特許第5877197号(P5877197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877197
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】サンプル調製を実行するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/06 20060101AFI20160218BHJP
   G01N 30/18 20060101ALI20160218BHJP
   G01N 30/12 20060101ALI20160218BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   G01N30/06 G
   G01N30/18 A
   G01N30/12 A
   G01N1/22 Y
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-512783(P2013-512783)
(86)(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公表番号】特表2013-527461(P2013-527461A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】EP2011002562
(87)【国際公開番号】WO2011151026
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年4月17日
(31)【優先権主張番号】102010022016.7
(32)【優先日】2010年5月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500132199
【氏名又は名称】ゲルステル システムテクニク ゲーエムベーハー ウント コンパニ カーゲー
【氏名又は名称原語表記】GERSTEL Systemtechnik GmbH & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】テンポント,バート
(72)【発明者】
【氏名】ダービット,フランク
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ,トム
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ,コーエン
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−163492(JP,A)
【文献】 特開2003−083978(JP,A)
【文献】 米国特許第05782964(US,A)
【文献】 特許第3658553(JP,B2)
【文献】 実開昭57−086454(JP,U)
【文献】 米国特許第03179499(US,A)
【文献】 特開平11−072421(JP,A)
【文献】 特開2002−005913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 − 30/96
G01N 1/00 − 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフを含む分析装置のためのサンプル調製を実行するためのデバイスであって、
自己封止カバーによって閉鎖することができると共に検査対象の物質を受容するためのサンプル区画(31)を含むサンプル容器(1)を含み、
更に加熱ワイヤ・コイル(13)を含むホルダ(12)を含み、前記ホルダ内に、前記検査対象の物質を加熱するためにそのサンプル区画(31)を有する前記サンプル容器(1)を挿入することができ、
前記加熱ワイヤ・コイル(13)は、前記ホルダの底部に配置された内側金属リング電極(22)および外側金属リング電極(21)に接続されるよう構成され、
前記内側金属リング電極(22)および前記外側金属リング電極(21)は、共通の平面に配置され、
前記外側金属リング電極(21)は、前記内側金属リング電極(22)を囲んでおり、
更に、前記加熱ワイヤ・コイル(13)のための電源を含み、前記電源が、定電流制御に基づくと共にパルス幅変調によって比例的に制御される、デバイス。
【請求項2】
設けられた前記ホルダ(12)が、閉鎖キャップ17によって閉鎖することができるモジュール容器(14)であり、
その内部(40)に前記サンプル容器(1)が挿入可能容器として挿入され、
前記サンプル容器の下部(15)において前記加熱ワイヤ・コイル(13)が前記モジュール容器(14)に一体化されていることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記加熱ワイヤ・コイル(13)の前記電源が接続可能加熱基盤(33)を介して外部に設けられていることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記加熱ワイヤ・コイル(13)が白金加熱ワイヤ・コイルであることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィ分離方法のためのサンプルを調製するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィ分離方法は、サンプル構成要素の定性的及び定量的な判定のための最も重要な分析方法の1つである。一般に、分離技法の効率は適切なサンプル調製によって向上させることができる。精度、反復性、及びサンプル・スループットにおける最大限の性能について、ユーザがこれを達成するのはできる限り多くのサンプル分離ステップを自動化することが可能な場合のみである。
【0003】
DE−A 1 773 141は、ガス分析装置、具体的にはガスクロマトグラフにおけるサンプリングのための方法を開示する。この方法では、サンプル容器に検査対象の液体又は固体の物質を部分的に充填し、その後に自己封止膜を供給する。サンプル容器の温度を調節することによって、サンプル容器の自由内部空間において揮発性成分を濃縮する。このガス空間からサンプルを取得するため、膜を介してサンプリング・デバイスを押す。次いで、このいわゆる上部空間方法において取得した揮発性構成要素をガス分析によって検査する。
【0004】
この方法を自動的に実行するため、サンプル容器に処置を施すステーションを有する搬送デバイス上に様々なサンプル容器を並べて配置する。これは、少なくとも1つのサンプル成分の化学反応の開始及び抽出デバイス下での一定距離の後のサンプル容器の搬送を含む。
【0005】
熱分解の場合、金属さじに検査対象の物質を充填し、これらのさじをサンプル容器内に置く。次いで、例えば誘導によって搬送デバイスの特定位置でさじを再び加熱すれば良い。この場合、最も揮発性の高い熱分解生成物を検査する。
【0006】
ガスクロマトグラフによる分析のための熱分解を用いた固体サンプルの調製において、一般に、空気排出が供給されたガスクロマトグラフ(GC)において直接に検査対象の物質を分解することが知られている。一般的な実施に従って、その後に熱分解生成物をGCカラムに送出し、分離及び測定を行う。
【0007】
DE 42 06 109 C2から既知であるように、例えば、固体の分子量の大きい物質から、クロマトグラフ分離方法によって分離及び同定可能な分子量の小さい生成物を得るためにも、分析化学において化学物質の熱分解が用いられる。この目的のため、検査対象の物質をリアクター筐体内の金属さじに配置する。熱分解温度を調節するために金属さじを加熱する。リアクター容器にキャリアガス流を流し、これが熱分解生成物を分析測定デバイスに運ぶ。
【0008】
半固体及び固体のサンプルの熱的な分解(熱分解、サーモリシスの後に、結果として得られた分解生成物の化学分析を行うことは、固体又は半固体のサンプルの同定又は特徴付けを行うために今日広く用いられているサンプル分離方法である。分析スケールでは、典型的にμgからmgの範囲であるサンプルを、小さい容器の中に置くか又は加熱媒体に直接接触させる。極めて短い時間、サンプルを、その熱化学反応を可能とする温度に加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE−A 1 773 141
【特許文献2】DE 42 06 109 C2
【特許文献3】DE 198 17 016 A1
【特許文献4】DE 197 20 687 C1
【特許文献5】DE 1 846 022 U
【特許文献6】DE 1 598 436 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、熱分解は500℃及び1400℃の間の温度で行う。次いで、熱的な分解の生成物(熱分解生成物)を、クロマトグラフィ分離方法、主としてガスクロマトグラフィによって分析することが好ましい。他の場合には、熱分解生成物の組成の一般的な特徴付けのために、通常は質量分析計である検出器内に熱分解生成物を直接導入する。今日、典型的に熱分解によって分析されるサンプルは、生物学的サンプル及び環境的サンプルであるか、又は芸術的材料、食物及び農業用途、地球化学及び燃料源、科学捜査及び合成ポリマーにおいて見出される。更に、極性の熱分解生成複合物をインサイチュー(in situ)で誘導体化するために、様々な化学試薬製品が利用可能である。このため、ガスクロマトグラフィにおいて不良のピーク形状を示す極性複合物は、熱分解生成複合物構造の変更によって検出することができる。分析熱分解では、熱分解温度をできる限り迅速に達成すること、及びこの温度をユーザが規定した時間期間にわたって維持することが不可欠である。
【0011】
DE 198 17 016 A1は、加熱コイルに取り付けることができるサンプルを含むサンプリング・チューブを開示する。DE 197 20 687 C1は、誘導コイルにおける熱分解チューブを開示する。DE 1 846 022 Uは、白金らせんによって囲まれた熱分解セルを開示する。DE 1 598 436 Aは、熱分解空間における加熱抵抗器を開示する。
【0012】
従って、本発明の目的は、サンプル調製を実行するためのデバイスであって、熱的分解の生成物の分析検査のための熱化学的調製におけるサンプルの自動化処理を改善し、サンプル調製の再現性を最適化するものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1の特徴(features)によって達成される。
【0014】
このように、サンプル調製を実行するためのデバイスを提供する。これによって、検査対象のサンプルの有利な熱処理が可能となる。本発明に従ったサンプル容器は反応空間を形成し、サンプルの迅速な加熱を可能とする。
【0015】
更に、サンプルの熱処理の前及び/又は後に化学反応を実行可能とするために、サンプル容器内にある量の液体を導入することができる。従って、サンプル容器は同時にある種の試験管であることが好ましい。熱処理の後に、サンプル容器において変換又は分解した生成物/複合物を溶解することができる。
【0016】
再現性及びオートマタビリティのために不可欠なことは、サンプル容器において、化学反応を伴うか又は伴わない熱プロセス及び任意の溶解プロセスを実行可能であるということである。クロマトグラフィ・システムの注入システム又は検出システム及び分離カラムは、熱プロセスにおいて汚染されない。注入プロセスのためにサンプル容器から取り出されるからである。サンプル容器内での熱化学反応は分析プロセスとは独立して実行される。クロマトグラフィ・システムとの直接結合は確立されない。
【0017】
サンプルを取得して、直接サンプル容器に収容し、例えばその性質を変化させない熱化学反応、特に熱分解のための研究室に送ることができる。従って、バクテリア及び菌類等の微生物を培養又は採取し、直接(消毒した)容器に置くことができる。熱化学的に変換したか又は熱分解させた生成物を同様に収容することができる。閉鎖システムによって、汚染の危険を抑える。
【0018】
好ましくは、容器に基づいた分散型インタフェースを提供する。このインタフェースは、具体的には、一体化加熱要素が形成されたモジュール容器を有する容器機構を含むことが好ましい。モジュール容器に、サンプル容器としての挿入可能容器を挿入する。モジュール容器は、隔壁(又は注入ストッパ)を有するキャップによって閉鎖することができる。好ましくは、この隔壁は同時に挿入可能容器も覆う。サンプルを挿入可能容器に入れて、次いで後者を、サンプルの熱化学反応、特に熱的な分解(熱分解、サーモリシス)を可能とする温度に加熱する。サンプル容器としての挿入可能容器内に、隔壁を介してガス及び/又は液体を注入することができる。このため、モジュール容器は、サンプル容器としての内部ホルダを有する注入容器(又は水薬瓶)であることが好ましい。
【0019】
モジュール容器の寸法の選択は、クロマトグラフィ機器の最も一般的な市販のロボット及び自動サンプリング・デバイスによって搬送し処理することができるように行えば良い。
【0020】
熱処理の前に、サンプル容器に不活性ガス又は反応性ガスを流すことができる。サンプルの熱処理の後、サンプル容器を冷却することも可能である。
【0021】
更に、熱的な分解の生成物を溶解するために、サンプル容器内に少量の溶剤を注入することができる。この溶液は、化学分析、特にガスクロマトグラフィ(GC)、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)、超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)、又はキャピラリー電気泳動(CE)を行うことができる。
【0022】
本発明の更に別の構成及び利点は、以下の説明及び従属請求項において見出すことができる。
【0023】
これより、添付図面に示した例示的な実施形態を用いて、本発明について更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】第1の例示的な実施形態に従った、ホルダを含むサンプル容器の部分を概略的に示す。
図1B】第1の例示的な実施形態に従った、ホルダを含むサンプル容器の部分を概略的に示す。
図2A】第2の例示的な実施形態に従った、ホルダを含むサンプル容器の部分を概略的に示す。
図2B】第2の例示的な実施形態に従った、ホルダを含むサンプル容器の部分を概略的に示す。
図3】サンプル容器としての挿入可能容器を含むモジュール容器の部分を概略的に示す。
図4A図1によるサンプル容器としての挿入可能容器を含むモジュール容器を、分解斜視図及び縦断面で概略的に示す。
図4B図1によるサンプル容器としての挿入可能容器を含むモジュール容器を、分解斜視図及び縦断面で概略的に示す。
図5】モジュール容器ステーションを概略的に示す。
図6】自動化サンプル調製ステーションを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、クロマトグラフィ分離方法のためのサンプルを調製するための方法及びサンプル調製を実行するためのデバイスに関する。
【0026】
図1A図1B図2A図2Bに表すように、サンプルを調製するための本発明に従った方法において、サンプル容器1を用いる。このサンプル容器1は空隙を形成し、それにコアとして検査対象の物質を充填する。サンプル容器1は、検査対象の物質を受容するために好ましくは中空容器であり、具体的には管状の容器である。検査対象の物質はサンプル容器1において熱化学反応を起こす。サンプル容器1は、一方側の開口を介して部分的にのみ検査対象の物質又はサンプルを充填し、閉鎖されている。好ましくは、サンプルは、固体、半固体、又は濃縮された生成物から成る。サンプル容器1は、隔壁3又は自己封止分離壁4によって閉鎖されていることが好ましい。
【0027】
サンプル容器1の長さ及び幅の選択は、サンプルを導入した際に分析スケールでのその量が通常μgからmgの範囲であるように行われ、サンプルを充填するのは多くてもサンプル容器1の内部空間2又は空隙の部分長Xである。サンプル容器1の内部空間2は、この範囲でサンプル区画31を形成する。この部分長Xの上に、サンプル容器1の内部空間2は上部空間区画又は内部区画32を形成し、これは例えば自由内部を形成する。上部空間区画32において、揮発性成分を濃縮することができ、又はガスを流すことができ、これによって上部空間区画32はガス空間又はガス区画を形成する。この代わりに又はこれに加えて、具体的にはサンプルの熱化学反応の前及び/又は後に、上部空間区画32に溶剤及び/又は試薬を充填することができる。次いで、上部空間区画32を溶剤区画として用いることができる。
【0028】
サンプル区画31の領域におけるサンプル容器1の幅は、1から20mmの範囲内であることが好ましい。サンプルは、サンプル容器1を充填高さまで充填することができる。サンプル容器1内、具体的にはサンプル区画31内に、検査対象の物質は例えばカラム又はサイロのように蓄積することができる。この代わりに、サンプルは、液体、1片の固体、又は塊としてサンプル容器1内に導入することも可能である。充填量又は充填物の上に上部空間区画32の自由空間領域が延在し、これにガス又は液体を充填することができる。
【0029】
検査対象の物質又はサンプルは、サンプル容器1内において熱化学反応を生じ、少なくとも1つのサンプル成分が別の物質に変換される。好ましくは、これはサーモリシス又は熱分解を伴う。従って、サンプル容器1はサンプル調製のための反応容器である。
【0030】
熱変換又は熱的な分解の生成物は、分析検査のために抽出デバイス(図示せず)によってサンプル容器1から取り出される。従って、サンプル容器1はサンプリングのための反応容器である。
【0031】
好ましくは、サンプル容器1は空隙としての軸又は容器狭窄部5を含み、この中に熱化学反応を行うために検査対象の物質又はサンプルを導入する。少なくとも部分的に検査対象の物質を充填する軸(又は容器狭窄部)5は、サンプル区画31を形成するので、好ましくは部分長Xだけ延在する。好ましくは、軸5はサンプル容器1の下部を形成する。サンプル容器1は、軸5の領域において選択可能な公称幅及び狭い断面を有する容器としての形状を有することが好ましい。軸5は実質的に、頭部で直立するように配置された容器の頸部を形成し、これは容器開口部6における一方側で開口している。
【0032】
サンプル容器1は、軸5の反対側の端部における一方側で端部が開口するように形成されており、これは好ましくは容器開口部6であり、隔壁3又は自己封止分離壁4によって閉鎖されている。
【0033】
図1Aに示すように、自己封止分離壁4は、開放端部に嵌合することができる搬送ヘッド7に形成されることが好ましい。サンプル容器1は、その開放端部を封止した状態で搬送ヘッド7に嵌合させることができ、この目的のために例えばOリング8を使用可能である。自己封止分離壁4は、サンプル容器1へと開口する出口路9を閉鎖する。
【0034】
この代わりに、図2Aに示すように、サンプル容器1の開放端部に蓋10を嵌合することも可能である。蓋10は、サンプル容器1にしっかり締められ、この目的のためにここでもOリング8を設けることができる。蓋10は、抽出デバイス(図示せず)を貫通させるために隔壁3が露呈するように円形のくぼみを有する。
【0035】
図1B及び図2Bに示すように、サンプル容器1においてサンプルを加熱処理するため、サンプル容器1を加熱デバイス11に挿入することができる。サンプル容器1は、好ましくは部分長Xに相当するサンプル容器1の部分長に沿ってのみ熱を加えられる。好ましくは、加熱デバイス11の構成は、ホルダ12が、加熱ワイヤ又は加熱フィラメント13として形成されることが好ましい一体化加熱要素を含み、この中にサンプル容器1を部分的に挿入することができる。加熱ワイヤ13は、サンプルが充填されている部分長に沿ってのみ間接的に熱伝達するようにサンプル容器1を囲む。サンプル容器1内のサンプルの充填高さの結果として、加熱部分が形成され、これに沿ってサンプル容器1内のサンプルに熱が加えられる。これによってサンプルを通過する集中的な熱伝達が達成されるが、高温に露呈されるのはサンプル容器1の一部分、具体的には空隙のみである。
【0036】
好ましくは、特に放熱の他に、サンプル容器1はその容器壁を介した熱伝導によって、すなわちサンプルとの接触によっても、サンプルに熱を伝達する。
【0037】
加熱ワイヤ13は、例えばフラッシュ熱分解を実行するために、サンプル容器の挿入前に予熱しても良い。また、加熱ワイヤ13は、例えばサンプル容器1内の熱分解前の液体サンプルを濃縮するため、異なる温度で動作させることも可能である。
【0038】
このため、好ましくは軸5の形状の空隙内に導入されたサンプルは、軸5の全周にわたって適用される熱処理を施される。熱処理は下部サンプル区画31に限定されており、上部空間区画32では、これに沿ってサンプル容器1の長さ及び断面を配置することによって、上部空間区画32内及び上部空間区画32上で温度低下を調節する。1400℃までの温度レベルの熱作用では、(例えばサンプル容器1の容器壁における)温度低下は、サンプル容器1の容器開口部6まで少なくとも300℃に調節されることが好ましい。
【0039】
サンプル容器1及び加熱デバイス11は、クロマトグラフィ分離技法の分析装置用のサンプルを調製するためのデバイスを形成する。熱化学反応は熱分解として実行されることが好ましい。熱的な分解は不活性雰囲気において実行することができる。すなわち、不活性ガス(ヘリウム、窒素)をサンプル容器1内に導入する。この代わりに、熱的な分解は、酸素の存在下で又は空気雰囲気で実行することも可能である。かかる酸化熱分解により、酸化熱分解生成複合物の割合が高くなる。
【0040】
サンプル及びその後の熱的な分解の生成物は、サンプル容器1に注入した試薬によって化学反応を伴って又は伴わずに溶解させることができる。従って、サンプル容器1は化学反応のための液体を受容するためにも用いられる。このため、サンプル容器は、化学反応、検査のため、並びに、具体的には熱化学処理の前及び/又は後にサンプルを収容するための試験管でもある。
【0041】
クロマトグラフィ分離のため、調製したサンプルの上の気体空間から直接に気相を取得することができ、又は調製したサンプルを選択可能な移動相に溶解することができる。この場合、移動相は液体又は超臨界流体とすることができる。
【0042】
サンプル容器1の空隙は分析スケールで充填される。好ましくは、サンプル容器1はこの範囲で少なくとも部分長Xの部分に沿って充填される。すなわち、サンプルはサンプル容器1の壁によって縁部が画定される。サンプル容器1内の充填レベルに実質的に到達するので、加熱デバイス11からの熱伝達の向上が達成される。任意に、スタッフィング(stuffing)でもっと均一な充填を行うことも可能である。
【0043】
充填量に沿って、間接的な熱伝達のための加熱デバイス11の加熱部分が適用される。この目的のために、サンプル容器1の形状は、管又はフィンガとして形成する他に、容器狭窄部又は軸5を有するように、具体的には容器の形態に形成することができる。好ましくは、サンプル容器1はその下端部が先細になった容器である。しかしながら、サンプル容器1は、常に一方側で開放し、カバー(例えば注入ストッパ、PTFE隔壁、自己封止分離壁等)によって閉鎖することができる中空容器であることが好ましい。加熱部分は、サンプルが充填されている位置に限定される。サンプル容器内にサンプルが存在することで、高い熱浸透が可能である。
【0044】
図3及び図4に示す別の例示的な実施形態によれば、サンプル容器1は、分析サンプル調製の分散型インタフェースを形成する容器機構の一部である。これに設けられたホルダは、閉鎖キャップ17によって閉鎖することができるモジュール容器14であり、その内部40にサンプル容器1が挿入可能容器として挿入され、その下部15は加熱ワイヤ・コイル13をモジュール容器14に一体化する。
【0045】
従って、容器機構は、一体化加熱デバイス11を有する加熱可能モジュール容器14を含み、このデバイス11内に、サンプル容器1を挿入可能容器として取り外し可能に挿入する。容器機構は注入カバーによって閉鎖されている。
【0046】
サンプル容器1に充填される固体又は半固体のサンプル、及びサンプル容器1において濃縮される液体は、例えば熱分解を実行するために選択可能な温度まで加熱することができる。従って、サンプル容器1の構成に関する上述の言及は、ここにも当てはまる。しかしながら、第1の例示的な実施形態の変形として、この場合のサンプル容器1は、外側容器としてのモジュール容器14に取り外し可能に挿入される内側容器である。
【0047】
モジュール容器14は、水薬瓶のような大きさであり、モジュール容器本体16を含み、この上に下部15及び上部(注入)キャップ17がそれぞれ、好ましくは解放可能に固定されている。モジュール容器14の受容空間40において、サンプル容器1は内側容器として設けられている。下部15及びキャップ17は、モジュール容器本体16の内部又は上部にねじ留めすることができると好ましい。
【0048】
下部15は、モジュール容器14の底部において加熱デバイス11を含み、これはホルダのように形成された電気絶縁基部18上に配置されている。このために、電気絶縁基部18上に2つの金属片19がねじ20と接触する加熱ワイヤとして固定されている。絶縁基部18に2つの金属リング電極21、22が適用され、金属片19とリング電極21、22との間に、金属ロッド45によって、具体的には固体の銅ロッドによって電気接点が確立されている。金属接点片19上に、金属ねじ24によって(白金)加熱ワイヤ・コイル13が固定されている。加熱ワイヤ・コイル13は、モジュール容器14の軸方向において加熱部分を画定する。加熱ワイヤ・コイル13はこの加熱部分に沿って石英管25によって支持され、これによっても加熱部分の軸方向の長さを確立することができる。石英管25はこの範囲で、加熱ワイヤ・コイル13により発生した熱を加熱部分上に集中させるためのシールドを形成する。
【0049】
下部15は更に小さいばね26を有し、これによってサンプル容器1は挿入された場合に上方向に押圧される。これによって、開放端部すなわち容器開口部6を有するサンプル容器1を、キャップ17に配置された隔壁3に対して閉塞させる。
【0050】
好ましくは、モジュール容器本体16は、陽極処理を行った(約100μmの酸化物層の)アルミニウムから成り、底部に内部ねじ山27を有し、この中に絶縁基部18の外部ねじ山28をねじ留めすることができる。従って、絶縁基部18はモジュール容器本体16を底部で取り外し可能に閉鎖する。モジュール容器本体16は、金属又は金属合金から成ることが好ましい。
【0051】
好ましくは、サンプル容器1は、1400℃までの熱分解温度に耐えるために石英から成る。好ましくは管状のサンプル容器1は、挿入可能容器として上部分を有し、これは容器狭窄部又は軸5を形成する下部分よりも幅が広い。従ってサンプル容器1は、その閉鎖した下端に向かって先細形状を有することが好ましい。検査対象のサンプルはこの下部分に導入される。またここで、サンプルは、空隙としての軸5内で検査対象の材料のコアを形成することが好ましい。
【0052】
サンプル容器1のモジュール容器本体16への挿入は、サンプルが充填されている軸5が加熱ワイヤ・コイル13によって囲まれるように行う。例えば充填レベル・カラムによって又は1片以上の物体としてサンプルを受容する軸5に沿って、加熱部分が適用される。このため、高温、具体的には高い熱分解温度に露呈されるのは、サンプル容器1の下部分のみである。
【0053】
モジュール容器本体16はキャップ17で閉鎖されている。キャップ17はねじキャップ29であることが好ましく、隔壁3を支持する。この目的のために、モジュール容器本体16は頭部に外部ねじ山30を有する。隔壁3は、抽出デバイス(図示せず)の針の導入を可能とし、これによってサンプル容器1内に熱分解生成物又は反応ガス及び/又は熱分解生成物又は反応液を注入する。好ましくは、隔壁3は、例えばPTFE等、比較的高い温度(例えば300℃まで)に耐えるポリマー・コーティングで被覆されている。
【0054】
サンプル容器1及びモジュール容器14は、隔壁3が設けられた共通のキャップ17によって閉鎖されており、分析検査のために抽出デバイスによってサンプル容器1からサンプルを容易に取り出すことが可能となっている。この範囲で、ばね26は有利な効果を有する。なぜなら、サンプル容器は下部15で支持され、モジュール容器14が閉鎖された場合に隔壁3に対してプレストレスで押圧されるからである。更に、サンプル容器1は、モジュール容器14の受容空間40においてモジュール容器14の容器頚部によって整合可能及び/又は位置決め可能とすることができる。
【0055】
モジュール容器本体16の寸法は、以下のようであることが好ましい。外部寸法は11.5mmであり、ねじキャップ29を除いた高さは32mmである。これらの寸法は、クロマトグラフィ機器において典型的に用いられる2ml容器のものと同一である。モジュール容器本体16のねじ山30は、例えば市販のねじキャップに嵌合するので、これらをモジュール容器本体16と組み合わせて用いることができる。
【0056】
容器狭窄部5の形態の挿入可能サンプル容器1のサンプル区画31の寸法は、例えば以下のように選択することができる。内部寸法は1.9mmであり、長さ(高さ)は12.5mmである。容積は約25μlである。サンプル区画31(図3を参照のこと)の上にある上部空間区画32の寸法は例えば以下のようなものである。内部寸法は5mmであり、長さ(高さ)は12.5mmである。内部容積は好ましくは10から250μlである。具体的には、上部空間区画32は、特にサンプルの熱処理の後に溶剤区画として用いることができる。これらの内部寸法によって、容易に針を挿入し、約50から150μlの溶剤を注入することができる。
【0057】
サンプル区画31の好適な寸法は、サンプル容器1の全高の60%未満から70%の高さである。好ましくは円筒形に形成されているサンプル容器1は、上部空間区画32において4から40mm、特に4から10mmの直径を有することが好ましく、サンプル区画31において1から20mm、具体的には1から5mmの直径を有することが好ましい。
【0058】
図3及び図4に示し上述したモジュール容器14は、内蔵又は一体化された加熱デバイス11を有すると共にサンプル容器1の形態の挿入可能内部挿入物を有する水薬瓶であり、その充填された空隙をサンプル区画31において加熱デバイス11によって加熱することができる。このため、サンプルの熱処理は分散して実行され、クロマトグラフィ分析装置から切り離されている。
【0059】
加熱デバイス11は、外部電気供給によって動作させることができる。好ましくは、この目的のためにモジュール容器14を別個の加熱基盤33上に配置する。例えばばねにより装填される接点のような簡単な接続技法又はプラグイン技法によって、モジュール容器14の下部15の電極21、22に対する接続を行うことができる。従って、電極21、22は外部電気供給のための接続要素を形成し、この目的のために絶縁部18内に外部挿入されることが好ましい。加熱基盤33は、モジュール容器ステーション34上に搭載することができる(図5を参照のこと)。
【0060】
本発明によれば、加熱ワイヤ・コイル13のための電源は、図1A図1B図2A図2B図3、及び図4に示した例示的な実施形態において、定電流制御に基づいている。この定電流制御は、パルス幅変調(PWM)により比例的に制御される。すなわち、PWM値が高くなると電流が大きくなる。更に、加熱ワイヤ・コイル13の温度は電流に比例する。最大PWM値をプログラムすることによって、加熱の増大は時間の関数として制御することができる。パルス幅変調は、サンプル容器1におけるサンプルの熱処理の再現性を最適化する。
【0061】
このため、加熱ワイヤ・コイル13の正確な取り付けが不良であるという事実のために、異なる電気抵抗が取得されることなく加熱抵抗加熱ワイヤの原理を利用する。全電気回路の全抵抗は所与の電圧に対する電流に影響を与える可能性があるので、これは重要である。
【0062】
温度は、3つのパラメータによって制御されることが好ましい。すなわち、予熱時間、遅延時間、及び加熱PWMである。予熱時間は、加熱ワイヤ・コイル13に最大電流を印加する時間である。予熱の後に得られる温度は、その持続時間に依存する。遅延時間中は電流を印加しない。この遅延によって、特に比較的低い温度での温度超過確率(exceedance)を低減する。加熱PWM値は、加熱期間中の電流の尺度である。
【0063】
加熱ワイヤ・コイル13による初期加熱は、例えば20から50℃/sで比較的ゆっくり開始することができ、250℃/sまで上昇させることができる。このため、例えば500℃の熱分解温度を達成するために2分から3分しか必要としない。熱分解温度までの加熱時間は、10から30秒であることが好ましい。
【0064】
例えば熱分解の前にサンプル容器1内の液体サンプルを蒸発させるために、加熱ワイヤ・コイル13によって、例えば150から250℃の蒸発器温度を設定する。蒸発及び熱分解は、同一のサンプル容器1において実行することができる。
【0065】
加熱ワイヤ・コイル13は、好ましくは白金加熱ワイヤ・コイルである。
【0066】
従って、サンプル容器1は、モジュール容器14の受容空間40内に挿入可能である(外側)水薬瓶のための挿入物として形成され、(内側)水薬瓶としてキャップ17で閉鎖することができる。このため、内側水薬瓶を有する外側水薬瓶が形成され、これらは共通の注入閉鎖部を有することが好ましい。
【0067】
図6に示すように、モジュール容器ステーション34は、制御ユニット44が形成された市販のXYZロボット上に取り付けることができる。モジュール容器14は、Zユニット35によって、容器ホルダ・ラック36からモジュール容器ステーション34内に搬送することができる。熱分解の後、溶剤容器37からZユニット35内にシリンジによって溶剤を吸引し、モジュール容器14内に注入することができる。この後、更に混合するためにモジュール容器を攪拌しても良い。最後に、抽出物を、例えば液体クロマトグラフィ・システムに注入するため注入弁38上に設置されているループ内に注入することができる。このように、モジュール容器14は、クロマトグラフィ分離技法におけるサンプル調製及びサンプル送出のためのロボットにインタフェースとして一体化することができる。
【0068】
図5は、加熱基盤33とフロー・セル39とを有するモジュール容器ステーション34を示す。フロー・セル39に例えば不活性ガスを流す。このガスは、気密シリンジによって吸引してサンプル容器1内に導入することができる。
【0069】
本発明によって、容器内のサンプルを調製することが可能となり、このプロセスは完全に自動化することができる。本発明によれば、異なるサンプル容器1を用いても、異なる熱分解条件を生じることはなく、従って、再現不可能なピログラム(pyrogram)を生じることもない。
【0070】
その後の熱分解のためにモジュール容器14を用いることができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6