【実施例2】
【0052】
この実験では、耐力パネルの材質、耐力パネルの厚さ、開口部の有無、開口部の形状の違い、四角の開口部の大きさとその四隅に形成した丸孔の大きさとの関係等による耐力とせん断変形量を確認するべく、
図7〜21に示す試験体A〜Pの試験体を作成し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加した時の力と、面内せん断変形量を確認した。なお、各図面(A)中に示した数字は長さを表しており、単にはミリメートルである。また変形角の測定方法は前記実験例1と同じである。
【0053】
〔試験体A〕
図7(A)に示すように、厚さ12mmの構造用合板(日本農林規格:1級)を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径12mm)を有する四角孔(40mm角) である。この試験体を
図7(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図7(B)に、この表をグラフにしたものを
図7(C)に示す。
【0054】
〔試験体B〕
図8(A)に示すように、厚さ12mmの構造用合板(日本農林規格:2級)を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径12mm)を有する四角孔(40mm角) である。この試験体を
図8(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図8(B)に、この表をグラフにしたものを
図8(C)に示す。
【0055】
〔試験体C〕
図9(A)に示すように、厚さ12mmの構造用合板(日本農林規格:1級)を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、丸孔(直径50mm)である。この試験体を
図9(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図9(B)に、この表をグラフにしたものを
図9(C)に示す。
【0056】
〔試験体D〕
図10(A)に示すように、厚さ12mmの構造用合板(日本農林規格:1級)を用いて試験体を作成した。この試験体Dは、その厚さ方向に貫通する開口部は形成されていない。この試験体を
図10(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図10(B)に、この表をグラフにしたものを
図10(C)に示す。
【0057】
〔試験体E〕
図11(A)に示すように、厚さ12mmの構造用合板(日本農林規格:1級)を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、丸孔(直径60mm)である。この試験体を
図11(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図11(B)に、この表をグラフにしたものを
図11(C)に示す。
【0058】
〔試験体F〕
図12(A)に示すように、厚さ12mmの構造用合板(日本農林規格:1級)を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔を形成していない単なる正方形(53mm角)である。この試験体を
図12(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図12(B)に、この表をグラフにしたものを
図12(C)に示す。
【0059】
〔試験体G〕
図13(A)に示すように、厚さ12mmの構造用合板(日本農林規格:1級)を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径12mm)を有する四角孔(50mm角) である。この試験体を
図7(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図13(B)に、この表をグラフにしたものを
図13(C)に示す。
【0060】
〔試験体H〕
図14(A)に示すように、厚さ12mmの構造用合板(日本農林規格:1級)を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径12mm)を有する四角孔(55mm角) である。この試験体を
図14(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図14(B)に、この表をグラフにしたものを
図14(C)に示す。
【0061】
〔試験体I〕
図15(A)に示すように、厚さ15mmの構造用合板(日本農林規格:1級)を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径12mm)を有する四角孔(55mm角) である。この試験体を
図15(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図15(B)に、この表をグラフにしたものを
図15(C)に示す。
また、この試験体Iについて、繰り返して試験を行った結果を
図30に示す。
【0062】
〔試験体J〕
図16(A)に示すように、厚さ2.3mmのスチール板を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径12mm)を有する四角孔(55mm角) である。この試験体を
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図16(B)に、この表をグラフにしたものを
図16(C)に示す。
【0063】
〔試験体K〕
図17(A)に示すように、厚さ3mmのアルミニウム板を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径12mm)を有する四角孔(55mm角) である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図17(B)に、この表をグラフにしたものを
図17(C)に示す。
【0064】
〔試験体L〕
図18(A)に示すように、厚さ15mmの構造用合板(日本農林規格:1級)を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径24mm)を有する四角孔(55mm角) である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図18(B)に、この表をグラフにしたものを
図18(C)に示す。
【0065】
〔試験体M〕
図19(A)に示すように、厚さ15mmの構造用合板(日本農林規格:1級)を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径6mm)を有する四角孔(55mm角) である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図19(B)に、この表をグラフにしたものを
図19(C)に示す。
【0066】
〔試験体N〕
図20(A)に示すように、厚さ2.3mmのスチール板を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径6mm)を有する四角孔(30mm角) である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図20(B)に、この表をグラフにしたものを
図20(C)に示す。
【0067】
〔試験体O〕
図21(A)に示すように、厚さ2.3mmのスチール板を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径9mm)を有する四角孔(45mm角) である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図21(B)に、この表をグラフにしたものを
図21(C)に示す。
【0068】
〔試験体P〕
図22(A)に示すように、厚さ2.3mmのスチール板を用い、その厚さ方向に貫通する複数の開口部を縦横方向に整列させて形成した。開口部の形状は、四隅に丸孔(直径12mm)を有する四角孔(65mm角) である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図22(B)に、この表をグラフにしたものを
図22(C)に示す。
【0069】
〔試験体Q〕
スチール板を用いて、以下の条件を満たすパネルを形成した。なお開口部のピッチは隣り合う開口部同士の中心間の距離である。
素材 鉄
厚さ 2.3mm
四角孔部分の辺寸法 65mm×65mm(縦×横)
四隅の丸孔部直径 12mm
開口部のピッチ 100 mm (縦横共通)
開口部の形状は、四角孔部分の四隅に円形の丸孔部を形成した形状である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図23(A)に、この表をグラフにしたものを
図23(B)に示す。
【0070】
〔試験体R〕
スチール板を用いて、以下の条件を満たすパネルを形成した。なお開口部のピッチは隣り合う開口部同士の中心間の距離である。
素材 鉄
厚さ 2.3mm
四角孔部分の辺寸法 45mm×45mm(縦×横)
四隅の丸孔部直径 9mm
開口部のピッチ 70 mm (縦横共通)
開口部の形状は、四角孔部分の四隅に円形の丸孔部を形成した形状である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図24(A)に、この表をグラフにしたものを
図24(B)に示す。
【0071】
〔試験体S〕
スチール板を用いて、以下の条件を満たすパネルを形成した。なお開口部のピッチは隣り合う開口部同士の中心間の距離である。
素材 鉄
厚さ 2.3mm
四角孔部分の辺寸法 30mm×30mm(縦×横)
四隅の丸孔部直径 6mm
開口部のピッチ 50 mm (縦横共通)
開口部の形状は、四角孔部分の四隅に円形の丸孔部を形成した形状である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図25(A)に、この表をグラフにしたものを
図25(B)に示す。
【0072】
〔試験体T〕
スチール板を用いて、以下の条件を満たすパネルを形成した。なお開口部のピッチは隣り合う開口部同士の中心間の距離である。
素材 鉄
厚さ 2.3mm
四角孔部分の辺寸法 15mm×15mm(縦×横)
四隅の丸孔部直径 3mm
開口部のピッチ 25 mm (縦横共通)
開口部の形状は、四角孔部分の四隅に円形の丸孔部を形成した形状である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図26(A)に、この表をグラフにしたものを
図26(B)に示す。
【0073】
〔試験体U〕
アルミニウム板を用いて、以下の条件を満たすパネルを形成した。なお開口部のピッチは隣り合う開口部同士の中心間の距離である。
素材 アルミニウム
厚さ 3mm
四角孔部分の辺寸法 55mm×55mm(縦×横)
四隅の丸孔部直径 12mm
開口部のピッチ 100 mm (縦横共通)
開口部の形状は、四角孔部分の四隅に円形の丸孔部を形成した形状である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図27(A)に、この表をグラフにしたものを
図27(B)に示す。
【0074】
〔試験体V〕
アルミニウム板を用いて、以下の条件を満たすパネルを形成した。なお開口部のピッチは隣り合う開口部同士の中心間の距離である。
素材 アルミニウム
厚さ 3mm
四角孔部分の辺寸法 15mm×15mm(縦×横)
四隅の丸孔部直径 3mm
開口部のピッチ 25 mm (縦横共通)
開口部の形状は、四角孔部分の四隅に円形の丸孔部を形成した形状である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図28(A)に、この表をグラフにしたものを
図28(B)に示す。
【0075】
〔試験体W〕
ポリカーボネート板を用いて、以下の条件を満たすパネルを形成した。なお開口部のピッチは隣り合う開口部同士の中心間の距離である。
素材 ポリカーボネート
厚さ 6mm
四角孔部分の辺寸法 30mm×30mm(縦×横)
四隅の丸孔部直径 5mm
開口部のピッチ 50 mm (縦横共通)
開口部の形状は、四角孔部分の四隅に円形の丸孔部を形成した形状である。この試験体を前記
図16(A)に示すように試験機に設置し、桁材に対して、その長さ方向に荷重を付加し、その時の力と、面内せん断変形量を確認した。
結果の表を
図29(A)に、この表をグラフにしたものを
図29(B)に示す。
【0076】
〔考察〕
上記の各試験体についての実験結果から、開口部は四角形の四隅に丸孔を形成した形状であれば、より面内変形能力が高く、耐力の維持能力も高いことを確認することができた。また、スチール板を用いた試験体J,N,O,Pの実験結果から、スチール板などの金属板を用いても本発明の効果を発揮できる耐力パネルとし得ることを確認できた。
一方、単に丸い孔を形成した試験体C及びDでは、変形角1/30付近で面外破壊が発生してしまい、耐力パネルとして十分な効果が得られなかった。
【0077】
更に試験体L〜Pの実験結果から、面内変形量と耐力の維持能力のバランスを考えれば、構造用合板を用いたもの、及びスチール板等の金属板を用いたものの夫々が、以下の関係式を満たすことが望ましいことが確認された。
更に、試験体Iにおける繰り返し試験の結果からも、繰り返して外力を作用させた場合であっても、せん断変形量が1/20まで耐え得る事が確認された。
【0078】
<合板の場合>
今回の実験により最も有効となったものは、以下の試験体であった。
四角孔部分の辺寸法 55mm×55mm(縦×横)
四隅の丸孔部直径 12mm
合板厚 15mm及び12mm
開口部のピッチ 100 mm
そこで、最も安定的変形性状を示した15mm厚として関係式を求めると、
厚さ :T(mm)
四角孔の辺寸法 :L(mm)
四隅の丸孔部直径:R(mm)
開口部のピッチ :A(mm)
とすると以下の関係式(1)〜(3)を満たすことが望ましい。
関係式(1): L=3.7×T
関係式(2): R=0.8×T
関係式(3): A=6.7×T
【0079】
合板には使用する樹種や一般的な薄板積層によるものの他に短冊状のもの使用したOSB合板などもあり、多くのパターンの違いも考慮し、一定の効果も発明の範疇とすると、この関係式(1)〜(3)の下限値として約30%以上、上限値として約300%以下の範囲で有効性があると考察する。
【0080】
そして上記の実験で一定の効果が確認されたのは、四角孔部分の辺寸法が40mmのものであり、これは換算値72%相当となっており、上記の範囲に入っている。
依って、合板を用いた場合には、以下の関係式を満たすことが望ましい。
「L/T」の値が1.11以上で、11.1以下である。
「R/T」の値が0.24以上で、2.4以下である。
「A/T」の値が2.01以上で、20.1以下である。
【0081】
<鋼鈑等金属板の場合>
鋼鈑等金属板は剛性が高く、一般的に無開口では極めて面内せん断変形は小さい。そこで上記の実験では、合板と同じ大きさの開口部からスタートし、開口部を小さくして、その数を増加された試験体で実験したところ、1/50の変形角まで面内せん断変形量の増加がみられた。
【0082】
「鋼板の場合」
試験により最も有効となったものは以下の孔とピッチのバランスであった。
四角孔の辺寸法 L=15 mm×15 mm(縦×横)
開口部のピッチ A=25 mm
四隅の丸孔部直径 R=3 mm
鋼板厚 T=2.3 mm
そこで、最も安定的変形性状を示した鋼板2.3mm厚として関係式を求めると、
厚さ :T(mm)
四角孔の辺寸法 :L(mm)
四隅の丸孔部直径:R(mm)
開口部のピッチ :A(mm)
とすると以下の関係式(4)〜(6)を満たすことが望ましい。
関係式(4): L=6.5×T
関係式(5): R=1.3×T
関係式(6): A=10.9×T
【0083】
鋼板の試験では面外変形の破壊となり、パネルの孔間部分の曲げ破壊となっていない。これは本発明の有効性の確認はできたものの、孔とピッチの関係を最適に設定する必要があることを意味する。そして試験したパネルでは、少なからず一定の効果はあったことから、関係式(4)〜(6)の下限値・上限値に関しては広い範囲に存在する事がわかった。
【0084】
そして上記の鋼板(2.3 mm)の試験で一番低いものであったが、一定の効果が確認されたのは、以下の鋼板であり、それぞれの換算率は、L:433%、R:400%、A:400%となっている。
四角孔の辺寸法 L=65 mm×65 mm(縦×横)
開口部のピッチ A=100 mm
四隅の丸孔部直径 R=12 mm
鋼板厚 T=2.3 mm
よって鋼板を用いた場合には、以下の関係式を満たすことが望ましい。
「L/T」の値が1.3以上で、26以下である。
「R/T」の値が0.26以上で、5.2以下である。
「A/T」の値が2.18以上で、43.6以下である。
【0085】
「アルミ板の場合」
アルミ板(厚さ3.0 mm)の試験で一番低いものであったが、一定の効果が確認されたのは、以下のパネルであった。
四角孔の辺寸法 L=55 mm×55 mm(縦×横)
開口部のピッチ A=100 mm
四隅の丸孔部直径 R=12 mm
アルミ板厚 T=3.0 mm
そこで上記のアルミ板(3.0 mm)の試験結果について、関係式(4)〜(6)を当てはめると、その換算率は、L:367%、R:400%、A:400%となっている。
また、最も効果の確認されたものは孔とピッチが以下のバランスのアルミ板であった。
四角孔の辺寸法 L=15 mm×15 mm(縦×横)
開口部のピッチ A=25 mm
四隅の丸孔部直径 R=3 mm
アルミ板厚 T=3.0 mm
【0086】
これは最も効果のあった鋼板の試験体のバランスにほぼ近いものであった。
これらの結果から金属板では鋼板を用いた耐力パネルから導かれた関係式(4)〜(6)の範囲で効果があると判断できる。また前記の関係式(4)〜(6)に関して、金属パネルにおける有効範囲は、少なくとも下限値として20%以上、上限値として1000%以下程度の範囲で有効性があると考えられる。
よって鋼板やアルミ板などの金属パネルを用いた場合には、以下の関係式を満たすことが望ましい。
「L/T」の値が1.3以上で、26以下である。
「R/T」の値が0.26以上で、5.2以下である。
「A/T」の値が2.18以上で、43.6以下である。
【0087】
<樹脂板の場合>
以下のバランスのポリカーボネート樹脂板試験体で有効性を確認した。
樹脂板も無開口状態では面内変形は極めて小さいが、今回試験したもので1/50までの有効な面内変形を確認した。樹脂は大きな変形能力を持っているので、孔とピッチを適切なバランスにすることで大きな効果が期待できるものと判断する。
なお、樹脂板で最も効果の確認されたものは孔とピッチが以下のバランスのものであった。
四角孔の辺寸法 L=30 mm×30 mm(縦×横)
開口部のピッチ A=50 mm
四隅の丸孔部直径 R=5 mm
樹脂板厚 T=6.0 mm
【0088】
「L/T」の値が1.0以上で、50.0以下である。
「R/T」の値が0.17以上で、8.3以下である。
「A/T」の値が1.67以上で、83.3以下である。
【0089】
合板、金属板及び樹脂板のそれぞれについて、耐力パネルの厚さ(T)、四角形に形成した開口部の対辺間の距離(L)、開口部の四隅に形成した丸孔部の直径(R)、開口部同士のピッチ(A)を上記の要件を満たすように設定することで、大きな変形能力を確保すると共に、変形が進んでも十分な耐力を維持できるという、2つの効果をバランスよく発揮することができる。
【0090】
また、上記の実験では、最も有効性の確認された厚さ15mmの合板に四角孔を配置し、コーナーの丸孔のみ大きくした場合と小さくした場合の試験を行っている。即ち、四隅の丸孔の直径を24mmにした試験体L(大きな孔)においては、面外変形は発生しなかったが、変形角1/30から耐力が上昇しなくなった。このことより、より高い耐力が要求される耐震要素として使用する場合には、四隅の丸孔の孔径をあまり大きくしないことが望ましいことが確認された。一方、四隅の丸孔の直径を6mmにした試験体M(小きな孔)においては、変形角1/20から面外変形が発生していた。このことから十分な変形能力という部分での変形能力を求められる場合の耐震要素として使用する場合には、四隅の丸孔の孔径をあまり小さくしないことが望ましいことが確認された。
【0091】
以上の実験結果から、本発明にかかる耐力パネルについて、従来のパネル利用の耐震要素にはない、変形能力と変形が進んでも耐力が維持されるという有効性が立証された。
即ち、上記の実験結果では、変形角1/20でも安定して耐力を示し、耐震壁としての試験を行っても、十分な応答値を示していた。また、最大約1/10の変形角まで一定の耐力を保持していた事が確認された。これはパネルの面内変形能力と耐力の維持能力の極めて高いということを示すものである。
【0092】
また、上記した金属板の試験において、孔の大きさを四角の一辺が65mmで、孔間の寸法が100mmと、孔の大きさを四角の一辺が30mmで孔間の寸法が50mm、及び孔の大きさを四角の一辺が15mmで孔間の寸法が25mmという3段階の孔の大きさと間隔を持ったものの試験を行った。
【0093】
この試験においては、バランスを考えた孔の大きさを四角の一辺が15mmで孔間の寸法が25mmのものが最も大きな面内変形を確認できた。さらにバランスを考えた構成のパネルであれば、さらに大きな面内変形(面外変形を伴わない)の可能性も十分期待できると考えられる。金属板という通常極めて小さい面内変形に限られる性質を持った板状素材が、大きな面内変形能力を持つ意味は極めて大きい。また、同時に樹脂板の試験も行ったが、面外変形を伴わない段階で、同様に大きな面内変形の確認ができた。
【0094】
ここに金属板及び樹脂板の面内変形を大きくすることが可能になったことで、本発明の適用範囲がさらに広範囲に利用可能であることを意味する。建築を含めた多くの分野で振動を制御することは常に大きな課題となっており、その適用範囲としては以下の分野が可能である。
【0095】
〔建設における耐震・制震部材〕
かかる耐力パネルの利用については、改修・新築共に利用可能であり、地震に対する場合のみならず、機械や利用する人間に起因する振動を制する場合(耐振・制振部材)にも有効である。
【0096】
本発明にかかる耐力パネルを使用する事により得られる効果は、面内曲げの発生によって生じる大きな変形によるものであり、低降伏点鋼を利用した場合は、さらに大きな制振効果が得られる。
【0097】
また従来利用されてきた耐震・制震部材に比較して、面で作用するという部分では極めて画期的な存在である。従来の部材の多くは線材であり、厚みにも限界があり、接続部に応力が集中することがあった。これに対して本発明に係る耐力パネルは面が作用することで、周囲の架構に局部的に接続することがなく、応力の集中がなされないという極めて有利な特徴を有する。
【0098】
また面材のため、厚さが薄いという特徴を有し、建築意匠に極めて有利な影響を有する特徴も合わせ持つことができる。
そして上記の試験に使用した金属部材はレーザーカッターによる加工、樹脂板はルーターによる加工を行った。実際の利用を想定しての製作であったが、短時間に製作可能でコストの面でも有利な部材になることが確認された。
【0099】
〔機械一般における耐振・制振部材及び衝撃緩衝部材〕
上記の耐力パネルは、機械一般(生活家電・医療器具等も含む)を構成する面材としても使用する事ができる。このような機械一般において動きを発生させた場合には、常に耐振・制振が問題となる。本発明にかかる耐力パネルは、この問題に薄く安価でありながら、変形時のエネルギーを吸収し面内変形応力を高める部材を提供できる。生活・医療の分野にも共通であるが、微細加工の技術と特殊素材と併用すれば、さらなる可能性が広がる。β―チタンなどの復元力が極めて大きな素材と組み合わせれば、有効な衝撃緩衝部材となる。