特許第5877486号(P5877486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5877486非晶質金属コアと、それを用いた誘導装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877486
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】非晶質金属コアと、それを用いた誘導装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/26 20060101AFI20160223BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20160223BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20160223BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20160223BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   H01F27/26 K
   H01F27/24 C
   H01F27/24 H
   H01F30/10 A
   H01F37/00 A
   H01F41/02 C
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-503609(P2014-503609)
(86)(22)【出願日】2012年4月9日
(65)【公表番号】特表2014-514761(P2014-514761A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】KR2012002669
(87)【国際公開番号】WO2012138199
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2013年11月7日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0032641
(32)【優先日】2011年4月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512083861
【氏名又は名称】アモグリーンテク カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】リ,チュン ゴル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ドン ウク
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−032786(JP,A)
【文献】 特開昭54−050918(JP,A)
【文献】 実開昭57−100216(JP,U)
【文献】 特開平04−206610(JP,A)
【文献】 特表2006−505143(JP,A)
【文献】 特開2010−258641(JP,A)
【文献】 特開平02−154401(JP,A)
【文献】 実開昭60−096806(JP,U)
【文献】 実開平05−057824(JP,U)
【文献】 特表2006−514432(JP,A)
【文献】 特開2008−136185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/26
H01F 27/24
H01F 30/10
H01F 37/00
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の非晶質金属薄板が積層されて形成される非晶質金属薄板積層体と前記非晶質金属薄板積層体の前面及び後面に積層されて、非磁性金属から成る一対の組立プレートとを備えて“I”形状からなり、少なくとも一つのエアギャップを有する磁気回路を形成する多数の非晶質金属単位コアと、
前記多数の非晶質金属単位コアを分離可能に相互結合させるための結合手段とを含み、
前記結合手段は、
前記組立プレートの端部に形成される少なくとも一つの結合突起と、
隣接する組立プレートの端部に形成されて、前記結合突起に結合される少なくとも一つの結合凹溝とで構成され、前記結合手段によって、前記多数の非晶質金属単位コアは、前記エアギャップの間隔が維持された状態で、一体の非晶質金属コアを形成し、
前記組立プレートの前記結合突起の長さ、及び前記結合凹溝の深さを変更することによって前記エアギャップの間隔が変更されることを特徴とする、非晶質金属コア。
【請求項2】
前記多数の非晶質金属薄板は、非晶質金属リボンのスリッティング及び切断カッティングによって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の非晶質金属コア。
【請求項3】
前記結合突起は、前記非晶質金属薄板積層体から突出し、前記結合凹溝は、前記非晶質金属薄板積層体を部分的に露出させるように成形されることを特徴とする、請求項1に記載の非晶質金属コア。
【請求項4】
前記多数の非晶質金属単位コアは、
平行に配列された二つのヨークと、前記二つのヨークを相互連結し、互いに平行に配列される少なくとも二つのレッグとを含むことを特徴とする、請求項1に記載の非晶質金属コア。
【請求項5】
前記結合突起と結合凹溝との結合は、スナップ結合または圧着結合によりなされることを特徴とする、請求項1に記載の非晶質金属コア。
【請求項6】
少なくとも一つのエアギャップを有する磁気回路を形成するように両側端部が相互結合され、“I”形状からなる多数の非晶質金属単位コアを備える非晶質金属コアと、
前記非晶質金属コアを形成する非晶質金属単位コアの少なくとも一つに巻線される少なくとも一つのコイルとを含み、
前記多数の非晶質金属単位コアのそれぞれは、
長方形状からなる多数の非晶質金属薄板を積層した非晶質金属薄板積層体と、
それぞれ前記非晶質金属薄板積層体の前面及び後面に積層され、前記非晶質金属単位コアを相互結合させる時に、結合がなされる両側端部に少なくとも一つの結合突起または結合凹溝を備えて、非磁性金属から成る一対の組立プレートとを含み、
前記非晶質金属コアは、前記結合突起と前記結合凹溝を結合させることによって、前記エアギャップの間隔が維持された状態で形成され、
前記組立プレートの前記結合突起の長さ、及び前記結合凹溝の深さを変更することによって前記エアギャップの間隔が変更されることを特徴とする、誘導装置。
【請求項7】
前記多数の非晶質金属単位コアは、
平行に配列された二つのヨークと、
前記二つのヨークを相互連結し、平行に配列される少なくとも二つのレッグとを形成することを特徴とする、請求項に記載の誘導装置。
【請求項8】
前記磁気回路は、マルチギャップタイプ(multi−gap type)、ワンウェイギャップタイプ(oneway gap type)及びノーマルギャップタイプ(normal gap type)のいずれか一つのスペーサを含むことを特徴とする、請求項に記載の誘導装置。
【請求項9】
前記二つのヨークを上下から覆う上部カバー及び下部カバーをさらに含み、前記上部カバー及び下部カバーは、両側がそれぞれ一対の締結ボルトによって相互連結されることを特徴とする、請求項に記載の誘導装置。
【請求項10】
非晶質金属のリボンをスリッティング及びカッティングして同一の長さの長方形状からなる多数の非晶質金属薄板を積層して、非晶質金属薄板積層体を形成する段階と、
前記非晶質金属薄板積層体を熱処理する段階と、
前記非晶質金属薄板積層体の前面及び後面に、両側端部に少なくとも一つの結合突起または結合凹溝を備えて、非磁性金属から成る一対の組立プレートを積層した後、接着剤に含浸して非晶質金属単位コアを得る段階と、
前記非晶質金属単位コアを多数個組立てて、少なくとも一つのエアギャップを有する磁気回路を形成する非晶質金属コアを得る段階とを含
前記非晶質金属コアは、前記結合突起と前記結合凹溝を結合させることによって、前記エアギャップの間隔が維持された状態で組み立てられ、
前記組立プレートの前記結合突起の長さ、及び前記結合凹溝の深さを変更することによって前記エアギャップの間隔が変更されることを特徴とする、非晶質金属コアの製造方法。
【請求項11】
前記非晶質金属薄板積層体を熱処理する段階は、大気中で行われ、熱処理時間は、昇温1時間と維持時間7時間であり、熱処理温度は、380℃乃至450℃の範囲で設定されることを特徴とする、請求項10に記載の非晶質金属コアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質金属コアと、それを用いた誘導装置及びその製造方法に係り、特に、成形しやすく、自動化が容易な多数の非晶質金属薄板(薄帯)を積層した非晶質金属薄板積層体を使用し、非晶質金属薄板積層体の外側に備えられた組立プレートにそれぞれ形成された結合突起及び結合凹溝を用いて非晶質金属薄板積層体を相互結合することによって、組み立てが容易で、エアギャップ(air gap)の調節が容易な非晶質金属コアと、それを用いた誘導装置及びその製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、非晶質金属薄板積層体の相互結合が組立プレートの結合突起と結合凹溝間になされるので、非晶質金属薄板積層体には透磁率及びコア損失(core loss)のような磁気的性質の低下を招かない最小限の機械的応力が付加されるように設定することによって、コア損失を最小にすることができる非晶質金属コアと、それを用いた誘導装置に関する。
【背景技術】
【0003】
誘導装置は、トランスフォーマ(transformer)、チョークコイル(choke coil)、インダクター、ノイズ対策部品などのような様々な電子部品に使用される。ほとんどの誘導装置は、軟質強磁性材料を含むコアと、コアに巻回された一つまたはそれ以上のコイルとからなる。このような誘導装置は、DCからGHzにわたって所望の周波数で動作できるように、該当のタイプによって最適化される。
【0004】
特に、コアは、要求される特性、効果的な製造が可能なある形態での材料の有用性、及び与えられた市場で使用するのに必要な大きさ/コストなどの組み合わせに依存して、軟磁性材料が選択される。
【0005】
一般に、好ましい軟磁性材料は、コアの大きさ及び低飽和保磁力(coercivity)を最小化するために、高飽和誘導(saturation induction)、高透磁率(permeability)及び低コア損失(core loss)の特性を示し、種類としては、ケイ素鋼板(silicon steel sheets)、フェライト(ferrite)、非晶質金属(amorphousmetal)などが知られている。
【0006】
具体的に、ケイ素鋼板は、材料が安価で、密度は高いが、高周波の用途においてコア損失が大きいという限界がある。また、フェライトは、飽和磁束密度が低く、温度特性がよくないため、大容量インバータ・電源のコイル部品、配電用トランスフォーマなど、ハイパワーで使用される用途には適していない。
【0007】
一方、非晶質金属は、構成原子が液体状態とほぼ同一に無秩序な構造を有するもので、溶融した液状金属を急冷させて製造することによって、既存の結晶質材料とは異なる様々な特性を示しており、特に、優れた軟磁性特性を示す。
【0008】
このような非晶質金属は、主成分によって、鉄(Fe)系、コバルト(Co)系などに大別され、鉄系の場合、飽和磁束密度が高く、コア損失(core loss)がケイ素鋼板に比べて小さいので、大容量柱上変圧器や高周波用大型磁気コアに使用され、コバルト系の場合、透磁率が高く、コア損失及び保磁力が小さいので、高周波用小型磁気コアに使用される。
【0009】
さらに、非晶質金属は、他の軟磁性材料に比べてコア損失及び渦電流損失が小さいので、ケイ素鋼板またはフェライトに代えて、磁気コア用軟磁性材料として脚光を浴びている。このような非晶質金属は、高効率性、大きな電気比抵抗のような渦電流損失による優れた高周波特性、高透磁率と高飽和磁束密度によるノイズ抑制特性、DCバイアス特性、及び小型化要求に対する対応性に優れている。
【0010】
低コア損失特性を用いた製品には、チョークコア、インバータ用高周波トランス、配電用トランス、各種リアクターなどがあり、高透磁率特性を用いた製品には、パルストランス、昇圧トランス、オーディオ用トランス、カレントトランス、ノイズフィルターなどがある。この場合、磁気コアは、相対的に小容量のギャップタイプのトロイダル形状のコアと大容量の四角形状のカットコア(cut core)とに区分される。
【0011】
非晶質金属は、一般に、均一なリボン幅を有する薄くて連続的なリボンとして供給される。しかし、非晶質金属は、非常に硬い材料であって、切断したり成形するのが容易でない。ピーク磁気特性を確保するためにアニール処理が施されると、非晶質金属リボンは大きな脆性を帯びるようになる。これは、バルク非晶質磁気部材を構成するために通常の方法を使用することを難しくし、コストが上昇する。
【0012】
非晶質磁気コアを形成する非晶質金属は、他の強磁性材料に比べて著しく優れた磁性特性を示すが、上記のような物理的特性によって材料加工に困難がある。すなわち、従来は、非晶質トロイダルコアまたは非晶質カットコアに固有な磁気特性を付与するためのギャップを形成する切断工程を行うに当たって、製造工具などに過度な摩耗を発生させることがある。
【0013】
また、非晶質カットコアである場合、非晶質リボンを巻線し、接着剤に含浸、固定させた後、ギャップを形成するための切断工程を行い、切断面を研磨する工程を進行する。これによって、切断面は絶縁が破壊されて、渦電流損失が増加するという問題がある。
【0014】
一方、特許文献1には、多数の平面薄板のそれぞれを形成するために非晶質金属ストリップ材料を切断した後、薄板を、3次元形状を有するバルク非晶質金属磁性部品(すなわち、薄板積層体)として形成するために積層し、整列し、部品の磁気特性を改善させるために薄板をアニーリングした後、薄板積層体を接着剤で接着させる方法が提案された。
【0015】
前記特許文献1には、薄板積層体が多数の非晶質金属薄板のみで積層されているので、例えば、薄板積層体のそれぞれを結合(組合)して、’E−I型’、’C−I’または’4個のI形状の部品で組み合わされた四角形’の磁気コア(磁気回路)を形成する時に、維持手段を使用して単一薄板積層体のそれぞれに対する間隔と平行状態を調節して機械的に組み立てている。
【0016】
透磁率及びコア損失のような磁気的性質の低下を招くようになる高い応力を構成部品に付加しないようにするために、前記維持手段としては、接着剤を使用したり、またはバンドやハウジングを提示している。
【0017】
前記特許文献1には、非晶質金属ストリップ材料を切断する時、小さくて複雑な形状の薄板はフォトリソグラフィーエッチング(photolithographic etching)を用い、大きくて単純な形状の薄板はスタンピング(stamping)方法を提案している。
【0018】
そのようなフォトリソグラフィーエッチングは、加工コストの上昇をもたらし、大型薄板には適用しにくく、E、U、Cのような複雑で且つ大型の薄板は、スタンピング加工方法を使用する場合、非晶質金属よりも高い硬度を有する材料でパンチとダイを構成するとしても、多くの数の薄板を加工する量産工程では、パンチとダイの摩耗を招いて、耐久性を保障できなくなり、これは、加工コストの上昇を招く。したがって、加工装備の耐久性を十分に保障できる加工方法が要求される。
【0019】
また、薄板積層体を結合(組合)してエアギャップにスペーサを挿入しながら、’4個のI形状の部品で組み合わされた四角形’の磁気コア(磁気回路)を形成(仮組立)した後、これをバンドのような維持手段で固定する時に、互いに対向する2個のI形状の薄板積層体が、予め設定された間隔と平行状態を維持しながら仮組立が行われることが要求されるが、これを高い生産性を維持しながら具現できる構造や方法が提示されていない。
【0020】
さらに、’E−I型’、’C−I’のような磁気コア(磁気回路)において、エアギャップにスペーサを挿入して形成(仮組立)する場合にも、上記と同様に、精密なエアギャップを保障しながら仮組立が行われた状態を維持する構造は全く提示されていない。
【0021】
また、磁気回路を形成するように多数の薄板積層体を組み合わせる場合、非晶質金属薄板積層体には機械的応力が付加されるため、コア損失(core loss)が増加するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2005−67222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、成形装置の十分な耐久性保障及び容易な成形自動化が可能なように、非晶質金属薄板の加工がスリッティングと直線カッティングまたはパンチングのみからなる多数の長方形の非晶質金属薄板を積層したI型非晶質金属薄板積層体を備える非晶質金属コアと、それを用いた誘導装置及びその製造方法を提供することにある。
【0024】
本発明の他の目的は、ヨーク(yoke)及びレッグ(leg)の組立プレートにそれぞれ形成された結合突起と結合凹溝を用いて結合することによって、組み立てが非常に容易に行われ、エアギャップ(air gap)を付与し、スペーサを挿入するとしても、組立状態を維持することができる非晶質金属コアと、それを用いた誘導装置を提供することにある。
【0025】
本発明の更に他の目的は、ヨーク及びレッグの組立プレートに形成された結合突起の長さと結合凹溝の深さを用いて、精密なエアギャップの調節が可能な非晶質金属コアと、それを用いた誘導装置を提供することにある。
【0026】
本発明の更に他の目的は、各ヨーク及びレッグの組立プレートに形成された結合突起と結合凹溝を用いて組み立てがなされ、非晶質金属薄板積層体には、透磁率及びコア損失(core loss)のような磁気特性の低下を招かない最小限の機械的応力が付加されるように設定することによって、コア損失を最小限にすることができる非晶質金属コアと、それを用いた誘導装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の目的を達成するために、本発明は、多数の非晶質リボンを積層した非晶質金属薄板積層体と;前記非晶質積層体の前面及び後面をカバーするための一対の組立プレートと;を含む非晶質金属コアを提供する。この場合、前記多数の非晶質金属薄板積層体は、接着剤に含浸して相互結合されてもよい。
【0028】
前記非晶質金属薄板積層体は、Fe系またはCo系非晶質磁性合金であることが好ましく、この場合、前記Fe系非晶質磁性合金は、Fe−Si−B、Fe−Si−Al、Fe−Hf−C、Fe−Cu−Nb−Si−B、Fe−Si−N、及びFe−Si−B−Cのいずれか一つであるか、または前記Co系非晶質磁性合金は、Co−Fe−Si−BまたはCo−Fe−Ni−Si−Bであることが好ましい。
【0029】
また、前記非晶質金属薄板積層体は、Fe8011Siで定義される組成を有する合金であることも勿論可能である。
【0030】
また、本発明は、前記非晶質金属薄板積層体及びその前後面にそれぞれ組立プレートをそれぞれ備え、互いに間隔を置いて平行に配置される第1及び第2ヨークと;前記非晶質金属薄板積層体及びその前後面にそれぞれ組立プレートをそれぞれ備え、前記第1及び第2ヨークの間に互いに平行に配置される第1及び第2レッグと;を含み、前記第1及び第2ヨークの組立プレートは、前記第1及び第2レッグの組立プレートに、相互形成された結合突起及び結合凹溝を通じて互いに結合されることを特徴とする非晶質金属コアを提供することによって、上記の目的を達成することができる。
【0031】
この場合、前記第1及び第2ヨークと第1及び第2レッグとは互いに結合して四角形状をなすことが好ましい。
【0032】
前記組立プレートは、結合突起の長さ及び結合凹溝の深さを調節して、前記第1及び第2ヨークと前記第1及び第2レッグとの間に形成されるエアギャップの間隔を調節することができる。
【0033】
なお、前記第1及び第2ヨークの組立プレートはそれぞれ結合突起を形成し、前記第1及び第2レッグの組立プレートは、前記結合突起にそれぞれ対応する結合凹溝を形成することも勿論可能である。
【0034】
前記第1及び第2ヨークの組立プレートはそれぞれ結合凹溝を形成し、前記第1及び第2レッグの組立プレートは、前記結合凹溝にそれぞれ対応する結合突起を形成することが好ましい。
【0035】
また、本発明は、前記非晶質金属コアと;前記非晶質金属コアの第1及び第2レッグにそれぞれ巻線された第1及び第2ラミネートコイルと;前記第1及び第2ラミネートコイルの先端にそれぞれ接続された一対の端子と;前記非晶質金属コアを上下から覆う上部カバー及び下部カバーと;を含むことを特徴とする誘導装置を提供することによって、上記の目的を達成することができる。
【0036】
前記上部カバー及び下部カバーは、両側がそれぞれ一対の締結ボルトによって相互連結されてもよい。
【0037】
また、本発明は、非晶質金属薄板を同一の間隔でカッティングして、長方形状のリボンを多数個形成する段階と;前記多数のリボンを熱処理治具に積層して熱処理する段階と;前記熱処理された多数のリボンは、治具に組み立てた後、予め準備された接着剤に含浸して、多数のリボンを積層状態でボンディングする段階と;前記相互ボンディングされた多数のリボンを硬化する段階と;を含むことを特徴とする非晶質金属コア用非晶質金属薄板積層体の製造方法を提供することによって、上記の目的を達成することができる。
【0038】
前記熱処理は、大気中で行われ、熱処理時間は昇温1時間と維持時間7時間であり、熱処理温度は380℃乃至450℃の間であることが好ましい。
【0039】
前記接着剤は、エポキシ系列樹脂、アクリル系列樹脂、シリコン及びニスのいずれか一つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
上記したように、本発明においては、非晶質金属コアを構成する時、非晶質金属薄板(ラミネーション)の薄板加工がスリッティングと直線カッティングまたはパンチングのみで形成される長方形の非晶質金属薄板を積層して得られるI型非晶質金属薄板積層体を使用するので、非晶質金属薄板を加工する成形装置の十分な耐久性保障及び成形自動化を容易に達成することができる。
【0041】
また、本発明は、各ヨーク(yoke)及びレッグ(leg)の組立プレートに形成された結合突起と結合凹溝を単純に結合することによって、仮組立が非常に容易であり、エアギャップ(air gap)を付与し、スペーサを挿入するとしても、仮組立状態を維持できるので、組立生産性が高く、組立自動化を容易に達成することができる。
【0042】
さらに、本発明では、ヨーク及びレッグの組立プレートに形成された結合突起の長さと結合凹溝の深さを用いて、精密なエアギャップの調節が可能である。
【0043】
また、本発明では、各ヨーク及びレッグの組立プレートに形成された結合突起と結合凹溝を用いて組み立てが行われ、非晶質金属薄板積層体には、透磁率及びコア損失(core loss)のような磁気的性質の低下を招かない最小限の機械的応力が付加されるように設定することによって、コア損失を最小限に抑制することができる。
【0044】
すなわち、本発明では、非晶質金属薄板積層体の上/下部に積層される一対の組立プレートを、サス(SUS)のような非磁性金属、シリコンスチールのような結晶質磁性体、または合成樹脂などの材料で形成し、組立プレートに形成された結合突起及び結合凹溝を用いて非晶質金属コアの組み立てが行われることによって、非晶質金属薄板積層体に対する機械的応力が付加されることを最小化して、コアの磁気的特性を極大化できるようになる。
【0045】
さらに、非晶質カットコアである場合、ギャップ形成用切断及び切断面の研磨によって絶縁が破壊されて、渦電流損失が増加するという問題があるが、本発明では、長方形状からなる多数の非晶質金属薄板を積層した後、接着剤含浸工程を経、エアギャップは、非晶質金属単位コアを組み立てる時に、組立プレートによって間隔が自動で設定されるので、渦電流損失が増加するという問題が発生しなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の第1実施例に係る非晶質金属コアの分解斜視図である。
図3】各々図1に示したレッグ及びヨークをなす非晶質金属コアを示す分解斜視図である。
図2】各々図1に示したレッグ及びヨークをなす非晶質金属コアを示す分解斜視図である。
図4】本発明の第1実施例に係る非晶質金属コアの組立斜視図である。
図5】本発明の第1実施例に係る非晶質金属コアの非晶質積層体の作製過程を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施例によって、図1に示した各非晶質金属コアに結合された組立プレートの結合突起及び結合凹溝の位置を変更した状態を示す非晶質金属コアの分解斜視図である。
図7】各々本発明の第1実施例に係る誘導装置を示す分解斜視図及び組立斜視図である。
図8】各々本発明の第1実施例に係る誘導装置を示す分解斜視図及び組立斜視図である。
図9】本発明の第3実施例に係る同一の4個の“I”形状の非晶質金属単位コアを組み立てて形成された正方形の非晶質金属コアを示す概略平面図である。
図10】本発明の第4実施例に係る2個のヨーク及び3個のレッグを含む3相トランスフォーマ用非晶質金属コアを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施例に係る非晶質金属コアの構成と非晶質金属コアの製造方法、及びこのような非晶質金属コアを用いる誘導装置の構成を順次説明する。
【0048】
本発明に係る非晶質金属コアは、少なくとも一つのエアギャップ(air gap)とスペーサを含む磁気回路を形成するように、“I”形状からなるバータイプ(bar type)の多数の非晶質金属単位コアを備える。
【0049】
前記非晶質金属単位コアは、軟磁性特性に優れた非晶質磁性合金からなる広幅のリボンを、所望の幅と長さにスリッティング及びカッティングして得られる長方形状の多数の非晶質金属薄板を積層した非晶質金属薄板積層体と、非磁性金属、結晶質磁性体または合成樹脂からなり、前記非晶質金属薄板積層体の前面及び後面に積層され、非晶質金属薄板積層体に対応する長方形状からなる一対の組立プレートとで構成される。
【0050】
このような非晶質金属単位コアは、全て“I”形状からなり、外部にコイルが巻線されるレッグ、またはレッグとレッグとを相互連結して磁気回路を形成するヨークに使用される。この場合、非晶質金属コアは、磁気回路を構成するために、必要に応じて、前記レッグ及びヨークは、少なくとも一つ以上の非晶質金属単位コアで構成され、少なくとも一つのエアギャップ(air gap)とスペーサを含むように、少なくとも一つ以上の非晶質金属単位コアが互いに直列に接続されるか、または並列に接続される。
【0051】
すなわち、前記非晶質金属単位コアは、単に磁気回路の用途及び使用される位置によって長さが変化するだけで、同一の構造を有する。したがって、本発明の非晶質金属コアは、長さのみが互いに同一または異なる多数の“I”形状の非晶質金属単位コアで構成される。
【0052】
以下で図面を参照して説明される非晶質金属コアは、一つの例示に過ぎず、少なくとも一つのエアギャップ(air gap)とスペーサを含む様々な磁気回路に適用可能である。
【0053】
図1乃至図4を参照すると、本発明の第1実施例に係る非晶質金属コア1は、上下側に平行に配置された第1及び第2ヨーク10,20と、前記第1及び第2ヨーク10,20の両端部にそれぞれ直角に結合され、平行に配置された第1及び第2レッグ(leg)30,40とからなる。
【0054】
この場合、非晶質金属コア1は、前記第1及び第2ヨーク10,20及び第1及び第2レッグ30,40が共に結合して長方形状をなすように、前記第1及び第2レッグ30,40が、第1及び第2ヨーク10,20に対して直角に組み立てられる。
【0055】
前記第1及び第2ヨーク10,20は互いに同一の構造を有する。すなわち、前記一対のヨーク10,20はそれぞれ、“I”形状からなり、直六面体をなす非晶質金属薄板積層体11,21を備える。前記第1及び第2ヨーク10,20の非晶質金属薄板積層体11,21と第1及び第2レッグ30,40の非晶質金属薄板積層体31,41の製造過程は、非晶質金属コア1の構成を説明した後、続いて説明する。
【0056】
また、前記第1及び第2ヨーク10,20はそれぞれ、前面及び後面にそれぞれ非晶質金属薄板積層体11,21に対応する長方形からなる組立プレート13,15;23,25が所定の接着剤などにより付着固定される。この場合、組立プレート13,15;23,25は、少なくとも第1及び第2ヨーク10,20の幅に対応する幅を有することが好ましい。
【0057】
前記組立プレート13,15;23,25は、例えば、サス(SUS)のような非磁性金属、シリコンスチールのような結晶質磁性体、または合成樹脂などからなることが好ましい。
【0058】
前記第1ヨーク10の前後面にそれぞれ付着される組立プレート13,15は、下端に沿って間隔を置いて対称に一対の結合突起13a,15aがそれぞれ延びて形成される。なお、前記第2ヨーク20の前後面にそれぞれ付着される組立プレート23,25は、上端に沿って間隔を置いて対称に一対の結合突起23b,25bがそれぞれ延びて形成される。すなわち、前記結合突起13a,15a;23b,25bは、第1及び第2ヨーク10,20の間に配置される第1及び第2レッグ30,40に向かって突出形成される。
【0059】
前記第1及び第2レッグ30,40は、第1及び第2ヨーク10,20と同様にそれぞれ、“I”形状からなり、非晶質金属薄板積層体31,41を含み、各非晶質金属薄板積層体31,41は、前後面にそれぞれ非晶質金属薄板積層体31,41に対応する長方形からなる組立プレート33,35;43,45が付着固定される。この場合、組立プレート33,35;43,45は、前記レッグ30,40の非晶質金属薄板積層体31,41の幅にそれぞれ対応する幅を有する。
【0060】
また、前記組立プレート33,35;43,45は、上端に沿って、前記第1ヨーク10の組立プレート13,15の結合突起13a,15aがそれぞれ挿入される結合凹溝33a,35a;43a,45aが形成され、下端に沿って、前記第2ヨーク20の組立プレート23,25の結合突起23b,25bがそれぞれ挿入される結合凹溝33b,35b;43b,45bが形成される。
【0061】
前記第1及び第2ヨーク10,20と第1及び第2レッグ30,40は、前記結合突起13a,15a;23b,25b及び結合凹溝33a,33b,35a,35b;43a,43b,45a,45bを通じて各部材間の結合が容易に行われる。
【0062】
前記結合突起13a,15a;23b,25b及び結合凹溝33a,33b,35a,35b;43a,43b,45a,45bは、前記第1及び第2ヨーク10,20と第1及び第2レッグ30,40とを相互分離可能に結合させる結合手段を構成する。
【0063】
前記組立プレート13,15;23,25;33,35;43,45は、非晶質金属薄板積層体11,21,31,41を保護すると共に、前記の結合手段によって前記第1及び第2ヨーク10,20と第1及び第2レッグ30,40とを相互分離可能に結合させながら、結合時に非晶質金属薄板積層体11,21,31,41に最小限の機械的応力が付加されるように結合が行われる。
【0064】
また、必要に応じて、前記結合手段を形成する前記結合突起13a,15a;23b,25b及び結合凹溝33a,33b,35a,35b;43a,43b,45a,45bは結合がなされる時に、相互間に圧着結合が行われるか、または相互間にスナップ結合が行われるように、結合凹溝33a,33b,35a,35b;43a,43b,45a,45bには、対向する内周面にスナップ結合用の少なくとも一対の小型凹溝をさらに含み、前記結合突起13a,15a;23b,25bには、両側外周面にスナップ結合用の少なくとも一対の小型突起をさらに含むことができる。
【0065】
前記の結合手段及びスナップ結合が行われる構造は、他の形状に変形可能であり、周知のいかなる構造も採用可能である。
【0066】
その結果、前記第1及び第2ヨーク10,20と第1及び第2レッグ30,40との間には、相互結合された状態を持続的に維持することができる結合力を有するようになる。
【0067】
これに加えて、以下で説明する上/下部カバー70,80(図7参照)の間に組み立てられる前記第1及び第2ヨーク10,20と第1及び第2レッグ30,40は、前記非晶質金属薄板積層体11,21,31,41の直接組立の代わりに、組立プレート13,15,23,25,33,35,43,45を用いて相互結合が行われるので、前記非晶質金属薄板積層体11,21,31,41には最小限の機械的応力が付加されることによって、コア損失(core loss)を最小限に抑制することができる。
【0068】
一方、非晶質金属コア1は、エアギャップ(air gap)及びスペーサを含む磁気回路を構成する時、少なくとも一つのエアギャップを備えることができ、この場合、前記結合突起13a,15a;23b,25bの長さ及び結合凹溝33a,33b,35a,35b;43a,43b,45a,45bの深さを調節して、第1及び第2ヨーク10,20と第1及び第2レッグ30,40との間の間隔(すなわち、磁気ギャップ)にエアギャップ(air gap)を精密に形成することができる。このとき、エアギャップの間隔が広がるほど、インダクタンスが小さくなる特性を考慮して、渦電流損失を減少させることができるように、第1及び第2ヨーク10,20と第1及び第2レッグ30,40との間の間隔を、結合突起13a,15a;23b,25bの長さ及び結合凹溝33a,33b,35a,35b;43a,43b,45a,45bの深さを予め設定して最適化することができる。
【0069】
また、エアギャップ(air gap)及びスペーサを含む磁気回路を形成する時、第1及び第2ヨーク10,20と第1及び第2レッグ30,40との間の間隔を、結合突起の長さ及び結合凹溝の深さを予め設定して最適化すると、後述するように、エアギャップ(air gap)を付与し、スペーサを挿入するとしても、仮組立状態を維持できるので、精密組立状態を維持しながら、バンドまたは図7に示した上/下部カバー70,80を用いた最終固定が行われ得る。
【0070】
前記実施例の説明では、第1及び第2ヨーク10,20と第1及び第2レッグ30,40に結合突起13a,15a;23b,25bと結合凹溝33a,33b,35a,35b;43a,43b,45a,45bがそれぞれ一対となっているが、少なくとも一つの結合突起と結合凹溝を備えても、結合が可能であり、必要に応じて、それぞれ三つの結合突起と三つの結合凹溝を備えることで、結合力を高めることも可能である。
【0071】
また、第1及び第2ヨーク10,20にそれぞれ一つの結合突起と結合凹溝を備え、これに結合される第1及び第2レッグ30,40にそれぞれ一つの結合凹溝と結合突起を備えることも勿論可能である。
【0072】
一方、前記非晶質金属薄板積層体11,21,31,41は、使用可能な非晶質磁性合金で作製され、特に制限されないが、コスト及び磁気コアとしての特性を考慮する時、Fe系またはCo系合金が好ましい。より詳細には、使用可能な非晶質合金は、Fe系としては、Fe−Si−B、Fe−Si−Al、Fe−Hf−C、Fe−Cu−Nb−Si−B、Fe−Si−N、及びFe−Si−B−Cを挙げることができ、Co系としては、Co−Fe−Si−B、Co−Fe−Ni−Si−Bを挙げることができる。より好適な非晶質合金材料は、Fe8011Siで定義される組成を有する合金である。
【0073】
このような非晶質金属薄板積層体11,21,31,41の製造過程を、図5を参照して説明する。
【0074】
まず、非晶質金属からなる広幅のリボンをスリッティング及びカッティング工程を行って、長方形状からなる多数の非晶質金属薄板を形成する(S1)。すなわち、長方形状からなるI型非晶質金属薄板は、均一な厚さを有する薄くて連続的な広幅のリボンとして提供される非晶質金属リボンを、所望の幅にスリッティングした後、ヨークまたはレッグに対応する同一の長さに連続的に直線カッティングすることによって、多数の非晶質金属薄板11a,31a(図2及び図3参照)を形成する。
【0075】
続いて、成形された多数の非晶質金属薄板11a,31aを熱処理治具に積層し(S2)、磁気的特性の向上のために、積層された多数の非晶質金属薄板11a,31aを磁場熱処理する(S3)。
【0076】
前記熱処理は、多数の非晶質金属薄板11a,31aが磁気コアとしての特性を有するように、例えば、熱処理条件は、大気中で昇温1時間と維持時間7時間であり、熱処理温度は、380℃乃至450℃の間で行われる。熱処理は、所望の透磁率を得るためのもので、透磁率が高まる場合、コア損失(Core loss)が減少し、飽和磁束密度(Bs)が大きくなり、保磁力(Hc)が小さくなり、また角形比が増加するようになる。
【0077】
このように熱処理された多数の非晶質金属薄板11a,31aは、治具に組み立てられて積層体を形成した後(S4)、予め準備された接着剤を含浸させて(S5)、多数の非晶質金属薄板11a,31aを積層状態でボンディングして、非晶質金属薄板積層体11,21,31,41を作製する。
【0078】
この場合、接着剤は、エポキシ系列樹脂、アクリル系列樹脂、シリコンまたはニスを使用することができ、例えば、エポキシ樹脂を、真空含浸によって多数の非晶質金属薄板11a,31aの間に浸透させた後、硬化させる。一方、エポキシ系接着剤は、例えば、400℃で焦げてしまうので、接着剤含浸工程の前に熱処理が行われることが好ましいが、接着剤の種類によって、熱処理の前に接着剤含浸工程が行われてもよい。
【0079】
この場合、多数の非晶質金属薄板11a,31aを積層して接着剤を含浸させる時、図2及び図3のように、非晶質金属薄板積層体11,31の両側面にそれぞれ組立プレート13、15、33、35を結合した状態で接着剤含浸を施して、図1のように、非晶質金属薄板積層体11,31の両側面にそれぞれ組立プレート13,15,33,35を一体化することが好ましい。
【0080】
このように、非晶質金属薄板積層体11,21,31,41は、接着剤含浸後に、硬化させ、規格によって作製されたか測定及び検査を実施する(S6)。
【0081】
一方、前記非晶質金属コア1は、各組立プレートの結合突起13a,15a;23b,25b及び結合凹溝33a,33b,35a,35b;43a,43b,45a,45bの位置を反対の位置に形成することも勿論可能である。
【0082】
すなわち、図6に示した本発明の第2実施例に係る非晶質金属コア1aは、第1及び第2ヨーク10a,20aの各前後面に付着固定される組立プレート113,115;123,125にそれぞれ結合凹溝113a,115a;123b,125bを形成し、第1及び第2レッグ30a,40aの各前後面に付着固定される組立プレート133,135;143,145に、前記結合凹溝113a,115a;123b,125bに対応する結合突起133a,133b,135a;143a,143b,145aをそれぞれ形成することができる。
【0083】
また、図示していないが、各組立プレートに形成された結合突起及び結合凹溝は、前記図1及び図6に示したものとは異なり、一対のレッグの前後面に固定される組立プレートに結合突起と結合凹溝を共に備え、これに対応して、一対のヨークの前後面に固定される組立プレートに結合凹溝と結合突起を形成することも勿論可能である。
【0084】
上記のように、非晶質金属薄板積層体11,21,31,41に組立プレート113,115;123,125が前後面に結合されて形成される“I”形状からなる非晶質金属単位コアは、長さのみが互いに異なるだけで、磁気回路のヨークまたはレッグに使用可能である。
【0085】
前記第1実施例及び後述する第2実施例に係る非晶質金属コア1はそれぞれ、全体的な形状が長方形の無限ループを形成する磁気回路であって、長さが互いに同一である2対の“I”形状からなる非晶質金属単位コアで構成されている。
【0086】
しかし、本発明は、図9に示した第3実施例に係る非晶質金属コアのように、正方形の無限ループを形成する磁気回路を構成するように、4個の互いに同一の長さを有する“I”形状からなる非晶質金属単位コア10c〜10fで構成されてもよい。
【0087】
また、本発明は、図10に示した第4実施例に係る非晶質金属コアのように、3相トランスフォーマ用磁気回路を構成するように、長い長さを有する一対のヨーク10b,20bと、二つのヨーク10b,20bの両端部と中間部分を相互連結し、短い長さを有する3つのレッグ30b〜30dとを含むことができる。
【0088】
上記したように、本発明に係る非晶質金属コアは、磁気回路を形成するように、少なくとも4個の非晶質金属単位コアで構成することができる。上記の第1及び第2実施例でのように、互いに対向する第1及び第2ヨーク10,20;10a,20aを相互連結する二つの第1及び第2レッグ30,40;30a,40aにボビンが結合され、コイル51,61が巻線されると、図8のように誘導装置が製造される。この場合、好ましくは、コイル51,61が巻線されたボビンを、二つの第1及び第2レッグ30,40;30a,40aに結合させることも可能である。
【0089】
このとき、誘導装置は、マルチギャップタイプ(multi−gap type)構造、ノーマルギャップタイプ(normal gap type)構造、ワンウェイギャップタイプ(oneway gap type)構造、Lタイプ(Ltype)構造などの様々な磁気回路が形成されてもよい。
【0090】
マルチギャップタイプ(multi−gap type)構造の誘導装置は、第1及び第2ヨーク10,20;10a,20aと第1及び第2レッグ30,40;30a,40aの2対の結合部分に、2対のスペーサをそれぞれ挿入して構成され、ワンウェイギャップタイプ(oneway gap type)構造の誘導装置は、第1及び第2ヨーク10、20;10a、20aと第1及び第2レッグ30,40;30a,40aの1対の結合部分に、1対のスペーサを挿入して構成される。
【0091】
ノーマルギャップタイプ(normal gap type)構造の誘導装置は、それぞれ1個のヨークに一対のレッグを組み合わせて1対のC型コアを形成し、1対のC型コアが互いに結合される結合部分に1対のスペーサを挿入して構成される。
【0092】
ここで、少なくとも4個の非晶質金属単位コアが組み合わされる時には、組み合わされた非晶質金属単位コアの外周にサス(SUS)からなる固定バンドにより固定され得る。
【0093】
以下、図7及び図8を参照して、前記非晶質金属コア1を用いた本発明の一実施例に係る誘導装置100を説明する。
【0094】
前記誘導装置100は、非晶質金属コア1、第1及び第2ラミネートコイル51,61、上部カバー70、下部カバー80及び一対の締結ボルト91,95を含む。
【0095】
前記非晶質金属コア1は、磁気回路を形成するように、略長方形の無限ループ形状に組み立てられ、上/下側にそれぞれ第1及び第2ヨーク10,20が配置され、それらの間に第1及び第2レッグ30,40が配置された第1実施例を適用したものである。このとき、第1及び第2レッグ30,40は、外周に沿って螺旋方向にそれぞれ第1及び第2ラミネートコイル51,61が巻線される。この場合、前記第1及び第2ラミネートコイル51,61は、絶縁材質からなるボビン(図示せず)に予め巻線された後、第1及び第2レッグ30,40に組み立てられることが好ましい。
【0096】
前記第1及び第2ラミネートコイル51,61は、先端部にそれぞれ電源線と接続される端子53,63を備えている。また、前記実施例では、コイルとして、ラミネートコイル51,61を使用したことを例示しているが、ラミネートされていない断面が円形の絶縁コイルを使用することも勿論可能である。前記ボビンに巻線されるラミネートまたは一般のコイル51,61は巻線(winding)を形成する。
【0097】
上/下部カバー70,80は、非晶質金属コア1の上面及び下面を覆うようにそれぞれ配置されて、一対の締結ボルト91,95及びナット93,97を通じて、第1及び第2ヨーク10,20と第1及び第2レッグ30,40とが仮組立されてなる非晶質金属コア1を固定させる。この場合、上部カバー70の対向する両側面に、締結ボルト91,95が挿入される貫通孔71a,73aが形成される上部フランジ部71,73が延びて形成され、下部カバー80の両側面にも上部カバー70と同様に、両側に締結ボルト91,95が挿入される貫通孔81a,83aが形成される下部フランジ部81,83が延びて形成されている。
【0098】
また、下部カバー80の両側にはそれぞれ、誘導装置100を本体に固定設置するのに使用される2対の受け台がそれぞれ前後方向に延びて形成されている。
【0099】
一対の締結ボルト91,95はそれぞれ、一端に上部カバー70のフランジ部71,73に固定されるヘッド部91a,95aが形成され、他端の外周にはナット93,97がそれぞれ締結されるねじ部91b,95bが形成される。
【0100】
したがって、非晶質金属コア1の上部及び下部にそれぞれ、上部カバー70と下部カバー80が結合され、一対の締結ボルト91,95が上部カバー70及び下部カバー80の両側の貫通孔71a,73a,81a,83aに締結されると、図8に示した誘導装置100の組み立てが完成する。
【0101】
上記したように構成された本発明の非晶質金属コア1,1aは、多数の長方形の非晶質金属薄板で作製されることによって、成形作業を容易に自動化することができ、成形装置の耐久性を保障することができる。
【0102】
また、本発明は、一対のヨーク10,20と一対のレッグ30,40の非晶質金属薄板積層体11,21,31,41に直接結合突起及び結合凹溝を形成せずに、非晶質金属薄板積層体11,21,31,41の前後面に別途に配置される組立プレート13,15,23,25,33,35,43,45を用いて相互固定させることによって、非晶質金属薄板積層体11,21,31,41には最小限の機械的応力が付加されるようにして、コア損失(core loss)を最小限に抑制させることができるという効果がある。
【0103】
以上のように、本発明は、たとえ限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって、本発明の技術思想と以下に記載される特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であるのはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、成形しやすく、自動化が容易で、組み立てが容易な非晶質金属コアに関するもので、トランスフォーマ、リアクター、インダクターなどを含む誘導装置に適用される。
図1
図2
図3
図4
図6
図7
図8
図9
図10
図5