特許第5877451号(P5877451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5877451多段極低温液圧タービンを用いた装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877451
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】多段極低温液圧タービンを用いた装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   F03B 17/06 20060101AFI20160223BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   F03B17/06
   F25J1/00 B
【請求項の数】19
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-521785(P2013-521785)
(86)(22)【出願日】2011年6月24日
(65)【公表番号】特表2013-540925(P2013-540925A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011041851
(87)【国際公開番号】WO2012015546
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年6月11日
(31)【優先権主張番号】61/369,481
(32)【優先日】2010年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500450727
【氏名又は名称】エクソンモービル アップストリーム リサーチ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス トッド エス
(72)【発明者】
【氏名】ホルト クリストファー ジー
【審査官】 後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−009114(JP,A)
【文献】 特開平07−004205(JP,A)
【文献】 特開2003−097224(JP,A)
【文献】 特表2002−508055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 17/06
F25J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体タービンから電気を発生させる方法であって、
第1の直列配置において結合された第1の複数の液体タービンを通って高圧液体流を流す段階であって、前記直列配置のタービン内の第1のタービンの後で、液体タービンの各々の入口が先行する液体タービンの出口に結合され、前記第1の複数の液体タービンは発電機を含む、段階と、
前記高圧液体流からエネルギを除去して低圧液体流を形成することで、前記第1の直列配置から電気を発生させる段階と、
故障している前記第1の複数の液体タービンの中の何れか1つをバイパスさせるとともに、前記第1の直列配置の残りのタービンで電気の発生を継続させる段階と、
前記複数の液体タービンの一つに結合された発電機から可変周波数駆動部を駆動する段階と、
前記可変周波数駆動部が故障した場合に、
前記複数の液体タービンの一つの速度を調整して、発電機周波数を電力網周波数と同期させる段階と、
前記発電機の出力を電力網へ直接接続する段階と、を含む方法。
【請求項2】
液体タービンがパイパスされる場合に、前記第1の直列配置からの合計電気出力を一定値に維持する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体タービンがバイパスされる場合に、前記第1の直列配置からの前記低圧液体流の圧力、温度、及び質量流量を維持する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の直列配置の前で前記高圧液体流の一部を取り除く段階と、
第2の直列配置において結合された第2の複数の液体タービンを通って前記高圧液体流の一部を流す段階であって、前記直列配置のタービン内の第1のタービンの後で、液体タービンの各々の入口が先行する液体タービンの出口に結合され、前記第2の直列配置は前記第1の直列配置と並列である、段階と、
前記高圧液体流の一部からエネルギを除去して低圧液体流を形成することで、前記第2の直列配置から電気を発生させる段階と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高圧液体流は、液化天然ガスから成る、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
液化天然ガス(LNG)を生成する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
液化天然ガス(LNG)を生成する方法であって、
第1の直列配置において結合された第1の複数の液体タービンを通ってLNGの高圧流を流す段階と、
前記LNGの高圧流の圧力を低下させてLNGの低圧流を形成することで、電気を発生させる段階と、
故障している前記第1の複数の液体タービンの中の何れか1つをバイパスさせるとともに、前記第1の直列配置からの電気の発生を継続させる段階と、
前記複数の液体タービンの一つに結合された発電機から可変周波数駆動部を駆動する段階と、
前記可変周波数駆動部が故障した場合に、
前記複数の液体タービンの一つの速度を調整して、発電機周波数を電力網周波数と同期させる段階と、
前記発電機の出力を電力網へ直接接続する段階と、を含む方法。
【請求項8】
第2の直列配置に結合された第2の複数の液体タービンを通ってLNGの高圧流の一部を流す段階であって、前記第2の直列配置は前記第1の直列配置と並列である、段階と、
前記LNGの高圧流の一部からエネルギを除去するとともに、圧力を低下させてLNGの低圧流を形成することによって、前記第2の複数の液体タービンで電気を発生させる段階と、
を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
液化天然ガス(LNG)プラントであって、
第1の複数の液体タービン膨張器を備え、
前記第1の複数の膨張器は第1の直列配置にあり、第1の液体タービン膨張器の後で、前記第1の直列配置の膨張器の各々の入口は、先行する液体タービン膨張器に結合され、
前記第1の複数の液体タービン膨張器のいずれもが、液体の圧力を低下させることにより生成されたエネルギで電気を発生する発電機を備え、
前記第1の複数の液体タービン膨張器のいずれもが、前記LNGプラントが作動継続することを可能にしながらバイパスされるように構成され
少なくとも部分的に前記液体タービン膨張器からのセンサ測定値に基づいて、液体タービン膨張器をパイパスするように構成される自動制御システムを更に備え、前記センサ測定値は、発電機に連結された可変周波数駆動部の故障検出を含む、LNGプラント。
【請求項10】
第2の複数の液体タービン膨張器を更に備え、
前記第2の複数の液体タービン膨張器は第2の直列配置にあり、第1の液体タービン膨張器の後で、前記第2の直列配置の膨張器の各々の入口は先行する液体タービン膨張器に結合され、
前記第2の複数の液体タービン膨張器のいずれもが、液体の圧力を低下させることにより液体から除去されたエネルギで電気を発生するように構成された発電機を備え、
前記第1の直列配置は前記第2の直列配置と並列であり、
前記第2の複数の液体タービン膨張器のいずれもが、前記LNGプラントが作動継続することを可能にしながらバイパスされるように構成される、請求項に記載のLNGプラント。
【請求項11】
前記液体は、LNG、冷媒、又は両方である、請求項に記載のLNGプラント。
【請求項12】
前記センサ測定値は、振動センサのハイレベルを含む、請求項に記載のLNGプラント。
【請求項13】
液化天然ガス(LNG)プラントであって、
第1の複数の液体タービン膨張器を備え、
前記第1の複数の膨張器は第1の直列配置にあり、第1の液体タービン膨張器の後で、前記第1の直列配置の膨張器の各々の入口は、先行する液体タービン膨張器に結合され、
前記第1の複数の液体タービン膨張器のいずれもが、液体の圧力を低下させることにより生成されたエネルギで電気を発生する発電機を備え、
前記第1の複数の液体タービン膨張器のいずれもが、前記LNGプラントが作動継続することを可能にしながらバイパスされるように構成され、
発電機の各々に連結された可変周波数駆動部と、
前記可変周波数駆動部をバイパスして、前記発電機を直接電力網に接続するように構成される自動制御システムと、
を更に備える、LNGプラント。
【請求項14】
前記第1の複数のタービンの少なくとも1つは、並列に結合された予備タービンを備え、前記予備タービンは、前記第1の複数のタービンの1つの代わりにオンラインとなるように構成される、請求項に記載のLNGプラント。
【請求項15】
前記第1の複数のタービンのいずれの内部構成要素も同じデザインである、請求項に記載のLNGプラント。
【請求項16】
前記第1の直列配置と前記第2の直列配置との間に結合部を更に備え、
前記結合部は、各直列配置の第1のタービンの後で、各直列配置の最終タービンの前に配置され、
前記結合部は、前記第1の直列配置と前記第2の直列配置との間の液体流通を可能にするように構成される、請求項10に記載のLNGプラント。
【請求項17】
前記発電機の全てに連結される単一の可変周波数駆動部を更に備える、請求項に記載のLNGプラント。
【請求項18】
電力網に直接接続される少なくとも1つの発電機と、
第1のタービン、最終のタービン、又は両方に配置される可変周波数駆動部と、
を更に備える、請求項に記載のLNGプラント。
【請求項19】
前記第1の複数のタービンの発電機の全ては、直接電力網に接続される、請求項に記載のLNGプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年7月30日出願の米国特許仮出願第61/369,481号「多段極低温流体タービンを用いた装置及び方法」の優先権を主張するが、その開示内容全体は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明の例示的な実施形態は、液化天然ガス(LNG)プラントで天然ガスを冷却するための、直列又は直列−並列形式の多段極低温液圧タービンの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
大量の天然ガス(例えば、主にメタン)が世界の遠隔地域で産出されている。このガスは、市場へ経済的に輸送できれば大きな価値がある。ガスの貯蔵地が適度に市場に近く、2つの地点間の地形が許せば、一般にガスは生成されて水中又は地上にあるパイプラインを通して市場へ輸送される。しかしながら、パイプラインの敷設が実現不可能な又は経済的に禁止される場所においてガスが生成される場合、ガスを市場へ運ぶために他の技術を使用する必要があった。
【0004】
一般に、パイプライン以外でガスを輸送するために、ガスを産出場所又はその近くで液化させ、液化天然ガスを特別に設計され輸送船に搭載した貯蔵タンクで市場へ輸送する技術が使用される。天然ガスは、冷却及び凝縮されて液体状態となり液化天然ガス(「LNG」)が生成される。必須ではないが、LNGは、通常、実質的に大気圧で、約−162℃(−260°F)の温度で輸送されるので、輸送船上の特別な貯蔵タンクに貯蔵できるガス量が大幅に増える。例えば、LNGは、気相で天然ガスの1/600の体積となる。
【0005】
LNGの輸送船が目的地に到着すると、通常、LNGは他の貯蔵タンクに荷降ろしされ、そこからLNGは必要に応じて再蒸発され、パイプライン等を通してガスとして末端消費者に輸送される。従来、LNGは、主要エネルギ消費者に天然ガスを供給するための非常に一般的な輸送方法であった。
【0006】
液化プロセスには多数の段階があり、その間に天然ガスは冷却及び液化される。液化生産物の荷積み圧力は大気圧近く(例えば、約3.6psia又はそれより低い圧力)であるが、冷却プロセスの間に圧力が低下される。圧力の低下は、液化プロセスの間に天然ガスのエンタルピを低下させることで天然ガスの冷却を助ける。また、冷凍設備は、熱エネルギを除去するために使用される。
【0007】
このプロセスの1つの段階では、液体天然ガス流からエネルギ(又はエンタルピ)を抽出して、天然ガス流の高圧液相の圧力を十分に低下させて、非常に冷たいLNG(又は過冷却LNG)の生成を助けることが必要である。このことは、液圧タービンの圧力降下によって達成できる。
【0008】
液圧タービンの圧力降下は、LNGプロセスにおいて、液体冷媒流及び液体天然ガス流からエネルギを除去して低温を実現するために使用できる場合が多い。これらの液体流から除去されるエネルギは、電力を発生させるために使用できる。例えば、タービンに発電機を連結して、エネルギを除去するために必要な制動荷重をもたらすことができる。発電機は、設備の電力網に接続でき、追加的な電力はプロセスの熱力学的効率を改善する。LNGプロセスにおける効率の改善は、約1%から2%であり、1年で数メガワット時の節約につながり、液化プロセスの経済的正当性が高まる。
【0009】
他の当業者が、直列タービンを使用して、既存の設備で通常行われているよりも圧力を大きく降下させるニーズを満たすコンセプトを提案している。特許において直列膨張の実施例は、特に、空気分離、並びカスケードLNG液化プロセスに関すると見なされる。
【0010】
Pachalyの米国特許第3,724,226号は、統合低温精製を利用するLNG膨張サイクルプロセスを開示する。このプロセスにおいて、ワーク膨張した冷媒部分は圧縮行程を経て、直列膨張タービンを通ってワーク膨張される。膨張タービンは、圧縮機と共通の軸又は他の機械的連結部を共有することにより、圧縮機システムを冷媒ガスサイクルで駆動するのに必要な動力の少なくとも一部を提供する。使用される膨張器はターボ膨張器であり、これは高圧のガス流の一部を、ターボ膨張器を通して減圧させる際に液化することができる。次に、膨張流は、冷却ユニットを流れることができ、追加のターボ膨張器を通過する前により多くのエネルギを除去できる。
【0011】
Robertsの米国特許第4,019,343は、エンタルピ変換液体タービンを使用した冷凍システムを開示する。冷凍システムは、直列タービンを使用し、各タービンは関連の圧縮機を有している。液体アンモニア流が液体タービン内で膨張することができ、その間に液体の一部がフラッシュして、関連の圧縮機に送られる。冷却及び膨張された液体は、次の直列タービンに流れ、このプロセスが繰り返される。
【0012】
米国特許第2,922,285号、米国特許第3,677,019号、米国特許第4,638、638号、米国特許第4,758,257号、米国特許第5,651,269号、米国特許第6,105,389号、米国特許第6,647,744号、米国特許第6,898,949号、及び米国特許第7,047,764号に関連情報を見出すことができる。米国出願公開第2003/0005698号及び米国出願公開第2005/0183452号に別の情報を見出すことができる。国際公開特許第2007/021351号及び欧州公開特許第0672877号に追加の情報を見出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第2,922,285号
【特許文献2】米国特許第3,677,019号
【特許文献3】米国特許第4,638、638号
【特許文献4】米国特許第4,758,257号
【特許文献5】米国特許第5,651,269号
【特許文献6】米国特許第6,105,389号、
【特許文献7】米国特許第6,647,744号、
【特許文献8】米国特許第6,898,949号、
【特許文献9】米国特許第7,047,764号
【特許文献10】米国出願公開第2003/0005698号
【特許文献11】及び米国出願公開第2005/0183452号
【特許文献12】国際公開特許第2007/021351号
【特許文献13】欧州公開特許第0672877号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近年の要求の高まりにより、供給ガスのコストを低減するために、新しいガス液化プロジェクトのコスト及びスケジュール効率に重点が置かれている。大規模天然ガス液化プロジェクトでは、開発者をプロジェクトの高い初期資本コスト(例えば、50億ドル又はそれ以上)に起因する実質的な商業リスクにさらす。コスト、デザイン、及びスケジュール効率を改善することが、大規模LNG開発プロジェクトに関連した実質的な商業リスクの緩和に役立つ。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の例示的な実施形態は、液体タービンから電気を発生させる方法を提供する。本方法は、第1の直列配置の液体タービンに高圧液体流を流す段階を含み、第1の直列配置の液体タービン内の第1のタービンの後で、各液体タービンの入口は、先行液体タービンの出口に結合される。電気は、高圧液体流からエネルギを除去して低圧液体流を形成することにより、第1の直列配置の液体タービンで発生される。故障している何れか1つの液体タービンをバイパスすることができるが、第1の直列配置の液体タービンの残りのタービンで電気を発生し続けることができる。
【0016】
また、本方法は、液体タービンがパイパスされる場合、合計電気出力を一定値に継続する段階を含むことができる。更に、本方法は、液体タービンがバイパスされる場合、低圧液体流の圧力、温度、及び流速を維持する段階を含むことができる。
【0017】
実施形態において、高圧液体流の一部は、第1の直列配置の液体タービンより前で取り除き、第2の直列配置の液体タービンに流すことができる。第2の直列配置の液体タービンにおいて、第1のタービンの後で、各液体タービンの入口は、先行液体タービンの出口に結合される。第2の直列配置の液体タービンは、第1の直列配置の液体タービンと並列である。電気は、高圧液体流の一部からエネルギを除去して低圧液体流を形成することにより、第2の直列配置の液体タービンで発生される。
【0018】
高圧液体流は液化天然ガスから成り、LNGは本方法で生成できる。また、本方法は、発電機によって可変周波数駆動部を駆動する段階を含むことができ、可変周波数駆動部が故障した場合、発電機に連結されるタービンの速度を調整して、発電機周波数を電力網周波数と同期させる段階と、発電機の出力を直接電力網へ接続する段階とを含むことができる。
【0019】
本発明の他の実施形態は、液化天然ガス(LNG)を生成する方法を提供する。本方法は、第1の直列配置の液体タービンにLNGの高圧流を流す段階と、LNGの高圧流の圧力を降下させてLNGの低圧流を形成することによって電気を発生する段階とを含む。故障している何れか1つの液体タービンをバイパスすることができるが、第1の直列配置の液体タービンの残りのタービンで電気を発生し続けることができる。
【0020】
また、本方法は、第1の直列配置の液体タービンと並列な第2の直列配置の液体タービンにLNGの高圧流の一部を流す段階を含むことができる。また、電気は、圧力を低下させてLNGの低圧流を生成しながら、LNGの高圧流の一部からエネルギを除去することによって、第2の直列配置の液体タービンで発生される。
【0021】
本発明の他の実施形態は、液化天然ガス(LNG)プラントを提供する。LNGプラントは、第1の直列配置の液体タービン膨張器を含むことができ、第1の液体タービン膨張器の後で、各膨張器の入口は先行液体タービン膨張器に結合される。第1の直列配置の液体タービン膨張器の各々は、液体の圧力を低下させることにより生成されるエネルギで電気を発生する発電機を含むことができる。液体タービン膨張器の各々は、LNGプラントの作動を継続しながらバイパスできるようになっている。
【0022】
また、LNGプラントは、第2の直列配置の液体タービン膨張器を含むことができ、第1の液体タービン膨張器の後で、第2の直列配置の膨張器の各々の入口は先行液体タービン膨張器に結合される。また、第2の直列配置の液体タービン膨張器の各々は、圧力を降下させる間に液体から除去されたエネルギで電気を発生する発電機を含むことができる。第1の直列配置のタービンは第2の直列配置のタービンと並列である。第2の直列配置の液体タービン膨張器の各々は、LNGプラントの作動を継続しながらバイパスできるようになっている。
【0023】
液体は、LNG、冷媒、又はその両方とすることができる。LNGプラントは、少なくとも部分的に、液体タービン膨張器によるセンサ測定値に基づいて、液体タービン膨張器をパイパスする自動制御システムを含むことができる。実施形態において、センサ測定値は、振動センサのハイレベルとすることができる。センサ測定値は、発電機に連結された可変周波数駆動部の故障検出を含むことができる。
【0024】
LNGプラントは、各発電機に連結される可変周波数駆動部と、可変周波数駆動部をバイパスして発電機を直接電力網に接続する自動化された制御システムとを含むことができる。LNGプラントにおいて、タービンの少なくとも1つは、並列に結合された予備タービンを含むことができ、予備タービンは、タービンの代わりにオンラインとなるように構成される。各タービンの内部構成要素は同じデザインとすることができる。
【0025】
2つの並列な直列配置のタービンを使用する実施形態において、第1の直列配置のタービンと第2の直列配置のタービンとの間に結合部を含むことができる。結合部は、各直列配置のタービン内の第1のタービンの後で、各直列配置のタービンの最終タービンの前に配置され、第1の直列配置のタービンと第2の直列配置のタービンとの間で液体の流れを可能にするように構成される。LNGプラントは、全ての発電機に連結された単一の可変周波数駆動部を含むことができる。少なくとも1つの発電機は、直接電力網に接続することができ、直列配置のタービンは、第1のタービン、最終タービン、又は両方に配置される可変周波数駆動部を含むことができる。全てのタービンに関する発電機は、直接電力網に接続することができる。
【0026】
本発明の利点は、以下の詳細な説明及び添付図面を参照することにより、一層好ましく理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】液化天然ガス(LNG)プラントのブロック図である。
図2】LNGプラントの冷却/凝縮部のブロック図である。
図3】膨張器ループ(即ち、膨張器サイクル)及び過冷却ループが複数の液体タービンを使用してエネルギを除去しながら電気を発生するLNGプラントを示す。
図4】液体タービン発電機の概略図である。
図5】液体タービンから分離された発電機の概略図である。
図6】缶型液体タービン/発電機を示す。
図7】直列配置の液体タービンを示す概略図である。
図8】液体タービンの直列−並列配置800を示す概略図である。
図9】正常に作動している列における単一の液体タービンの故障への対応を示す概略図である。
図10】プラント制御システムのブロック図である。
図11A】LNGプラントの直列タービンの概略図である。
図11B図11Aに示す直列タービンの1つの詳細図である。
図12】LNGプラントにおける直列液体膨張タービンを始動する方法を示すプロセスフローチャートである。
図13】LNGプラントの直列液体膨張タービンにおける通常作動の方法を示すプロセスフローチャートである。
図14】LNGプラントの直列液体膨張タービンを停止する方法を示すプロセスフローチャートである。
図15】LNGプラントの直列液体膨張タービンにおけるVFD故障への対応方法を示すプロセスフローチャートである。
図16】LNGプラントにおいて、VFDをバイパスする方法及び発電機を直接電力網へ接続する方法を示すプロセスフローチャートである。
図17】タービンが過度に振動した場合の、LNGプラントにおけるタービンバイパス法を示すプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の詳細な説明において、本発明の特定の実施形態が説明される。しかしながら、以下の説明は、特定の実施形態又は本発明の特定の使用に特有である限り、これは単に例示目的であることが意図されており、単に例示的な実施形態を説明するものである。従って、本発明は、以下に記載の特定の実施形態に限定されず、むしろ、添付の特許請求の範囲の精神及び範疇に属する全ての代替物、変形物、及び均等物を含む。
【0029】
最初に、参照を容易にするために、本明細書で使用するいくつかの用語、及びこの文脈で使用するそれらの意味について説明する。本明細書で使用する用語は、以下に定義されない限り、最も広い定義を与えられるべきであり、当業者は、その用語に刊行物又は発行特許の少なくとも一方で表されるような定義を与える。更に、本発明は、以下に示す用語の使用によって限定されず、全ての均等物、同義語、及び同じ目的を果たす用語又は技術は、特許請求の範囲の範疇にあるとみなされる。
【0030】
本明細書で使用する場合、「圧縮機」は、材料の圧力を高めるようにデザインされた任意の形式の装置を含み、圧縮機装置の任意の1つの形式又は類似の又は異なる形式の組み合わせを含む。また、圧縮機は、特に、モータ及び駆動システム等の圧縮機と関連する補助装置を含むことができる。圧縮機は、1つ又はそれ以上の(例えば、直列の)圧縮段を利用できる。例えば、限定されるものではないが、例示的な圧縮機は、例えば、往復式及び回転式圧縮機等の容積式圧縮機、及び遠心式及び軸流式圧縮機等の動力学的圧縮機等を含むことができる。
【0031】
「極低温度(cryogenic temperature)」は、約−50℃又はそれ以下の温度である。
【0032】
「膨張機器」は、ライン内の流体(例えば、液体流、蒸気流、又は液体及び蒸気の両方を含む複相流)の圧力を低減するのに適した1つ又はそれ以上の機器を呼ぶ。特定の形式の膨張機器が具体的に記載されていない場合、膨張は、少なくとも部分的に等エンタルピ手段によって実行可能であり、少なくとも部分的に等エントロピ手段によって実行可能であり、又は等エンタルピ手段及び等エントロピ手段の両方の組み合わせによって実行可能である。限定されるものではないが、天然ガスを等エンタルピ膨張させるのに適した機器は従来から公知であり、弁、制御弁、ジュール・トムソン(J-T)弁、又はベンチュリ機器等の手動又は自動で作動するスロットル機器を含む。天然ガスを等エントロピ膨張させるのに適した機器は、従来から公知である。それらは、一般的に、膨張から仕事を抽出する又は引き出す膨張器又はターボ膨張器を含む。液体流を等エントロピ膨張させるのに適した機器は、従来から公知である。それらは、一般的に、膨張から仕事を抽出する又は引き出す膨張器、液圧膨張器、液体タービン、又はターボ膨張器を含む。等エントロピ手段及び等エンタルピ手段を組み合わせた実施例は、並列に設けられたジュール・トムソン弁及びターボ膨張器とすることができ、これによりジュール・トムソン弁及びターボ膨張器の単独使用、又は両方を組み合わせた同時使用が可能となる。等エンタルピ又は等エントロピ膨張は、完全液体相、完全蒸気相、又は混合相で行うことができ、蒸気流又は液体流から多相流(蒸気相及び液体相の両方を持つ流れ)への相変化を促進することができる。本明細書の図面の説明において、図面中の2つ以上の膨張器への言及は、いずれの図面でも各膨張器が必ずしも同じ形式又は寸法であることを意味しない。
【0033】
「膨張式冷却」は、ガス、液体、又は2相系の圧力が、減圧手段を通過することで減圧される場合に生ずる冷却を呼ぶ。1つの実施形態において、膨張手段はジュール・トムソン膨張弁である。本発明の他の実施例において、膨張手段は、ターボ膨張器等の液圧又はガス膨張器である。
【0034】
本明細書で使用する場合、「熱交換ユニット」は、熱の移動を促進する技術分野では公知の任意の装置の1つの形式又は類似の又は異なる形式を組み合わせたものを含む。従って、熱交換ユニットは、装置の単一部品とすること、又は複数の装置部品を含む装置を備えることができる。対照的に、多数の熱交換ユニットは、例えば、多数の熱交換器を収容する冷却ボックス等の装置の単一部品に収容することができる。
【0035】
用語「ガス」は、「蒸気」と同義に使用され、液体又は固体状態と区別可能な気体状態の物質又は物質の混合物として定義される。同様に、用語「液体」は、気体又は固体状態と区別可能な液体状態の物質又は物質の混合物を意味する。
【0036】
「炭化水素」は、水素及び炭素を主たる元素として含有し、他に少量の窒素、硫黄、金属、又は他の多数の元素が存在できる有機化合物である。本明細書で使用する場合、炭化水素は、一般に、CH4、C22、C24、C26、C3異性体、C4異性体、ベンゼン等の原料のままの天然ガス内に存在する成分を呼ぶ。
【0037】
一般的に、「液化天然ガス」又は「LNG」は、メタンを高い割合で含有するが、同時に他の元素及び/又は化合物を含有することが知られている天然ガスである。限定されるものではないが、他の元素又は化合物は、1つ又はそれ以上の成分(例えば、ヘリウム)又は不純物(例えば、水及び/又は重質炭化水素)を除去するように処理され、次に略大気圧で冷却されて液体に凝縮されたエタン、プロパン、ブタン、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、硫化水素、又はそれらの組み合わせを含有することができる。
【0038】
用語「天然ガス」は、原油井戸(付随ガス)から又は地下のガス含有組成(非付随ガス)から得られる多成分ガスを呼ぶ。天然ガスの成分及び圧力は著しく変動する。通常の天然ガス流は、主成分としてメタン(C1)を含有する。原料のままの天然ガスは、エタン(C2)、高分子量炭化水素、1つ又はそれ以上の酸性ガス(二酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、二硫化炭素、及びメルカプタン等)、及び少量の水、窒素、硫化鉄、ろう、及び原油等の汚染物質を含有する場合が多い。
【0039】
「圧力」は、容積壁上に作用する単位面積あたりのガス圧を呼ぶ。圧力は、インチ平方あたりのポンド(psi)で示すことができる。「大気圧」は空気の局所的な圧力を呼ぶ。「絶対圧力」(psia)は、大気圧(標準状態で14.7psia)とゲージ圧(psig)との合計を呼ぶ。「ゲージ圧」(psig)は、ゲージによって測定された圧力を呼び、単に局所的な大気圧を超える圧力(即ち、0psigのゲージは絶対圧力の14.7psiaに相当する)を示すに過ぎない。用語「蒸気圧」は、通常の熱力学的な意味をもつ。所定圧力での閉鎖系内の純粋成分に関して、成分の蒸気圧は、系内の総圧力に本質的に等しい。
【0040】
「サワーガス」は、一般的に、硫化水素(H2S)及び二酸化炭素(CO2)等のサワー種を含有する天然ガスを呼ぶ。H2S及びCO2が天然ガス供給流から除去された場合、ガスは「スイート」として分類される。用語「サワーガス」は、スイートでないガスから低い濃度でも発せられる臭いのために、H2Sを含む天然ガスに適用される。
【0041】
「実質的な(substantial)」は、材料の量に関して又はその特定の特性に関して使用される場合、材料又は特性が提供することが意図された作用をもたらすのに十分な量を呼ぶ。許容可能な偏差の正確な程度は、特定の関連状况に依存する場合もある。
【0042】
概説
図1は、液化天然ガス(LNG)プラントのブロック図である。図1に示すように、原料のままのガス供給102は、ガス処理プラント104で処理できる。ガス処理プラント104は、酸性ガス(CO2及びH2S等の)、並びに水及び重質炭化水素(エタン、エチレン、C3異性体、及び高炭素化合物)、及び他の不純物を除去できる。処理された天然ガス106は、LNGプラント108で冷却及び液化される。処理ガス106の一部は、ガスタービン内で燃焼して、LNGプラント108に動力を供給することができ、例えば、LNGプラント108の冷却/凝縮部110の冷媒圧縮機を駆動する。生成されたLNG112は、その後、貨物積載地に移送され、前述のように、LNG112は船舶又は他のLNG輸送船に積み込まれ、エネルギ消費地へ運ばれる。図2において、LNGプラント108の冷却/凝縮部110を詳細に説明する。
【0043】
図2は、LNGプラント108(図1)の冷却/凝縮部110のブロック図である。冷却/凝縮部110で処理された供給ガス106は、エネルギを除去してガスを凝縮するための1つ又はそれ以上の冷却装置202を通過することができる。冷却装置202は、圧縮機206、冷却器208、及び膨張器210を含むことができる1つ又はそれ以上の冷媒システム204によって冷却できる。膨張器210は、圧力を降下させ、これにより冷媒からエネルギを除去できる。圧力降下は、液体流の圧力が高い圧力(P1)から低い圧力(P2)へ低下するとして説明される。これは、冷媒が冷却装置202を流通する前に冷媒のエネルギを低下させるために使用される。例示的な実施形態において、冷媒膨張器210は、制動負荷をもたらす発電機に連結される極低温液体タービン(極低温液圧タービン、極低温液体膨張器、又は極低温液圧膨張器としても知られている)を含む。従って、電力は、極低温液体タービンによって液体から除去したエネルギを使用して発生させることができる。しかしながら、極低温液体タービンの容量は、本明細書に記載のように、液体タービン膨張器の合計機械動力、合計差圧、及び最大流量によって制限される場合がある。
【0044】
LNGが液化した状態で、LNG膨張器212は、圧力降下をもたらして、LNG流の圧力を低下させてそのエネルギを更に低下させるために使用できる。LNG膨張器212は、前述の冷媒膨張器210と同じ形式とすることができる。本発明の例示的な実施形態において、多段極低温液圧タービン(以下、液体タービン)は直列又は直列−並列配置で結合され、LNGプロセスおいて圧力降下を実現するようになっている。幾つかのLNGプラント技術は、図3に示すLNGプラント構成等の本発明の例示的な実施形態を使用できる。
【0045】
図3は、LNGプラント300を示し、膨張器ループ302(即ち、膨張器サイクル)及び過冷却ループ304は、多段液体タービンを使用して、冷媒及び供給ガス流306からエネルギを除去しながら電気を作り出すことができる。本明細書で使用する場合、用語「ループ」及び「サイクル」は、同義語として使用される。図3において、供給ガス流306は、約1200psiaよりも低い圧力で液化プロセスに入る。供給ガス流306は、より低い圧力、例えば、約600psiaよりも低くすることができる。通常、供給ガス流306は約800psiaである。供給ガス流306は、処理された天然ガス流106(図1)等の、汚染物質を除去するために処理された天然ガスを含むことができる。
【0046】
図3に示すように、供給ガス流306の一部を引き出して側流308を形成して、膨張器ループ302のための冷媒を供給することができる。しかしながら、天然ガスが膨張器ループ302において冷媒として使用される場合、供給ガス流306の一部は、供給ガスが熱交換領域へ流れた後を含む、プロセスの任意の数の他の場所から引き出すこともできる。側流308は、圧縮機310を通過することができ、約1500psiaよりも高い圧力に圧縮されて圧縮冷媒流312がもたらされる。圧力は1500psiaに限定されず、任意の圧力を使用できる。例えば、圧縮冷媒流312は2500psia以上とすることができ、更に高くすることもできる。
【0047】
圧縮機310から流出した後、圧縮冷媒流312は、冷却器314に流れることができ、冷媒流312は適切な冷却流体を用いて間接的熱交換によって冷却されて、圧縮、冷却された冷媒流をもたらす。任意の種類の流体を利用できるが、冷却器314は、冷却用流体として水又は空気を使用できる。圧縮冷媒流312が冷却器314から流出する際の温度は、大気条件及び使用される冷却媒体に依存し、約35°Fから約105°Fとすることができる。冷却及び圧縮された冷媒流312は、膨張器316へ流れることができ、膨張及び冷却されて膨張冷媒流318を形成するようになっている。本発明の例示的な実施形態において、膨張器316は、直列又は直列−並列配置の多段液体タービンを含み、以下に詳細に説明するように電気を作り出すようになっている。
【0048】
膨張冷媒流318は、第1の熱交換ユニット320へ流れて、第1の熱交換ユニット320に関する冷凍デューティの少なくとも一部を与えることができる。第1の熱交換ユニット320において、膨張冷媒流318は、熱交換器322を通過できる。いくつかの実施形態において、圧縮冷媒流318は、熱交換器322内でフラッシュして大きな冷却作用をもたらすことができる。
【0049】
圧縮冷媒流318は、第1の熱交換ユニット320から流出した後、圧縮機324へ供給される。圧縮機324において、膨張冷媒流318は圧縮されて圧縮流326を形成し、その後、圧縮流326は側流308と合流することができる。膨張器ループ302が側流308からの供給ガス流306で満たされると、漏れ損失量を戻すために、少量の供給ガス流306が補給に使用される。従って、圧縮機310に流入するガスの大部分は、一般的に圧縮流326によって供給される。側流308として引き出されない供給ガス流306の一部は、第1の熱交換ユニット320へ流れ、例えば、熱交換器328を通過して膨張冷媒流318との間で間接的な熱交換を行うことによって、少なくとも部分的に冷却される。
【0050】
供給ガス流306は、第1の熱交換ユニット320から流出した後、第2の熱交換器330を通過できる。第2の熱交換器330は、例えば、過冷却ループ304との間の間接的な熱交換によって、供給ガス流306を過冷却して過冷却流332を形成するために使用できる。過冷却流332は、第2の膨張器334において低い圧力に膨張でき、結果的に過冷却流332を部分的に液化して液体部分と残余の蒸気部分とを形成するようになっている。本発明の例示的な実施形態において、以下に詳細に説明するように、第2の膨張器334は、電気を作り出しための直列又は直列−並列配置の多段液体タービンを含む。
【0051】
過冷却流332はサージタンク336へ流れることができ、液化部分338は、沸点圧力に対応する温度のLNG流340としてプロセスから引き出される。残余の蒸気部分は、天然ガス及び過冷却流332に残存するいくらかの窒素を含むことができる。蒸気部分流342は、圧縮機に動力を供給する燃料として使用でき、例えば、ガスタービンエンジン内で燃焼して圧縮機列を駆動するようになっている。燃料として使用される前に、全ての又は一部のフラッシュ蒸気流342は、サージタンク336から、第2の熱交換ユニット330及び第1の熱交換ユニット320内の熱交換器344を通過して、冷媒によってもたらされる冷却を補うようになっている。
【0052】
フラッシュ蒸気342の一部は、ライン346を経由して引き出され、過冷却ループ304内の冷媒として作用できる。過冷却ループ304がガスで十分に充填されると、補給ガス(即ち、ライン346からの追加的なフラッシュ蒸気)だけが追加されて、漏れ損失量を戻すようになっている。過冷却ループ304において、膨張流348は、第3の膨張器350から流出して、第2の熱交換ユニット330内の熱交換器352及び第1の熱交換ユニット320内の熱交換器354を通過することができる。膨張流348は、熱交換器ユニット330及び320を通過すると、蒸気流356内へフラッシュすることができる。蒸気流356は、圧縮機358へ供給することができ、高い圧力に再圧縮される。圧縮機358から流出した後、再圧縮された過冷却冷媒流は、第2の冷却器360を通過して圧縮熱を除去するようになっている。任意の形式の冷却器を使用できるが、第2の冷却器360は冷却器314と同じ形式とすることができる。冷却後、再圧縮された過冷却冷媒流は、第1の熱交換ユニット320へ流れ、膨張冷媒流318、過冷却冷媒流348、及びフラッシュ蒸気流342との間接的な熱交換によって更に冷却することができる。第1の熱交換ユニット320から流出した後、再圧縮及び冷却された過冷却冷媒流は、膨張器350を通って膨張して、サイクルを繰り返すためにその後に使用される膨張流348をもたらすことができる。
【0053】
任意の数のプロセスは、液体タービン発電機を使用して、本明細書に説明した直列又は直列−並列配置を上手く利用することができるので、本明細書で説明する技術は、図3に示す例示的な実施形態の構成に限定されない。このプロセスは、AirProduct社のLNG生産プロセスC3MR及びAPCI、ConocoPhillips社のカスケードLNGプロセス、並びにLinde社のShell DMR LNGプロセス及びLNG生産プロセスを含むことができる。
【0054】
液体タービン構成
図4は、液体タービン発電機400の概略図である。液体タービン発電機400の基本的な構成要素は、プロセス液体入口404及び液体出口406結合部を備えるタービン402を含む。可変周波数発電機480は、連結軸410を介してタービンに402に連結することができる。発生した電力412は、周波数変換器又は可変周波数駆動部(VFD)414に送ることができ、周波数は、電力網416に供給される前に電力網周波数(例えば、50又は60ヘルツ)と一致するように調整される。VFD416を使用することで、液体タービン402の速度は、発電を最適にするように調整できる。しかしながら、発電機408は、VFD414による作動に限定されない。例示的な実施形態において、液体タービン402は、定速モードで運転され、発電機408は、直接電力網416に接続される。このことは、VFD414が故障した場合に運転を継続する上で有用である。更に、定速タービンのデザインは、システムのコストを低減するために選択できる。この場合、液体タービン402は、調節可能な入口案内翼と共に使用してタービンの作動効率を改善できる。発電機408は、液体タービン402とは別個の容器にあってもよく、そうでなくてもよい。
【0055】
図5は、液体タービン504から分離した発電機502の概略図500である。概略図500に示すように、プロセス液体シール機構506は、タービン504と発電機502との間の軸508上に配置される。図6に示すように、他の実施形態において、タービン及び発電機は、プロセス液体内で一緒に気密シールされている。
【0056】
図6は、缶型の液体タービン/発電機600を示す。図6に示すように、発電機602及び液体タービン604は、単一の容器606の内部に配置されている。容器606は、流体入口610に連結されるヘッド608を有する。プロセス液体(LNG又は冷媒等)は、入口610から容器606を通り、発電機602の周り及び液体タービン604のホイールを通って流れることができる。プロセス液体は、次に、液体出口612を通って容器から流出する。発電機602からの電力は、ヘッド608から延びる発電機電力導管614及び電力フィードスルー616を通る電気ラインを経由して取り出される。この構成は、軸508(図5)等の可動部の周りのシール506を取り除くことができるので好都合である。このようなシールは、ヘッド608を容器606に対してシールするために、又は導管614等のパイプ部分を他のパイプ部分620に対してシールするために使用されるフランジ618と比べて信頼性が低い。図6に示す缶型の液体タービン/発電機600はEbarra社から入手できる。しかしながら、缶型の液体タービン/発電機600は、例えば、2.4MW又はそれ以下の電力での利用に限定される場合がある。従って、十分な容量を得るためには、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれ以上のユニットを直列にした直列配置を使用できる。更に、ユニットが故障した場合に備えて所定位置にユニットを温存しておく現行技術では、各設置ユニットに対するスペアを高コストで使用する場合が多い。
【0057】
直列又は直列−並列配置の多段タービン
前述したように、本発明の例示的な実施形態は、直列又は直列−並列配置の多段タービンを使用して、総圧力の降下及び特定のプロセスに関する質量流の要件を実現する。プロセスは、任意の形式、構成、又はデザインとすることができる。プロセス液体は、炭化水素又は非炭化水素とすることができる。例示的な実施形態において、プロセス液体は、LNG等の炭化水素である。任意の液体タービンの入口及び出口におけるプロセス液体の熱力学的特性は、例えば、高い温度は高い圧力に相当する、又は低い温度は低い圧力に相当するという組み合わせに依存する。流体質量流は、出口からの所望の圧力及び温度に依存する。換言すれば、同じ流量に関して、液体タービンの長い直列配置は、液体タービンの短い直列配置よりも、低い温度及び圧力をもたらすことになる。
【0058】
図7は、直列配置の液体タービン700を示す概略図である。この配置は、降下圧力が現行の液圧タービン技術の降下圧力を超えるプロセスで使用できる。直列配置の液体タービン内の第1の液体タービン702の流体入口は、駆動弁706によって入口ライン704に結合されている。駆動弁706は、閉鎖位置及び開放位置の2つの位置を有する。駆動弁706は、タービン702への供給を開始するために使用できる。同様の駆動弁708は、直列配置の液体タービン700の後続の液体タービンの各々への流体入口に配置されている。バイパスライン710により、供給物が液体タービン702を迂回して流れる。バイパスライン710内の流れは、制御弁712によって調整されるが、この制御弁は液体タービン702の流体出口の制御弁714と協調して使用して、液体タービン702からの液体の圧力、温度、及び流れを調整するようになっている。同様のバイパスライン716、バイパス制御弁718、及び流体出口制御弁720は、直列配置の液体タービン700の後続の各液体タービンを通過する流量を調整するために使用できる。
【0059】
直列配置の液体タービン700の第2の液体タービン722の流体入口は、直列配置の液体タービン700の第1の液体タービン702の流体出口に結合されている。直列配置の液体タービン700の後続の液体タービン724の各々の流体入口は、直列配置の液体タービン700の最終の液体タービン726まで、先行する液体タービンの流体出口に結合されている。直列配置の液体タービン700により、直列配置の液体タービン700の故障したいずれか1つのタービンを残りのタービンで補うことができるので、コストが低減する。更に、液体タービン702、722、724、及び726の各々の内部構成要素は同じデザインとすることができる。従って、例えば、バイパスされたタービンの修理の間の低い圧力降下に対応するジュール・トムソン弁を用いて各段の圧力を上昇させることで、システムの効率的な運転が可能なり、タービンがオフラインの間の作動を助けることができる。このデザインにより、液体タービン702、722、724、及び726の間での部品の相互交換が可能なり、コストが更に改善される。例示的な実施形態において、直列配置の液体タービン700は必要以上の容量をもつようデザインされているので、単一のタービンが故障する場合でも、正味スループットは低下しない。いくつかの実施形態において、直列配置の液体タービンの容量は、故障した各タービンに関して総スループットが比例低下するようにデザインできる。図8に示すように、直列配置の液体タービン700を他の直列配置の液体タービンと並列に配置することにより、更なる容量及び高い信頼性を得ることができる。
【0060】
図8は、液体タービンの直列−並列配置800を示す概略図である。図8に示す直列−並列配置800において、4つの別個の直列配置の液体タービン802が並列に配置されている。直列配置の液体タービン802の各々は、図7に関連して直列配置の液体タービン700で説明したように相互結合されている。換言すれば、直列−並列配置800の全ての液体タービン804は、流体入口駆動弁706、バイパス制御弁712、及び流体出口制御弁714を備えることができる。各直列配置の液体タービン802は、入口ライン806及び出口ライン808に結合されている。直列配置の液体タービン802内の単一の液体タービンが故障した場合、直列配置の液体タービン802の他の液体タービンが故障を補うことができる。直列−並列配置800において、ライン810で示す複雑な相互結合を使用することにより、直列配置の液体タービン802を横切って容量を補うことが可能となり、即ち、1つの直列配置の液体タービン802内の液体タービン804の故障を、他の直列配置の液体タービン802の容量で補うことが可能となる。
【0061】
図9は、正常に作動している直列配置の液体タービン902内の単一の液体タービンの故障への対応を示す概略図である。例示的な実施形態において、直列配置の液体タービン902の全てのタービン904は共通のデザインとされている。タービン904の各々は、概略図900にA、C、E、G、及びIで示されるプロセス入口状態(例えば、温度、圧力、及び流量)である。同様に、各タービン904のプロセス出口状態は、B、D、F、H、及びJで示される。
【0062】
正常モード902において、全てのタービン904は、故障又はバイパスがない正常な設計状態で作動している。しかしながら、参照番号906で示すように、タービン904の何れか1つに故障が発生して作動不可能となった場合、作動不可能なタービン912の流入弁908及び流出弁910は閉鎖され、タービン912はバイパスされる。この操作は、バイパス弁914を開放して流れを直列配置の液体タービン902の次のタービン918の入口916へ向けることにより達成される。次のタービン918の入口プロセス状態(例えばC)は、作動不可能なタービン912と同じ入口プロセス状態で作動するように変更できる。後続のタービンは、先行のタービン920のプロセス出口状態(例えばB)と同じか又はそれに近い新しいプロセス状態で作動する。
【0063】
概略図900に示すタービン故障時の作動モードは、故障バイパスモード922と呼ぶことができる。例示的な実施形態において、故障バイパスモードの最終タービン924は、正常モード902で作動する先行のタービン926の出口プロセス状態Iと実質的に同じ出口状態Zでプロセス液体を生成する。
【0064】
正常モード902において、各タービン904は、タービン904の最大設計差圧よりも低い差圧で作動する。つまり、n個のタービン904構成において、各タービン904は、最大設計作動差圧ΔP/(n−1)に対して差圧ΔP/nで作動するようにデザインされる。本明細書のn個のタービンの何れか1つ(例えば、タービン912)が作動不可能となった場合、直列配置の液体タービン902は故障バイパスモード922になり、プロセス流は、作動不可能なタービン912の後続のタービン918にバイパスされ、残りのタービン(即ち、タービン918、920、924、又は930)を横切る差圧は、ΔP/nからΔP/(n−1)へ上昇する。最終圧力を得るために、出口弁928は圧力を調節してシステム出口の圧力設定値を調整する。
【0065】
このことはn個のタービンの直列配置の各タービンを横切る圧力降下を示す表1から理解できる。本実施例において、ラベル付けした欄に示すように、直列配置の液体タービン内の第2のタービンが故障している。表1において、ΔPtは単一のタービンの差圧を示し、ΔPはシステムの全差圧を示し、nは所定のタービンシステムにおけるタービンの総数を示す。
表1:直列配置のタービンを横切る圧力降下
【0066】
他の例示的な実施形態において、故障バイパスモード922の最終の作動タービン924は、正常モード902で作動している最終タービン938の出口プロセス状態Jと実質的に同じ出口状態Zでプロセス液体を生成する。この故障バイパスモード922の例示的な実施形態において、直列配置の液体タービン902のタービン904は必要以上の容量でデザインされ、故障時の予備容量をもたらすようになっている。これは、各作動ユニットと並列に予備ユニットを配置する場合が多い現行のプラント設計とは対照的である。従って、プラントでの予備容量を使用することで、現行のプラント設計に対してコストを低減できる。
【0067】
他の例示的な実施形態において、タービンのシステム構成は、図8に関して説明したように、直列−並列配置である。本実施形態において、タービン故障が発生すると、各直列配置の液体タービンは予備容量をもつ独立したグループとして機能する。このように、直列配置のタービンの並列(列)セットの下流のマニホールド圧力(即ち、各直列配置のタービンの最終タービンの出口弁の後)は、タービンが作動不可能となっている直列配置のタービンセットの最終タービンの出口弁の圧力降下と同じに設定できる。いくつかの実施形態において、図8に関して説明したように、相互に並列な直列配置の液体タービンの間を横切る結合により、異なる直列配置の液体タービンの間で容量を共有することができ、故障の場合に負荷を変更する別の選択肢をもたらすことができる。
【0068】
直列及び直列−並列タービン作動のための制御システム
前述したタービンの予備化は、正常モード及び故障バイパスモードの両方においてタービンを制御する制御システムを使用する。制御システムは、直列配置の多段タービンの始動及び停止、正常なプラント作動、プラント負荷の変更、及びタービン故障時の作動変更を制御するようにデザインされている。
【0069】
図10は、プラント制御システム1000のブロック図である。図10に示すように、プラント制御システム1000への1つの入力は、設定値1002のグループである。設定値1002は、プロセス要件によって決定され、主にLNG設備のスループット又は設備の質量流量によって規定される。設定値1002は、プロセス制御法則1004への入力として使用され、図11に関して説明するプラント制御システムで作動可能である。プロセス制御法則1004は、プラント1008内での設定値1002と実際の制御入力1006との間の数学的な関係である。制御入力1006は、プラント1008の制御可能な構成要素に入力される。例えば、制御法則1002は、プラント1008で選択したスループットを達成するために制御入力1006セットをどの程度変更すべきかを提示することができる。制御入力1006は、プロセス流れ弁の開放又は閉鎖、タービン発電機のプラント電力網への接続、プラントの現在の作動状態等を含むことができる。
【0070】
制御入力1006の変更に対するプラント1008の応答1010は、種々のセンサ1012で測定できる。図11A及び11Bに関して更に詳述するように、センサ1012は、温度センサ、質量流量センサ、圧力センサ、差圧センサ、レベルセンサ等を含むことができる。センサ1012からの出力は、設定値1002と一緒に制御法則1004にフィードバックされる。制御法則1004は、例えば、始動、正常作動、停止、可変周波数駆動部の故障、及びタービン故障等を制御することにより、プラントの主目的に対応するようデザインできる。このことは図12から17に関連して詳細に説明する。
【0071】
図11Aは、LNGプラントの直列配置のタービン1100の概略図である。明瞭にするために、図示のプラント構成は4つのタービンを備える直列配置を示すように簡素化されている。タービン1から4の各々は、対応する可変周波数発電機1102に連結されている。
【0072】
図11Bは、図11Aに示した直列配置のタービン1100のうちの1つのタービン2の詳細図であり、タービン2の関連センサ及び発電機への結合状態が示されている。また、タービン2に関連する入口弁1104、出口弁1106、及びバイパス弁1108が示されている。図示のように、入口弁1104は、ピストン式モータ弁(PMV)等の作動二位置弁(開放/閉鎖)とすることができる。出口弁1106及びバイパス弁1108は、ダイアフラム式モータ弁(DMV)等の流量調整可能な制御弁とすることができる。タービン2への入口1110において、入口弁1104の後には種々のセンサを配置できる。これらのセンサは、入口圧力トランスミッタ(PT)1112、入口温度トランスミッタ(TT)1114、及び入口流量トランスミッタ(FT)1116を含むことができる。タービン2の故障又は問題を示すことができる、タービン2の過大な振動を監視するための振動トランスミッタ(VT)1118を使用できる。
【0073】
タービン2の出口1120で出口弁1106の前にセンサを使用して、タービン2を流れる結果としての流れ特性の変化を判定することができる。出口センサは、出口PT1122及び出口TT1124を含むことができる。タービン2に関して示す弁及びセンサ構成は、プラント内のタービンの各々について同じとすることができ、タービンは運用上相互交換可能となる。同じ構成を使用すると、全ての部品が相互交換可能なので、タービンのサービス/修理が更に容易になる。
【0074】
種々のセンサにおいて、従来公知の任意の数の技術を使用できる。例えば、圧力トランスミッタ1112及び1122は、特に、歪ゲージ及び薄膜技術を含むことができる。温度トランスミッタ1114及び1124は、熱電対、抵抗温度検出器等を含むことができる。流量トランスミッタ1116は、オリフィスメータ、流量メータ、その他を含むことができる。振動トランスミッタ1118は、特に、加速度計、速度計、又は近接プローブを含むことができる。
【0075】
センサ1112、1114、1116、1118、1122、及び1124は、センサ情報をコントローラ1128へ送るセンサプロセッサ1126に接続することができる。センサプロセッサ1126及びコントローラ1128は、例えば、分散制御システム(DCS)、直接デジタルコントローラ(DDC)、プログラマブル論理コントローラ(PLC)、及び任意の数の同様のユニットを含む、任意の数の異なるプラント制御システム又はコンピュータも含むことができる。例示的な実施形態において、センサプロセッサ1126及びコントローラ1128は、工場全体にわたるDCS内に収容される。適切なDCSユニットは、Honeywell、Emerson、ABB、Yokogawa、Siemens、及び他の多数の製造会社から入手可能である。
【0076】
コントローラ1128は、センサ情報及び制御法則(図10に関して説明したような)を取得して、破線1130で示すように制御信号を供給して弁1104、1106、及び1108を作動させる。また、コントローラ1128は、制御信号1132を可変周波数駆動部(VFD)/速度コントローラ1134へ供給する。VFD/速度コントローラ1134は、タービン2の軸1138の角速度(ω)1136で発生する電力の周波数を調整できる。また、VFD/速度コントローラ1134は、タービン2の角速度1136を制御するために使用できる。角速度1136の制御は、VFDが故障の場合、発電器が発生する電力の周波数を調整するために使用できる。周波数の制御により、以下に説明するように、発電機を直接電力網に接続することが可能になる。
【0077】
センサ1112、1114、1116、1118、1122、及び1124、センサプロセッサ1126、コントローラ1128、弁1104、1106、及び1108、並びにVFD/速度コントローラ1134は、プラントのパラメータを調整するために使用でき、始動、停止、及び故障補償等の特定の作動目標を達成する。従って、全体的に、これらのユニットをタービン2のための制御システムと呼ぶことができる。同様の制御システムは、プラント全体の他のタービンのために使用できる。図11Bに示す個々のタービンコントローラに加えて、単一のマスタコントローラを用いて、LNGプラントコントローラ(DCS)から入口状態を受信することができる。マスタコントローラは、最適で効率的なタービン作動のために、多数の個々のタービンコントローラに対して同時に存在する各設定値を供給するようにデザインされている。マスタコントローラは、独立型PLCとすることができ、DCSからコマンド設定値を受け取るか、又はLNGプラントDCS内に直接組み込まれている。本明細書で使用する場合、用語「制御システム」は、プラントにおける全てのタービン制御システムを包含する。更に、以下、図11から16に関連して説明する制御システムの作動は、大型LNGプラントに関連して起こることを理解されたい。換言すれば、当業者は、プラント全体において、以下に説明する作動に近い多数の他の作動が起こることを認識できるはずである。
【0078】
図12は、LNGプラントの直列配置の液体膨張タービンを始動させる方法1200を示すプロセスフローチャートである。始動手順の目標は、プラントにおいて、システムの停止から正常作動へ円滑に移行することである。始動するために、制御システムは、質量流量、入口及び出口圧力、並びに各タービンの温度を監視する。測定値に基づき、制御システムは、入口及び出口弁、バイパス制御弁、及びタービン速度を調整する。
【0079】
本方法は、プラントがシステム停止状態にあるブロック1202から始まる。ブロック1204で、タービンの入口/出口弁を閉鎖し、ブロック1206で全てのタービンバイパス弁を開放する。ブロック1208で、始動するための最小番号が付与されたタービン、例えば、図11Aで説明した直列配置のタービン1を選択する。
【0080】
ブロック1210で、始動されるタービンに関するタービン速度設定値を、始動時の制御目的のために選択する。ブロック1212で、タービン入口弁を開く。次に、ブロック1214で、バイパス弁を徐々に閉じながら出口弁を徐々に開く。ブロック1216で、制御システムは、タービン関する微分エンタルピ設定値に到達したか否かを判定する。到達していない場合、プロセスフローはブロック1214に戻り、弁の調整を継続する。微分エンタルピ設定値に到達した場合、プロセスフローはブロック1218へ進み、全てのタービンが始動したか否かを判定する。始動していない場合、ブロック1220で、始動された現在のタービンは1つだけ増加させ、始動は直列配置の次のタービンへ進む。次に、ブロック1210で、プロセスフローは、選択したタービンに対して再開される。
【0081】
全てのタービンが始動した場合は、プロセスフローは、ブロック1218からブロック1222へ進む。ブロック1222で、図13に関連して説明するように、プラントは正常に作動している。
【0082】
図13は、LNGプラントの直列配置の液体膨張タービンの正常作動のための方法1300を示すプロセスフローチャートである。正常作動時の制御システムの注目点は、等価微分エンタルピ(パワー)を提供して、プロセスの効率を最適化することである。方法1300は、例えば、始動の完了後のプラントが正常作動している状態で、ブロック1302で始まる。ブロック1304で、制御システムはいずれかの設定値が変化したか否かを判定する。変化している場合、フローはブロック1306へ進み、タービンを流れる質量流量に関する設定値を計算するか、又は選択された設定値に基づいて入力する。例えば、操作者が微分エンタルピに関する新しい値を設定した場合、制御システムは新しい流量設定値を計算する。同様に、操作者が、タービンのシリーズを通る流量の設定値を直接入力した場合、制御システムは個々のタービンを通る流量を調整して設定値を達成する。ブロック1306で何れかの設定値が変化した場合、又はブロック1304で設定値が入力されない場合は、フローはブロック1308へ進む。
【0083】
ブロック1308で、現在のプラント応答を設定値と比較する。ブロック1310で、制御システムは、VFD/速度制御及び流量値を調整して流量設定値を達成する。ブロック1312で、バイパス弁及び出口弁を調整して、タービンを横切る微分エンタルピを維持する。次に、フローはブロック1302へ戻り、正常作動を続ける。
【0084】
図14は、LNGプラントの直列配置の液体タービンの停止方法1400を示すプロセスフローチャートである。停止手順の目標は、作動状態からシステム停止へ円滑に移行することである。本方法は、プラントが正常作動しているブロック1402で始まる。このことは、タービン又はVFDの故障、タービン又はVFDの保守整備、又は他の種々の理由によるプラントの1つ又はそれ以上のタービンのオフライン状態を含むことを理解されたい。更に、プラントはタービンに関しては正常作動状態にあるが、プラントの保守修理時間、供給中断等の他の停止状態にある場合もある。
【0085】
正常作動から、フローはブロック1404へ進み、停止のために、直列配置の最大数の(又は最終の)のタービンを選択する。例えば、図11Aのタービン4が、停止のための選択される最初のタービンである。ブロック1406で、タービンを迂回するバイパス弁を徐々に開放する。ブロック1408で、タービンからの出口弁を徐々に閉鎖する。ブロック1410で、タービンの速度はゼロに低下する。ブロック1406、1408、及び1410の作動は、漸進的に実行され、徐々にタービンをオフラインさせる。換言すると、バイパスが徐々に開放されると出口弁は徐々に閉じ、同時にタービン速度が減速する。タービン速度がゼロになると、ブロック1412で入口弁を閉鎖する。
【0086】
ブロック1414で、制御システムは直列配置の全てのタービンが停止したか否かを判定する。停止していない場合、ブロック1416で、タービンの選択を1つだけ減少させて、直列配置の次の先行タービンを選択する。フローはブロック1406へ戻り、選択したタービンを停止させる。直列配置の全てのタービンが停止した場合、フローはブロック1418へ進み、プラントはシステム停止状態にある。
【0087】
本明細書に開示する技術の利点は、正常な作動状態又はそれに近い状態を維持しながら不必要な機器を組み込むための大きな費用を必要とすることなく、プラントの故障状態(機器故障等の)に適応できる点にある。このことは図15に関連して説明する。
【0088】
図15は、LNGプラントの直列配置の液体タービンのVFD故障に対応する方法1500を示すプロセスフローチャートである。方法1500の目標は、タービン及びVFDを例えば修理のためにオフラインすることである。この目標を実現するために、方法1500は、制御されたタービン流のバイパス、故障したVFD及びタービンの停止を実行して、等価微分エンタルピ(パワー)を達成するために残りの作動タービンを調整して、直列配置のタービンの効率を最適化するようになっている。
【0089】
方法1500は、プラントが正常作動しているブロック1502で始まる。前述したように、これはプラントが完全に作動していること又は全てのタービンが稼働していることを意味するものではない。ブロック1504で、制御システムは、VFD/速度制御の作動応答を、前もって設定された、例えば、製造者が提供するVFD性能パラメータと比較する。ブロック1506で、パラメータが性能限界内にある場合、フローはブロック1504へ戻る。この判定は、図12に関連して説明した正常な作動方法1200と並行して行われることに留意されたい。ブロック1506で、パラメータが性能限界の範囲外である場合、フローはブロック1508へ進む。
【0090】
ブロック1508で、ユニットを迂回するバイパス弁が完全に開くので、液体はタービンを迂回して流れることができる。ブロック1510で、タービンの出口弁を徐々に閉鎖し、次に、入口弁を閉鎖する。ブロック1512で、例えば、タービン速度をゼロにすることによってタービンが停止する。残りの作動タービンの設定値は、タービンの喪失に関してブロック1514で調整できる。調整には、作動タービンに関する新しい流量設定値及び微分エンタルピ設定値の設定が含まれる。次に、フローはブロック1504で再開し、他のユニットの作動の監視を継続する。更に、いずれか他のVFDが故障した場合、作動を繰り返して更にタービンを停止させる。しかしながら、当業者であれば、プラント全体が作動を継続していても、直列配置内の2つ又はそれ以上のタービンの喪失は、生産速度に影響を与えることを理解できるはずである。従って、操作者は、図16に関連して説明するように、関連の発電機を直接電力網に接続しながら、タービンをオンライン状態に維持することを選択できる。
【0091】
図16は、VFDをバイパスして、発電機を直接LNGプラントの電力網へ接続する方法1600を示すプロセスフローチャートである。方法1600の目標は、VFD故障を有するタービンをオンラインに維持することである。タービンをオンラインに維持することにより、全体のプラント生産速度を、図15に関連して説明したようなVFD故障を有するタービン/発電機をオフラインにする場合よりも高く維持できる。本方法は、プラントが正常作動しているブロック1602で始まる。図15に関連して説明した方法と同様に、下記の方法は正常作動、例えば図13に関して説明した作動と並行に、即ち同時に作用する。ブロック1604で、VFDの応答を予め設定したVFD性能要件と比較する。ブロック1606で、VFDに関する性能パラメータが許容可能な限界範囲内であれば(例えば、生成された電力周波数が目標周波数の0.5%以内の場合)、プロセスはブロック1604へ戻る。しかしながら、性能パラメータが許容可能な制限範囲外にあり、操作者がタービンのオンラインを選択した場合、プロセスフローはブロック1608へ進む。ブロック1608で、タービンの速度をVFDバイパス速度に調整する。換言すれば、VFDバイパス速度は、発電機が目標周波数(例えば、50又は60Hz)の電力を生成する速度である。速度が達成されると、ブロック1610で、VFDをバイパスして、発電機を直接電力網へ接続する。ブロック1612で、制御システムは、直列配置の他のタービンに関する設定値を増加的に調整して、エンタルピ出力をできる限り実施可能な目標設定値の近く維持する。更に、直列配置のタービンは、作動状態の下で可能な限り高い効率を達成するように調整される。次に、プロセスフローは、ブロック1604に戻ることができ、制御システムは残りの作動VFDの故障を監視する。何れかのVFDが故障した場合、作動を繰り返すこと、又は図15の方法1500を実行してタービンをオフラインにすることができる。
【0092】
図17は、例えば、タービンが過度に振動している場合のLNGプラントのタービンのパイパス操作を示すプロセスフローチャートである。図17は、LNGプラントの直列配置の液体タービンのVFD故障に対応する方法1700を示すプロセスフローチャートである。この方法1700の目標は、タービン及びVFDを、例えば、補修のためにオフラインとすることである。この目標を達成するために、方法1700は、制御されたタービン流のバイパス、故障したタービン及びVFDの停止を実行して、残りの作動タービンを調整して等価微分エンタルピ(パワー)の達成を試み、直列配置のタービンの効率を最適化するようになっている。
【0093】
方法1700は、プラントが正常作動しているブロック1702で始まる。前述したように、これはプラントが完全に作動していること又は全てのタービンが稼働していることを意味するものではない。ブロック1704で、制御システムは、タービンの振動応答を、例えば製造者が以前に設定した振動性能パラメータと比較する。ブロック1706で、パラメータが性能範囲内である場合、フローはブロック1704へ戻る。この判定は、図13に関して前述した正常作動方法1300と並行に即ち同時に行われることに留意されたい。ブロック1706で、パラメータが性能範囲外の場合、フローはブロック1708へ進む。
【0094】
ブロック1708で、ユニットを迂回するバイパス弁を完全に開放し、液体はタービンを迂回して流れることができる。ブロック1710で、タービン出口弁を徐々に閉じ、次に入口弁を閉じる。ブロック1712で、例えばタービンの回転速度をゼロにすることによってタービンが停止する。残りの作動タービンは、ブロック1714でタービンの喪失に関して調整される。調整は、作動タービンのための新しい流量設定値及び微分エンタルピ設定値の設定を含む。フローはブロック1704に戻り、他のユニットの監視を継続する。更に振動故障のタービンがある場合は、作動が繰り返され、故障があるタービンを停止する。しかしながら、当業者であればプラント全体が作動したままであっても、直列配置内の2つ又はそれ以上のタービンの喪失が生産速度に影響を与えることを理解できるはずである。
【0095】
本発明は、前述の構成に限定されない。例示的な実施形態において、全てのタービンを単一の大型VFDへ連結することができる。単一のVFDの使用により、制御スキーム及びシステムを簡素することができ、資本、装備、及び維持費の節約が実現できる。更に、前述した発明によれば、ホットスワップ可能な予備がない場合の作動に限定されない。例えば、開閉装置を含む電気システムは、故障したタービンをバイパスモードで分離し、オフラインの又は交代用の予備タービンと同期するように配置することができる。
【0096】
例示的な実施形態において、直列配置の多数のタービンは一定速度で作動し、それらに関連の発電機の電力網への直接的な接続が可能になっている。各直列配置内の1つ又は2つのタービンは、VFDと一緒に作動することができるので、可変速度駆動部の効率面での恩恵を受けることができる。一般的に、最高圧で作動するユニット又は最低圧で作動するユニットは、VFDからの恩恵を受けることができるので、第1のタービン、最終のタービン、又は両方はVFDと一緒に使用することができる。これは、可変速度制御によりもたらされる恩恵とは無関係である、直列配置の多段タービンのコストを低減することができる。
【0097】
本発明は、種々の変更及び代替形態が可能であり、前述した例示的な実施形態は、単なる例に過ぎない。しかしながら、本発明は、本明細書に記載した特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。実際には、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び範疇に包含される代替物、変形物、及び等価物を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17