特許第5877260号(P5877260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5877260
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】電磁流量計の空状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/58 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
   G01F1/58 N
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-89794(P2015-89794)
(22)【出願日】2015年4月24日
【審査請求日】2015年4月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390026996
【氏名又は名称】東京計装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】鳥丸 尚
(72)【発明者】
【氏名】竹田 修
(72)【発明者】
【氏名】逢 強
(72)【発明者】
【氏名】陳 立功
(72)【発明者】
【氏名】陸 経偉
(72)【発明者】
【氏名】姚 迪斐
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−194195(JP,A)
【文献】 発明協会公開技報公技番号2009−506025
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期で励磁コイルに間欠的に通電し励磁及び励磁休止を繰り返す電磁流量計において、
流体が静止し測定管中に前記流体が満たされているときの自動ゼロ点調整処理に併せて、前記励磁休止時の励磁休止区間で測定した電極電位の測定値をA/D変換処理し、該A/D変換値に対して、交流電源周波数のバンドパスフィルタによる抽出処理を行い、抽出した周波数成分に基づいて空判定閾値を設定し、
前記流体の流量測定中に前記励磁休止区間で測定した前記電極電位の測定値をA/D変換処理し、該A/D変換値に対して、前記バンドパスフィルタによる抽出処理を行うことで抽出した交流電源周波数成分の信号レベルと前記空判定閾値とを比較して、前記流体の空状態を判定することを特徴とする電磁流量計の空状態判定方法。
【請求項2】
複数回の前記励磁休止区間での前記周波数成分の信号レベルの最大値、最小値を求め、複数の前記最大値及び複数の前記最小値のそれぞれの平均値と、前記空判定閾値を比較して、前記測定管中の前記流体の空状態を判定することを特徴とする請求項に記載の電磁流量計の空状態判定方法。
【請求項3】
前記空判定閾値は前記平均値に対してプラスマイナスの2つの閾値を設定したことを特徴とする請求項2に記載の空状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定管内の流体の空状態を判定する電磁流量計の空状態判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁流量計は、測定管中を流れ導電性を有する流体に、励磁コイルにより交流磁場を印加して、ファラディの法則に従い、流体方向と磁場方向に直交する方向に誘起される起電力から流体の流速を求め、流量に換算している。
【0003】
図4は特許文献1に開示された従来の空検知機能を備えた電磁流量計の構成図を示している。この電磁流量計は、検出部1と変換部2とから構成されており、検出部1は被測定流体が流れる測定管3と、この測定管3の周囲に配置される励磁コイル4と、測定管3内に配置された一対の電極5a、5bとから成っている。
【0004】
変換部2には、電極5a、5bにより誘起される2つの流量信号を受信するバッファアンプ6a、6bが設けられている。これらのバッファアンプ6a、6bの出力は、バッファアンプ6a、6bの出力差を求める差動アンプ7に接続され、更に差動アンプ7の出力は、流量演算等を実行するCPU8、出力回路9の順に接続されている。
【0005】
また、励磁回路10による励磁電流の出力が励磁コイル4及びCPU8に接続されている。この励磁回路10により励磁コイル4に定電流である励磁電流を供給している。
【0006】
この励磁回路10による定電流の出力により、励磁コイル4によって測定管3内に磁場を印加する。導電性を有する流体に対して、流体方向と磁場方向に直交方向に誘起される起電力EsをCPU8に出力することで、流体の流速vが測定され、更にこの流速vに測定管3の断面積を乗じて流量を求めることができる。
【0007】
電磁流量計では、測定中に検出部1の測定管3が導電性流体で満たされていることが精度保証の条件となっている。しかし、実際のプラントでは流体が測定管3内で空状態となって、測定管3が完全に流体で満たされずに、電極5a、5bが露出してしまうことがある。このように、電極5a、5bが露出してしまうと、電磁流量計の出力は不定となり、プラント操業上に大きな支障をもたらすことになる。
【0008】
そこで、図4に示すように変換部2に空検知部11を配置し、測定管3内の流体の空状態を判定し、警報を出力するようにしている。空検知部11で発生した正負パルス電流を電極5a、5b間に通電し、パルス電流により発生した両電極5a、5b間のインピーダンスに応じた交流電圧信号は、差動アンプ7で差動増幅される。差動アンプ7の出力信号を空検知部11で直流電圧に変換した後に、この直流電圧に比例した周波数信号に変換され、CPU8に出力される。CPU8は入力値と記憶している基準周波数信号と比較して空検知出力信号を発生する。
【0009】
また、図4に示すような空検知部11を変換部2に設けずに、差動アンプ7の出力を監視して、流体の空状態を判定する方法も従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−162267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に示す空検知部11は、電極5a、5bと直結するように配置するため、変換部2全体のインピーダンスが影響を受けてしまうという問題がある。また、正負パルス電流を電極5a、5b間に供給する必要があり、例えば電極5a、5bの接点及び空検知部11間で地絡等が発生した場合には、流体の空検知ができなくなるという問題もある。
【0012】
また、上述の空検知部11を変換部2に設けずに差動アンプ7の出力を監視して、流体の空状態を判定する方法では、2つの電極5a、5bに誘起される商用交流電源ノイズがほぼ同相になり、差動アンプ7の出力においてこれらのノイズが相殺されるため、コモンモードで重畳するノイズに基づく流体の空状態を検知することは難しい。なお、このノイズの相殺は、特許文献1の変換部2でも発生する。
【0013】
このように、電極5a、5b間の差動電圧出力の異常を検出し、空状態を判定する手法は従来から知られているが、電極5a、5bに誘導されるノイズは同相成分が大きく、差動出力では正確な空状態を検知することが難しい。
【0014】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、ノイズの影響を除去して、測定管内の流体の空状態を正確に判定できる電磁流量計の空状態判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係る電磁流量計の空状態判定方法は、所定の周期で励磁コイルに間欠的に通電し励磁及び励磁休止を繰り返す電磁流量計において、流体が静止し測定管中に前記流体が満たされているときの自動ゼロ点調整処理に併せて、前記励磁休止時の励磁休止区間で測定した電極電位の測定値をA/D変換処理し、該A/D変換値に対して、交流電源周波数のバンドパスフィルタによる抽出処理を行い、抽出した周波数成分に基づいて空判定閾値を設定し、前記流体の流量測定中に前記励磁休止区間で測定した前記電極電位の測定値をA/D変換処理し、該A/D変換値に対して、前記バンドパスフィルタによる抽出処理を行うことで抽出した交流電源周波数成分の信号レベルと前記空判定閾値とを比較して、前記流体の空状態を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電磁流量計の空状態判定方法によれば、自動ゼロ点調整時に各電極の個別の誘導電位を測定し、測定したノイズを空状態の判定基準として使用しているため、設置条件等に関係なく実使用状態における条件を基に正確な空状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例の電磁流量計の構成図である。
図2】電極に誘導される外部ノイズ伝達の説明図である。
図3】接液状態から非接液状態になった状態の波形図である。
図4】従来の空検知機能を備えた電磁流量計の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を図1図3に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例の電磁流量計の構成図であり、図4と同一の符号は同一の回路を示している。検出部1は、流体が流れる測定管3、この測定管3の周囲に配置された励磁コイル4、測定管3中に一対の電極5a、5bが露出して配置されている。測定管3の内壁は絶縁材によりコーティングされているが、測定管3自体は地絡されており、外部からの誘導ノイズをシールドしている。
【0020】
変換部2には、電極5a、5bにそれぞれ対応するバッファアンプ6a、6bが設けられ、バッファアンプ6a、6bのそれぞれの出力は差動アンプ7及びマルチプレクサ12に接続されている。このマルチプレクサ12はタイミング信号発生回路13から入力されるタイミング信号により、タイミング信号発生回路13で生成したタイミングに同期して、バッファアンプ6a、6bの出力を交互に切り替えてCPU8に出力する。
【0021】
差動アンプ7の出力は、A/D変換部の機能を有すると共に流量演算等を実行するCPU8、更に出力回路9に順次に接続されている。また、CPU8ではバッファアンプ6a、6bからの出力を継続的にサンプリングしてA/D変換処理した後に、商用交流電源周波数をバンドパスフィルタ処理をして空診断に利用する。
【0022】
一方、変換部2内の励磁回路10の出力は、励磁コイル4とCPU8に接続され、タイミング信号発生回路13の出力は、マルチプレクサ12、CPU8、励磁回路10に接続されている。
【0023】
タイミング信号発生回路13で生成される低周波の周期に同期して、励磁回路10から正励磁、負励磁を有する励磁周期Tの励磁電流Iexが励磁コイル4に供給されると、測定管3を流れる流体の流速に比例する流量信号として、電極5a、5b間に起電力Esが誘起される。
【0024】
電極5a、5b間に誘起され、更にバッファアンプ6a又は6bから出力される起電力Esは、次の(1)式で与えられる。
起電力Es=κ・B・v・D ・・・(1)
【0025】
なお、κは比例定数、Bは励磁コイル4による磁束密度、vは被測定流体の流速、Dは測定管3の口径である。
【0026】
磁束密度Bが励磁電流Iexに比例するとすれば、(1)式を基に流速vは次の(2)式で得られる。なお、αは検出部1ごとに定まる定数である。
v=α・Es/Iex ・・・(2)
【0027】
起電力Esはバッファアンプ6a又は6bで受信され、差動アンプ7を経てCPU8に入力される。CPU8では、差動アンプ7から入力された電極5a、5bからの起電力Es及びタイミング信号発生回路13の出力を基に、励磁電流Iexに同期したタイミングで同期整流をすると同時に、(2)式による励磁電流Iexとの比較演算がなされ、得られた流速vが出力回路9に入力される。出力回路9では、プロセス用の所定の出力信号に変換される。
【0028】
また、電磁流量計では定電流回路での損失を削減するため、励磁をスイッチング方式で行うことが多く、この定電流回路では負荷が変化しても、定電流の供給を継続する。異なる口径の測定管3の励磁コイル4に対しても、励磁による安定した磁場を作る等の目的で、励磁回路10により励磁コイル4に定電流である励磁電流Iexを区間供給している。
【0029】
励磁回路10による定電流の出力により、励磁コイル4によって磁場を流体に印加する。導電性を有する流体に対して、流体方向と磁場方向に直交方向に誘起される起電力Esに基づいて、流体の流速vを求め、更にこの流速vに測定管3の断面積を乗じて流量を求めることができる。
【0030】
図2は電極5a、5bに誘導される外部ノイズの伝達の様子を示している。通常の流体測定状態では、測定管3は導電性流体で満たされており、電極5a、5bが接液状態のときは、電極5a、5b間に発生する流量起電力の信号源抵抗Rsは、流体導電率σ、電極5a、5bの直径dを用いて、(3)式で表される。
Rs=1/(σ・d) ・・・(3)
【0031】
ノイズ源の起電力をEn、ノイズ源インピーダンスをZnとし、図示のように信号源抵抗Rsを電極5a、5bと大地間の抵抗と仮定すると、電極5a、5bに誘導される誘導ノイズの大きさenは、次の(4)式で表される。
en={Rs/(Rs+Zn)}・En ・・・(4)
【0032】
これらの(3)、(4)式から分かるように、誘導ノイズenの大きさは使用条件である流体導電率σに依存している。流体導電率σが電磁流量計の定める流体導電率の仕様の範囲内(Rs<<Zn)であるならば、外部からの誘導ノイズenは測定管3の地絡によりシールドされているので、流量測定結果に与える影響は少ない。
【0033】
測定管3が非満水状態となり、更に電極5a、5bに対して流体が非接液状態となると、電極5a、5bと大地間の電極インピーダンスが無限大となり、外部からの誘導ノイズの影響を大きく受けることになる。
【0034】
外部からの誘導ノイズで最も顕著なものは、商用交流電源からの誘導ノイズである。従って、各電極5a、5bの電極電位に重畳されている商用交流電源の周波数成分により、電極インピーダンスを推測し、検出部1が空状態か否かを判断する方法が考えられる。
【0035】
しかし、商用交流電源による誘導ノイズ源の大きさ、ノイズ源インピーダンスZnの大きさは設置条件によって大きく異なり、流体導電率σも測定管3内の流体の種類等により異なるため、空状態の判定のためには、電磁流量計毎に設定した判断基準が必要とされる。
【0036】
この判断基準は、流量のゼロ点に調整保存する自動ゼロ点調整時の調整処理と併せて、所定のサンプリング周期で各電極5a、5bの電極電位を連続的に測定し、A/D変換処理をした後に、商用交流電源周波数のバンドパスフィルタを通過させた周波数成分に基づいて設定される。
【0037】
自動ゼロ点調整時において複数回の励磁周期T毎に、所定のサンプリング周期の測定値に対して、上述のバンドパスフィルタを通過させる。このバンドパスフィルタの出力成分に対して最大値、最小値を求め、これらの複数の最大値及び複数の最小値のそれぞれの平均値を算出する。ただし、これらの平均値は、自動ゼロ点調整時は測定管3内に流体を満たした状態での値があるので、微少の揺動範囲に過ぎないものである。
【0038】
従って、複数の最大値及び複数の最小値のそれぞれの平均値に対して、数十〜数百倍した値を閾値とし、これらのプラスマイナスの閾値を、閾値s1、s2として設定する。或いは、バンドパスフィルタ出力した絶対値平均値の数十〜数百倍した値を閾値sと設定してもよい。これらの倍率は流体及び測定管3の径等に応じて適宜に設定しておく。
【0039】
なお、自動ゼロ点調整とは、測定管3内を満たした流体が流速ゼロの状態であっても、一定のバイアス量がオフセットとして出力しているので、このオフセット分を差し引いてゼロ点に調整する処理のことであり、この処理によりCPU8において、より正確な流量を算出することが可能となる。
【0040】
次に、判断基準である閾値s1、s2を利用して測定管3の流体の空判定を行う場合は、まずマルチプレクサ12によって、タイミング信号発生回路13からのタイミング時間によりバッファアンプ6a、6bの出力を別個にCPU8に電極電位を選択入力を行う。
【0041】
次にCPU8において、バッファアンプ6a、6bから入力値に対して継続的に所定の時間間隔でサンプリングしてA/D変換処理を行う。これらのA/D変換処理を行った測定値に商用交流電源周波数をバンドパスフィルタ処理して、商用交流電源周波数以外の周波数帯域の信号成分を減衰させて、50/60Hzの商用交流電源の周波数成分のみを抽出する。
【0042】
そして、この抽出処理を行った商用交流電源の誘導ノイズ成分である周波数成分と、自動ゼロ点調整時に設定した閾値s1、s2とを比較する。商用交流電源の周波数成分の信号レベルが閾値s1又は閾値s2を上回った又は下回った場合は、測定管3内の流体が非接液状態、つまり空状態と判定する。このように、コモンモードで入力してくる商用交流電源に基づく誘導ノイズを監視することで、空状態の判定が可能となる。
【0043】
また、励磁周期T以下の所定間隔毎にA/D変換値のバンドパスフィルタ処理した周波数成分の信号レベルが、複数回に渡って閾値s1又は閾値s2を上回った又は下回った場合、或いはA/D変換値のバンドパスフィルタ処理を行った周波数成分の信号レベルの絶対値が、1回又は複数回に渡って閾値sを上回った場合に、空状態と判定することもできる。
【0044】
更に、複数の連続する周波数成分の信号レベルの絶対値の平均値が、閾値sを上回った場合に空状態と判定してもよいし、複数回の励磁周期T毎の周波数成分の信号レベルの最大値、最小値を求め、これらの複数の最大値及び複数の最小値のそれぞれの平均値に対して、閾値s1又は閾値s2を上回った又は下回った場合に、空状態と判定するようにしてもよい。
【0045】
このようにバンドパスフィルタ処理した周波数成分の信号レベルの平均値を算出することで、突発的なノイズやフローノイズに基づく空状態の誤検知を回避することができる。
【0046】
図3は時間tに流体が接液状態から非接液状態になった際の、(a)励磁電流波形、(b)励磁電流Iexと相似の振幅を持つ信号波形である流量信号波形、(c)バンドパスフィルタ処理後の商用交流電源周波数成分の波形である。
【0047】
(a)の励磁電流波形では、励磁周期T内で正励磁区間、負励磁区間の次に励磁休止区間を設けている。なお、励磁周期Tは商用交流電源の周期の整数倍に同期しており、間欠的な励磁処理が省電力化のためになされている。
【0048】
時間tに測定管3内の流体が接液状態から非接液状態になった場合に、上述の通り電極5a、5bと大地間の電極インピーダンスが無限大となり、商用交流電源からの誘導ノイズの影響を大きく受けることになる。このため、(c)の波形図に示すように時間t以前の接液状態である微少の信号レベルは、非接液状態の時間t以降に極端に増大することになる。
【0049】
周波数成分の信号レベルと、予め流体が静止し測定管中に流体が満たされているときの自動ゼロ点調整処理時に設定したプラスマイナスの閾値s1又は閾値s2とを比較することで、測定管3内の流体が接液状態か非接液状態、つまり空状態であるか否かを検知することができる。
【0050】
本実施例では、使用条件、流体導電率、接地条件に関係なく、自動ゼロ調時に保存した判断基準である閾値sを利用して、空状態を判定することもできる。従って、特許文献1に示すような空検知部11を設置する必要はない。
【0051】
また、バンドパスフィルタの代りに商用電源周波数以下の周波数成分のみを抽出するローパスフィルタを使用してもよい。このローパスフィルタにより、A/D変換の際の折り返し雑音の除去及び突発的なディジタル誤差による影響を避けることができる。
【0052】
CRフィルタ等のハードウェアから成るローパスフィルタを用いることによって、前述のバンドパスフィルタ処理時のCPU8のソフトウェア処理による負荷を軽減することが可能である。
【0053】
更には、図3(a)に示すような励起休止区間を設けて励磁を間欠的に行う場合には、励磁休止区間において空判定処理を行うようにしてもよい。励磁電流が存在している期間、つまり正励磁、負励磁の励磁電流Iexを出力している期間では、流量信号起電力及び励磁電流の時間変化に伴う電磁流動ノイズが発生している。
【0054】
この励磁電流が存在している期間においては、電磁流動ノイズも重畳されて出力されてしまうので、電磁流動ノイズの影響をカットする空判定を行うために、励磁休止区間にサンプリングしたA/D変換値のバンドパスフィルタ処理を行った信号レベルを基に上述の空判定処理を行うことが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1 検出部
2 変換部
3 測定管
4 励磁コイル
5a、5b 電極
6a、6b バッファアンプ
7 差動アンプ
8 CPU
9 出力回路
10 励磁回路
12 マルチプレクサ
13 タイミング信号発生回路
【要約】
【課題】電磁流量計における測定管内の流体の空状態を正確に判定できる。
【解決手段】時間tに測定管内の流体が接液状態から非接液状態になった場合に、電極とアース間の電極インピーダンスが無限大となり、外部からの誘導ノイズの影響を大きく受けることになる。そのため、(c)の正弦波に示すような商用交流電源に基づく誘導ノイズが、非接液状態となった時間t以降に発生する。この誘導ノイズの周波数成分の信号レベルが、予め流体が静止し測定管中に前記流体が満たされているときの自動ゼロ点調整処理時に設定した閾値s1又は閾値s2を上回る又は下回ることで、測定管内の流体が空状態であることを検知する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4