(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)成分のモル含有量に対する、前記(B)成分のホウ素換算モル含有量のモル比が、0.05以上4.0以下であることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油添加剤。
潤滑油基油、無灰分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、金属系清浄剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤及び着色剤から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の潤滑油添加剤。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.潤滑油添加剤
本発明の第1の態様に係る潤滑油添加剤について説明する。
<(A)成分>
本発明における(A)成分は、一般式(1)で表される窒素含有化合物である。
【0026】
一般式(1)において、mは0又は1の整数であり、mが1の場合、nは0又は1の整数である。nは、より好ましくは0である。
【0027】
一般式(1)において、R
1は、炭素数1以上30以下の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基であり、好ましくは炭素数10以上30以下の炭化水素基又は機能性を有する炭素数10以上30以下の炭化水素基である。
【0028】
ここで、上記炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
【0029】
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基を挙げることができる。
【0030】
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5以上7以下のシクロアルキル基を挙げることができる。
【0031】
上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6以上30以下のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置は任意である。)を挙げることができる。
【0032】
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらの二重結合の位置は任意である。)を挙げることができる。
【0033】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。
【0034】
上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7以上30以下のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖であることが好ましい。またアリール基への置換位置は任意であるが、好ましくはパラ位である。)を挙げることができる。
【0035】
上記アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7以上30以下のアリールアルキル基(アルキル基は直鎖であることが好ましい。またアルキル基への置換位置は任意であるが、ω位(α位とは反対側の鎖末端)が好ましい。)を挙げることができる。
【0036】
上記R
1の炭化水素基は、アルキル基又はアルケニル基がより好ましい。R
1はより好ましくは炭素数12以上24以下のアルキル基若しくはアルケニル基又は機能性を有する炭素数12以上24以下のアルキル基若しくはアルケニル基であり、特に好ましくは炭素数12以上24以下のアルケニル基である。なお、R
1がアルケニル基の場合には、二重結合を挟むアルキル基は直鎖であることが好ましい。また、基油への溶解性を高める観点からは、一般式(1)においてnが1の場合には、R
1の炭素数は16以上であることが好ましい。
【0037】
また、R
1がアルキル基である場合には、R
1は直鎖であることが好ましい。ただし、低温条件下での使用を容易にする観点からは、R
1が一般式(1)におけるN−(C=O)
n−基のα位にメチル基を有する構造のアルキル基であることがより好ましい。R
1をかかる構造のアルキル基とすることにより、R
1が完全に直鎖のアルキル基である場合に比較して凝固点を下げることができるためである。
【0038】
一般式(1)において、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1以上30以下の炭化水素基、機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基、又は水素原子であり、R
3及びR
4のうち少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、R
3及びR
4の両方が水素原子であることがさらに好ましい。R
3及び/又はR
4を水素原子とすることにより、摩擦面に対する吸着力が増すので、摩擦低減効果を高めることが容易になる。
【0039】
一般式(1)で表される窒素含有化合物の好ましい例としては、例えば、mが1で、nが0である場合、炭素数1以上30以下の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基を有するウレア化合物である。
【0040】
かかるウレア化合物の合成法としては、公知の合成法が特に制限なく使用可能である。
例えば、下記一般式(4)に表わされる、イソシアネート化合物とアンモニア又はアミン化合物との反応による合成法を挙げることができる。
【0042】
ここで、上記一般式(4)におけるイソシアネート化合物としては公知のイソシアネート化合物が特に制限なく使用可能である。一般式(4)に表される反応に使用可能なイソシアネート化合物としては、例えば、R
1が炭素数1以上30以下の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基であるイソシアネート化合物、好ましくはR
1が炭素数10以上30以下の炭化水素基又は機能性を有する炭素数10以上30以下の炭化水素基であるイソシアネート化合物、より好ましくはR
1が炭素数12以上24以下のアルキル基若しくはアルケニル基又は機能性を有する炭素数12以上24以下の炭化水素基であるイソシアネート化合物、特に好ましくは炭素数12以上24以下のアルケニル基を有するイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0043】
また、上記一般式(4)に表される反応においては公知の1級若しくは2級アミン化合物又はアンモニアを求核試薬として特に制限なく使用可能である。一般式(4)に表される反応に使用可能な1級若しくは2級アミン化合物としては、例えば、炭素数1以上30以下の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基を有するアミン化合物、好ましくは炭素数1以上10以下の炭化水素基を有するアミン化合物、より好ましくは炭素数1以上4以下の炭化水素基を有するアミン化合物を挙げることができる。
【0044】
一般式(1)で表される窒素含有化合物のより好ましい具体例としては、例えば、ドデシルウレア、トリデシルウレア、テトラデシルウレア、ペンタデシルウレア、ヘキサデシルウレア、ヘプタデシルウレア、オクタデシルウレア、オレイルウレア、ステアリルウレア等の、炭素数12以上24以下のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1つ有するウレア化合物を挙げることができる。
【0045】
一般式(1)で表される窒素含有化合物の他の好ましい例としては、例えば、mが1で、nが1である場合、炭素数1以上30以下の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基を有するウレイド化合物を挙げることができる。
【0046】
上記ウレイド化合物の合成法としては、公知の合成法を特に制限なく使用可能である。
例えば、下記一般式(5)に表される、酸塩化物と尿素又はウレア化合物との反応による合成法を挙げることができる。
【0048】
なお、上記一般式(5)に表される反応における酸塩化物としては、公知の酸塩化物を特に制限なく使用可能である。一般式(5)に表される反応において使用可能な酸塩化物としては、例えば、R
1が炭素数1以上30以下の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基であるカルボン酸塩化物、好ましくはR
1が炭素数10以上30以下の炭化水素基又は機能性を有する炭素数10以上30以下の炭化水素基であるカルボン酸塩化物、より好ましくはR
1が炭素数10以上24以下のアルキル基若しくはアルケニル基又は機能性を有する炭素数10以上24以下の炭化水素基であるカルボン酸塩化物、特に好ましくはR
1が炭素数12以上24以下のアルケニル基であるカルボン酸塩化物を挙げることができる。
【0049】
また、上記一般式(5)に表される反応におけるウレア化合物としては、公知のウレア化合物を特に制限なく使用可能である。一般式(5)に表される反応において使用可能なウレア化合物としては、ウレア、N−メチルウレア、N−エチルウレア、N−tert−ブチルウレア、N,N’−ジメチルウレア等が例示できる。これらのウレア化合物は、例えば、イソシアネートとアンモニア又はアミン化合物との反応等の公知の合成法により得ることができる。
【0050】
一般式(1)で表される窒素含有化合物の他の好ましい例としては、例えば、mが0である場合、炭素数1以上30以下の炭化水素基又は機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基を有するアミド化合物を挙げることができる。
【0051】
上記アミド化合物の合成法としては、公知の合成法を特に制限なく使用可能である。
【0052】
本発明の潤滑油添加剤における(A)成分の含有量は、特に制限されない。例えば、後述する本発明の潤滑油組成物における(A)成分の通常の又は好ましい含有量が実現される量とすることができる。
【0053】
<(B)成分>
本発明における(B)成分は、下記一般式(2)で表されるホウ酸エステル化合物、若しくは下記一般式(3)で表わされるホウ酸エステル化合物、又はこれらの混合物である。
【0054】
【化7】
(一般式(2)において、R
5は炭素数1以上30以下の炭化水素基、又は機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基であり;R
6及びR
7は、それぞれ独立に、炭素数1以上30以下の炭化水素基、機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基、又は水素原子である。)
【0055】
【化8】
(一般式(3)において、R
8は炭素数1以上30以下の炭化水素基、又は機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基であり;R
9及びR
10は、それぞれ独立に、炭素数1以上30以下の炭化水素基、機能性を有する炭素数1以上30以下の炭化水素基、又は水素原子である。)
【0056】
本発明における(B)成分は、一般式(2)で表されるホウ酸エステル化合物、及び一般式(3)で表わされるホウ酸エステル化合物のどちらを用いてもよい。ただし、より好ましくは一般式(2)で表わされるホウ酸エステル化合物である。なお、上述の通り、一般式(2)で表されるホウ酸エステル化合物と一般式(3)で表わされるホウ酸エステル化合物とを併用してもよい。
【0057】
上記一般式(2)及び一般式(3)における炭素数1以上30以下の炭化水素基は、炭素数1以上30以下のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、より好ましくはアルキル基である。上記炭素数は好ましくは3以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上であり、また好ましくは24以下である。
【0058】
一般式(2)で表わされるホウ酸エステルは、例えば、上記炭素数1以上30以下の炭化水素基を有するアルコールと、オルトホウ酸(H
3BO
3)とを、3:1のモル比で反応させることにより得ることができる。
【0059】
一般式(3)で表わされるホウ酸エステルは、例えば、上記炭素数1以上30以下の炭化水素基を有するアルコールと、オルトホウ酸(H
3BO
3)とを、1:1のモル比で反応させることにより得ることができる。
【0060】
ホウ酸エステルの合成における反応条件は、特に制限されない。ただし、通常は、反応温度を100℃以上とすることが特に好ましく、反応の進行に伴って生成する水分を同時に除去することが可能となる。
【0061】
(B)成分の好ましい例としては、具体的には、トリエチルボレート、トリ−n−プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ−n−ブチルボレート、トリ−sec−ブチルボレート、トリ−tert−ブチルボレート、トリヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリフェニルボレート、トリベンジルボレート、トリフェネチルボレート、トリトリルボレート、トリ(エチルフェニル)ボレート、トリ(プロピルフェニル)ボレート、トリ(ブチルフェニル)ボレート、及びトリ(ノニルフェニル)ボレート等を挙げることができる。これらの中でも、トリ−n−ブチルボレート、トリオクチルボレート、トリドデシルボレート等が特に好ましい。
【0062】
本発明の潤滑油添加剤における(B)成分の含有量は、特に制限されない。例えば、後述する本発明の潤滑油組成物における(B)成分の通常の又は好ましい含有量が実現される量とすることができる。
【0063】
本発明の潤滑油添加剤及び後述する潤滑油組成物において、(A)成分のモル含有量に対する、(B)成分のホウ素換算モル含有量のモル比((B)成分ホウ素換算モル含有量/(A)成分モル含有量)は、好ましくは4以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3以下である。また、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは1以上である。
上述したように、「(B)成分のホウ素換算モル含有量」とは、(B)成分の含有量をホウ素の含有量に換算して求めたモル量である。すなわち、一般式(2)で表わされるホウ酸エステル化合物1モルは(B)成分のホウ素換算モル含有量1モルに対応し、一般式(3)で表わされるホウ酸エステル化合物1モルは(B)成分のホウ素換算モル含有量3モルに対応する。
(A)成分及び/又は(B)成分が複数の異なる化合物を含む場合にも、(A)成分のモル含有量と(B)成分のホウ素換算モル含有量との好ましいモル比は上記と同様である。このとき、(A)成分が複数の化合物を含む場合には、(A)成分のモル含有量は(A)成分に属する全ての化合物のモル含有量の和である。また、(B)成分が複数の化合物を含む場合には、(B)成分のホウ素換算モル含有量は(B)成分に属する全ての化合物のホウ素換算モル含有量の和である。
(A)成分のモル含有量に対する(B)成分のホウ素換算モル含有量のモル比を上記好ましい範囲内とすることにより、本発明の潤滑油添加剤及び潤滑油組成物の摩擦低減効果をさらに高めることが可能となる。
【0064】
本発明の潤滑油添加剤及び後述する潤滑油組成物においては、さらに(C)無灰分散剤、(D)酸化防止剤、及び、(E)リン元素を含む摩耗防止剤、から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0065】
<(C)成分>
(C)無灰分散剤としては、潤滑油組成物に含有させることが可能な公知の無灰分散剤を特に制限なく用いることができる。(C)成分として使用可能な化合物としては、例えば、炭素数40以上400以下の直鎖又は分枝のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物及びその誘導体、並びにアルケニルコハク酸イミドの変性品(例えばホウ酸変性品、硫黄化合物による変性品、及びアシル化変性品等。)等を挙げることができる。これらの中から任意に選ばれる1種類又は2種類以上の化合物を配合することができる。
上記アルキル基又はアルケニル基の炭素数は40以上、好ましくは60以上であり、また400以下、好ましくは350以下である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖でも分枝でもよい。好ましいアルキル基又はアルケニル基としては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーや、エチレンとプロピレンとのコオリゴマー等の複数種のオレフィンのコオリゴマーから誘導される、分枝アルキル基及び分枝アルケニル基等が挙げられる。
【0066】
本発明の潤滑油添加剤に(C)成分を含有させる場合、その含有量は、例えば、後述する本発明の潤滑油組成物における(C)成分の通常の又は好ましい含有量が実現される量とすることができる。
【0067】
<(D)成分>
(D)酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤、金属系酸化防止剤等の、潤滑油組成物に使用可能な公知の酸化防止剤を特に制限なく用いることができる。酸化防止剤の添加により、潤滑油組成物の酸化防止性をより高められるため、本発明の潤滑油添加剤及び後述する潤滑油組成物における塩基価維持性及び高温清浄性をより高めることができる。
【0068】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等を好ましい具体例として挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
【0069】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、及びジ(アルキルフェニル)アミンを挙げることができる。
これらは二種以上を混合して使用してもよい。
なお、上記フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤とを組み合せて配合しても良い。
【0070】
本発明の潤滑油添加剤に(D)成分を含有させる場合、その含有量は、例えば、後述する本発明の潤滑油組成物における(D)成分の通常の又は好ましい含有量が実現される量とすることができる。
【0071】
<(E)成分>
(E)リン元素を含む摩耗防止剤としては、例えば、亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類の金属塩及びアミン塩、並びにリン酸エステル類の金属塩及びアミン塩を好ましく挙げることができる。(E)成分として使用可能なリン化合物としては、例えば、亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル、ジチオ亜リン酸モノエステル、トリチオ亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル、ジチオ亜リン酸ジエステル、トリチオ亜リン酸ジエステル、リン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル、ジチオリン酸モノエステル、トリチオリン酸モノエステル、リン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル、ジチオリン酸ジエステル、トリチオリン酸ジエステル、ホスホン酸モノエステル、モノチオホスホン酸モノエステル、ジチオホスホン酸モノエステル等を挙げることができる。
(E)成分として使用可能なリン化合物の金属塩としては、例えば、これらのリン化合物に、金属塩化物、金属水酸化物、金属酸化物等の金属塩基を作用させて得られる金属塩を挙げることができる。
【0072】
上記(E)成分の化合物における炭化水素基には、考えられる全ての直鎖構造及び分枝構造が含まれていてよい。また、アルケニル基の二重結合の位置、アルキル基のシクロアルキル基への結合位置、アルキル基のアリール基への結合位置、及びアリール基のアルキル基への結合位置は任意である。また、これら炭化水素基は、(ポリ)エチレンオキサイド基や(ポリ)プロピレンオキサイド基等の(ポリ)アルキレンオキサイド基を有していても良い。
【0073】
(E)成分の好適な具体例としては、例えば、炭素数3以上24以下、好ましくは炭素数4以上18以下、特に好ましくは炭素数4以上12以下の、第1級、第2級又は第3級のアルキル基を有するリン化合物並びにその金属塩及びアミン塩を挙げることができる。
【0074】
ここで、金属塩における金属は何ら制限されない。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属;亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン、モリブデン等の重金属等を挙げることができる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属及び亜鉛が好ましく、亜鉛が最も好ましい。
【0075】
アミン塩におけるアミン化合物としては、具体的には、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミンを挙げることができる。より具体的には、デシルアミン、ドデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、トリデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン及びステアリルアミン等の炭素数10以上20以下のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アミン(これらは直鎖状でも分枝状でもよい)を好ましい例として挙げることができる。
【0076】
本発明の潤滑油添加剤に(E)成分を含有させる場合、その含有量は特に制限されない。例えば、後述する本発明の潤滑油組成物における(E)成分の通常の又は好ましい含有量が実現される量とすることができる。
【0077】
2.潤滑油組成物
本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物について説明する。本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油と、上述した本発明の第1の態様に係る潤滑添加剤とを少なくとも含む。
【0078】
<潤滑油基油>
本発明の潤滑油組成物における潤滑油基油は、特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油及び/又は合成系基油が使用できる。
【0079】
鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガス・トゥ・リキッド・ワックス)を異性化する手法で製造される潤滑油基油等が例示できる。
【0080】
鉱油系基油の全芳香族分は、特に制限されない。ただし、基油の全量を100質量%として、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましく6質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
全芳香族分は0質量%が最も好ましい。基油の全芳香族分が15質量%を越える場合は、酸化安定性が劣るため好ましくない。
なお、上記全芳香族分とは、ASTM D2549に準拠して測定した芳香族留分(aromatic fraction)含有量を意味する。通常この芳香族留分には、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンの他、アントラセン、フェナントレン、及びこれらのアルキル化物、ベンゼン環が四環以上縮合した化合物、又はピリジン類、キノリン類、フェノール類、ナフトール類等のヘテロ芳香族を有する化合物等が含まれる。
【0081】
また、鉱油系基油中の硫黄分は、特に制限されない。ただし、0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましく、0.001質量%以下であることが特に好ましい。鉱油系基油の硫黄分を低減することで、よりロングドレイン性に優れる低硫黄の潤滑油組成物を得ることができる。
【0082】
また、合成系潤滑油としては、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィンまたはその水素化物、イソブテンオリゴマーまたはその水素化物、パラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。
また、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、及び芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。中でも、ポリ−α−オレフィンが好ましい。ポリ−α−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2以上32以下、好ましくは6以上16以下のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)およびそれらの水素化物が挙げられる。
【0083】
本発明の潤滑油組成物においては、潤滑油基油として、鉱油系基油、合成系基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の潤滑油の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油系基油、1種以上の合成系基油、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油との混合油等を挙げることができる。
【0084】
潤滑油基油の動粘度は特に制限されない。ただし、潤滑油基油の100℃での動粘度は、20mm
2/s以下であることが好ましく、10mm
2/s以下であることがより好ましい。一方、100℃での動粘度は、1mm
2/s以上であることが好ましく、2mm
2/s以上であることがより好ましい。潤滑油基油の100℃での動粘度が20mm
2/sを越える場合は、低温粘度特性が悪化し、一方、100℃での動粘度が1mm
2/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなるため、それぞれ好ましくない。
【0085】
潤滑油基油の蒸発損失量としては、特に制限はないが、NOACK蒸発量で、20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。潤滑油基油のNOACK蒸発量が20質量%を超える場合、潤滑油の蒸発損失が大きいだけでなく、組成物中の硫黄化合物やリン化合物、あるいは金属分が潤滑油基油とともに排ガス浄化装置へ堆積するおそれがあり、オイル消費量が増加するだけでなく、排ガス浄化性能への悪影響が懸念されるため好ましくない。なお、ここでいうNOACK蒸発量とは、ASTM D 5800に準拠して測定される潤滑油の蒸発量を測定したものである。
【0086】
潤滑油基油の粘度指数は特に制限されない。ただし、低温から高温まで優れた粘度特性を得る観点からは、粘度指数の値は80以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、120以上であることが特に好ましい。粘度指数の上限については特に制限はない。ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油のような135〜180程度のものや、コンプレックスエステル系基油やHVI−PAO系基油のような150〜250程度のものも使用することができる。潤滑油基油の粘度指数が80未満である場合、低温粘度特性が悪化するため、好ましくない。
【0087】
<(A)成分>
本発明の潤滑油組成物における(A)成分の含有量は、特に制限されない。ただし、組成物全量基準で、すなわち潤滑油組成物全量を100質量%として、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。また、通常5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。0.001質量%未満では摩擦低減効果が不十分となるおそれがあり、5質量%を超えると潤滑油組成物として溶解性に問題を生じるおそれがある。
【0088】
<(B)成分>
本発明の潤滑油組成物における(B)成分の含有量は、特に制限されない。ただし、組成物全量基準で、すなわち潤滑油組成物全量を100質量%として、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。また、通常5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。0.001質量%未満では摩擦低減効果が不十分となるおそれがあり、5質量%を超えると潤滑油組成物として溶解性に問題を生じるおそれがある。
【0089】
本発明の潤滑油組成物によれば、本発明の潤滑油添加剤を含むことにより、(A)成分と(B)成分とを共に含むので、従来の油性剤系摩擦調整剤を含む潤滑油組成物よりも優れた摩擦低減効果を、より広い摩擦条件下で発揮可能な、油性剤系摩擦調整剤を含む潤滑油組成物を提供することができる。また、耐摩耗性も改善することが可能となる。
【0090】
なお、本発明の潤滑油組成物における(A)成分のモル含有量に対する(B)成分のホウ素換算モル含有量のモル比((B)成分ホウ素換算モル含有量/(A)成分モル含有量)は、上述の通り、好ましくは4以下であり、より好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは3以下である。また、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは1以上である。
(A)成分のモル含有量に対する(B)成分のホウ素換算モル含有量のモル比を上記好ましい範囲内とすることにより、本発明の潤滑油組成物の摩擦低減効果をさらに高めることが可能となる。
【0091】
<(C)、(D)、及び(E)成分>
本発明の潤滑油組成物は、上述の通り、(A)成分及び(B)成分に加えて、(C)無灰分散剤、(D)酸化防止剤、及び、(E)リン元素を含む摩耗防止剤、から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することが好ましい。
【0092】
本発明の潤滑油組成物に(C)成分を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、すなわち潤滑油組成物全量を100質量%として、通常0.01質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上である。また、通常20質量%以下であり、好ましくは10質量%以下である。(C)成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、高温環境下における塩基価維持性に寄与する効果が不十分となるおそれがあり、一方、20質量%を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が大幅に悪化するおそれがあるため、それぞれ好ましくない。
【0093】
本発明の潤滑油組成物に(D)成分を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、すなわち潤滑油組成物全量を100質量%として、通常5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。その含有量が5.0質量%を超える場合は、配合量に見合った十分な酸化防止性が得られないおそれがあるため好ましくない。一方、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。
【0094】
本発明の潤滑油組成物に(E)成分を含有させる場合、その含有量は特に制限されない。ただし、通常は、組成物全量基準で、すなわち潤滑油組成物全量を100質量%として、0.1質量%以上5質量%以下である。
ただし、本発明の潤滑油組成物を内燃機関用潤滑油として使用する場合には、排ガス後処理装置にかかる負担を低減する観点から、(E)成分の含有量を組成物全量基準で、リン元素換算量で0.005質量%以上とすることが好ましく、0.08質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明の潤滑油組成物を自動変速機用潤滑油として使用する場合には、(E)成分の含有量を組成物全量基準で、リン元素換算量で、0.005質量%以上とすることが好ましく、0.01質量%以上とすることがより好ましい。また、リン元素換算量で0.1質量%以下とすることが好ましく、0.05質量%以下とすることがより好ましく、0.03質量%以下とすることがさらに好ましい。
(E)成分の含有量が少なすぎると耐摩耗性が不足するおそれがあり、(E)成分の含有量が多すぎると排ガス処理装置や装置(例えば、内燃機関、自動変速機。)のシール材に悪影響を与えるおそれがある。内燃機関用と自動変速機用とでリン化合物の含有量の好ましい上限値が異なる理由は、通常、内燃機関用潤滑油の方が後述する金属系清浄剤の量が多く、当該金属系清浄剤の効果によってシール材への悪影響が低減されるためである。
【0095】
本発明の潤滑油組成物は、その性能をさらに向上させるために、その目的に応じて、潤滑油に使用可能な公知の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、(F)本発明品以外の摩擦調整剤、(G)(E)成分以外の摩耗防止剤、(H)金属系清浄剤、(I)粘度指数向上剤、(J)腐食防止剤、(K)防錆剤、(L)抗乳化剤、(M)金属不活性化剤、(N)消泡剤、及び(O)着色剤等を挙げることができる。
これらの添加剤成分(F)〜(O)は、上記した本発明の第1の態様に係る潤滑油添加剤に含有させてもよい。
【0096】
<(F)成分>
(A)成分及び(B)成分以外の摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として公知の化合物が特に制限なく使用可能である。例えば、炭素数6以上30以下のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6以上30以下の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の油性剤系摩擦調整剤、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート等の硫黄含有モリブデン錯体、モリブデンアミン錯体、モリブデン−コハク酸イミド錯体等の硫黄を含有しない有機モリブデン錯体や二硫化モリブデン等のモリブデン系摩擦調整剤を挙げることができる。本発明の潤滑油組成物に(F)成分を含有させる場合には、その含有量は、潤滑油組成物全量を100質量%として、通常0.1質量%以上5質量%以下である。
【0097】
<(G)成分>
(E)成分以外の摩耗防止剤としては、例えば、上記(E)成分の項で記載したリン化合物(金属を含まない)及びそのアミン塩の他に、例えば、(モノ、ジ、トリ−チオ)(亜)リン酸トリエステル類、(モノ、ジ−チオ)ホスホン酸ジエステル類、β(モノ、ジ)(チオ)ホスホリル化カルボン酸等のリン化合物、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、ジチオカーバメート類等の硫黄含有化合物等が挙げられる。本発明の潤滑油組成物に(G)成分を含有させる場合には、通常、潤滑油組成物全量を100質量%として、0.005質量%以上5質量%以下の範囲で含有させることが可能である。
【0098】
<(H)成分>
金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属フェネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ金属サリシレート、アルカリ土類金属サリシレート、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0099】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネート、及び、アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートには、アルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物、アルキルサリチル酸等を、直接、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等の金属塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換(カウンターカチオン交換)させること等により得られる中性塩(正塩)だけでなく、さらにこれら中性塩(正塩)と過剰のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩やアルカリ金属塩基又はアルカリ土類金属塩基(アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で中性塩(正塩)をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩(超塩基性塩)も含まれる。なお、これらの反応は、通常、溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われる。
【0100】
また、金属系清浄剤は通常、軽質潤滑油基油等の溶媒で希釈された状態で市販されており、また、入手可能である。本発明の潤滑油組成物においては、一般的に、その金属含有量が好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは16質量%以下である金属系清浄剤を用いることが望ましい。また金属系清浄剤の塩基価は、通常0mgKOH/g以上、好ましくは20mgKOH/g以上であり、また、通常500mgKOH/g以下、好ましくは450mgKOH/g以下である。なお、ここでいう塩基価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
【0101】
本発明においては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレート等から選ばれる1種又は2種以上を併用して使用することができる。本発明においては、摩擦低減効果が大きい点、ロングドレイン性により優れる点で、アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートが特に好ましい。
【0102】
本発明の潤滑油組成物に(H)成分を含有させる場合、その含有量は特に制限されない。ただし、内燃機関用の場合、潤滑油組成物全量基準で、金属元素換算量で通常、0.01質量%以上5質量%以下である。このとき、当該潤滑油組成物の硫酸灰分が1.0質量%以下となるように、その他の添加剤と併せて含有量を調整することが好ましい。そのような観点から、金属系清浄剤の含有量の上限値は、潤滑油組成物全量を基準(100質量%)とし、金属元素換算量で、好ましくは0.3質量%であり、さらに好ましくは0.2質量%である。また、その下限値は、好ましくは0.02質量%、さらに好ましくは0.05質量%である。ここで、硫酸灰分とは、JIS K2272の5.「硫酸灰分の試験方法」に規定される方法により測定される値を示し、主として金属含有添加剤に起因するものである。
【0103】
<(I)成分>
粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体及びそれらの水添物等の、いわゆる非分散型粘度指数向上剤、さらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(なお、α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる。)及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びに、ポリアルキルスチレン等を挙げることができる。
【0104】
これらの粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、通常重量平均分子量で5,000以上1,000,000以下である。自動変速機用潤滑油組成物のように強い剪断力がかかる用途向けの潤滑油組成物には、10,000以上のものが好ましく、また、200,000以下のものが好ましく、100,000以下のものがより好ましく、50,000以下のものがさらに好ましく、30,000以下のものが特に好ましい。また、内燃機関用のものは上限について800,000以下のものが好ましく、500,000以下のものがより好ましく、200,000以下のものが特に好ましい。主に内燃機関用に使用されるポリイソブチレン又はその水素化物の場合には、数平均分子量で通常800以上、好ましくは1,000以上、また通常5,000以下、好ましくは4,000以下のものが、また、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は数平均分子量で通常800以上、好ましくは3,000以上、また通常500,000以下、好ましくは200,000以下のものが用いられる。
【0105】
またこれらの粘度指数向上剤の中でも、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。
本発明の潤滑油組成物には、上記粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を(I)成分として任意の量で含有させることができる。本発明の潤滑油組成物に(I)成分を含有させる場合、その含有量は、通常、潤滑油組成物基準で0.1質量%以上20質量%以下である。
【0106】
<(J)成分>
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0107】
<(K)成分>
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0108】
<(L)成分>
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0109】
<(M)成分>
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、並びにβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0110】
<(N)成分>
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0111】
<(O)成分>
着色剤としては、例えばアゾ化合物が挙げられる。
【0112】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、(J)腐食防止剤、(K)防錆剤、(L)抗乳化剤ではそれぞれ0.005質量%以上5質量%以下、(M)金属不活性化剤では0.005質量%以上1質量%以下、(N)消泡剤では0.0005質量%以上1質量%以下の範囲で通常選ばれる。
【0113】
本発明の潤滑油組成物は、油性剤系摩擦調整剤を含む潤滑油組成物であって、従来の油性剤系摩擦調整剤を含む潤滑油組成物よりも優れた摩擦低減効果を、より広い摩擦条件下で発揮できる。また、耐摩耗性も改善することが可能である。したがって、内燃機関の潤滑に好適に用いることができる。すなわち、本発明の潤滑油組成物を内燃機関の潤滑に用いることにより、内燃機関における摩擦によるエネルギー損失をより広い作動条件下で効果的に低減して燃費を改善すると同時に、内燃機関の部品をより広い作動条件下で効果的に摩耗から保護することが可能となる。
また、内燃機関において動弁機構は摩擦及び摩耗に関して最も厳しい条件の下で作動する機構の一つであるところ、本発明の潤滑油組成物は、上記高められた摩擦低減効果及び耐摩耗性を有する。よって、本発明の潤滑油組成物は、直打型又はローラフォロワ型の動弁機構、特にローラフォロワ型の動弁機構を有する内燃機関の潤滑に、好ましく採用することができる。
また、本発明の潤滑油組成物は硫黄分やリン分を含有しない油性剤系摩擦調整剤を含有するので、本発明の潤滑油組成物を用いて内燃機関を潤滑することにより、排ガス後処理装置への負担を低減することができる。よって、本発明の潤滑油組成物は、排ガス後処理装置を装備する内燃機関の潤滑に特に好適に採用することができる。また、燃料として、低硫黄燃料、例えば、硫黄分が50質量ppm以下、さらに好ましくは30質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下であるガソリン、軽油、若しくは灯油、又は硫黄分が1質量ppm以下の燃料(液化石油ガス(LPG)、天然ガス、硫黄分を実質的に含有しない水素、ジメチルエーテル、アルコール、GTL(ガストゥリキッド)燃料等)を用いる内燃機関の潤滑に特に好適に採用することができる。
【0114】
なお、ホウ酸エステル化合物においてはホウ素分を灰分とみなし得るので、本発明の潤滑油組成物を内燃機関の潤滑に用いた場合には、当該ホウ素分由来の灰分が、内燃機関の排気ガス浄化装置にある程度影響を及ぼすことも考えられる。しかし、一方で、モリブデン系FMは、モリブデン由来の灰分に加えて、例えばMoDTCにあっては硫黄分を、またMoDTPにあっては硫黄分及びリン分を含むので、これらの成分が複合的に乃至は相乗的に排気ガス浄化装置に対して悪影響を及ぼす。他方、本発明における(A)成分及び(B)成分は、モリブデン等の金属成分だけでなく硫黄分やリン分も含まない。よって、本発明の潤滑油組成物を内燃機関の潤滑に用いることにより、モリブデン系FMを含む潤滑油組成物を用いた場合に比べて排気ガス浄化装置にかかる負担を低減することが容易になる。
【0115】
また、本発明の潤滑油組成物は、自動変速機の潤滑に好適に用いることができる。すなわち、本発明の潤滑油組成物を自動変速機の潤滑に用いることにより、特にクラッチの契合時のショックの緩和や、すべり制御におけるシャダー防止等、広い作動条件下で効果的に動作を制御することが可能となる。
【0116】
本発明に関する上記説明では、本発明の潤滑油組成物の使用態様について、内燃機関の潤滑及び自動変速機の潤滑を例示して説明したが、本発明の潤滑油組成物の使用態様はこれらに限定されるものではない。本発明の潤滑油組成物は、上記したように優れた摩擦低減効果を有することから、低摩擦性が要求される潤滑油、例えば、手動変速機等の潤滑油、グリース、湿式ブレーキ油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受け油、冷凍機油等の潤滑油としても好適に使用することができる。
【実施例】
【0117】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0118】
<実施例1〜3、比較例1〜6>
表1に示されるように、本発明の潤滑油組成物(実施例1〜3)、比較用の潤滑油組成物(比較例1〜6)をそれぞれ調製した。
【0119】
【表1】
【0120】
(実施例1)
(A)成分としてオレイルウレア(一般式(1)において、m=1、n=0、R
1=オレイル基(炭素数18)、R
2=R
3=R
4=H。)を0.27質量%、(B)成分としてトリブチルボレート(一般式(2)においてR
5=R
6=R
7=ブチル基。)を0.20質量%(ホウ素含有量に換算して0.0094質量%)含有し、残部が潤滑油基油PAO2である、潤滑油組成物を調製した。(A)成分モル含有量と(B)成分ホウ素換算モル含有量とのモル比(B/A)は1.0とした(表1)。
【0121】
(実施例2)
(A)成分及び(B)成分の含有量をそれぞれ1.1質量%及び0.82質量%とした以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製した(表1)。
【0122】
(実施例3)
(A)成分としてオレイルアミド(一般式(1)において、m=0、R
1=オレイル基(炭素数18)、R
2=R
3=R
4=H。)を0.24質量%、(B)成分としてトリブチルボレート(一般式(2)においてR
5=R
6=R
7=ブチル基。)を0.20質量%(ホウ素含有量に換算して0.0094質量%)含有し、残部が潤滑油基油PAO2である、潤滑油組成物を調製した。(A)成分モル含有量と(B)成分ホウ素換算モル含有量とのモル比(B/A)は1.0とした(表1)。
【0123】
(比較例1)
(B)成分を含有させなかった以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製した(表1)。
【0124】
(比較例2)
(B)成分を含有させなかった以外は、実施例3と同様にして潤滑油組成物を調製した(表1)。
【0125】
(比較例3)
(A)成分を含有させなかった以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製した(表1)。
【0126】
(比較例4)
(B)成分を含有させなかった以外は、実施例2と同様にして潤滑油組成物を調製した(表1)。
【0127】
(比較例5)
(A)成分を含有させなかった以外は、実施例2と同様にして潤滑油組成物を調製した(表1)。
【0128】
(比較例6)
油性剤系摩擦調整剤の代わりにモリブデン系摩擦調整剤を含有する比較例である。(A)成分も(B)成分も含有させず、代わりにジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)をリン元素含有量換算で0.080質量%、及びモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)をモリブデン含有量換算で0.050質量%含有させた以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製した(表1)。
【0129】
(評価方法)
上記調製した各潤滑油組成物について、ボールオンディスク摩擦試験を行った。温度を100℃、荷重を20N、振幅を1mmとし、振動数50Hzで一定時間慣らし運転を行った後、振動数を40Hz、30Hz、20Hz、10Hz、5Hz、3Hz、2Hzと順に減らしながら摩擦係数を測定した。
各潤滑油組成物について、振動数を横軸にとり、摩擦係数を縦軸にとってプロットしたグラフを
図1〜3に示す。
【0130】
(評価結果)
図1は、実施例1の試験結果と、比較例1、3、及び6の試験結果とを比較するグラフである。
図1に示されるように、実施例1の潤滑油組成物は、試験された振動数の全範囲にわたって安定して優れた摩擦低減効果を発揮した。また、特筆すべきことには、モリブデン系摩擦調整剤を含有する比較例6よりも常に優れた摩擦低減効果を示した。
(B)成分を含有しない比較例1の潤滑油組成物の摩擦低減効果は、試験された振動数のほぼ全範囲にわたって実施例1に劣っていた。また、振動数に依存して摩擦低減効果が大きく変動した結果、振動数の比較的低い領域における摩擦低減効果が、モリブデン系摩擦調整剤を含有する比較例6に劣っていた。
(A)成分を含有しない比較例3の潤滑油組成物の摩擦低減効果は、実施例1だけでなく、比較例1及び6と比較しても大幅に劣っていた。
【0131】
図2は、実施例3の試験結果と、比較例2、3、6の試験結果とを比較するグラフである。
図2に示されるように、実施例3の潤滑油組成物は、試験された振動数の全範囲にわたって安定して優れた摩擦低減効果を発揮した。また、特筆すべきことには、モリブデン系摩擦調整剤を含有する比較例6よりも常に優れた摩擦低減効果を示した。
(B)成分を含有しない比較例2の潤滑油組成物の摩擦低減効果は、試験された振動数の範囲の全範囲において、実施例3に劣っていると共に、比較例6にも劣っていた。
(A)成分を含有しない比較例3の潤滑油組成物の摩擦低減効果は、実施例3だけでなく、比較例2及び6と比較しても大幅に劣っていた。
【0132】
図3は、実施例2の試験結果と、比較例4、5、及び6の試験結果とを比較するグラフである。
図3に示されるように、実施例2の潤滑油組成物は、試験された振動数の全範囲にわたって安定して優れた摩擦低減効果を発揮した。また、特筆すべきことには、モリブデン系摩擦調整剤を含有する比較例6よりも常に優れた摩擦低減効果を示した。
(B)成分を含有しない比較例4の潤滑油組成物の摩擦低減効果は、試験された振動数の範囲のうちほとんどにおいて、実施例2に劣っていた。また、振動数に依存して摩擦低減効果が変動した結果、振動数の比較的低い領域における摩擦低減効果が、モリブデン系摩擦調整剤を含有する比較例6に劣っていた。
(A)成分を含有しない比較例5の潤滑油組成物の摩擦低減効果は、実施例2だけでなく、比較例4及び6と比較しても大幅に劣っていた。
【0133】
上記試験結果から、本発明の潤滑油組成物によれば、従来の油性剤系摩擦調整剤を含む潤滑油組成物よりも優れた摩擦低減効果を、より広い摩擦条件下で発揮可能な、油性剤系摩擦調整剤を含む潤滑油組成物を提供できることが示された。
【0134】
<実施例1、4、及び5、並びに比較例1>
上記実施例1及び比較例1の潤滑油組成物に加え、表2に示されるように、本発明の潤滑油組成物2種類(実施例4及び5)をそれぞれ調製した。
【0135】
【表2】
【0136】
(実施例4)
(B)成分をトリオクチルボレート(一般式(2)でR
5=R
6=R
7=オクチル基。
)とした以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製した(表2)。なお、(B)成分の含有量はホウ素含有量換算で実施例1と同じ0.0094質量%とした。
【0137】
(実施例5)
(B)成分をトリオクタデシルボレート(一般式(2)でR
5=R
6=R
7=オクタデシル基。)とした以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製した(表2)。なお、(B)成分の含有量はホウ素含有量換算で実施例1と同じ0.0094質量%とした。
【0138】
(評価方法)
上記同様にボールオンディスク摩擦試験を行った。結果を
図4に示す。
【0139】
(評価結果)
図4は、実施例1、4、5の試験結果と比較例1の試験結果とを比較するグラフである。
図4に示されるように、(B)成分の化合物を実施例4及び5におけるように変更した場合であっても、実施例1と同様の優れた摩擦低減効果が発揮された。
【0140】
<実施例1、6〜8>
上記実施例1の潤滑油組成物に加え、表3に示されるように、本発明の潤滑油組成物3種類(実施例6〜8)をそれぞれ調製した。
【0141】
【表3】
【0142】
(実施例6)
(A)成分のモル含有量と(B)成分のホウ素換算モル含有量とのモル比(B/A)が0.5となるように(B)成分の含有量を変更した以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製した(表3)。
【0143】
(実施例7)
(A)成分のモル含有量と(B)成分のホウ素換算モル含有量とのモル比(B/A)が2.0となるように(B)成分の含有量を変更した以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製した(表3)。
【0144】
(実施例8)
(A)成分のモル含有量と(B)成分のホウ素換算モル含有量とのモル比(B/A)が4.0となるように(B)成分の含有量を変更した以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製した(表3)。
【0145】
(評価方法)
上記同様にボールオンディスク摩擦試験を行った。結果を
図5に示す。
【0146】
(評価結果)
図5は、実施例1、6〜8の試験結果を示すグラフである。
図5に示すように、(A)成分含有量と(B)成分含有量とのモル比(B/A)が好ましい範囲内にある実施例1、6、及び7の潤滑油組成物は、試験された振動数の全範囲にわたって安定して優れた摩擦低減効果を発揮した。
また、実施例8の潤滑油組成物は、比較的低い振動数範囲において優れた摩擦低減効果を発揮した。
【0147】
上記試験結果から、本発明の潤滑油組成物は、(A)成分のモル含有量と(B)成分のホウ素換算モル含有量とのモル比(B/A)を変更しても、良好な摩擦低減効果を発揮できることが示された。
【0148】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う潤滑油添加剤及び潤滑油組成物もまた、本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。