【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、従って、生成物1kgあたりのトリクロロプロパンの量が0.01g未満である、エピクロロヒドリンおよびトリクロロプロパンを含有する生成物に関する。
【0007】
本発明の基本的な特徴の1つは、エピクロロヒドリン生成物中に存在する少量のトリクロロプロパンにある。他のハロゲン化炭化水素のうち、エピクロロヒドリンにおけるトリクロロプロパンの存在は、例えば、電気部品および印刷回路産業用に意図されるエポキシ樹脂の製造などのいくつかの用途において厄介であることが実際に証明されている。いく種かのハロゲン化炭化水素のうちトリクロロプロパンは、例えば、発癌性であるか発癌性であることが疑われており、発達毒性、繁殖毒性、心臓毒性、内分泌毒性、免疫毒性、ならびに、肝臓、腎臓、神経、気道および皮膚に対する毒性を有することが疑われている。これらは最終生成物中に残留する可能性があり、最終生成物の特性の劣化に付随して分解する可能性がある。これらはいくらかの毒性を示すか、いくらかの毒性を示す化合物中で分解されることが可能であり、特に最終生成物が食品および飲料と接触することが意図される場合に安全性の問題を提起する。しかも、これらは、例えば廃水、または、パルプおよび紙産業においてリサイクルされるパルプを含有する水などの工業用水に蓄積され、汚染するおそれがある。後者の場合には、これらのより高い濃度は、リサイクルされた水を用いて形成される紙の汚染を増加する可能性がある。
【0008】
生成物中のエピクロロヒドリン含有量は、一般に、900g超のエピクロロヒドリン/生成物1kg、好ましくは少なくとも950g/kg、より好ましくは少なくとも990g/kgおよび最も好ましくは少なくとも999g/kgである。
【0009】
本発明による生成物中のトリクロロプロパンは、一般に0.008g/生成物1kg以下、度々、0.006g/kg以下、頻繁に0.004g/kg以下、通例0.002g/kg以下、多くの場合0.001g/kg以下、および、特に0.0005g/kg以下の量で存在する。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。
【0010】
トリクロロプロパンは、トリクロロプロパンのいずれかの異性体から単独または組み合わせで選択され得、本発明による生成物のTCPaの含有量は、すべての異性体の和を指す。
【0011】
トリクロロプロパンは、1,2,3−トリクロロプロパン、1,1,1−トリクロロプロパン、1,1,3−トリクロロプロパン、1,1,2−トリクロロプロパンおよびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択されることが可能である。トリクロロプロパンは、度々、1,1,1−トリクロロプロパンである。
【0012】
本発明による生成物は、トリクロロプロパンおよびエピクロロヒドリンに追加して、トリクロロプロパンとは異なる少なくとも1種のハロゲン化炭化水素を含有し得る。このハロゲン化炭化水素は、クロロプロペン、トリクロロプロペン、クロロプロパノール、クロロプロペノール、ジクロロプロペン、ジクロロプロパン、ジクロロプロパノール、モノクロロプロパンジオール、クロロエーテル、モノクロロベンゼン、およびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択されることが可能である。
【0013】
生成物中のこのハロゲン化炭化水素の含有量は、通常は1g/生成物1kg未満、通例0.8g/生成物1kg以下、通常は0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、頻繁に0.2g/kg以下、多くの場合0.1g/kg以下、より頻繁に0.05g/kg以下、特に0.01g/kg以下、および殊更に0.001g/kg以下である。この含有量は、一般に、0.001mg/kg以上である。
【0014】
ハロゲン化炭化水素は:
・クロロプロペン、度々2−クロロ−1−プロペン、頻繁に1−クロロ−1−プロペンシス、通常は1−クロロ−1−プロペントランス、殊更に3−クロロ−1−プロペンおよびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物
・クロロプロパン、度々2−クロロプロパン、頻繁に1−クロロプロパンおよびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物
・塩化メチル、度々ジクロロメタン、頻繁にトリクロロメタン、通常はテトラクロロメタン、およびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物
・ジクロロエタン、度々1,2−ジクロロエタン、
・クロロエタノール、度々2−クロロエタノール、
・トリクロロプロペン、度々1,3,3−トリクロロ−1−プロペン−シス、頻繁に1,3,3−トリクロロ−1−プロペン−トランス、通常は1,2,3−トリクロロプロペン−シス、殊更に1,2,3−トリクロロプロペン−トランス、およびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物
・クロロプロパノール、度々3−クロロ−1−プロパノール、
・クロロプロペノール、度々2−クロロ−2−プロペン−1−オール、頻繁に3−クロロ−2−プロペン−1−オールシスおよび殊更に3−クロロ−2−プロペン−1−オールトランス、ならびにこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物
・ジクロロプロペン、度々シス−1,3−ジクロロプロペン、頻繁にトランス−1,3−ジクロロプロペン、通常は3,3−ジクロロ−1−プロペン、頻繁に2,3−ジクロロ−1−プロペン、通常は1,3−ジクロロ−1−プロペン−シス、殊更に1,3−ジクロロ−1−プロペン−トランス、およびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物、
・ジクロロプロパン、好ましくは1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロプロパン、2,2−ジクロロプロパン、およびいずれかのこれらの混合物
・ジクロロプロパノール、度々1,3−ジクロロプロパン−2−オール、2,3−ジクロロプロパン−1−オール、およびこれらの混合物
・モノクロロプロパンジオール、度々3−クロロ−1,2−プロパンジオール、頻繁に2−クロロ−1,3−プロパンジオール、およびこれらの混合物、ならびに
・クロロエーテル、好ましくは組成式:C
6H
10Cl
2O
2、C
6H
12Cl
2O、C
6H
9Cl
3O
2、C
6H
11Cl
3O
2のクロロエーテルおよびこれらの少なくとも2種の混合物から選択される
・組成式C
4H
7ClO
2、C
6H
9Cl
3、C
6H
9Cl
3O
2、C
9H
17Cl
3O
4、C
9H
15Cl
5O、C
3H
3Cl
3のもの、およびこれらの少なくとも2種の混合物
・ジクロロエポキシプロパン
などの任意により、酸素、好ましくは脂肪族ハロゲン化炭化水素を含有する脂肪族または芳香族ハロゲン化炭化水素であり得る。
【0015】
ハロケトンおよびエピクロロヒドリンは、ハロゲン化炭化水素とはみなさない。
【0016】
芳香族ハロゲン化炭化水素は、少なくとも1種の芳香族性の環およびハロゲン原子を含む。ハロゲン原子は、芳香族環に直接的に結合していることが好ましい。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素およびこれらの混合物から選択され得る。塩素が好ましい。芳香族環は、単核性または多核性であり得、単核性であることが好ましい。芳香族ハロゲン化炭化水素は、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサクロロ−ベンゼンおよび/またはナフタレンから選択され得る。モノクロロベンゼンが特に好ましい。
【0017】
1つの理論的説明に束縛されることは望まないが、モノクロロベンゼンは、特にこれがジクロロプロパノールの脱塩化水素により得られる場合に、エピクロロヒドリンを製造するプロセスに由来すると考えられている。より具体的には、モノクロロベンゼンは、特にこれが塩化水素を含有する塩素化剤を用いてグリセロールを塩素化するプロセスにより得られる場合に、ジクロロプロパノール中に存在し得ると考えられている。さらにより具体的には、クロロベンゼンは、特にこれが、例えば4,4−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)またはトルエンジイソシアネート(TDI)またはヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(HDI)などの、イソシアネート、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートの製造などの他の製造プロセスに由来する場合には、塩化水素中に存在し得ると考えられている。
【0018】
本発明による生成物は、クロロプロペンを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。クロロプロペンは、2−クロロ−1−プロペン、1−クロロ−1−プロペンシス、1−クロロ−1−プロペントランス、3−クロロ−1−プロペン、およびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択され得る。
【0019】
本発明による生成物は、トリクロロプロペンを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、通例0.5g/kg以下、多くの場合0.4g/kg以下、度々0.2g/kg以下、頻繁に0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の含有量が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。トリクロロプロペンは、1,3,3−トリクロロ−1−プロペン−シス、1,3,3−トリクロロ−1−プロペン−トランス、1,2,3−トリクロロプロペン−シス、殊更に1,2,3−トリクロロプロペン−トランスおよびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択され得る。
【0020】
本発明による生成物は、クロロプロペノールを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。クロロプロペノールは、2−クロロ−2−プロペン−1−オール、3−クロロ−2−プロペン−1−オールシス、3−クロロ−2−プロペン−1−オールトランスおよびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択され得る。
【0021】
本発明による生成物は、ジクロロプロペンを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。ジクロロプロペンは、3,3−ジクロロ−1−プロペン、2,3−ジクロロ−1−プロペン、1,3−ジクロロ−1−プロペン−シス、1,3−ジクロロ−1−プロペン−トランスおよびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択され得る。
【0022】
本発明による生成物は、ジクロロプロパンを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。ジクロロプロパンは、1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロプロパン、2,2−ジクロロプロパン、およびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択され得る。
【0023】
本発明による生成物は、ジクロロプロパノールを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。ジクロロプロパノールは、1,3−ジクロロプロパン−2−オール、2,3−ジクロロプロパン−1−オールおよびいずれかのこれらの混合物から選択され得る。
【0024】
本発明による生成物は、モノクロロプロパンジオールを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。モノクロロプロパンジオールは、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、2−クロロ−1,3−プロパンジオールおよびいずれかのこれらの混合物から選択され得る。
【0025】
本発明による生成物は、通常、クロロエーテルを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。クロロエーテルは、組成式C
6H
10Cl
2O
2、C
6H
12Cl
2O、C
6H
9Cl
3O
2、C
6H
11Cl
3O
2のクロロエーテル、およびいずれかのこれらの混合物から選択され得る。
【0026】
本発明による生成物は、通常、クロロベンゼン、度々、モノクロロベンゼンを、通常は0.8g/生成物1kg以下の含有量、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の量で含有する。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。
【0027】
本発明による生成物は、加えて、例えば:
・アセトアルデヒド、アクロレイン、イソブタナール、イソペンタナールのようなアルデヒド類、
・メチルグリシジルエーテルのようなアルキルグリシジルエーテル類、
・アセトン、クロロアセトン、シクロペンタノン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、2−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、3,5−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−オン;組成式C
5H
10O、C
6H
12Oのケトンのようなケトン類
・イソプロパノール、アリルアルコール、グリセロールのような脂肪族アルコール類、
・フェノールのような芳香族アルコール類
・ヒドロキシアセトンのようなヒドロキシケトン類、および
・プロピレンオキシド、1,2−エポキシヘキセン、グリシドールのようなエピクロロヒドリンとは異なるエポキシド類、
・メチルシクロペンタン、エチルベンゼンのような炭化水素類、
・組成式C
6H
10O、C
7H
10O、C
7H
14O
2、C
6H
8O
2、C
9H
10O
2の化合物類
などの上記に定義されたものなどのハロゲン化炭化水素ではない化合物をも含有し得る。
【0028】
本発明による生成物は、少なくとも1種のアルデヒドを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。アルデヒドは、アセトアルデヒド、アクロレイン、イソブタナール、イソペンタナールおよびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択され得る。
【0029】
本発明による生成物は、アクロレインを、通常は0.07g/生成物1kg未満、一般に0.01g/kg以下、通例0.005g/kg以下の量で含有することが可能である。この含有量は、通常は少なくとも0.001g/kgである。
【0030】
本発明による生成物は、少なくとも1種のアルキルグリシジルエーテルを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。アルキルグリシジルエーテルは、メチル−、エチル−、プロピル−、ブチルグリシジルエーテル、およびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択され得る。
【0031】
本発明による生成物は、メチルグリシジルエーテルを、通常は0.5g/生成物1kg以下、一般に0.1g/kg以下および通例0.05g/kg以下の量で含有することが可能である。この含有量は、通常は、少なくとも0.001g/kgである。
【0032】
本発明による生成物は、ケトンを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。ケトンは、アセトン、クロロアセトン、2−ブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、3,5−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、組成式C
5H
10O、C
6H
12Oのケトン、およびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択され得る。
【0033】
本発明による生成物は、シクロペンタノンを、通常は少なくとも0.001mg/kg、一般に少なくとも0.01mg/kg、通例少なくとも0.1mg/kgおよび多くの場合少なくとも0.001g/kgの量で含有することが可能である。この含有量は、通常は、0.5g/kg以下、一般に0.3g/kg以下、通例0.1g/kg以下、多くの場合0.05g/kg以下、度々0.01g/kg以下および特に0.005g/kg以下である。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kg、一般に少なくとも0.01mg/kg、通例少なくとも0.1mg/kg、多くの場合少なくとも0.5mg/kgおよび特に少なくとも1mg/kgである。
【0034】
本発明による生成物は、クロロアセトンを、通常は0.05g/生成物1kg未満、一般に0.03g/kg以下および通例0.01g/kg以下の量で含有することが可能である。この含有量は、通常は、少なくとも0.001g/kgである。
【0035】
本発明による生成物は、脂肪族アルコールを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。脂肪族アルコールは、イソプロパノール、アリルアルコール、グリセロール、およびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択され得る。
【0036】
本発明による生成物は、ヒドロキシケトンを、通常は0.8g/生成物1kg以下の含有量、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。ヒドロキシケトンは、度々ヒドロキシアセトンである。
【0037】
本発明による生成物は、エピクロロヒドリンとは異なるエポキシドを、通常は0.8g/生成物1kg以下、一般に0.6g/kg以下、多くの場合0.5g/kg以下、度々0.4g/kg以下、通例0.2g/kg以下、有利には0.1g/kg以下、特に0.05g/kg以下、殊更に0.01g/kg以下の含有量で含有することが可能である。0.001g/kg以下の値が良好な結果をもたらす。この含有量は、通常は、少なくとも0.001mg/kgである。エポキシドは、プロピレンオキシド、1,2−エポキシ−ヘキサン、グリシドール、およびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択され得る。
【0038】
本発明による生成物は、グリシドールを、通常は0.5g/生成物1kg以下、一般に0.2g/kg以下、頻繁に0.10g/生成物1kg以下、通例0.05g/生成物1kg以下、度々、0.01g/kg以下および頻繁に0.005g/kg以下の量で含有することが可能である。
【0039】
本発明による生成物は、通常は、グリセロール、ヒドロキシアセトンおよびグリシドールを含有し、これらの含有量の和は、通常は0.1g/生成物1kg未満、通例0.01g/kg以下および一般に0.005g/kg以下である。この含有量は、通常は少なくとも0.001g/kgである。
【0040】
本発明はまた、生成物1kgあたりのトリクロロプロパンの量が0.01g未満である、エピクロロヒドリンを含有する生成物を製造する方法であって、以下の
a)エピクロロヒドリンおよび少なくとも1種の塩を形成するために、液体反応媒体中に、1,3−ジクロロ−2−プロパノール含有量が10重量%以上である1,3−ジクロロ−2−プロパノールおよび2,3−ジクロロ−1−プロパノールの混合物を、少なくとも1種の塩基性化合物と反応させるステップと、および
b)ステップa)からの液体反応媒体の少なくとも一部を、沈殿操作前にステップa)からの反応媒体の一部に含有されたエピクロロヒドリンのほとんどを含有する第1の画分が、沈殿操作前にステップa)からの反応媒体の一部に含有された塩のほとんどを含有する第2の画分から分離される沈殿操作に供するステップと、および
c)ステップb)において分離された第1の画分を、希釈、濃縮、蒸発、蒸留、ストリッピング、液体/液体抽出および吸着操作から単独または組み合わせで選択される少なくとも1種の補足的処理に供するステップと
を含む方法に関する。
【0041】
以降の本書面において、「ジクロロプロパノール」という表記は、ジクロロプロパノール混合物を表すために用いることとする。
【0042】
「ほとんど」という表記は、「半分および半分を超えて」、すなわち、50重量%または50重量%超であるという意味に理解される。
【0043】
ハロゲン化炭化水素は、特に、ジクロロプロパノール製造方法の種々のステップの最中に生成され得る。
【0044】
本発明による方法のステップa)からのジクロロプロパノールは、例えば、グリセロールのクロロ化により、および/または塩化アリルの次亜塩素酸処理により生成され得、塩化アリルそれ自体はプロピレンのクロロ化により生成される。グリセロールは、植物由来または動物由来の油またはグリースから入手され得る。油生成性植物または作物は、例えばコーン、カシューナッツ、カラスムギ、ヤシ、ルピナス、ゴム種子、ケナフ、キンセンカ、綿、アサ、ダイズ、コーヒー、亜麻仁、ヘーゼルナッツ、ユーホルビア、カボチャ種子、コリアンダー、カラシナ、カメリナ、ゴマ、ハマナ、ベニバナ、バッファローゴーアド、イネ、アブラギリ、ヒマワリ、カカオ、ピーナッツ、けし、ナタネ、オリーヴ、ピアサバ、ホルトソウ、ヒマの実、バクリー(bacuri)、ペカン、ホホバ、ババスーヤシ、例えば南洋アブラギリ(jatropha Curcas L.)といったジャトロファ属、ナンキンハゼまたはナンキンハゼ(Triadica Sebifera L.)、マカダミアナッツ、ブラジルナッツ、アボカド、ココナッツ、オイチシカ、ブリティヤシ、ペキ、マカウバヤシ(macauba palm)およびアブラヤシである。油生成性藻類は、例えばネオクロリスオレオアブンダンス(Neochloris oleoabundans)、イカダモの一種(Scenedesmus dimorphus)、ミドリムシの一種(Euglena gracilis)、海産性珪藻の一種(Phaeodactylum tricornutum)、円石藻(Pleurochrysis carterae)、ハプト藻(Prymnesium parvum)、テトラセルミスチュイ(Tetraselmis chui)、プラシノ藻類(Tetraselmis suecica)、イソクリシスガルバナ(Isochrysis galbana)、ナノクロロプシスサリナ(Nannochloropsis salina)、ナノクロリスアトムス・ブッチャー(Nannochloris atomus Butcher)、ナノクロリスマクラタ・ブッチャー(Nannochloris maculata Butcher)、ナノクロロプシスガジタナ・ルビアン(Nannochloropsis gaditana Lubian)、およびナノクロロプシスオクラタ(Nannochloropsis oculata);ボトリオコックスブラウニイ(Botryococcus braunii)、ボトリオコックス(Botryococcus)、ドゥナリエラテルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)、ナンノクロリス種(Nannochloris sp.)、スピルリナ(Spirulina)種、緑藻綱(緑藻類)およびバチリアロフィー(Bacilliarophy)(珪藻類)などの藻類株種である。メチルグリシジルエーテルは、Solvay SAにより出願された、その内容が参照により本明細書において援用されるFR06/05325およびFR07/53863に記載のとおり、動物または植物に由来する脂肪または油のエステル交換によって得られるグリセロールの不純物であるグリセロールメチルエーテルから誘導され得る。例えばクロロアセトンなどのハロケトンは、グリセロールのクロロ化によるジクロロプロパノール製造方法において、および/または本発明による方法のステップa)において生成され得る。
【0045】
本発明による生成物の製造に用いられる方法のステップa)およびb)は、Solvay SA出願のFR07/53375およびFR07/55448に記載のものなどの条件下に実施されればよい。ステップa)からの液体反応媒体は、例えばトリクロロプロパンなどの有機溶剤を特に含有し得る。
【0046】
ステップa)において用いられるジクロロプロパノールは、水性組成物として、有機組成物またはこれらの混合物としてステップa)に供給されることが可能である。
【0047】
水性組成物のジクロロプロパノール含有量は、通常は少なくとも1g/kg、度々少なくとも10g/kg、頻繁に少なくとも50g/kgおよび特に少なくとも90g/kgである。この含有量は、一般に500g/kg以下、通常は200g/kg以下、度々150g/kg以下、頻繁に120g/kg以下および特に110g/kg以下である。100g/kgの含有量が簡便である。
【0048】
有機組成物のジクロロプロパノール含有量は、通常は少なくとも500g/kg、度々少なくとも750g/kg、頻繁に少なくとも800g/kgおよび特に少なくとも850g/kgである。この含有量は、通常は999g/kg以下、度々950g/kg以下、頻繁に900g/kg以下および特に880g/kg以下である。870g/kgの含有量が簡便である。
【0049】
特定の実施形態において、本発明による方法のステップa)において用いられるジクロロプロパノールの混合物は、SOLVAY SAの米国仮特許出願第61/007,661号明細書に記載されているとおり、少なくとも1種のクロロアルコキシプロパノールを含有していることが可能である。ジクロロプロパノールにおけるクロロアルコキシプロパノールの含有量は、通常は0.2g/kg以下、一般に0.1g/kg以下、度々0.06g/kg以下および頻繁に0.04g/kg以下である。この含有量は、通常は、0.001g/kg以上である。
【0050】
クロロアルコキシプロパノールは、度々、クロロメトキシプロパノールである。クロロメトキシプロパノールは、2−クロロ−3−メトキシ−1−プロパノール、1−クロロ−3−メトキシ−2−プロパノール、3−クロロ−2−メトキシ−1−プロパノール、およびこれらの少なくとも2種のいずれかの混合物から選択されることが可能である。
【0051】
本発明による生成物を得るための方法のステップa)〜c)は、独立して、連続モードまたはバッチモードで実施され得る。ステップa)〜c)を連続モードで実施することが好ましい。
【0052】
本発明による方法において、ステップa)からの反応は、1つ以上の反応ゾーンで、好ましくは少なくとも2つの反応ゾーンで、より好ましくは少なくとも3つの反応ゾーンでおよびさらに特に好ましくは少なくとも4つの反応ゾーンで実施され得る。これらの反応ゾーンは、単一のジャケット中に組み立てられた容量または個別のジャケット中の容量から構成され得る。容量が単一のジャケット中に組み立てられている場合には、反応ゾーンは、互いに水平にまたは垂直に位置され得る。これらのゾーンが互いに水平に位置されている場合には、一のゾーンから他のゾーンへの移動は、重力により、または強制的な循環により行われ得る。重力による循環の場合には、移動は、1つのまたは数々の流路における沈殿を伴って、または伴わずに実施され得る。沈殿を伴わない単一の流路での移動が好ましい。これらのゾーンが垂直に組み立てられている場合、一のゾーンから他のゾーンへの移動は、重力により、または強制的な循環により行われ得る。重力による移動が好ましい。孔あき分割板により細分された機械的に攪拌されるカラムにおけるステップa)の実行が特に好ましい。攪拌は、例えば液体媒体におけるスピンドルの回転により、または流れのパルス化による、いずれかの公知の手段によって実施されてもよい。スピンドルの回転により攪拌されるカラムが特に好ましい。これらの反応ゾーンは、直列、並列、または、いくつかが直列であると共に他が並列であるといったいずれの構成で配置されていてもよい。
【0053】
本発明による方法において、反応ゾーンには、互いに独立して、ジクロロプロパノール、塩基性化合物、水またはこれらの化合物の少なくとも2つが供給され得る。数々の反応ゾーンが直列である場合には、一連の第1の反応ゾーンに塩基性化合物の大部分を供給することが好ましい。
【0054】
「反応ゾーン」という表記は、ステップa)からの反応に必要とされる化合物のすべて、すなわち、ジクロロプロパノール、塩基性化合物および任意の反応溶剤が見出されるゾーンを意味すると理解される。
【0055】
本発明によるエピクロロヒドリンベースの生成物を製造する方法において、ジクロロプロパノールは、Solvay SAにより出願されたFR07/53375およびFR07/55448において定義されているものなどの、本発明による方法とは関係のないジクロロプロパノール、リサイクルジクロロプロパノールまたはこれら2つの混合物であり得る。「再生(リサイクル)ジクロロプロパノール」という表記は、本発明による方法におけるステップb)の後のステップにおいて分離され、次いで、前記方法のステップa)に再生されたジクロロプロパノールを意味すると理解される。「外来性のジクロロプロパノール」という用語は、本発明による方法においてリサイクルされていないジクロロプロパノールを意味すると理解される。
【0056】
温度、圧力、反応時間および滞留時間は、Solvay SAにより出願されたFR07/53375およびFR07/55448に定義されているものなどの、種々の反応ゾーンにおいて異なる値を有していてもよい。
【0057】
ジクロロプロパノールにおける2,3−ジクロロ−1−プロパノール含有量対1,3−ジクロロ−2−プロパノール含有量の比は、ジクロロプロパノールが供給される反応ゾーンに応じて異なり得る。この比は、Solvay SAにより出願されたFR07/53375およびFR07/55448に記載のものなどであり得る。
【0058】
ジクロロプロパノール対塩基性化合物のモル比は、これらの化合物が供給される反応ゾーンに応じて異なり得る。この比は、Solvay SAにより出願されたFR07/53375およびFR07/55448に記載のものなどであり得る。
【0059】
塩基性化合物は、有機または無機塩基性化合物であり得る。有機塩基性化合物は、例えばアミン、ホスフィンおよびアンモニウム、ホスホニウム塩またはアルソニウム水酸化物である。無機塩基性化合物が好ましい。「無機化合物」という表記は、炭素−水素結合を含有しない化合物を意味すると理解される。無機塩基性化合物は、アルカリおよびアルカリ土類金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩およびホウ酸塩、ならびに、これらの混合物から選択され得る。アルカリおよびアルカリ土類金属酸化物、ならびに、水酸化物が好ましい。異なる塩基性化合物を、ステップa)の反応が実施される種々の反応ゾーンにおいて用いてもよい。
【0060】
一般に、温度、反応時間または滞留時間およびジクロロプロパノール対塩基性化合物のモル比は、2,3−ジクロロ−1−プロパノール/1,3−ジクロロ−2−プロパノール比が高い反応ゾーンにおいてより高い。
【0061】
ステップa)は、過剰な塩基性化合物を中和するための操作がその後に続いてもよい。
【0062】
ステップa)またはステップa)の一部とステップb)とを、種々の反応および沈殿ゾーンに区画された一般的なデバイスにおいて組み合わせることが可能である。
【0063】
ステップb)において分離された第1の画分は、その内容がここで参照により援用される、Solvay SAによるFR07/53375および075/55448の主題であるエピクロロヒドリン製造方法のステップb)において分離された第1の画分について記載されているものなどの組成を有し得る。
【0064】
ステップb)において分離された第1の画分は、エピクロロヒドリンおよびトリクロロプロパンに加えて、例えば、トリクロロプロパン以外のハロゲン化炭化水素、クロロアセトンおよびメチルグリシジルエーテル、グリセロール、ヒドロキシアセトン、グリシドール、アセトアルデヒド、アクロレイン、アセトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび2−ブタノンなどの他の有機化合物を含有し得る。これらの化合物は、ジクロロプロパノール製造方法から誘導され得、および/または、本発明による方法のステップa)の最中のジクロロプロパノールと塩基性化合物との反応の最中に形成され得る。
【0065】
ステップb)において分離された第1の画分は、一般に、少なくとも100gのエピクロロヒドリン/1kg/kgの第1の画分、好ましくは200g/kg以上、なお一層好ましくは300g/kg以上、さらにより好ましくは400g/kg以上、なお特に好ましくは500g/kg以上、さらになお特に好ましくは600g/kg以上、それよりもなお特に好ましくは700g/kg以上、最も好ましくは800g/kg以上およびまさに最も好ましくは850g/kg以上を含有する。分離された第1の画分のエピクロロヒドリン含有量は、一般に、900g/kg以下である。分離された第1の画分のエピクロロヒドリン含有量は、例えば、有機溶剤の使用および/または1,3−ジクロロ−2−プロパノールおよび2,3−ジクロロ−1−プロパノールの混合物の不完全な転化に応じる。
【0066】
ステップb)において分離された第1の画分は、一般に、2g以下のクロロアセトン/1kg/kgの第1の画分および通常は0.3g/kg以下、通例0.1g/kg以下、および特に好ましくは0.05g/kg以下を含有する。クロロアセトン含有量は、一般に0.005g/kg以上である。
【0067】
ステップb)において分離された第1の画分は、一般に、5g以下のアクロレイン/1kg/kgの第1の画分、通常は0.3g/kg以下および通例0.1g/kg以下を含有する。アクロレイン含有量は、一般に0.07g/kg以上である。
【0068】
ステップb)において分離された第1の画分は、一般に、20g以下のクロロエーテル/1kg/kgの第1の画分、通常は5g/kg以下、通例2g/kg以下、および特に好ましくは1g/kg以下を含有する。クロロエーテルの含有量は、一般に0.5g/kg以上である。
【0069】
クロロエーテルは、分子が少なくとも1個の塩素原子および少なくとも1個の酸素原子を含む化合物であり、この酸素原子は、2個の炭素原子に結合している。エピクロロヒドリンは、ここでは、クロロエーテルとしてはみなされない。これらのクロロエーテルは、好ましくは、6個の炭素原子を含有する。これらのクロロエーテルは、好ましくは2個、時々3個の塩素原子を含有する。これらのクロロエーテルは、好ましくは、2個の酸素原子を含有する。これらのクロロエーテルは、組成式:C
6H
10Cl
2O
2、C
6H
12Cl
2O、C
6H
9Cl
3O
2、C
6H
11Cl
3O
2の化合物およびこれらの少なくとも2種の混合物から選択されることが好ましい。
【0070】
ステップb)において分離された第1の画分は、一般に、10g以下の第1の画分の組成式C
6H
10Cl
2O
2/kgのクロロエーテル、通常は5g/kg以下、通例0.5g/kg以下、および最も好ましくは0.1g/kg以下を含有する。このクロロエーテルの含有量は、一般に、0.05g/kg以上である。
【0071】
ステップb)において分離された第1の画分は、一般に、5g以下の第1の画分の組成式C
6H
12Cl
2O/kgのクロロエーテル、通常は2g/kg以下、通例0.5g/kg以下、および最も好ましくは0.1g/kg以下を含有する。このクロロエーテルの含有量は、一般に0.05g/kg以上である。
【0072】
ステップb)において分離された第1の画分は、一般に、5g以下の第1の画分の組成式C
6H
9Cl
3O
2/kgのクロロエーテル、通常は2g/kg以下、通例0.5g/kg以下、および最も好ましくは0.1g/kg以下を含有する。このクロロエーテルの含有量は、一般に0.02g/kg以上である。
【0073】
ステップb)において分離された第1の画分は、一般に、5g以下の第1の画分の組成式C
6H
11Cl
3O
2/kgのクロロエーテル、通常は2g/kg以下、通例1g/kg以下、および最も好ましくは0.6g/kg以下を含有する。このクロロエーテルの含有量は、一般に0.5g/kg以上である。
【0074】
ステップb)において分離された第1の画分は、一般に、例えば、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2、3−ジクロロ−1−プロパノールおよびこれらの混合物などの他の有機化合物を含有する。これらのジクロロプロパノールの含有量の和は、一般に900g/第1の画分1kg以下、通常は800g/kg以下、通例700g/kg以下、多くの場合500g/kg以下、度々300g/kg以下および頻繁に200g/kg以下である。これらのジクロロプロパノールの含有量の和は一般に少なくとも90g/kgである。
【0075】
ステップb)において分離された第1の画分は、一般に、エピクロロヒドリン、クロロアセトン、アクロレイン、クロロエーテルおよびジクロロプロパノールに追加して他の有機化合物を含有する。
【0076】
後者は、ジクロロプロパノール製造プロセスに由来し得、および/または本発明による方法のステップa)の最中のジクロロプロパノールと塩基性化合物との反応中に形成され得る。これらの化合物の例は、グリセロール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、2−クロロ−1,3−プロパンジオールおよびこれらの混合物、ヒドロキシアセトン、グリシドール、メチルグリシジルエーテル、1,2,3−トリクロロプロパン、シスおよびトランス1,3−ジクロロプロペン、1,3−ジクロロプロパン、ならびに、2−クロロ−2−プロペン−1−オールである。
【0077】
グリセロール、ヒドロキシアセトンおよびグリシドールの含有量の和は、一般に第1の画分あたり100g/kg以下、通常は50g/kg以下、通例30g/kg以下、特に10g/kg以下、およびより具体的には1g/kg以下である。これらの含有量の和は、一般に0.1g/kg以上である。
【0078】
3−クロロ−1,2−プロパンジオールおよび2−クロロ−1,3−プロパンジオールの含有量の和は、一般に第1の画分あたり5g/kg以下、通常は3g/kg以下、および通例1g/kg以下である。この和は一般に0.5g/kg以上である。
【0079】
メチルグリシジルエーテル含有量は、一般に第1の画分あたり5g/kg以下、通常は3g/kg以下、および通例1g/kg以下である。この含有量は、一般に0.005g/kg以上である。
【0080】
1,2,3−トリクロロプロパン含有量は、一般に第1の画分あたり10g/kg以下、通常は5g/kg以下、通例3g/kg以下および最も好ましくは1g/kg以下である。この含有量は、一般に0.0001g/kg以上である。
【0081】
シスおよびトランス1,3−ジクロロプロペンの含有量の和は、一般に第1の画分あたり2g/kg以下、通常は1g/kg以下、および通例0.1g/kg以下である。この和は一般に0.01g/kg以上である。
【0082】
1,3−ジクロロプロパン含有量は、一般に第1の画分あたり2g/kg以下、通常は1g/kg以下、および通例0.5g/kg以下である。この含有量は、一般に0.001g/kg以上である。
【0083】
2−クロロ−2−プロペン−1−オール含有量は、一般に第1の画分あたり2g/kg以下、通常は1g/kg以下、および通例0.5g/kg以下である。この含有量は、一般に0.01g/kg以上である。
【0084】
ステップb)において分離された第1の画分は、一般に、水、ならびに、塩基性化合物および塩などの無機化合物を含有する。
【0085】
含水量は、一般に第1の画分あたり90g/kg以下、通常は80g/kg以下、通例50g/kg以下、度々30g/kg以下および頻繁に15g/kg以下である。含水量は、一般に第1の画分あたり1g/kg以上である。
【0086】
塩含有量は、一般に10g/第1の画分1kg以下、通例5g/kg以下、通常は2g/kg以下、度々0.1g/kg以下および頻繁に0.015g/kg以下である。この塩含有量は一般に少なくとも0.01g/kgである。
【0087】
ステップb)において分離された第1の画分において見出される、沈殿ステップb)前のステップa)からの液体反応媒体の一部中に存在する塩の割合は、一般に25%以下、好ましくは10%以下およびより好ましくは5%以下である。
【0088】
塩は、アルカリまたはアルカリ土類金属塩化物、硫酸塩、硫酸水素塩、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩およびホウ酸塩、ならびに、これらの混合物から選択されることが好ましい。アルカリおよびアルカリ土類金属塩化物が好ましい。塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムがより好ましい。塩化ナトリウムが最も好ましい塩である。
【0089】
ステップb)において分離された第1の画分はまた酸化合物を含有し得る。酸化合物は、一塩基性酸および多塩基性酸、有機酸および無機酸、ならびに、これらの混合物から選択され得る。多塩基性酸は、多様なプロトン化形態で見出され得る。無機酸が好ましい。「無機酸」という表記は、分子が炭素−水素結合を含有しない、塩化水素、炭酸およびその酸塩、硫酸およびその酸塩、リン酸およびその酸塩、ならびに、ホウ酸およびその酸塩などの酸を意味すると理解される。塩化水素が好ましい。この酸は、Solvay SAにより出願されたFR07/53375に記載のとおり、ステップa)からの反応媒体の一部に添加され得る。
【0090】
ステップb)において分離された第2の画分は、その内容がここで参照により援用される、Solvay SAによるFR07/53375および07/55448の主題である、エピクロロヒドリン製造方法のステップb)において分離された第2の画分について記載されているものなどの組成を有し得る。
【0091】
ステップc)からの補足的処理のうち、液体/液体抽出、吸着および蒸留操作が、単独または組み合わせで好ましく、ならびに、液体/液体抽出および蒸留操作が、単独または組み合わせで特に好ましい。
【0092】
本発明による生成物を製造するための方法のステップc)の第1の実施形態において、ステップc)からの処理は、ステップb)において分離された第1の画分のための少なくとも1種の液体/液体抽出操作を含む。
【0093】
抽出操作は、並流的にまたは向流的に実施され得る。
【0094】
並流操作は、一般に、少なくとも1つの攪拌反応器において、続いて、沈殿タンクにより実施される。向流操作は、一般に、少なくとも1つの抽出塔において実施される。「Perry’s Chemical Engineers’ Handbook」、第6版、第21章、21ページ、55ページおよびそれ以降に記載されているものなどの種々のタイプの反応器、沈殿タンクおよび抽出塔が用いられ得る。
【0095】
抽出溶剤は、有機組成物であっても水性組成物であってもよい。
【0096】
抽出溶剤は、度々、水性組成物である。水に加えて、水性組成物は、塩および/または塩基性化合物および/または上述のものなどの酸化合物および/またはジクロロプロパノールなどの他の化合物を含有していてもよい。頻繁に、水性組成物は、基本的に水、特に脱塩水から構成されている。
【0097】
抽出の後、抽出操作前の第1の画分に含有されていたエピクロロヒドリンのほとんどを含有する第1の部分と、抽出溶剤のほとんどを含有する第2の部分とが分離される。
【0098】
ステップc)からの液体/液体抽出操作前の、ステップc)において分離された第1の部分において見出される、本発明による方法の沈殿ステップb)の最後に分離された第1の画分中に存在するエピクロロヒドリンの割合は、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%およびさらにより好ましくは少なくとも95%である。これらの割合は、より特定的には、抽出溶剤が水性組成物である場合に得られる。
【0099】
ステップc)において分離された第1の部分のエピクロロヒドリン含有量は、一般に900g超のエピクロロヒドリン/第1の部分1kg、好ましくは950g/kg以上、より好ましくは990g/kg以上および最も好ましくは999g/kg以上である。これらの含有量は、より特定的には、抽出溶剤が水性組成物である場合に得られる。
【0100】
第1の部分の含水量は、一般に、1kgの第1の部分あたり水150g以下、通常は100g/kg以下、通例10g/kg以下および特に1g/kg未満である。
【0101】
これらの含有量は、より特には、抽出溶剤が水性組成物である場合に得られる。
【0102】
ステップc)において分離される第1の部分からの有機抽出溶剤の含有量は、一般に100g/第1の部分1kg以下、通常は50g/kg以下および特に1g/kg以下である。
【0103】
ステップc)からの液体/液体抽出処理の最後に得られる第1の部分が、特に抽出溶剤が水である場合には、本発明による生成物を構成し得る。この第1の部分が本発明による生成物を構成することが好ましい。
【0104】
ステップc)において分離された第1の部分は、例えば、蒸留、蒸発またはストリッピング操作などのその後の処理に供されてもよい。
【0105】
ステップc)において分離された第2の部分は、一般に、特に抽出溶剤が水性組成物である場合に、本方法のステップa)において用いられる塩基性化合物および/あるいは沈殿ステップb)の前に添加される酸化合物、ならびに/または、本方法のステップa)において用いられるおよび/あるいは形成される塩を含有する。
【0106】
ステップc)からの液体/液体抽出操作前の、ステップc)において分離された第2の部分において見出される、本発明による方法の沈殿ステップb)の最後に分離された第1の画分中に存在する塩基性化合物の割合は、一般に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%である。
【0107】
ステップc)からの液体/液体抽出操作前の、ステップc)において分離された第2の部分において見出される、本発明による方法の沈殿ステップb)の最後に分離された第1の画分中に存在する塩の割合は、一般に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%である。
【0108】
これらの割合は、より特定的には、抽出溶剤が水性組成物である場合に得られる。
【0109】
ステップc)において分離された第2の部分は、ステップa)に、および/または本方法のステップa)の後であってステップb)の前に、部分的に、または完全にリサイクルされ得る。この第2の部分は、度々、ステップa)の後であってステップb)の前にリサイクルされ、頻繁に、ステップa)後の過剰な塩基性化合物を中和するための操作においてリサイクルされる。
【0110】
ステップc)において分離された第2の部分は、この部分に溶解しているエピクロロヒドリンの回収を可能とするストリッピング、蒸発または蒸留操作に供されてもよい。
【0111】
本発明による生成物を製造するための本方法のステップc)の第2の実施形態において、ステップc)においては、ステップb)において分離された第1の画分は、少なくとも1回の蒸留操作、好ましくは少なくとも2回の蒸留操作およびより好ましくは、その少なくとも1回が共沸蒸留による乾燥操作である少なくとも2回の蒸留操作を含む処理に供される。この処理は、好ましくは少なくとも2回の蒸留操作およびより好ましくは少なくとも4回の蒸留操作および最も好ましくは、共沸蒸留乾燥操作に追加して少なくとも6回の蒸留操作を含む。
【0112】
「蒸留操作」という表記は、特定のデバイスまたは特定のデバイスの一部において実施される、向流的に連続する一連の蒸発および凝縮操作による異なる組成の2つの画分への混合物の分離を意味すると理解される。異なる組成のN種の画分への混合物の分離が単一の物理的ジャケットにおいて実施される場合、これは、N−1回の蒸留に相当しているとみなされる。
【0113】
水性相および有機相の除去を伴う、好ましくは水性相の除去を伴う、共沸、好ましくはヘテロ共沸蒸留による乾燥操作は他の蒸留操作の前に実施され得る。共沸蒸留乾燥操作は、1回以上の他の蒸留操作の後に実施され得る。
【0114】
この第2の実施形態において、ステップc)からの処理の後に、2つの分量が得られる。
【0115】
この第2の実施形態において、ステップc)からの処理前の、ステップc)において分離された第1の分量において見出される、本発明による方法の沈殿ステップb)の最後に分離された第1の画分におけるに存在するエピクロロヒドリンの割合は、一般に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%である。
【0116】
この第2の実施形態において、ステップc)からの処理前の、ステップc)において分離された第2の分量において見出される、本発明による方法の沈殿ステップb)の最後に分離された第1の画分中に存在するジクロロプロパノールの割合は、一般に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%である。
【0117】
この第2の実施形態において、ステップc)からの処理の蒸留操作の最後に得られる第1の分量が本発明による生成物を構成し得る。この第1の分量が本発明による生成物を構成することが好ましい。
【0118】
この第2の実施形態において、第2の分量は、本発明による生成物を得るための本方法のステップa)に部分的に、または完全にリサイクルされ得る。
【0119】
本発明による生成物を製造するための本方法のステップc)の第3の態様においては、ステップc)において、ステップb)において分離された第1の画分が、少なくとも1回の吸着操作および少なくとも1回の蒸留操作、および好ましくは少なくとも3回の蒸留操作およびより好ましくは少なくとも5回の蒸留操作を含む処理に供される。
【0120】
「蒸留操作」という表記は、特定のデバイスまたは特定のデバイスの一部において実施される、向流的に連続する一連の蒸発および凝縮操作による異なる組成を有する2つの画分への混合物の分離を意味すると理解される。異なる組成のN種の画分への混合物の分離が単一の物理的ジャケットにおいて実施される場合、これは、N−1回の蒸留に相当しているとみなされる。
【0121】
この第3の態様において、吸着操作は、蒸留操作の前に実施され得る。吸着操作は、1回以上の蒸留操作の後に実施されてもよい。吸着操作の目的は、一般に、処理される画分の含水量を低減させることである。一般に用いられる吸着剤は、分子ふるい3A、4Aおよび5Aなどの吸着剤である。
【0122】
この第3の態様においては、ステップc)からの処理の後に2つの留分が得られる。
【0123】
この第3の態様において、ステップc)からの処理前の、ステップc)において分離された第1の留分において見出される、本発明による方法の沈殿ステップb)の最後に分離された第1の画分に存在するエピクロロヒドリンの割合は、一般に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%である。
【0124】
この第3の態様において、ステップc)からの処理前の、ステップc)において分離された第2の留分において見出される、本発明による方法の沈殿ステップb)の最後に分離された第1の画分中に存在するジクロロプロパノールの割合は、一般に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%である。
【0125】
この第3の態様において、第2の態様および第3の態様において記載の処理の最後に分離されるのはエピクロロヒドリンであり、その含水量は、一般に水0.5g/エピクロロヒドリン1kg未満、通常は0.1g/kg以下および通例0.05g/kg以下である。このエピクロロヒドリンにおいて、1絶対バールの圧力下でエピクロロヒドリンの沸点以下の沸点を有する有機化合物の含有量は、一般にこれらの化合物0.3g/エピクロロヒドリン1kg以下、通常は0.2g/kg以下および通例0.1g/kg以下である。これらの化合物は、例えば、アクロレイン、メチルグリシジルエーテルおよびクロロアセトンである。このエピクロロヒドリンにおいて、1絶対バールの圧力下で、エピクロロヒドリンの沸点以上の沸点を有する有機化合物の含有量は、一般にこれらの化合物0.7g/エピクロロヒドリン1kg以下、通常は0.5g/kg以下および通例0.3g/kg以下である。これらの化合物は、例えば、2−クロロ−2−プロペン−1−オール、ジクロロプロペン、ジクロロプロパン、ヒドロキシアセトン、トリクロロプロパン、グリシドール、ジクロロプロパノール、モノクロロプロパンジオール、グリセロールおよび上述したものなどのクロロエーテルである。
【0126】
この第3の態様において、ステップc)からの処理の最後に得られる第1の留分が本発明による生成物を構成し得る。この第1の分量が本発明による生成物を構成することが好ましい。
【0127】
好ましい本発明による生成物を製造するための本方法のステップc)の第4の実施形態においては、第1の実施形態および第2の実施形態が組み合わされ、好ましい一変形例においては、最初に、ステップb)において分離された第1の画分が、抽出操作前の第1の画分に含有されていたエピクロロヒドリンのほとんどを含有する第1の部分が分離される、水性組成物での少なくとも1回の液体/液体抽出操作に供され、ならびに、この第1の部分が、共沸蒸留による少なくとも1回の乾燥操作および少なくとも1回の蒸留操作を含む少なくとも1回の処理に供される。
【0128】
この第4の実施形態においては、ステップc)からの処理の後に2つの留分が得られる。
【0129】
この第4の実施形態において、ステップc)からの処理前の、ステップc)において分離された第1の留分において見出される、本発明による方法の沈殿ステップb)の最後に分離された第1の画分に存在するエピクロロヒドリンの割合は、一般に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%である。
【0130】
この第4の実施形態において、ステップc)からの処理前の、ステップc)において分離された第2の留分において見出される、本発明による方法の沈殿ステップb)の最後に分離された第1の画分中に存在するジクロロプロパノールの割合は、一般に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%である。
【0131】
この第4の実施形態において、ステップc)からの処理の最後に分離されるのはエピクロロヒドリンであり、その含水量は、一般に水0.5g/エピクロロヒドリン1kg未満、通常は0.1g/kg以下および通例0.05g/kg以下である。このエピクロロヒドリンにおいて、1絶対バールの圧力下で、エピクロロヒドリンの沸点以下の沸点を有する有機化合物の含有量は、一般にこれらの化合物0.3g/エピクロロヒドリン1kg以下、通常は0.2g/kg以下および通例0.1g/kg以下である。このエピクロロヒドリンにおいて、1絶対バールの圧力下で、エピクロロヒドリンの沸点以上の沸点を有する有機化合物の含有量は、一般にこれらの化合物0.7g/エピクロロヒドリン1kg以下、通常は0.5g/kg以下および通例0.3g/kg以下である。
【0132】
この第4の実施形態において、ステップc)からの処理の最後に得られる第1の留分が本発明による生成物を構成し得る。この第1の留分が本発明による生成物を構成することが好ましい。