特許第5877198号(P5877198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877198
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20160218BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20160218BHJP
   C07D 221/04 20060101ALI20160218BHJP
   C07D 215/04 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   C11B9/00 W
   A61Q13/00 101
   A61K8/49
   C07D221/04CSP
   C07D215/04
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-515885(P2013-515885)
(86)(22)【出願日】2011年6月22日
(65)【公表番号】特表2013-531098(P2013-531098A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】EP2011060451
(87)【国際公開番号】WO2011161163
(87)【国際公開日】20111229
【審査請求日】2014年6月20日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2010/000914
(32)【優先日】2010年6月22日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(74)【代理人】
【識別番号】100195419
【弁理士】
【氏名又は名称】矢後 知美
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 規樹
(72)【発明者】
【氏名】ゲーケ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,リー ジュイン
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04160094(US,A)
【文献】 米国特許第04975431(US,A)
【文献】 特開昭53−050173(JP,A)
【文献】 特開平03−099063(JP,A)
【文献】 特開平06−157461(JP,A)
【文献】 特公昭34−008319(JP,B1)
【文献】 特開昭63−112562(JP,A)
【文献】 Journal of Heterocyclic Chemistry,(1965), 2(1),91-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00− 9/02
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−99/00
C07D215/04
C07D221/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
式中
n=0、1、2、3および
R=C2〜C6の直鎖状および分岐状アルキル、アルケニルおよびシクロアルキル置換基
で表される化合物の、フレーバーまたはフレグランス成分としての使用。
【請求項2】
式(I)で表される化合物が、
8−sec−ブチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン、
8−(ペンタン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン、
8−(ペンタン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン、
7−sec−ブチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン、
7−(ペンタン−2−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン、
7−(ペンタン−3−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン、
7−(3−メチルブタ−2−エニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式(I)
【化2】
式中
n=0、1、2、3および
R=C2〜C6の直鎖状および分岐状アルキル、アルケニルおよびシクロアルキル置換基
で表される化合物を含む、フレグランスまたはフレーバー組成物あるいはフレーバー付または芳香品物。
【請求項4】
着香組成物のまたは芳香品物の、あるいはフレーバー組成物またはフレーバー付品物の快楽特性を与える、増大させる、改善するまたは改変する方法であって、前記組成物または品物に式(I)
【化3】
式中
n=0、1、2、3および
R=C2〜C6の直鎖状および分岐状アルキル、アルケニルおよびシクロアルキル置換基
で表される化合物を添加する、前記方法。
【請求項5】
式(I)
【化4】
式中
n=0、1、2、3および
R=C2〜C6の直鎖状および分岐状アルキル、アルケニルおよびシクロアルキル置換基
で表される化合物であって、
【化5】
ではない、前記化合物。
【請求項6】
8−sec−ブチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン、
8−(ペンタン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン、
8−(ペンタン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン、
7−sec−ブチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン、
7−(ペンタン−2−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン、
7−(ペンタン−3−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン、
7−(3−メチルブタ−2−エニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
からなる群から選択される、請求項5に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーバルグリーン(herbal-green)の香りを送達することができるフレグランスおよびフレーバー成分に関する。
【背景技術】
【0002】
ハーバルグリーンファミリーのフレグランスおよびフレーバー成分が知られている。市販のハーバルグリーン成分のいくつかの例は、cis−3−ヘキセノール、ガルバナム、ピラジン類、ペリルアルデヒドおよびWO2004048336に開示されたあるピリジン類を含む。
【0003】
しかしながら、キノリン類は、ハーバルグリーンファミリーに分類される臭気剤またはフレーバー剤を提供するであろう分子のクラスであるとは考えられないだろう。例えば、2−イソブチルキノリンは、ミント調の、土臭い、ウッディな香りを有するのに対し、ピラロン(pyralone)は、土臭い、レザー調ウッディな、タバコ様の香りを有する。これらの材料の両方は、全体に芳香性キノリン類である。
5,6,7,8−テトラヒドロキノリン誘導体は、文献に開示されている。ある5,6,7,8−テトラヒドロキノリン誘導体は、Monatshefte fuer Chemie 1984, 115, 1219; J. Chem Soc. Perkin Tr. 1, 1980, 1933に開示されているが、それらの香りの説明は、描写されていない。
【0004】
他の5,6,7,8−テトラヒドロキノリン誘導体が開示されている(構造を以下に示す)が、同様に、これらの化合物の各々に関し、香りの説明が報告されなかった。
【化1】
【0005】
一方、DE2437901は、三置換テトラヒドロキノリンの香りを記載している。より具体的には、この文献は、2,5−ジメチル−8−イソプロピル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリンを明らかにスパイシーでわずかにアンバー様の香りを有するとして、すなわち、ハーバルグリーン成分の特徴とはかけ離れていることを、記載している。
【発明の概要】
【0006】
調香師およびフレーバリストのパレットに同じように追加することができ、適用する製品にハーバルグリーンの面を付与する新しいフレーバーおよびフレグランス成分を提供する必要性が残る。
【0007】
驚くべきことに、本出願人は、式(I)
【化2】
式中
n=0、1、2、3および
R=C2〜C6の直鎖状および分岐状アルキル、アルケニルおよびシクロアルキル置換基
で表される化合物と一致するある8−置換5,6,7,8−テトラヒドロキノリン化合物が、望ましいハーバルグリーンの香りを示すことから、それらがフレグランスまたはフレーバー利用品における使用に好適であり、フレッシュ、緑のトマトの葉、朝鮮人参およびプチグレンの香りの方向の非常に望ましい香りのプロファイルを提供することから、これらの材料が香水およびフレーバー産業における利用に著しく好適であることを見出した。
【0008】
出願人は、他の置換5,6,7,8−テトラヒドロキノリン化合物の快楽性を調査した。具体的には、8位がメチル基により置換された材料が、あまり望ましくない、ピコリン、きついミント調のノートをしのばせた、むしろ不快な化学的な香りがすることを見出した。同様に、8,8−二置換誘導体が、非常に弱い臭気剤であり、その理由から望ましくないことを見出した。さらに、2位がメチル基により置換された材料が、非常に弱く、興味の湧かない香りを示した。
【0009】
したがって、本発明の第一の面において、式(I)で表される化合物のフレーバーまたはフレグランス成分としての使用を提供する。
上に論じたように、式(I)に属するある化合物は、既知であるが、それらの香りは、記載されたことがない。
【0010】
したがって、本発明のさらに別の面において、式(I)
【化3】
式中
n=0、1、2、3および
R=C2〜C6の直鎖状および分岐状アルキル、アルケニルおよびシクロアルキル置換基
で表される化合物を提供するが、化合物
【化4】
は、式(I)の範囲から除外される。
【0011】
式(I)の好ましい化合物は、
8−sec−ブチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
8−(ペンタン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
8−(ペンタン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
7−sec−ブチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
7−(ペンタン−2−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
7−(ペンタン−3−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
7−(3−メチルブタ−2−エニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
である。
【0012】
式(I)で表される化合物は、スキーム1に従い、市販の出発材料5,6,7,8−テトラヒドロキノリン、6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン類または6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−シクロヘプタ[b]ピリジンのアルキル化により調製することができる。
【化5】
【0013】
特定の式(I)で表される化合物への合成経路のさらなる説明は、以下の例に示されている。
それらの望ましい香りのプロファイルのために、式(I)で表される化合物は、あらゆる種類の香水利用品においてフレグランス成分としての使用に好適である。同様に、それらの香りはまた、食品、飲料およびオーラルケア製品にアロマを添加し得ることから、フレーバー剤の成分として好適である。
【0014】
したがって、本発明の別の面において、着香組成物または芳香品物の、あるいはフレーバー組成物またはフレーバー付品物の快楽特性を与える、増大させる、改善するまたは改変する方法を提供し、該方法は、前記組成物または品物に式(I)で表される化合物を添加することを含む。
【0015】
式(I)で表される化合物の驚くべき特性により、本発明は、その別の面において、式(I)で表される化合物を含むフレグランスまたはフレーバー組成物あるいはフレーバー付または芳香品物を提供する。
前記フレグランスまたはフレーバー組成物はまた、式(I)で表される化合物のための担体材料、香水またはフレーバーベース、ならびにフレグランスおよびフレーバー配合物に有用な他の助剤を含んでもよい。
【0016】
本明細書において、用語「担体材料」は、フレグランスまたはフレーバーの観点から中性または実質的に中性である材料、すなわち、着香またはフレーバー成分の官能特性を有意に変えない材料のことを指す。
【0017】
担体材料として、香水またはフレーバー利用品において一般に使用される乳化系、すなわち溶剤および界面活性剤系、または溶剤を挙げることができる。香水またはフレーバー産業において一般に使用される溶剤の性質および種類の詳細な説明は、網羅されていない。しかしながら、香水において有用な溶剤の非限定例として、ジプロピレングリコール、ジエチルフタラート、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノールまたはクエン酸エチルを挙げることができる。
【0018】
担体材料はまた、吸収ゴムまたはポリマー、あるいは封入材料を含んでもよい。封入は、当業者に周知の方法であり、例えば、噴霧乾燥、凝集または湿式押出などの技術を使用して、または液滴形成または複合液滴形成技術により行ってもよい。
【0019】
本明細書において、用語「香水またはフレーバーベース」は、式(I)で表される化合物とは異なる少なくとも1種の着香またはフレーバー剤共同材料を含む組成物を意味する。
【0020】
さらに、共同材料は、快楽効果を付与するために使用される。例えば、かかる共同材料は、着香共同材料であると考えられる場合、当業者によって、組成物の香りを肯定的なまたは心地良い意味で付与するまたは改変することができ、単に香りを有するのみではないと認識されるべきである。同様に、共同材料が、フレーバー剤である場合、当業者によって、フレーバーの調和を創造する、改変するまたは増大させることができると認識される。
【0021】
ベースに存在する着香またはフレーバー共同材料の性質および種類は、ここではより詳細な説明を保証せず、それは、いずれにせよ網羅的ではなく、当業者は、それらをその一般的な知識に基づきおよび用途または適用および所望の官能効果に従って選択することができる。
【0022】
一般的な用語において、着香共同材料は、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アセテート類、ニトリル類、テルペン系炭化水素類、窒素含有または硫黄含有複素環化合物および精油といった多様な化合物のクラスに属し、前記着香共同材料は、天然または合成由来であり得る。これらの共同材料の多くは、いずれにせよ、S. Arctanderによる書籍であるPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAまたはそのより最近の版などの参照文献において、あるいは同様の他の著作物においてならびに香水の分野における十分な特許文献において挙げられている。前記共同材料はまた、制御された様式で、様々な種類の着香化合物を放出することで知られる化合物であってもよいことも理解される。
【0023】
フレーバー共同材料の具体例は、天然フレーバー、人工フレーバー、スパイス、香味料などを含んでもよいが、これらに限定されない。例となるフレーバー共同材料は、合成フレーバーオイルおよびフレーバー芳香化合物(aromatics)および/またはオイル、オレオレジン、エッセンス、蒸留物、および植物、葉、花、フルーツなど由来の抽出物、および前述のものの少なくとも1種を含む組合せを含む。
【0024】
例となるフレーバーオイルは、スペアミントオイル、シナモンオイル、ウィンターグリーン(サリチル酸メチル)のオイル、ペパーミントオイル、ハッカオイル、クローブオイル、ベイオイル、アニスオイル、ユーカリオイル、タイムオイル、ニオイヒバオイル、ナツメグのオイル、オールスパイス、セージのオイル、メース、ビターアーモンドのオイル、およびカッシアオイルを含み、有用なフレーバー剤は、人工、天然および合成フルーツフレーバー、例えば、バニラ、およびレモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、柚子、酢橘を含むシトラスオイル、およびリンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、ブルーベリー、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、プルーン、レーズン、コーラ、ガラナ、ネロリ、パイナップル、アプリコット、バナナ、メロン、アプリコット、ウメ、サクランボ、ラズベリー、ブラックベリー、トロピカルフルーツ、マンゴー、マンゴスチン、ザクロ、パパイヤを含むフルーツエッセンスなどを含む。
【0025】
フレーバー剤により付与される追加の例となるフレーバーは、ミルクフレーバー、バターフレーバー、チーズフレーバー、クリームフレーバー、およびヨーグルトフレーバー;バニラフレーバー;茶またはコーヒーフレーバー、例えば、緑茶フレーバー、烏龍茶フレーバー、茶フレーバー、ココアフレーバー、チョコレートフレーバー、およびコーヒーフレーバー;ミントフレーバー、例えば、ペパーミントフレーバー、スペアミントフレーバー、およびハッカフレーバー;スパイシーフレーバー、例えば、アサフェティダフレーバー、アジョワンフレーバー、アニスフレーバー、アンゼリカフレーバー、フェンネルフレーバー、オールスパイスフレーバー、シナモンフレーバー、カモミールフレーバー、マスタードフレーバー、カルダモンフレーバー、キャラウェーフレーバー、クミンフレーバー、クローブフレーバー、コショウフレーバー、コリアンダーフレーバー、ササフラスフレーバー、サボリーフレーバー、サンショウフレーバー、ペリルフレーバー、ジュニパーベリーフレーバー、ショウガフレーバー、スターアニスフレーバー、ホースラディッシュフレーバー、タイムフレーバー、タラゴンフレーバー、ディルフレーバー、トウガラシフレーバー、ナツメグフレーバー、バジルフレーバー、マジョラムフレーバー、ローズマリーフレーバー、ベイリーフフレーバー、およびワサビ(日本のホースラディッシュ)フレーバー;ナッツフレーバー、例えば、アーモンドフレーバー、ヘーゼルナッツフレーバー、マカダミアナッツフレーバー、ピーナッツフレーバー、ピーカンフレーバー、ピスタチオフレーバー、およびクルミフレーバー;アルコールフレーバー、例えば、ワインフレーバー、ウィスキーフレーバー、ブランデーフレーバー、ラムフレーバー、ジンフレーバー、およびリキュールフレーバー;フローラルフレーバー;および野菜フレーバー、例えば、タマネギフレーバー、ニンニクフレーバー、キャベツフレーバー、ニンジンフレーバー、セロリフレーバー、マッシュルームフレーバー、およびトマトフレーバーを含む。
【0026】
フレーバー共同材料は、アルデヒド類およびエステル類、例えば、酢酸シンナミル、シンナムアルデヒド、シトラールジエチルアセタール、酢酸ジヒドロカルビル、ギ酸オイゲニル49、p−メチルアニソールなどを含んでもよい。アルデヒドフレーバー剤のさらなる例は、アセトアルデヒド(リンゴ)、ベンズアルデヒド(サクランボ、アーモンド)、アニスアルデヒド(リコリス、アニス)、桂皮アルデヒド(シナモン)、シトラール、すなわち、α−シトラール(レモン、ライム)、ネラール、すなわち、β−シトラール(レモン、ライム)、デカナール(オレンジ、レモン)、エチルバニリン(バニラ、クリーム)、ヘリオトロープ、すなわち、ピペロナール(バニラ、クリーム)、バニリン(バニラ、クリーム)、α−アミルシンナムアルデヒド(スパイシーフルーティフレーバー)、ブチルアルデヒド(バター、チーズ)、バレルアルデヒド(バター、チーズ)、シトロネラル(修飾型、多種類)、デカナール(シトラスフルーツ)、アルデヒドC−8(シトラスフルーツ)、アルデヒドC−9(シトラスフルーツ)、アルデヒドC−12(シトラスフルーツ)、2−エチルブチルアルデヒド(ベリーフルーツ)、ヘキセナール、すなわち、trans−2(ベリーフルーツ)、トリルアルデヒド(サクランボ、アーモンド)、ベラトルムアルデヒド(バニラ)、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、すなわち、メロナール(メロン)、2,6−ジメチルオクタナール(グリーンフルーツ)、および2−ドデセナール(シトラス、マンダリン)などを含む。一般的に、Chemicals Used in Food Processing, publication 1274, pages 63-258, by the National Academy of Sciencesに記載されているものなどのあらゆるフレーバーまたは食品添加剤を使用することができる。この文献を、参照として本明細書中に組み込む。
【0027】
本明細書において、用語「助剤」は、その快楽特性以外の香料の特性に影響を与える成分を意味する。例えば、助剤は、組成物または組成物を含有する品物を処理するための助けとして作用する成分であってもよく、または前記組成物または品物の取り扱いもしくは貯蔵を改善してもよい。また、組成物または品物に色または質感を付与するなど追加の利益を提供する成分であってもよい。また、組成物または品物中に含有される1種または2種以上の成分に、耐光性または化学的安定性を付与する成分であってもよい。着香およびフレーバー剤組成物において一般に使用される助剤の性質および種類の詳細な説明は、網羅することはできないが、前記成分は、当業者には周知であることを述べなければならない。助剤の例には、溶媒および共溶媒;界面活性剤および乳化剤;粘度およびレオロジー改変剤;増粘およびゲル化剤;保存性物質;顔料、染料および着色物;増量剤、充填剤および補強剤;熱および光の有害作用に対する安定剤、膨化剤、酸味料、緩衝剤および抗酸化剤が含まれる。
【0028】
さらに、式(I)で表される化合物は、前記化合物(I)が添加される組成物または品物の香りを肯定的に付与するまたは改変する最新の香水およびフレーバー技術のすべての分野において使用することができる。その結果、少なくとも1種の式の化合物を含む着香またはフレーバー付品物は、本発明の別の面を構成する。
【0029】
品物の構成成分の性質および種類は、ここではより詳細な説明を必要なこととせず、それは、いずれにせよ網羅できないからであって、当業者は、それらを、その一般的な知識に基づき、前記製品の性質および所望の効果に従って、選択することができる。
【0030】
好適な品物の例には、固形または液体洗剤および衣料用柔軟剤、ならびに香水において一般的なすべての他の品物、すなわち香水、コロンまたはアフターシェーブローション、芳香石けん、シャワーまたはバスソルト、ムース、オイルまたはジェル、衛生製品またはヘアケア製品、例えばシャンプー、ボディケア製品、デオドラントまたは制汗剤、エアフレッシュナーおよびまた化粧品調製物を含み得る消費者製品が含まれる。洗剤として、家庭用または工業用の使用を意図するに関わらず、洗剤組成物または洗浄用または様々な表面の清浄用清浄製品などの意図する利用品、例えば、織物、食器または硬表面処理を意図するものがある。他の芳香品物は、衣料品用リフレッシャー、アイロンウォーター、紙、雑巾または漂白剤である。
【0031】
消費者製品はまた、栄養および楽しみの少なくとも1つのために消費されるか、または廃棄される前に一定期間口内に保持することが意図されるあらゆる固形または液体組成物を含んでもよい。広い一般的なリストには、あらゆる種類の食品、菓子類、焼いた食品、甘い食品、乳製品および飲料、およびオーラルケア製品が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
消費者製品のベースのいくつかは、式(I)で表される化合物にとって攻撃的な媒体を示し得ることから、該化合物を早過ぎる(premature)分解から、例えば封入により、保護することが必要となり得る。
【0033】
式(I)で表される化合物を様々な前述の品物または組成物に組み込むことができる割合は、広範囲の値で変化し得る。これらの値は、着香される品物および所望の官能効果、ならびに本発明の化合物が、当該技術分野において一般に使用される着香またはフレーバー剤共同成分、溶剤または添加剤と混合されるとき、所定のベースにおける共同材料の性質に依存する。
【0034】
例えば、着香組成物の場合、典型的な濃度は、組み込まれる組成物の重量を基準として、式(I)で表される化合物の0.01重量%から3重量%程度であるか、またはそれより多い。0.0001重量%から0.5重量%程度など、これらより低い濃度は、これらの化合物を芳香品物に組み込むときに使用することができる。
【0035】
フレーバー剤組成物の場合、典型的な濃度は、組み込まれる組成物の重量を基準として、式(I)で表される化合物の0.01重量%から3重量%程度であるか、またはそれより多い。0.0001重量%から0.05重量%程度などのこれらより低い濃度は、これらの化合物をフレーバー付品物に組み込むときに使用することができる。
ここで、以下に本発明を例示する一連の例が続く。
【0036】
例1
8−sec−ブチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン(GR-50-0572)
【化6】
【0037】
BuLi溶液(6.8ml、ヘキサン中1.6M)を、THF(20ml)中5,6,7,8−テトラヒドロキノリン(1.33g、10mmol)の冷却(−78℃)溶液に滴加した。混合物を−78℃で10分攪拌し、臭化sec−ブチル(1.51g、11mmol)を滴加した。混合物を1時間で室温まで温め、水で注意深く急冷し、MTBE(3×50ml)で抽出した。複合有機相を水およびブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、および真空濃縮した。茶色の残渣がバルブ・ツー・バルブ蒸留され、1.69g(89%)の表題の化合物が無色のオイルとして得られた。これは、一般的な合成手順であり、例示された他の化合物がこの手順に従い、8位に正しいアルキル基を付加するために適切なアルキルハライドアルキル化剤を用いるために適宜変更し、作られた。
香り:グリーン、ハーブ調、アメリカ人参、ショウガ、トマトの葉、エンドウ。
4:6の比率の2種類の異性体(isomer)。
【0038】
【数1】
【0039】
例2
8−(ブタ−3−エン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン

【化7】
香り:ハーバル、メタリック、グリーンおよび朝鮮人参、フルーティ。
8:2の比率の2種類の異性体。
【0040】
【数2】
【0041】
例3
8−(ブタ−2−エニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
【化8】
香り:フルーティ、土臭い、オレンジフラワー、グリーンおよびハーバル。
9:1の比率の(E,Z)異性体の混合物。
【0042】
【数3】
【0043】
例4
8−(2,3−ジメチルブタ−2−エニル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
【化9】
香り:グリーン、フローラル、ミュゲ様、プチグレンノートを伴うコロン。
【0044】
【数4】
【0045】
例5
8−イソブチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
【化10】
香り:グリーン、ハーブ調、ピラジン、土臭いおよびアメリカ人参。
【0046】
【数5】
【0047】
例6
8−イソプロピル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
【化11】
香り:グリーン、葉、フレッシュ、樟脳調、タッチがオレンジブロッサムおよび朝鮮人参。
【0048】
【数6】
【0049】
例7
8−(ペンタン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
【化12】
香り:グリーン、トマトの葉、ハーブ調、アメリカ人参およびピラジン様。
(1:1)の比率の2種類の異性体。
【0050】
【数7】
【0051】
例8
8−(ペンタン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
【化13】
香り:グリーン、ハーバル、朝鮮人参およびピラジン様、フルーティ、シトラスおよび土臭い。
【0052】
【数8】
【0053】
例9
8−シクロヘキシル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
【化14】
香り:グリーン、ハーブ調、サヤマメ様、オレンジフラワー、プチグレン。
【0054】
【数9】
【0055】
例10
8−(2−メタリル)−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
【化15】
香り:フルーティ、土臭い、オレンジフラワー、グリーンおよびハーバル。
【0056】
【数10】
【0057】
例11
8−ヘキシル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
【化16】
香り:グリーン、葉調、フルーティおよびプチグレン様、強い。
【0058】
【数11】
【0059】
例12
7−sec−ブチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
【化17】
香り:グリーン、エンドウ豆のノートを伴う葉調、フルーティ、わずかに樟脳調。
(1:1)の比率の2種類の異性体。
【0060】
【数12】
【0061】
例13
7−(ペンタン−2−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
【化18】
香り:グリーン、ハーブ調、アロマ、フローラル(スズラン)、より少ない朝鮮人参およびピラジン様。
(1:1)の比率の2種類の異性体の混合物。
【0062】
【数13】
【0063】
例14
7−(ペンタン−3−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
【化19】
香り:グリーン、トマトの葉、アロマ、ハーブ調、フローラル(スズラン)、より少ない朝鮮人参およびピラジン様。
【0064】
【数14】
【0065】
例15
7−(2−メタリル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
【化20】
香り:グリーン、オレンジフラワー(ネロリ)、刺激性(pungent)。
【0066】
【数15】
【0067】
例16
7−イソブチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
【化21】
香り:グリーン、土臭い、朝鮮人参。
【0068】
【数16】
【0069】
例17
7−(3−メチルブタ−2−エニル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
【化22】
香り:グリーン、葉様、フローラル、オレンジフラワー、プチグレン。
【0070】
【数17】
【0071】
例18
7−(ブタ−3−エン−2−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
【化23】
香り:グリーン、ハーバル、フルーティ、朝鮮人参およびピラジン様。
2:8の比率の2種類の異性体。
【0072】
【数18】
【0073】
例19
7−ペンチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
【化24】
香り:グリーン、フローラル、ピラジン、ヒヤシンス様、強い。
【0074】
【数19】
【0075】
例20
7−シクロヘキシル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン
【化25】
香り:グリーン、ハーブ調、サヤマメ、プチグレン様。
【0076】
【数20】
【0077】
例21
8−sec−ブチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリンがシトラスの特徴を増大させる有機的でスパイシーな、ショウガ香水利用品は、フレッシュさを与え、自然なグリーンの面を創造する。
【0078】
【表1】