特許第5877480号(P5877480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

特許5877480分散型電源の自立運転システム及びその方法
<>
  • 特許5877480-分散型電源の自立運転システム及びその方法 図000002
  • 特許5877480-分散型電源の自立運転システム及びその方法 図000003
  • 特許5877480-分散型電源の自立運転システム及びその方法 図000004
  • 特許5877480-分散型電源の自立運転システム及びその方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877480
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】分散型電源の自立運転システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20160223BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20160223BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   H02J3/38 110
   H02J3/38 130
   H02J3/38 170
   H02J3/38 180
   H02J3/32
   H02J3/46
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-266811(P2011-266811)
(22)【出願日】2011年12月6日
(65)【公開番号】特開2013-121205(P2013-121205A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】山根 俊博
(72)【発明者】
【氏名】下田 英介
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓司
【審査官】 早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−010412(JP,A)
【文献】 特開2003−009426(JP,A)
【文献】 特開2008−022650(JP,A)
【文献】 特開平11−089096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−3/50
H02J7/00−7/12
H02J7/34−7/36
H02J9/00−9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用系統からの電力供給を軽減する自立分散型電源の自立運転システムであり、
前記商用系統の異常を検出する系統異常検出部と、
前記商用系統が正常の場合、当該商用系統と系統連係して、前記自立分散電源の給電系統における負荷変動の補償を第1蓄電池を用いて行い、前記商用系統が異常の場合、定電圧定周波数制御された交流電力を前記第1蓄電池の電力を用いて、前記給電系統に対して供給する第1電力変換部と、
前記商用系統が異常の場合に起動し、前記第1電力変換部の出力する前記交流電力に対応した系統連係を行い、非常用電力を前記給電系統に対して供給する非常用発電機と、
前記給電系統における負荷変動の補償を第2蓄電池を用いて行う第2電力変換部と、
自然エネルギーを用いた発電を行い、当該発電による電力を前記給電系統に対して供給する自然エネルギー発電機と
を有することを特徴とする自立分散型電源の自立運転システム。
【請求項2】
前記第2電力変換部の負荷変動の補償可能な電力容量が、前記商用系統が異常の場合において、第1電力変換部の出力する定電圧定周波数制御された交流電力の前記給電系統における過去に測定された電力変動の数値に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1に記載の自立分散型電源の自立運転システム。
【請求項3】
前記自立分散電源が電力を供給する自立範囲に含まれる負荷において、電源の瞬断を許容しない重要負荷に対しては無停電電源装置を設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自立分散型電源の自立運転システム。
【請求項4】
商用系統からの電力供給を軽減する自立分散型電源の自立運転システムを動作させる自立分散型電源の自立運転方法であり、
系統異常検出部が、前記商用系統の異常を検出する系統異常検出過程と、
1電力変換部が、前記商用系統が正常の場合、当該商用系統と系統連係して、前記自立分散電源の給電系統における負荷変動の補償を第1蓄電池を用いて行い、前記商用系統が異常の場合、定電圧定周波数制御された交流電力を前記第1蓄電池の電力を用いて、前記給電系統に対して供給する第1電力変換過程と、
非常用発電機が、前記商用系統が異常の場合に起動し、前記第1電力変換部の出力する前記交流電力に対応した系統連係を行い、非常用電力を前記給電系統に対して供給する非常用発電過程と、
第2電力変換部が、前記給電系統における負荷変動の補償を第2蓄電池を用いて行う第2電力変換過程と、
自然エネルギー発電機が、自然エネルギーを用いた発電を行い、当該発電による電力を前記給電系統に対して供給する自然エネルギー発電過程と
を含むことを特徴とする自立分散型電源の自立運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源(マイクログリッド)の自立運転システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分散型電源の負荷追従運転によって商用系統への負担を軽減する「マイクログリッド」への取り組みが活発化している。マイクログリッドの思想を取り込んだ分散型電源によるエネルギー供給システム(以下、単にマイクログリッドという)には、通常時は系統連系により商用系統からの買電量が一定となるように発電量を制御する連係運転を行い、停電等の非常時はマイクログリッド系統内に高品質な(電圧・周波数の変動が小さい)電力を供給する自立運転を行う負荷追従運転が求められている。
【0003】
建物における電力供給の利便性を考慮すると、停電等の非常時において連系運転から自立運転への移行を、高品質な電力供給を保った状態で無瞬断で移行するシステムを構築することが望ましい。
これにより、例えばコンピュータのような電力品質(電圧・周波数の変動)に比較的敏感な機器を含め、マイクログリッド系統内では、外部の停電の影響を内部の電力供給に全く受けることなく建物の継続運用が可能となる。
【0004】
また、近年、CO削減を目的として、太陽光発電や風力発電に代表される自然エネルギーの活用が各分野において盛んに行われている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、上述したマイクログリッドにおいて太陽光発電を有効に利用する方法として、通常時には商用系統の電源と連係してピークカット運転を行い、商用系統の電源が停電するなどの非常時において、BCP(Business Continuity Plan、事業継続用計画)用の電源として利用することが考えられる。
【0005】
しかし、太陽光や風力などの自然エネルギーを用いた自然エネルギー発電は、天候や環境の変化により、発電する電力容量が大きく変動する。
このため、商用系統の電源と連係して運転する連係運転時に、確実なピークカットを行うためには、変動に応じて蓄電池(バッテリ)の出力を制御する必要がある。
一方、商用系統の電源が停電した際には、非常用発電機がベース電力(交流電力の周波数及び電圧)の供給を行い、自然エネルギー発電が非常用発電機の燃料消費を抑制するための補助的電源として利用することが可能となる。
【0006】
停電時において、非常用発電機及び自然エネルギー発電とを組み合せて電力供給を行うマイクログリッドのシステム構成を図3に示す。
このマイクログリッドにおいて、商用系統201と自然エネルギー発電である太陽光発電装置12及び22との連係運転の際、検出部602が遮断機SW2を、また制御部1AがACSW(電源スイッチ)1Bを、ぞれぞれ導通(投入)状態とし、検出部602が遮断機SW1を非導通(開放)状態としている。
【0007】
ここで、電力制御部601は、太陽光発電装置12及び22の各々のPCS(Power Conditioning System、パワーコンディショナ)11,12からの出力電力の変動や、一般負荷101及び重要負荷102などの電力負荷の変動が発生すると、給電系統における電力の補償を行う。
すなわち、電力制御部601は、計測ポイントP1の電力値に応じて、給電系統の電力変動をモニタし、変動量に応じて蓄電池1Dの直流電力をインバータ1Cにより交流電力に変換し、給電系統に供給することでピークカット運転を行う。
【0008】
一方、商用系統の電源が停電した際、検出部602は、受電点遮断機201が非導通状態となったことを検出すると、遮断機SW2を非導通状態とする。そして、電力変換装置1の制御部1Aは、給電系統に接続されているACSW1Bの出力端子1Eの電圧を計測し、所定の値より低下した場合、ACSW1Bを非導通状態とする。
これにより、電力変換装置1は、UPS(Uninterruptible Power Supply、無停電電源装置)として、無瞬断で重要負荷102に対する電力供給を継続する。
これにより、停電直後と非常発電機GENの燃料が枯渇して発電不能となった後との自立範囲300における自立運転が行われる。
【0009】
また、検出部602は、遮断機SW2を開放状態とした後、非常用発電機GENを稼動させ、非常用発電機GENの出力電力が安定する時間経過後に、遮断機SW1を導通状態とする。
そして、非常用電源機GENが給電系統に電力の供給を開始すると、電力変換装置1は、制御部1Aが、給電系統に接続されているACSW1Bの出力端子1Eの電圧を計測し、所定の値を超えた場合、ACSW1Bを導通状態とする。
これにより、非常発電装置GENと太陽光発電装置22との各々の出力する電力を用い、マイクログリッドにおいて、停電時の自立範囲500において防災・保安負荷103などに対する電力供給を行う自立運転が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−224142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したマイクログリッド自立運転システムは、停電時の自立範囲に一般負荷を含ませる、すなわち多くの負荷を自立範囲の対象とする場合、図4に示すように、太陽光発電装置12を給電系統に加え、停電時に供給できる電力容量を増加させる必要がある。
しかしながら、すでに述べたように、天候の変化により太陽光発電装置12の出力電力が低下したり、あるいは一般負荷101の変動により需要電力が増加したりし、給電系統の電力供給量が大きく変動する。
したがって、停電時の自立範囲の対象とする負荷を増加させた場合、商用電力との連係を行わない停電時において、一般負荷101等の需要電力増加による給電系統の電力の低下量が大きくなり、供給系統の電力変動に大きな影響を与える。
同様に、太陽光発電装置12の出力容量が大きいため、商用電力との連係を行わない停電時において、天候の変化による太陽光発電装置の出力電力の低下量も、太陽光発電装置の容量が増加するため供給系統の電力変動に大きく影響する。
【0012】
また、停電時においては、図4に示す電力変換装置1は自身が周波数と電圧とを生成するCVCFモードではないため、非常用電力装置GENの出力変動を補償する制御を行うのみで、蓄電池1Dからの電力供給を、電力系統の電力容量の増加に対応させることができない。
この結果、急激な電力供給不足時において、上述した出力電力の低下量が、蓄電池1Dの放電容量を超えて、非常用発電装置GENの出力する電圧が大幅に低下してしまうと、そのまま供給系統における電力の低下に繋がってしまう。
この結果、給電系統の電力が低下することにより、力変換装置1による自立運転が行われなくなり、一般負荷101のある自立範囲が停電することになる。
【0013】
また、重要負荷102は、電力変換装置1のUPSの機能により、稼動状態が継続されるが、停電が長時間に渡る場合、供給系統の電力変動により、UPSの機能の稼動と停止とが繰り返されることにより、蓄電池1Dの電力が消耗して無くなり、結果的に自立範囲300も停電し、重要負荷102も停止してしまうことになる。
また、太陽光発電装置12のPCS11は、給電系統の電圧や周波数が変動することにより、太陽光発電装置12を給電系統から解離させる。この結果、太陽光発電装置12からの電力供給が完全に停止され、さらに電力供給不足が進むことになる。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、停電時における給電系統の電力変動を抑制し、商用系統の停電などの異常状態が長時間継続しても、自立範囲にある負荷に対して自立運転を行わせ、電力の供給を従来に比較してより長く継続して供給することが可能な分散型電源の自立運転システム及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の自立分散型電源の自立運転システムは、商用系統からの電力供給を軽減する自立分散型電源の自立運転システムであり、前記商用系統の異常を検出する系統異常検出部と、前記商用系統が正常の場合、当該商用系統と系統連係して、前記自立分散電源の給電系統における負荷変動の補償を第1蓄電池を用いて行い、前記商用系統が異常の場合、定電圧定周波数制御された交流電力を前記第1蓄電池の電力を用いて、前記給電系統に対して供給する第1電力変換部と、前記商用系統が異常の場合に起動し、前記第1電力変換部の出力する前記交流電力に対応した系統連係を行い、非常用電力を前記給電系統に対して供給する非常用発電機と、前記給電系統における負荷変動の補償を第2蓄電池を用いて行う第2電力変換部と、自然エネルギーを用いた発電を行い、当該発電による電力を前記給電系統に対して供給する自然エネルギー発電機とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の自立分散型電源の自立運転システムは、前記第2電力変換部の負荷変動の補償可能な電力容量が、前記商用系統が異常の場合において、第1電力変換部の出力する定電圧定周波数制御された交流電力の前記給電系統における過去に測定された電力変動の数値に基づいて設定されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の自立分散型電源の自立運転システムは、前記自立分散電源が電力を供給する自立範囲に含まれる負荷において、電源の瞬断を許容しない重要負荷に対しては無停電電源装置を設けることを特徴とする。
【0018】
本発明の自立分散型電源の自立運転方法は、商用系統からの電力供給を軽減する自立分散型電源の自立運転システムを動作させる自立分散型電源の自立運転方法であり、系統異常検出部が、前記商用系統の異常を検出する系統異常検出過程と、1電力変換部が、前記商用系統が正常の場合、当該商用系統と系統連係して、前記自立分散電源の給電系統における負荷変動の補償を第1蓄電池を用いて行い、前記商用系統が異常の場合、定電圧定周波数制御された交流電力を前記第1蓄電池の電力を用いて、前記給電系統に対して供給する第1電力変換過程と、非常用発電機が、前記商用系統が異常の場合に起動し、前記第1電力変換部の出力する前記交流電力に対応した系統連係を行い、非常用電力を前記給電系統に対して供給する非常用発電過程と、第2電力変換部が、前記給電系統における負荷変動の補償を第2蓄電池を用いて行う第2電力変換過程と、自然エネルギー発電機が、自然エネルギーを用いた発電を行い、当該発電による電力を前記給電系統に対して供給する自然エネルギー発電過程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、停電時における給電系統(電力系統)におけるベース電力を第1電力変換装置がCVCF運転により供給し、この供給される供給電力におけるの電力変動を第2電力変換装置が抑制するため、給電系統の電力を安定化させることができ、停電時においても自然エネルギー発電機の電力系統からの解離を防止し、自然エネルギーの発電電力を有効に利用でき、非常用発電機の燃料の消費量を低減させ、商用系統の停電などの異常状態が長時間継続しても、自立範囲にある負荷に対する電力の供給を従来に比較してより長く継続して供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の一実施形態による自立分散型電源の自立運転システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図2】一実施形態による自立分散型電源の自立運転システムの自立運転制御の動作例を示すフローチャートである。
図3】停電時において、非常用発電機及び自然エネルギー発電とを組み合せて電力供給を行うマイクログリッドのシステム構成の従来例を示す図である。
図4図3のマイクログリッド自立運転システムに比較し、停電時の自立範囲に多くの負荷を給電対象とした自立範囲を有するの対象とするマイクログリッド自立運転システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態による自立分散型電源の自立運転システムの構成例を示す概略ブロック図である。図1に示す自立分散型電源の自立運転システムは、電力変換装置1、電力変換装置2、PCS11、検出部20(建物の受電点に設けられている)、電力制御部21、UPS30、一般負荷101、重要負荷102、保安・防災負荷103、非常用発電機GEN及び遮断機SW1を有している。
【0022】
また、商用系統200は、例えば電力会社の発電する商用電力の給電系統(給電ライン)である。遮断機201は、商用系統200と給電系統400との間に設けられ、商用系統200と給電系統400とを導通状態(オン状態)または非導通状態(オフ状態)のいずれかとする受電点遮断機である。また、遮断機201は、商用系統200において停電あるいはその他の異常事態が発生し、所定の電力を給電系統400に対して供給できない場合、遮断状態となり商用系統200と給電系統400とを非接続として非導通状態とする。
【0023】
検出部20は、遮断機201の接続状態、すなわち導通状態または非導通状態のいずれかであるかを検出し、検出結果を示す遮断情報を電力変換装置1及び電力変換装置2に対して出力する。ここで、検出部20は、遮断機201の接続状態を、遮断機201が出力する開放信号により検出する。遮断機201は、商用系統200が異常となり、遮断して非導通状態となった場合に開放信号を出力し、商用系統200が正常であり、導通状態である場合、この開放信号を出力しない。
【0024】
また、検出部20は、遮断機201の状態により、非常用発電機GENの起動を制御する。すなわち、検出部20は、遮断機201が非導通状態である場合、非常用発電機GENを起動し、遮断機201が導通状態である場合、非常用発電機GENを停止させる。
また、検出部20は、遮断機201の状態により、遮断機SW1を導通状態または非導通状態のいずれかに制御する。すなわち、検出部20は、遮断機201が非導通状態である場合、非常用発電機GENを起動した後(後述)、遮断機SW1を導通状態とし、遮断機201が導通状態である場合、遮断機SW2を非導通状態とする。
【0025】
電力変換装置1は、制御部1A、ACSW1B、インバータ1C及び蓄電池1Dを備えており、検出部20から供給される遮断情報により、CVCF(Constant Voltage Constant Frequency :定電圧定周波数)モードあるいは電力変動補償モードのいずれかにより駆動する。
本実施形態においては、ACSW1Bは常にインバータ1Cと給電系統400とを接続させている状態であるため、電力変換装置1は、このASCW1Bを備える必要はなく、インバータ1Cの端子と給電系統400とを直接に接続する構成でも良い。
制御部1Aは、検出部20から供給される遮断情報により、インバータ1Cの動作制御を行う。
【0026】
インバータ1Cは、交流電力と直流電力との間を双方向に電力変換する双方向型の電力変換装置である。
また、インバータ1Cは、商用電力200、太陽光発電機12及び非常用発電機GENの出力する交流電力により、蓄電池1Dに対して蓄電を行う場合、交流電力を直流電力に変換し、電力が給電系統400から蓄電池1Dに対して供給する。
一方、インバータ1Cは、蓄電池1Dに蓄積された直流電力を、給電系統400に対して供給する場合、直流電力を交流電力に変換し、蓄電池1Dから給電系統400に対して電力が供給する。
【0027】
また、制御部1Aは、供給された遮断情報が遮断機201が導通状態であることを示す場合、蓄電池1Dの直流電力をインバータ1Cにより交流電力に変換する。
このとき、電力制御部21は、商用系統200と連係運転(系統連係)を行い、すなわち商用電力200の交流電力の周波数、位相及び電圧の変動を計測点P1において検出し、この検出された変動を電流制御により補償する電力変動補償モード(可変電圧可変周波数制御モード)で動作させる。この測定点P1は、遮断機201と給電系統400との間に設けられており、図示しない電力センサにより、当該地点の交流電力の周波数、位相及び電圧を計測する。
【0028】
また、制御部1Aは、供給される遮断情報が導通状態であり、商用電力200、太陽光発電機12及び非常用発電機GENが供給する電力が、一般負荷101、重要負荷102及び防災・保安負荷103が消費する電力を超えている場合、蓄電池1Dに対する蓄電処理を行う。すなわち、制御部1Aは、インバータ1Cにより給電系統400の余剰の交流電力を直流電力に変換し、この直流電力による蓄電池1Dに対する蓄電を行う。
一方、制御部1Aは、供給された遮断情報が遮断機201が非導通状態であることを示す場合、蓄電池1Dの直流電力をインバータ1Cにより交流電力に変換し、商用電力200の代わりのベース電力として、商用系統200と同様な一定の周波数及び電圧の交流電力をベース電力として出力する電圧制御のCVCFモードで動作させる。
【0029】
電力制御部2は、制御部2A、ACSW2B、インバータ2C及び蓄電池2Dを備えており、供給される遮断情報が導通状態の場合に測定点P1の電力変動、一方供給される遮断情報が非導通状態の場合に測定点P2の電力変動を補償する電力変動補償モードにより駆動する。
本実施形態においては、ACSW2Bは常にインバータ2Cと給電系統400とを導通させる状態であるため、電力変換装置2も、電力変換装置1と同様に、ASCW2Bを備える必要はなく、インバータ2Cの端子と給電系統400とを直接に導通する構成でも良い。
【0030】
インバータ2Cは、インバータ1Cと同様に、交流電力と直流電力との間を双方向に電力変換する双方向型の電力変換装置である。
また、インバータ2Cは、商用電力200、太陽光発電機12及び非常用発電機GENの電力により蓄電池2Dに対して蓄電を行う場合に交流電力を直流電力に変換し、電力が給電系統400から蓄電池2Dに対して供給される。
一方、インバータ2Cは、蓄電池2Dに蓄積された直流電力を、給電系統400に対して交流電力として供給する場合、直流電力を交流電力に変換し、蓄電池2Dから給電系統400に対して電力が供給される。
【0031】
また、制御部2Aは、供給された遮断情報が遮断機201が導通状態であることを示す場合、制御部1Aと同様に、電力変換装置1の出力端子と給電系統400との間の測定点P1に設けられた図示しない電力センサにより、給電系統400のベース電力を測定し、この測定結果によりインバータ2Cの制御を行う。
すなわち、制御部2Aは、商用系統200と連係運転を行い、すなわち商用電力200の交流電力の周波数、位相及び電圧の変動を計測点P2において検出し、この検出された変動を電流制御により補償する電力変動補償モードで動作させる。
【0032】
一方、制御部2Aは、供給された遮断情報が遮断機201が非導通状態であることを示す場合に電力変換装置1と連係運転を行う。すなわち、制御部2Aは、電力変換装置1の出力する交流電力であるベース電力の周波数、位相及び電圧の変動を計測点P2において検出し、この検出された変動を電流制御により補償する電力変動補償モードで動作させる。
また、制御部2Aは、供給される遮断情報が導通状態あるいは非導通状態のいずれの場合においても、商用電力200、太陽光発電機12及び非常用発電機GENが供給する電力が、一般負荷101、重要負荷102及び防災・保安負荷103が消費する電力が減少する場合、蓄電池2Dに対する蓄電処理を行う。
【0033】
ここで、電力変換装置2は、電力変換装置1が給電系統400に対してベース電力を供給している際(すなわち商用系統200の停電などの異常時)において、給電系統400における負荷変動の補償可能な電力容量を有する構成としてインバータ2C及び蓄電池2Dが設けられている。
この給電系統400における負荷変動の補償可能な電力容量は、電力変換装置1が給電系統に出力する定電圧定周波数の交流電力の過去に測定された電力変動の数値(電力変動の電力容量)に基づいて設定されている。
【0034】
上述した蓄電池1D及び2Dは、繰り返して充放電を行うことが可能なコンデンサや二次電池(例えば、リチウム電池)などから構成されている。
【0035】
太陽光発電装置12は、複数の太陽電池素子から構成されており、給電系統400に対してPCS11を介して接続されている。
太陽光発電装置12は、太陽電池素子が発電した直流電力を、PCS11を介して交流電力として給電系統400に対して供給する。
PCS11は、給電系統400における所定の周波数及び電圧の交流電力に適合していない、太陽光発電装置12の出力する直流電力を、給電系統400に対応した交流電力に変換し、すなわち周波数及び電圧が給電系統の交流電力に適合させる変換を行う。ここで、PCS11の出力部には、たとえば電力を最大限に供給できる電流制御方式のインバータが設けられている。
【0036】
非常用発電機GENは、重油やその他の燃料を動力源として動作し、商用系統200の給電ラインが異常状態(停電状態)となった場合に起動され、商用系統200の給電ラインが異常状態となっている期間中に継続して稼動を行う。
これにより、非常用発電機GENは、商用系統200の給電ラインが異常状態となっている期間、商用系統200に代わり、一般負荷101、重要負荷102及び防災・保安負荷103に対して電力供給を継続して行う。
【0037】
一般負荷101は、自立分散型電源における給電系統400に接続されており、例えば、照明、空調、工場のモータや家電製品などのなかで、停電中でも使用を継続したい負荷である。
重要負荷102は、自立分散型電源における給電系統400にUPS30を介して接続されており、例えばサーバやパーソナルコンピュータなどの、給電系統400の供給電力が瞬間的に供給されない状態(瞬断)となった場合に誤動作を起こす負荷である。
【0038】
UPS30は、給電系統400の電力量を検出し、この検出した給電系統400の電力量と、予め設定されている閾値電力量とを比較する。
また、UPS30は、比較結果において、給電系統400の電力量が閾値電力量未満の場合、自身内部の蓄電池から重要負荷102に電力を供給し、給電系統400の電力量が閾値電力量以上である場合、系統電力400から重要負荷102に対して電力を供給する。
防災・保安負荷103は、例えば防災負荷(遮蔽扉の駆動源)や保安負荷(非常灯など)などの、非常時に必要となる重要度の高い負荷である。すなわち、防災・保安負荷103は、商用系統200が異常となっても稼動させる必要があるが、瞬断しても基本的な動作には影響がなく、給電系統400に対して接続されている。
【0039】
図1において、自立範囲501は、商用系統200の異常時(停電時など)において、この商用系統200からではなく、自立分散型電源における電力変換装置1及び2と、非常用発電機GENと、太陽光発電装置12との組合せにより、給電系統400に対して電力が供給される範囲である。
また、自立範囲301は、商用電力200の給電ラインの異常により、遮断機201が遮断された後、電力変換装置1及び2や非常用電源GENが起動し、給電系統400に対して商用系統200と同様な周波数及び電圧の交流電力が供給されるまで、瞬断を発生せずに継続して需要負荷301に対して電力が供給される範囲である。
【0040】
次に、図1及び図2を参照し、本発明の一実施形態による自立分散型電源の自立運転システムの自立運転制御の動作を説明する。図2は、一実施形態による自立分散型電源の自立運転システムの自立運転制御の動作例を示すフローチャートである。
【0041】
ステップS1:
検出部20は、遮断機201が導通状態あるいは非導通状態のいずれであるかの判定、すなわち、商用系統200の給電ラインが正常であるか否かの判定を遮断機201が開放信号を出力しているか否かにより行う。
このとき、検出部20は、遮断機201が開放信号を出力しておらずに導通状態にある場合、商用系統200の給電ラインが正常であると判定する。
そして、検出部20は、遮断機201が導通状態にあることを示す遮断情報を電力変換装置1及び電力変換装置2に対して出力する。
また、検出部20は、内部タイマーをリセットして計数を開始させた後、処理をステップS2へ進める。
【0042】
一方、検出部20は、遮断機201が開放信号を出力している非導通状態にある場合、商用系統200の給電ラインに異常が発生し、商用系統200からの電力供給が停止したと判定する。
そして、検出部20は、電力変換装置1及び電力変換装置2に対し、遮断機201が非導通状態にあることを示す遮断情報を出力する。
また、検出部20は、内部タイマーをリセットして計数を開始させた後、処理をステップS3へ進める。
【0043】
ステップS2:
検出部20は、商用系統200と、太陽光発電装置12と、電力変換装置1及び電力変換装置2との系統運転を継続する。
すなわち、商用系統200が給電系統400に対して供給する電力をベース電力とし、太陽光発電装置12の発電した直流電力をPCS11がベース電力の周波数及び電圧の交流電力に変換して給電系統400に供給する。
【0044】
また、電力変換装置1及び電力変換装置2は、給電系統400の測定点P2に設けられた電力センサにより、給電系統400の電力量を検出し、ベース電力の周波数、位相及び電圧の交流となるように、給電系統400の供給する電力量の補償を電力変動補償モードにより行うピークカット運転を行う。
検出部20は、所定の周期を内部タイマーにより検出し、所定の周期の時間が経過すると、処理をステップS1へ進める。
【0045】
ステップS3:
電力変換装置1は、遮断機201が非導通状態であることを示す遮断情報が供給されると、電力変動補償モードからCVCFモードに動作のモードを遷移する。
次に、電力変換装置1は、蓄電池1Dに蓄積されている直流電力を交流電力に変換することにより、商用系統200からベース電力として供給される電力と同様の周波数、位相及び電圧の交流電力を、商用系統200に換えたベース電力として給電系統400に対して供給する。
【0046】
また、電力変換装置2は、遮断機201が非導通状態であることを示す遮断情報が供給されても、遮断機201が導通状態である場合と同様に、測定点P2に設けられた電力センサから、電力変換装置1の出力するベース電力としての交流電力を計測する処理を開始する。
そして、電力変換装置2は、測定点P2の測定結果に基づき、交流電力の変動を補償する処理を行う。
また、検出部20は、非常用発電機GENを起動させ、給電系統400に対して供給する交流電力の発電を開始させる。
このとき、検出部20は、内部の安定動作検出タイマーをリセットして、この安定動作検出タイマーを起動させた後、処理をステップS4に進める。
【0047】
ステップS4:
商用電力200の給電ラインに異常が発生し、遮断機201が非導通状態となり、商用電力200から給電系統400に対する電力の供給が停止すると、電力変換装置1及び2が給電系統に対して、商用系統200と同様の交流電力を供給するまで、一般負荷101、重要負荷102及び防災・保安負荷103に対する電力供給が瞬断する。
【0048】
また、同様に、非常用発電機GENが発電を開始して安定した電力を発電するまで、一般負荷101、重要負荷102及び防災・保安負荷103に対する電力供給が瞬断する。
このため、UPS30は、給電系統400の電力量を計測し、この計測した電力量と予め設定された閾値電力量とを比較する。
そして、UPS30は、商用系統200が給電系統400と非導通状態となったため、給電系統に対する電力供給が停止し、供給される電力量が経時的に低下することにより、計測した電力量が閾値電力量未満であることを検出し、重要負荷103に対する電力の供給を開始する。
【0049】
ステップS5:
検出部20は、安定動作検出タイマーの計数した時間が、予め設定された時間を超えたことを検出すると、非常用発電機GENの発電する電力が安定となる時間が経過したとし、遮断機SW1を導通状態とする。
これにより、非常用発電機GENは、遮断機SW1を介して、給電系統400に対して発電した交流電力を、給電系統400のベース電力の周波数、位相及び電圧に合わせた供給を行い、電力変換装置1との連係運転を開始する。
【0050】
ステップS6:
次に、電力変換装置1及び2と非常用発電機GENとが、供給系統400に対する電力供給を開始したため、瞬断による電力低下が終了し、給電系統400の電力供給が、商用系統200と同等となる。
そして、UPS30は、給電系統400の電力量を計測し、この計測した電力量と予め設定された閾値電力量とを比較する。
【0051】
このとき、給電系統400の電力量は、電力変換装置1の出力するベース電力と、電力変換装置1と連係運転を行う非常用発電機GENの出力する交流電力とにより増加する。
この結果、UPS30は、計測した給電系統400の電力量が閾値電力量以上であることを検出し、自身の蓄電池からの電力供給を停止し、給電系統400から重要負荷103に対する電力の供給を開始する。
また、検出部20は、内部タイマーをリセットして、再び内部タイマーの計数処理を開始させた後、処理をステップS7へ進める。
【0052】
ステップS7:
検出部20は、所定の周期を内部タイマーにより検出し、所定の周期の時間が経過すると、遮断機201が導通状態あるいは非導通状態のいずれであるかの検出を行う。
このとき、検出部20は、遮断機201が導通状態にある場合、商用系統200の給電ラインが正常であるとして、遮断機201が導通状態にあることを示す遮断情報を電力変換装置1及び電力変換装置2に対して出力した後、処理をステップS8へ進める。
一方、検出部20は、遮断機201が非導通状態にある場合、商用電力200の状態に変化がないとし、内部タイマーをリセットして、再び内部タイマーの計数処理を開始させた後、処理をステップS7へ進める。
【0053】
ステップS8:
商用系統200が復旧して正常となると、遮断機201が非導通状態から導通状態となり、商用系統200から給電系統400へ電力が供給される。
このため、ステップS7において、遮断機201が導通状態となっていることが検出された場合、商用系統200は正常に給電ライン400に対して給電を開始している。
したがって、検出部20は、遮断機201が導通状態であることを示す遮断情報により、遮断機SW1を導通状態から非導通状態として、給電系統400から非常用発電機GENの解列を行い、処理をステップS9へ進める。
【0054】
ステップS9:
そして、検出部20は、非常用発電機GENの解列を行った後、非常用発電装置GENを停止させる。
また、電力変換装置1は、遮断機201が導通状態を示す遮断情報が供給され、電圧確立を確認することにより、自立運転時における電圧制御のCVCFモードから、商用系統200のベース電力との連係運転時における電流制御の電力変動補償モードに、運転状態を変更する。
【0055】
すなわち、電力変換装置1は、測定点P2における電圧を計測し、計測結果の周波数及び電圧に応じて、商用系統200のベース電力の周波数、位相及び電圧となるように電流制御を行うことで電力補償を行う。
一方、電力変換装置2は、測定点P2における電力を計測し、計測結果の電力変動に応じて、商用系統200のベース電力の周波数、位相及び電圧となるように電流制御を行う電力補償を継続して行う。
【0056】
上述したように、本実施形態は、商用系統200の停電時などの非常時において、商用系統200から供給されるベース電力の代わりに、給電系統400におけるベース電力を電力変換装置1がCVCF運転により供給し、この供給される供給電力における電力変動を、電力変換装置2が抑制するため、給電系統400の電力を安定化させることができる。
このため、本実施形態によれば、商用系統200の異常時においても、給電系統400のベース電力の周波数、位相及び電圧が安定するため、太陽光発電装置12(自然エネルギー発電機)の給電系統400からの解列を防止し、自然エネルギーの発電電力を有効に利用できる。
この結果、本実施形態によれば、自然エネルギーにより発電された電力を有効に用いることができるため、非常用発電機GENの燃料の消費量を低減させ、商用系統400の停電などの異常状態が長時間継続しても、自立範囲にある負荷に対する電力の供給を従来に比較してより長く継続して供給することが可能となる。
【0057】
また、図1における検出部20の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより給電系統400における電力制御の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0058】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0059】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1,2…電力変換装置
1A,2A…制御部
1B,2B…ACSW
1C,2C…インバータ
1D,2D…蓄電池
11…PCS
12…太陽光発電装置
20…検出部
21…電力制御部
30…UPS
101…一般負荷
102…重要負荷
103…防災・保安負荷
200…商用系統
201,SW1…遮断機
301,501…自立範囲
400…給電系統
601…電力制御部
P2…測定点
図1
図2
図3
図4