(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステータの内側面からロータ側に向かって突出するステータティースが形成され、前記ステータティースには、その突出先端側であるロータ側から筒状のコイルボビンが挿入されて取り付けられる集中巻モータであって、
前記コイルボビンが前記ロータ側にずれるのを防止する金属製のずれ防止手段を設け、
前記ずれ防止手段は金属ストッパであり、前記金属ストッパは、前記ステータティースの先端側に位置する前記コイルボビンの外面と接するコイルボビン当接部と、前記ステータティースの基端部側で前記ステータに固定された本体部とを備えていることを特徴とする集中巻モータ。
ステータの内側面からロータ側に向かって突出するステータティースが形成され、前記ステータティースには、その突出先端側であるロータ側から筒状のコイルボビンが挿入されて取り付けられる集中巻モータであって、
前記コイルボビンが前記ロータ側にずれるのを防止する金属製のずれ防止手段を設け、
前記ステータは、積層された複数の電磁鋼板を束ねて構成されており、この積層された電磁鋼板の最上部または最下部のいずれか一方または両方には圧延鋼板が使用され、この圧延鋼板には、前記ずれ防止手段であって、前記コイルボビンの装着孔の内側面に向かって突出する切曲げ爪が最上部または最下部のいずれか一方または両方にのみ形成されていることを特徴とする集中巻モータ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る集中巻モータについて、図面を用いて詳細に説明する。なお、集中巻モータとしては、例えば、ロータ側に永久磁石を用いることなく駆動力を発生させるスイッチトリラクタンスモータ(以下、SRモータという)がある。以下、集中巻モータの一例として、SRモータ1を用いて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の集中巻モータ(SRモータ1)を回転軸5に沿って切断した断面図である。また、
図2は、SRモータ1の斜視図であって、
図1で示した回転軸5およびロータ8を省略して示した図であり、
図3は、SRモータ1のステータ20とコイルボビン30および金属ストッパ40の分解斜視図である。さらに、
図4は、
図3のステータ20にコイルボビン30および金属ストッパ40を組み付けた状態を示す平面図である。また、
図5は、
図1のA部の拡大図である。
【0026】
なお、以下の説明で使用する前方向(前側)とは、
図1における紙面左側(回転軸5が突出している側)をいい、後方向(後側)とは、
図1における紙面右側(回転軸5が突出していない側)をいうものとする。
【0027】
SRモータ1は、
図1および
図2に示すように、略円筒形状のステータ20と、このステータ20の径方向内側に配置されたロータ8と、ステータ20を前後に挟む態様で支持するフロントブラケット3およびリアブラケット2と、を備えている。このSRモータ1は、
図3および
図4に示すように、例えば、ステータ20側が6極、ロータ8側が4極で構成されている(6/4構成)。
【0028】
ロータ8は、
図1に示すように、回転軸5に取り付けられており、ロータ8がステータ20からの回転磁界を受けて回転することによって、回転軸5が共に回転するようになっている。また、回転軸5は、フロントブラケット3側に設けられたフロントベアリング6およびリアブラケット2側に設けられたリアベアリング7によって回転自在に支持されている。なお、このロータ8は、永久磁石および巻線が使用されていない簡単な構造で構成されている。
【0029】
ステータ20は、
図2に示すように、同一形状の電磁鋼板Kを前後方向に複数枚積層して構成されている。このステータ20の内側面(内周面)20a側には、
図3および
図4に示すように、この内側面20aからロータ8側に向かって径方向内側へ突出する6つのステータティース21が設けられている。このステータティース21は、その基端部21bから先端部21aまで、ほぼ同一の幅寸法で形成されており、径方向内側へほぼ直線状に延びている。このステータティース21の先端部21aの形状は、
図4に示すように、回転するロータ8との隙間ができるだけ小さくなるように、ロータ8の形状に合わせて略円弧状に形成されている。
【0030】
また、ステータ20には、
図3および
図4に示すように、それぞれのステータティース21の基端部21bに、6つの貫通孔22が形成されている。これらの貫通孔22は、複数の電磁鋼板Kのそれぞれを貫通する態様で形成されている。一方、リアブラケット2には、この貫通孔22と対応する位置に取付孔2aが形成されている。また、フロントブラケット3にも同様に、この貫通孔22と対応する位置に雌ねじ孔3aが形成されている。
【0031】
これらの貫通孔22には、
図1および
図2に示すように、取付ボルト9が挿通される。より詳細には、取付ボルト9は、リアブラケット2の取付孔2a側から平ワッシャ12を介して挿入され、ステータ20の貫通孔22に挿通された後に、フロントブラケット3の雌ねじ孔3aと螺合する。これにより、リアブラケット2、ステータ20、およびフロントブラケット3が取付ボルト9によって組み付けられるようになる。
【0032】
上述した複数のステータティース20には、
図3および
図4に示すように、通電用のコイル31が巻装されたコイルボビン30と、ステータティース20の前側および後側のそれぞれに配置される金属ストッパ40とがそれぞれ装着される。
【0033】
コイルボビン30は、
図3および
図4に示すように、略矩形状に形成されており、コイル31が巻装される外枠部35と、この外枠部35によって囲まれた中空部である装着孔34と、外枠部35からステータ20の径方向外側へと延在するフック部32とを備えている。また、このコイルボビン30は、絶縁性を有する樹脂材料で形成されており、上述した外枠部35、装着孔34、フック部32が一体で成形されている。
【0034】
外枠部35は、
図3に示すように、装着孔32を囲むように周方向に連続する溝形状を有しており、この溝形状内側に通電用のコイル31が巻き付けられている。これにより、コイルボビン30をステータティース21に組み付けた状態で、コイル31とステータティース21とがコイルボビン30を介して絶縁されるようになる。
【0035】
装着孔34は、ステータ20のステータティース21の形状に合わせて形成されており、この装着孔34の内面34aがステータティース21の外面とステータティース21の幅方向において隙間がないように嵌り込むようになっている。また、装着孔34の内面34aおよび外枠部35の外面35a(ステータティース21の先端部21a側に位置する面)には、
図3に示すように、その前側および後側のそれぞれに、溝状に形成されたL字状の段差部36が形成されている。この段差部36は、詳細は後述する金属ストッパ40の板厚分だけ低くなっており、金属ストッパ40が取り付けられた状態で、金属ストッパ40のL字状に曲がった外面40aと装着孔34の内面34aおよび外枠部35の外面35aとが略面一になるように形成されている。
【0036】
フック部32は、
図3に示すように、コイルボビン30の前側および後側のそれぞれに2つ設けられている。このフック部32は、上述した段差部36の低くなった面と同一面になるように形成されている。またこのフック部32の先端部には、取付孔33が形成されている。この取付孔33は、コイルボビン30をステータティース21に挿入した状態で、上述したステータ20の貫通孔22と一致する位置に配置される。
【0037】
図6は、金属ストッパ40を単体で示したものであり、(A)は平面図、(B)はその側面図である。金属ストッパ40は、
図6に示すように、平板状の鋼板を略L字状に折り曲げることによって形成されている。また、この金属ストッパ40は、詳細は後述するが、板ばねとしての機能を有している。
【0038】
この金属ストッパ40は、本体部43と、この本体部43に対して約90度だけ折り曲げられたコイルボビン当接部41とで構成されている。なお、L字状に折り曲げられた外面40a(
図6(B)において、本体部43の左側の面、およびコイルボビン当接部41の下側の面)は、上述したコイルボビン30に組み付けられた状態で、コイルボビン30の装着孔34の内面34aと外枠部35の外面35aとほぼ面一になる。また、本体部43の先端部には、取付孔42が形成されている。
【0039】
金属ストッパ40は、
図3〜
図5に示すように、コイルボビン30の段差部36に嵌め込まれる。金属ストッパ40を段差部36に嵌め込んだ状態では、金属ストッパ40の取付孔42は、ステータ20の貫通孔22およびコイルボビン30の取付孔33とが一致しするようになっている。
【0040】
このように金属ストッパ40を段差部36に嵌め込んだ状態で、コイルボビン30の装着孔34をステータティース21の先端側21a側から挿入し、ステータティース21に沿って径方向外側に向かってスライドさせる。挿入された状態では、フック部32の取付孔33および金属ストッパ40の取付孔42は、上述したステータ20の貫通孔22の位置に配置され、上述した取付ボルト9によってステータ20の複数の束ねた電磁鋼板Kと共に固定される。
なお、金属ストッパ40は、コイルボビン30をステータティース21に挿入した後に、別個に挿入して取り付けることもできる。
【0041】
図7は、金属ストッパ40の装着前の状態(実線で示す)と装着後の状態(点線で示す)の変形状態の違いを示す側面図である。
【0042】
金属ストッパ40は、
図7に実線で示すように、装着前の状態で、本体部43を外方向へ突出するように撓ませて(湾曲させて)ある。また、コイルボビン当接部41についても、装着前の状態で撓ませて、折り曲げ角度を広角にしてある。
これに対し、装着後の状態(
図7の点線で示す)では、本体部43の撓みの変位量44が小さくなる。また、コイルボビン当接部41の折り曲げ角度45も、装着前の状態よりも小さくなるようにしてある。
【0043】
このように、装着後の状態では、金属ストッパ40の本体部43は、この撓みが押し潰された状態で装着される。そのため、この撓みが元に戻ろうとする板ばねとしての機能によって、コイルボビン30が付勢されるようになる。これにより、ステータティース21と金属ストッパ40との間の隙間を変位量44の分だけ埋めるようになる。
【0044】
また、装着後の状態では、本体部43は、コイルボビン30に前後方向付勢力46(
図5参照)を作用させ、コイルボビン30の前後方向におけるがたつきを抑止している。同様に、金属ストッパ40のコイルボビン当接部41は、変位角45の変化によって、コイルボビン30の外枠部35にステータティース21の基端部21b側へ径方向付勢力47(
図5参照)を作用させることで、コイルボビン30の径方向におけるがたつきを抑止している。
【0045】
図8は、ベアリング押さえ板100を単体で示す正面図である。また、
図9(A)は、ベアリング押さえ板100でフロントベアリング6を押さえている状態を示す側面図、(B)はベアリング押さえ板の取り付けを示す側面図である。
【0046】
フロントベアリング6は、
図1に示すように、ベアリング押さえ板100によって固定されている。このベアリング押さえ板100は、6つのボルト11によってフロントブラケット3に取り付けられている。
【0047】
ベアリング押さえ板100は、
図7に示すように、平板を円環状に打ち抜いて形成されている。このベアリング押さえ板100の本体部101には、フロントブラケット3に取り付けるための取付孔103が周方向に等間隔(60°毎に均等に)に6つ形成されている。また、本体部101の外周縁部には、径方向内側へ凹んだ逃げ部104が形成されている。この逃げ部104も周方向に等間隔に3つ形成されている。
【0048】
また、本体部101の内縁部102には、上述した取付孔103の位置に合わせて、内縁部102を径方向外側に向けて凹ませた6つの切り欠き部105を設けることによって、隣り合う切り欠き部105の間に6つの押さえ部106を形成している。この切り欠き部105のそれぞれの端部105aは、応力集中をさけるためにR形状に形成されている。
【0049】
押さえ部106は、
図9(A)に示すように、ベアリング押さえ板100をフロントブラケット3に取り付けた状態で、内径内側方向の先端部がフロントベアリング6の外輪部分と当接し、フロントベアリング6を弾性によって押さえ込むようになっている。一方、切り欠き部105は、
図9(B)に示すように、フロントベアリング6の外輪部分よりも外側に位置し、押さえ込む機能は果たしていない。
【0050】
従来のベアリング押さえ板の構造では、本体部の内縁部に切り欠き部105を設けておらず、この内縁部の全周でフロントベアリング6の外輪部を押さえ込んでいた。しかしながら、この構造では、ボルト11の取り付け部近傍において本体部に曲げ応力が発生し、ボルト11に引き抜き力が作用したり、ボルト11の頭部に強い剪断応力が作用して、ボルト11が緩むことがあった。これに対し、上述したベアリング押さえ板100では、ボルト11の近傍では切り欠き部105で逃げてフロントベアリング6を押さえ込まない構造にすると共に、隣り合うボルト11の間に位置する押さえ部106を設けて、この押さえ部106の板ばねとしての弾性によってフロントベアリング6の外輪部分を押さえ込むようにしているので、ボルト11に剪断力や引き抜き力が生じず、ボルト11が緩むことがなくなる。
【0051】
本発明の第1実施形態に係る集中巻モータによれば、コイルボビン30がロータ8側にずれるのを防止する金属ストッパ40が設けられており、この金属ストッパ40は、L字状に折り曲げられた一辺によって、ステータティース21の先端側21aに位置するコイルボビン30の外面35aと接するコイルボビン当接部41と、ステータティース21にコイルボビン30と共に挿入されて、ステータティース21の基端部21b側でステータ20に固定される本体部43とを備えているので、金属ストッパ40は、コイルボビン当接部41でコイルボビン30がロータ8側へずれるのを防止するとともに、本体部43でステータ20に固定されるようになり、モータの温度や振動に起因して樹脂製のコイルボビン30(フック部32)が破損したとしても、コイルボビン30がロータ8側にずれないようにすることができる。また、固定手段として接着剤を使用していないので、接着剤を硬化・乾燥させる行程がなく、生産性を向上させることができる。
【0052】
また、ステータ20は、積層された複数の電磁鋼板Kを束ねて取付ボルト9で固定されており、金属ストッパ40の本体部43には、取付孔42が形成されており、取付孔42には取付ボルト9が挿通されて、本体部43と複数の電磁鋼板Kとが共に固定されているので、本体部43を固定するためのボルトを別途設ける必要がなく、構造が簡素化される。また、組み付け作業工程も簡素化されることになる。
【0053】
さらに、金属ストッパ40のコイルボビン当接部41または本体部43を撓ませて形成し、金属ストッパ40を装着した状態で、金属ストッパ40の撓みが戻ろうとするばね力によって、コイルボビン30を付勢しているので、コイルボビン30の装着孔34の内面34aとステータティース21との間に生じる隙間を埋めることができる。また、コイルボビン30を付勢することで、コイルボビン30の前後方向におけるがたつき、および径方向におけるがたつきを吸収することができる。これにより、SRモータの運転中に、コイルボビン30が振動するのを抑制することができる。
【0054】
他方、金属ストッパ40をSRモータ1に適用することで、特に優れた効果を発揮する。つまり、一般的な誘導電動機などは、ステータの周方向において120度毎に位置するティースに通電されて回転磁界が発生する。しかしながら、SRモータ1は、常に対向するステータティース21(180度毎に位置するステータティース21)に回転磁界が発生するようになり、磁界によってステータ20に生じるひずみは、一般的な誘導電動機よりもSRモータ1の方が大きくなってしまう。そのため、コイルボビン30のフック部32にも、より大きな変形力が作用してしまうので、金属ストッパ40を設けてフック部32の破断に備えることは特に有効である。
【0055】
以上、本発明の第1実施形態に係る集中巻モータについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、第1の実施の形態では、金属ストッパ40を前側および後側の2カ所に取り付けるようにしているが、片側であっても構わない。すなわち、集中巻モータ1の温度や振動によってコイルボビン30のフック部32が破損したとしても、少なくとも片側の金属ストッパ40を有していれば、コイルボビン30がロータ8側へずれないようにすることができる。また、コイルボビン30の装着孔34とステータティース21との隙間ができるだけ生じないように形成されているので、片側のみであってもコイルボビン30が径方向へずれるのを防止することができる。
【0056】
また、本実施の形態における金属ストッパ40の替わりに、
図10(A)、
図10(B)に示すような金属ストッパ50を用いることもできる。この金属ストッパ50は、本体部53とコイルボビン当接部51とを備え、本体部53の先端部に取付孔52が形成されている。この取付孔52には、取付孔52の中心に向かって突出する折り曲げ凸部54が設けられている。
【0057】
この金属ストッパ50の折り曲げ凸部54は、
図11(A)および
図11(B)に示すように、コイルボビン30をステータティース21に挿入して取付ボルト9を挿入する際に、ステータ20の貫通孔22の内方に折り曲げて組み付けられるようになっている。この折り曲げ凸部54は、
図11(B)に示すように、貫通孔22の内面と当接するように折り曲げられている。これにより、コイルボビン30は、金属ストッパ50のコイルボビン当接部51と折り曲げ凸部54とによってステータ20の径方向への位置が規制されるようになり、径方向へのがたつきが抑制されるようになる。
【0058】
また、折り曲げ凸部54を取付ボルト9の挿入前(ボビン組付け時)に現物に合わせて折り曲げるようにしているので、例えば、ステータ20、コイルボビン30および金属ストッパ50に寸法公差による製造上のばらつきが生じていたとしてもこれらの誤差を吸収することができる。そのため、製品個々による製造誤差に起因する径方向へのがたつきを効果的に抑止することができる。
【0059】
なお、金属ストッパ50は、本実施例と同様に、装着前に本体部53およびコイルボビン当接部51とを湾曲させて装着する。また、金属ストッパ50の外面50aは、コイルボビン30の段差部36に嵌め込んだ状態で、装着孔34の内面34aとほぼ面一になるのも金属ストッパ40と同じである。
【0060】
さらに、第1の実施の形態における金属ストッパ40の替わりに、
図12に示す金属ストッパ60を使用することもできる。この金属ストッパ60は、
図12に示すように、略U字形状に折り曲げられており、径方向外側の位置に折り返し部64が形成されている。この折り返し部64は、リアブラケット2(フロントブラケット3も同様)にスリット65が形成されており、このスリット65の内部に挿入される態様で組み付けられる。
【0061】
この構造によれば、金属ストッパ60に取付ボルト9を挿通させずに取り付けることができるので、金属ストッパの取付孔42,52と取付ボルト9の位置合わせなどの手間がなく、組み立て作業を容易に行うことができる。
【0062】
なお、金属ストッパ60は、本実施例と同様に、装着前に本体部63およびコイルボビン当接部61とを湾曲させて装着する。また、金属ストッパ60の外面60aは、コイルボビン30の段差部36に嵌め込んだ状態で、装着孔34の内面34aとほぼ面一になるのも金属ストッパ40と同じである。
【0063】
さらに、第1の実施の形態におけるベアリング押さえ板100の替わりに、
図13に示すベアリング押さえ板110を使用することもできる。集中巻モータの出力軸5は、駆動ベルトや駆動チェーンなどの動力伝達部材から受ける荷重方向が予め予期できるものがある(例えば、
図13における方向117または反対方向118)。この場合、この荷重方向に合わせてボルト11の取付位置を定めたベアリング押さえ板110を使用することができる。
【0064】
このベアリング押さえ板110の本体部111には、
図13に示すように、ボルト11を挿通するための6個の取付孔113が設けられている。ただし、この取付孔113の位置は、第1の実施の形態における6つのベアリング取付孔103の位置(60°毎に均等に配置)とは異なり、方向117および118側に集中して配置されている。より詳細には、6つのベアリング取付孔103が、荷重方向117、118を中心に、45°間隔で集中配置されている。
【0065】
一方、本体部111の内縁部112に形成された切り欠き部115は、第1の実施の形態の切り欠き部105と同様に、取付孔113の位置の位置に合わせて形成されており、隣り合う切り欠き部115の間には、押さえ部116が形成されている。
【0066】
本第1実施形態のように6本のボルト11を60°で均等配置した場合には、方向117、118のボルト11は、高い応力が作用することになるが、この変形例による構成によれば、6本のボルト11を45°で集中配置することにより、ボルト11に作用する荷重を分散することができる。そのため、ボルト11に作用する最大応力は小さくなるので、第1の実施の形態の構造と比較して、ボルト11のサイズ(ねじ径)を小さくすることもできる。
【0067】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係る集中巻モータについて、図面を用いて詳細に説明する。なお、本第2実施形態におけるSRモータ201は、第1実施形態におけるSRモータ1と比較して、ステータティースにコイルボビンを固定する方法が異なるだけで、他の構造は同じである。そのため、以下の説明では、ステータおよびコイルボビンの構造について説明する。また、以下の説明では、第1の実施の形態で使用したものと同一のものについては、同一の符号を用いて説明する。
【0068】
図14は、SRモータ(集中巻モータ)201のステータティース221を拡大して示す平面図である。また、
図15は、
図14のステータティース221にコイルボビン230を挿入した状態を示す平面図、
図16は、
図15の状態から固定爪を折り曲げてコイルボビンを固定した状態を示す平面図、
図17は、
図16のD方向から見た正面図である。
【0069】
SRモータ201は、
図14〜
図17に示すように、円筒形状のステータ220を有している。このステータ220は、その内側面220aから径方向内側に向けて突出するステータティース221を有している。
【0070】
ステータ220は、平板状の複数の電磁鋼板Kを積層して構成されている。しかしながら、第2実施形態におけるステータ220は、第1実施形態に係るステータ20とは異なり、積層される最上部の電磁鋼板および最下部の電磁鋼板(図示せず)が、圧延鋼板224に置き換えられている。この圧延鋼板224の板厚は、約0.5〜2mmのものが使用される。
なお、最上部の圧延鋼板224と、最下部の電磁鋼板(図示せず)の形状は同じであるため、以下の説明では、最上部の電磁鋼板224について説明する。
【0071】
最上部の圧延鋼板224は、ステータティース221の先端部221aの両側に、固定爪223がそれぞれ形成されている。この固定爪223は、
図14に示すように、ステータティース221の先端側の両側部から外側に向けて突出する態様でそれぞれ形成されている。また、固定爪223には、ステータティース221の基端部221b側に、この固定爪223が折り曲げ易くなるように、切り欠き223aが設けられている。
【0072】
一方、コイルボビン230には、
図15〜
図17に示すように、装着孔243の上下左右に4つの逃げ部237が形成されている。この逃げ部237は、
図17に示すように、装着孔234の上端から上側に向かって延びるように形成されている。また、逃げ部237は、
図15および
図16に示すように、コイルボビン230の挿入方向における全長に亘って形成されている。
なお、
図17には図示されていないが、下側の逃げ部237についても、装着孔234の下端から下側に向かって延びるように形成されている。
【0073】
なお、本第2実施形態におけるコイルボビン230は、第1実施形態のコイルボビン30とは異なり、ステータ20を固定するボルト9に共締めされるフック部32は設けられていない。すなわち、第2実施形態におけるコイルボビン230は、上述した固定爪223によって固定されるようになっている。
【0074】
次に、本第2実施形態におけるSRモータ201の作用について、
図14〜
図17を用いて説明する。
ステータティース221にコイルボビン230を挿入する前の状態では、
図14に示すように、固定爪223は、ステータティース221の側面から横方向に突出している。この状態から、
図15に示すように、固定爪223をステータティース221の側面に沿って上側に(下側の固定爪は下側に)折り曲げる。これにより、コイルボビン230をステータティース221に挿入する際に、固定爪223がコイルボビン230の逃げ部237を通過するようになる。
【0075】
コイルボビン230をステータティース221に挿入させた後、
図16および
図17に示すように、固定爪223が再び横方向に突出するように(元の状態になるように)折り曲げる。これにより、固定爪223はコイルボビン230の外面235aと接するようになり、コイルボビン230が固定されると共に径方向内側にずれないようになる。
【0076】
なお、固定爪223を再び横方向に折り曲げる(折り返す)際、厳密に水平に折り曲げる必要はない。すなわち、折り曲げ角度が水平よりも多少の角度がついていたとしても、固定爪223がコイルボビン230の外面235aと接していれば、コイルボビン230が径方向にずれないようにすることができる。これにより、作業者が折り曲げ作業をする際に気を遣う必要がなくなり、折り曲げ工程に時間を要しない。
【0077】
本発明の第2実施形態に係る集中巻モータによれば、ステータ220は、積層された複数の電磁鋼板Kを束ねて構成されており、この積層された電磁鋼板Kの最上部または最下部には圧延鋼板が使用され、この圧延鋼板224には、ステータティース221の先端側221aに位置するコイルボビン230の外面235aと接するように折り曲げられる固定爪223が形成されているので、固定爪223でコイルボビン230がロータ8側へずれるのを防止されるようになり、モータの温度や振動に起因して樹脂製のコイルボビン230が破損したとしても、コイルボビン230がロータ8側にずれないようにすることができる。また、固定手段として接着剤を使用していないので、接着剤を硬化・乾燥させる行程がなく、生産性を向上させることができる。
【0078】
また、固定爪223は、ステータティース221の幅方向の側面に沿って折り曲げられているので、固定爪223を作業者が手で折り曲げられるようになり、組み立て作業を容易に行うことができる。
【0079】
以上、本発明の第2実施形態に係る集中巻モータについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、第2実施形態では、固定爪223をステータティース221を挟んで両側に形成しているが、片側のいずれか一方のみに形成することもできる。この場合であっても、コイルボビン230の装着孔234とステータティース221との隙間ができるだけ生じないように形成されているので、片側のみであってもコイルボビン230がステータ220の径方向へずれるのを防止することができる。
【0080】
また、第2実施形態では、ステータ220の最上部の圧延鋼板224と最下部の圧延鋼板の両方に固定爪223を設けているが、最上部または最下部のいずれかの圧延鋼板にのみ固定爪223を形成してあってもよい。これによっても、コイルボビン230がステータ220の径方向へずれるのを防止することができる。ただし、より確実にコイルボビン230のずれを防止するためには、両方に固定爪223を形成することが好ましい。
【0081】
また、固定爪237の形状を適宜変更することもできる。
図18は、本第2実施形態の変形例であって、ステータティース321を拡大して示す平面図、
図19は、
図18の固定爪323折り曲げ後のX−X断面図である。
【0082】
ステータ320は、本第2実施形態と同様に、積層される最上部の圧延鋼板324と、最下部の圧延鋼板(図示せず)の形状が、中間に積層させる電磁鋼板Kの形状と異なっている。なお、最上部の圧延鋼板324と最下部の圧延鋼板の形状は同じであるため、以下の説明では、最上部の圧延鋼板324について説明する。
【0083】
最上部の圧延鋼板324は、
図18に示すように、ステータティース321の先端部左側に固定爪323が設けられている。また、圧延鋼板324の先端部までの長さは、挿入されたコイルボビン330の外面335aと一致する長さに形成されており、固定爪323をこのコイルボビン330の外面335aに沿って上側(最下部の圧延鋼板は下側)に折り曲げられるようになっている。また、固定爪323の基端部には、固定爪323が折り曲げ易いように、切り欠き323aが設けられている。
【0084】
コイルボビン330には、本第2実施形態のコイルボビン230のように逃げ部237は設けられていない。すなわち、コイルボビン330は、ステータティース321の突出方向(径方向)に沿って固定爪323を挿通させることによって、コイルボビン330の装着孔334にそのまま挿通されるようになる。また、コイルボビン330には、第1実施形態のコイルボビン30のようなフック部32も設けられていない。
【0085】
固定爪323は、ステータティース321にコイルボビン330を挿入した状態で、コイルボビン330の外面335aに当接する態様で折り曲げられる。これにより、SRモータ301の運転中の振動などによってコイルボビン330に径方向内側へずれる力が作用しても、固定爪323がその力を受けるようになり、コイルボビン330が径方向内側へずれるのを防止することができる。
【0086】
なお、
図18に示す上記変形例では、固定爪323をステータティース321の幅方向(
図18の紙面左右方向)における左側に設けているが、右側或いは中央に設けてあっても構わない。さらには、ステータティース321の幅方向の全長に亘って折り曲げるようにすることもできる。この場合であっても、コイルボビン330がステータ320の径方向へずれるのを防止することができる。
【0087】
また、ステータ320の最上部の圧延鋼板324と最下部の圧延鋼板の両方に固定爪323を設けているが、最上部または最下部のいずれかの圧延鋼板にのみ固定爪323を形成してあってもよい。これによっても、コイルボビン330の装着孔334とステータティース321との隙間ができるだけ生じないように形成されているので、コイルボビン330がステータ320の径方向へずれるのを防止することができる。ただし、より確実にコイルボビン330のずれを防止するためには、両方に固定爪323を形成することが好ましい。
【0088】
また、
図20〜
図22は、固定爪の他の変形例を示したものである。
図20は、第2実施形態の他の変形例であって、ステータティースを拡大して示す平面図である。また、
図21は、
図20のE−E断面図、
図22は、
図20のF方向から見た正面図である。
【0089】
ステータ420は、本第2実施形態と同様に、積層される最上部の圧延鋼板424と、最下部の圧延鋼板(図示せず)の形状が、中間に積層させる電磁鋼板Kの形状と異なっている。なお、最上部の圧延鋼板424と最下部の圧延鋼板の形状は同じであるため、以下の説明では、最上部の圧延鋼板424について説明する。
【0090】
最上部の圧延鋼板424には、
図20に示すように、ステータティース321のほぼ中央部に、ステータティース421の突出方向に間隔を明けて2つの切り起こし爪423が設けられている。この切り起こし爪423は、ステータティース421の先端部421a側が開口する略U字形状に明けられたU字孔423aの内側を斜めに折り曲げて形成されている。また、この切り起こし爪423は、圧延鋼板424の弾性によって切り起こし方向(
図21の紙面左右方向)へ撓むことができるようになっている。
【0091】
また、コイルボビン430には、
図20〜
図22に示すように、挿通孔434の内面であって切り起こし爪423と対応する位置に、段差状に窪ませた係合溝437が形成されている。この係合溝437は、
図21に示すように、コイルボビン430の外面435a側から奥行き方向(
図21の紙面上方向)に延在しているが、外側面430の反対側の面までは延びておらず、その残りの部分で係合突部438が形成されている。この係合突部438には、詳細は後述するが、切り起こし爪423が係合するようになる。
なお、コイルボビン430には、第1実施形態のコイルボビン30のようなフック部32は設けられていない。
【0092】
ステータティース421の先端側からコイルボビン430を挿入すると、まず、コイルボビン430の係合突部438が切り起こし爪423と当接し、この切り起こし爪423を押し倒すようにして挿入される。このとき、切り起こし爪423は、自己の弾性によって変形する。
【0093】
コイルボビン430が完全に挿入された状態では、
図21に示すように、切り起こし爪423が自己の弾性によって切り起こされた状態に復帰し、係合突部438と係合する。この係合によって、コイルボビン430をステータ430の径方向内側に向かってずらす力が作用したとしても、切り起こし爪423がその力を受けるようになり、コイルボビン430が径方向内側へずれるのを防止することができる。
【0094】
なお、
図20〜
図22に示す上記変形例では、切り起こし爪423を2つ設けているが、1つ或いはそれ以上であってもかまわない。
【0095】
また、ステータ420の最上部の圧延鋼板424と最下部の圧延鋼板の両方に切り起こし爪423を設けているが、最上部または最下部のいずれかの圧延鋼板にのみ切り起こし爪423を形成してあってもよい。これによっても、コイルボビン430の装着孔434とステータティース421との隙間ができるだけ生じないように形成されているので、コイルボビン430がステータ420の径方向へずれるのを防止することができる。ただし、より確実にコイルボビン430のずれを防止するためには、両方に切り起こし爪423を形成することが好ましい。