(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877707
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】アイドルストップ車の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20160223BHJP
F02D 29/04 20060101ALI20160223BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20160223BHJP
F02D 29/02 20060101ALN20160223BHJP
【FI】
B60H1/22 671
F02D29/04 B
B60H1/32 626D
!F02D29/02 321A
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-287354(P2011-287354)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-136267(P2013-136267A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(72)【発明者】
【氏名】谷原 裕之
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0236770(US,A1)
【文献】
特開2000−142095(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0225450(US,A1)
【文献】
特開2010−247777(JP,A)
【文献】
特開2010−100096(JP,A)
【文献】
特開2002−370516(JP,A)
【文献】
特開2009−085296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエンジン停止条件の成立によりエンジンを自動停止するアイドルストップ制御手段と、前記エンジンの冷却水または動力を利用して空気を加熱、冷却する熱交換器と、前記熱交換器を通して車室内に送る空気量を制御し、前記熱交換器を通して車室内に空気を送っている場合に、前記エンジン停止条件が成立すると前記熱交換器を通す空気量を抑制する空調制御手段とを備えるアイドルストップ車の制御装置において、
前記アイドルストップ制御手段によるアイドルストップ制御時に前記空調制御手段が暖房状態であるか冷房状態であるかを検知する検知手段と、
車室外温度を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された車室外温度に基づき、前記エンジン停止条件が成立してから前記熱交換器を通す空気量を抑制するまでの待機時間を設定する設定手段と
を備え、
前記設定手段は、前記検知手段による暖房状態の検知時に、前記検出手段により検出された前記車室外温度が低いほど前記待機時間を短く、前記検出手段により検出された前記車室外温度が高いほど前記待機時間を長く設定し、前記検知手段による冷房状態の検知時に、前記検出手段により検出された前記車室外温度が低いほど前記待機時間を長く、前記検出手段により検出された前記車室外温度が高いほど前記待機時間を短く設定し、
前記空調制御手段は、前記設定手段による前記待機時間の経過後に、前記熱交換器を通す空気量を抑制することを特徴とするアイドルストップ車の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定のエンジン停止条件の成立によりエンジンを自動停止するアイドルストップ制御機能を有するアイドルストップ車において、空調制御手段により、エンジンの冷却水または動力を利用して空気を加熱、冷却する熱交換器を通して車室内に送る空気量を制御するアイドルストップ車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の空調装置として、例えば特許文献1に記載のものがあり、
図5にその具体的構成を示す。
図5は走行用エンジン1および走行用モータ6を備えたハイブリッドカーの例であり、エンジン1の冷却水及びその回転動力を利用して車室内の空調を行うためのフロント空調ユニット2は、内部に空気通路を形成するフロント空調ダクト11と、フロント空調ダクト11内に空調風を発生する遠心式ファン12と、遠心式ファン12の回転駆動用ブロワモータ13と、走行用エンジン1の回転動力を利用して空気を冷却する冷却用熱交換器14と、走行用エンジン1の冷却水を利用して空気を再加熱する加熱用熱交換器15とを有する。
【0003】
フロント空調ダクト11の空気上流部には、内気吸込口16から車室内空気(内気)を吸い込む内気循環モードと外気吸込口17から車室外空気(外気)を吸い込む外気導入モードとを切り替える内外気切替ダンパ18が設けられ、フロント空調ダクト11の空気下流部には、デフロスタ(DEF)開口部(吹出口)20、フェイス(FACE)開口部(吹出口)21およびフット(FOOT)開口部22を開閉することで吹出口モードを切り替える吹出口切替ダンパ23、24が設けられている。これらの吹出口切替ダンパ23、24は、サーボモータ等により駆動される。
【0004】
冷却用熱交換器14は、冷凍サイクルの一構成部品を成すエバポレータ(冷媒蒸発器)であり、空気通路を全面塞ぐようにフロント空調ダクト11内に配設され、走行用エンジン1の回転動力を利用して、自身を通過する空気の冷却および除湿を行う。
【0005】
ここで、冷凍サイクルは、Vベルト34を介して走行用エンジン1からコンプレッサ30への回転動力の伝達を断続する電磁クラッチ35が連結されることで走行用エンジン1により駆動されて、吸入した冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサ(冷媒圧縮機)30と、圧縮された冷媒を凝縮液化させるコンデンサ(冷媒凝縮器)31と、凝縮液化された冷媒を気液分離して液冷媒のみを下流に流すレシーバ(受液器、気液分離器)32と、液冷媒を減圧膨張させるエキスパンションバルブ(膨張弁、減圧手段)33と、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させる上記の冷却用熱交換器14と、これらを環状に接続する冷媒配管等から構成されている。コンデンサ31は、冷却ファン39により冷却される。
【0006】
加熱用熱交換器15は、走行用エンジン1の冷却水が循環する冷却水回路の一構成部品を成すヒータコアであり、内部に走行用エンジン1を冷却した冷却水が流れ、この冷却水を暖房用熱源として冷風を再加熱する室内熱交換器であって、空気通路を部分的に塞ぐようにフロント空調ダクト11内に配されている。加熱用熱交換器15の空気上流側には、加熱用熱交換器15を通過する空気量(温風量)と加熱用熱交換器15を迂回する空気量(冷風量)との割合を調節して、車室内へ吹き出す空気の吹出温度を調整するエアミックス(A/M)ダンパ37が設けられている。
【0007】
そして、上記した特許文献1の車両では、空調装置の作動中であって、走行用エンジン1の自動停止中の場合に、ブロア量を減じるように制御して走行用エンジン1の冷却水温の低下を抑え、走行用エンジン1を自動停止した直後に再始動し難くして燃費向上を図ることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−142095号公報(例えば、段落0012〜0020および
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記した特許文献1のようにブロア量を減じる制御を行うと、空調装置のブロア量を減じる必要のないときまでブロア量を減じることになり、空調による乗員の快適性が犠牲になるという問題点がある。
【0010】
そこで、ヒータコア(加熱用熱交換器15)の下流側にヒータコア吹出温度を検出する吹出温度センサを設置し、例えば暖房時において
図6に示すように、アイドルストップ中であるときに(
図6のステップS1のYES)、吹出温度センサによるヒータコア吹出温度Tが予め設定されたエンジン再始動を要求すべきしきい値Tthよりも下がったかどうかの判定を行い(ステップS2)、ヒータコア吹出温度Tが閾値Tthよりも下がれば(T<Tth)、ステップS2をYESで通過してエンジンを再始動する(ステップS3)ことが考えられる。なお、冷房時には、暖房時のしきい値Tthと異なる冷房時のしきい値Tth’と吹出温度センサによるヒータコア吹出温度Tとを比較し、T>Tth’となれば、エンジンを再始動すればよい。
【0011】
このようにすれば、
図7に示すように、アイドルストップによるエンジン停止に伴うブロア量の低下によりヒータコア吹出温度Tがしきい値Tthまで低下すると、エンジンが再始動してヒータコア(
図5の加熱用熱交換器15)を再び温風が通過し始めるため、車室内温度が下がることによる乗員に不快感を与えることを防止することが考えられる。なお、冷房時も同様である。
【0012】
また、上記した吹出温度センサにより検出されるヒータコア吹出温度に基づきエンジン再始動のほかに、電動ウォーターポンプを設けてアイドルストップ中にもヒータコア(
図5の加熱用熱交換器15)にエンジンの冷却水を強制循環させるようにし、アイドルストップによる停止中により、
図8中の破線に示す電動ウォーターポンプがない場合のように、ヒータコア吹出温度が低下することなく、
図8中の実線のように、ヒータコア吹出温度が停止前とほぼ変わらないようにして乗員への不快感を防止することも考えられる。
【0013】
しかし、これらの場合、吹出温度センサや電動ウォーターポンプを必要とする分コストの上昇を招くという新たな問題が生じる。
【0014】
本発明は、アイドルストップ車において、低コストな構成により、アイドルストップ制御による停止中であっても乗員に快適な空調環境を提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するために、本発明のアイドルストップ車の制御装置は、所定のエンジン停止条件の成立によりエンジンを自動停止するアイドルストップ制御手段と、前記エンジンの冷却水または動力を利用して空気を加熱、冷却する熱交換器と、前記熱交換器を通して車室内に送る空気量を制御し、前記熱交換器を通して車室内に空気を送っている場合に、前記エンジン停止条件が成立すると前記熱交換器を通す空気量を抑制する空調制御手段とを備えるアイドルストップ車の制御装置において、
前記アイドルストップ制御手段によるアイドルストップ制御時に前記空調制御手段が暖房状態であるか冷房状態であるかを検知する検知手段と、車室外温度を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された車室外温度に基づき、前記エンジン停止条件が成立してから前記熱交換器を通す空気量を抑制するまでの待機時間を設定する設定手段とを備え、
前記設定手段は、前記検知手段による暖房状態の検知時に、前記検出手段により検出された前記車室外温度が低いほど前記待機時間を短く、前記検出手段により検出された前記車室外温度が高いほど前記待機時間を長く設定し、前記検知手段による冷房状態の検知時に、前記検出手段により検出された前記車室外温度が低いほど前記待機時間を長く、前記検出手段により検出された前記車室外温度が高いほど前記待機時間を短く設定し、前記空調制御手段は、前記設定手段による前記待機時間の経過後に、前記熱交換器を通す空気量を抑制することを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、暖房状態では、検出手段により検出される車室外温度が低いほど、設定手段によって待機時間を短く設定することができるので、エンジンが自動停止してから早めに熱交換器を通す空気量を抑制でき、熱交換器の温度が車室外温度に近づく速度が低下する。一方、検出手段により検出される車室外温度が高いほど、設定手段によって待機時間を長く設定することができるので、エンジンが自動停止してから遅めに熱交換器を通す空気量を抑制でき、不必要に熱交換器を通す空気量を抑制することがない。そのため、暖房時において、乗員に対して快適な空調環境を長く保つことができる。
【0017】
また、冷房状態は、検出手段により検出される車室外温度が低いほど、設定手段によって待機時間を長く設定することができるので、エンジンが自動停止してから遅めに熱交換器を通す空気量を抑制でき、不必要に熱交換器を通す空気量を抑制することがない。一方、検出手段により検出される車室外温度が高いほど、設定手段によって待機時間を短く設定することができるので、エンジンが自動停止してから早めに熱交換器を通す空気量を抑制でき、熱交換器の温度が車室外温度に近づく速度が低下する。そのため、冷房時においても、乗員に対して快適な空調環境を長く保つことができる。
【0018】
したがって、空調装置乃至空調システムを備えたアイドルストップ車において、車室外温度を検出する温度センサなどの検出手段を設けるのみで、乗員に対して暖房及び冷房時の快適な空調環境を低コストで提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るアイドルストップ車の制御装置の一実施形態のブロック図である。
【
図2】
図1の待機時間の設定に関する説明図である。
【
図5】一般の車両用の空調装置の概略構成図である。
【
図6】従来の空調制御に関する動作説明用フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、本発明の一実施形態について、
図1ないし
図4を参照して説明する。なお、
図1はアイドルストップ車の制御装置のブロック図、
図2は待機時間の設定に関する説明図、
図3は動作説明用フローチャート、
図4は動作説明図である。
【0021】
図1に示すように、アイドルストップ車50には、アイドルストップ制御のECUが形成するアイドルストップ制御部51、エンジン制御のECUが形成するエンジン制御部52、空調制御のECUが形成する空調制御部53が設けられている。
【0022】
上記したアイドルストップ制御部51は、所定の自動停止条件(例えば、ストップランプが点灯していて所定車速以下である等の条件)の成立を確認すると、走行が完全に停止したとき、或いは、走行が完全に停止しなくても所定車速以下(例えば、7km/h以下)に低下したときに、エンジンを自動停止(アイドルストップ)させるべくエンジン制御部52にエンジン停止指令を出力する。続いて、自動停止状態においてドライバがブレーキペダルから足を離し、ブレーキのマスタシリンダ圧が所定の開放圧に低下すると、アイドルストップ制御部51は所定の再始動条件が成立したことを確認し、停止しているエンジンが自動的に再始動すべくエンジン制御部52に再始動指令を出力する。そして、エンジン制御部52は、上記したアイドルストップ制御部51からの指令に基づき、エンジンの自動停止制御および再始動制御を行う。このアイドルストップ制御部51のアイドルストップ制御機能が本発明における「アイドルストップ制御手段」に相当する。
【0023】
アイドルストップ車50は
図5に示す空調装置と同様の構成の空調装置を備える。以下では、
図5も参照して説明する。空調制御部53は、室内温度設定スイッチ55の出力信号を取り込み、該スイッチ55の操作による設定温度になるように、
図5の冷却用熱交換器14、加熱用熱交換器15に空調風を通すファン12と同様、冷却用および加熱用の両熱交換器を通すファンによるブロア風量を調節する通常の自動空調制御を行う。
【0024】
さらに、空調制御部53は、アイドルストップ制御部51によるアイドルストップ中における空調環境を改善する制御も行う。すなわち、
図5に示すデフロスタ(DEF)開口部20、フェイス(FACE)21、フット(FOOT)開口部22の各吹出口と同様の吹出口の切替え操作用の切替スイッチ57の切替え状態、設定された設定温度、車室外温度等に基づき、アイドルストップ制御時における吹出口の位置から暖房状態、冷房状態のいずれであるかを検知し、車室外温度を検出する車室外温度センサ56からの検出信号を取り込み、車室外温度センサ56により検出された車室外温度に基づき、アイドルストップ制御のエンジン停止条件が成立(アイドルストップ)してから各熱交換器を通す空気量であるブロア量を抑制するまでの待機時間を内蔵のタイマ59に設定し、タイマ設定した待機時間の経過後にブロア量調整部58に指令を出力し、
図5のブロアモータ13及びファン12と同様のブロアモータおよびファンを制御して熱交換器を通すブロア量を抑制する。
【0025】
タイマ設定する待機時間は次のように定めるのが望ましい。例えば切替スイッチ57の出力信号に基づき吹出口がフット(FOOT)に切替え設定されているとき等には、暖房状態であると判断できることから、
図2(a)に示すように、車室外温度センサ56による車室外温度(外気温)が5℃より低ければ、待機時間として10秒をタイマ59に設定し、車室外温度が15℃より高ければ、待機時間として20秒をタイマ59に設定し、車室外温度が5℃から15℃の間であれば、車室外温度に比例して10秒から20秒までの待機時間をタイマ59に設定する。
【0026】
また、例えば切替スイッチ57の出力信号に基づき吹出口がフェイス(FACE)に切替え設定されているとき等には、冷房状態であると判断できることから、
図2(b)に示すように、車室外温度センサ56による車室外温度(外気温)が15℃より低ければ、待機時間として20秒をタイマ59に設定し、車室外温度が30℃より高ければ、待機時間として
10秒をタイマ59に設定し、車室外温度が15℃から30℃の間であれば、車室外温度に反比例して20秒から10秒までの待機時間をタイマ59に設定する。
【0027】
図2(a)、(b)に示す暖房時および冷房時の車室外温度(外気温)と待機時間との関係をそれぞれマップ化し、空調制御部53に内蔵のメモリあるいは外付けのメモリに記憶しておき、アイドルストップ制御によりエンジンが自動停止する際に、そのときの冷暖房状態における車室外温度に応じた待機時間をメモリのマップから読み出してタイマ59に設定すればよい。ここで、車室外温度に対応する待機時間は、実験等により、人の快適温度を維持できるよう考慮して、好適にチューニングされたものであるとともに、所定の高温側温度(
図2(a)では15℃)以上および所定の低温側温度(
図2(a)では5℃)以下では一定としている。
【0028】
次に、アイドルストップ制御によるエンジン自動停止時の空調制御に関する動作について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0029】
図3は暖房時の制御手順を示しており、同図に示すように、アイドルストップ制御部51により、例えばストップランプが点灯していて所定車速以下(速度0も含む)であるなどの所定のアイドルストップ制御の自動停止条件が成立し、アイドルストップ中であるか否かの判定がなされ(ステップS11)、この判定結果がNOであれば判定結果がYESになるまでステップS11の判定が繰り返され、YESになれば次のステップS12に移行し、空調制御部51により、吹出口切替スイッチ57の状態から吹出口がフット(FOOT)に切替えられているか否かの判定がなされ(ステップS12)、この判定結果がNOであればステップS11に戻り、判定結果がYESであれば空調が暖房状態であると判断されて次のステップS13に移行する。
【0030】
ステップS13では、車室外温度センサ56による車室外温度(外気温)が検出され(ステップS13)、空調制御部51により、メモリに格納されたマップから、検出された車室外温度に対応する暖房時の待機時間が読み出されてタイマ59に設定され(ステップS14)、アイドルストップしてからの経過時間Sidが、タイマ59に設定された待機時間Ssbを上回ったか(Sid>Ssb)どうかの判定がなされる(ステップS15)。
【0031】
そして、アイドルストップしてから、まだ待機時間Ssbを経過しておらず、Sid<SsbでステップS15の判定結果がNOであれば、経過時間Sidが待機時間Ssbを上回ってSid>SsbとなってステップS15の判定結果がYESになれば、空調制御部51からブロア量を抑制すべくブロア量調整部58に指令が出力され、ブロア量調整部58によりブロアモータおよびファンが制御されて熱交換器を通すブロア量が例えばHighからLowに切替えられてブロア量が抑制され(ステップS16)、その後制御は終了する。なお、本実施の形態では、上記ブロア量の抑制は、風量を0にはしない範囲で行われる。
【0032】
なお、吹出口がフェイス(FACE)に切替え設定されている冷房状態の場合も、上記した暖房状態と同様にして、ブロア量の抑制制御が行われる。
【0033】
上記した手順による暖房状態でのアイドルストップ時のブロア量制御の結果、ブロア量について見ると、空調が暖房状態で走行中にアイドルストップ制御の自動停止条件が成立してアイドルストップし、アイドルストップしてから上記した待機時間が経過すると抑制制御されて
図4中の実線に示すように変化するのに対し、上記したブロア量制御を行わない場合には、
図4中の破線に示すように、アイドルストップしてから上記した待機時間が経過しても抑制されることなくそのままのブロア量に維持される。
【0034】
その結果、空調が暖房状態で走行中にアイドルストップ制御の自動停止条件が成立してアイドルストップすると、加熱用熱交換器であるヒータコアの吹出温度は、例えば
図4中の実線に示すように変化し、アイドルストップしてから上記した待機時間が経過した後、それ以下に低下することがない。一方、上記したブロア量制御を行わない場合には、
図4中の破線のように、ヒータコアの吹出温度はアイドルストップしてから上記した待機時間が経過した後も低下し続ける。
【0035】
したがって、上記した実施形態によれば、アイドルストップ制御により、走行中、エンジン自動停止条件の成立によりエンジンを自動停止し、エンジン再始動条件の成立によりエンジンを再始動するため、燃費の向上を図ることができる。
【0036】
さらに、暖房状態では、車室外温度が低いほど、待機時間が短く設定され、エンジンが自動停止してから早めにブロア量が抑制されるため、ヒータコア吹出温度(すなわち、熱交換器)が車室外温度に近づく速度を低下させることができる。一方、車室外温度が高いほど、待機時間が長く設定され、エンジンが自動停止してから遅めにブロア量が抑制されるため、不必要に熱交換器を通す空気量であるブロア量を抑制することがない。そのため、暖房時において、乗員に対して快適な空調環境を長く保つことができる。
【0037】
また、冷房状態では、車室外温度が低いほど、待機時間が長く設定され、エンジンが自動停止してから遅めにブロア量が抑制されるため、不必要に熱交換器を通す空気量であるブロア量を抑制することがない。一方、車室外温度が高いほど、待機時間が短く設定され、エンジンが自動停止してから早めにブロア量が抑制されるため、ヒータコア吹出温度が車室外温度に近づく速度を低下させることができる。そのため、冷房時においても、乗員に対して快適な空調環境を長く保つことができる。
【0038】
したがって、空調装置を備えたアイドルストップ車において、車室外温度を検出する検出手段として安価な車室外温度センサ56を設けるのみで、乗員に対して暖房及び冷房時の快適な空調環境を低コストで提供することが可能になる。
【0039】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。例えば、暖房時、冷房時の車室外温度(外気温)と待機時間との関係は、
図2に示すものに限らないのは勿論である。
【0040】
また、上記した実施形態では、暖房時、冷房時の車室外温度(外気温)と待機時間との関係をマップ化してメモリに予め記憶するようにしたが、その都度演算によって導出するなどしてもよい。
【0041】
また、上記した実施形態では、エンジンのみの場合を例として説明したが、例えばエンジンとモータを併用するハイブリッド車である場合にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
50 アイドルストップ車両
51 アイドルストップ制御部(アイドルストップ制御手段)
53 空調制御部(空調制御手段、設定手段)
56 車室外温度センサ(検出手段)