特許第5877650号(P5877650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5877650ロボットとプレス機械と制御装置とを含むシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877650
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】ロボットとプレス機械と制御装置とを含むシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20160223BHJP
【FI】
   B25J15/08 D
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-83685(P2011-83685)
(22)【出願日】2011年4月5日
(65)【公開番号】特開2012-218084(P2012-218084A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2013年11月25日
【審判番号】不服2015-6038(P2015-6038/J1)
【審判請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】小田 勝
(72)【発明者】
【氏名】落石 好紀
(72)【発明者】
【氏名】古屋 好丈
【合議体】
【審判長】 平岩 正一
【審判官】 栗田 雅弘
【審判官】 渡邊 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−155356(JP,A)
【文献】 実開昭49−141566(JP,U)
【文献】 実公昭50−42457(JP,Y1)
【文献】 特開2005−232476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、プレス機械と、前記ロボットおよび前記プレス機械を制御する制御装置とを含むシステムにおいて、
前記ロボットのロボットアームの先端に装着されていてサーボモータにより駆動されるロボットハンドは、
中空の第一シャフトと、
該第一シャフトの内部において該第一シャフトに対して相対回転可能に配置された第二シャフトと、
前記第一シャフトに取付けられた第一爪部と、
前記第二シャフトに取付けられた第二爪部と、を具備し、
前記サーボモータの駆動によって、前記第一爪部および前記第二爪部の回転位置を前記第一シャフトおよび前記第二シャフトの軸線周りにそれぞれ相対的に変化させ、それにより、前記第一爪部および前記第二爪部により対象物の把持および解放を行うようにしており、前記対象物の把持動作および解放動作は、前記ロボットアームの移動に連動して行われるようにしており、
前記ロボットハンドは、さらに、前記ロボットアームの先端に連結されていて前記サーボモータが設置されるベース部を含んでおり、
前記第一シャフトおよび前記第二シャフトのうちの一方が該ベース部に設置されており、前記第一シャフトおよび前記第二シャフトのうちの他方が伝達部を介して前記サーボモータのモータシャフトに連結されており、
前記サーボモータが前記ベース部の一方の外面において前記プレス機械の遠位に配置されており、前記第一シャフトおよび前記第二シャフトのうちの前記一方が前記ベース部の他方の外面において前記プレス機械の近位に配置されているシステム
【請求項2】
前記第一爪部および前記第二爪部は前記第一シャフトおよび前記第二シャフトの先端にそれぞれ取付けられており、
前記第一シャフトおよび前記第二シャフトは、前記サーボモータが前記第一爪部および前記第二爪部に把持された前記対象物の熱の影響を受けないように十分な長さを有する請求項1に記載のシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットと、プレス機械と、前記ロボットおよび前記プレス機械を制御する制御装置とを含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、加工機械により加工されるワークはロボットのサーボハンドにより把持され、加工機械から取出されている。特許文献1および特許文献2は、そのようなワークを把持するサーボハンドを開示している。サーボハンドは、サーボモータにより駆動される一つまたは複数の爪部を含んでいる。そして、サーボモータを介して爪部を駆動することにより、ワークを把持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−5732号公報
【特許文献2】特開平5−131240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特定の加工機械、例えばプレス機械または鍛造機械により加工されたワークは高温になっている。そして、サーボハンドのサーボモータは爪部の近傍に配置されていることが多い。このため、高温のワークを把持すると、ワークの熱によってサーボモータが損傷する可能性があり、その結果、サーボモータの寿命が著しく低下する事態が生じていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高温のワークを把持する場合であっても、サーボモータが損傷するのを妨げられるハンドを備えたロボットとプレス機械と制御装置とを含むシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、ロボットと、プレス機械と、前記ロボットおよび前記プレス機械を制御する制御装置とを含むシステムにおいて、前記ロボットのロボットアームの先端に装着されていてサーボモータにより駆動されるロボットハンドは、中空の第一シャフトと、該第一シャフトの内部において該第一シャフトに対して相対回転可能に配置された第二シャフトと、前記第一シャフトに取付けられた第一爪部と、前記第二シャフトに取付けられた第二爪部と、を具備し、前記サーボモータの駆動によって、前記第一爪部および前記第二爪部の回転位置を前記第一シャフトおよび前記第二シャフトの軸線周りにそれぞれ相対的に変化させ、それにより、前記第一爪部および前記第二爪部により対象物の把持および解放を行うようにしており、前記対象物の把持動作および解放動作は、前記ロボットアームの移動に連動して行われるようにしており、前記ロボットハンドは、さらに、前記ロボットアームの先端に連結されていて前記サーボモータが設置されるベース部を含んでおり、前記第一シャフトおよび前記第二シャフトのうちの一方が該ベース部に設置されており、前記第一シャフトおよび前記第二シャフトのうちの他方が伝達部を介して前記サーボモータのモータシャフトに連結されており、前記サーボモータが前記ベース部の一方の外面において前記プレス機械の遠位に配置されており、前記第一シャフトおよび前記第二シャフトのうちの前記一方が前記ベース部の他方の外面において前記プレス機械の近位に配置されているシステムが提供される。
【0009】
3番目の発明によれば、1番目の発明において、前記第一爪部および前記第二爪部は前記第一シャフトおよび前記第二シャフトの先端にそれぞれ取付けられており、前記第一シャフトおよび前記第二シャフトは、前記サーボモータが前記第一爪部および前記第二爪部に把持された前記対象物の熱の影響を受けないように十分な長さを有する。
【発明の効果】
【0010】
1番目および2番目の発明においては、第一および第二シャフトを相対回転させることにより第一爪部および第二爪部による対象物の把持および解放を行っている。サーボモータは通常、ロボットアームの先端に配置されているので、サーボモータを第一および第二シャフトの長さ分だけ第一爪部および第二爪部から離間させられる。従って、対象物が高温である場合であっても、サーボモータが熱の影響を受けるのを避けられ、耐久性を高めることができる。また、第一および第二のシャフトは同軸であるのが好ましく、それにより、サーボハンドを小型にすることもできる。さらに、ロボットの一連の動作を迅速かつ円滑に行うことができる。
【0011】
2番目の発明においては、サーボモータと第一爪部および第二爪部との間の距離を十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に基づくサーボハンドを備えたロボットを含むシステムの概略図である。
図2】本発明の第一の実施形態に基づくサーボハンドの斜視図である。
図3】本発明の第二の実施形態に基づくサーボハンドの斜視図である。
図4】(a)サーボモータとシャフトの連結例を示す図である。(b)サーボモータとシャフトの他の連結例を示す図である。
図5】本発明に基づくサーボハンドを備えたロボットの動作を示すフローチャートである。
図6】(a)ロボットの動作を説明するための第一の図である。(b)ロボットの動作を説明するための第二の図である。
図7】(a)ロボットの動作を説明するための第三の図である。(b)ロボットの動作を説明するための第四の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明に基づくサーボハンドを備えたロボットを含むシステムの概略図である。図1に示されるシステム1は、ロボット4と、プレス機械3と、ロボット4およびプレス機械3を制御する制御装置2とを含んでいる。ロボット4は、例えば六軸構成の垂直多関節型ロボットである。ただし、ロボット4が他の構成のロボットであってもよい。また、プレス機械3によりプレス加工されたワークWを収容する収容部8がプレス機械3の近傍に配置されている。
【0015】
図2は本発明の第一の実施形態に基づくサーボハンドの斜視図である。図1および図2に示されるように、ロボット4のロボットアーム9の先端には、サーボハンド10が取付られている。
【0016】
具体的には、ロボットアーム9はサーボハンド10のベース部18の上面に連結されている。図示されるように、ベース部18の一端には、サーボモータ19が配置されており、ベース部18の他端からは中空の第一シャフト11が延びている。そして、第一シャフト11の先端には第一爪部15が固定されている。図2に示される実施形態においては第一シャフト11の基端はベース部18の他端に固定されているが、第一シャフト11がベース部18に対して回転可能な構成であってもよい。
【0017】
さらに、図2から分かるように、中空の第一シャフト11の内部には、第二シャフト12が相対回転可能に挿入されている。第一シャフト11および第二シャフト12は同軸に配置されるのが好ましく、それにより、サーボハンド10全体を小型にすることができる。また、第一シャフト11および第二シャフト12は、ワークWが高温、例えば1300℃程度であったとしてもサーボモータ19がワークWの熱の影響を受けない程度に十分に長いものとする。
【0018】
図2に示される実施形態においては、第一爪部15は第一シャフト11の先端近傍において第一シャフト11の周面に固定されており、第一シャフト11の端面から突出する第二シャフト12の先端には、第二爪部16が備えられている。図2から分かるように、第一爪部15は第二爪部16を越えて延びている。
【0019】
図2に示されるように、第二爪部16は第二シャフト12に固定されたブロック17aと、ブロック17aの一面に取付られていて第二シャフト12に対して平行に延びる細長状部材17bとを含んでいる。そして、爪先端部17cが細長状部材17bの両端部に取付けられている。第二シャフト12が回転するのに伴って、第二爪部16も一緒に第二シャフト12回りに回動する。なお、第二シャフト12回りに回動可能な他の構成の第二爪部16を採用してもよい。
【0020】
図3は本発明の第二の実施形態に基づくサーボハンドの斜視図である。第二の実施形態は、前述した第一の実施形態と概ね同様であるので、相違点についてのみ述べる。図3における第一シャフト11の先端は閉鎖されているので、第二シャフト12を外部から見ることはできない。そして、第一シャフト11の先端近傍における周面には、開口部13が形成されている。第二爪部16のブロック17aは開口部13を通じて外部に突出している。従って、第二の実施形態においても、第二シャフト12が回転すると、第二爪部16も一緒に第二シャフト12回りに回動する。
【0021】
図4(a)はサーボモータとシャフトの連結例を示す図である。図4(a)に示される連結例においては、第一シャフト11の基端に第一被動歯車21が取付けられており、第二シャフト12の基端に第二被動歯車22が取付けられている。また、サーボモータ19の出力軸の基端から順番に、第二駆動歯車32と第一駆動歯車31とが配置されている。図4(a)に示されるように、第一シャフト11の第一被動歯車21は第一駆動歯車31に直接的に係合している。また、第二シャフト12の第二被動歯車22は、中間歯車33を介して第二駆動歯車32に係合している。
【0022】
このような構成において、サーボモータ19が駆動されると、第一被動歯車21は第一駆動歯車31とは反対方向に回転し、第二被動歯車22は第二駆動歯車32と同じ方向に回転する。従って、第一シャフト11および第二シャフト12の両方が互いに反対方向に回転するようになる。この場合には、第一爪部15および第二爪部16の両方が回動するので、ワークWの迅速な把持および解放を行えるのが分かるであろう。
【0023】
また、図4(b)はサーボモータとシャフトの他の連結例を示す図である。図4(b)に示される連結例においては、第一シャフト11の基端がベース部18に固定されている。そして、第二シャフト12は、減速機35を介してサーボモータ19の出力軸に連結されている。
【0024】
このような構成において、サーボモータ19が駆動したとしても、第一シャフト11は回転せず、第二シャフト12のみが回転するようになる。従って、第二爪部16が第一爪部15に接近するよう回動することによってワークWが把持されると共に、第二爪部16が第一爪部15から離間するよう回動することによってワークWが解放される。このような場合には、第一シャフト11の保守性を高めることができる。
【0025】
図5は本発明に基づくサーボハンドを備えたロボットの動作を示すフローチャートである。さらに、図6(a)から図7(b)はロボットの動作を説明するための図である。以下、これら図面を参照して、ロボット4の動作を説明する。
【0026】
はじめに、図5のステップS101において、ロボット4をその待機位置まで移動させる。そして、ステップS102において、プレス機械3が開放しているか、つまりプレス処理が終了したか否かが判定される。プレス機械3が開放している場合にはステップS103に進み、プレス機械3が開放していない場合にはプレス機械3が開放するまでロボット4を待機位置に待機させる。なお、プレス処理後のワークWは高温、例えば1300℃程度でありうる。
【0027】
ステップS103においては、ロボット4のロボットアーム9をプレス機械3まで移動させ、次いでサーボハンド10をプレス機械3のワーク位置まで進入させる。そして、ステップS104において、サーボハンド10をワークW上で開放する。具体的には、第一爪部15および第二爪部16が互いに離間するように図2の第一シャフト11および第二シャフト12を相対的に回転させる。このとき、第一シャフト11および第二シャフト12のうちの両方あるいは一方のみを回転させればよい。これにより、図6(a)に示されるように、第一爪部15および第二爪部16が互いに離間する方向に回動し、サーボハンド10が開放される。
【0028】
次いで、図5のステップS105において、サーボハンド10自体をワークWに接近させて、サーボハンド10をワークWの近傍で閉鎖する(図6(b))。具体的には、第一爪部15および第二爪部16が互いに接近するように第一シャフト11および第二シャフト12を相対的に回転させる。これにより、図6(b)に示されるように、第一爪部15および第二爪部16が互いに接近する方向に回動し、サーボハンド10が閉鎖される。その結果、ワークWが第一爪部15および第二爪部16の間に把持されるようになる(ステップS106)。
【0029】
ステップS107においては、図7(a)に示されるようにロボットアーム9を上昇させてワークWを持上げ、次いで図7(b)に示されるようにワークWを収容部8に向かって移動させる。そして、ステップS108においては、収容部8上において、サーボハンド10を前述したように開放する。これにより、ワークWがサーボハンド10から解放されて収容部8内に投入される。その後、再びステップS101に戻り、ロボット4は次のワークWをプレス機械3から収容部8まで順次搬送する。
【0030】
このように本発明においては、第一シャフト11および第二シャフト12を互いに相対的に回転させることにより、第一爪部15および第二爪部16を相対的に移動させて、ワークWの把持および解放を行っている。従って、ワークWの把持および解放を極めて簡単に行えるのが分かるであろう。
【0031】
さらに、第一シャフト11および第二シャフト12は十分に長いので、ワークWが高温である場合であっても、サーボモータ19はワークWの熱の影響を受けない。また、サーボモータ19がベース部18の一端に配置され、第一シャフト11がベース部18の他端に配置されているので、ベース部18によってもサーボモータ19はワークWの熱の影響から保護されている。このため、本発明においては、ワークWが高温である場合であっても、サーボモータ19が熱の影響を受けるのを避けられ、耐久性を高めることが可能となっている。
【0032】
また、ワークWの把持動作および解放動作は、ロボットアーム9の移動に連動して行われるのが好ましく、それにより、ロボット4の一連の動作を迅速かつ円滑に行えるのが分かるであろう。
【符号の説明】
【0033】
1 システム
2 制御装置
3 プレス機械
4 ロボット
8 収容部
9 ロボットアーム
10 サーボハンド
11 第一シャフト
12 第二シャフト
15 第一爪部
16 第二爪部
17a ブロック
17b 細長状部材
17c 爪先端部
18 ベース部
19 サーボモータ
21 第一被動歯車
22 第二被動歯車
31 第一駆動歯車
32 第二駆動歯車
33 中間歯車
35 減速機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7