【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、これらの主な欠点を減少させることを可能にする。マイクロ波または無線波を使用することには二重の利益がある。すなわち、まず、マイクロ波または高周波エネルギーは、分子レベルでの相互作用がすぐさま行われる。また、必要なエネルギーが比較的小さい(分子自体が、マイクロ波または無線波の電界によって分極されて、電磁エネルギーを熱に変える)。
【0007】
出願人は、本発明の第1の態様によると、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸エステル、不飽和炭化水素、これらの生成物の不飽和誘導体、またはそれらの混合物を、誘電性加熱により、つまり、マイクロ波または無線波、好ましくはマイクロ波により重合することによって、高い粘性の生成物をより有利な反応時間で獲得できることを発見した。
【0008】
本発明は、したがって、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸エステル、不飽和炭化水素、これらの生成物の不飽和誘導体、またはそれらの様々な混合物、および類似の生成物の、誘電性加熱による、つまり、マイクロ波または無線波、好ましくはマイクロ波による重合の一般的方法に関するものである。
【0009】
マイクロ波のエネルギーの使用については、産業界ではすでに知られているが、それは異なる領域においてであり、とりわけ、エポキシ樹脂および類似物の領域において、様々な問題に応えるためである。
【0010】
マイクロ波または無線波は、上記のタイプの生成物の、とりわけ、スクアレンの重合について、記載されたことはない。
【0011】
非常に有利なことに、本発明による方法によってあまりコストをかけないで、化粧品に使用されるスクアランを、スクアレンの重合体によっておきかえることができることについても記載されていない。
【0012】
より低コスト投資に加えて、時間およびエネルギーが節約できることにより、誘電性加熱による方法がより迅速およびより経済的であることが確立される。
【0013】
本発明は、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸エステル、不飽和炭化水素、植物油、動物性油脂、並びにそれらの不飽和誘導体の重合に関するものである。これらの生成物は、場合によっては事前処理を受けたのちに、未加工で、または精製された形で用いられることができる。
【0014】
反応には、1つのみの試薬、または変動比率での試薬の混合物を介することができる。
【0015】
重合は、1つまたは複数の試薬を、誘電性加熱、つまり、およそ30GHzとおよそ3MHzとの間に含まれる周波数における加熱にかけることによって行われる。マイクロ波は、好ましいとされているが、およそ30GHzとおよそ300MHzとの間に含まれ、好ましくは、2.45GHz(2%の公差で許容される周波)または915MHz(1.4%の公差で許容される周波)である。無線波は、およそ300MHzとおよそ3MHzとの間に含まれ、好ましくは、13.56MHz(0.05%の公差で許容される周波)または27.12MHz(0.6%の公差で許容される周波)である。
【0016】
反応温度は200℃から400℃の間、さらに良くて230℃から350℃に位置し、温度上昇は3から60分の、さらに良くて3から20分であり、全体の反応時間は15分から15時間、好ましくは15分から360分の、さらに良くて15から120分であり、触媒有りまたはなしで、好ましくは触媒なしで、常に攪拌された状態で、獲得が所望されるものに応じて不活性またはそうではない雰囲気におけるものである。
【0017】
本発明に関して、重合の1つまたは複数の試薬については、動物性または植物性油脂の中から、および、前記油脂に由来するものもあるポリテルペンから選択することができる。
【0018】
動物系の油脂として、なかでも、マッコウクジラ油、イルカ油、クジラ油、アザラシ油、イワシ油、ニシン油、サメ油、タラの肝油、牛足油、牛脂、ラード、馬油、羊脂(獣脂)を挙げることができる。
【0019】
植物系の油脂としては、なかでも、なたね油、ひまわり油、落花生油、オリーヴ油、くるみ油、コーン油、大豆油、亜麻油、麻油、ブドウの種油、コプラ油、ヤシ油、綿実油、ババス油、ジョジョバ油、ゴマ油、ひまし油、脱水ひまし油、へーゼルナッツ油、小麦の芽の油、ルリジサ油、マツヨイグサ油、トール油をとりあげることができる。
【0020】
植物油(オリーヴ油、落花生油、なたね油、コーンの芽の油、木綿油、亜麻油、小麦の芽の油、米の襖油)の不鹸化物から抽出される、または、サメ油に大量に含まれているスクアレンのような動物または植物の油の成分を使用することもまたできる。
【0021】
不飽和脂肪酸としては、単一で、または混合で、非限定的な例として、オレイン酸、パルミトレイン酸、ミリスチン酸、ペトロセレン酸、エルカ酸などの単不飽和脂肪酸を1つまたは複数、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸などの多不飽和脂肪酸を1つまたは複数、リカン酸、または、リノール酸あるいはリノレン酸の異性体のような共役ジエンまたは共役トリエンを含む酸を1つまたは複数、リシノール酸のようなヒドロキシル基を1つまたは複数含む酸を1つまたは複数使用することが可能である。
【0022】
不飽和脂肪酸エステルとしては、単一で、または混合で、非限定的な例として、モノアルコールおよび/またはポリオール(単一でまたは混合で)間でのエステル化によって得られる1つまたは複数のエステル、少なくとも1つの不飽和脂肪酸を使用することができる。モノアルコールの非限定的な例として、メタノール、エタノールまたはブタノールを、ポリオールの非限定的な例として、グリセロール、ソルビトール、ネオペンチルグリコール、トリメチルプロパン、ペンタエリトリトール、グリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールを挙げることができる。脂肪酸エステルとして、蝋およびリン脂質を使用することもできる。
【0023】
不飽和炭化水素としては、単一で、または混合で、非限定的な例として、アルケン、例えば、酸素を付加した、またはしない、1つまたは複数のテルペン系の炭化水素、つまり、1つまたは複数のイソプレンの重合体、または、1つまたは複数のイソブテンの、スチレンの、エチレンの、ブタジエンの、イソプレンの、プロペンの重合体、あるいは、これらのアルケンの共重合体を1つまたは複数使用することができる。
【0024】
これらの化合物の不飽和誘導体は、例えば、水素添加、ヒドロキシル化、エポキシ化またはスルホン化などの、当業者には周知であるあらゆる方法による残りの不飽和の機能化によって獲得されることができる。
【0025】
好ましくは、試薬または反応混合物として、1つまたは複数の不飽和脂肪酸エステル、または、少なくとも1つの不飽和を含むそれらの誘導体(アミド、部分的に水素添加された脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化された脂肪酸エステル、など)を、単独でまたは混合で、1つまたは複数の不飽和炭化水素とともに、使用することにする。
【0026】
当業者は、本発明が、類似の、つまり重合に対してマイクロ波や無線波の同じ機能を許容する化学構造をもつ化合物にも応用されることを理解するであろう。
【0027】
本発明の見出す応用は、スクアレンまたはスピナセンとの関連において、非常に興味深い。とりわけ、サメの肝臓に見出されるコレステロールの前駆体のことである。それは、非常なる緩和性、抗真菌性および抗細菌性の特性により、有名である。それは、さらに、非脂質の触感を備えており、化粧品製品の領域において、真の利点を有するものである。
【0028】
それについては、パラフィンの精製を扱った、フランス特許第2576303号が知られている。また、欧州特許第0228980号に記載されている製造方法も知られている。
【0029】
化粧品学において有用なスクアランを生成するために、スクアレンの6つの二重結合に水素添加することもできる。この技術は、しかしながら、その性質によって非常に高価であり、工業化においては問題である。
【0030】
最後に、オリーヴ油の精製から出る副産物から始めて、エステルを得、エステルを蒸発分離し、取り出したいスクアレンを獲得することができる。
【0031】
確認できるように、スクアレンおよびその誘導体は、よく研究されており、それは、工業におけるこれらの生成物の価値につりあったものである。
【0032】
上述されているように、これらの生成物は、化粧品研究において大きな潜在的利益を有する。しかしながら、化粧品に使用可能な重合を獲得するためにスクアレンを重合しようとすると、これまでの方法は非常にコストのかかる加熱を用いることになる。
【0033】
マイクロ波または高周波の使用によって、本発明によると、スクアレンを重合することにおいて、上述された問題が解決される。
【0034】
以下に、本発明の、これらの生成物への応用のより詳細な記述をする。
【0035】
実験式C
30H
50のスクアレンまたはスピナセンは、次の構造式を有するポリテルペンである。
【0036】
【化1】
【0037】
人間の皮脂は、ポリテレペンを10%を超えて含むことから、その利は皮膚科学および化粧品学にある。というのは、スクアレンは肌を柔らかくし(緩和性質)、その保護(抗細菌性、抗真菌性)に関与するからである。それは、有効成分の良い媒介物(皮膚科学における応用)である。しかし、化粧品学研究者は、むしろ、スクアラン(水素添加されたスクアレン)を使用する、なぜなら、スクアランは、飽和しているので酸化に対してより安定しているからである。しかるに、スクアレンへの水素添加は高くつき、パラフィン系の油および蝋のような従来の炭化水素に対して、ほとんど差異をもたらさない。
【0038】
有利なことには、そして、本発明の第2の態様によると、出願人は、スクアランをスクアレンによっておきかえ、該スクアレンを−マイクロ波または無線波によって−、単独で、または、1つまたは複数の不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸エステルまたは植物油あるいは動物油または別の不飽和炭化水素と組み合わせて重合することを提案する。スクアランは時折水素添加されたポリイソブチレン(不飽和の炭化水素)によっておきかえられることがあるので、本発明から逸脱することなく、ポリイソブチレンによってスクアレンをおきかえることができる。
【0039】
動物系または植物系のこれらの油脂、並びにそれらの誘導体は、それらを反応性を高くするため、または反対に反応性を低くするための事前処理を受けることができる。本発明は、孤立した試薬にも、2つまたは複数の成分あるいは試薬を含む試薬の混合物にも関わるものである。これらの試薬の混合物は、それぞれの成分を同じ割合で有することができる、または、ある成分が主要になることが可能である。
【0040】
重合は、試薬または試薬の混合物の誘電性加熱によって、つまり、マイクロ波または無線波における加熱によって獲得される。選択される温度は、好ましくは、200℃と400℃の間に位置し、220℃と350℃の間であるとなお良い。
【0041】
マイクロ波または無線波を使用することによって、選択される温度上昇の時間(つまり、環境温度から重合の温度への移行時間)を3分から60分の間、さらに良いことには3分から20分の間から選択させることが可能となる。
【0042】
温度上昇の時間が減少することによって、試薬を重合の理想的な状態に迅速におくこと、並びに、反応の総時間を減少させることが可能になるが、短い時間においてより大きなエネルギー出力に依存することとなる。
【0043】
反応の総時間は、使用される試薬、および所望の粘性に応じるものであり、好ましくは15分から15時間、好ましくは15分から360分の間に位置し、さらに良いのは、15分から120分の間である。反応の総時間は、より高い温度を用いることによって減少させることができるであろう。しかしながら、高すぎる温度は、生成物の劣化を引き起こすことがある。
【0044】
したがって、短時間で、しかしながらエネルギーの過度の消費も生成物の劣化のリスクもない、最適な重合を可能にする反応温度/反応の総時間を選択しなければならない。当業者は、ここに指示された基準にしたがって、日々のテストによってこれらのパラメータの最適化を行うことができるであろう。
【0045】
重合は触媒有りでまたはなしで行われることができる。触媒は、均質または不均質であることができる。例として、均質な触媒として、アントラキノン、無水亜硫酸、または、可溶性ニッケル塩を使用することができる。例として、不均質な触媒としては、ゼオライトまたは酸の形のイオン交換樹脂を使用することができる。好ましくは、誘電性加熱において分子の相互作用を増加させる効果のあるモンモリロナイトまたはベントナイトのタイプの粘土のような、無線波またはマイクロ波に特に適した触媒を使用する。
【0046】
反応器において温度が均一であることを確保するために、攪拌が十分であるかを確認する。
【0047】
重合を、通常のまたは酸素の多い雰囲気(例えば、吹込み油の製造のため)において、あるいは、好ましくは、不活性の雰囲気(窒素、アルゴン、ヘリウム、または単独であるいは混合で用いられる他の希ガスの存在下で)、行うことができる。好ましくは、雰囲気を更新することに留意しながら、低い気圧において行う。
【0048】
スクアレンの場合、本発明は、単独で、または上記に挙げられたうちの少なくとも1つの試薬との混合で、上に述べられた方法で、スクアレンを重合することによって、飽和していない結合の数を減らすことにあり、それによって、粘性が重合の度合いに関連する、酸化に対して安定した重合体を獲得することができる。このようにして、スクアレンに2つ目の機能をもたらす。例えば、獲得される重合体は、その緩和性の面に加えて、化粧品の調合のための粘着剤となる。さらに、上述された重合の方法は、高価な触媒を用いる水素添加の方法よりもコストがかからない。
【0049】
重合の作業を「バッチ」で(不連続で)実現することができるが、有利な方として、時間的に限られている反応については、連続の方法を用いる。
【0050】
重合を停止させるためには、試薬混合物の温度を、反応温度より低くなるように下げるだけで十分である。反応温度は、本質的に試薬混合物に応じるものである。反応器の壁による不活性が存在しないので、マイクロ波または無線波の使用が、作業方法においてとりわけ有利であることに注意するべきである。
【0051】
一連の補足段落によって、最終使用者の必要に応じて、重合体を精製することが可能である。獲得された重合体の酸指数を減少させ、脱臭し、水分含有量を減少させ、脱色することができる。
【0052】
これらの精製のステップは、当業者には良く知られている。いくつかとりあげることができる。
【0053】
重合体における自由なカルボン酸の数を反映する酸指数を減少させることは、アルコール、エポキシド、水酸化物、グリシジルエステルから選択される物質を、単独で、または、組み合わせて、過剰に加えることによって、行われる。このようにして、エステル、塩などを合成することによって、酸性を中和する。そのためには、試薬混合物の温度を、これらのエステル、塩などの反応温度まで下げるだけで十分である。
【0054】
注目すべき点は、マイクロ波または無線波のおかげでこのステップに関して時間を稼ぐことであり、というのも、反応時間は重合体に応じて3分から3時間であり、一方で従来の加熱方法は平均でその5倍かかるということに注意するべきである。
【0055】
脱臭は、飛沫同伴によって行われることができる。この作業は、50℃から240℃に含まれる温度で行われる。
【0056】
このステップの後、従来の加熱方法(水の沸騰温度に達するための従来の方法による加熱および真空蒸留、または、乾燥させる化合物の使用)によって、または、有利な方としては、誘電性加熱を用いて、つまり、水分子を反応させて、ここでもまた、時間を稼ぐことを可能にするマイクロ波または無線波を用いて、水分含有量を減少させる。当業者は、検討される応用によって、適した水分含有量削減を決めるであろう。例えば、潤滑剤については、500ppmを下回る含有量が望ましい。
【0057】
最初の試薬または試薬混合物の水分含有量が多すぎると判断される場合には、重合のステップを行う前に水分含有量の削減を行う。上述のように、従来の加熱方法、または、有利な方では、誘電性加熱を用いることができる。例として、試薬混合物がエステルで構成されている場合、このように行うことによって、重合の最後における大きな酸指数の原因である加水分解現象を大幅にやわらげることになる。
【0058】
脱色は、酸素を添加された水を使用することによって、または、脱色土を用いて、さらには、獲得された重合体を活性炭素フィルターに通すことによって、行われることができる。
【0059】
獲得された重合体は、非限定的な例として、
−亜麻油のような乾燥性の試薬(スタンド油または吹込み油の製造)または乾燥性試薬の混合物を選択する場合、ペンキ、糊、接着剤に、
−ひまわり油、大豆油またはキャノーラ油のような乾燥性のより低い試薬を選択する場合、潤滑剤または潤滑剤用能力添加剤の調製に、
−例えば、100から0%の脂肪酸エステルまたは不飽和植物油(ひまわり、大豆、なたね、ひまし、など)に対して0から100重量%のスクアレンまたはポリイソブチレンの試薬混合物を選択する場合、化粧品の調製に、
−可塑性添加剤として、プラスチック、ゴム、などの調製に、
使用されることができる。