特許第5877166号(P5877166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5877166ガラス基板へのエレクトロクロミックデバイスの積層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877166
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】ガラス基板へのエレクトロクロミックデバイスの積層
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/15 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
   G02F1/15 505
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-556257(P2012-556257)
(86)(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公表番号】特表2013-521535(P2013-521535A)
(43)【公表日】2013年6月10日
(86)【国際出願番号】US2011027148
(87)【国際公開番号】WO2011109688
(87)【国際公開日】20110909
【審査請求日】2014年2月21日
(31)【優先権主張番号】61/311,001
(32)【優先日】2010年3月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/412,153
(32)【優先日】2010年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504416080
【氏名又は名称】セイジ・エレクトロクロミクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】マッコイ,マイケル・エイ
(72)【発明者】
【氏名】スバー,ニール・エル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・ダイン,ジョン・イー
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−511498(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0304899(US,A1)
【文献】 特表2011−524269(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0297806(US,A1)
【文献】 特開平07−318877(JP,A)
【文献】 特開2003−197103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/15−1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エレクトロクロミック基板を用意するステップと、
(b)前記エレクトロクロミック基板を、1つ又は複数の基板ドーターパネルに切断するステップと、
(c)前記1つ又は複数の基板ドーターパネルのそれぞれの上に、複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体を製作するステップと、
(d)前記複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体のそれぞれを、個々のエレクトロクロミックデバイスに切断するステップであって、前記複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体のそれぞれがレーザ又は電熱切断によって切断されるステップと、
(e)前記個々のエレクトロクロミックデバイスのそれぞれを、個別の外部積層体ガラス板に積層するステップとを含み、
前記個々のエレクトロクロミックデバイスのそれぞれが、少なくとも60MPaのエッジ強度を有する、エレクトロクロミックデバイス積層体の製造方法。
【請求項2】
前記エレクトロクロミック基板が、4ppm/Kから8ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ又は複数の前記基板ドーターパネルが、少なくとも60MPaのエッジ強度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)エレクトロクロミック基板を用意するステップと、
(b)前記エレクトロクロミック基板上に複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体を製作するステップと、
(c)前記複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体のそれぞれを、個々のエレクトロクロミックデバイスに切断するステップであって、前記複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体のそれぞれがレーザ又は電熱切断によって切断されるステップと、
(d)前記個々のエレクトロクロミックデバイスのそれぞれを、個別の外部積層体ガラス板に積層するステップと
を含み、
前記個々のエレクトロクロミックデバイスのそれぞれが、少なくとも60MPaのエッジ強度を有する、エレクトロクロミックデバイス積層体の製造方法。
【請求項5】
前記エレクトロクロミック基板が、4ppm/Kから8ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体のレイアウトは、全体としていかなる被膜またはスタックにも損傷を与えることなく、前記複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体のそれぞれを個々の前記エレクトロクロミックデバイスに切断するために、前記複数のエレクトロクロミック前駆体の間に十分なスペースが組み込まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
(a)アニールされたガラス基板上にエレクトロクロミックスタックを備え、レーザ切断又は電熱切断によって調製されるエレクトロクロミックデバイスと、
(b)外部積層体ガラス板と、
(c)前記エレクトロクロミックデバイスおよび前記外部積層体ガラス板の間に挟まれた中間層材料とを備え、
前記個々のエレクトロクロミックデバイスのそれぞれが、少なくとも60MPaのエッジ強度を有する、積層体。
【請求項8】
前記エレクトロクロミックデバイスが、少なくとも69MPaのエッジ強度を有する、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記エレクトロクロミックデバイスが、少なくとも75MPaのエッジ強度を有する、請求項7に記載の積層体。
【請求項10】
前記アニールされたガラス基板が、少なくとも1つの寸法において前記外部積層体ガラス板よりも小さい、請求項7に記載の積層体。
【請求項11】
前記アニールされたガラス基板が、少なくとも1つの寸法において、前記外部積層体ガラス板に対して0.5mmから3mmにインデント加工がなされている、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記アニールされたガラス基板が、少なくとも1つの寸法において、前記外部積層体ガラス板に対して1mmから2mmにインデント加工がなされている、請求項10に記載の積層体。
【請求項13】
前記より小さいアニールされたガラス基板の周辺が、少なくとも片側において、中間層材料および保護材料からなる群から選択される材料により取り囲まれている、請求項10に記載の積層体。
【請求項14】
前記アニールされたガラス基板が、レーザ切断によって調製されかつ少なくとも69MPaのエッジ強度を有する、請求項7に記載の積層体。
【請求項15】
前記エレクトロクロミックデバイスが、少なくとも100MPaのエッジ強度を有する、請求項7に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれている、2010年3月5日出願の米国仮特許出願第60/311,001号及び2010年11月10日出願の第60/412,153号の、出願日の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、特に色付きのガラスは、太陽放射線の吸収によって引き起こされた不均一な加熱が原因で、大きな応力を受ける。これらの応力は、割れ目または亀裂をガラスに発生させるほど大きくなる可能性があり、最終的には破損をもたらす可能性がある。
【0003】
ガラスの中心(COG)は、例えば、典型的にはフレームまたはその他の建築構造物によって覆われまたは影になっているガラスのエッジよりも、かなり高い温度を有する可能性がある。当然ながら、ガラスがより濃く色付けられるほど、太陽光線はより多く吸収され、COGとガラスエッジまたはその他の影になった領域との間の潜在的な温度差はより大きくなる。この結果、典型的にはガラスエッジに沿って応力が生じ、約14から約28MPaより大きい場合には、亀裂が生じる可能性がある。したがって通常の使用では、割れ目の発生率を低減させるため、ガラスに熱強化または焼入れがなされる。典型的には、吸収ガラス板には、少なくとも約35MPaに耐えられるように、またはASTM E2431(熱負荷に対する単層アニール建築用板ガラスの耐性を決定するための手法(Practice for Determining the Resistance of Single Glazed Annealed Architectural Flat Glass to Thermal Loadings))などの工業規格に適合するように、熱処理または焼入れがなされる。当然ながら、これは製造コストを増大させる。
【0004】
色付きガラスと同様に、エレクトロクロミックデバイス(以下、「ECデバイス」)は、特に完全に暗くなった状態にある場合、かなりの量の太陽放射線を吸収する。これらの温度差に関連した応力または使用負荷に耐えるため、これらデバイスの基板として、熱強化または焼入れがなされたガラスを使用することが一般に行われている。これは現実的な解決策であるが、これらの基板をベースにしてデバイスを製造するコストは高価である。その構造安定性(即ち、製造プロセス中および現場に設置するときの両方で亀裂および割れ目に耐える能力)を維持しながら、ECデバイスの製造においてコストを削減しかつ効率を上げることが望ましい。
【0005】
伝統的なECデバイスおよびそれを含む絶縁ガラスユニット(IGU)は、図1Aに示される構造を有する。本明細書で使用される「絶縁ガラスユニット」という用語は、エッジに沿ったスペーサによって分離されかつ層の間に断熱空気層(またはその他の気体、例えばアルゴン、窒素、クリプトン)が生成されるように封止された、2つ以上の層のガラスを意味する。IGU 18は、内部ガラスパネル10およびECデバイス19を含む。ECデバイス19は、EC基板12上に連続して付着されまたは堆積された被膜を含むECスタック11からなる。EC基板12は、伝統的に、熱強化または焼入れがされているガラスからなる。
【0006】
IGU 18を形成するには、EC基板12になるガラスパネルを、まず、必要とされる寸法に従いカスタムサイズに切断する。次いで切断したガラスパネル12に焼入れまたは熱強化を行って、製作応力およびその耐用寿命中に直面する応力(「使用負荷」)に耐えられるように十分な強度を与える。次いで、例えば連続した薄膜を含むECデバイススタック11を、当技術分野で公知の方法(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,372,610号および第7,593,154号参照)によってガラスパネル12に付着させまたは堆積する。ガラスパネル12の切断は、焼入れまたは熱強化の後には行わない。同様に、ECデバイス19の基板には、ECスタック11を形成する被膜を堆積した後には一般に焼入れまたは熱強化が行われない(適切にポスト焼入れ可能なEC被膜スタック及びプロセスを使用しない限り)。次いでIGU 18を、ECデバイス19と別のガラスパネル10とを組み合わせることによって組み立てる。2枚のパネルは、スペーサ17によって分離する。パネル10は、両面に薄膜コーティングを含有していてもよい(例えば、日照調整の場合)。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1a】ECデバイスを含む伝統的なIGUの断面図である。
図1b】ECデバイス自体が2種の材料の積層体である、ECデバイスを含むIGUの断面図である。
図2】ソーダ石灰ガラスに積層された低熱膨張係数ガラスを含むEC積層体の、応力分布のプロットである。
図3a】太陽光照射に曝露されたいくつかの積層体に関する、ピークエッジ引張り応力を比較する、EC積層体のプロットである。
図3b】太陽光照射に曝露されたいくつかの積層体に関する、ピークエッジ引張り応力を比較する、あるEC積層体のプロットである。
図4】EC基板、EC外部積層体ガラス板、および中間層の厚さの関数としての、衝撃試験の概要を示す図である。
図5】試験条件下のレーザ切断ガラスサンプルを示す、4点曲げ試験の例を示す図である。
図6】機械切断パネルおよびレーザ切断ガラスを比較する、ガラスサンプルに関する強度の確率プロットを示す図である。
【発明の概要】
【0008】
出願人は、ECデバイス積層体を含む、改善されたIGUを開発した。出願人は、改善されたECデバイス積層体およびIGUの製造方法も開発した。
【0009】
本発明の一態様では、出願人は:(a)エレクトロクロミック基板を用意するステップと;(b)エレクトロクロミック基板を、1つ又は複数の基板ドーターパネル(daughter panes)に切断するステップと;(c)1つ又は複数の基板ドーターパネルのそれぞれの上に、複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体を製作するステップと;(d)エレクトロクロミックデバイス前駆体のそれぞれを、個々のエレクトロクロミックデバイスに切断するステップと;(e)個々のエレクトロクロミックデバイスのそれぞれを、個別の外部積層体ガラス板に積層するステップとを含む、エレクトロクロミックデバイス積層体の製造方法(本明細書にさらに記述される「カット−ゼン−コート−ゼン−カット(cut−then−coat−then−cut)」プロセスの例)を発見した。一実施形態では、エレクトロクロミックデバイス前駆体は、機械的に切断される。別の実施形態では、エレクトロクロミックデバイス前駆体はレーザ切断される。別の実施形態では、ECデバイスは、電熱切断によって切断される。
【0010】
別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、少なくとも約60MPaのエッジ強度を有する。別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、少なくとも約69MPaのエッジ強度を有する。別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、少なくとも約75MPaのエッジ強度を有する。別の実施形態では、個々のECデバイスは、少なくとも約100MPaのエッジ強度を有する。
【0011】
別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、外部積層体ガラス板とほぼ同じサイズである。別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、少なくとも1つの寸法が、外部積層体ガラス板よりも小さい。別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、少なくとも1つの寸法において、外部積層体ガラス板に対して約0.5mmから約3mmにインデント加工がなされている。別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、少なくとも1つの寸法において、好ましくは全ての寸法において、外部積層体ガラス板に対して約1mmから約2.0mmにインデント加工がなされている。
【0012】
別の実施形態では、エレクトロクロミック基板および外部積層体ガラス板は、同じ材料を含む。別の実施形態では、エレクトロクロミック基板は、外部積層体ガラス板とは異なる材料である。別の実施形態では、エレクトロクロミック基板の材料は、低熱膨張係数ガラス、ソーダ石灰フロートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロフロートガラス、ボロアルミノシリケートガラス、その他の低ナトリウム組成ガラス、またはポリマーからなる群から選択される。別の実施形態では、エレクトロクロミック基板は、ガラス基板に関しては約2ppm/Kから約10ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有し、ポリマー基板材料に関しては約80ppm/Kまでの熱膨張係数を有する。別の実施形態では、エレクトロクロミック基板は、約4ppm/Kから約8ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有する。別の実施形態では、エレクトロクロミック基板は、約0.7mmから約6mmの範囲の厚さを有する。
【0013】
別の実施形態では、外部積層体ガラス板の材料は、低熱膨張係数ガラス、ソーダ石灰フロートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロフロートガラス、ボロアルミノシリケートガラス、熱強化ガラス、焼入れガラス、またはポリマーからなる群から選択される。別の実施形態では、外部積層体ガラス板は、約2ppm/Kから約10ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有する。ポリマーをベースにした基板の場合、熱膨張係数は約80ppm/Kまでにすることができる。別の実施形態では、外部積層体ガラス板は、約2.3mmから約12mmの範囲の厚さを有する。別の実施形態では、中間層材料は、ポリビニルブチラール、アイオノマーポリマー、エチレンビニルアセテート、ポリウレタン、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0014】
本発明の別の態様は、「カット−ゼン−コート−ゼン−カット」プロセスにより調製される積層体である。別の実施形態では、「カット−ゼン−コート−ゼン−カット」プロセスにより調製される積層体は、少なくとも約60MPaのエッジ強度を有する基板を含む。
【0015】
本発明の別の態様では、出願人は:(a)エレクトロクロミック基板を用意するステップと;(b)複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体を、エレクトロクロミック基板上に製作するステップと;(c)エレクトロクロミックデバイス前駆体のそれぞれを、個々のエレクトロクロミックデバイスに切断するステップと;(d)個々のエレクトロクロミックデバイスのそれぞれを、個別の外部積層体ガラス板に積層するステップとを含む、エレクトロクロミックデバイス積層体の製造方法(本明細書にさらに記述される「コート−ゼン−カット(coat−then−cut)」プロセスの例)を発見した。ECデバイス前駆体は、レーザによってまたは電熱切断によって機械的に切断されてもよい。
【0016】
別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、少なくとも約60MPaのエッジ強度を有する。別の実施形態では、エッジ強度が少なくとも約69MPaである。別の実施形態では、エッジ強度が少なくとも約75MPaである。別の実施形態では、エッジ強度が少なくとも約100MPaである。
【0017】
別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、外部積層体ガラス板とほぼ同じサイズである。別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、少なくとも1つの寸法が、外部積層体ガラス板よりも小さい。別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、少なくとも1つの寸法において、外部積層体ガラス板に対して約0.5mmから約3mmにインデント加工がなされている。別の実施形態では、個々のエレクトロクロミックデバイスは、少なくとも1つの寸法において、外部積層体ガラス板に対して約1mmから約2.0mmにインデント加工がなされている。
【0018】
別の実施形態では、アニールされたガラス基板および外部積層体ガラス板が、同じ材料を含む。別の実施形態では、エレクトロクロミック基板は、外部積層体ガラス板とは異なる材料である。別の実施形態では、エレクトロクロミック基板の材料は、低熱膨張係数ガラス、ソーダ石灰フロートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロフロートガラス、ボロアルミノシリケートガラス、低ナトリウム組成ガラス、またはポリマーからなる群から選択される。別の実施形態では、エレクトロクロミック基板は、約2ppm/Kから約10ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有する。ポリマーをベースにした基板の場合、熱膨張係数は約80ppm/Kまでにすることができる。別の実施形態では、エレクトロクロミック基板は、約4ppm/Kから約8ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有する。別の実施形態では、エレクトロクロミックガラス基板は、約0.7mmから約6mmの範囲の厚さを有する。
【0019】
別の実施形態では、外部積層体ガラス板の材料は、低熱膨張係数ガラス、ソーダ石灰フロートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロフロートガラス、ボロアルミノシリケートガラス、熱強化ガラス、焼入れガラス、またはポリマーからなる群から選択される。別の実施形態では、外部積層体ガラス板は、約2ppm/Kから約10ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有する。別の実施形態では、外部積層体ガラス板は、約2.3mmから約12mmの範囲の厚さを有する。別の実施形態では、中間層材料は、ポリビニルブチラール、アイオノマー材料、エチレンビニルアセテート、ポリウレタン、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
本発明の別の態様は、「コート−ゼン−カット」プロセスにより調製される積層体である。別の実施形態では、コート−ゼン−カットプロセスにより調製される積層体は、少なくとも約60MPaのエッジ強度を有する基板を含む。
【0021】
本発明の別の態様では、出願人は:(a)アニールされたガラス基板上にエレクトロクロミックスタックを備える、エレクトロクロミックデバイスと;(b)外部積層体ガラス板と;(c)エレクトロクロミックデバイスおよび外部積層体ガラス板の間に挟まれた中間層材料とを備える、積層体を発見した。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックデバイスは、少なくとも約60MPaのエッジ強度を有する。別の実施形態では、エッジ強度が少なくとも約69MPaである。別の実施形態では、エッジ強度が少なくとも約75MPaであり、その他の実施形態では少なくとも約100MPaである。別の実施形態では、エレクトロクロミックデバイスは、機械切断によって調製される。別の実施形態では、エレクトロクロミックデバイスは、レーザ切断によって調製される。別の実施形態では、エレクトロクロミックデバイスは、電熱切断によって調製される。別の実施形態では、積層体は、集積ガラスユニットの部分である。
【0022】
別の実施形態では、アニールされたガラス基板および外部積層体ガラス板が、同じ材料を含む。別の実施形態では、アニールされたガラス基板は、外部積層体ガラス板とは異なる材料である。別の実施形態では、アニールされたガラス基板の材料は、低熱膨張係数ガラス、ソーダ石灰フロートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロフロートガラス、ボロアルミノシリケートガラス、低ナトリウム組成ガラス、またはポリマーからなる群から選択される。別の実施形態では、アニールされたガラス基板は、約2ppm/Kから約10ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有する。別の実施形態では、アニールされたガラス基板は、約4ppm/Kから約8ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有する。別の実施形態では、アニールされたガラス板は、約0.7mmから約6mmの範囲の厚さを有する。別の実施形態では、アニールされたガラス板は、外部積層体と同じ厚さを有する。別の実施形態では、アニールされたガラス板は、外部積層体とは異なる厚さを有する。
【0023】
別の実施形態では、外部積層体ガラス板の材料は、低熱膨張係数ガラス、ソーダ石灰フロートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロフロートガラス、ボロアルミノシリケートガラス、熱強化ガラス、焼入れガラス、またはポリマーからなる群から選択される。別の実施形態では、外部積層体ガラス板は、約2ppm/Kから約10ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有する。別の実施形態では、ポリマーをベースにした基板の場合、熱膨張係数を約80ppm/Kまでにすることができる。別の実施形態では、外部積層体ガラス板は、約2.3mmから約12mmの範囲の厚さを有する。
【0024】
別の実施形態では、アニールされたガラス基板は、外部積層体ガラス板とほぼ同じサイズである。別の実施形態では、アニールされたガラス基板は、少なくとも1つの寸法が、外部積層体ガラス板よりも小さい。別の実施形態では、アニールされたガラス基板は、少なくとも1つの寸法において、外部積層体ガラス板に対して約0.5mmから約3mmにインデント加工がなされている。別の実施形態では、アニールされたガラス基板は、少なくとも1つの寸法において、外部積層体ガラス板に対して約1mmから約2.0mmにインデント加工がなされている。別の実施形態では、より小さいアニールされたガラス基板の周辺は、少なくとも片側において、シリコーン、ウレタン、エポキシ、およびアクリレートを含むポリマーなどの中間層材料または別の材料で取り囲まれている。
【0025】
別の実施形態では、中間層材料は、ポリビニルブチラール、アイオノマー材料、エチレンビニルアセテート、ポリウレタン、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0026】
別の実施形態では、アニールされたガラス基板は、約8.5ppm/Kの熱膨張係数を有するソーダ石灰フロートガラスであり、前記外部積層体ガラス板は、約8.5ppm/Kの熱膨張係数を有する焼入れ済みのソーダ石灰フロートガラスであり、中間層材料はポリビニルブチラールである。別の実施形態では、中間層材料がSentryGlas(登録商標)Plus(SGP)である。別の実施形態では、アニールされたガラス基板は、レーザ切断によって調製され、少なくとも69MPaのエッジ強度を有する。別の実施形態では、エレクトロクロミックスタックは、アニールされたガラス基板と中間層材料との間にある。別の実施形態では、エレクトロクロミックスタックは、アニールされたガラス基板の、中間層材料とは反対側の表面にある。
【0027】
本発明の別の態様では、出願人は:(a)基板上にエレクトロクロミックスタックを備える、エレクトロクロミックデバイスと;(b)外部積層体ガラス板と;(c)エレクトロクロミックデバイスおよび外部積層体ガラス板の間に挟まれた中間層材料とを備える。別の実施形態では、エレクトロクロミックデバイスは、レーザ切断または電熱切断によって調製される。
【0028】
出願人は、本発明のエレクトロクロミックデバイス積層体(または、これらの積層体を含むIGU)が、焼入れまたは熱処理がなされたガラス基板上に製造された伝統的なエレクトロクロミックデバイス(または、そのような伝統的なエレクトロクロミックデバイスを含むIGU)が直面したものと同様の応力に耐えることができることを、思いがけなく見出した。したがって、本発明のECデバイス積層体は、同様のガラス中心およびエッジ応力に耐えることができ、少なくとも約17MPaの応力に耐えることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、同様の応力に耐えるとは、本発明のエレクトロクロミックデバイス積層体またはIGUが、伝統的なエレクトロクロミックデバイスまたはIGUとほぼ同じ工業規格試験を合格することを意味する。その他の実施形態では、同様の応力に耐えるとは、本発明のエレクトロクロミックデバイス積層体またはIGUが、(i)伝統的なEC適用例で直面する最大限の使用中の熱機械応力を安全に超過する応力、および/または(ii)伝統的なECデバイスまたはIGUと同じ使用負荷または応力の少なくとも約50%に耐えることができることを意味する。出願人は、驚くべきことに、これらの目標を、エレクトロクロミックスタックが表面に付着されまたは堆積されているアニール済みのガラス基板を使用して達成できることも見出した。
【0030】
出願人は、改善された製造方法が、高い製造効率を提供しかつ工業規格を満たしながら、伝統的な手段により生成されたIGUが直面したものと同様の使用負荷または応力に耐えることができる、エレクトロクロミックデバイス積層体またはIGUを提供することを思いがけなく見出した。
【0031】
さらに出願人は、ECデバイス積層体がその耐用寿命中に受けることになる熱および負荷応力の全範囲に耐えると考えられる、十分に無欠陥のエッジを生成するために、アニールされたガラス基板をレーザ切断することができることを、思いがけなく発見した。出願人は、図1Bの、レーザ切断がなされたガラスおよびECデバイス積層体について、熱および機械応力パラメーター空間の上端で試験をし、レーザ切断がなされたECデバイス積層体または基板が非常に耐久性があり、住宅用および商業用建築物的用例およびその他の適用例で使用するのに適していることを決定した。
【0032】
さらに出願人は、共に本明細書でさらに記述される「コート−ゼン−カット」および「カット−ゼン−コート−ゼン−カット」プロセスによって、大きな基板パネルのコーティングが可能になり、かつコーティング後にカスタムサイジングすることが可能になることを見出した。出願人は、このプロセスが、改善されたプロセス制御と、ECデバイスの被膜コーティングのより良好な全体の均一性とを提供することも見出した。確かに、全てがほぼ同じ寸法を有するガラスパネルを使用する場合、それぞれの全てのパネルに関する後続の処理温度およびスパッタリングプラズマ条件は、ほぼ同じになると考えられる。これは、生成を遅くしもしくは停止させる必要なく、または多くのガラスの所望の厚さ、色付け、およびサイズに関するプロセス調節を行う必要なく、より効率的な連続コーターまたはスパッタ動作をもたらすと考えられる。したがって、処理量および動作時間は最大限になり、その結果、エレクトロクロミックデバイスまたはIGUを製造する場合に、より低くより競争可能な生産コストが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ECデバイス積層体
本発明の一態様は、EC基板上にエレクトロクロミックスタックを備えるエレクトロクロミックデバイスと;EC外部積層体ガラス板と;エレクトロクロミックデバイスおよび外部積層体ガラス板の間に挟まれた中間層材料とを備える、ECデバイス積層体である。
【0034】
ECデバイス積層体29およびこれを含有するIGU 30が、図1Bに示されている。ECデバイス積層体29は、EC外部積層体ガラス板22に積層されたECデバイス32からなる。ECデバイス32とEC外部積層体ガラス板22との間には、ECデバイス32と外部積層体の板22とを結合する中間層材料28がある。ECデバイス32は、それ自体が、EC基板31に付着されまたは堆積されたECスタック21からなる。完成したIGU 30は、スペーサ27によって切り離された別のガラスパネル20と共に、ECデバイス積層体29を含む。図1Bは、2つの板のIGUを表すが、本発明は、3つ以上の板を含有するIGUも企図する(追加の板は、任意の形状またはサイズであってもよく、当技術分野で公知の、色付けされたまたはその他の方法によるコーティングを含む。)。
【0035】
任意のECスタック21は、当業者に知られるように使用してもよい。例示的なECスタックは、例えば、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,321,544号;第5,404,244号;第7,372,610号;および第7,593,154号に記載されている。
【0036】
一実施形態では、少なくともECデバイス積層体29のEC基板31が、アニールされたガラスからなる。本明細書で使用される「アニールされたガラス」という用語は、熱処理および後続の急速冷却によって与えられる内部応力なしで生成されたガラスを意味する。この用語は、アニールされたガラスまたはフロートガラスとして典型的には分類されるガラスを含み、熱強化ガラスまたは焼入れがなされたガラスのみ除外される。
【0037】
その他の実施形態では、EC基板31およびEC外部積層体ガラス板22は共に、アニールされたガラスからなる。EC基板31およびEC外部積層体ガラス板22が共にアニールされたガラスからなる実施形態では、利用されるアニールされたガラスは同じ(「整合」)でも異なっていてもよい(「不整合」)。使用されるアニールされたガラス基板は、同じまたは異なる熱膨張係数を有していてもよく、または異なるタイプおよび/または量のドーパントを有していてもよい。
【0038】
例えば、「不整合」の実施形態では、基板31はソーダ石灰フロートガラスからなるものであってもよく、一方、EC外部積層体ガラス板22は低熱膨張係数ガラス(低CTEガラス)であってもよく、またはその逆であってもよい。「整合」の実施形態では、例として、基板31およびEC外部積層体ガラス板22は、共にソーダ石灰フロートガラスからなってもよく、あるいは共に低CTEガラスからなってもよい。
【0039】
上記にて定義されたものに加え、「不整合」という用語は、ガラスのタイプが同じか異なるかに関わらず、異なる厚さを有するガラスの使用も意味する。例えば、基板31および外部積層体ガラス板22は、同じ材料にすることができるが、異なる厚さを有することができる。または、単なる例として、基板31は、外部積層体ガラス板22とは異なる材料のものにすることができ、かつ異なる厚さを有することができる。さらに、単なる例として、基板31は、外部積層体ガラス板22と同じタイプの材料のものにすることができるが、異なる熱膨張係数および/または異なる厚さを有することができる。
【0040】
本発明のEC基板31は、大面積の薄いガラスを生産するGuardian Industries(Guardian Global Headquarters、Auburn Hills、MI)、Pilkington、North America(Toledo、OH)、Cardinal Glass Industries(Eden Prairie、MN)、およびAGC(AGC Flat Glass、Alpharetta、GI)などのソーダ石灰アニールガラスを含めた、伝統的なガラス材料から選択してもよい。
【0041】
EC基板31は、Schott(Schott North America Elmsford、NY)から入手可能であるような低CTEボロフロートガラス、またはCorning 1737(商標)およびCorning Eagle XG(商標)(それぞれ、Corning Incorporated、Corning、NYから入手可能)などのボロアルミノシリケートガラスを含めた材料から選択されてもよい。さらに、EC基板31は、アルミノシリケートガラスを含めた材料から選択されてもよい。当業者なら、この目的に適切でありかつ特許請求の範囲に記載される本発明の限定を満足させる、その他のガラス基板を選択できるであろう。
【0042】
EC基板31は、ポリマー、コポリマー、または1種もしくは複数のポリマーもしくはコポリマーの混合物からなるものであってもよい。ポリマーの非限定的な例には、ポリイミド、ポリエチレン、ナフタレート(PEM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド、またはその他類似のポリマー材料が含まれる。当業者なら、この目的に適切でありかつ特許請求の範囲に記載される本発明の限定を満足させる、その他のポリマー基板を選択できるであろう。
【0043】
一般に、EC31は、所望の適用例(例えば、住宅建築用の窓、商業建築用の窓、またはさらに自動車の窓)および所望の熱/構造特性に応じて、任意の厚さを有していてもよい。典型的には、基板31は、約0.7mmから約6mmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態では、EC基板は、約1.5mmから約2.3mmの範囲の厚さを有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、利用されるアニールされたガラスまたはソーダ石灰フロートガラスは、約7.0ppm/Kから約10.0ppm/Kの間の熱膨張係数(CTE)を有する。その他の実施形態では、ソーダ石灰フロートを利用したガラスは、約8.2ppm/Kから約9.0ppm/Kの間のCTEを有する。低CTEガラスを利用するいくつかの実施形態では、熱膨張係数は、約2.0ppm/Kから約6.4ppm/Kの範囲である。低CTEガラスを利用するいくつかの特定の実施形態では、熱膨張係数が下記の通りである:Corning 1737(約3.76ppm/K)、Corning EagleXG(商標)(約3.2ppm/K)、およびSchott Borofloat 33(商標)(約3.3ppm/K)。
【0045】
本発明のEC外部積層体ガラス板22は、熱強化ガラス、焼入れガラス、部分的に熱強化または焼入れがなされたガラス、またはアニールガラスを含めた材料から選択されてもよい。「熱強化ガラス」および「焼入れガラス」という用語は、当技術分野で公知であるように、熱処理をして表面圧縮を誘発させ、またその他の方法でガラスを強化した、両方のタイプのガラスである。熱処理されたガラスは、完全に焼入れがなされまたは熱強化がなされたものと分類される。連邦仕様DD−G−1403Bによれば、完全に焼入れがなされたガラスは、エッジ圧縮が約67MPa以上であるのに対して約69MPa以上の表面圧縮を持たなければならない。熱強化ガラスは、約24から約69MPaの間の表面圧縮、または約38から約67MPaの間のエッジ圧縮を持たなければならないと考えられる。熱強化ガラスの破断特性は広く様々に変わると考えられ、約41から69MPaの応力で割れ目が生じる可能性がある。
【0046】
一般に、EC外部積層体ガラス板22は、所望の適用例(例えば、住宅建築用の窓、または商業建築用の窓)および所望の熱/構造特性に応じて、任意の厚さを有していてもよい。いくつかの実施形態では、EC外部積層体の板22は、ポリカーボネートを含めたプラスチックからなるものであってもよい。典型的には、EC外部積層体ガラス板22は、約2.3mmから約12mmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態では、EC外部積層体ガラス板22は、約2.3mmから約6mmの範囲の厚さを有する。当然ながら、適用例で必要とされるなら、例えば高い風力負荷に直面する建築の適用例または耐弾道もしくは爆風性の適用例で使用されるときは、より厚いガラスを利用してもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、利用されるアニールガラスまたはソーダ石灰フロートガラスは、約7.0ppm/Kから約10.0ppm/Kの間の熱膨張係数(CTE)を有する。その他の実施形態では、ソーダ石灰フロートガラスは、約8.2ppm/Kから約9.0ppm/Kの間のCTEを有する。低CTEガラスを利用するいくつかの実施形態では、熱膨張係数は約2.0ppm/Kから約6.4ppm/Kの範囲である。低CTEガラスを利用するいくつかの特定の実施形態では、熱膨張係数は下記の通りである:Corning 1737(商標)、約3.76ppm/K;Corning EagleXG(商標)、約3.2ppm/K;およびSchott Borofloat 33(商標)、約3.3ppm/K。
【0048】
いくつかの実施形態では、EC基板31およびEC外部積層体ガラス板22は、ほぼ同じ熱膨張係数(CTE)を有する。その他の実施形態では、EC基板31およびEC外部積層体ガラス板22は、異なるCTEを有する。その他の実施形態では、EC基板31およびEC外部積層体ガラス板22は、約50%未満だけ異なる熱膨張係数を有する。さらにその他の実施形態では、EC基板31およびEC外部積層体ガラス板22は、約30%未満だけ異なる熱膨張係数を有する。他の実施形態では、EC基板31およびEC外部積層体ガラス板22は、約20%未満だけ異なる熱膨張係数を有する。さらにその他の実施形態では、EC基板31およびEC外部積層体ガラス板22は、約10%未満だけ異なる熱膨張係数を有する。本明細書で論じられるように、適切な中間層材料28の選択は、CTEの不整合により引き起こされる任意の応力を緩和するのを助けることができる。
【0049】
例えば図2は、低CTEガラスをEC基板31として使用し、ソーダ石灰ガラスをEC外部積層体の板22として使用し、ポリビニルブチラールを中間層材料28として使用したときの、積層体の応力分布を示す。このシミュレーションは、パネルのエッジを囲む25mmのフレームの、造影効果を示す。フレームは、積層体のエッジと中心との間に温度勾配を引き起こすと考えられ、それによって、エッジ応力が形成されると考えられる。積層体構造の場合、CTEの不整合は、太陽光の吸収によってデバイスが加熱されるので、さらなる応力を引き起こす。このCTE不整合の作用を図3aに示すが、1000W/mの入射放射線に曝される、太陽光を吸収する低CTE/ソーダ石灰ガラス積層体は、やはり図3aに示される、同じ太陽光吸収条件下にあるソーダ石灰/ソーダ石灰積層体構造に比べ、より高いピーク応力レベルを有する。これらの例に示されるように、最大エッジ応力は、EC積層体がより多くの太陽放射線を吸収するにつれ、約40分後に最大約20.5MPaの応力まで経時的に変化する。より長い時間では、曝露領域から造影エッジ領域までのガラスを通る熱伝導が、温度平衡を引き起こし、それに対応して熱応力をそのピークレベルから低下させることになる。これらの応力は、図3aに示されるものと同じエッジフレーム造影および太陽光吸収条件下で、図3bに示されるような2枚の低CTEパネルを一緒に積層した場合に、低減させることができると考えられる。
【0050】
好ましい実施形態では、EC基板31のエッジは、取扱いおよび機械的損傷から保護される。どのような特定の理論にも拘泥するものではないが、EC基板31のエッジがかなり傷付けられまたは欠けた場合、ECデバイスの全体強度が損なわれる可能性があると考えられる。本発明のいくつかの実施形態では、EC基板31に、EC外部積層体ガラス板22に対してインデント加工がなされている。その他の実施形態では、EC基板31のサイズは、少なくとも1つの寸法、好ましくは少なくとも2つの寸法、より好ましくは全ての寸法が、EC外部積層体ガラス板22のサイズよりも僅かに小さい。いくつかの実施形態では、EC基板31には、ガラス板22に対し、少なくとも1つの寸法において約0.5mmから約3mmに、好ましくは周辺に沿って約0.5mmから約3mmにインデント加工がなされている。その他の実施形態では、EC基板31には、ガラス板22に対し、少なくとも1つの寸法において約1mmから約2.0mmに、好ましくは周辺に沿って約1mmから約2.0mmにインデント加工がなされている。
【0051】
いくつかの実施形態では、インデントの深さは、積層レイアップ/製造プロセス中の2片のガラスの自動化実装許容差によって、ならびに熱積層プロセス中に生じる任意の僅かな移動によって、決定される。いくつかの実施形態では、熱処理中に、中間層材料をEC基板31のエッジの周りに流し、ECデバイス積層体29を輸送および設置中の損傷からさらに保護すると考えられる保護要素を提供する。いくつかの実施形態では、これを実現するために過剰な中間層材料を付加する。その他の実施形態では、ポリマーなど(エポキシ、ウレタン、シリコーン、およびアクリレートを含むがこれらに限定されない。)、追加の保護材料をECデバイスの周辺の周りに堆積することができる。これらの材料は、所望の結果を実現するために様々な量で付着させることができる。
【0052】
中間層材料は、当技術分野で公知の方法により、ECデバイス32をEC外部積層体ガラス板22に積層することが可能な任意の材料から選択することができる。一般に、中間層材料28は:(a)高い光学的透明度;(b)少ない曇り;(c)高い耐衝撃性;(d)高い耐浸透性;(e)耐紫外線;(f)良好な長期熱安定性;(g)ガラスおよび/またはその他のポリマー材料/シートへの十分な接着;(h)低い湿分吸収;(i)高い耐湿分性;(j)優れた耐候性;および(k)高い耐応力負荷(例えば、衝撃負荷または風力負荷)を含めた特徴の組合せを保有すべきである。いくつかの実施形態では、中間層材料28は、使用時の応力負荷がかかっている間、層剥離を防止するために、ECデバイス32およびEC外部積層体ガラス板22の両方に対する十分な接着を少なくとも提供し、ECデバイス積層体29の視覚特性に悪影響を及ぼさないようにも選択される。その他の実施形態では、中間層材料は、工業規格性能基準が両方の負荷モードで満たされるように、選択されるべきである(例えば、衝撃試験に関してはANSI Z97.1を、風力負荷基準に関してはASTM E1300を参照)。
【0053】
一実施形態では、適切な中間層材料28は、商標名Saflex(商標)でSolutia Inc.(St.Louis、Missouri)から入手可能なポリビニルブチラール(PVB)である。PVBは、商標名Butacite(商標)でDuPont(Wilmington、DE)からも入手可能である。中間層材料28に関するその他の適切な材料には、DuPont製SentryGlas Plus(商標)(SGP)などのアイオノマー材料、エチレンビニルアセテート(EVA)、および架橋ポリウレタン(例えば、現場打設用レジン(cast−in−place resins))、または熱可塑性ポリウレタンが含まれる。当然ながら、上記明らかにされた材料のいずれかの混合物を使用してもよい。さらに、その他のポリマー材料は、上記にて列挙された熱機械的な、接着の、および光学透明性の機能的要件の少なくともいくつかが満たされる限り、中間層材料28として使用することができる。これには、改善された音響減衰、耐弾道性および耐爆風性の適用例に合わせて設計された複合ポリマー層で構成される、中間層材料も含まれる。これらの材料は、当業者が容易に入手可能である。
【0054】
その他の実施形態では、中間層材料28は、シリコーンおよびエポキシを含んでいてもよい。
【0055】
例えば、EC基板31およびEC外部積層体ガラス板22の両方が同じ材料からなる場合、両方のガラスパネルはほぼ同じ熱膨張係数を有する可能性があると考えられる。材料が異なる場合、即ち図2のような不整合にある場合、どのような特定の理論にも拘泥するものではないが、適切な中間層材料28の選択は、不整合なガラスパネル間での応力の伝達または分布に影響を及ぼす可能性があると考えられ、したがって、積層体の様々なポイントに存在する応力の少なくともいくらかを軽減する可能性があると考えられる。
【0056】
ガラス板間の熱膨張係数(CTE)の不整合を含む積層構造の場合、中間層は、(1)より高いCTEガラスパネルからより低いCTEガラスパネルに引張り応力を移動させないよう十分な可撓性であるように;または(2)低温での無視できるほどのポリマーの機械的弛緩がある状態で、冷却中に圧縮応力が高CTEガラスパネルから低CTEガラスパネルに移動するよう積層温度から十分に剛性であるように、選択されるべきと考えられる。
【0057】
図3aおよび3bは、1”の窓/建築用フレームによって影になったエッジを有する、太陽光照射に曝された積層体(この場合、構成要素パネルはそれぞれ0.7mmおよび6mmの厚さを有する。)のピークエッジ引張り強度の比較を提供する。整合(低CTE/低CTE;ソーダ石灰/ソーダ石灰)および不整合(低CTE/ソーダ石灰)の例を、時間の関数として示す。剛性中間層材料(応力伝達)の場合、低CTE/ソーダ石灰の組合せに関する有効応力は、ソーダ石灰/ソーダ石灰の組合せに関する有効応力より大きくなる可能性がある。したがって、得られるエッジ応力は、中間層材料の熱機械特性に依存する可能性があると考えられる。
【0058】
ECデバイス積層体29(または、これらの積層体を含むIGU 30)は、焼入れまたは熱処理がなされたガラス基板上に製造された伝統的なエレクトロクロミックデバイス(または、そのような伝統的なエレクトロクロミックデバイスを含むIGU)が直面するものと同様の応力に耐えると考えられる。
【0059】
いくつかの実施形態において、同様の応力に耐えるとは、本発明のECデバイス積層体29またはIGU 30が、伝統的なエレクトロクロミックデバイスまたはIGUとほぼ同じ工業規格試験に合格することを意味する。その他の実施形態において、同様の応力に耐えるとは、本発明のECデバイス積層体29またはIGU 30が、(i)伝統的なEC適用例で直面する最大限の使用中熱機械応力を安全に超過する応力、および/または(ii)伝統的なエレクトロクロミックデバイスまたはIGUと同じ使用負荷または応力の少なくとも約50%に耐えることができることを意味する。いくつかの実施形態では、ECデバイス積層体29は、少なくとも約17MPaの熱エッジ応力(または使用負荷)に耐えることができる。その他の実施形態では、ECデバイス積層体は、少なくとも約21MPaの熱エッジ応力に耐えることができる。いくつかの実施形態では、ECデバイス29は、少なくとも約60MPaのエッジ強度を有する。その他の実施形態では、ECデバイスまたはEC基板は、少なくとも約69MPaのエッジ強度を有する。さらにその他の実施形態では、ECデバイスまたはEC基板は、少なくとも約75MPaのエッジ強度を有する。さらに別の実施形態では、ECデバイスまたはEC基板は、少なくとも約100MPaのエッジ強度を有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、EC積層体29またはEC基板31は、IGUの部分である。IGUを形成するのに使用されるガラスパネル20は、IGU構造で伝統的に使用されるガラスまたはプラスチックを含めた任意の材料から選択されてもよい。例えば、任意の種類のガラス(ソーダ石灰ガラス、低CTEガラス、焼入れガラス、および/またはアニールガラス)またはプラスチックを使用してもよい。さらに、ガラスパネル20は、それ自体が、1種または複数の材料のマルチペイン積層体(多重ガラス板、多重プラスチック板、ガラス板およびプラスチック板を任意の順序で交互に配したもの)であってもよい。ガラスパネル20は、任意の色で色付けされていてもよく、または化学もしくは物理気相成長コーティングなどの任意の伝統的な手法で、片面もしくは両面にコーティングされていてもよい。ガラスパネル20は、エレクトロクロミックまたはサーモクロミックデバイスであってもよい。ガラスパネル20は、レーザ切断されても機械的にスクライビングされてもよい。さらに、図1BのIGU 30は、トリプルペインIGUであってもよく、即ち、ガラスパネル20またはECデバイス積層体29の一方に隣接するがスペーサによって切り離された、追加のガラス(またはポリマー、例えばアクリル)パネル20を含有するIGUである。ガラスパネル20は、最低限の商業用もしくは住宅用建築基準および/または窓材規格を満たすという条件で、任意の厚さを有していてもよく、または任意の性質を有していてもよい。
【0061】
(製造方法)
「コート−ゼン−カット」
提示された発明の一実施形態において、出願人は、「コート−ゼン−カット」という概念を有する製造手法を発見した。一態様は、エレクトロクロミック基板を用意するステップと;基板上に、複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体を製作するステップと;エレクトロクロミックデバイス前駆体のそれぞれを、個々のエレクトロクロミックデバイスに切断するステップと、個々のエレクトロクロミックデバイスのそれぞれを、個別の外部積層体ガラス板に積層するステップとを含む、エレクトロクロミックデバイス積層体を製造する方法である。本明細書で使用される「エレクトロクロミックデバイス前駆体」は、基板を個々のECデバイスに切断する前に基板上に付着されまたは堆積された、典型的には上述の薄膜のスタックであるECデバイスである。したがって、多数のECデバイス前駆体は、任意の単一基板上に製作され、または本明細書に記述されるように、基板ドーターペイン上に製作される。典型的には、EC前駆体レイアウトは、好ましくは全体としていかなる被膜またはスタックにも損傷を与えることなく、切断するために、前駆体の間に十分なスペースを組み込むよう設計される。
【0062】
いくつかの実施形態では、ECデバイス(または前駆体)32は一般に、ECスタック21を、アニールガラスなどの大きな基板パネル31上にコーティングしまたは付着させることによって生成される。スタックは、当技術分野で公知の、本明細書に組み込まれるような方法により、付着させても堆積させてもよい。次いでECデバイス(または前駆体)32を、引き続き切断して(本明細書に詳述される、伝統的な機械的手段によって、レーザ切断によって、または電熱切断法によって)、最終的な適用例に応じた所望の寸法にする。当然ながら、パネルは、任意のサイズまたは形状に切断されてもよい。基板は、より大きなパネルから事前に切断されたものであってもよい。次いでデバイス32をEC外部積層体ガラス板22に積層して、好ましくはさらなる機械的強度を提供する。EC積層体29は、図1Bに示されるECデバイス基板32で(即ち、EC積層体29の外側にあるEC被膜スタック21で)構成することができ、あるいはEC積層体29は、中間層材料28に接触するEC被膜スタック21と共に向きが定められたECデバイス基板32で構成することができる(即ち、積層体の内側にあるEC被膜スタック)。
【0063】
ECデバイス積層体29を処理したら、任意選択でガラス20と組み合わせてIGU 30を形成する。
【0064】
いくつかの実施形態では、EC外部積層体ガラス板は、ECデバイスとほぼ同じサイズである。その他の実施形態では、EC外部積層体ガラス板は、ECデバイスとは異なるサイズである。いくつかの実施形態では、EC基板には、上述のように外部ガラス板に対してインデント加工がなされている。本明細書にさらに詳述されるように、EC外部積層体ガラスは、ECデバイス(またはECデバイスが堆積される基板)と同じまたは異なる厚さおよび/または熱膨張係数を有していてもよい。外部積層体ガラス板は、機械的に切断されてもレーザ切断されてもよい。本発明の別の態様は、この方法により作製された積層体である。
【0065】
「カット−ゼン−コート−ゼン−カット」
提示された発明の別の実施形態では、出願人は、最初にEC基板の大きなパネルを1つ以上の基板ドーターパネルに切断し、その後、上述の「コート−ゼン−カット」の概念を1つ以上の基板ドーターパネルのそれぞれなどに適用するステップを含む、製造手法を発見した(このプロセスを、以後、「カット−ゼン−コート−ゼン−カット」プロセスと呼ぶ。)。
【0066】
したがって、本発明の別の態様は、エレクトロクロミック基板を用意するステップと;エレクトロクロミック基板を1つ又は複数の基板ドーターパネルに切断するステップと;複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体を、1つ又は複数の基板ドーターパネルのそれぞれの上に製作するステップと;エレクトロクロミックデバイス前駆体のそれぞれを、個々のエレクトロクロミックデバイスに切断するステップと;個々のエレクトロクロミックデバイスのそれぞれを、個別の外部積層体ガラス板に積層するステップとを含む、エレクトロクロミックデバイス積層体の製造方法である。
【0067】
いくつかの実施形態では、アニールガラスの大きな基板パネルを、1つ又は複数の基板ドーターパネルに切断する。その他の実施形態では、アニールガラスの大きな基板パネルを、複数の基板ドーターパネルに切断する。基板ドーターパネルのそれぞれは、ほぼ同じサイズおよび/または形状であってもよく、または異なるサイズおよび/または形状であってもよい。例えば、初期の大きなEC基板は、3枚の均等にサイズ決めされた基板ドーターパネルに切断されてもよく、または、それぞれが異なるサイズを有する3枚の基板ドーターパネルに切断されてもよい。次いで基板ドーターパネルのエッジの少なくともいくらかは、任意選択のエッジ研削プロセスを受け、その後、好ましくは洗浄を行ってもよい。その他の実施形態では、大きな基板パネルは、単一のより小さい(少なくとも1つの寸法が)基板ドーターパネルに切断される。
【0068】
いくつかの実施形態では、基板ドーターパネルは、さらなる処理のために、即ち本明細書に記述されるECスタックで基板ドーターパネルのそれぞれをコーティングすることによりECデバイス前駆体を製作するために、キャリア上に導入される。任意の数の基板ドーターパネルを任意の単一キャリア上に導入してもよいが、多くの基板ドーターパネルが適合するようにキャリアの表面積を最適化することが好ましい。次いで基板ドーターパネルのそれぞれの上にあるECデバイス前駆体のそれぞれを、レーザもしくは電熱切断によって、または機械的手段によってなど、さらに切断する。
【0069】
カット−ゼン−コート−ゼン−カットプロセスは、いくつかの利点をもたらすと考えられる。第1に、スパッタリングプロセス中にガラス基板が僅かな角度で保持されることは(通常、垂直方向から約5度から9度の間)、典型的なものである。この角度は撓みをもたらす可能性があり、最終的には、ガラスの反りによって不均一なコーティングをもたらす可能性がある。このガラスの反りは、ガラスのサイズが増大するにつれ大きくなると考えられる。したがって、最初により大きな基板パネルから切断された、より小さなガラス片へのスパッタリングを介してコーティング(例えば、ECスタック)を付着させることにより、あらゆる潜在的な不均一性を軽減するのを助ける可能性がある。いくつかの実施形態では、基板ガラスは、コーティング中に垂直に保持される。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、反りは熱応力によって引き起こされる可能性があるとも考えられる。あらゆる熱応力は、基板ドーターパネル、好ましくはより小さい基板ドーターパネルを使用することにより、同様に低減できると考えられる。
【0070】
第2に、ある所望の基板ガラスサイズ(または形状)は、製造業者から常に入手可能とは限らない。例えば、製造業者からのガラスは、キャリアまたは反応性スパッタリングチャンバに取り付けるのに大きすぎる可能性がある。さらに、より大きなガラス片を購入し、それをキャリアに適合するよう最初に切断することが、より費用効果がある可能性がある。
【0071】
第3に、受け取ったままの状態のガラスのエッジは、即座に行われる処理に常に適した状態にあるとは限らないことが考えられる。これらの場合、最初に、欠陥の無いエッジまたは下流の製造および処理要件を満たすエッジを有する、より小さいドーターパネルにガラスを切断することが望ましい。
【0072】
第4に、任意の大きなガラス片は、欠陥を含有する可能性がある。欠陥の無い(1枚または複数の)ガラスパネルは、大量のガラスまたは処理時間を無駄にすることなく、大きなガラスパネルから切断することができる。
【0073】
「コート−ゼン−カット」および「カット−ゼン−コート−ゼン−カット」プロセスにおける積層ステップは、当業者に公知の方法を使用して実施される。例えば、典型的な積層プロセスは、適度な圧力下で積層体を加熱して、ガラスパネル間に部分結合を生成するステップ、例えばニップローラープロセスと、その後の、長期結合プロセス、例えば高温および高圧でオートクレーブを使用して、ガラスとの結合を完了し、残留空気を除去しまたは空気をポリマー構造中に溶解して、光学的に透明な中間層を生成するステップとを含む。その他の手法は:(i)中間層領域から空気を除去し、ガラスパネルを結合するための、加熱と組み合わせた真空プロセス、または(ii)透明な中間層を生成するために、ガラスパネル間の隙間に注がれて、間にある毛管スペースを満たすポリマーを利用する。
【0074】
(従来の機械的スクライブまたは切断)
典型的なガラスの調製では、カーバイドまたはダイヤモンドチップスクライブまたはホイールを使用して、ガラスパネルの表面に切れ目を生成し、次いで曲げモーメントを加えて、表面の亀裂をエッジに沿って伝搬させ、真っ直ぐな切れ目を生成することが考えられる。ガラスのエッジは、研削機または炭化ケイ素サンディングベルトを使用して、しばしば研削される。
【0075】
(レーザ切断)
本発明のいくつかの実施形態では、ECデバイス積層体29またはEC基板31を切断するのにレーザを使用する。本明細書で使用される「レーザ切断」という用語は、(i)完全な分離を生成するために、曲げモーメントを加えることによって後にガラスを通って伝搬する、基板表面に垂直な細い亀裂を生成するのに、レーザを使用すること、または(ii)完全な分離を生成するために、基板の長さにそって伝搬する、レーザ誘発性の亀裂によるガラスを通る完全な切れ目を意味する。レーザ切断のプロセスは、「コート−ゼン−カット」および「カット−ゼン−コート−ゼン−カット」プロセスに等しく適用可能である。
【0076】
したがって本発明の一態様は、エレクトロクロミック基板を用意するステップと;基板上に複数のエレクトロクロミックデバイス前駆体を製作するステップと;エレクトロクロミックデバイス前駆体のそれぞれを個々のエレクトロクロミックデバイスにレーザ切断するステップと;個々のエレクトロクロミックデバイスのそれぞれを、個別の外部積層体ガラス板に積層するステップとを含む、エレクトロクロミックデバイス積層体の製造方法である。いくつかの実施形態では、レーザ切断プロセスは、曲げモーメントを加えることによって後に分離するように伝搬する、細い表面亀裂を誘発させ、または後続の曲げまたは「ブレークアウト(breakout)」を必要とすることなく、完全な分離のために基板に沿って亀裂を開始し伝搬させることによる完全な「カットスルー(cut−through)」を含む。
【0077】
より具体的には、熱的に強靭な、革新的な積層外部グレージングは、コーティングされたガラス基板を個々のドーターペインに切断するのを容易にするために、集光レーザビームを使用して製作される。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、レーザエネルギーは、ガラスを局所的に加熱し、その後、分離線に沿って急速に冷却すると考えられる。この結果、汚染およびエッジの脆弱化をそれぞれ引き起こす可能性のあるチップおよびさらなる微小亀裂の無いエッジをもたらす、ガラスに垂直な亀裂が形成される。結果的に得られた、レーザ処理がなされたエッジは、いかなる追加のエッジ仕上げも必要としない。
【0078】
いくつかの実施形態では、レーザ切断がなされたエッジは、標準的な機械切断されたエッジよりも約2から約3倍高い応力に耐えることができると考えられ、熱強化ガラスに匹敵するエッジ強度のものであると考えられる。その結果、レーザ切断された、焼入れがなされていないECデバイス基板は、温度の変動、したがってガラスが濃く色付けされる場合、現場で典型的には発生する、そのような温度の変動に伴う応力に、耐えることができると考えられる。
【0079】
いくつかの実施形態では、レーザ切断されたパネルは、少なくとも約60MPaの応力に耐えることができる。その他の実施形態では、レーザ切断されたパネルは、少なくとも約69MPaの応力に耐えることができる。さらにその他の実施形態では、レーザ切断されたパネルは、少なくとも約75MPaの応力に耐えることができる。さらにその他の実施形態では、レーザ切断されたパネルは、少なくとも約100MPaの応力に耐えることができる。さらに別の実施形態では、レーザ切断されたパネルは、約70MPaから約310MPaの間の応力に耐えることができる。
【0080】
(電熱切断)
本発明のいくつかの実施形態では、電熱切断(ETC)は、EDデバイス積層体20またはEC基板31を切断しまたは分離するのに使用される。ETCは、絶縁または半導体基板内の小さな領域を加熱する(必要な場合は、蒸発させる)方法を指す。いくつかの実施形態では、ガラスは、2つの電極間にAC放電を適用することによって切断される。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、高電圧はガラスを局所的に加熱し、冷却ヘッドは、貫通亀裂を生成するのに適した応力の形成を引き起こすと考えられる。次いで電極/冷却ヘッドのアセンブリを、定められた経路で移動させて、必要とされるEC基板またはEC基板ドーターパネルのカスタムサイズによって画定された所望のパターンに、亀裂を伝搬させる(制御された分離)。
【0081】
いくつかの実施形態では、ETCにより切断されたパネルは、レーザによって切断されたものと同様の応力に耐えることができる。その他の実施形態では、ETCにより切断されたパネルは、少なくとも約60MPaの応力に耐えることができる。さらにその他の実施形態では、ETCにより切断されたパネルは、少なくとも約69MPaの応力に耐えることができる。他の実施形態では、ETCにより切断されたパネルは、少なくとも約75MPaの応力に耐えることができる。さらに他の実施形態では、ETCにより切断されたパネルは、少なくとも約80MPaの応力に耐えることができる。さらに別の実施形態では、ETCにより切断されたパネルは、少なくとも約100MPaの応力に耐えることができる。
【0082】
(実験データおよび実施例)
(積層体衝撃試験結果)
衝撃試験は、図4に示されるように:(1)アニールされたソーダ石灰フロートガラスまたは低CTEガラスからなるEC基板31と;(2)熱強化ガラス、焼入れガラス、またはアニールガラスからなるEC外部積層体ガラス板22とを含む、「不整合」積層体に関して行った。衝撃データは、EC基板31およびEC外部積層体ガラス板22の厚さに関して有用なデザインの窓を示唆している。ポリビニルブチラール(PVB)およびアイオノマーポリマー(DuPont製SGP)を、中間層材料28として試験をした。SGPは、EC基板/支持基板および中間層の厚さに関して、PVBに比べてより狭いデザインの窓を示し、これはいかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、より良好なPVB性能は、PVB材料の高い順応性/延伸性に関連すると考えられる。
【0083】
図4は、EC基板31、EC外部積層体ガラス板22、および中間層28の厚さの関数として、衝撃試験データをまとめる。図4は、EC基板31の厚さ、EC外部積層体ガラス板22の厚さ、および中間層材料28の厚さの異なる組合せについて実証する。ANSI Z97.1−2004により必要とされる34”×76”の試験幾何形状の場合、データは、広範なガラスおよび中間層の厚さにわたる適用を示した。PVBは、ガラスおよび中間層の厚さに関し、より堅牢であると考えられる。
【0084】
積層グレージングに関して最も広く参照される試験基準は、米国規格協会の規格(American National Standards Institute standard)、ANSI Z97.1−2004により発行される(建築物に使用される安全グレージング材料に関する米国規格−安全性能使用の試験方法(American National Standard for Safety Glazing Materials Used in Buildings−Safety Performance Specifications Method of Test))。この規格は、建築物および建築上の目的で使用される安全グレージング材料の仕様および試験方法を共に確立する。この試験では、綱の端部に保持されて、積層ガラスパネルの中心線に向かって揺り動かされる、鉛弾の100ポンドのバッグの衝撃を与える。同じ試験方法を使用するが僅かに異なる合格/不合格基準を有する、消費者製品安全会議(Consumer Products Safety Council)(CPSC)により発行されたさらなる規格、16CFR1201がある。
【0085】
Z97.1および16CFR1201試験に関する合格/不合格基準は、僅かに異なっている。Z97.1試験は、直径3インチのボールが通過可能と考えられるよりも小さい裂け目/穴の破損および形成を許容する。16CFR1201試験は、パネルが水平位置にある場合、1秒の持続時間後に重さ4ポンドの3インチのボールが開口内を落下しないことを、さらに必要とする。報告された合格/不合格データはZ97.1規格に基づくが、積層体の剛性は、16CFR1201に合格すると本発明者らは考える。
【0086】
両方の試験は、バッグの投下の高さに応じて異なるカテゴリーを有する。本発明者らは、高さ48”からの投下(400フィート−ポンド)を行う最も極端な試験の結果を提示する。典型的な試験パネルのサイズは34”×76”であるが、別のサイズ(40”×40”)についても試験をした。40”×40”の幾何形状は、より難しい試験を表す。以下に示す実施例1〜8における衝撃試験用の全てのガラス基板は、機械的スクライビングによって切断した。試験は、SAGE、Faribault、MN、およびCardinalLG、Amery、Wisconsinで行った。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
(EC積層体)
【0088】
【表1】
【0089】
製造方法:
実施例1の積層EC構造は、「カット−ゼン−コート」プロセスにより製造した。積層は、従来のニップローラー/オートクレーブプロセスを使用して行った。同等の結果を、真空積層プロセスを使用して得ることができた。
【0090】
結果:
上記にて詳述した構成要素を有する積層EC構造は、衝撃試験に関するANSI Z97.1規格に合格した。
【0091】
(実施例2)
(EC積層体)
【表2】
【0092】
製造方法:
実施例2の積層EC構造は、「カット−ゼン−コート」プロセスにより製造した。積層は、従来のニップローラー/オートクレーブプロセスを使用して行った。
【0093】
結果:
上記にて詳述した構成要素を有する積層EC構造は、衝撃試験に関するANSI Z97.1規格に合格した。
【0094】
異なる厚さを有する外部積層パネルを、実施例1および2で試験し、得られた積層体は共に衝撃試験に合格した。同等の結果を、真空積層プロセスを使用して得ることができた。
【0095】
(実施例3)
(EC積層体)
【表3】
【0096】
製造方法:
実施例3の積層EC構造は、「カット−ゼン−コート」プロセスにより製造した。積層は、従来のニップローラー/オートクレーブプロセスを使用して行った。
【0097】
結果:
上記にて詳述した構成要素を有する積層EC構造は、衝撃試験に関するANSI Z97.1規格に合格した。同等の結果を、真空積層プロセスを使用して得ることができた。
【0098】
(実施例4)
(EC積層体)
【表4】
【0099】
製造方法:
実施例4の積層EC構造は、「カット−ゼン−コート」プロセスにより製造した。積層は、従来のニップローラー/オートクレーブプロセスを使用して行った。
【0100】
結果:
上記にて詳述した構成要素を有する積層EC構造は、衝撃試験に関するANSI Z97.1規格に合格した。
【0101】
異なる厚さを有する外部積層体パネルを実施例3および4において試験をし、得られた積層体は共に衝撃試験に合格した。同等の結果を、真空積層プロセスを使用して得ることができた。
【0102】
(実施例5)
(EC積層体)
【表5】
【0103】
製造方法:
実施例5の積層EC構造は、「カット−ゼン−コート」プロセスにより製造した。積層は、従来のニップローラー/オートクレーブプロセスを使用して行った。
【0104】
結果:
上記にて詳述した構成要素を有する積層EC構造は、衝撃試験に関するANSI Z97.1規格に合格した。同等の結果を、真空積層プロセスを使用して得ることができた。
【0105】
(実施例6)
(EC積層体)
【表6】
【0106】
製造方法:
実施例6の積層EC構造は、「カット−ゼン−コート」プロセスにより製造した。積層は、従来のニップローラー/オートクレーブプロセスを使用して行った。
【0107】
結果:
上記にて詳述した構成要素を有する積層EC構造は、衝撃試験に関するANSI Z97.1規格に合格した。同等の結果を、真空積層プロセスを使用して得ることができた。
【0108】
(実施例7)
(EC積層体)
【表7】
【0109】
製造方法:
実施例7の積層EC構造は、「カット−ゼン−コート」プロセスにより製造した。積層は、従来のニップローラー/オートクレーブプロセスを使用して行った。
【0110】
結果:
上記にて詳述した構成要素を有する積層EC構造は、衝撃試験に関するANSI Z97.1規格に合格した。同等の結果を、真空積層プロセスを使用して得ることができた。
【0111】
(実施例8)
(SageGlass(登録商標)ECデバイス)
【表8】
【0112】
製造方法:
実施例8のIGUは、本明細書に記述される標準的な製造プロセスにより製造した。
【0113】
結果:
上記にて詳述した構成要素を有するIGUは、衝撃試験に関するANSI Z97.1規格に合格した。
【0114】
実施例1〜7の積層IGUおよび実施例8の伝統的なIGUは、全て、衝撃試験に関するANSI Z97.1に合格した。したがって、本発明のECデバイス積層体(およびこれらを含むIGU)は、建築適用例に関する全ての重要な工業機械性能要件を満足させ/超えることが可能と考えられる。
【0115】
(機械的にスクライブされアニールされた、レーザ切断されアニールされた、および熱強化された、ソーダ石灰フロートガラスのエッジ強度の比較)
【0116】
本発明者らは、様々なガラス組成、基板厚さ、および機械試験サンプルの向きで、レーザ切断後のエッジ強度を評価した。レーザ切断ガラスに関するエッジ強度の最良の定量測定は、4点曲げ試験設定を使用して行った。4点曲げ、即ち図5に示される「ライイングダウン(lying down)」のサンプルの向きを使用する例では、内部スパン下の全領域が同じ曲げモーメントに供され、したがって、より広い有効面積について調べることが可能になると考えられる。本発明者らは、「エッジオン(edge−on)」と「ライイングダウン」の両方の向きで、エッジ強度の試験をした。使用中に見られるものと同様の応力条件で、上部および底部の両方のエッジを同時に試験することが可能になるので、「エッジオン」の向きを最初に使用した。しかし本発明者らは、両方の試験の向きで、データとの優れた一致を見出し、また「ライイングダウン」は従来の4点曲げ試験取付け具を使用して試験することがより容易であるので、本発明者らは、試験サンプルの大多数を「ライイングダウン」の向きで試験した。典型的なサンプル寸法は、幅25mmおよび長さ330mmで、有効試験領域は約100mmであった。本発明者らは、様々な製造元から得られた標準的なソーダ石灰フロートガラス、ならびにEagle2000(商標)およびEagleXG(商標)(Corning製)とBorofloat33(商標)(Schott Glass製)とを含む低CTEガラスを含む、様々な異なるガラス厚(約1mmから2.3mmの範囲)およびガラス組成について試験をした。
【0117】
本発明者らは、ソーダ石灰ガラスに関する本発明者らのレーザ切断エッジ強度データと、アニールされ、熱強化され、完全に焼入れされたソーダ石灰ガラスに関するエッジ強度の文献値とを比較した。Veerらは最近、アニールされ、熱強化され、焼入れされたガラスを比較する、包括的な実験研究を公表した。Veer、FA、PC Louter、およびFP Bos、「The strength of annealed, heat−strengthened and fully tempered float glass」、Fatigue & Fracture of Engineering Materials & Structures、32 18〜25頁(2009)。熱強化または焼入れに関わる最小サイズ制限により、それらのサンプル寸法(10×10×1000mm、有効試験長約500mm)は本発明者らの研究よりも著しく大きく、直接比較は、統計的に言えば面積が大きくなるほど所与の応力で限界サイズにまでなった傷を含む可能性が高くなるので、適切なスケーリングを必要とする。本発明者らは、Vuolio(2003)とBeasonおよびLignell(2002)Beason,WLおよびAW Lignell、「A Thermal Stress Evaluation Procedure for Monolithic Annealed Glass」、Symp.on the Use of Glass in Buildings、ASTM STP1434、VL Block編(2002)の研究に基づく処理を使用し、その内容は、異なるサンプルサイズごとの強度がそれぞれのエッジ面積の比に比例するという:
σ/σ=(面積/面積1/m
に基づくものである。
【0118】
Weibull係数mは、それぞれの強度分布のばらつきの尺度である。実験データから決定されたm=5.8という値を、計算に使用した。これは比1.7に相当した。
【0119】
組織内および文献の試験結果を比較する面積調節データを、図6に示す。組織内および文献のデータの比較は、レーザ切断試験データが、熱強化(「HS」)および完全焼入れ(「FT」)の文献データに関する分布の中間にあることを示唆している。
【0120】
図6は、機械およびレーザスクライビングに関するエッジ強度の比較確率プロットをさらに示す。レーザスクライブされたパネルは、少なくとも60MPaの強度を示すと考えられる。いくつかの実施形態では、レーザスクライブされたパネルの強度が少なくとも69MPaであり、好ましくは約75MPaであり、より好ましくは約100MPaである。
【0121】
図6は、実験試験の比較も提供する(機械(「機械式スクライブ」)および(「レーザ切断」)および文献データ(試験サンプル幾何形状の相違に合わせて調節)も提供する。従来の機械式スクライブおよびレーザ切断プロセスを使用して作製された、アニールされたサンプルに関する本発明者らの試験データを、図6にそれぞれ三角形および四角形として示す。一般に、レーザ切断されたガラスの強度分布(異なるレーザ切断機を使用した、5つの異なるレーザ切断キャンペーンから得た全データを表す。)は、HSおよびFT性能の間の性能を有すると記述することができる。
【0122】
(実施例9)
(レーザ切断積層体)
【表9】
【0123】
製造方法:
実施例9のレーザ切断積層体は、「コート−ゼン−カット」プロセスにより製造した。積層は、従来のニップローラー/オートクレーブプロセスを使用して行った。EC基板(ECデバイスまたはデバイス前駆体)を、ECスタックが堆積された後に本明細書に記述されるようにレーザ切断した。レーザ切断積層体のエッジ強度は、サンプル内に温度勾配を生成することによりエッジ応力を誘発させることによって測定した。温度勾配は、積層体に比べて横方向の寸法が類似しているシリコーン加熱パッドを使用して生成した。パッドを、加熱されていない周辺が約25mmの幅である、積層体の表面に配置した。勾配の大きさは、積層体のエッジを室温付近に保ちながら、加熱パッドへの印加電力を調節する(バリアック可変電源により制御される)ことによって制御した。誘発された温度勾配により生成されたエッジ応力は、光弾性技法(Stress Photonics,Inc.、Madison,WI)を使用して直接測定した。
【0124】
結果:
上記にて詳述された成分を有するレーザ切断された積層EC構造は、積層後に少なくとも約60MPaのエッジ強度を有していた。
【0125】
製作時の熱レーザスクライブ(TLS)処理のプロセス能力研究も行なった。この研究は、上述の機械式4点曲げ試験を使用した。5つの試験セッションからの80を超えるサンプルから得たデータを収集した。6カ月にわたる5つの異なるTLSキャンペーンを表すデータを使用して、異なる最大限の使用中エッジ応力に基づきプロセス能力を開発した。プロセス能力Cpkは、ECデバイス積層体の窓への適用における動作上のストレス環境で故障の可能性を低くするのに、製作時の強度が十分であることを示唆した。
【0126】
従来の統計的方法を使用してプロセス能力を計算するには、データが正規分布を有する必要があった。TLS機械試験データは、対数正規分布に従い、正規性を実現するのに対数変換を必要とした。プロセス能力値および対応する予測故障率を、いくつかの下側仕様限界(即ち、最大エッジ応力)に関して計算して、デバイスの熱勾配に対する感受性を決定した。最大エッジ応力は、環境相互作用ならびに窓または建築用フレームの設計(例えば、完全に絶縁されたフレーム対ヒートシンク設計)に左右される。能力分析は、Minitab15統計ソフトウェアパッケージを使用して計算した。
【表10】
【0127】
本明細書の本発明について、特定の実施形態を参照しながら述べてきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および適用例の単なる例示であることが理解されよう。したがって、添付される特許請求の範囲により定義されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に多数の変更を行うことができかつその他の配置構成が考えられることが理解されよう。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6