特許第5877240号(P5877240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5877240p型金属酸化物半導体材料とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877240
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】p型金属酸化物半導体材料とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 15/00 20060101AFI20160218BHJP
   C04B 35/00 20060101ALI20160218BHJP
   C04B 35/626 20060101ALI20160218BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20160218BHJP
   H01L 21/363 20060101ALN20160218BHJP
【FI】
   C01G15/00 Z
   C04B35/00 J
   C04B35/00 A
   C23C14/34 A
   !H01L21/363
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-264487(P2014-264487)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-129079(P2015-129079A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2015年2月12日
(31)【優先権主張番号】61/922,321
(32)【優先日】2013年12月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邱 顯浩
(72)【発明者】
【氏名】周 子▲ち▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 瓊慧
(72)【発明者】
【氏名】謝 玉慈
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−001249(JP,A)
【文献】 特開2011−256108(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/140548(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/148154(WO,A1)
【文献】 特開2010−219538(JP,A)
【文献】 特開2013−219327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00−99/00
C04B 35/00−35/84
C23C 14/00−14/58
H01L 21/00−21/98
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式:In(1-a)Ga(1-b)Zn(1+a+b)4を有するp型金属酸化物半導体材料であって、式中、0≦a≦0.1,0≦b≦0.1、および、0<a+b≦0.16、前記p型金属酸化物半導体材料は、1×1011cm-3〜5×1018cm-3の正孔のキャリア濃度を有することを特徴とするp型金属酸化物半導体材料。
【請求項2】
式中、0<a≦0.1、および、b=0であることを特徴とする請求項1に記載のp型金属酸化物半導体材料。
【請求項3】
式中、0<b≦0.1、および、a=0であることを特徴とする請求項1に記載のp型金属酸化物半導体材料。
【請求項4】
p型金属酸化物半導体材料の製造方法であって、インジウム塩、ガリウム塩、および、亜鉛塩を溶剤に加え、混合物を得る工程と、キレート剤を前記混合物に加え、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を形成する工程と、前記金属錯体に熱処理を施して、p型金属酸化物半導体材料を形成し、前記p型金属酸化物半導体材料は、化学式:In(1-a)Ga(1-b)Zn(1+a+b)4を有し、式中、0≦a≦0.1,0≦b≦0.1、および、0<a+b≦0.16であることを特徴とするp型金属酸化物半導体材料の製造方法。
【請求項5】
前記混合物中、インジウム対亜鉛の前記モル比は0.9:1.1〜1:1.001であることを特徴とする請求項4に記載のp型金属酸化物半導体材料の製造方法。
【請求項6】
前記混合物中、ガリウム対亜鉛の前記モル比は0.9:1.1〜1:1.001であることを特徴とする請求項4に記載のp型金属酸化物半導体材料の製造方法。
【請求項7】
前記インジウム塩は、硫酸インジウム、塩化インジウム、硝酸インジウム、水酸化インジウム、クエン酸インジウム、酢酸インジウム、インジウムアセチルアセトネート、または、それらの組み合わせを含み、前記ガリウム塩は、硫酸ガリウム、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、水酸化物ガリウム、クエン酸ガリウム、酢酸ガリウム、ガリウムアセチルアセトネート、または、それらの組み合わせを含み、前記亜鉛塩は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、水酸化亜鉛、クエン酸亜鉛、酢酸亜鉛、アセチルアセトネート亜鉛、または、それらの組み合わせを含み、前記キレート剤は、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルコン酸、ヘプトグルコン酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミペンタアセテート酸、または、それらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項4、5、または、6に記載のp型金属酸化物半導体材料の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理は焼結処理であることを特徴とする請求項4、5、6、または、7に記載のp型金属酸化物半導体材料の製造方法。
【請求項9】
さらに、セラミックプロセスを実行して、前記p型金属酸化物半導体材料のバルクやターゲットを製造する工程を含むことを特徴とする請求項4、5、6、7、または、8に記載のp型金属酸化物半導体材料の製造方法。
【請求項10】
前記セラミックプロセスは、圧縮成型、射出成型、冷間静水圧プレス、または、スリップキャスティングを含むことを特徴とする請求項9に記載のp型金属酸化物半導体材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2013年12月31日に出願された米国仮出願61/922321号の利益を享受し、その内容は引用によって本願に援用される。
本発明は、p型金属酸化物半導体材料とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物半導体材料は、多くの光電デバイスおよび半導体装置(発光デバイス、受光デバイス、圧電素子、透明導電性電極、および、能動素子等)に幅広く適用されている。たとえば、金属酸化物半導体材料は、透明薄膜トランジスタの製造に用いることができる。アモルファスシリコンから製造される薄膜トランジスタと比べると、透明金属酸化物系の半導体材料から製造される薄膜トランジスタはより小形で、高精細化、および、高いキャリア移動度(たとえば、電子移動度)を有する。
【0003】
現在の透明金属酸化物系の半導体材料は、基本的には、n型透明酸化亜鉛系の半導体材料である。金属酸化物系のp型半導体材料の不安定特性と劣悪な再現性のため、金属酸化物系のp型半導体材料は比較的まれである。しかし、n型とp型半導体材料は共に、pn接合を形成して、光電デバイスおよび半導体装置、たとえば、透明相補型金属酸化物半導体(CMOS)、透明スマートウィンドウ、インバータ、および、発光ダイオード(LEDs)を製造する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、上述の問題を解決する新規のp型透明酸化亜鉛系の半導体材料が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、化学式:In(1-a)Ga(1-b)Zn(1+a+b)4を有するp型金属酸化物半導体材料を提供し、式中、0≦a≦0.1,0≦b≦0.1、および、0<a+b≦0.16である。特に、本発明のp型金属酸化物半導体材料は、1×1011cm-3〜5×1018cm-3の正孔キャリア濃度を有する。
【0006】
その上、本発明の実施形態によると、本発明は、p型金属酸化物半導体材料の製造方法を提供する。本方法は、インジウム塩、ガリウム塩、および、亜鉛塩を溶剤に加えて、混合物を得る工程と、キレート剤を混合物に加え、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を形成する工程と、金属錯体に熱処理を施して、p型金属酸化物半導体材料を形成する工程と、を含む。
【0007】
さらに、本発明の別の実施形態によると、本発明は、さらに、p型金属酸化物半導体材料の製造方法を提供し、酸化インジウム、酸化ガリウム、および、酸化亜鉛を混合して、混合物を得る工程と、および、混合物を焼結処理を施して、p型金属酸化物半導体材料を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
詳細な説明は添付の図面を参照して次の実施形態で与えられる。これら及びその他の本発明の利点と特徴は、本発明の以下の詳細な説明を添付図面と合わせて検討すれば、より理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】InGaZnO4のバンド構造を示すグラフである。
図2】In(1-a)GaZn(1+a)4のバンド構造を示すグラフである。
図3】InGa(1-b)Zn(1+b)4のバンド構造を示すグラフである。
図4】p型金属酸化物半導体材料のICP−MSにより測定されるZn/Gaモル比対実施形態1〜6の混合物のZn/Gaモル比を表すグラフである。
図5】p型金属酸化物半導体材料のICP−MSにより測定されるZn/Inモル比対実施形態7〜12の混合物のZn/Inモル比を表すグラフである。
図6】InGaZnO4、および、実施態様の2と8により得られるIGZO系の金属酸化物半導体材料のX線回折スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で詳細に説明され、添付の図面に示される装置及び方法は、非限定的な例示的実施形態であること、並びに、本発明の各種の実施形態の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定まることは、当業者には理解されよう。
【0011】
本発明の実施形態は、化学式:In(1-a)Ga(1-b)Zn(1+a+b)4を有するp型金属酸化物半導体材料を提供し、式中、0≦a≦0.1,0≦b≦0.1、および、0<a+b≦0.16である。その上、本発明のいくつかの実施形態によると、本発明は、化学式:InGa(1-b)Zn(1+b)4,を有するp型金属酸化物半導体材料を提供し、式中、0<b≦0.1である。さらに、本発明の別の実施形態によると、本発明は、化学式:In(1-a)GaZn(1+a)4,を有するp型金属酸化物半導体材料を提供し、式中、0<a≦0.1である。本発明の実施形態において、p型IGZO系の(インジウム-ガリウム-酸化亜鉛系の)金属酸化物半導体材料を形成する条件は、予備シミュレーションと計算工程により得られる。次に、特定のインジウム-ガリウム-亜鉛モル比でドープされたp型IGZO系の金属酸化物半導体材料が合成される。
【0012】
このようなシミュレーションと計算工程を以下で説明する。本発明において、ビエナアブイニシオシミュレーションパッケージ(Vienna Ab-initio Simulation Package、VASP)を利用して、IGZO系の金属酸化物半導体材料中の特定のインジウム-ガリウム-亜鉛モル比時の、状態密度(DOS)とエネルギーの変動関係を計算する。シミュレーションの結果によると、化学式In(1-a)Ga(1-b)Zn(1+a+b)4(式中、0<a≦0.1,b=0、または、0<b≦0.1,a=0)を有するIGZO系の金属酸化物半導体材料のフェルミ準位は、価電子帯にシフトする。よって、それらは、p型金属酸化物半導体材料である。図1は、アブイニシオ方法により計算されたInGaZnO4のバンド構造を示すグラフである。図2は、アブイニシオにより計算されるIn(1-a)GaZn(1+a)4のバンド構造を示すグラフで、フェルミ準位(E(eV)=0)は、p型材料を示す価電子帯にシフトする。図3は、アブイニシオ方法により計算されるInGa(1-b)Zn(1+b)4のバンド構造を示すグラフで、フェルミ準位(E(eV)=0)は、p型材料を示す価電子帯にシフトする。
【0013】
次に、特定のインジウム-ガリウム-亜鉛モル比を有するIGZO系の金属酸化打つ半導体材料は、それぞれ、シミュレーションと計算結果に基づいて、ソフト化学プロセス、または、焼結処理により合成される。
【0014】
たとえば、ソフト化学プロセスにおいて、インジウム塩、ガリウム塩、および、亜鉛塩を溶剤(水、メタノール、エタノール、プロパノール、グリコール、または、それらの組み合わせ等)に加え、その後、室温で1時間撹拌し、混合物を含むインジウム-ガリウム-亜鉛を得る。本発明の実施形態によると、混合物中、インジウム対亜鉛のモル比は0.9:1.1〜1:1.001である。その上、混合物中、ガリウム対亜鉛のモル比は0.9:1.1〜1:1.001である。インジウム塩は、硫酸インジウム、塩化インジウム、硝酸インジウム、水酸化インジウム、クエン酸インジウム、酢酸インジウム、インジウムアセチルアセトネート、または、それらの組み合わせである;ガリウム塩は、硫酸ガリウム、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、水酸化物ガリウム、クエン酸ガリウム、酢酸ガリウム、ガリウムアセチルアセトネート、または、それらの組み合わせである;亜鉛塩は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、水酸化亜鉛、クエン酸亜鉛、酢酸亜鉛、アセチルアセトネート亜鉛、または、それらの組み合わせである。その上、混合物の調整中、酸や塩基を加えて、混合物のpH値を調整し、溶解度を増加することができる。
【0015】
次に、キレート剤を混合液に加え、溶液を得た。溶液は、インジウム-ガリウム-亜鉛金属錯体を含む。キレート剤は、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルコン酸、ヘプトグルコン酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミペンタアセテート酸、または、それらの組み合わせである。
【0016】
次に、溶液を150〜200℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。溶液に乾燥工程(ベーキング工程や焼結処理等)を施した後、p型金属酸化物半導体粉末が金属錯体の酸化により得られた。次に、セラミックプロセス(圧縮成型、射出成型、冷間静水圧プレス(CIP)またはスリップキャスティング)を実行して、特定のインジウム-ガリウム-亜鉛モル比を有するIGZO系の金属酸化物半導体粉末のバルクやターゲットを製造した。
【0017】
バルクやターゲットの製造後、薄型ドープIGZO系の金属酸化物半導体薄膜を、スパッタリングプロセス等により形成し、その後、電子装置の製造(たとえば、透明ディスプレイ、透明電界効果トランジスタ、発光ダイオード、または、透明集積回路半導体デバイス)に組み込んだ。
【0018】
その上、本発明の実施形態によると、本発明のp型金属酸化物半導体材料は、金属酸化物に焼結処理を施すことにより製造した。まず、酸化インジウム、酸化ガリウム、および、酸化亜鉛を、特定比率で混合して、混合液を得た。本発明の実施形態によると、インジウム対亜鉛のモル比は0.9:1.1〜1:1.001、または、ガリウム対亜鉛のモル比は0.9:1.1〜1:1.001であった。
【0019】
次に、セラミックプロセス(圧縮成型、射出成型、冷間静水圧プレス(CIP)、または、スリップキャスティング)を実行して、特定のインジウム-ガリウム-亜鉛モル比を有するIGZO系の金属酸化物半導体粉末のバルクやターゲットを製造した。
【0020】
バルクやターゲットの製造後、薄型ドープIGZO系の金属酸化物半導体薄膜を、スパッタリングプロセス等により形成して、その後、電子装置の製造(たとえば、透明ディスプレイ、透明電界効果トランジスタ、発光ダイオード、または、透明集積回路半導体装置)に組み込んだ。
【0021】
次の実施形態は、本発明をより詳細に説明することを意図するもので、これらの範囲に限定されるものでは無く、種々の変形や改変がなされることは、この技術分野の当業者に明らかである。
【0022】
ZnがInを代替したIGZO系の材料
実施形態1
まず、0.1658molのIn(NO33、0.1675molのZn(NO32、および、0.1667molのGa(NO33を、300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加え、混合液を得た。特に、In、GaとZnのモル比は0.995:1:1.005であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0023】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施し(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがInを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0024】
最後に、ZnがInを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態1から得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は化学式In0.995GaZn1.0054を有する。
【0025】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図4に示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表1に示した。
【0026】
実施形態2
まず、0.1650molのIn(NO33,0.1683molのZn(NO32、および、0.1667molのGa(NO33を300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加え、混合液を得た。In、GaとZnのモル比は0.99:1:1.01であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0027】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施して(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがInを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0028】
最後に、ZnがInを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態2から得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は化学式In0.99GaZn1.014を有する。
【0029】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図4に示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表1に示した。
【0030】
実施形態3
まず、0.1663molのIn(NO33,0.1700molのZn(NO32、および、0.1667molのGa(NO33を300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加えて、混合液を得た。特に、In、GaとZnのモル比は0.98:1:1.02であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0031】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施して(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがInを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0032】
最後に、ZnがInを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態3から得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は、化学式In0.98GaZn1.024を有する。
【0033】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図4に示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表1に示した。
【0034】
実施形態4
まず、0.1600molのIn(NO33,0.1733molのZn(NO32、および、0.1667molのGa(NO33を300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加えて、混合液を得た。特に、In、GaとZnのモル比は0.96:1:1.04であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0035】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施して(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがInを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0036】
最後に、ZnがInを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態4から得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は、化学式In0.96GaZn1.044を有する。
【0037】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図4に示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表1に示した。
【0038】
実施形態5
まず、0.1583molのIn(NO33,0.1750molのZn(NO32、および、0.1667molのGa(NO33を300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加えて、混合液を得た。特に、In、GaとZnのモル比は0.95:1:1.05であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0039】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施して(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがInを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0040】
最後に、ZnがInを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態5から得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は化学式In0.95GaZn1.054を有する。
【0041】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図4に示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表1に示した。
【0042】
実施形態6
まず、0.1500molのIn(NO33,0.1833molのZn(NO32、および、0.1667molのGa(NO33を300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加えて、混合液を得た。特に、In、GaとZnのモル比は0.9:1:1.1であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0043】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施して(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがInを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0044】
最後に、ZnがInを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態6から得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は化学式In0.9GaZn1.14を有する。
【0045】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図4に示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示されるように、ホール効果測定により測定される多数キャリア型はホールで、正孔キャリア濃度は1×1011〜5×1021cm-3で、つまり、Zn原子がIn原子を代替するIGZO系の金属酸化物半導体材料(すなわち、In(1-a)GaZn(1+a)4,式中、0<a≦0.1)のZnのモル比が0.999:1.001〜0.9:1.1であるとき、半導体材料のキャリア濃度範囲に入る。よって、実施形態1〜6のIGZO系の金属酸化物半導体材料はp型である。このほか、実施形態1〜6のZnがInを代替したIGZO系の金属酸化物半導体材料は、高移動度、かつ、低抵抗で、特定のIn/Znモル比範囲で、好ましいp型半導体材料が得られた。
【0048】
ZnがGaを代替したIGZO系の材料
実施形態7
まず、0.1667molのIn(NO33,0.1675molのZn(NO32、および、0.1658molのGa(NO33を300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加えて、混合液を得た。特に、In、GaとZnのモル比は1:0.995:1.005であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0049】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施して(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0050】
最後に、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態7から得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は化学式InGa0.995Zn1.0054を有する。
【0051】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図5で示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表2で示した。
【0052】
実施形態8
まず、0.1667molのIn(NO33,0.1683molのZn(NO32、および、0.1650molのGa(NO33を300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加えて、混合液を得た。特に、In、GaとZnのモル比は1:0.99:1.01であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0053】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施して(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0054】
最後に、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態8から得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は、化学式InGa0.99Zn1.014を有する。
【0055】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図5で示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表2で示した。
【0056】
実施形態9
まず、0.1667molのIn(NO33,0.1700molのZn(NO32、および、0.1667molのGa(NO33を300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加えて、混合液を得た。特に、In、GaとZnのモル比は、1:0.98:1.02であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0057】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施して(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0058】
最後に、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態9により得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は、化学式InGa0.98Zn1.024を有する。
【0059】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図5で示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表2で示した。
【0060】
実施形態10
まず、0.1667molのIn(NO33,0.1733molのZn(NO32、および、0.1600molのGa(NO33を300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加えて、混合液を得た。特に、In、GaとZnのモル比は1:0.96:1.04であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0061】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施して(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0062】
最後に、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態10から得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は化学式InGa0.96Zn1.044を有する。
【0063】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図5で示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表2で示した。
【0064】
実施形態11
まず、0.1667molのIn(NO33,0.1750molのZn(NO32、および、0.1583molのGa(NO33を300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加えて、混合液を得た。特に、In、GaとZnのモル比は1:0.95:1.05であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0065】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施して(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0066】
最後に、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態11から得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は化学式InGa0.95Zn1.054を有する。
【0067】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図5で示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表2で示した。
【0068】
実施形態12
まず、0.1667molのIn(NO33,0.1833molのZn(NO32、および、0.1500molのGa(NO33を300mlの含水硝酸エステル溶液(10〜50wt%)に加えて、混合液を得た。特に、In、GaとZnのモル比は1:0.9:1.1であった。次に、0.55molの酒石酸(キレート剤となる)を混合物に加え、その後、室温で1時間撹拌し、インジウム-ガリウム-亜鉛含有の金属錯体を有する溶液を得た。
【0069】
次に、上述の溶液を155℃に加熱して、溶液中の水分を蒸発させて、ゾル-ゲル溶液を形成した。次に、ゾル-ゲル溶液に乾燥工程を施して(温度1200〜1400℃)、酸化により、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末を得た。
【0070】
最後に、ZnがGaを代替したIGZO系の粉末に成型工程を施して、IGZO系の金属酸化物半導体材料のターゲットを製造した。実施形態12により得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は化学式InGa0.9Zn1.14を有する。
【0071】
IGZO系の金属酸化物半導体材料の成分をICP−MSにより確認し、結果を図5で示した。次に、IGZO系の金属酸化物半導体材料のバルク抵抗率、移動度、および、キャリア濃度を、ホール効果測定により、HL 5550 LN2 クライオスタットホール効果測定セットアップ(ナノメトリクス社により製造)により測定した。結果を表2で示した。
【0072】
【表2】
【0073】
表2に示されるように、ホール効果測定により測定される多数キャリアのタイプは正孔であり、正孔のキャリア濃度は5×1013〜5×1022cm-3である。つまり、Zn原子がGa原子を代替するIGZO系の金属酸化物半導体材料(すなわち、InGa(1-b)Zn(1+b)4,式中、0<b≦0.1)のGa対Znのモル比が0.999:1.001〜0.9:1.1であるとき、半導体材料のキャリア濃度範囲に入る。よって、実施形態7〜12のIGZO系の金属酸化物半導体材料はp型である。その上、実施形態7〜12中のZnがInを代替したIGZO系の金属酸化物半導体材料は、高移動度、かつ、低抵抗を有するので、特定のGa/Znモル比範囲で、好ましいp型半導体材料が得られる。
【0074】
図6は、InGaZnO4、および、実施態様の2と8から得られるIGZO系の金属酸化物半導体材料のX線回折スペクトルを示す図である。図6に示されるように、酸素、インジウム、および、ガリウムの強度を決定することにより、実施態様の2と8から得られたIGZO系の金属酸化物半導体材料は、InGaZnO4と同じ数量の酸素原子を有する。つまり、IGZO系の金属酸化物半導体材料の酸素原子数は4である。
【0075】
上述のシミュレーションと実験結果によると、本発明のp型金属酸化物半導体材料の製造方法により、高移動度、かつ、低抵抗で、特定のインジウム-ガリウム-亜鉛モル比を有し、光電子および半導体装置に適用できるp型半導体材料が得られる。
【0076】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変更や改変を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6