【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、
a)少なくとも1つの第1流動床リアクタ内のバイオマスが、少なくとも熱分解ガス成分および熱分解コークス成分に分解され、
b)第1流動床リアクタ内で発生されたガスが、流動化ガスとして少なくとも1つの次の流動床リアクタに供給され、
c)熱分解コークスが、ガスと一緒に微細粒子として引出されかつ次の流動床リアクタに供給されることを特徴とする、バイオマスから低タール合成ガスを製造する方法が提供される。
【0016】
本発明による方法の有利な実施形態が、請求項2〜12に記載されている。本発明はまた、請求項13〜18に記載の特徴を有する、本発明の方法を実施する装置に関する。
【0017】
本発明による製造方法は、慣用の流動床方法により製造される合成ガスのタール含有量よりかなり低いタール含有量を有する合成ガスが得られる。本発明の意味する「低タール」合成ガスとは、特に、1,000mg/m
3より低いタール含有量を有する合成ガスであると理解すべきである。しかしながら、本発明による方法を用いて製造される合成ガスはもっと低いタール含有量を有することが好ましい。より詳しくは、本発明による方法を用いて製造される合成ガスのタール含有量は、好ましくは500mg/m
3より低く、より好ましくは200mg/m
3より低い。本発明による方法はまた、100mg/m
3より低い、より詳しくは50mg/m
3より低いタール含有量を有する合成ガスの製造にも適している。本発明による方法を用いた特に好ましい実施形態によれば、10mg/m
3より低いタール含有量、より詳しくは2mg/m
3より低く、より好ましくは1mg/m
3より低いタール含有量を有する合成ガスを製造できる。1mg/m
3より低いタール含有量を有する合成ガスは、化学的合成、より詳しくは水素の製造に直接使用するのに適している。したがって、本発明による方法は、本質的に無タール合成ガスの製造に適している。
【0018】
本発明による製造方法は、特に、熱分解コークスが、ガスと一緒に微細粒子として第1流動床リアクタから引出されかつ次の流動床リアクタに供給される。本発明の意味する「微細粒子」とは、第1リアクタ内を支配する条件下での粒子サイズすなわち粒子マスが、ガスと一緒に第1リアクタから引出すことができる粒子をいうものと理解されたい。適当な熱分解コークス粒子は、好ましくは5mmより小さい、特に2mmより小さい、より好ましくは1mmより小さい平均粒子サイズを有している。
【0019】
本発明により得られる長所は、より詳しくは、本発明の方法によれば、従来技術と比較して合成ガス中のタール含有量が、一次手段により大幅に低減できるという事実に基づいている。本発明の方法により製造される合成ガスは、窒素含有量が低いことに更なる特徴を有している。したがって、この合成ガスは、下位合成(subordinate syntheses、nachgeordnete Synthesen(英、独訳))に特に適している。タール含有量がかなり低いことは、合成ガスの浄化コストおよびタールで汚染された廃水の浄化コストを節約できる。熱交換器内でタールが全く凝縮しないため、合成ガスのかなりの熱は、入ってくる材料の流れを加熱するのに有効に使用できる。かなりの熱の利用は、流動床リアクタのカスケード(縦続接続)および/またはバイオマス乾燥の一体化により簡単化される。プロセスを主として電気加熱する結果として、廃棄ガスおよび廃棄ガス損失のいずれも生じない。したがって本発明の方法は非常に高い効率を有している。固定床ガス化または同伴流ガス化とは異なり、バイオマスの灰は、無機質肥料として使用できる。リンはますます不足しつつあるため、これは重要なことである。再生可能な資源からエネルギを得ることの重要性が高まっているので、本発明は、バイオマスをベースとする太陽水素エコノミー(solar hydrogen economy、solaren Wasserstoffwirtschaft(英、独訳))を背景として説明する。
【0020】
将来の太陽水素エコノミーでは、水素は主としてエンドユーザにパイプで運ばれる。燃料電池における水素からの分散発電の効率が高いことの結果として、事実上全てのエンドユーザに過剰のパワーが生じるであろう。この熱制御型エネルギエコノミーでは、電力および熱出力は同じ値を有するであろう。熱制御型エネルギエコノミーは、原則として損失がないから、一次エネルギ(ここではバイオマス)に対する必要性は劇的に低下するであろう。この背景に対し、合成ガスの製造の反応エンタルピを得るのに電気エネルギを使用することも経済的である。これとは異なり、電気エネルギの使用は損失とは無関係である。電気エネルギは、発生される水素のエネルギ含有量に反映され、全く損失なくして殆どパワーおよび熱に変換される。次に、本発明によりパワーの一部は合成ガスの製造に使用される。熱はいつでも使用できる。これに加え、電気エネルギによる加熱は、煙道ガスが全く生じず、したがってこの方法は廃棄ガスが生じないという長所を有している。本発明の方法はまた、水の電気分解からの純粋酸素のリサイクリングにも適している。しかしながら、空気の分解から酸素を得ることは、非常に大きいプラントにおいて経済的であるに過ぎない。流動床リアクタを用いる方法は、1MW〜1GW、好ましくは20〜500MWの一般的プラントサイズを有している。より経済的ではあるが、大型プラントは、しばしば、ロジスチックな制限に直面する。水素エコノミーは、地域的かつ分散的なエネルギエコノミーである。したがって、プラントは5〜50バールの高い圧力の下で作動でき、これにより、発生されたガスは、容易に浄化され、地域的中圧ガスネットワーク(regional medium-pressure gas network、regionale Mitteldruck-Gasnetz(英、独訳))に直接供給される。この理由から、水素を発生させるプラントの背景に対する本発明による方法は、20〜40バール、より詳しくは約30バールの入力圧力で作動するのが好ましい。
【0021】
本発明による方法では、合成ガスの製造は、少なくとも2つの流動床リアクタのカスケードで行われる。第1流動床リアクタでは、バイオマスが、熱分解ガスと熱分解コークスとに分離される。熱分解コークスは、砂のような不活性床材料を用いて、流動床内で微細に粉砕される。静止流動床では、微細に粉砕されたコークスのみが、熱分解ガスと一緒に流動床リアクタから出ることができる。したがって、静止流動床は、砂および粗いコークス粒子が引出される循環流動床よりも本発明の方法に良く適している。小さい粒子のマスおよび熱伝達は非常に大きいため、微細に粉砕されたコークス粒子内には、事実上一次および二次タールが全く含まれていない。したがってこのコークスは本質的に無タールとして説明できる。これは、無タール合成ガスの発生のための条件である。
【0022】
熱分解コークスを同伴した熱分解ガスは、下位の流動床リアクタに到達する。したがって、ガスは、下位の流動床リアクタのための流動化ガスである。この流動床リアクタでは、熱分解ガスが微細に粉砕された高温コークスと出合い、このため、熱分解ガス中に含有されたタールが、主として触媒的にH
2、CO、CO
2およびCH
4に分離される。流動床リアクタが幾つかの流動床リアクタのカスケードにおける最終流動床リアクタである場合には、使用されるバイオマスは、ここで最終的に合成ガスに変換される。用語「熱分解リアクタ」および「リフォーマ」がもはや2つ以上の流動床リアクタに使用されることはない。それどころか、下位リアクタ内の温度が上昇しかつ下位リアクタ内のタール含有量が低下するというのが事実である。いずれにせよ、本発明の方法での第1流動床リアクタを「熱分解リアクタ」と呼ぶことにする。コークスを定量的に変換するには、一般に850〜1,000℃の温度が必要である。したがって、本発明によれば、少なくとも1つの流動床リアクタは、流動床内に埋設される例えば加熱ロッドの形態をなす電気抵抗ヒータを用いて加熱されるのが好ましい。
【0023】
幾つかのカスケードのうちの第1流動床リアクタは極く僅かな熱の付加で済む。なぜならば、熱分解ガスおよび熱分解コークスへのバイオマスの分離が事実上殆ど熱効果をもたないからである。流動化ガスとして過熱蒸気が、予熱されたバイオマスに使用される場合には、この反応は殆ど独自で行われる。それにもかかわらず、幾分かの熱を導入して、熱分解コークスも少なくとも一部が変換されるのが有利である。このようにして、下位流動床リアクタのための高度の無タールコークスが得られ、これが合成ガスの品質を向上させる。高温の合成ガスが通される流動床内のパイプにより、熱分解リアクタ内への熱の導入が有利な態様で行われる。熱分解リアクタ用の流動化ガスとして機能するスチームを発生させかつ過熱するのに、合成ガスの確実な熱を使用することもできる。
【0024】
本発明の有利な実施形態によれば、タールを含有するガスは、特許請求の範囲の請求項2の記載にしたがって、次の流動床リアクタに流入する前に加熱される。これにより、ガス中のタール含有量が減少される。加熱されたガスは、次のリアクタ内のコークス粒子との吸熱反応により冷却され、これはケミカルクエンチとして知られている。加熱は、例えば、2つの流動床リアクタの間に配置されかつ管状熱交換器の形態をなしている電気加熱抵抗器により行うことができる。熱分解ガスがコークス粒子を含んでいる場合には、この加熱抵抗器の壁温度は、木材を使用する場合には1,200℃の灰融点を超えないようにするのが好ましい。
【0025】
低い灰融点をもつバイオマスについて、本発明の他の実施形態によれば、特許請求の範囲の請求項3の記載にしたがって、熱分解ガスから熱分解コークスを分離しかつ無ダスト熱分解ガスのみを加熱することが好ましい。次に、温度を非常に高くすることができる。この時点で、純粋酸素の添加により、局部的に強い加熱を行うことができる。
【0026】
タールを破壊する特に有効な方法は、請求項4の記載によれば、電気放電によりプラズマを形成することである。プラズマは、特に強い結合を有する円形分子をも破壊する。プラズマは、例えば、少なくとも2つの電極間のアークにより発生される。放電が交互に発生される幾つかの電極の配置が有利である。このようにして、ガス中に強い乱流が達成され、かくして、フリーラジカルの高反応速度が形成される。したがって、アーク放電は、簡単な加熱よりも非常に有効である。アーク放電により、ガスも完全に加熱されることはもちろんである。2つの流動床リアクタの間のガス空間内に少なくとも2つの電極を配置する代わりに、別々のハウジング内に収容される中空電極の配置を使用することもできる。この場合、円形電極間のパイプ内に放電が生じる。このような装置はプラズマコンバータとして知られている。パイプには、熱分解ガスの一部またはスチームのような無カーボンガスが通される。炭化水素は、アーク中で主として水素とカーボン(クラッキングスート)とに分解される。両生成物は、直接にまたは次の流動床リアクタ内で合成ガスに変換される。
【0027】
請求項5に記載の他の実施形態によれば、タールを含む過熱されたガスは、触媒床を通して流すことができる。これにより、比較的低い温度でもタール含有量の低減が可能である。この場合、ニッケルベース触媒を使用できる。
【0028】
請求項6によれば、タールを含むガスが、触媒に接触される前に、全ての有害物質(特に、ハロゲン化物および/またはアルカリ)が除去されている場合には触媒の有効性が大幅に改善される。脱硫も特に有効であり、この目的のためには、高温ガス脱硫で充分である。このためには、例えばCa、FeおよびZn(他の金属酸化物との混合物を含む)等の金属の酸化物が適している。これらの酸化物の幾つかは、硫黄および窒素の有機化合物(COS、HCN)を分解(crack、aufbrechen(英、独訳))することもできる。多くの金属酸化物は、空気またはスチームにより再生される。可能ならば、タールを含むガスは、600℃に冷却できる。しかしながら、これがプロセスの効率にいかなる効果も及ぼすことはない。なぜならば、放出される熱は上流側のプロセス段に導入されるからである。また、例えば水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)のような消費薬品(consumptive chemicals、verbrauchenden Chemikalien(英、独訳))を用いた乾燥洗浄も適している。このような溶液は、単にガス流中に吹き込まれ、有害物質は濾過により除去される。
【0029】
流動床リアクタの特に簡単な構成が請求項7に記載されており、流動床リアクタは、互いに直接上下に並べて配置される。これにより、製品の品質に一定不変の確実な効果を与える撹拌タンクのカスケードの反応特性が得られる。
【0030】
合成ガスの製造のために乾燥バイオマスの使用およびスチームの別々の獲得は、それ自体は、湿潤バイオマスの使用より複雑ではない。しかしながら、乾燥バイオマスの有効な可能性は非常に限定されている。大部分はサイレージとして貯蔵されるに過ぎない1年のエネルギ収穫により大きい可能性が存在する。したがって、本発明のプロセスは、バイオマスに30〜50%の含水量をもたせることが重要である。更に高い含水量をもつバイオマスの入力は不要である。なぜならば、水は予め冷たい状態で絞り出し、有利な態様でバイオガスに処理できるからである。また、含水量が高いと、加圧容器内へのバイオマスの導入が容易になる。上記特許文献3および4によれば、ガスの逆流を防止するプラグが内部に形成されたフィードスクリュウが知られている。
【0031】
40%よりかなり高い含水量をもつ湿潤バイオマスの熱分解リアクタ内への直接送給は効率の低下をもたらす。流動化ガスとしても必要なスチームは、熱平衡に悪影響を与えるバラストの効果を有するに過ぎない。したがって請求項8に記載のように、バイオマスを乾燥させ、生じた排出蒸気を流動化ガスとして熱分解リアクタに導くことが有利である。工業的スケールのプラントでは、バイオマスを移動床または流動床で乾燥するのが有利である。この乾燥プロセスの間、バイオマスは280℃を超えない温度に加熱すべきである。さもなくば、バイオマスの発熱分解が生じるからである。乾燥装置には、プロセス熱を導入する熱交換器を備えた排出蒸気回路を設けるのが好ましい。排出蒸気回路はコンプレッサにより形成される。
【0032】
請求項10および11によれば、バイオマスを乾燥させる装置の前には、バイオマスを予熱する同様な装置を配置することもでき、該装置には、プロセス熱を導入する凝縮器および熱交換器を設けるのが好ましい。加圧システムの使用により、この予熱の温度レベルは、バイオマスを乾燥させる装置の温度レベルよりかなり低い。30バールでは、スチームの圧力は例えば234℃である。この場合の予熱は、80〜150℃の温度レベルで行うのが有利である。これにより、プロセスからのかなりの熱を殆ど完全に使用できるようにする2つのヒートシンクを得ることができる。
【0033】
バイオマスを予熱する装置では、製造ガスがこの回路内に混合される場合には、多量の水を凝縮することもできる。請求項12の記載によれば、合成ガスの更なる処理からのこの二酸化炭素(CO
2)を使用することが特に有利である。過剰のCO
2は、合成ガスからの事実上全ての次の化学的合成(水素の製造を含む)から生じる。さもなくば、燃焼により廃棄すべき燃焼成分を依然として含有するCO
2の一部をこのために使用することは特に有利である。バイオマスからの水の部分量として供給されるCO
2も、水蒸気の分圧により同伴される。これにより、このガス回路内に導入される熱が増大される。かくして、合成ガス中に含まれる水からの凝縮熱を一部として使用できる。このCO
2含有ガスはバイオマスを乾燥させる装置に導かれ、次に、低温レベルで乾燥が行われる。導入されるCO
2は、合成ガスのカーボン源としても機能する。これは、水素の製造および使用において多量の電気エネルギの使用を必要とするが、バイオマスのユニット当たりに使用できる有効エネルギにいかなる影響も与えない。CO
2の供給が過剰にならなければ、有効エネルギに比例する電気エネルギは極く僅かに低下するに過ぎない。例えば、外部エネルギ源の代わりに、本発明の方法のための電気エネルギを、60%の電気的効率をもつ燃料電池を有する水素顧客から得ることができれば、電流/熱比が52/48から47/53へ低下する。これは、CO
2の供給を行うことなく、バイオマスを予熱する装置に適用できる。このプロセスへのCO
2の適度の供給は、重大な不利な効果を全く与えず、電流/熱比が30/70より小さくなることはない。例えば、今日のドイツ国でのリアルエネルギエコノミーでは、20/80の比であることが判明している。これは、平均的な家庭にも当てはまることである。
【0034】
以下、
図1〜
図5を参照して、本発明の例示実施形態をより詳細に説明する。