特許第5877102号(P5877102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877102
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】印刷方法及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/40 20060101AFI20160218BHJP
   B41F 17/34 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   B41M1/40 C
   B41F17/34 C
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-72189(P2012-72189)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-202838(P2013-202838A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大西 勝
【審査官】 鈴木 友子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/092927(WO,A1)
【文献】 特開昭63−186228(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/111689(WO,A1)
【文献】 特開昭60−25756(JP,A)
【文献】 特開2010−143073(JP,A)
【文献】 特開2011−140133(JP,A)
【文献】 特開2007−296830(JP,A)
【文献】 特開平10−887(JP,A)
【文献】 特開2000−168043(JP,A)
【文献】 特開2000−71418(JP,A)
【文献】 特開2010−239101(JP,A)
【文献】 特開平6−47895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/40
B41F 17/34
B41J 2/01
B41M 5/00
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写媒体に塗布したインクを印刷対象物に転写する印刷方法であって、
紫外線硬化性樹脂を含むインクを転写媒体に塗布し、上記転写媒体に画像層を形成する第1塗布工程と、
紫外線を上記画像層に照射することで、上記画像層を増粘する第1硬化工程と、
上記第1硬化工程の後に、上記画像層上の少なくとも一部に紫外線硬化樹脂を含む接着剤を塗布し、上記画像層上に接着層を形成する第2塗布工程と、
上記接着層及び上記画像層が形成された上記転写媒体に紫外線を照射することで、接着性を失わない程度に上記接着層を増粘し、且つ、上記画像層を硬化する第2硬化工程と、
上記第2硬化工程の後に、上記接着層を上記印刷対象物に接着させて、上記画像層を上記印刷対象物に転写する転写工程と、
上記印刷対象物に接着した上記接着層に紫外線を照射することで、上記接着層をさらに硬化する第3硬化工程とを含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
上記第3硬化工程は、上記転写工程にて、上記接着層を上記印刷対象物に接着させながら行われることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
上記転写媒体が紫外線に対して透過性を有しており、
上記第3硬化工程は、上記画像層が形成されている上記転写媒体の面の反対側から上記転写媒体及び上記画像層を介して、紫外線を上記接着層に照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷方法。
【請求項4】
上記印刷対象物が紫外線に対して透過性を有しており、
上記第3硬化工程は、上記接着層に接着している上記印刷対象物の面の反対側から上記印刷対象物を介して、紫外線を上記接着層に照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷方法。
【請求項5】
上記転写媒体は弾性を有するシートであり、
上記転写工程は、上記第2硬化工程後の上記転写媒体を排気口のついた筐体に入れるか、又は、当該筐体が上記排気口以外の開口部を有しているときは当該開口部に上記転写媒体を設置することで当該開口部を覆い、上記筐体内には印刷対象物を予め入れておき、上記排気口から上記筐体内の空気を吸引して上記筐体内を減圧することで、上記転写媒体を上記印刷対象物に密着させて、転写を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の印刷方法。
【請求項6】
上記転写媒体は弾性を有するシートであり、
上記転写工程は、上記画像層が形成されている上記転写媒体の面の反対側からパッドで上記転写媒体を押圧することで、上記転写媒体を上記印刷対象物に密着させて、転写を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の印刷方法。
【請求項7】
上記第1硬化工程において、上記画像層は、完全には硬化していないことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の印刷方法。
【請求項8】
上記接着層は、白インク及び銀色のインクのうち少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項9】
転写媒体に塗布したインクを印刷対象物に転写する印刷装置であって、
紫外線硬化性樹脂を含むインクを転写媒体に塗布し、上記転写媒体に画像層を形成する第1塗布手段と、
紫外線を上記画像層に照射することで、上記画像層を増粘する第1紫外線照射手段と、
上記画像層の上の少なくとも一部に紫外線硬化樹脂を含む接着剤を塗布し、上記画像層上に接着層を形成する第2塗布手段と、
上記接着層及び上記画像層が形成された上記転写媒体に紫外線を照射することで、接着性を失わない程度に上記接着層を増粘し、且つ、上記画像層を硬化する第2紫外線照射手段と、
上記印刷対象物に接着させることで、上記画像層を上記印刷対象物に転写する転写手段と、
上記印刷対象物に接着した上記接着層に紫外線を照射することで、上記接着層を硬化する第3紫外線照射手段とを備えることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式によるオフセット印刷方法を記載した文献として、特許文献1がある。特許文献1には、UVインキを使用したインクジェットにより平面原板にUVインキ画像を印刷する第1工程と、UVインキ画像を印刷しながら、または印刷直後にUV又は電子ビームによる照射を行いUVインキ画像を半乾燥状態とする第2工程と、該半乾燥状態のUVインキ画像を弾性ブランケット表面に写しとる第3工程と、該弾性ブランケットに写しとった前記UVインキ画像を被印刷体にオフセット印刷する第4工程と、オフセット印刷されたUVインキ画像を乾燥定着する工程とを有する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−130725号公報(2006年5月25日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、平面原板から弾性ブランケットへの印刷画像の転写、及び該弾性ブランケットから被印刷体への印刷画像の転写が必要であった。そのため、転写を計2回行う必要があり、かつ転写ごとに平面原板及び弾性ブランケットの清掃を行う必要があり、煩雑である。
【0005】
さらに、特許文献1の技術では、転写回数が多くなるため、転写のための圧着を行う際に印刷画像が乱れ、劣化するという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易に高画質の印刷画像を得ることができる印刷方法及び印刷装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る印刷方法は、転写媒体に塗布したインクを印刷対象物に転写する印刷方法であって、紫外線硬化性樹脂を含むインクを転写媒体に塗布し、上記転写媒体に画像層を形成する第1塗布工程と、紫外線を上記画像層に照射することで、上記画像層を増粘する第1硬化工程と、上記第1硬化工程の後に、上記画像層上の少なくとも一部に紫外線硬化樹脂を含む接着剤を塗布し、上記画像層上に接着層を形成する第2塗布工程と、上記接着層及び上記画像層が形成された上記転写媒体に紫外線を照射することで、接着性を失わない程度に上記接着層を増粘し、且つ、上記画像層を硬化する第2硬化工程と、上記第2硬化工程の後に、上記接着層を上記印刷対象物に接着させて、上記画像層を上記印刷対象物に転写する転写工程と、上記印刷対象物に接着した上記接着層に紫外線を照射することで、上記接着層をさらに硬化する第3硬化工程とを含むことを特徴としている。
【0008】
本発明に係る印刷方法では、転写媒体に形成した画像層上に接着層を形成しているため、一回の転写工程により画像層を印刷対象物に転写することができる。そのため、転写のための圧着を行う際の印刷画像の乱れ及び劣化を防止することができる。
【0009】
さらに、第1硬化工程において、画像層を硬化するため、転写のための圧着を行う際に、画質が悪化することなく、高画質な印刷画像を得ることができる。
【0010】
よって、簡易に高画質の印刷画像を得ることができる。
【0011】
本発明に係る印刷方法では、上記第3硬化工程は、上記転写工程にて、上記接着層を上記印刷対象物に接着させながら行われることが好ましい。
【0012】
接着層を印刷対象物に接着させながら、接着層に紫外線を照射することで接着層の硬化を行う。そのため、転写工程の後に、接着層の硬化を行うよりも印刷時間を短縮することができる。
【0013】
本発明に係る印刷方法は、上記転写媒体が紫外線に対して透過性を有しており、上記第3硬化工程は、上記画像層が形成されている上記転写媒体の面の反対側から上記転写媒体及び上記画像層を介して、紫外線を上記接着層に照射することが好ましい。
【0014】
画像層が形成されている転写媒体の面の反対側から照射された紫外線は、転写媒体を透過し、接着層に照射される。そのため、接着層を印刷対象物に接着させながら紫外線を接着層に照射することができる。また、第3硬化工程にて、接着層をさらに硬化した後で転写媒体と印刷対象物とを離間することができるため、転写媒体を剥離する際に画像層が乱れず、高画質の画像が転写された印刷対象物を得ることができる。
【0015】
本発明に係る印刷方法は、上記印刷対象物が紫外線に対して透過性を有しており、上記第3硬化工程は、上記接着層に接着している上記印刷対象物の面の反対側から上記印刷対象物を介して、紫外線を上記接着層に照射することが好ましい。
【0016】
接着層に接着している印刷対象物の面の反対側から照射された紫外線は、印刷対象物を透過し、接着層に照射される。そのため、接着層を印刷対象物に接着させながら紫外線を接着層に照射することができる。また、第3硬化工程にて、接着層をさらに硬化した後で転写媒体と印刷対象物とを離間することができるため、転写媒体を剥離する際に画像層が乱れず、高画質の画像が転写された印刷対象物を得ることができる。
【0017】
本発明に係る印刷方法では、上記転写媒体は弾性を有するシートであり、上記転写工程は、上記第2硬化工程後の上記転写媒体を排気口のついた筐体に入れるか、又は、当該筐体が上記排気口以外の開口部を有しているときは当該開口部に上記転写媒体を設置することで当該開口部を覆い、上記筐体内には印刷対象物を予め入れておき、上記排気口から上記筐体内の空気を吸引して上記筐体内を減圧することで、上記転写媒体を上記印刷対象物に密着させて、転写を行うことが好ましい。
【0018】
転写媒体は弾性を有するため、様々な形状の印刷対象物に画像層を転写することができる。また、転写率を制御しやすく、凹凸の大きい、又は大面積の印刷対象物への転写を容易に行うことができる。これは、大気圧の利用により圧力が均一にかかり易くなるためである。
【0019】
本発明に係る印刷方法は、上記転写媒体は弾性を有するシートであり、上記転写工程は、上記画像層が形成されている上記転写媒体の面の反対側からパッドで上記転写媒体を押圧することで、上記転写媒体を上記印刷対象物に密着させて、転写を行うことが好ましい。
【0020】
転写媒体は弾性を有するため、様々な形状の印刷対象物に画像層を転写することができる。また、パッドで転写媒体を押えることで、より効率的に印刷対象物に画像層を転写することができる。
【0021】
本発明に係る印刷方法は、上記第1硬化工程において、上記画像層は、完全には硬化していないことが好ましい。
【0022】
第1硬化工程において、画像層を完全に硬化した場合には、画像層と接着層との密着が不十分になり、接着不良が生じるおそれがある。そのため、画像層を印刷対象物に転写する際に、画像層の乱れが生じる、又は、接着層から画像層が剥離し、画像層を印刷対象物に転写できないおそれがある。
【0023】
一方、第1硬化工程において、画像層を完全に硬化していない場合には、画像層と接着層との密着強度が上がり、両者は十分に接着する。そのため、画像層を印刷対象物に転写する際に、接着層から画像層が剥離することを防止でき、かつ、画像層の乱れが生じず、印刷対象物に画像層を良好に転写することができる。
【0024】
本発明に係る印刷方法では、上記接着層は、白インク及び銀色のインクのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0025】
接着層が上記インクを含むことによって、接着層を画像層の背景層としても利用できる。さらに、背景層及び画像層の2層を印刷対象物に転写することで、印刷対象物の色に関係なく、背景層としての働きにより鮮明な画像が得られる。
【0026】
本発明に係る印刷装置は、転写媒体に塗布したインクを印刷対象物に転写する印刷装置であって、紫外線硬化性樹脂を含むインクを転写媒体に塗布し、上記転写媒体に画像層を形成する第1塗布手段と、紫外線を上記画像層に照射することで、上記画像層を増粘する第1紫外線照射手段と、上記画像層の上の少なくとも一部に紫外線硬化樹脂を含む接着剤を塗布し、上記画像層上に接着層を形成する第2塗布手段と、上記接着層及び上記画像層が形成された上記転写媒体に紫外線を照射することで、接着性を失わない程度に上記接着層を増粘し、且つ、上記画像層を硬化する第2紫外線照射手段と、上記印刷対象物に接着させることで、上記画像層を上記印刷対象物に転写する転写手段と、上記印刷対象物に接着した上記接着層に紫外線を照射することで、上記接着層を硬化する第3紫外線照射手段とを備えることを特徴としている。
【0027】
本発明に係る印刷装置では、第2塗布手段が転写媒体に形成した画像層上に接着層を形成するため、一回の転写により画像層を印刷対象物に転写することができる。そのため、転写手段が転写のための圧着を行う際に、印刷画像の乱れ及び劣化を防止することができる。
【0028】
さらに、第1紫外線照射手段が画像層を硬化するため、転写のための圧着を行う際に、画質が悪化することなく、高画質な印刷画像を得ることができる。
【0029】
よって、簡易に高画質の印刷画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る印刷方法及び印刷装置は、簡易に高画質の印刷画像を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷方法を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る紫外線の照射方法を模式的に示す図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る印刷方法を模式的に示す図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る紫外線の照射方法を模式的に示す図である。
図5】本発明の他の実施形態の変形例に係る紫外線の照射方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0033】
〔第1実施形態〕
<印刷方法>
本発明に係る印刷方法は、転写媒体に塗布したインクを印刷対象物に転写する印刷方法であって、紫外線硬化性樹脂を含むインクを転写媒体に塗布し、上記転写媒体に画像層を形成する第1塗布工程と、紫外線を上記画像層に照射することで、上記画像層を硬化する第1硬化工程と、上記第1硬化工程の後に、上記画像層上の少なくとも一部に紫外線硬化樹脂を含む接着剤を塗布し、上記画像層上に接着層を形成する第2塗布工程と、紫外線を上記接着層に照射することで、接着性を失わない程度に上記接着層を硬化する第2硬化工程と、上記第2硬化工程の後に、上記接着層を上記印刷対象物に接着させて、上記画像層を上記印刷対象物に転写する転写工程と、上記印刷対象物に接着した上記接着層に紫外線を照射することで、上記接着層をさらに硬化する第3硬化工程とを含む。以下、図1及び図2を用いて、本発明に係る印刷方法の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷方法を模式的に示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係る紫外線の照射方法を模式的に示す図である。
【0034】
(転写媒体1)
図1に示すように、本実施形態に係る転写媒体1は、塗布されたインクを印刷対象物5に転写するためのシート状の弾性部材である。
【0035】
本発明に用いる転写媒体を形成する材料としては、例えば、シリコンゴムが挙げられる。また、シリコンゴム以外にも、フッ素ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、ネオプレンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等のゴム、エラストマー樹脂の単体又はこれらを組み合わせた複合材料等が目的に合わせて選択できる。
【0036】
また、転写媒体を使い捨てにする場合には、ゴムのように圧力を取り除いたときに原型に復帰する材料でなく、形状が復帰しない材料であってもよい。形状が復帰しない材料としては、例えばラミネートフィルム等の熱可塑性を示す結晶性又は非結晶性の薄い樹脂フィルムが挙げられる。
【0037】
転写媒体の硬度及び厚さは、後述する印刷対象物の形状により適宜変更してもよい。印刷対象物の形状がより複雑な形状である場合には、硬度が低く、薄い転写媒体を選択することが好ましい。印刷対象物が平板状である場合には、転写媒体は、シート状ではなく、ゴム板状のものであってもよい。
【0038】
(印刷対象物5)
図1の(d)及び(e)に示すように、印刷対象物5は、接着層4を介して画像層2と接着することで画像層2が転写されるものである。本実施形態では印刷対象物5は球状であるが、本発明に係る印刷方法にて用いられる印刷対象物の形状はこれに限定されず、様々な形状の印刷対象物に対して印刷することができる。
【0039】
(画像層2)
図1の(a)に示すように、画像層2は、インクジェットヘッド20から転写媒体1に紫外線硬化樹脂を含むインクを塗布することで形成される層である。転写媒体1に形成さ
れた画像層2は、最終的には印刷対象物5に転写される。
【0040】
紫外線硬化樹脂を含むインクとしては、例えば、紫外線硬化樹脂及び溶剤を含むインクが挙げられる。
【0041】
また、紫外線硬化樹脂としては、例えば、カチオン重合型樹脂、ラジカル重合型樹脂又はこれらの混合物が挙げられる。紫外線硬化樹脂の粘度としては、目的に応じた粘度のものを使用すればよい。例えば、低粘度のモノマーやオリゴマーだけでなく高粘度のものでもよい。具体的には30〜100,000mPa・sec、好ましくは100〜2,000mPa・secである。
【0042】
インクの粘度としては、目的に応じた粘度のものを使用すればよく、硬化前の状態で、25℃において、3mPa・sec以上、20mPa・sec以下であるものがより好ましい。インクジェットヘッド等の塗布手段からの吐出を容易にするためである。
【0043】
溶剤の種類としては、紫外線硬化樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、γ‐ブチロラクトン、シクロヘキサノンよりなる群から選ばれる少なくとも一つが挙げられる。
【0044】
(接着層4)
図1の(b)に示すように、接着層4は、接着剤を画像層2の上に塗布することによって形成される。また、接着層4は、印刷対象物5に接着することにより画像層2を印刷対象物5に転写するための層である。
【0045】
接着剤は、紫外線硬化樹脂を含んでおり、当該紫外線硬化樹脂はとしては、例えば、カチオン重合型樹脂、ラジカル重合型樹脂又はこれらの混合物が挙げられる。また、接着剤に含まれる紫外線硬化樹脂は、上記インクに含まれる紫外線硬化樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
接着剤の粘度としては、目的に応じた粘度のものを使用すればよく、硬化前の状態で、25℃において、2mPa・sec以上、50mPa・sec以下であるものがより好ましい。インクジェットヘッド等の塗布手段からの吐出を容易にするためである。
【0047】
また、接着剤は溶剤を含んでいてもよく、当該溶剤としては、例えば、上記インクに含まれる溶剤と同様の溶剤が挙げられる。
【0048】
また、接着層は、画像層とは別画像となるカラーインク又はクリアインクを含んでいてもよく、また、白インク及び銀色のインクのうち少なくとも一方を含んでいてもよい。接着層が上記インクを含むことによって、接着層を画像層の背景層としても利用できる。さらに、背景層及び画像層の2層を印刷対象物に転写することで、印刷対象物の色に関係なく、背景層としての働きによって鮮明な画像層が得られる。また、接着層を印刷対象物の下地とすることによって、画像層の下地を別途形成する必要はない。
【0049】
[第1塗布工程]
まず、図1の(a)に示すように、ホルダー3によって両端が支持されている転写媒体1に、インクジェットヘッド(第1塗布手段)20からインクを塗布し、転写媒体1に画像層2を形成する。
【0050】
ホルダー3は、転写媒体1の両端を支持するものである。ホルダー3は、転写媒体1の
形状を平面上に保ち、かつ、印刷対象物5に転写する際の操作性を向上させるために設けられている。
【0051】
インクジェットヘッド20は、転写媒体1と対面した面に形成されているノズルから紫外線硬化樹脂を含むインクを吐出することで転写媒体1に当該インクを塗布して、転写媒体1に画像層2を形成するためのものである。また、インクジェットヘッド20は、矢印X方向に走査しつつノズルから転写媒体1にインクを吐出する。
【0052】
なお、転写媒体1に画像層2を形成する前に、コーティング剤を転写媒体1に塗布し、コーティング層を形成し、当該コーティング層の上に画像層2を形成してもよい。これにより、印刷対象物5に転写された画像層2をコーティングすることができる。
【0053】
[第1硬化工程]
図1の(a)に示すように、インクジェットヘッド20を用いて転写媒体1に画像層2を形成しながら、紫外線照射装置(第1紫外線照射手段)21から紫外線を画像層2に照射する。紫外線照射装置21は、インクジェットヘッド20に隣接して設けられており、矢印X方向に走査しつつ、紫外線(以下、「UV」とも称する。)を画像層2に照射する。紫外線が照射されることによって、画像層2に含まれる紫外線硬化樹脂は硬化し、画像層2も硬化する。
【0054】
紫外線照射装置21としては、例えば、UV−LEDランプ、メタルハライドランプ、ブラックライト、殺菌灯、キセノンランプ等及びこれらを組み合わせたものが挙げられる。紫外線の波長としては、例えば350nm以上、410nm以下の波長が挙げられる。
【0055】
本工程においては、下記の転写工程にて画像層2が滲まない程度に、画像層2が硬化されていればよいが、画像層2は完全には硬化していないことが好ましい。画像層2を完全に硬化した場合には、画像層2と接着層4との密着が不十分になり、接着不良が生じるおそれがあるが、画像層2を完全には硬化していない場合には、画像層2と接着層4との密着強度が上がり、両者は十分に接着する。よって、画像層2を印刷対象物5に転写する際に、接着層4から画像層2が剥離することを防止でき、かつ、画像層2の乱れが生じず、印刷対象物5に画像層2を良好に転写することができる。
【0056】
また、本工程にて、画像層2を完全には硬化していない場合であっても、下記の第2硬化工程及び第3硬化工程にて、接着層を硬化する際に、画像層2は完全に硬化される。
【0057】
また、本発明に係る印刷方法に含まれる第1硬化工程において、画像層を硬化した場合のインクの粘度は、100mPa・sec以上、20,000mPa・sec以下まで増粘することが好ましい。上記範囲まで画像層を形成するインクを増粘させることで、画像層を印刷対象物に転写する際に、画像層が滲むことを防止できる。また、画像層を印刷対象物に転写する際に、画像層の乱れが生じずに印刷対象物に画像層を良好に転写することができる。
【0058】
上記のようにインクを転写媒体1に塗布し、転写媒体1に画像層2を形成しながら、第1硬化工程にて、画像層2の硬化を行ってもよいが、第1塗布工程が全て終了した後に第1硬化工程を行ってもよい。マルチパスにより転写媒体1に画像層2を形成しながら、画像層2の硬化を行った場合には、画像層2の硬化の度合いにばらつきが生じるおそれがある。一方、第1塗布工程が全て終了した後に第1硬化工程を行うことで、画像層2をより均一に硬化させることができる。
【0059】
また、転写媒体1が紫外線に対して透過性を有している場合には、図2に示すように、
紫外線照射装置21を矢印Y方向に走査させつつ、画像層2が形成されている転写媒体1の面の反対側から転写媒体1を介して、紫外線を画像層2に照射してもよい。この場合、インクを転写媒体1に塗布することで、転写媒体1に画像層2を形成しながら、第1硬化工程にて、画像層2の硬化を行うことができる。なお、インクジェットヘッド20に紫外線照射装置21から照射される紫外線が当たって、インクジェットヘッド20から吐出されるインクが、転写媒体1に塗布される前に硬化することを防ぐ必要がある。そのため、図2に示すように、紫外線照射装置21は、インクジェットヘッド20に対して紫外線を照射しない位置にて、転写媒体1上の画像層2に紫外線を照射することがより好ましい。
【0060】
[第2塗布工程]
次に、図1の(b)に示すように、インクジェットヘッド(第2塗布手段)24を用いて画像層2の上に接着剤を塗布し、画像層2の上に接着層4を形成する。
【0061】
インクジェットヘッド24は、転写媒体1と対面した面に形成されているノズルから紫外線硬化樹脂を含む接着剤を吐出することで画像層2の上に当該接着剤を塗布して、画像層2の上に接着層4を形成するためのものである。また、インクジェットヘッド24は、矢印X方向に走査しつつノズルから画像層2の上に接着剤を吐出する。
【0062】
接着剤は、インクジェットヘッド等の塗布手段から画像層2上に塗布される。なお、接着剤は画像層2上の全体に塗布する必要はなく、画像層2を印刷対象物5に転写することが可能であれば、画像層2上の一部への塗布であってもよい。
【0063】
[第2硬化工程]
図1の(b)に示すように、インクジェットヘッド24を用いて画像層2の上に接着層4を形成しながら、紫外線照射装置(第2紫外線照射手段)25から紫外線を接着層4に照射することで、接着性を失わない程度に接着層4を硬化する。紫外線照射装置25は、インクジェットヘッド24に隣接して設けられており、矢印X方向に走査しつつ、紫外線を接着層4に照射する。紫外線が照射されることによって、接着層4に含まれる紫外線硬化樹脂は硬化し、接着層4も硬化する。
【0064】
本発明に係る印刷方法に含まれる第2硬化工程により、接着性を失わない程度に接着層を硬化した場合の接着剤の粘度は、100mPa・sec以上、20,000mPa・sec以下まで増粘することが好ましい。なお、「接着性を失わない程度に」とは、第2硬化工程の後の接着層に、少しでも接着性が残っていればよい。具体的には、画像層が印刷対象物に接着する程度に接着性が残っていればよく、残すべき接着性(接着強度)については特に限定されない。
【0065】
また、接着剤を画像層2上に塗布し、画像層2上に接着層4を形成しながら、第2硬化工程にて、接着層4の硬化を行ってもよいが、第2塗布工程が全て終了した後に第2硬化工程を行ってもよい。
【0066】
また、転写媒体1が紫外線に対して透過性を有している場合には、接着層4が形成されている転写媒体1の面の反対側から転写媒体1及び画像層2を介して、紫外線を接着層4に照射してもよい。この場合、接着剤を画像層2上に塗布し、画像層2上に接着層4を形成しながら、第2硬化工程にて、接着層4の硬化を行うことができる。
【0067】
[転写工程]
次に、図1の(c)に示すように、真空チャンバ(筐体、転写手段)22内に印刷対象物5を設置する。また、画像層2及び接着層4が真空チャンバ22内に位置するように転写媒体1を設置し、転写媒体1の両端に取り付けられたホルダー3と真空チャンバ22と
を接続することで真空チャンバ22の開口部を転写媒体1で覆う。
【0068】
真空チャンバ22は空気を出し入れするための排気口23を備えており、排気口23から空気を出し入れすることにより、真空チャンバ22内の圧力を調整することができる。
【0069】
次に、図1の(d)に示すように、排気口23から真空チャンバ22内の空気を吸引して真空チャンバ22内を減圧することで、弾性を有するシートである転写媒体1は撓む。一方、印刷対象物5は、矢印Aの方向に移動し、接着層4を介して転写媒体1が印刷対象物5と密着する。よって、画像層2を印刷対象物5に転写することができる。
【0070】
このとき、転写媒体1は弾性を有するシート状部材であるため、印刷対象物5の形状に応じて変形する。したがって、上記のような筐体を用いることで様々な形状の印刷対象物に画像層を転写することができる。また、大気圧の利用により圧力が均一にかかり易くなるため、転写率を制御しやすく、凹凸の大きい、又は大面積の印刷対象物への転写を容易に行うことができる。
【0071】
また、筐体の開口部に転写媒体を設置することで当該開口部を覆うのではなく、転写媒体を排気口のついた筐体に入れた状態で、画像層を印刷対象物に転写してもよい。
【0072】
[第3硬化工程]
図1の(d)に示すように、接着層4を印刷対象物5に接着させながら接着層4に紫外線照射装置(第3紫外線照射手段)26から紫外線を照射することで、接着層4をさらに硬化する。また、転写媒体1が紫外線に対して透過性を有している場合には、画像層2が形成されている転写媒体1の面の反対側から転写媒体1及び画像層2を介して、紫外線照射装置26から紫外線を接着層4に照射することができる。
【0073】
このとき、転写媒体1と印刷対象物5とを離間することなく、紫外線を接着層4に照射することができる。よって、接着層4をさらに硬化した後で画像層2を転写媒体1から剥離することができ、画像層2が乱れず、高画質の画像が転写された印刷対象物5を得ることができる。
【0074】
本発明に係る印刷方法に含まれる第3硬化工程により、接着層をさらに硬化し、接着層が完全に硬化したときに、第3硬化工程は終了する。
【0075】
転写工程の後に、第三硬化工程にて接着層の硬化を行ってもよいが、本実施形態のように、接着層4を印刷対象物5に接着させながら、接着層4に紫外線を照射することで、印刷時間をより短縮することができる。
【0076】
転写工程の終了後に、画像層2を転写媒体1から剥離する。図1の(e)に示すように、画像層2が転写された印刷対象物5を得ることができる。
【0077】
なお、インクに含まれる溶剤を蒸散させるために上記各工程にて適宜、ヒータを併用してもよい。転写工程は室温でも行うことが可能であるが、転写条件を安定させるためにヒータを用いて、接着層等を一定温度に加熱してもよい。
【0078】
本発明に係る印刷方法において、転写媒体が紫外線に対して透過性を有していない場合には、転写工程の終了後に、画像層を転写媒体から剥離し、第3硬化工程にて、接着層をさらに硬化すればよい。
【0079】
本実施形態においては、第1硬化工程、第2硬化工程及び第3硬化工程にて、紫外線照
射装置21、紫外線照射装置25及び紫外線照射装置26をそれぞれ用いているが、各工程において共通の紫外線照射装置を用いてもよい。
【0080】
従来技術では、計2回の転写が必要であったが、本発明に係る印刷方法では、転写媒体に形成した画像層上に接着層を形成しているため、一回の転写工程により画像層を印刷対象物に転写することができる。そのため、転写のための圧着を行う際の印刷画像の乱れ及び劣化を防止することができる。
【0081】
さらに、第1硬化工程において、画像層を硬化するため、転写のための圧着を行う際に、画質が悪化することなく、高画質な印刷画像を得ることができる。
【0082】
よって、簡易に高画質の印刷画像を得ることができる。
【0083】
<印刷装置>
本発明に係る印刷装置は、インクを転写媒体に塗布することで画像層を転写媒体に描画し、当該画像層を印刷対象物に転写するための装置である。また、本発明に係る印刷装置は、第1塗布手段と、第1紫外線照射手段と、第2塗布手段と、第2紫外線照射手段と、転写手段と、第3紫外線照射手段とを備えている。
【0084】
以下、本発明に係る印刷装置の各構成の一実施形態について説明する。なお、印刷装置の各構成の一実施形態は、上述した本発明に係る印刷方法の各工程を実施するために用いられ得る。したがって、本発明に係る印刷装置の一実施形態は、上述した印刷方法の説明に準じるものであるため、その詳細な説明を省略する。
【0085】
[第1塗布手段]
第1塗布手段としては、インクを転写媒体に塗布することで所望の画像層を転写媒体に形成することができるものであれば限定されず、例えば、インクジェットヘッド等が挙げられる。上述のインクジェットヘッド20が第1塗布手段に相当する。
【0086】
[第1紫外線照射手段]
第1紫外線照射手段は、第1塗布手段が形成する画像層に紫外線を照射し、当該画像層を硬化するものである。第1紫外線照射手段としては、例えば、UV−LEDランプ、メタルハライドランプ、ブラックライト、殺菌灯、キセノンランプ等及びこれらを組み合わせたものが挙げられる。紫外線の波長としては、例えば350nm以上、410nm以下の波長が挙げられる。上述の紫外線照射装置21が第1紫外線照射手段に相当する。
【0087】
[第2塗布手段]
第2塗布手段としては、第1紫外線照射手段により硬化した画像層の上に紫外線硬化樹脂を含む接着剤を塗布し、当該画像層上に接着層を形成することができれば限定されず、例えば、インクジェットヘッド等が挙げられる。上述のインクジェットヘッド24が第2塗布手段に相当する。
【0088】
[第2紫外線照射手段]
第2紫外線照射手段は、第2塗布手段が形成する接着層に紫外線を照射し、接着性を失わない程度に当該接着層を硬化するものである。第2紫外線照射手段としては、第1紫外線照射手段と同様の構成をとることができる。上述の紫外線照射装置25が第2紫外線照射手段に相当する。接着性を失わない程度に接着層を硬化させるために、紫外線の照射強度を弱く調節できるものであることが好ましい。
【0089】
[転写手段]
転写手段は、転写媒体上に形成された接着層を印刷対象物に接着させることで、画像層を当該印刷対象物に転写するものである。転写手段としては、例えば、転写媒体及び印刷対象物を入れる排気口のついた筐体が挙げられる。当該筐体は、排気口以外に転写媒体を設置することで覆われる開口部を有していてもよい。例えば、上述の真空チャンバ22が転写手段に相当する。また、他の転写手段としては、下記の第二実施形態にて詳述する、転写媒体を押圧し、印刷対象物に密着させるパッド等が挙げられる。例えば、後述のパッド32も転写手段に相当する。
【0090】
[第3紫外線照射手段]
第3紫外線照射手段は、印刷対象物に接着した接着層に紫外線を照射することで、当該接着層を硬化するものである。第3紫外線照射手段としては、第1紫外線照射手段と同様の構成をとることができる。上述の紫外線照射装置26が第3紫外線照射手段に相当する。
【0091】
なお、第1紫外線照射手段、第2紫外線照射手段及び第3紫外線照射手段は、同じものであってもよく、それぞれ異なるものであってもよい。また、第1紫外線照射手段は第1塗布手段に備えられていてもよく、第2紫外線照射手段は第2塗布手段に備えられていてもよい。
【0092】
また、本発明に係る印刷装置は、インクに含まれる溶剤を蒸散させるためにヒータ等の加熱手段をさらに備えていてもよい。加熱手段としては、例えば、セラミックヒータ、タングステンヒータ、シーズ線ヒータ、遠赤外線ヒータ、IHヒータ、温風ヒータ及びこれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0093】
本発明に係る印刷装置では、一回の転写により画像層を印刷対象物に転写することができ、画質が悪化することなく、高画質の印刷画像を得ることができる。
【0094】
〔第2実施形態〕
<印刷方法>
次に、第2実施形態に係る、転写媒体に塗布したインクを印刷対象物に転写する印刷方法について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、本発明の他の実施形態に係る印刷方法を模式的に示す図である。図4は、本発明の他の実施形態に係る紫外線の照射方法を模式的に示す図である。
【0095】
第2実施形態に係る印刷方法は、転写工程にて真空チャンバ22ではなくパッド32を用いて、画像層12を印刷対象物15に転写するという点で第1実施形態に係る印刷方法と異なる。なお、本実施形態に係る印刷方法は第1塗布工程から第2硬化工程までは第1実施形態に係る印刷方法と同様であるため、その説明を省略し、第1実施形態に係る印刷方法と共通する事項についてもその説明を省略する。また、本実施形態に記載の転写媒体11、画像層12、ホルダー13、接着層14、印刷対象物15、紫外線照射装置31は、第1実施形態に記載の転写媒体1、画像層2、ホルダー3、接着層4、印刷対象物5及び紫外線照射装置26にそれぞれ対応するため、その説明を省略する。
【0096】
[転写工程]
図3の(a)に示すように、転写媒体11を印刷対象物15とパッド(転写手段)32との間に設置する。
【0097】
次に、図3の(b)に示すように、画像層12が形成されている転写媒体11の面の反対側からパッド32で転写媒体11を押圧することで、転写媒体11を印刷対象物15に密着させて、画像層12を印刷対象物15に転写する。
【0098】
転写媒体1は弾性を有するシート状の部材であるため、様々な形状の印刷対象物15に画像層12を転写することができる。また、パッド32で転写媒体11を押えることで、より効率的に印刷対象物15に画像層12を転写することができる。
【0099】
また、パッドの材質としては、弾性のあるものが好ましく、押圧する転写媒体に圧力を均一に与えるものであることがより好ましく、例えば、柔らかいゴム、硬いゴム、スポンジ、袋に液体、粉体、気体を入れた物であってもよい。これにより、様々な形状の印刷対象物に画像層を転写することができる。
【0100】
[第3硬化工程]
また、図3の(b)に示すように、接着層14を印刷対象物15に接着させながら接着層14に紫外線を照射することで、接着層14をさらに硬化する。また、印刷対象物15が紫外線に対して透過性を有している場合には、接着層14に接着している印刷対象物15の面の反対側から印刷対象物15を介して、紫外線照射装置31から紫外線を接着層14に照射することができる。
【0101】
このとき、転写媒体11と印刷対象物15とを離間することなく、紫外線を接着層14に照射することができる。よって、接着層14をさらに硬化した後で画像層12を転写媒体11から剥離することができ、画像層12が乱れず、高画質の画像が転写された印刷対象物15を得ることができる。
【0102】
紫外線に対して透過性を有している印刷対象物15としては、透明な樹脂部材等が挙げられる。
【0103】
印刷対象物15が紫外線に対して透過性を有しておらず、転写媒体11が紫外線に対して透過性を有している場合には、図4に示すように、パッド32による押圧を解除した後に、接着層14が形成されている転写媒体11の面の反対側から転写媒体11を介して、紫外線照射装置31から紫外線を接着層14に照射してもよい。
【0104】
(変形例)
以下、第2実施形態の変形例について図5を用いて説明する。図5は、本発明の他の実施形態の変形例に係る紫外線の照射方法を模式的に示す図である。本変形例は、転写媒体11及びパッド32の代わりに、パッド(転写媒体、転写手段)42を用いており、パッド42が転写媒体11の役割も有している点で第2実施形態と異なる。つまり、本変形例は、本発明において転写媒体と転写手段とを一つの部材で構成した形態の一例である。
【0105】
まず、パッド42に直接インクを塗布し、画像層12を形成する。そして、画像層12の上に接着剤を塗布し、接着層14を形成する。なお、第1塗布工程から第2硬化工程までの各工程においては、第2実施形態に記載の転写媒体11をパッド42に読み替えればいいため、詳細な説明は省略している。
【0106】
次に、図5に示すように、画像層12上の接着層14を印刷対象物15に接着させながら、接着層14に紫外線を照射することで、接着層14をさらに硬化する。また、印刷対象物15が紫外線に対して透過性を有している場合には、接着層14に接着している印刷対象物15の面の反対側から印刷対象物15を介して、紫外線照射手段31から紫外線を接着層14に照射することができる。
【0107】
このとき、画像層12が形成されているパッド42の面の反対側からパッド42を矢印A方向に押圧することで、パッド42は印刷対象物15に密着し、画像層12を印刷対象
物15に転写することができる。なお、本変形例に係るパッド42は、上述のパッド32と同様のものであってもよい。
【0108】
本発明に係る印刷方法において、パッド等の転写手段を転写媒体として用いることによって、転写媒体及び転写手段を別々に設ける必要はなく、当該方法を実施する際に用いる部材数を少なくすることができる。
【0109】
本発明に係る印刷方法において、転写媒体及び印刷対象物が紫外線に対して透過性を有していない場合には、転写工程の終了後に、画像層を転写媒体から剥離し、第3硬化工程にて、接着層をさらに硬化させればよい。
【0110】
よって、第1実施形態に係る印刷方法と同様に、簡易に高画質の印刷画像を得ることができる。
【0111】
〔付記事項〕
本発明に係る印刷方法の一実施形態は、転写媒体1に塗布したインクを印刷対象物5に転写する印刷方法であって、紫外線硬化性樹脂を含むインクを転写媒体1に塗布し、転写媒体1に画像層2を形成する第1塗布工程と、紫外線を画像層2に照射することで、画像層2を硬化する第1硬化工程と、上記第1硬化工程の後に、画像層2上の少なくとも一部に紫外線硬化樹脂を含む接着剤を塗布し、画像層2上に接着層4を形成する第2塗布工程と、紫外線を接着層4に照射することで、接着性を失わない程度に接着層4を硬化する第2硬化工程と、上記第2硬化工程の後に、接着層4を印刷対象物5に接着させて、画像層2を印刷対象物5に転写する転写工程と、印刷対象物5に接着した接着層4に紫外線を照射することで、接着層4をさらに硬化する第3硬化工程とを含む。
【0112】
転写媒体1に形成した画像層2上に接着層4を形成しているため、一回の転写工程により画像層2を印刷対象物5に転写することができる。そのため、転写のための圧着を行う際の印刷画像の乱れ及び劣化を防止することができる。
【0113】
さらに、第1硬化工程において、画像層2を硬化するため、転写のための圧着を行う際に、画質が悪化することなく、高画質な印刷画像を得ることができる。
【0114】
よって、簡易に高画質の印刷画像を得ることができる。
【0115】
また、上記第3硬化工程は、上記転写工程にて、接着層4を印刷対象物5に接着させながら行われる。
【0116】
接着層4を印刷対象物5に接着させながら、接着層4に紫外線を照射することで接着層4の硬化を行う。そのため、転写工程の後に、接着層4の硬化を行うよりも印刷時間を短縮することができる。
【0117】
また、転写媒体1が紫外線に対して透過性を有しており、上記第3硬化工程は、画像層2が形成されている転写媒体1の面の反対側から転写媒体1及び画像層2を介して、紫外線を接着層4に照射する。
【0118】
画像層2が形成されている転写媒体1の面の反対側から照射された紫外線は、転写媒体1を透過し、接着層4に照射される。そのため、接着層4を印刷対象物5に接着させながら紫外線を接着層4に照射することができる。また、第3硬化工程にて、接着層4をさらに硬化した後で転写媒体1と印刷対象物5とを離間することができるため、転写媒体1を剥離する際に画像層2が乱れず、高画質の画像が転写された印刷対象物5を得ることがで
きる。
【0119】
また、印刷対象物15が紫外線に対して透過性を有しており、上記第3硬化工程は、接着層14に接着している印刷対象物15の面の反対側から印刷対象物15を介して、紫外線を接着層14に照射する。
【0120】
接着層14に接着している印刷対象物15の面の反対側から照射された紫外線は、印刷対象物15を透過し、接着層14に照射される。そのため、接着層14を印刷対象物15に接着させながら紫外線を接着層14に照射することができる。また、第3硬化工程にて、接着層14をさらに硬化した後で転写媒体11と印刷対象物15とを離間することができるため、転写媒体11を剥離する際に画像層12が乱れず、高画質の画像が転写された印刷対象物15を得ることができる。
【0121】
また、転写媒体1は弾性を有するシートであり、上記転写工程は、上記第2硬化工程後の転写媒体1を排気口23のついた真空チャンバ22に入れるか、又は、真空チャンバ22が排気口23以外の開口部を有しているときは当該開口部に転写媒体1を設置することで当該開口部を覆い、真空チャンバ22内には印刷対象物5を予め入れておき、排気口23から真空チャンバ22内の空気を吸引して真空チャンバ22内を減圧することで、転写媒体1を印刷対象物5に密着させて、転写を行う。
【0122】
転写媒体1は弾性を有するため、様々な形状の印刷対象物5に画像層2を転写することができる。また、転写率を制御しやすく、凹凸の大きい、又は大面積の印刷対象物5への転写を容易に行うことができる。これは、大気圧の利用により圧力が均一にかかり易くなるためである。
【0123】
また、転写媒体11は弾性を有するシートであり、上記転写工程は、画像層12が形成されている転写媒体11の面の反対側からパッド32で転写媒体11を押圧することで、転写媒体11を印刷対象物15に密着させて、転写を行う。
【0124】
転写媒体11は弾性を有するため、様々な形状の印刷対象物15に画像層12を転写することができる。また、パッド32で転写媒体11を押えることで、より効率的に印刷対象物15に画像層12を転写することができる。
【0125】
また、上記第1硬化工程において、画像層2は、完全には硬化していない。
【0126】
第1硬化工程において、画像層2を完全に硬化した場合には、画像層2と接着層4との密着が不十分になり、接着不良が生じるおそれがある。そのため、画像層2を印刷対象物5に転写する際に、画像層2の乱れが生じる、又は、接着層4から画像層2が剥離し、画像層2を印刷対象物5に転写できないおそれがある。
【0127】
一方、第1硬化工程において、画像層2を完全に硬化していない場合には、画像層2と接着層4との密着強度が上がり、両者は十分に接着する。そのため、画像層2を印刷対象物5に転写する際に、接着層4から画像層2が剥離することを防止でき、かつ、画像層2の乱れが生じず、印刷対象物5に画像層2を良好に転写することができる。
【0128】
また、接着層4は、白インク及び銀色のインクのうち少なくとも一方を含む。
【0129】
接着層4が上記インクを含むことによって、接着層4を画像層2の背景層としても利用できる。さらに、背景層及び画像層2の2層を印刷対象物に転写することで、印刷対象物の色に関係なく、背景層としての働きにより鮮明な画像が得られる。
【0130】
本発明に係る印刷装置の一実施形態は、転写媒体1に塗布したインクを印刷対象物5に転写する印刷装置であって、紫外線硬化性樹脂を含むインクを転写媒体1に塗布し、転写媒体1に画像層2を形成するインクジェットヘッド20と、紫外線を画像層2に照射することで、画像層2を硬化する紫外線照射装置21と、画像層2の上の少なくとも一部に紫外線硬化樹脂を含む接着剤を塗布し、画像層2上に接着層4を形成するインクジェットヘッド24と、紫外線を接着層4に照射することで、接着性を失わない程度に接着層4を硬化する紫外線照射装置25と、印刷対象物5に接着させることで、画像層2を印刷対象物5に転写する真空チャンバ22と、印刷対象物5に接着した接着層4に紫外線を照射することで、接着層4を硬化する紫外線照射装置26とを備える。
【0131】
本実施形態に係る印刷装置では、インクジェットヘッド24が転写媒体1に形成した画像層2上に接着層4を形成するため、一回の転写により画像層2を印刷対象物5に転写することができる。そのため、真空チャンバ22が転写のための圧着を行う際に、印刷画像の乱れ及び劣化を防止することができる。
【0132】
さらに、紫外線照射装置21が画像層2を硬化するため、転写のための圧着を行う際に、画質が悪化することなく、高画質な印刷画像を得ることができる。
【0133】
よって、簡易に高画質の印刷画像を得ることができる。
【0134】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、マルチパスプリント等の印刷分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0136】
1、11 転写媒体
2、12 画像層
3、13 ホルダー
4、14 接着層
5、15 印刷対象物
20、24 インクジェットヘッド(第1塗布手段、第2塗布手段)
21、25、26、31 紫外線照射装置(第1紫外線照射手段、第2紫外線照射手段、第3紫外線照射手段)
22 真空チャンバ(筐体、転写手段)
23 排気口
32 パッド(転写手段)
42 パッド(転写媒体、転写手段)
図1
図2
図3
図4
図5