(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5877436
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】パイプ端面計測装置およびパイプ端面計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/004 20060101AFI20160223BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
G01B5/004
G01B5/00 L
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-252534(P2014-252534)
(22)【出願日】2014年12月12日
【審査請求日】2015年6月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599093225
【氏名又は名称】株式会社夕原テクノグループ
(72)【発明者】
【氏名】能美 賢二
【審査官】
大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−300556(JP,A)
【文献】
特開昭58−015109(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/089665(WO,A1)
【文献】
特開2012−247292(JP,A)
【文献】
特開2009−258018(JP,A)
【文献】
特開平11−281303(JP,A)
【文献】
特開平09−005006(JP,A)
【文献】
特開平07−229703(JP,A)
【文献】
特開平05−034137(JP,A)
【文献】
特開平01−203915(JP,A)
【文献】
特開昭58−068607(JP,A)
【文献】
国際公開第00/066925(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 − 5/30
G01B 21/00 − 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶やプラントなどにおいて、気体や液体の搬送に用いるパイプを接続する溶接管の製作に際し、接続される互いに対向する両パイプ端面(2aa、2ba)の相対的空間座標データを取得して溶接管(6)の製作図データを作成するパイプ端面計測装置(1)であって、
前記パイプ端面計測装置(1)は、
開口部が互いに対向する一方のパイプ(2a)のパイプ端面(2aa)と他方のパイプ(2b)のパイプ端面(2ba)とを被計測対象とし、
前記一方のパイプ(2a)のパイプ端面(2aa)の複数の位置を先端にフック(3d)を有する巻取り式のワイヤ(3a)で長さおよび角度を計測する位置測定装置(3)と、
前記一方のパイプ(2a)のパイプ端面(2aa)に装着されて、前記フック(3d)が掛止される掛止具(4a)を備えたフック掛止用治具(4)と、
前記位置測定装置(3)が載置され前記他方のパイプ(2b)のパイプ端面(2ba)近傍に、前記他方のパイプ(2b)を抱持して固定するセットテーブル(5)と、
を備え、
前記フック掛止用治具(4)は、前記フック(3d)を掛止する前記掛止具(4a)を有し、前記一方のパイプ(2a)のパイプ厚さ部(2ad)に対し前記一方のパイプ(2a)の外周面(2ab)側に設けられた2つの位置決めピン(4d、4d)、および位置決め稜(4b)の何れか一方と、内周面(2ac)側に設けられた位置決めピン(4c)とを備え、前記パイプ端面(2aa)側から装着されてパイプ厚さ部(2ad)を挟持し、
前記位置測定装置(3)を前記他方のパイプ(2b)のパイプ端面(2ba)に対向して前記セットテーブル(5)に載置し、前記一方のパイプ端面(2aa)に固定された前記フック掛止用治具(4)の掛止具(4a)に前記ワイヤ(3a)を緊張状態にして前記フック(3d)が掛止され、前記一方のパイプ(2a)におけるパイプ端面(2aa)の空間的位置を計測することによって前記一方のパイプ(2a)のパイプ端面(2aa)と前記他方のパイプ(2b)のパイプ端面(2ba)との互いの空間的座標データを取得することを特徴とするパイプ端面計測装置(1)。
【請求項2】
前記セットテーブル(5)は、前記他方のパイプ(2b)の軸芯位置と相対的な位置関係を保持しながら前記他方のパイプ(2b)の外周面(2bb)をチャックする、左右一対に設けられて互いに近接または離間のいずれかを行う一方のクランパ(5aa)と他方のクランパ(5ab)と、前記位置測定装置(3)を載置し固定する位置決め機構(5a)と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のパイプ端面計測装置(1)。
【請求項3】
前記位置決め機構(5a)は、前記他方のパイプ(2b)の軸芯(2bd)を延長した位置と、前記ワイヤ(3a)をガイドするアーム(3e)の軸芯(3ec)と、前記アーム(3e)の旋回軸芯(3ec)とが交差するように前記位置測定装置(3)を載置しクランプすることを特徴とする請求項2に記載のパイプ端面計測装置(1)。
【請求項4】
前記請求項1に係るパイプ端面計測装置(1)を用い、前記一方のパイプ(2a)のパイプ端面(2aa)と前記他方のパイプ(2b)のパイプ端面(2ba)との互いの空間的座標データを取得するパイプ端面計測方法であって、
前記フック掛止用治具(4)が前記一方のパイプ(2a)のパイプ端面(2aa)に3〜4個装着され、前記一方のパイプ(2a)のパイプ端面(2aa)の空間的座標(X、Y、Z)および前記他方のパイプ(2b)のパイプ端面(2ba)との相対位置が取得されることを特徴とするパイプ端面計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶やプラントなどにおいて、気体や液体の搬送に用いるパイプを接続する溶接管の製作に際し用いられるパイプ端面計測装置に関し、特に、接続される互いに対向する両パイプ端面の相対的空間座標データを取得して溶接管の製作図データを作成するパイプ端面計測装置およびパイプ端面計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶やプラントなどにおいて、気体や液体の搬送に用いるパイプの直管や曲がり管など接続する接続管の外形寸法を測定する場合、ガスや水道等の流体の搬送においては両端に接続用のフランジを備えた管(パイプ)が使用されているが、この管は直管の他に屈曲部分に使用する曲がり管がある。この屈曲部分に使用する曲がり管は取付け工事の容易さから一般に接続管が使用されており、接続管の取付けは予め適当な長さ及び適当な曲がりの接続管の両端に、例えば、フランジA、Bを取り付けない状態で用意し、このフランジA、Bを取り付けようとするパイプのフランジC、Dにそれぞれねじで固定した状態で用意した接続管を現物合わせでその端部にフランジA、Bが取付けられるように加工し、次にその端部にフランジA、Bを仮付けした後、フランジを仮付けした接続管を一旦外して接続管の両端にフランジA、Bを溶接するという作業を行っていた。
現在、接続管(現合管・型取り管)の製作は現場作業で行われているが、その作業はガス切断、溶接、重量物可搬など危険を伴う作業が大半である。
また、完成した接続管も精度が一定ではなく、品質などはかなりラフであり、一般にはこのようなレベルのものが使われている。また、これらをシステム化して接続管の製作図および、両端に連接されるフランジを載置支持する取付フランジ面の姿勢、すなわち、位置と角度を決定でき、工場でフランジ付きの接続管を容易に製造できるようにした測定方法が次のように開示されている。
【0003】
図8の(a)は全体概略図、(b)は従来の実施形態に係る位置測定装置によるフランジの測定方法を示す側面図である。
図8の(a)(b)に示すように、位置測定装置Eを基準ステージ取り付け面121に固定する。また、被測定物103の被測定側のフランジ104のボルト穴の任意の三カ所にフック掛止用治具122を固定する。その際、フック掛止用治具122の中心がボルト穴の中心になるように、フランジの裏面からテーパ付ナット123で締結してセンタリングしてある。位置測定装置Eのワイヤ案内アーム113の先端からワイヤ116を引き出し、ワイヤ先端フック124をフック掛止用治具122に掛止する。ワイヤ116はワイヤエンコーダーとして張力を持っているので、ワイヤ案内アーム113はフランジ104の方向へ傾動する。この状態で一つの測定点P1のワイヤの長さl(エル)、ワイヤ案内アーム113と旋回台の旋回角度θ及び計測軸112の回転角度φの出力が制御部に入力される。同様の方法で、残り2箇所P2、P3を測定する。
【0004】
この方法で得られる複数の測定点P1、P2、およびP3の距離データや角度データに基づいて、測定点P1、P2、P3を含む平面を演算し、その面の中心点P及びボルト穴位置を演算する。これで基準ステージ106と被測定側のフランジ104の位置関係が正確に得られることになる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−329502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、船舶には、例えば、10、000本以上の配管が用いられていることがあるが現場となる船内において、高度な耐圧を要する配管ではフランジを用いることができない。このため、配管の端面を互いに溶接で接合させる必要があった。このフランジを備えていないパイプの直管や曲がり管などの外形寸法を計測して、製作図データを作成することが残された問題であった。さらに、計測装置を設置する基準となる場所を定めて、その基準データを設定するのは大変苦労があった。また、次の寄港地でのパイプ交換に通常1週間程度の停泊が余儀なくされているが、都合良く次の停泊地で溶接管の取り付けを行うためにも溶接管の測定データをいち早く電子データとしてパイプ製造工場に伝送しなければならず、迅速な測定が必要であった。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、フランジを備えていない配管の端面を計測し、船舶やプラントなどにおいて、気体や液体の搬送に用いるパイプ間を接続する溶接管の製作に際し、接続される互いに対向する両パイプ端面の相対的空間座標データを取得して溶接管の製作図データを迅速かつ正確に作成するパイプ端面計測装置およびパイプ端面計測方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明のパイプ端面計測装置1は
、開口部を互いに対向させた一方のパイプ2aのパイプ端面2aaと他方のパイプ2bのパイプ端面2baと
を被計測対象とし、前記一方のパイプ2aのパイプ端面2aaの複数の位置を先端にフック3dを有する巻取り式のワイヤ3aで長さおよび角度を計測可能な位置測定装置3と、前記一方のパイプ2aのパイプ端面2aaに装着されて、前記フック3dが掛止される掛止具4aを備えたフック掛止用治具4と、前記位置測定装置3が載置され前記他方のパイプ2bのパイプ端面2ba近傍に、前記他方のパイプ2bを抱持して固定するセットテーブル5と、を備え、
前記フック掛止用治具4は、前記フック3dを掛止する前記掛止具4aを有し、前記一方のパイプ2aのパイプ厚さ部2adに対し前記一方のパイプ2aの外周面2ab側に設けられた位置決め稜4bおよび2つの位置決めピン4d、4dの何れか一方と、内周面2ac側に設けられた位置決めピン4cとを備え、前記パイプ端面2aa側から装着されてパイプ厚さ部2adを挟持し、前記位置測定装置3を前記他方のパイプ2bのパイプ端面2baに対向して前記セットテーブル5に載置し、前記一方のパイプ端面2aaに固定された前記フック掛止用治具4の掛止具4aに前記ワイヤ3aを緊張状態にして前記フック3dが掛止され、前記一方のパイプ2aにおけるパイプ端面2aaの空間的位置を計測することによって前記一方のパイプ2aのパイプ端面2aaと前記他方のパイプ2bのパイプ端面2baとの互いの空間的座標データを取得することを特徴とする。
【0009】
また、前記フック掛止用治具4は、前記フック3dを掛止する前記掛止具4aを有し、前記一方のパイプ2aのパイプ厚さ部2adに対し前記一方のパイプ2aの外周面2ab側に設けられた
2つの位置決めピン4d、4d、および位置決め稜4bの何れか一方と、と内周面2ac側に設けられ
た位置決めピン4cを備え、前記パイプ端面2aa側から装着されてパイプ厚さ部2adを挟持することを特徴とする。
【0011】
請求項
2に記載の発明は、請求項1に記載のパイプ端面計測装置1であって、前記セットテーブル5は、前記他方のパイプ2bの軸芯位置と相対的な位置関係を保持しながら前記他方のパイプ2bの外周面2bbをチャックする、左右一対に設けられて互いに近接または離間のいずれかを行う一方のクランパ5aaと他方のクランパ5abと、前記位置測定装置3を載置し固定する位置決め機構5acと、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項
3に記載の発明は、請求項
2に記載のパイプ端面計測装置1であって、前記位置決め機構5aは、前記他方のパイプ2bの軸芯2bdを延長した位置と、前記ワイヤ3aをガイドするアーム3eの軸芯3ecと、アーム3eの旋回軸芯3ecとが交差するように前記位置測定装置3を載置しクランプすることを特徴とする。
【0014】
請求項
4に記載の発明のパイプ端面計測方法は、前記請求項1に係るパイプ端面計測装置1
を用い、前記一方のパイプ2aのパイプ端面2aaと前記他方のパイプ2bのパイプ端面2baとの互いの空間的座標関係を取得するパイプ端面計測方法であって、前記フック掛止用治具4が前記一方のパイプ2aのパイプ端面2aaに3〜4個装着され、前記一方のパイプ2aのパイプ端面2aaの空間的座標X、Y、Zおよび前記他方のパイプ2bのパイプ端面2baとの相対位置が取得されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、パイプ端面計測装置は、他方のパイプのパイプ端面を基準として設けられたセットテーブルに位置測定装置を固定し、セットテーブルに載置された位置測定装置のフックを一方のパイプ端面に固定されたフック掛止用治具の掛止具にワイヤが緊張状態で掛止させて、一方のパイプにおけるパイプ端面の空間的位置を計測することによって、一方のパイプのパイプ端面と他方のパイプのパイプ端面との互いの空間的座標データを取得することができる。これによって、パイプ端面計測装置は、船舶やプラントなどにおいて、気体や液体の搬送に用いるパイプを接続する溶接管の外形寸法を迅速かつ正確に計測し、接続される互いに対向する両パイプ端面の相対的空間座標データを取得して溶接管の製作図データを作成するパイプ端面計測装置を提供することができる。
【0016】
また、フック掛止用治具は、フックを掛止する掛止具を有し、一方のパイプのパイプ厚さ部に対し一方のパイプの外周面側に設けられた
2つの位置決めピン、および位置決め稜の何れか一方と、内周面側に設けられた1つの位置決めピンを備え、パイプ端面側から装着されパイプ厚さ部を挟持することによって、パイプ端面の位置を正確に示すことができ、接続される互いに対向する両パイプ端面の相対的空間座標データを取得して溶接管の製作図データを作成するパイプ端面計測装置を提供することができる。
【0018】
請求項
2に係る発明によれば、他方のパイプに装着されたセットテーブルは、ハンドルを廻すことによってボールねじを回転させ、このボールねじにはその回転によって互いに近接または離間する一方のクランパと他方のクランパが設けられた位置決め機構を備えており、これによって、他方のパイプの軸芯位置が正確に把握され、位置測定装置を他方のパイプの軸芯位置に正確に位置決めでき、接続される互いに対向する両パイプ端面の相対的空間座標データを取得して溶接管の製作図データを作成するパイプ端面計測装置を提供することができる。
【0019】
請求項
3に係る発明によれば、位置決め機構は、他方のパイプの軸芯を延長した位置と、ワイヤをガイドするアームの軸芯と、アームの旋回軸芯とが交差するように位置測定装置を載置するため、接続される互いに対向する両パイプ端面の相対的空間座標データを取得して溶接管の製作図データを作成するパイプ端面計測装置を提供することができる。
【0021】
請求項
4に係る発明によれば、フック掛止用治具が一方のパイプのパイプ端面に3〜4個装着され、3個のフック掛止用治具よってデータとして取得される一方のパイプのパイプ端面の3つの位置の距離データや角度データに基づいて、3つの測定点を含む平面を演算し、パイプの中心点やパイプ端面の座標を演算することができる。また、4つの測定点を計測することによって、3つの測定点を含む少なくとも2つの平面が演算され、これらの2つの平面は一致していなければならないため誤差を検証することが可能である。これによって、一方のパイプのパイプ端面と他方のパイプのパイプ端面との互いの高精度の空間的座標関係を取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
船舶には多くの配管が設けられている。ボイラー室からの蒸気の配管、クーラーの冷気用配管の他、ガス、水道、下水道など水廻りの配管があり、さらに、ディーゼルエンジンにも排気ガス廻りの配管があり、客船やプラントを備えた船舶などでは、10、000本以上の配管が用いられていることがある。
これらの配管を接続する際に、例えば、高圧ガスなどではその高圧のためフランジを用いることができないので溶接管というものを用いてそれを溶接で接続する必要がある。ここで言う溶接管とは、配管と配管を接続する際に用いる配管で、フランジを介在させることなく直接に溶接で接続する際に用いる配管のことである。
従来は、新規設備を施工する現場となる船内においてパイプの直管や曲がり管などの外形寸法やフランジの位置を測定する際に、計測装置を設置する基準となる場所を定めて、その基準データを設定するのは大変苦労があった。
また、修理交換の場合では、次の寄港地でのパイプ交換に通常1週間程度の停泊が余儀なくされている。また、都合良く次の停泊地で修理交換を行うためにも溶接管の測定データをいち早く電子データとしてパイプ製造工場に伝送しなければならず迅速な測定が必要であった。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る溶接管の製作図を作成するために、一方のパイプにおけるパイプ端面の空間的座標データを取得する様子を示し、(a)は、一方のパイプ端面にフック掛止用治具を装着し、他方のパイプ端面に位置測定装置を装着してパイプ端面の互いの空間的座標データを取得する様子を示す側面図、(b)は(a)に示すA―A線の断面端面図であり、3点計測の場合を示し、(c)は4点計測の場合を示している。なお、各フック掛止用治具の取り付け位置は等間隔に取り付けなくても構わない。適宜、設定可能である。
図1の(a)に示すように、船舶やプラントなどにおいて、気体や液体の搬送、特に高圧の気体の搬送にはフランジ無しのパイプが用いられる。このフランジ無しのパイプ間を接続する場合もフランジ無しの溶接管が用いられる。パイプ端面計測装置1は、パイプ間の接続を完成させるために、この接続される予定の互いに対向する両パイプ端面2aa、2baの相対的空間座標データを取得して溶接管6の製作図データの作成に用いるものである。
本願発明のパイプ端面計測装置1は、被計測対象として互いの開口を対向させた一方のパイプ2aのパイプ端面2aaと他方のパイプ2bのパイプ端面2baと、一方のパイプ2aのパイプ端面2aaの複数の位置を先端にフックを有する巻取り式のワイヤ3aで長さおよび角度を計測可能な位置測定装置3と、一方のパイプ2aのパイプ端面2aaに装着されて、フックが掛止されるフック掛止用治具4と、位置測定装置3が載置され他方のパイプ2bのパイプ端面2ba近傍に他方のパイプ2bを抱持して固定されるセットテーブル5とを備えている。
図1の(b)に示すように、3点計測の場合では、3個のフック掛止用治具4が一方のパイプ2aのパイプ端面2aaのパイプ厚さ部2adをクランプして設けられている。この3点の空間座標を測定することで三角形の平面が求められる。パイプの厚さは8mm、パイプの径は10、30、60、および100mmを用いているが、これに限るものではない。
また、
図1の(c)に示すように、4点計測の場合では、4個のフック掛止用治具4が一方のパイプ2aのパイプ端面2aaのパイプ厚さ部2adをクランプして設けられている。この4点の空間座標を測定することで、少なくとも2つの三角形の平面が求められる。4点計測の場合が3点計測の場合と異なる点は、4点計測の場合には少なくとも2つの三角形の平面が求められるが、これらの平面は同一面でなければならず、これらの平面が同一面でなければ測定値が合っていないということが検証される。
【0024】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るフック掛止用治具の概略を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係るフック掛止用治具をパイプに装着した概略を示し、(a)はパイプの断面図とフック掛止用治具の側面図、(b)はフック掛止用治具の掛止具にフックを掛止した様子を示す側面図である。
図2の(a)(b)(c)および
図3の(a)(b)に示すように、フック掛止用治具4は、フック3dが掛止されて回動自在に設けられた掛止具4aと、一方のパイプ2aのパイプ厚さ部2adに対し外周面2ab側に設けられた位置決め稜4bとその支持部4baと、内周面2ac側に設けられ先端を支持部4caとした1つの位置決めピン4cとを備えている。位置決めピン4cは、パイプ2aの肉厚方向に移動可能にフック掛止用治具4に螺着されている。そして、このフック掛止用治具4を一方のパイプ2aのパイプ端面2aa側からパイプ厚さ部2adに、位置決め稜4bの支持部4baと位置決めピン4cの支持部4caとで挟持されている。すなわち、このパイプ厚さ部2adを外周面2ad側の位置決め稜4bの支持部4baに当接させ、内周面2ac側の位置決めピン4cが蝶ボルト4eを捩じ込んで固定される。このフック掛止用治具4は、螺着された位置決めピン4cの捩じ込み量を調節することによって、一方のパイプ2aのパイプ厚さ部2adに装着されたフック掛止用治具4の掛止具4aの位置をパイプ端面2aaの所定の測定位置に容易に設定でき、パイプ端面の位置を正確に示すことができる。所定の測定位置はパイプ厚さ部2adの中心である。パイプの多くは8mm厚を用いているが、パイプ厚に応じたフック掛止用治具を用いても構わない。なお、上記位置決めピンはボルトの先端を丸く加工したものを用いている。
【0025】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る位置測定装置とセットテーブルの概略を示し、(a)は側面図、(b)は(a)に示すD矢視図である。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る位置測定装置の概略図である。
図4の(a)(b)および
図5に示すように、セットテーブル5は位置決め機構5aを備えている。この位置決め機構5aは、他方のパイプ2bの軸芯位置2bdと相対的な位置関係を保持しながら他方のパイプ2bの外周面2bbをチャックする一方のクランパ5aaと他方のクランパ5abを備えている。そして、これらの左右一対に設けられた一方のクランパ5aaと他方のクランパ5abにはボールねじ5bのねじピッチに螺合するねじが設けられており、しかも、一方のクランパ5aaと他方のクランパ5abではそれぞれ逆ねじとなっているため、クランパ送りハンドル5acを回すことによってボールねじ5bが回転し、一方のクランパ5aaと他方のクランパ5abとが互いに近接または離間して他方のパイプ2bをクランプまたは解放する。また同時に、クランプ送りハンドル5acを廻すことによって位置測定装置3のセンタリングを行うので左右の固定ハンドル5ad、5aeによって位置測定装置3が固定される。すなわち、ボールねじ5bは中間部で正ねじ及び逆ねじに別れており、クランパ送りハンドル5acを回すことによって回転する。そして、一方のクランパ5aaが正ねじ部に設けられ、他方のクランパ5abが逆ねじ部に設けられているため、クランパ送りハンドル5acを回すことで互いに近接または互いに離間する動作を行う。これにより、一方のクランパ5aaと他方のクランパ5abのセンタリングを可能としている。また、ボールねじ5bの左右にはスライド式ガイド5cが設けられており、一方のクランパ5aaと他方のクランパ5abとを摺動自在に支持している。センタリングされた他方のパイプ2bはクランパ固定ねじ5aaaおよびクランパ固定ねじ5abaによって固定される。ここで、一方のクランパ5aaが正ねじ部に設けられ、他方のクランパ5abが逆ねじ部に設けられているとして説明したがこれに限るものではなく、設ける位置は逆にしても構わない。
また、他方のパイプ2bの軸心2bdは、セットテーブル5の中心位置と交差しており、一方のクランパ5aaと他方のクランパ5abには位置測定装置3を固定する固定ハンドル5ad、5aeが設けられていると共に、位置測定装置3の中心、即ち、ワイヤ3aをガイドするアーム3eの軸芯3eaとアーム3eの旋回軸芯3ecとが交差する位置が、他方のパイプ2bの軸心2bdの延長線と交差するように構成されている。また、中心位置出し機構3bは、アーム3eの左右を支持するように設けられてアーム3eのセンタリングを行う。この中心位置出し機構3bの軸芯はアームの旋回軸心3ecと同一軸芯である。
【0026】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るパイプ端面計測装置の概略図であり、(a)はパイプ断面とパイプに装着されたフック掛止用治具の側面図、(b)はフック掛止用治具にワイヤを掛止した位置測定装置の側面図および製作図作成手段の概略図である。
図6の(a)(b)に示すように、セットテーブル5に固定された位置測定装置3は、ワイヤ3aを導出・巻取りし、導出されたワイヤ3aの長さを測定可能なワイヤ導出長さ測定手段3iaを備えたワイヤ巻取り部3iと、ワイヤ3aを導出する方向に回動し、回動したアーム角度θ1を測定可能で、ワイヤ巻取り部3iとの間でワイヤ3aを導出・巻取りしてワイヤ3aを支持するアーム3eと、アーム3eをワイヤ3aの導出される方向へ旋回させ、この旋回した旋回角度θ2を測定可能な旋回台3cとを備えている。
セットテーブル5に固定された位置測定装置3から導出されたワイヤ3aの先端に設けられたフック3dを掛止具4aに掛ける。その際、フック掛止用治具4の中心が一方のパイプ2aのパイプ厚さ部2adの中心になるように固定される。
つまり、位置測定装置3のアーム3eの先端からワイヤ3aを引き出し、ワイヤ先端のフック3dをフック掛止用治具4の掛止具4aに掛止すると、ワイヤ3aはワイヤエンコーダーとして張力を持っているので、ワイヤ3aを案内するアーム3eは一方のパイプ2a側へ傾動する。この状態で一つの測定点のワイヤ3aの長さ、アーム角度θ1、および旋回台3cの旋回角度θ2が制御部3hに入力される。同様の方法で、残り2箇所を測定する。
【0027】
この方法で得られる複数の測定点の距離データや角度データに基づいて、複数の測定点を含む平面を演算し、パイプの中心点やパイプ端面の座標を演算することができる。パイプの口径としては、φ10〜φ30cm、φ10〜φ60cm、φ10〜φ100cmなどの範囲があり、それぞれに対応するセットテーブルを用いている。
このように、パイプ端面計測装置1は、他方のパイプ2bのパイプ端面2baを基準として設けられたセットテーブル5に位置測定装置3を固定し、セットテーブル5に載置された位置測定装置3のフック3dを一方のパイプ端面2aaに固定されたフック掛止用治具4の掛止具4aにワイヤ3aが緊張状態で掛止させて、一方のパイプ2aにおけるパイプ端面2aaの空間的位置を計測することによって、一方のパイプ2aのパイプ端面2aaと他方のパイプ2bのパイプ端面2baとの互いの空間的座標データを取得することができる。
これによって、パイプ端面計測装置は、船舶やプラントなどにおいて、気体や液体の搬送に用いるパイプを接続する溶接管の外形寸法を迅速かつ正確に計測し、接続される互いに対向する両パイプ端面の相対的空間座標データを取得して溶接管の製作図データを作成するパイプ端面計測装置を提供することができる。
【0028】
次に、第1の実施形態に係るパイプ端面計測装置の動作を説明する。
パイプ端面計測方法は、パイプ端面計測装置1において、一方のパイプ2aのパイプ端面2aaと他方のパイプ2bのパイプ端面2baとの互いの空間的座標関係を取得するパイプ端面計測方法であって、フック掛止用治具4が一方のパイプ2aのパイプ端面2aaに3〜4個装着され、一方のパイプ2aのパイプ端面2aaの空間的座標X、Y、Zおよび他方のパイプ2bのパイプ端面2baとの相対位置が取得される。
これによれば、フック掛止用治具が一方のパイプ端面に3〜4個装着され、データとして取得される一方のパイプ2aのパイプ端面2aaの複数の位置の距離データや角度データに基づいて、3つの測定点を含む平面を演算し、その平面の中心点を演算することができる。また、4つの測定点を計測することによって、3つの測定点を含む少なくとも2つの平面が演算される。このとき、これらの平面は同一面でなければならず、これらの平面が同一面でなければ測定値が合っていないということで誤差を検証することが可能である。これによって、他方のパイプ5bの軸芯2bd位置が正確に把握され、位置測定装置3を他方のパイプ2bの軸芯位置に正確に位置決めでき、接続される互いに対向する両パイプ端面の相対的空間座標データを取得して溶接管の製作図データを作成することができる。
また、フランジを設けることのできないパイプであっても、交換・修理を行う際に迅速・正確な製作図データに沿った溶接管を製作して溶接修理を高精度で安全に、そして容易に行うことができる。
【0029】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係るパイプ端面計測装置の第2の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態のフック掛止用治具には支持部4baとして位置決め稜4bが設けられていたが、第2の実施形態では、2つの位置決めピン14b、14bが設けられている点である。
図7は、本発明の第2の実施形態に係るフック掛止用治具の概略図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。尚、
図7において、
図1〜
図6と同様の構成については同符合を付し、その説明を省略する。
図7の(a)(b)(c)に示すように、フック掛止用治具14は、フック3dを掛止する掛止具14aを有し、一方のパイプ2aのパイプ厚さ部2adに対し一方のパイプ2aの外周面2ab側に設けられた2つの位置決めピン14b、14bと内周面2ac側に設けられた1つの位置決めピン14cを備えている。この3つの位置決めピン14b、14b、14cによって、一方のパイプ2aのパイプ端面2aa側から装着されパイプ厚さ部2adを挟持する。この螺着されてフック掛止用治具14に設けられた3つの位置決めピン14b、14b、14cを調節してどのようなパイプの厚さに対しても対応可能であり、パイプ端面2aaの厚さ方向の中心位置を正確に把握することができ、接続される互いに対向する両パイプ端面2aa、2baの相対的空間座標データを正確に取得することができる。
【0030】
以上、好ましい実施の形態を説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することの無い範囲内において適宜変更が可能なものである。例えば、フック掛止用治具をパイプ端面に装着するために、フック掛止用治具には、パイプの外周側に対して1つの位置決め稜、内周側に対して1つの位置決めピンを設けるなどとして説明したが、これらの個数に限定するものではなく適宜、構成しても構わない。
また、位置決め稜はフック掛止用治具にボルト4dによって固定されいるが、捩じ込み量の調節可能なボルトを用いて位置決め稜の位置を可変にしても構わない。さらに、内周側および外周側の位置決めピンの支持部の位置調節は、パイプの肉厚の中心に掛止具が来るように調節すると共に、パイプの径によっても変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る溶接管の製作図を作成するために、一方のパイプにおけるパイプ端面の空間的座標データを取得する様子を示し、(a)は一方のパイプ端面にフック掛止用治具を装着し、他方のパイプ端面に位置測定装置を装着してパイプ端面の互いの空間的座標データを取得する様子を示す側面図、(b)は(a)に示すA―A線の断面端面図であり、3点計測の場合を示し、(c)は4点計測の場合を示している。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るフック掛止用治具の概略を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るフック掛止用治具をパイプに装着した概略を示し、(a)はパイプの断面図とフック掛止用治具の側面図、(b)はフック掛止用治具の掛止具にフックを掛止した様子を示す側面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る位置測定装置とセットテーブルの概略を示し、(a)は側面図、(b)は(a)に示すD矢視図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る位置測定装置の概略図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るパイプ端面計測装置の概略図であり、(a)はパイプ断面とパイプに装着されたフック掛止用治具の側面図、(b)はフック掛止用治具にワイヤを掛止した位置測定装置の側面図および製作図作成手段の概略図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るフック掛止用治具の概略図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【
図8】従来の実施形態に係る位置測定装置による測定方法を示し、(a)は全体概略図、(b)はフランジの位置を測定する様子を示す側面図である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、船舶やプラントなどにおいて、液体や高圧の気体の搬送にフランジ無しの配管を用いる際のパイプ間を接続する溶接管の製作に際し、接続される互いに対向する両パイプ端面の相対的空間座標データを取得して溶接管の製作図データを迅速かつ正確に作成するパイプ端面計測装置およびパイプ端面計測方法に適用される。
【符号の説明】
【0033】
1 パイプ端面計測装置
2 パイプ
2a 一方のパイプ、パイプ
2aa パイプ端面、一方のパイプ端面
2ab 外周面
2ac 内周面
2ad パイプ厚さ部
2b 他方のパイプ、パイプ
2ba パイプ端面、他方のパイプ端面
2bb 外周面
2bd 軸芯、他方のパイプの軸芯
3 位置測定装置
3a ワイヤ
3b 中心位置出し機構
3c 旋回台
3ca 旋回角度(θ2)測定手段
3d フック
3e アーム
3ea 軸芯、アームの軸芯
3eb アーム角度(θ1)測定手段
3ec 軸芯、アームの旋回軸芯
3f 架台
3g 基板
3h 制御部
3i ワイヤ巻取り部
3ia ワイヤ導出長さ測定手段
4、14 フック掛止用治具
4a、14a 掛止具
4b 位置決め稜
4ba、14ba 支持部
4c、14b、14c 位置決めピン
4ca、14ba、14ca 支持部
4d、14d ボルト
4e、14e 蝶ボルト
4f、14f ハンドル
4g、14g ナット
4h、14h 円板
5 セットテーブル
5a 位置決め機構
5aa 一方のクランパ
5aaa クランパ固定ねじ
5ab 他方のクランパ
5aba クランパ固定ねじ
5ac クランパ送りハンドル
5ad 固定ハンドル
5ae 固定ハンドル
5b ボールねじ
5c スライド式ガイド
6 溶接管
7 製作図作成手段
7a ケーブル
7b モニタ
7c キー
7d 製作図
【要約】
【課題】 フランジを備えていない配管の端面を計測して溶接管の製作図データを迅速かつ正確に作成するパイプ端面計測装置およびパイプ端面計測方法を提供する。
【解決手段】 本願発明は、一方のパイプ端面2aaの複数の位置を計測可能な位置測定装置3、外周面2ab側に設けられた位置決め稜4bと内周面2ac側に設けられた位置決めピン4cおよび掛止具4aとを有する、一方のパイプ端面に3〜4個装着されたフック掛止用治具4、および他方のパイプ2bを抱持すると共に位置測定装置3を載置したセットテーブル5を備えたパイプ端面計測装置であって、ワイヤ3aを緊張状態にしてフック3dを掛止具4aに掛止し、一方のパイプ端面2aaの空間的位置を計測することによって、一方のパイプ端面2aaと他方のパイプ端面2baとの互いの空間的座標データを取得する。
【選択図】
図1