【実施例】
【0037】
以上の効果を確認するために、次の実施例1〜実施例3と、比較例1の果実袋を作製し、評価を行った。また、それぞれの果実袋を用いて実地試験を行って性能を比較した。
【0038】
(実施例1)
<インキ組成物の調製>
ポリウレタン樹脂(不揮発成分30% 三洋化成工業株式会社製IB−422)30.0重量部と、混合溶剤(トルエン:キシレン:イソプロパノール=1:1:1)32.6重量部を前もって溶解させ、さらに、近赤外線反射機能を有する酸化チタン(テイカ株式会社製 JR−1000)45重量部を加え、撹拌して均一になるまで混合した後、ペイントコンディショナーで1時間分散した。この分散液に、前述のポリウレタン樹脂20重量部と混合溶剤9重量部とを予め混合して得られる溶液を撹拌しながら添加して、インキ組成物を調製した。レットダウンは、P(顔料)/B(樹脂)=3.0とした。
【0039】
<インキ膜の作製>
上述のようにして作製したインキ組成物を、基材として用いた西日本果実袋株式会社製M−4橙袋(縦190mm、横140mm)上の表面全面に、酸化チタンの含有量が1.3g/m
2になるようにバーコーターを用いて塗布し、塗工層としてインキ膜を形成した。このようにして得られた果実袋を実施例1の果実袋試験片とした。
【0040】
(実施例2)
酸化チタンの含有量が3.0g/m
2になるように塗布する以外は実施例1と同様にして果実袋試験片を作製した。
【0041】
(実施例3)
酸化チタンの含有量が7.5g/m
2になるように塗布する以外は実施例1と同様にして果実袋試験片を作製した。
【0042】
(比較例1)
比較例1の果実袋としては、西日本果実袋株式会社製M−4橙袋を用いた。すなわち、実施例1〜実施例3で用いた西日本果実袋株式会社製M−4橙袋上にインキ膜を形成しないものを比較例1の果実袋試験片として用いた。
【0043】
<インキ膜の評価>
実施例1〜実施例3と比較例1の試験片について、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計U−4100により、分光透過スペクトルを測定した。測定された分光透過率に基づき、300nm〜2500nmにおける透過率とJIS K 5602に準じて、日射透過率を算出した。また、JIS K 5602に準じて、300nm〜2500nmにおける日射反射率を算出した。
【0044】
(実地試験)
実施例1〜実施例3の果実袋と、比較例1の果実袋のそれぞれを、50袋ずつ、供試樹として清水白桃合計4樹に被袋した。それぞれの果実袋による収穫日の促進効果、果皮着色割合、赤肉発生割合を調べた。
【0045】
<収穫日の促進効果>
比較例1の果実袋を被袋した果実50個の平均の収穫日を基準日として、他の果実袋を被袋した果実の収穫日と基準日との差を調べた。実施例1の果実袋を被袋した果実50個の平均の収穫日は基準日と比較して0.4日早かった。実施例2の果実袋を被袋した果実50個の平均の収穫日は基準日と比較して1.0日早かった。実施例3の果実袋を被袋した果実50個の平均の収穫日は基準日と比較して1.7日早かった。
【0046】
<果皮着色割合>
果皮着色は0:全く着色がない、1:果頂部先端からの約1cm程度の範囲(果実表面の5%以下が着色)、2:果頂部先端から約1〜3cm程度(全体の5〜10%程度)が着色、3:果頂部先端から3cm〜5cm範囲で着色(全体の10〜30%)、4:果頂部先端から5cm以上が着色(ほぼ全面)の基準で判定した。果皮着色程度2以上は、非常に目立ち、商品性が下がる可能性がある。
【0047】
<赤肉発生割合>
赤肉症は果実側面を縦に切断後、観察して判断した。基準は0:全く着色がない正常果、1:果肉の10%程度がピンクまたは赤変、2:果肉の10〜30%がピンクまたは赤変、3:果肉の30%以上80%程度がピンクまたは赤変、4:果肉全面(80%以上)が濃く赤変とした。赤肉症の発生程度3以上は、非常に目立ち、商品性が下がる可能性がある。
【0048】
上述の果実袋の透過率、日射透過率の測定結果と実地試験の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
図1と表1に示すように、実施例1〜実施例3の果実袋は、いずれも、比較例1の果実袋よりも300〜2500nmの日射透過率が低く、収穫日が比較例1の収穫日よりも早かった。
【0051】
上述のインキ膜の日射反射率の測定結果と実地試験の結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
図2と表2に示すように、実施例1〜実施例3の果実袋を用いた場合には、いずれも、比較例1と比較して日射反射率が高く、実施試験では、果皮の着色割合が低く、また、赤肉発生割合が低かった。
【0054】
以上の結果から、実施例1〜実施例3の果実袋は、収穫日の促進効果があり、かつ、果肉障害を抑制することが可能であることがわかった。比較例1の果実袋は、収穫日の促進効果がなく、果皮の着色割合が比較的高く、赤肉の発生割合も比較的高かった。
【0055】
次に、果実袋の違いが果実袋内の果実表面の温度に及ぼす影響を調べた。実施例1〜実施例3の果実袋と、比較例1の果実袋と、比較例1の果実袋を2枚重ねたものとを、それぞれ、50袋ずつ、供試樹として清水白桃合計4樹に被袋した。それぞれの果実袋内の果実表面の温度を測定し、50袋の平均値を求めた。以下の説明において、各実施例、比較例の温度として記載されている数値は、その実施例または比較例の果実袋を被袋したすべての果実について測定された温度の平均値である。温度の測定は、2010年7月21日13時〜14時の間に行った。
【0056】
図3に示すように、外気温が36℃を超えているとき、いずれの果実袋でも、果実袋内の果実表面の温度は外気温よりも低かった。実施例1〜3の果実袋では、塗工層中に含まれる酸化チタンの量が比較的多い、実施例2と実施例3で、特に果実表面の温度が低かった。また、比較例1の果実袋と、比較例1の果実袋を2枚重ねたものとでは、比較例1の果実袋を2枚重ねたものの方がわずかに果実表面の温度が下がったものの、果実表面の温度は35℃を超えていた。
図3に示す結果と、表1、表2に示す結果から、果実表面の温度が低いほど収穫日の促進効果が大きいことが確認できた。
【0057】
(酸化チタン含有量の影響について)
次に、以下の実施例4及び5の果実袋を作製し、実施例3〜5と比較例1の果実袋を用いて実地試験を行って、酸化チタンの含有量とインキ組成物中のバインダーの影響を評価した。
【0058】
(実施例4)
酸化チタンの含有量が22.5g/m
2になるように塗布する以外は実施例1と同様にして果実袋試験片を作製した。すなわち、実施例4の果実袋の酸化チタン含有量は、実施例3の果実袋の3倍である。
【0059】
(実施例5)
インキ組成物の調製において、ポリウレタン樹脂の代わりに、アクリル樹脂(不揮発成分50% DIC株式会社製アクリディック(登録商標)A−1712)を用い、前述のアクリル樹脂20.0重量部と、混合溶剤(トルエン:酢酸ブチル=7:3)25.0重量部を前もって溶解させ、さらに、近赤外線反射機能を有する酸化チタン(テイカ株式会社製 JR−1000)45重量部を加え、撹拌して均一になるまで混合した後、ペイントコンディショナーで1時間分散した。この分散液に、前述のアクリル樹脂10重量部を撹拌しながら添加して、インキ組成物を調製した。レットダウンは、P(顔料)/B(樹脂)=3.0とした。このようにして作製したインキ組成物を、基材として用いた西日本果実袋株式会社製M−4橙袋(縦190mm、横140mm)上の表面全面に、酸化チタンの含有量が7.5g/m
2になるように塗布し、塗工層としてインキ膜を形成することで果実袋試験片を作製した。すなわち、実施例5の果実袋の酸化チタン含有量は、実施例3の果実袋と同じである。
【0060】
(実地試験)
実施例3〜実施例5と比較例1の果実袋のそれぞれを、24袋ずつ、供試樹として清水白桃RS合計4樹に被袋した。それぞれの果実袋による果実温度への影響と、収穫日の促進効果を調べた。
【0061】
<果実温度への影響>
高温時日中の果実温度は、放射温度計(CHINO社製、IR−TAP)を用いて、果実袋底部の開口部から測定した。温度測定は、2011年7月29日(満開107日後)14時〜14時45分の間に行った。また、満開90日後からの温度変化は、果実表面にセンサを取り付け、満開90日〜115日後までデータロガー(TR71U)を用いて10分間隔で連続測定した。
【0062】
<収穫日の促進効果>
成熟時期は、クロロフィル計により予め機械選果程度の果皮色を把握しておき、その基準に達した果実を毎日収穫して把握した。比較例1の果実袋を被袋した果実24個の平均の収穫日を基準日として、他の果実袋を被袋した果実の収穫日と基準日との差を調べた。
【0063】
実施例3〜5と比較例1の果実袋の透過率、日射透過率、反射率、日射反射率の測定結果を表3に、実地試験の結果を表4に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
表4と
図4に示すように、実施例3〜5の果実袋では、いずれも、比較例1の果実袋と比較して、高温時日中の果実温度が1℃前後低かった。
【0067】
満開後90日後から連続測定した果実温度は、最高温度については、実施例3〜5の果実袋では比較例の果実袋よりも0.6〜1.9℃低かった。また、35℃以上の積算時間は実施例5で最も短く、次いで実施例3、実施例4の順に短く、比較例1の果実袋が最も長かった。
【0068】
収穫日の促進効果については、実施例3の果実袋を被袋した果実24個の平均の収穫日は基準日と比較して1.4日早かった。実施例4の果実袋を被袋した果実24個の平均の収穫日は基準日と比較して0.9日早かった。実施例5の果実袋を被袋した果実24個の平均の収穫日は基準日と比較して1.0日早かった。
【0069】
以上のように、実施例3〜5の果実袋は、いずれも、比較例1の果実袋と比べて果実温度を抑制する効果があった。実施例4の果実袋は実施例3の果実袋よりも酸化チタンの含有量が3倍多いが、果実温度の抑制効果は実施例3と同程度であった。
【0070】
また、収穫時に果梗を観察したところ、インキ組成物にポリウレタン樹脂を用いた実施例3及び4と比較して、アクリル樹脂を用いた実施例5の果実袋では、果梗離脱果の発生率が低かった。実施例5の果実袋では、さらに、実施例3または実施例4の果実袋と比較して、被袋作業時および収穫作業時に果実袋がべたつきにくく、果実袋どうしが接着しにくく、作業性を向上させることもできた。
【0071】
(基材の影響について)
次に、以下の実施例6〜8の果実袋を作製し、実施例5〜8と比較例1の果実袋を用いて実地試験を行って、基材の影響を評価した。
【0072】
(実施例6)
基材として、西日本果実袋株式会社製M−4橙袋の全体にエンボス加工を施したものを用いた以外は、実施例5と同様にして果実袋試験片を作製した。
【0073】
(実施例7)
基材として、実施例5の基材と比較して厚みが90%である西日本果実袋株式会社製M−43橙袋を用いた以外は、実施例5と同様にして果実袋試験片を作製した。
【0074】
(実施例8)
基材として、大きさが縦200mm、横160mmの西日本果実袋株式会社製M−4橙袋を用いた以外は、実施例5と同様にして果実袋試験片を作製した。
【0075】
(実地試験)
実施例5〜8と比較例1の果実袋のそれぞれを、24袋ずつ、供試樹として清水白桃RS合計4樹に被袋した。それぞれの果実袋による果実温度への影響と、収穫日の促進効果、赤肉発生の抑制効果を調べた。
【0076】
<果実温度への影響>
高温時日中の果実温度は、放射温度計(CHINO社製、IR−TAP)を用いて、果実袋底部の開口部から測定した。温度測定は、2012年7月25日(満開105日前後)15時〜15時30分の高温時の間に行った。
【0077】
<収穫日の促進効果>
成熟時期は、クロロフィル計により予め機械選果程度の果皮色を把握しておき、その基準に達した果実を毎日収穫して把握した。比較例1の果実袋を被袋した果実24個の平均の収穫日を基準日として、他の果実袋を被袋した果実の収穫日と基準日との差を調べた。
【0078】
<赤肉発生割合>
赤肉症は上述のように判断した。すなわち、果実側面を縦に切断後、観察して判断した。基準は0:全く着色がない正常果、1:果肉の10%程度がピンクまたは赤変、2:果肉の10〜30%がピンクまたは赤変、3:果肉の30%以上80%程度がピンクまたは赤変、4:果肉全面(80%以上)が濃く赤変とした。
【0079】
実施例5〜8と比較例1の果実袋の透過率、日射透過率、反射率、日射反射率の測定結果を表5に、実地試験の結果を表6に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
表6と
図5に示すように、実施例5〜8の果実袋では、いずれも、比較例1の果実袋と比較して、高温時日中の果実温度が明らかに低かった。
【0083】
収穫日の促進効果についても、実施例5〜8の果実袋では、いずれも、比較例1の果実袋と比較して、収穫日を促進する効果があった。特に、実施例7の果実袋では明らかに収穫日が促進された。
【0084】
赤肉については、実施例5〜8の果実袋では、いずれも、比較例1の果実袋と比較して、発生が抑制される傾向が見られた。特に、実施例6と実施例8の果実袋では、明らかに赤肉の発生が抑制された。
【0085】
(梨に対する効果について)
梨は、収穫前の高温、特に西日が直接当たるような果実で果肉障害の発生が多いことが知られており、例えば、日本国内での生産量が多い品種「新高」では、収穫前40日以降の果実温度が高くなると、みつ症などの果肉障害が発生しやすいことが知られている。そこで、果実として梨を用いて、本発明の果実袋による果実温度抑制の効果を確認した。
【0086】
(実施例9)
果実袋の基材として、トリカ社製の果実袋(45−2L)を用いた以外は、実施例5と同様にして果実袋試験片を作製した。
【0087】
(比較例2)
対照として、インキ膜を形成しない果実袋を比較例2の果実袋試験片とした。
【0088】
実施例9と比較例2の果実袋を、2012年9月上旬から10月10日にかけて、梨「新高」の果実10個ずつに被袋した。収穫当日の2012年10月10日14時に果実袋の一部を破り、直後に放射温度計(CHINO社製、IR−TAP)を用いて測定した。酸化チタンを含有する塗工層(実施例9)と、インキ膜を形成しない試験片(比較例2)の透過率、日射透過率、反射率、日射反射率の測定結果を表7に示す。
【0089】
【表7】
【0090】
図6に示すように、実施例9の果実袋では、比較例2の果実袋と比較して、1.2℃、果実温度が低かった。
【0091】
(ぶどうに対する効果について)
従来のぶどう用果実袋は、温度上昇を抑制する機能については重視されていない。このため異常高温に曝されると、収穫前後の異常な果粒の軟化、収穫後の鮮度低下が早まるなどの障害発生が認められる。そこで、果実としてぶどうを用いて、本発明の果実袋による果実温度抑制の効果を確認した。
【0092】
(実施例10)
果実袋の基材として、慣行の白袋(有限会社藤井製袋所製 ピオーネ用フジバッグ止め金入り有底(210mm×295mm))を用いた以外は、実施例5と同様にして果実袋試験片を作製した。
【0093】
(比較例3)
対照として、インキ膜を形成しない、上述の白袋を比較例3の果実袋試験片とした。
【0094】
実施例10と比較例3の果実袋の透過率、日射透過率、反射率、日射反射率の測定結果を表8に示す。
【0095】
【表8】
【0096】
実地試験としては、まず、12年生「ピオーネ」1樹(トンネル栽培)の果実76個に、2012年6月29日に比較例3の果実袋を被袋した。その後、(1)果粒軟化1週前(2012年7月6日)、(2)果粒軟化(2012年7月15日)、(3)果粒軟化2週後(2012年7月29日)、(4)果粒軟化4週後(2012年8月12日)から、それぞれ、果粒軟化9週後(2012年9月14日)までの期間、比較例3の果実袋を実施例10の果実袋に掛け替えた。上記の(1)〜(4)には、それぞれ、14個ずつ果実袋を掛け替えた。
【0097】
被覆期間中の各袋内の温度と外気の温度を、日置株式会社製データロガー3633を用いて、午前6時から午後6時の間、30分間隔で測定した。結果を表9に示す。
【0098】
【表9】
【0099】
表9に示すように、実施例10の果実袋では、比較例3の果実袋と比べて、日中の最高温度を0.5℃〜0.8℃、低く抑えることができた。
【0100】
また、本発明の果実袋がハウス内のぶどうの果実温度に及ぼす影響を次のようにして調べた。
【0101】
実地試験としては、まず、5年生「ピオーネ」2樹(無加温・灌水同時施肥栽培)の果実20果房に、2012年6月19日(果粒軟化10日後)に笠を掛けた。その後、果粒軟化3週後(2012年7月6日)に、10果房の笠を実施例10の果実袋に掛け替えた。
【0102】
被覆期間中の各袋内の温度と、笠の内部の温度と、外気の温度を、日置株式会社製データロガー3633を用いて、30分間隔で測定した。結果を表10に示す。
【0103】
【表10】
【0104】
表10に示すように、実施例10の果実袋を被袋したぶどうでは、果実袋を使用せず笠のみを掛けたぶどうと比較して、日中の最高温度を0.4℃低くすることができた。
【0105】
(塗工層に含まれる酸化チタンの影響について)
次に、塗工層に含まれる酸化チタンの種類と量が、塗工層の透過率と反射率に及ぼす影響を調べた。上述の実施例1〜3のインキ膜を、基材として西日本果実袋株式会社製M−4橙袋を用いる代わりに、透明なPETフィルム上に形成し、PETフィルムをベースラインとして塗工層の透過率を測定した。また、上述の実施例1〜3のインキ膜を、隠ぺい率試験紙(JIS K5600−4−1(1999)4.1.2に規定)の黒部上に形成し、塗工層の反射率を測定した。なお、各塗工層に含まれる酸化チタンの量は実施例1〜3と同様にした。このようにして、基材上に形成された塗工層の透過率と反射率を測定した。
【0106】
また、以下に述べるようにして比較例4〜6の塗工層試験片を作製し、透過率と反射率とを測定した。
【0107】
(比較例4)
<インキ組成物の調製>
ポリウレタン樹脂(不揮発成分30% 三洋化成工業株式会社製IB−422)30.0重量部と、混合溶剤(トルエン:キシレン:イソプロパノール=1:1:1)32.6重量部を前もって溶解させ、さらに、顔料用酸化チタン(テイカ株式会社製JR−701)45重量部を加え、撹拌して均一になるまで混合した後、ペイントコンディショナーで1時間分散した。この分散液に、前述のポリウレタン樹脂20重量部と混合溶剤を9重量部とを予め混合して得られる溶液を撹拌しながら添加して、インキ組成物を調製した。レットダウンは、P/B=3.0とした。
【0108】
<インキ膜の作製>
上述のようにして作製したインキ組成物を、上述のPETフィルム及び隠ぺい率試験紙に、酸化チタンの含有量が1.3g/m
2になるようにバーコーターを用いて塗布し、塗工層としてインキ膜を形成したものを比較例4の塗工層試験片とした。
(比較例5)
比較例5の塗工層試験片は、酸化チタンの含有量が3.0g/m
2になるように塗布すること以外は比較例4と同様にして作製した。
【0109】
(比較例6)
比較例6の塗工層試験片は、酸化チタンの含有量が7.5g/m
2になるように塗布すること以外は比較例4と同様にして作製した。
【0110】
実施例1〜3の塗工層と、比較例4〜6の塗工層について、上述のPETフィルム上の塗膜の透過スペクトルを測定した。また、上述の隠ぺい率試験紙黒部上の塗膜の反射スペクトルを測定した。測定された透過スペクトルと反射スペクトルから、塗工層の透過率と反射率を求めた。透過率を表11に、反射率を表12に示す。
【0111】
【表11】
【0112】
【表12】
【0113】
図7と
図8と表11に示すように、塗工層の透過率は、実施例1〜3では全体的に、比較例4〜6よりも低かった。特に、1000nm以上の波長の範囲では、実施例1〜3の塗工層の透過率は60%以下の範囲に収まり、一方、比較例4〜6の塗工層の透過率は60%を超えていた。実施例1〜3のうちでは、塗工層中の酸化チタンの量が多いものほど透過率が低かった。比較例4〜6のうちでも、塗工層中の酸化チタンの量が多いものほど透過率が低かった。また、顔料用の酸化チタンを用いた比較例4〜6よりも、近赤外線反射機能を有する酸化チタンを用いた実施例1〜3の方が、1000〜1400nmにおいて透過率が低かった。
【0114】
図9と
図10と表12に示すように、塗工層の反射率は、実施例1〜3では全体的に、比較例4〜6よりも高かった。特に、1000nm以上の波長の範囲では、実施例1〜3の塗工層の反射率の方が比較例4〜6より高く、実施例1〜3のうちでは、塗工層中の酸化チタンの量が多いものほど反射率が高かった。比較例4〜6のうちでも、塗工層中の酸化チタンの量が多いものほど反射率が高かった。また、顔料用の酸化チタンを用いた比較例4〜6よりも、近赤外線反射機能を有する酸化チタンを用いた実施例1〜3の方が、1000〜1400nmにおいて反射率が高かった。
【0115】
以上のように、本発明のもう一つの局面に従った果実袋は、基材と、基材上に形成された、酸化チタンを含有する塗工層とを備え、塗工層は、分光光度計による光の透過率が、1000〜1400nmにおいて60%以下である。また、塗工層は、近赤外線反射機能を有する酸化チタンを含有し、分光光度計による光の反射率が、1000〜1400nmにおいて40%以上であることが好ましい。
【0116】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変形を含むものである。