から、実施例の静電荷像現像用トナーは、比較例の静電荷像現像用トナーに比べて、いずれも画像濃度、低温定着性、耐熱保存性に優れることから、発色性に優れ、印刷物の画像濃度が高く、定着性に優れ、高温での保存性にも優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の製造方法により得られる静電荷像現像用トナーは、画像濃度に優れ、低温定着性と耐熱保存性を両立できるため、電子写真法に用いられる静電荷像現像用トナーとして好適に使用できる。本発明の方法によれば、このような特性を有するトナーを効率的に製造することができる。