(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877062
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65B 53/00 20060101AFI20160218BHJP
B65B 53/02 20060101ALI20160218BHJP
B65C 3/14 20060101ALI20160218BHJP
B65C 3/26 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
B65B53/00 C
B65B53/02 Z
B65B53/02 D
B65C3/14
B65C3/26
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-288418(P2011-288418)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-136402(P2013-136402A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】関 直子
(72)【発明者】
【氏名】稲川 義則
(72)【発明者】
【氏名】相良 幸一
(72)【発明者】
【氏名】関谷 健次
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−505764(JP,A)
【文献】
特開平07−187159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 53/00
B65B 53/02
B65C 3/14
B65C 3/26
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、該容器本体の少なくとも胴部に被せられたラベルとを有する容器の製造方法であって、
容器本体の少なくとも胴部に熱収縮フィルムにより形成されたラベルフィルムを被せる挿入工程と、
ラベルフィルムが被せられた容器本体の胴部にへこみを形成するへこみ形成工程と、
容器本体の胴部に形成したへこみを維持する工程でラベルフィルムを熱収縮させる熱収縮工程と、
容器本体の胴部のへこみを復元させる復元工程とを有してなり、
前記へこみ形成工程が、容器本体の内圧を減圧することにより、容器本体の胴部にへこみを形成する容器の製造方法。
【請求項2】
前記へこみ形成工程が、容器本体の胴部の外面から該胴部を押圧することにより、容器本体の胴部にへこみを形成する請求項1に記載の容器の製造方法。
【請求項3】
容器本体と、該容器本体の少なくとも胴部に被せられたラベルフィルムとを有する容器の製造装置であって、
容器本体の少なくとも胴部に熱収縮フィルムにより形成されたラベルを被せるラベルセット装置と、
ラベルセット装置によりラベルフィルムが被せられた容器本体の胴部にへこみを形成するへこみ形成装置と、
へこみ形成装置が容器本体の胴部に形成したへこみを維持する装置でラベルフィルムを熱収縮させる熱収縮装置とを有してなり、
前記へこみ形成装置が、容器本体の内圧を減圧することにより、容器本体の胴部にへこみを形成する容器の製造装置。
【請求項4】
前記へこみ形成装置が、容器本体の胴部の外面から該胴部を押圧することにより、容器本体の胴部にへこみを形成する請求項3に記載の容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱収縮フィルムからなるラベルを有した容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラベルを容器本体にぴったりとフィットさせる容器の製造方法として、特許文献1に記載の第1と第2の方法がある。
【0003】
第1の方法は、延伸された熱収縮フィルムに印刷を施し、この熱収縮フィルムをチューブ状にしたラベルフィルムを容器本体の周囲に被せる。ラベルフィルムが被せられた容器本体を加熱トンネルに通し、加熱トンネルの高い温度でラベルフィルムを容器本体の周囲に対し熱収縮させ、ラベルフィルムを容器本体の形状にぴったりとフィットさせたラベルとし、これによってラベル付き容器を製造しようとするものである。
【0004】
第2の方法は、印刷されたフィルムをスリーブ状にしたラベルフィルムを容器プレフォームに被せ、このスリーブ付きの容器プレフォームをブロー成形し、ラベル付き容器とする。ラベルフィルムを容器本体の形状にぴったりとフィットさせたラベルとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004-532147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には以下の問題点がある。
(1)従来の第1の方法では、熱収縮フィルムからなるラベルフィルムを通常の形状の容器本体に被せ、このラベルフィルムを熱収縮させてラベルとするものであり、ラベルフィルムを容器本体にぴったりとフィットさせて得られるラベルの密着度が十分でない。このため、スクイズ容器等で、容器本体の胴部をスクイズしたとき、ラベルが容器本体からずれてシワを生ずることがある。
【0007】
また、加熱トンネルを出た容器本体とラベルフィルムが常温まで冷却されてラベル付き容器となる過程で、容器本体の熱収縮率に対し、ラベルフィルムの熱収縮率が低いと、ラベルフィルムを容器本体の形状にぴったりとフィットさせて得られるラベルが、密着度に欠けたラベル浮き状態になる。PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等のポリオレフィン系樹脂からなる容器本体に対し、熱収縮率の低いOPET(延伸ポリエチレンテレフタレート)からなるラベルフィルムを適用する組合せは、特に、上述の密着度が悪い。
【0008】
(2)従来の第2の方法は、ラベルフィルムを被せた容器プレフォームをブロー成形するものに限られ、ダイレクトブロー成形、又は射出成形される等の他の成形方式により成形される容器本体には適用できない。
【0009】
本発明の課題は、各種成形方式により成形される容器本体に熱収縮フィルムからなるラベルフィルムをぴったりとフィットさせたラベル付き容器を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、容器本体と、該容器本体の少なくとも胴部に被せられたラベルとを有する容器の製造方法であって、容器本体の少なくとも胴部に熱収縮フィルムにより形成されたラベルフィルムを被せる挿入工程と、ラベルフィルムが被せられた容器本体の胴部にへこみを形成するへこみ形成工程と、容器本体の胴部に形成したへこみを維持する工程でラベルフィルムを熱収縮させる熱収縮工程と、容器本体の胴部のへこみを復元させる復元工程とを有してな
り、前記へこみ形成工程が、容器本体の内圧を減圧することにより、容器本体の胴部にへこみを形成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各種成形方式により成形される容器本体に熱収縮フィルムからなるラベルフィルムをぴったりとフィットさせたラベル付き容器を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は実施例1の容器の製造装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は実施例2の容器の製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例1)(
図1)
本発明により製造されるラベル付き容器10は、容器本体11と、容器本体11の少なくとも胴部11Aに被せられた熱収縮フィルムのラベル20とを有する。尚、ラベル付き容器10は、胴部11Aの下部に底部11Bを備え、胴部11Aの上部に首部11Cを備える。
【0014】
容器本体11は、PP、PE等のポリオレフィン系樹脂からなり、ブロー成形、射出成形等のいずれの成形方式により成形されても良い。
【0015】
ラベル20は、延伸(一軸延伸)された熱収縮フィルムに印刷を施された筒状のラベルフィルム21を容器本体11の胴部11A上で熱収縮させたものであり、熱収縮フィルムとしてはOPS(延伸ポリスチレン)、OPETを採用できる。OPETは熱収縮しにくく、OPSは熱収縮し易い。OPETはOPSよりも熱収縮性に劣るが、光沢感、加飾適性、傷付きにくさに優れる。OPSは低温で熱収縮し易く保管条件に制限があるが、OPETは低温で熱収縮しにくく保管容易である。
【0016】
以下、容器製造装置100を用いたラベル付き容器10の製造手順について説明する。容器製造装置100は、下部循環コンベヤ110、ラベルセット装置120、へこみ形成装置130、熱収縮装置140を有して構成される。
【0017】
(1)下部循環コンベヤ110により容器本体11を、下記(2)〜(5)の各工程に順次搬送する。
【0018】
(2)ラベルセット装置120による挿入工程で、容器本体11の胴部11Aに、熱収縮フィルムにより形成されたラベルフィルム21を被せる。
【0019】
ラベルフィルム21は、一定間隔で繰り返し印刷された長尺筒状体が、カッタ等により一定間隔で切断され形成された短尺筒状体からなる。ラベルフィルム21は、平板シート状の原反フィルムを製造装置100による製造段階で筒状体に成形したものでも良いし、予め筒状に成形された原反フィルムを製造装置100に供するものでも良い。
【0020】
ラベルフィルム21は、扁平状の短尺筒状体が吸引機能付き開き具により円筒状に開かれた状態で、コンベヤ110上の容器本体11の胴部11Aに被せられる。
【0021】
(3)へこみ形成装置130によるへこみ形成工程で、ラベルフィルム21に被せられた容器本体11の胴部11Aにへこみ12を形成する。
【0022】
容器本体11に付与されるへこみ12の容積(へこみ量)は、容器本体11の満量の3%〜40%程度とする。へこみ形成装置130が付与するへこみ12のへこみ量が、3%より小さいと後述(5)の胴部11Aの復元力によりラベルフィルム21に生ずる張力が不十分になり、40%より大きいと胴部11Aが復元しにくくなる。
【0023】
本実施例のへこみ形成装置130は、真空吸引装置等の減圧装置131を容器本体11の口部11Dに接続し、容器本体11の内圧を減圧することにより、容器本体11の胴部11Aにへこみ12を形成する。
【0024】
(4)熱収縮装置140による熱収縮工程で、へこみ形成装置130が容器本体11の胴部11Aに形成したへこみ12を維持する工程で、ラベルフィルム21を熱収縮させる。
【0025】
熱収縮装置140に設けた上部循環コンベヤ141が、減圧装置131を撤去した容器本体11の口部11Dを直ちに塞いで容器本体11のへこみ形成状態を保持しつつ、下部循環コンベヤ110とともに同期移動し、減圧装置131が容器本体11の胴部11Aに形成したへこみ12を維持する。尚、容器本体11の口部11Dにプラグを挿着することにより、へこみ形成装置130が容器本体11の胴部11Aに形成したへこみ12を維持することもできる。
熱収縮装置140は、熱風を噴射する加熱トンネルからなる。
【0026】
(5)熱収縮装置140の上部循環コンベヤ141から搬出された容器本体11の口部11Dは復元工程で該コンベヤ141から離れ、容器本体11の減圧状態が解放される。これにより、容器本体11は胴部11Aの弾性的な復元力によりへこみ12を復元させ、へこみ12のない元の形状に戻る。容器本体11の胴部11A上で熱収縮したラベルフィルム21に胴部11Aの復元力起因の張力が生ずることになり、ラベルフィルム21は胴部11Aの形状にぴったりとフィットするラベル20になる。これにより、シワのない綺麗な仕上がりのラベル付き容器10になる。
【0027】
実施例1によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)一旦へこませた容器本体11の胴部11Aの周囲でラベルフィルム21を熱収縮させる。次に、容器本体11の胴部11Aのへこみ12を復元させることにより、その胴部11Aの復元力によってラベルフィルム21を張る。これにより、容器本体11とラベルフィルム21の熱収縮率の差が大きくても、ラベルフィルム21を容器本体11の胴部11Aの形状にぴったりとフィットさせたラベル20とし、仕上がり状態の良いラベル付き容器10を得る。容器本体11の胴部11Aをスクイズして使用するときにも、ラベル20のシワを生じにくい。
【0028】
容器本体11は、ブロー成形、射出成形等のいずれの成形方式により成形されても良い。
【0029】
(b)容器本体11の胴部11Aのへこみ12は、容器本体11の内圧を減圧することにより、簡易に形成できる。
【0030】
(実施例2)(
図2)
実施例2が実施例1と異なる点は、実施例1のへこみ形成装置130によるへこみ形成工程で、押圧装置132を用いたことにある。
【0031】
押圧装置132は、容器本体11の胴部11Aの両側(又は片側)に設けた押圧シリンダ132Aにより進退される押圧ヘッド132Bからなり、ラベルフィルム21が被せられた容器本体11の胴部11Aを押圧ヘッド132Bにより胴部11Aの外面から押圧することにより、胴部11Aにへこみ12を形成する。押圧装置132の押圧ヘッド132Bが胴部11Aを押圧してへこみ12を形成したら、熱収縮装置140の上部循環コンベヤ141により容器本体11の口部11Dを直ちに塞いで容器本体11のへこみ形成状態を保持しつつ、熱収縮工程、復元工程に入る。
【0032】
容器本体11の胴部11Aを両側から押圧する方が、胴部11Aの変形の程度に偏りがなく、熱収縮工程、復元工程後に得られるラベル付き容器10の仕上がりが良好になる。
【0033】
実施例2によれば、実施例1の前述した作用効果(a)に加え、以下の作用効果を奏する。
容器本体11の胴部11Aのへこみ12は、容器本体11の胴部11Aの外面から該胴部11Aを押圧することにより、簡易に形成できる。
【0034】
実施例1のへこみ形成装置130の減圧装置131により減圧されてへこまされている容器本体11に対し、押圧装置132を併用してその胴部11Aの外面から該胴部11Aを押圧し、該胴部11Aを一層へこませることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、各種成形方式により成形される容器本体に熱収縮フィルムからなるラベルフィルムをぴったりとフィットさせたラベル付き容器を製造することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 ラベル付き容器
11 容器本体
11A 胴部
12 へこみ
20 ラベル
21 ラベルフィルム
100 容器製造装置
120 ラベルセット装置
130 へこみ形成装置
131 減圧装置
132 押圧装置
140 熱収縮装置