特許第5877556号(P5877556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877556
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】電線配索装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20160223BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   B60R16/02 620A
   H02G11/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-1909(P2012-1909)
(22)【出願日】2012年1月10日
(65)【公開番号】特開2013-141846(P2013-141846A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】寺田 友康
(72)【発明者】
【氏名】関野 司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】近藤 忍
(72)【発明者】
【氏名】青木 一弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 正広
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 優介
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/010403(WO,A1)
【文献】 特開2007−069854(JP,A)
【文献】 特開2006−042455(JP,A)
【文献】 特開2007−186104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体とスライド体とに亘って電線を配索する電線配索装置であって、
前記支持体又は前記スライド体の一方に設けられて前記電線の余長部分を収容するケースと、
前記ケースにスライド可能に支持されるとともに前記電線を該ケースの内部から前記支持体又は前記スライド体の他方へ導くスライド部材と、を備え、
前記ケースは、該ケースの内部から外部に亘って前記スライド部材を挿通させる開口部と、該開口部に沿って取り付けられて互いに隙間を介して設けられる一対のモールと、を有し、
前記一対のモールは、それぞれ、前記ケースの外側に位置して一方から他方の該モールに向かって延びる第一突片と、該第一突片よりも前記ケースの内側に位置して一方から他方の該モールに向かって延びる第二突片と、を有し、前記第一突片が軟質な素材から形成され、前記第二突片が前記第一突片よりも硬質な素材から形成されるとともに、該一対のモールの自然状態における前記第一突片の先端縁よりも、前記第二突片の先端縁が突出方向に後退して設けられ
前記第一突片は、突出方向の基端部及び先端部よりも中間部の厚さ寸法が厚く形成され、該中間部が前記第二突片に重なって設けられ
前記第一突片の中間部は、前記第二突片に向かって凸に形成されるとともに、該中間部の厚さ寸法が最大となる部分が該第一突片の長さ中央よりも基端部寄りに設けられていることを特徴とする電線配索装置。
【請求項2】
支持体とスライド体とに亘って電線を配索する電線配索装置であって、
前記支持体又は前記スライド体の一方に設けられて前記電線の余長部分を収容するケースと、
前記ケースにスライド可能に支持されるとともに前記電線を該ケースの内部から前記支持体又は前記スライド体の他方へ導くスライド部材と、を備え、
前記ケースは、該ケースの内部から外部に亘って前記スライド部材を挿通させる開口部と、該開口部に沿って取り付けられて互いに隙間を介して設けられる一対のモールと、を有し、
前記一対のモールは、それぞれ、前記ケースの外側に位置して一方から他方の該モールに向かって延びる第一突片と、該第一突片よりも前記ケースの内側に位置して一方から他方の該モールに向かって延びる第二突片と、を有し、前記第一突片が軟質な素材から形成され、前記第二突片が前記第一突片よりも硬質な素材から形成されるとともに、該一対のモールの自然状態における前記第一突片の先端縁よりも、前記第二突片の先端縁が突出方向に後退して設けられ
前記一対のモールは、それぞれ、前記第二突片よりも前記ケースの内側に延びる延出部を有し、該一対の延出部は、互いの間隔寸法が前記第二突片の先端同士の間隔寸法よりも大きく形成されていることを特徴とする電線配索装置。
【請求項3】
前記各延出部の先端部には、延出方向に向かって互いの間隔を拡大する方向に傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項に記載の電線配索装置。
【請求項4】
前記第二突片における突出方向先端部には、該突出方向に向かって前記ケースの外側へ傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電線配索装置。
【請求項5】
前記第一突片の先端縁から前記第二突片の先端縁までの後退距離は、前記第一突片の突出方向の長さ寸法に対して1/2以下に設定されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の電線配索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体とスライド体とに亘って電線を配索する電線配索装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等において、支持体としての車体にスライド体としてのスライドシートがスライド可能に設けられている。スライドシートには、乗員が着座しているか否かを検出する着座センサや、シートベルトを装着しているか否かを検出するシートベルトセンサ等の電子機器が取り付けられている。このため、スライドシートが設けられた車両には、スライドシートに取り付けられた前記電子機器と車体側に設けられた制御装置等の電子機器とを接続するために、車体とスライドシートとに亘って電線を配索する種々の電線配索装置が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電線配索装置は、スライドシートに取り付けられた電子機器と車体側に設けられた制御装置等の電子機器とを接続する電線と、スライドシートの下方に配置されて電線の余長部分を収容したケースと、ケースの内部に設けられたレールと、ケース及びレールにスライド可能に支持されるとともに内側に通した電線をケース内からスライドシート側に導くプロテクタ(スライド部材)とを有している。ケースは、スライドシートのスライド方向に延びた箱状に形成され、このケースには、電線の余長部分をU字状に曲げた状態で収容する余長収容部が設けられている。また、ケースの上部には、スライド方向に延びるとともにプロテクタを挿通させる開口部が形成されている。
【0004】
プロテクタは、電線の余長収容部の一部を把持する固定部と、固定部に連なりL字の筒状に形成された電線収容部と、電線収容部の外表面に設けられてレール内にスライド可能に収容された摺動部と、を有している。このプロテクタは、紐等によりブラケットを介してスライドシートから引っ張られることで、スライドシートと連動してスライドする。このプロテクタは、固定部により把持した電線を電線収容部の内側に通してスライドシート側に導くものである。
【0005】
プロテクタを挿通させる開口部には、一対のモールが取り付けられている。これらのモールは、それぞれ合成樹脂であり、ケースの開口部を覆う弾性変形自在な覆い片を有して形成されている。一対のモール間にプロテクタが挿通されない位置では、自然状態の覆い片同士が互いに接触することで開口部を覆い、これによって、ケース内に異物が進入することを防止する。一方、一対のモール間にプロテクタが挿通された位置では、プロテクタに押し広げられて各覆い片が弾性変形するとともに、プロテクタの表面に覆い片が接触するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−42455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の電線配索装置においては、一対のモールに設けられた覆い片とプロテクタ(スライド部材)とが摺接した際の摩擦抵抗を低減させるために、覆い片を軟質樹脂等の軟質材から形成するとともに、該覆い片の厚さを薄くして弾性変形量を確保する必要があった。このように大きく弾性変形可能な覆い片に対して外力が作用した場合には、該覆い片がケースの開口部から内部側に入り込んでしまい、入り込んだ覆い片がスライド部材のスライドを阻害する原因となる可能性があった。さらに、一対のモールに対して外方から覆い片を押し込むように異物が進入した場合には、この進入に抵抗するような反発力を覆い片が有しておらず、異物の進入を十分に抑制することが困難であった。
【0008】
したがって、本発明は、スライド部材のスライドを阻害することなく、かつ、ケース内への異物の進入を抑制することができる電線配索装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の電線配索装置は、支持体とスライド体とに亘って電線を配索する電線配索装置であって、前記支持体又は前記スライド体の一方に設けられて前記電線の余長部分を収容するケースと、前記ケースにスライド可能に支持されるとともに前記電線を該ケースの内部から前記支持体又は前記スライド体の他方へ導くスライド部材と、を備え、前記ケースは、該ケースの内部から外部に亘って前記スライド部材を挿通させる開口部と、該開口部に沿って取り付けられて互いに隙間を介して設けられる一対のモールと、を有し、前記一対のモールは、それぞれ、前記ケースの外側に位置して一方から他方の該モールに向かって延びる第一突片と、該第一突片よりも前記ケースの内側に位置して一方から他方の該モールに向かって延びる第二突片と、を有し、前記第一突片が軟質な素材から形成され、前記第二突片が前記第一突片よりも硬質な素材から形成されるとともに、該一対のモールの自然状態における前記第一突片の先端縁よりも、前記第二突片の先端縁が突出方向に後退して設けられ、前記第一突片は、突出方向の基端部及び先端部よりも中間部の厚さ寸法が厚く形成され、該中間部が前記第二突片に重なって設けられ、前記第一突片の中間部は、前記第二突片に向かって凸に形成されるとともに、該中間部の厚さ寸法が最大となる部分が該第一突片の長さ中央よりも基端部寄りに設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の電線配索装置は、支持体とスライド体とに亘って電線を配索する電線配索装置であって、前記支持体又は前記スライド体の一方に設けられて前記電線の余長部分を収容するケースと、前記ケースにスライド可能に支持されるとともに前記電線を該ケースの内部から前記支持体又は前記スライド体の他方へ導くスライド部材と、を備え、前記ケースは、該ケースの内部から外部に亘って前記スライド部材を挿通させる開口部と、該開口部に沿って取り付けられて互いに隙間を介して設けられる一対のモールと、を有し、前記一対のモールは、それぞれ、前記ケースの外側に位置して一方から他方の該モールに向かって延びる第一突片と、該第一突片よりも前記ケースの内側に位置して一方から他方の該モールに向かって延びる第二突片と、を有し、前記第一突片が軟質な素材から形成され、前記第二突片が前記第一突片よりも硬質な素材から形成されるとともに、該一対のモールの自然状態における前記第一突片の先端縁よりも、前記第二突片の先端縁が突出方向に後退して設けられ、前記一対のモールは、それぞれ、前記第二突片よりも前記ケースの内側に延びる延出部を有し、該一対の延出部は、互いの間隔寸法が前記第二突片の先端同士の間隔寸法よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の電線配索装置は、請求項2に記載された電線配索装置において、前記各延出部の先端部には、延出方向に向かって互いの間隔を拡大する方向に傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の電線配索装置は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された電線配索装置において、前記第二突片における突出方向先端部には、該突出方向に向かって前記ケースの外側へ傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の電線配索装置は、請求項1〜のいずれか一項に記載された電線配索装置において、前記第一突片の先端縁から前記第二突片の先端縁までの後退距離は、前記第一突片の突出方向の長さ寸法に対して1/2以下に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、一対のモールが互いに隙間を介して設けられるとともに、第一突片が軟質な素材から形成されていることで、第一突片の剛性と先端同士の間隔寸法とを適宜に設定しておくことにより、スライド部材との摺接抵抗を抑制させることができる。また、第二突片の先端縁が第一突片の先端縁よりも後退して設けられていることで、スライド部材が接触しない程度の間隔で第二突片を設けておけば、スライド部材のスライドを阻害することがない。さらに、第二突片が第一突片よりも硬質な素材から形成されていることで、第一突片に外力が作用した場合にも、第二突片によって第一突片の変形が抑制され、第一突片がケースの内方側に入り込ことが防止できる。
【0016】
また、第一突片における基端部及び先端部よりも厚さ寸法が厚く形成された中間部が第二突片に重なって設けられていることで、第一突片がケース内方側へ変形しようとした際に中間部を第二突片に当接させて、第一突片の変形を抑制することができる。従って、第一突片がケース内へ入り込んでスライド部材のスライドを阻害したり、第一突片を変形させつつ異物がケース内に進入したりなどの不具合を防止することができる。また、第一突片の中間部を第二突片に当接させることで、第一及び第二の突片を合わせた剛性が得られるので、進入しようとする異物に対しては大きな抵抗力によって進入を防止することができ、第一突片を薄肉化することができる。このように第一突片を薄肉化することで、第一突片が摺接するスライド部材との摺接抵抗を低減させることができ、スライド部材のスライドを円滑化させることができる。
【0017】
さらに、中間部が第二突片に向かって凸に形成され、第一突片の基端部寄りに最大厚さとなる部分が設けられているので、第一突片がケース内方に向かって変形した場合に中間部を第二突片に当接させやすくでき、小さな変形量でも中間部を第二突片に当接させることができる。従って、第一突片がケース内へ入り込むことを確実に防止することができるとともに、ケース内への異物の進入をより確実に防止することができる。
【0018】
請求項4に記載された発明によれば、第二突片の先端部に傾斜面が形成されているので、ケース内に進入した異物を排出する際に、この異物を第二突片同士の隙間部分に向かって傾斜面が案内することができ、案内した異物を第一突片間を通してケース外へ排出しやすくできる。
【0019】
請求項2,3に記載された発明によれば、第二突片よりもケースの内側に延びる延出部が第二突片よりも大きな間隔寸法を有し、これらの延出部の先端部に傾斜面が形成されているので、ケース内に進入した異物を延出部同士の間に向かって案内することができ、案内した異物を第二突片間及び第一突片間を通してケース外へ排出しやすくできる。
【0020】
請求項に記載された発明によれば、第一突片の突出方向の長さ寸法に対して第二突片後退距離が1/2以下に設定されている、即ち、第一突片の基端部側の半分以上に亘って第二突片が設けられているので、ケース内方側への第一突片の変形を第二突片によって確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態にかかる電線配索装置を示す斜視図である。
図2】前記電線配索装置のケース及びプロテクタを示す斜視図である。
図3】前記ケースの要部を断面図である。
図4】前記電線配索装置における異物排出手順を示す断面図である。
図5】(A)〜(C)は、前記異物排出手順における作用を示す断面図である。
図6】前記電線配索装置における他の異物排出手順を示す断面図である。
図7】前記異物排出手順における作用を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施の形態にかかる電線配索装置を図1図7を用いて説明する。
【0023】
電線配索装置1は、図示しないスライド体としての車両用スライドシートに取り付けられた電子機器と、図示しない支持体としての車体側に設けられた電子機器と、を接続するために車体とスライドシートとに亘って電線(図示省略)を配索する装置である。なお、本実施形態では、電線配索装置1は、自動車に適用されるものを例示するが、本発明の電線配索装置は、自動車に限らず、各種の機器や構造物に適用可能であり、また、自動車においても車両用スライドシートに限らず、スライドドアなどの各種スライド体へ電線を配索するものとして適用可能である。
【0024】
電線配索装置1は、図1図3に示すように、一端がスライドシートの電子機器に接続されて他端が車体側の制御装置に接続された電線と、スライドシートの下方に配置されて電線の余長部分を収容したケース2と、ケース2にスライド可能に取り付けられて内側に通した電線をケース2内からスライドシート側に導くスライド部材としてのプロテクタ3と、スライドシートに取り付けられてプロテクタ3に接続されるブラケット4と、ケース2に取り付けられてプロテクタ3をケース2の内外に挿通させる一対のモール5(5A,5B)と、一対のモール5の一端部(図1、2中、左端部)上面を覆って設けられる意匠部品である端部カバー6と、当該一端部側におけるケース2の内部に設けられる異物排出部材7と、を備えている。
【0025】
ケース2は、金属板にプレス加工が施されて形成されたアッパーケース2A及びロアケース2Bが重ね合わされ、これらが互いにボルト固定されて略中空箱状に構成されている。このケース2は、スライドシートのスライド方向に延びて長尺状に形成されており、このスライド方向を図1、2中の矢印Kで表す。また、ケース2には、電線の余長部分をU字状に曲げた状態で収容する余長収容部が設けられ、ケース2の上部には、スライド方向に延びた開口部20が形成されている。
【0026】
アッパーケース2Aは、スライド方向に延びた板状に形成されている。ロアケース2Bは、図4、5にも示すように、アッパーケース2Aと対向する底壁21と、底壁21の幅方向両端部立設された側壁22と、を有し、一方の側壁22とアッパーケース2Aの幅方向端縁との間に開口部20が形成されている。また、ロアケース2Bの底壁21には、スライド方向に延びるとともにプロテクタ3をスライド案内するレール23が固定されている。このレール23は、ロアケース2Bの側壁22と間隔を空けて配置されており、側壁22とレール23との間に断面略凹溝状の溝部24が形成されている。
【0027】
プロテクタ3は、合成樹脂製の2つの部品が組み付けられて構成されている。このプロテクタ3は、電線の一部を把持する固定部と、固定部に連なりL字の筒状に形成された電線収容部と、電線収容部の外表面に設けられてレール23内にスライド可能に収容される摺動部と、を有している。このプロテクタ3は、スライドシートに固定されたブラケット4から引っ張られることで、スライドシートと連動してケース2の長手方向に沿ってスライドする。また、電線収容部は、その一部が溝部24の内側に位置するとともに、上方に延びた部分がケース2の開口部20及び一対のモール5A,5B間に挿通されてケース2の外側に延びて設けられている。従って、プロテクタ3は、そのスライドに伴って、開口部20から溝部24内に進入した異物を押してケース2の端部側に移動させる。
【0028】
ブラケット4は、図1に示すように、スライドシートに固定されるスライドシート固定部41と、枠状に形成されて内側にプロテクタ3の電線収容部を位置付けるプロテクタ保持部42と、を有して全体略L字状に形成されている。このブラケット4は、スライドシートがスライドすると、プロテクタ保持部42によってプロテクタ3を引っ張り、これによって、プロテクタ3がスライドシートと連動してスライドする。
【0029】
一対のモール5A,5Bは、それぞれ合成樹脂の弾性材料から構成されている。図3に示すように、モール5Aは、アッパーケース2Aの上面を覆って取り付けられる本体部51と、本体部51から折れ曲がりアッパーケース2Aの開口部20側の端縁に係止する係止部(延出部)52と、本体部51及び係止部52の交差位置から延びて開口部20を覆う弾性変形自在な第一突片としての第1リップ部53と、第1リップ部53よりも下方にて係止部52上端部から突出する第二突片としての第2リップ部54と、を有している。このモール5Aは、硬質樹脂と軟質樹脂との二色成形によって製造されるものであって、本体部51、係止部52及び第2リップ部54が硬質樹脂から形成され、第1リップ部53が軟質樹脂から形成されている。
【0030】
モール5Bは、ロアケース2Bの側壁22上端部に取り付けられる本体部55と、本体部55から立設される立上部56と、本体部55から側壁22内面に沿って下方に延びる延出部57と、立上部56から延びて開口部20を覆う弾性変形自在な第一突片としての第1リップ部58と、第1リップ部58よりも下方にて立上部56基端部から突出する第二突片としての第2リップ部59と、を有している。このモール5Bは、硬質樹脂と軟質樹脂との二色成形によって製造されるものであって、本体部55、立上部56、延出部57及び第2リップ部59が硬質樹脂から形成され、第1リップ部58が軟質樹脂から形成されている。
【0031】
以上のモール5A,5Bにおいて、第1リップ部53,58は、互いに微小な隙間を介して対向するとともに開口部20を覆うことによって、ケース2内に異物が進入することを防止する。また、第1リップ部53,58は、その基端部53A,58A(第1リップ部53における本体部51側の端部であり、第1リップ部58における立上部56側の端部)、及び各々の突出方向の先端部53B,58Bよりも、それぞれの中間部53C,58Cの厚さ寸法が下方に向かって厚く形成されている。この中間部53C,58Cは、第2リップ部54,59に向かって凸に形成され、即ち、下向き凸な略台形状に形成されるとともに、その厚さ寸法が最大となる部分が該第1リップ部53,58の長さ中央よりも基端部53A,58A寄りに設けられている。
【0032】
このような第1リップ部53,58は、軟質であるとともに薄く形成された基端部53A,58Aが撓みやすくなっていることで、この基端部53A,58Aを中心として上方に回動し、その間に挿通されたプロテクタ3に沿って弾性変形可能に構成されている。一方、外部からの異物等によって第1リップ部53,58が下方に押された場合には、中間部53C,58Cが第2リップ部54,59に当接することで、第1リップ部53,58の回動が規制され、これにより第1リップ部53,58がケース2内へ入り込まないようになっている。
【0033】
また、第1リップ部53,58の基端部53A,58Aから先端縁までの長さ寸法L1は、第1リップ部53,58同士の隙間から異物が進入しにくい寸法であって、かつ、該第1リップ部53,58がプロテクタ3に摺接する際の摩擦抵抗を小さくできる範囲で設定されている。一方、第2リップ部54,59の長さ寸法L2は、第1リップ部53,58の長さ寸法L1よりも小さく、かつ、第1リップ部53,58の長さ寸法L1の1/2程度であるとともに、第2リップ部54,59同士の間に挿通されるプロテクタ3に接触しない程度に設定されている。ここで、第1リップ部53,58の先端縁から第2リップ部54,59の先端縁までの後退距離L3は、第1リップ部53,58の長さ寸法L1の1/2以下に設定されていることが好ましい。
【0034】
また、第2リップ部54,59の先端部には、各々の突出方向に向かって上方に傾斜した傾斜面54A,59Aが形成されている。即ち、傾斜面54A,59Aは、ケース2の内部から外部に向かって徐々に互いの間隔が小さくなる傾斜を有して形成されている。また、モール5Aにおける係止部(延出部)52の下端部には、下方(延出方向)に向かって幅方向に拡がる傾斜面52Aが形成され、モール5Bにおける延出部57の下端部には、下方(延出方向)に向かって幅方向に拡がる傾斜面57Aが形成されている。即ち、傾斜面52A,57Aは、係止部52及び延出部57の延出方向である下方に向かって互いの間隔が拡大し、上方に向かって互いに接近する方向に傾斜して形成されている。
【0035】
端部カバー6は、合成樹脂の弾性材料から構成され、一対のモール5A,5Bの端部上面を覆ってアッパーケース2Aに取り付けられている。この端部カバー6は、一対のモール5A,5Bの端部が捲れ上がるのを防止するとともに、車体の床に設けられる図示しないフロアカーペットの見切り部品や押さえ部品として機能する。
【0036】
異物排出部材7は、プロテクタ3によってケース2の端部に移動された異物を開口部20及びモール5A,5Bの隙間からケース2外に排出するためのものである。この異物排出部材7は、合成樹脂製の一体成形部品であって、図3に示すように、溝部24に嵌め込まれて装着され、溝部24から立ち上がる本体部71と、この本体部71から下方に突出して溝部24底面に係合される係合突部72と、本体部71の側方からレール23上面に沿って膨出した膨出部73と、本体部71から側壁22及びモール5Bに沿って延設された板状延出部74と、を有して形成されている。本体部71には、図4にも示すように、溝部24の底面に密接される底部から上方に向かってスライド方向端部側に傾斜した傾斜面部75が形成されている。
【0037】
次に、電線配索装置1において、ケース2内の溝部24に進入した異物の排出手順について、図4〜7も参照して説明する。ここで、図4、5には、異物としてのライターE1を排出する場合が示され、図6、7には、異物としてのキー(鍵)E2を排出する場合が示されている。なお、異物としては、ライターE1やキーE2に限らず、コイン(硬貨)やペンなど、モール5A,5Bの第1リップ部53,58間を挿通する様々なものが異物となり得る。
【0038】
図4に示すように、ケース2内の溝部24に進入したライターE1は、スライドシートのスライドに伴って移動するプロテクタ3によってケース2の端部側に押され、異物排出部材7の傾斜面部75に沿って上方に立ち上げられる。このライターE1は、モール5A,5Bの第1リップ部53,58間を通ってケース2の外部に排出されることになる。ライターE1の先端が傾斜面部75に到達する以前においては、図5に示すように、溝部24に進入して幅方向に倒れたライターE1を異物排出部材7が引き起こすようになっている。ここで、ライターE1の幅方向のサイズが大きい場合には、開口部20に引っ掛かって倒れないこともあるが、その場合にはライターE1を引き起こす必要がなく、略直立した状態のままのライターE1を図4に示すように排出すればよい。一方、ライターE1の幅方向のサイズが小さい場合には、開口部20に引っ掛からずに倒れることから、ライターE1を引き起こす際にも引っ掛からないように、即ち、ライターE1の回動軌跡に干渉しないように、モール5A,5Bの形状が設定されている。
【0039】
具体的には、溝部24に進入したライターE1が図5(A)に示すようにレール23側に倒れた場合、このライターLが異物排出部材7に向かって押されてくると、図5(B)に示すように、先ず、板状延出部74の先端縁がライターE1の一方側に当接する。さらに、膨出部73の先端縁がライターE1の他方側に当接し、膨出部73の傾斜面に沿わせてライターE1を案内し、プロテクタ3に押された移動に伴ってライターE1を立ち上げる。さらに、図5(C)に示すように、膨出部73及び板状延出部74で案内しつつライターE1を立ち上げる。この際、モール5Aの係止部52先端部に傾斜面52Aが形成されていることから、ライターE1が係止部52と干渉しないようになっている。その後、ライターE1は、その先端が傾斜面部75に沿って案内されることで、長さ方向に立上げられてケース2外に排出される。
【0040】
次に、図6、7に示すように、他の異物であるキーE2の場合には、その厚さ寸法が薄く、かつ、その先端が細長い形状であることから、傾斜面部75で案内する際にキーE2が幅方向左右に傾きやすくなっている。このような場合でも、キーE2の先端がモール5A,5Bに引っ掛からないように、係止部52や延出部57の形状、第2リップ部54,59の先端同士の隙間及び傾斜面54A,59Aの形状が適宜に設定されている。即ち、前述のライターE1と同様に移動されたキーE2は、その先端が膨出部73や板状延出部74により案内されつつ傾斜面部75に沿って立ち上げられる。この際、キーE2の先端が左右に振れたとしても、延出部57の傾斜面57Aや係止部52の傾斜面52Aによって幅方向の中央側に寄せられる。さらに、第2リップ部54,59の隙間を通過する際においても、キーE2の先端が傾斜面54A,59Aに案内されて幅方向の中央側に寄せられ、第1リップ部53,58間に向かって押し上げられたキーE2がケース2外に排出される。
【0041】
以上のような本実施形態の電線配索装置1によれば、モール5A,5Bにおける第1リップ部53,58が軟質樹脂から形成されるとともに、その基端部53A,58Aが薄肉化されていることで、プロテクタ3に沿って第1リップ部53,58が弾性変形しやすくなり、プロテクタ3との摺動抵抗を抑制してプロテクタ3を円滑にスライドさせることができる。また、第2リップ部54,59がプロテクタ3が接触しないことから、プロテクタ3のスライドを阻害することがない。さらに、第1リップ部53,58の中間部53C,58Cが第2リップ部54,59に当接し、第1リップ部53,58がケース2内へ入り込まないようになっているので、外方から作用する外力による第1リップ部53,58の変形が抑制でき、異物の進入を防止することができる。また、ケース2内に異物が進入した場合であっても、モール5A,5Bにおける延出部57の傾斜面57Aや係止部52の傾斜面52A、第2リップ部54,59の傾斜面54A,59Aで異物を幅方向内側に案内することで、異物をケース2外へ円滑に排出することができる。
【0042】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0043】
例えば、前記実施形態では、電線配索装置1において、ケース2の端部に設けた異物排出部材7によって異物を排出する構成としたが、異物排出部材は本発明の必須の構成ではなく、ケース2の一部に傾斜面部等を形成して異物を排出するようにしてもよいし、ケース2に異物排出孔を設けて異物を排出するようにしてもよい。また、ケース2や、その内部のレール23及び溝部24、スライド部材(プロテクタ3)等は、前記実施形態の構成に限らず、支持体やスライド体の構成に応じた適宜な形態を有していればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 電線配索装置
2 ケース
3 プロテクタ(スライド部材)
5 モール
20 開口部
52 係止部(延出部)
52A 傾斜面
53,58 第1リップ部(第一突片)
53A,58A 基端部
53B,58B 先端部
53C,58C 中間部
54,59 第2リップ部(第二突片)
54A,59A 傾斜面
57 延出部
57A 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7