特許第5877893号(P5877893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5877893融合ポリペプチドのアミノ酸配列およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877893
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】融合ポリペプチドのアミノ酸配列およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20160223BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20160223BHJP
   C12N 9/90 20060101ALI20160223BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20160223BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20160223BHJP
【FI】
   C07K19/00ZNA
   C07K14/195
   C12N9/90
   C12P21/08
   !C12N15/00 A
【請求項の数】22
【全頁数】80
(21)【出願番号】特願2014-508814(P2014-508814)
(86)(22)【出願日】2012年5月4日
(65)【公表番号】特表2014-520073(P2014-520073A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】EP2012058207
(87)【国際公開番号】WO2012150320
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2013年12月19日
(31)【優先権主張番号】11164957.0
(32)【優先日】2011年5月5日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12155742.5
(32)【優先日】2012年2月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ハーバート
(72)【発明者】
【氏名】カサゴラ バルリベーラ ダビド
(72)【発明者】
【氏名】ドゥエフェル ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】ゲルグ ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュレームル ミハエル
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−521938(JP,A)
【文献】 特表2004−535195(JP,A)
【文献】 特開2007−117090(JP,A)
【文献】 J. Mol. Biol.,2010年,vol.398, no.3,pp.375-390
【文献】 FKBP-type peptidyl-prolyl cis-trans isomerase (slyD) [Thermococcus gammatolerans EJ3],2010年11月29日,Accession no. ACS32696,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/239909805?sat=14&satkey=10484338
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 19/00
C07K 14/00−16/46
C12N 15/00−15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、
NH2-S2-X1-S1-COOH (式I)
式中、
X1は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかを含み、
S2およびS1は、第2ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であり、
-はペプチド結合を表し、
ここで、該第2ポリペプチドは、ペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性(PPIase活性)を有するポリペプチドであるかまたはFKBPフォールドドメインファミリー由来であり、かつ
X1は、第2ポリペプチドのインサート・イン・フラップ(insert-in-flap)ドメイン(IFドメイン)の位置に挿入されている、
前記融合ポリペプチド。
【請求項2】
融合ポリペプチドが式IIのポリペプチドを含むことを特徴とし、
NH2-S4-X2-S3-S2-X1-S1-S0-COOH (式II)
式中、
X1は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかを含み、
S2およびS1は、どちらも第2ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であり、
S3およびS0は、存在しないかまたは第3ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であるかのいずれかであり、
S4は、存在しないかまたは第4ポリペプチド由来のアミノ酸配列であるかのいずれかであり、
X2は、存在しないかまたはペプチド性リンカー配列であるかのいずれかであり、
ここで、該第2ポリペプチドおよび該第3ポリペプチドおよび該第4ポリペプチドは、互いに異なっており、かつペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性(PPIase活性)を有するポリペプチドであるおよび/またはFKBPフォールドドメインファミリー由来であり、かつ
X1は、該第2ポリペプチドのインサート・イン・フラップドメイン(IFドメイン)の位置に挿入されている、
請求項1記載の融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記第2ポリペプチドが、SlyDであることを特徴とする、請求項1または2記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記第2ポリペプチドが、好熱菌由来のポリペプチドであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
好熱菌が、好熱性細菌または好熱性古細菌であることを特徴とする、請求項4記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
好熱菌が、サーマス(Thermaceae)科由来であることを特徴とする、請求項4または5記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
好熱菌が、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)であることを特徴とする、請求項46のいずれか一項記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
好熱性古細菌が、超好熱性古細菌であることを特徴とする、請求項5記載の融合ポリペプチド。
【請求項9】
好熱菌が、サーモコッカス(Thermococci)綱由来であることを特徴とする、請求項4〜5および8のいずれか一項記載の融合ポリペプチド。
【請求項10】
好熱菌が、サーモコッカス・ガンマトレランス(Thermococcus gammatolerans)であることを特徴とする、請求項4〜5および8〜9のいずれか一項記載の融合ポリペプチド。
【請求項11】
X1が、隠れたエピトープに対応するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項記載の融合ポリペプチド。
【請求項12】
前記第2ポリペプチドおよび前記第3ポリペプチドおよび前記第4ポリペプチドが、異なる種由来であることを特徴とする、請求項2〜11のいずれか一項記載の融合ポリペプチド。
【請求項13】
前記第2および/または第3ポリペプチドが、少なくとも60℃の最適成長温度を有する好熱菌由来のポリペプチドであることを特徴とする、請求項2〜12のいずれか一項記載の融合ポリペプチド。
【請求項14】
好熱菌が、サーマス・サーモフィルスまたはサーモコッカス・ガンマトレランスであることを特徴とする、請求項13記載の融合ポリペプチド。
【請求項15】
X1が、式IIIのポリペプチドであることを特徴とし、
XaXbXcXd-X0-XeXfXgXh (式III)
式中、X0は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかであり、
Xa〜Xhの各々はアミノ酸残基を表し、かつXa〜hのいずれも個々に存在しても存在しなくてもよい、
請求項1〜14のいずれか一項記載の融合ポリペプチド。
【請求項16】
X1が、
GS-X0-GSS (式VI)、
AGS-X0-GSS (式V)、
CG-X0-GC (式VI)、
C-X0-GC (式VII)、
G-X0-G (式VIII)、
S-X0-GSS (式IX)、
GG-X0-GG (式X)、
G-X0-TGG (式XI)、
GGGS-X0-GGGS (式XII)、
GGNP-X0-GPT (式XIII)、
からなる群より選択されるポリペプチドであり、式中、X0は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項記載の融合ポリペプチド。
【請求項17】
実験動物においてX1に対する免疫応答を惹起するための、請求項1〜16のいずれか一項記載の融合ポリペプチドの使用。
【請求項18】
実験動物において、あるポリペプチドに対する免疫応答を惹起する方法であって、実験動物に対して、X1が該ポリペプチドのアミノ酸配列である請求項1〜16のいずれか一項記載の融合ポリペプチドを少なくとも1回投与する工程を含む、前記方法。
【請求項19】
以下の工程を含む、標的抗原に特異的に結合する抗体を製造する方法:
a)実験動物に対して、X1のアミノ酸配列が該標的抗原のアミノ酸配列を含む請求項1〜16のいずれか一項記載の融合ポリペプチドを少なくとも1回投与する工程、
b)最後のポリペプチド投与の3〜10日後の実験動物から、該標的抗原に特異的に結合する抗体を産生するB細胞を回収する工程、および
c)該標的抗原に特異的に結合する抗体をコードする核酸を含む細胞を培養し、細胞または培養培地から抗体を回収し、それによって標的抗原に特異的に結合する抗体を製造する工程。
【請求項20】
以下の工程を含む、標的抗原に特異的に結合する抗体を製造する方法:
a)請求項1〜16のいずれか一項記載の融合ポリペプチドの投与後の実験動物から、X1のアミノ酸配列に特異的に結合する抗体を産生するB細胞を回収する工程、および
b)X1のアミノ酸配列に特異的に結合する抗体をコードする核酸を含む細胞を培養し、細胞または培養培地から抗体を回収し、それによって標的抗原に特異的に結合する抗体を製造する工程。
【請求項21】
X1のアミノ酸配列がエピトープを含む請求項1〜16のいずれか一項記載の融合ポリペプチドの、エピトープマッピングのための使用。
【請求項22】
以下の工程を含む、標的抗原に特異的に結合する抗体を選択する方法:
a)請求項1〜16のいずれか一項記載の融合ポリペプチドのX1のアミノ酸配列が該標的抗原のアミノ酸配列を含む、固定化された標的抗原に対する複数の抗体の結合親和性を決定する工程、
b)予め規定された閾値レベルを超える見かけの複合体安定性を有する抗体を選択する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1つまたは複数のペプチジル-プロリル シス/トランス イソメラーゼまたはFKBPファミリーメンバーの1つまたは複数のフラグメントを含む融合ポリペプチド、および抗体のスクリーニング/選択、エピトープマッピング方法におけるその使用、および当該融合ポリペプチドによって表される免疫原性ペプチドまたは2次構造に特異的に結合する抗体の製造のための免疫原としてのその使用を報告する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近年、治療抗体の製造は着実に増加しており、近い将来、治療抗体は様々な疾患の処置に利用可能な最大の治療剤グループになる可能性がある。治療抗体の効果は、それらの特異性、例えば特異的な標的認識結合機能からくるものである。
【0003】
抗体は、免疫原で免疫処置した実験動物から得ることができる。免疫原は、ほとんどの場合、ポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントである。免疫原を十分な量および純度で提供するため、組み換え生産された免疫原を使用することができる。
【0004】
一般に、ポリペプチドの組み換え生産に、原核生物細胞および真核生物細胞を使用することができる。組み換えポリペプチドは、可溶性の形態でまたは沈殿物(封入体)としてのいずれかで得ることができる。クロマトグラフィー精製の前に、封入体に含まれる不溶性のポリペプチドは可溶化する必要がある。
【0005】
一般に、免疫原は、合成性の、またはペプチド性の、または組み換え生産された、または融合、またはキメラ、または支持体結合されたポリペプチドである。免疫処置のために、免疫原は、単独またはアジュバント、例えばフロイントアジュバントと組み合わせてのいずれかで投与することができる。
【0006】
Knappe, T.A.ら(J. Mol. Biol. 368 (2007) 1458-1468)(非特許文献1)は、FKBP12のフラップ(Flap)領域を、構造的に関連する大腸菌(E.coli)シャペロンであるSlyDのIFドメインで置換できることを報告した。このキメラFKBP12-SlyD融合ポリペプチドは、単離されたポリペプチドと比較して、200倍高いペプチジル-プロリル-シス/トランス イソメラーゼ活性を有する。
【0007】
大腸菌SlyDおよびFKBP12(野生型ならびにC23AおよびC23S変異体)は、大腸菌において、可溶性形態で高収率で組み換え生産することができる(Standaert, R.F., et al., Nature 346(1990) 671-674(非特許文献2))。
【0008】
好熱性生物由来のFKBPおよび大腸菌SlyDは、大腸菌における融合ポリペプチドの組み換え発現におけるシャペロンとして使用することができる(Ideno, A., et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 64 (2004) 99-105(非特許文献3))。大腸菌SlyDおよびFKBP12ポリペプチドは、可逆的にフォールディングするポリペプチドである(Scholz, C., et al., J. Biol. Chem. 271 (1996) 12703-12707(非特許文献4))。
【0009】
FKBP12ポリペプチドのアミノ酸配列は、60位に単一のトリプトファン残基を含んでいる。したがってFKBP12変異体は、単にトリプトファン蛍光を分析することによって構造完全性について分析することができる(DeCenzo, M.T., et al., Protein Eng. 9 (1996) 173-180(非特許文献5))。FKBP12変異体の残存触媒活性の試験は、残存するロタマーゼ活性を決定することにより行うことができる(Brecht, S., et al., Neuroscience 120 (2003) 1037-1048(非特許文献6); Schories, B., et al., J. Pept. Sci. 13 (2007) 475-480(非特許文献7); Timerman, A.P., et al., J. Biol. Chem. 270 (1995) 2451-2459(非特許文献8))。FK506またはラパマイシン結合を決定することによってFKBP12変異体の構造完全性を決定することも可能である(DeCenzo, M.T., et al., Protein Eng. 9 (1996) 173-180(非特許文献9))。
【0010】
McNamara, A.ら(J. Org. Chem. 66 (2001) 4585-4594)(非特許文献10)は、2つのC(アルファ)部位間の脂肪族結合により拘束されたペプチド:i,(i+4)結合ペプチドのデザイン、合成、および予想外の立体配座特性を報告している。
【0011】
Suzukiら(Suzuki, R., et al., J. Mol. Biol. 328 (2003) 1149-1160(非特許文献11))は、ペプチジル-プロリル-シス-トランス イソメラーゼおよびシャペロン様活性の2機能を有する古細菌FKBPの3次元溶液構造を報告している。発現ベクター、宿主、融合ポリペプチド、融合ポリペプチドの製造プロセスおよびタンパク質の製造プロセスは、EP 1 516 928で報告されている。Knappe, T.A.らは、シャペロンドメインの挿入によりFKBP12が強力なタンパク質フォールディングの触媒に変化することを報告している(J. Mol. Biol. 368 (2007) 1458-1468(非特許文献1))。優れたシャペロンおよびフォールディング活性を有するキメラ融合ポリペプチドは、WO 2007/077008(特許文献1)で報告されている。WO 03/000878(特許文献2)では、発現ツールとしてのFKBPシャペロンの使用が報告されている。EP 1 621 555(特許文献3)では、免疫原、免疫学的利用のための組成物およびこれを用いて抗体を製造する方法が報告されている。Rebuzzini, G.(University of Milano-Bicocca (Italy)におけるPhD研究(2009))は、C型肝炎ウイルスNS3ヘリカーゼドメインの化学発光免疫アッセイへの応用に関する研究を報告している。
【0012】
WO 2007/077008(特許文献1)では、優れたシャペロンおよびフォールディング活性を有するキメラ融合タンパク質が報告されている。シャペロンドメインの挿入による強力なタンパク質フォールディング触媒へのFKBP12の変換は、Knappeら(Knappe, T.A., et al., J. Mol. Biol. 368 (2007) 1458-1468(非特許文献1))によって報告されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO 2007/077008
【特許文献2】WO 03/000878
【特許文献3】EP 1 621 555
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Knappe, T.A.ら(J. Mol. Biol. 368 (2007) 1458-1468)
【非特許文献2】Standaert, R.F., et al., Nature 346(1990) 671-674
【非特許文献3】Ideno, A., et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 64 (2004) 99-105
【非特許文献4】Scholz, C., et al., J. Biol. Chem. 271 (1996) 12703-12707
【非特許文献5】DeCenzo, M.T., et al., Protein Eng. 9 (1996) 173-180
【非特許文献6】Brecht, S., et al., Neuroscience 120 (2003) 1037-1048
【非特許文献7】Schories, B., et al., J. Pept. Sci. 13 (2007) 475-480
【非特許文献8】Timerman, A.P., et al., J. Biol. Chem. 270 (1995) 2451-2459
【非特許文献9】DeCenzo, M.T., et al., Protein Eng. 9 (1996) 173-180
【非特許文献10】McNamara, A.ら(J. Org. Chem. 66 (2001) 4585-4594)
【非特許文献11】Suzuki, R., et al., J. Mol. Biol. 328 (2003) 1149-1160
【発明の概要】
【0015】
本明細書で報告される融合ポリペプチドは、(i)PPIase活性を有するまたはFKBPファミリーに属する1つの、すなわち同一の、または異なるポリペプチド由来の1つまたは複数の部分、および(ii)その間に挿入された免疫原性ポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。
【0016】
本明細書で報告される融合ポリペプチドは、PPIase活性を有するまたはFKBPファミリーに属する1つまたは複数のポリペプチド由来の1つまたは複数の部分に挿入された免疫原性ポリペプチドに特異的に結合する抗体を作製するための、動物の免疫処置に使用することができる。
【0017】
本明細書で報告される1つの局面は、式Iの融合ポリペプチドであって、
NH2-S2-X1-S1-COOH (式I)
式中、
X1は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかを含み、
S2およびS1は、第2ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であり、
-はペプチド結合を表し、
ここで、該第2ポリペプチドは、ペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性(PPIase活性)を有するポリペプチドであるかまたはFKBPドメインファミリー由来である、
前記融合ポリペプチドである。
【0018】
本明細書で報告される融合ポリペプチドにより、(天然に存在する)アミノ酸配列の内部(いわゆる隠れたまたは埋もれた)エピトープに特異的に結合する抗体を得ることができることが見出された。内部エピトープは、例えばその抗原性ポリペプチド(例えば、受容体)の活性化および同時に起こる立体配座変化の際にしかアクセスできないため、古典的な免疫処置プロトコルではアクセスすることができない。さらに、別の方法では十分な量または質で提供するのが困難な構造に由来する免疫原性ポリペプチドに特異的に結合する抗体を得ることができる。
【0019】
本明細書で報告される融合ポリペプチドは、例えば抗体のスクリーニング/選択またはエピトープマッピング方法におけるペプチドの2次および3次構造のディスプレイのためにならびに提示された抗原性アミノ酸配列または2次構造に特異的に結合する抗体の製造のための免疫原として使用することができる、キメラ組み換えポリペプチドである。本明細書で報告されるポリペプチドは、組み換え生産することができ、熱力学的に安定であり、モノマーであり、かつ水溶液に溶解する。
【0020】
本明細書で報告される1つの局面は、式IIの融合ポリペプチドであって、
NH2-S4-X2-S3-S2-X1-S1-S0-COOH (式II)
式中、
X1は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかを含み、
S2およびS1は、第2ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であり、
S3およびS0は、存在しないかまたは第3ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であるかのいずれかであり、
S4は、存在しないかまたは第4ポリペプチド由来のアミノ酸配列であるかのいずれかであり、
X2は、存在しないかまたはペプチド性リンカー配列であるかのいずれかであり、
-はペプチド結合を表し、
ここで、該第2ポリペプチドおよび該第3ポリペプチドおよび該第4ポリペプチドは、互いに異なっており、かつペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性(PPIase活性)を有するポリペプチドであるかまたはFKBPドメインファミリー由来である、
前記融合ポリペプチドである。
【0021】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、ペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性を有するかまたはFKBPドメインファミリー由来である第2ポリペプチドは、SlyDである。
【0022】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドは、好熱菌由来のポリペプチドである。
【0023】
1つの態様において、好熱菌は、好熱性細菌である。1つの態様において、該好熱性細菌は、サーマス(Thermaceae)科由来である。1つの態様において、好熱菌は、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)である。
【0024】
1つの態様において、好熱菌は、好熱性古細菌である。1つの態様において、該好熱性古細菌は、超好熱性古細菌である。1つの態様において、好熱菌は、サーモコッカス(Thermococci)綱由来である。1つの態様において、好熱菌は、サーモコッカス・ガンマトレランス(Thermococcus gammatolerans)である。
【0025】
1つの態様において、好熱菌は、少なくとも60℃の最適成長温度を有する。
【0026】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、免疫原性配列は、X1アミノ酸配列に含まれる。1つの態様において、X1アミノ酸配列は、免疫原性配列およびペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性(PPIase活性)を有するさらなるポリペプチド由来またはFKBPフォールドドメインファミリーのさらなるポリペプチド由来の1つまたは複数の部分を含み、このさらなるポリペプチドは、第2ポリペプチドと異なるものである。
【0027】
X1のアミノ酸配列は、第2ポリペプチドのインサート・イン・フラップ(insert-in-flap)ドメイン(IFドメイン)の位置に挿入される。したがって、X1がIFドメインと同一である、すなわちIFドメインのアミノ酸配列を有する場合、融合ポリペプチドS2-X1-S1は、天然に存在する第2ポリペプチドの対応する部分と同一である。
【0028】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチド由来のS2およびS1アミノ酸配列は、野生型(天然に存在する)第2ポリペプチドのIFドメインによって相互に(直接)接続される。
【0029】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X1は、第2ポリペプチドのインサート・イン・フラップドメイン(IFドメイン)の位置に挿入される。
【0030】
本明細書で報告される1つの局面は、X1を除いて決定した場合は式Iの、またはX1、X2および非存在の配列を除いて決定した場合は式IIのポリペプチドに対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドである。1つの態様において、ポリペプチドは、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する。1つの態様において、ポリペプチドは、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。1つの態様において、ポリペプチドは、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する。1つの態様において、ポリペプチドは、少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0031】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X1は、隠れたエピトープに対応するアミノ酸配列を含む。
【0032】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X1は、4〜約500アミノ酸残基のアミノ酸配列長を有する。1つの態様において、X1は、5〜約100アミノ酸残基のアミノ酸配列長を有する。1つの態様において、X1は、約7〜約60アミノ酸残基のアミノ酸配列長を有する。
【0033】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X1の少なくとも1つのアミノ酸残基は、翻訳後修飾を含む。1つの態様において、X1の1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10のアミノ酸残基が、翻訳後修飾を含む。
【0034】
1つの態様において、融合ポリペプチドは、以下の式にしたがうものであり、
NH2-S3-S2-X1-S1-S0-COOH
式中、
X1は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかを含み、
S2およびS1は、第2ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であり、
S3およびS0は、存在しないかまたは第3ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であるかのいずれかであり、
-はペプチド結合を表し、
ここで、第2ポリペプチドおよび第3ポリペプチドは、互いに異なっており、かつペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性(PPIase活性)を有するかまたはFKBPドメインファミリー由来のポリペプチドである。
【0035】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドおよび第3ポリペプチドおよび第4ポリペプチドは、異なる種由来である。
【0036】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドは、ヒトポリペプチドまたは植物ポリペプチドまたは細菌ポリペプチドまたは古細菌ポリペプチドである。
【0037】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第3ポリペプチドは、ヒトポリペプチドまたは細菌ポリペプチドまたは古細菌ポリペプチドである。
【0038】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第4ポリペプチドは、細菌ポリペプチドまたは古細菌ポリペプチドである。
【0039】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第4ポリペプチドは、細菌ポリペプチドである。1つの態様において、該細菌ポリペプチドは、好熱性細菌由来のポリペプチドである。1つの態様において、好熱菌は、サーマス科由来である。1つの態様において、好熱菌は、サーマス・サーモフィルスである。
【0040】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第4ポリペプチドは、古細菌ポリペプチドである。1つの態様において、該古細菌ポリペプチドは、超好熱性古細菌由来のポリペプチドである。1つの態様において、好熱菌は、サーモコッカス綱由来である。1つの態様において、古細菌生物は、サーモコッカス・ガンマトレランスである。
【0041】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、好熱菌は、少なくとも60℃の最適成長温度を有する。
【0042】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第1ポリペプチドは、ヒトポリペプチドである。
【0043】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X1は、ジペプチドGSがN末端に付加されかつトリペプチドGSSがC末端に付加された、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかである。
【0044】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X1は、式IIIのポリペプチドであり、
XaXbXcXd-X0-XeXfXgXh (式III)
式中、X0は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかであり、
Xa〜Xhの各々は(天然に存在する)アミノ酸残基を表し、Xa〜hのいずれも個々に存在しても存在しなくてもよい。
【0045】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X1は、式IV〜式XIII、
GS-X0-GSS (式IV)、
AGS-X0-GSS (式V)、
CG-X0-GC (式VI)、
C-X0-GC (式VII)、
G-X0-G (式VIII)、
S-X0-GSS (式IX)、
GG-X0-GG (式X)、
G-X0-TGG (式XI)、
GGGS-X0-GGGS (式XII)、
GGNP-X0-GPT (式XIII)、
からなる群より選択されるポリペプチドであり、式中、X0は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかである。
【0046】
1つの態様において、X0は、そのN末端およびC末端で、個別の(単一の)システイン残基に隣接している。
【0047】
1つの態様において、X1は、N末端アミノ酸残基内にシステイン残基、およびC末端アミノ酸残基内にシステイン残基を含む。1つの態様において、NまたはC末端アミノ酸残基は、8つの末端残基である。1つの態様において、X1は、そのN末端に1つのシステイン残基、およびそのC末端に1つのシステイン残基を含む。
【0048】
1つの態様において、X1は、環状に拘束されたポリペプチドである。
【0049】
1つの態様において、X1は、環状ポリペプチドである。
【0050】
1つの態様において、X1のシステイン残基は、4.3オングストローム〜6.5オングストロームのアルファ炭素原子間距離を有する。1つの態様において、X1のシステイン残基は、4.5オングストロームのアルファ炭素間距離を有する。1つの態様において、X1のシステイン残基は、5.6オングストロームの平均アルファ炭素原子間距離を有する。
【0051】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X1またはX0は、4〜約500アミノ酸残基の長さを有する。
【0052】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X2は、約10〜約30アミノ酸残基のリンカーアミノ酸配列である。
【0053】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)FKBP13(SEQ ID NO:01)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS4、X2、S3およびS0は存在しない。1つの態様において、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:02(DRGAGC)を有し、かつS1はアミノ酸配列SEQ ID NO:03(CLIPPASV)を有し、かつS4、X2、S3およびS0は存在しない。1つの態様において、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:04を有し、かつS1はアミノ酸配列SEQ ID NO:05を有し、S4、X2、S3およびS0は存在せず、かつX1は式IVのポリペプチド(GS-X0-GSS)である。
【0054】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはヒトFKBP12(SEQ ID NO:06)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS4、X2、S3およびS0は存在しない。1つの態様において、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:07を有し、かつS1はアミノ酸配列SEQ ID NO:08(LVFDVELLKLE)を有し、かつS4、X2、S3およびS0は存在せず、かつX1は式III(GS-X0-GSS)または式VI((P)CG-X0-GC)のポリペプチドである。
【0055】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはサーマス・サーモフィルスSlyD(SEQ ID NO:09)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS4、X2、S3およびS0は存在しない。1つの態様において、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:10を有し、かつS1はアミノ酸配列SEQ ID NO:11を有し、かつS4、X2、S3およびS0は存在せず、かつX1は式V(AGS-X0-GSS)または式VI((P)CG-X0-GC)のポリペプチドである。
【0056】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはシロイヌナズナFKBP13(SEQ ID NO:01)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第3ポリペプチドはヒトFKBP12(SEQ ID NO:06)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS4およびX2は存在しない。1つの態様において、S3はSEQ ID NO:07のアミノ酸配列を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:02(DRGAGC)を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:03(CLIPPASV)を有し、S0はアミノ酸配列SEQ ID NO:08(LVFDVELLKLE)を有し、S4およびX2は存在せず、かつX1は式IV(GS-X0-GSS)または式VI((P)CG-X0-GC)のポリペプチドである。
【0057】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはシロイヌナズナFKBP13(SEQ ID NO:01)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第3ポリペプチドはサーマス・サーモフィルスSlyD(SEQ ID NO:09)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS4およびX2は存在しない。1つの態様において、S3はSEQ ID NO:10のアミノ酸配列を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:02(DRGAGC)を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:03(CLIPPASV)を有し、S0はアミノ酸配列SEQ ID NO:11(LVFDVELLKLE)を有し、S4およびX2は存在せず、かつX1は式IV(GS-X0-GSS)または式VI((P)CG-X0-GC)のポリペプチドである。
【0058】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはシロイヌナズナFKBP13(SEQ ID NO:01)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第3ポリペプチドはヒトFKBP12(SEQ ID NO:06)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS4およびX2は存在しない。1つの態様において、S3はSEQ ID NO:07のアミノ酸配列を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:02(DRGAGC)を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:03(CLIPPASV)を有し、S0はアミノ酸配列SEQ ID NO:08(LVFDVELLKLE)を有し、S4およびX2は存在せず、かつX1は式IV(GS-X0-GSS)または式VI((P)CG-X0-GC)のポリペプチドである。
【0059】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはシロイヌナズナFKBP13(SEQ ID NO:01)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、第3ポリペプチドはヒトFKBP12(SEQ ID NO:06)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第4ポリペプチドは大腸菌SlyD(SEQ ID NO:12)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドである。1つの態様において、S4はアミノ酸配列SEQ ID NO:12を有し、X2はアミノ酸配列SEQ ID NO:13を有し、S3はSEQ ID NO:07のアミノ酸配列を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:02(DRGAGC)を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:03(CLIPPASV)を有し、S0はアミノ酸配列SEQ ID NO:08(LVFDVELLKLE)を有し、かつX1は式IV(GS-X0-GSS)または式VI((P)CG-X0-GC)のポリペプチドである。
【0060】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはシロイヌナズナFKBP13(SEQ ID NO:01)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、第3ポリペプチドはサーマス・サーモフィルスSlyD(SEQ ID NO:09)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第4ポリペプチドは大腸菌SlyD(SEQ ID NO:12)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドである。1つの態様において、S4はアミノ酸配列SEQ ID NO:12を有し、X2はアミノ酸配列SEQ ID NO:13を有し、S3はSEQ ID NO:10のアミノ酸配列を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:02(DRGAGC)を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:03(CLIPPASV)を有し、S0はアミノ酸配列SEQ ID NO:11(LVFDVELLKLE)を有し、かつX1は式IV(GS-X0-GSS)または式VI((P)CG-X0-GC)のポリペプチドである。
【0061】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはサーマス・サーモフィルスSlyD(SEQ ID NO:09)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第4ポリペプチドは大腸菌SlyD(SEQ ID NO:12)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS3およびS0は存在しない。1つの態様において、S4はアミノ酸配列SEQ ID NO:12を有し、X2はアミノ酸配列SEQ ID NO:13を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:10を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:11を有し、S3およびS0は存在せず、かつX1は式V(AGS-X0-GSS)または式VI((P)CG-X0-GC)のポリペプチドである。
【0062】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはシロイヌナズナFKBP13(SEQ ID NO:01)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第4ポリペプチドは大腸菌SlyD(SEQ ID NO:12)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS3およびS0は存在しない。1つの態様において、S4はアミノ酸配列SEQ ID NO:12を有し、X2はアミノ酸配列SEQ ID NO:13を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:04を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:05を有し、S3およびS0は存在せず、かつX1は式IV(GS-X0-GSS)または式VI((P)CG-X0-GC)のポリペプチドである。
【0063】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD(SEQ ID NO:106)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS4、X2、S3およびS0は存在しない。1つの態様において、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:107を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:108を有し、S4、X2、S3およびS0は存在せず、かつX1は式IV〜式XIIIから選択されるポリペプチドである。
【0064】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはシロイヌナズナFKBP13(SEQ ID NO:01)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第3ポリペプチドはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD(SEQ ID NO:106)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS4およびX2は存在しない。1つの態様において、S3はSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:02(DRGAGC)を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:03(CLIPPASV)を有し、S0はアミノ酸配列SEQ ID NO:108を有し、S4およびX2は存在せず、かつX1は式IV〜式XIIIから選択されるポリペプチドである。
【0065】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはシロイヌナズナFKBP13(SEQ ID NO:01)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、第3ポリペプチドはヒトFKBP12(SEQ ID NO:06)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第4ポリペプチドはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD(SEQ ID NO:106)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドである。1つの態様において、S4はアミノ酸配列SEQ ID NO:106を有し、X2はアミノ酸配列SEQ ID NO:13を有し、S3はSEQ ID NO:07のアミノ酸配列を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:02(DRGAGC)を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:03(CLIPPASV)を有し、S0はアミノ酸配列SEQ ID NO:08(LVFDVELLKLE)を有し、かつX1は式IV〜式XIIIから選択されるポリペプチドである。
【0066】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはシロイヌナズナFKBP13(SEQ ID NO:01)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、第3ポリペプチドはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD(SEQ ID NO:106)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第4ポリペプチドは大腸菌SlyD(SEQ ID NO:12)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドである。特定の態様において、S4はアミノ酸配列SEQ ID NO:12を有し、X2はアミノ酸配列SEQ ID NO:13を有し、S3はSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:02(DRGAGC)を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:03(CLIPPASV)を有し、S0はアミノ酸配列SEQ ID NO:108を有し、かつX1は式IV〜式XIIIから選択されるポリペプチドである。
【0067】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD(SEQ ID NO:106)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第4ポリペプチドは大腸菌SlyD(SEQ ID NO:12)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS3およびS0は存在しない。1つの態様において、S4はアミノ酸配列SEQ ID NO:12を有し、X2はアミノ酸配列SEQ ID NO:13を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:107を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:108を有し、S3およびS0は存在せず、かつX1は式IV〜式XIIIから選択されるポリペプチドである。
【0068】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、第2ポリペプチドはシロイヌナズナFKBP13(SEQ ID NO:01)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつ第4ポリペプチドはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD(SEQ ID NO:106)であるか、または少なくとも70%もしくは少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%もしくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり、かつS3およびS0は存在しない。1つの態様において、S4はアミノ酸配列SEQ ID NO:107を有し、X2はアミノ酸配列SEQ ID NO:13を有し、S2はアミノ酸配列SEQ ID NO:04を有し、S1はアミノ酸配列SEQ ID NO:05を有し、S3およびS0は存在せず、かつX1は式IV〜式XIIIから選択されるポリペプチドである。
【0069】
本明細書で報告される局面の融合ポリペプチドは、例えば大腸菌において良好な収率で組み換え生産できるので、多くの用途を有する。例えば、融合ポリペプチドは、免疫処置、抗体作製、抗体スクリーニング、抗体エピトープマッピングまたは免疫組織化学スクリーニングにおいてアミノ酸配列を表すために使用することができる。
【0070】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X2は、アミノ酸配列
を有する。
【0071】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X1は、アミノ酸配列
を有し、ここで、X0は4〜85アミノ酸残基のアミノ酸配列である。
【0072】
1つの態様において、大腸菌SlyDおよびヒトFKBP12のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドが、不安定な立体配座のポリペプチドの提示のために使用される。
【0073】
1つの態様において、ヒトFKBP12およびシロイヌナズナFKBP13、またはサーマス・サーモフィルスSlyD単独、またはサーマス・サーモフィルスSlyDおよびシロイヌナズナFKBP13、またはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD単独、またはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyDおよびシロイヌナズナFKBP13のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドが、安定な2次構造の提示のために使用される。
【0074】
本明細書で報告される1つの局面は、動物においてX1またはX0に対する免疫応答を惹起するための本明細書で報告される融合ポリペプチドの使用である。
【0075】
本明細書で報告される1つの局面は、動物においてポリペプチドに対する免疫応答を惹起する方法であって、X0が免疫原性アミノ酸配列である本明細書で報告される融合ポリペプチドを動物に少なくとも1回投与する工程を含む前記方法である。
【0076】
本明細書で報告される1つの局面は、標的抗原に特異的に結合する抗体をコードする核酸を得る方法であって、以下の工程:
a)X1のアミノ酸配列が該標的抗原のアミノ酸配列を含む、本明細書で報告される融合ポリペプチドを動物に少なくとも1回投与する工程、
b)最後のポリペプチド投与の3〜10日後に、該標的抗原に特異的に結合する抗体を産生するB細胞を動物から回収する工程、および
c)標的抗原に特異的に結合する抗体をコードする核酸をB細胞から得る工程、
を含む前記方法である。
【0077】
本明細書で報告される1つの局面は、標的抗原に特異的に結合する抗体の製造方法であって、以下の工程:
a)X1のアミノ酸配列が該標的抗原のアミノ酸配列を含む、本明細書で報告される融合ポリペプチドを動物に少なくとも1回投与する工程、
b)最後のポリペプチド投与の3〜10日後に、該標的抗原に特異的に結合する抗体を産生するB細胞を動物から回収する工程、
c)場合により、該標的抗原に特異的に結合する抗体をコードする核酸をB細胞から得る工程、および
d)該標的抗原に特異的に結合する抗体をコードする核酸を含む細胞を培養し、細胞または培養培地から抗体を回収し、それによって標的抗原に特異的に結合する抗体を製造する、工程、
を含む前記方法である。
【0078】
本明細書で報告される1つの局面は、標的抗原に特異的に結合する抗体の製造方法であって、以下の工程:
a)本明細書で報告される融合ポリペプチドの投与後の実験動物から、X0のアミノ酸配列を有する、該標的抗原に特異的に結合する抗体を産生するB細胞を回収する工程、および
b)X0のアミノ酸配列に特異的に結合する抗体をコードする核酸を含む細胞を培養し、該抗体を細胞または培養培地から回収し、それによって標的抗原に特異的に結合する抗体を製造する工程、
を含む前記方法である。
【0079】
本明細書で報告される1つの局面は、X1のアミノ酸配列がエピトープを含む本明細書で報告される融合ポリペプチドの、エピトープマッピングにおける使用である。
【0080】
本明細書で報告される1つの局面は、標的抗原に特異的に結合する抗体を選択する方法であって、以下の工程:
a)本明細書で報告される融合ポリペプチドのX1のアミノ酸配列が該標的抗原のアミノ酸配列を含む、標的抗原に対する複数の抗体の結合親和性を決定する工程、
b)予め規定された閾値レベルを超える見かけの複合体安定性を有する抗体を選択する工程、
を含む前記方法である。
【0081】
本明細書で報告される1つの局面は、標的ポリペプチドの免疫組織化学分析に適した抗体を選択する方法であって、以下の工程:
a)複数の抗体の結合キネティクスを決定する工程、
c)予め規定された閾値レベルを超える見かけの複合体安定性を有する抗体を選択する工程、
を含む前記方法である。
【0082】
本明細書で報告される1つの局面は、標的アミノ酸配列に対する抗体の結合部位をマッピングする方法であって、以下の工程:
a)X1のアミノ酸配列が該標的アミノ酸配列を含む、本明細書で報告される融合ポリペプチドが固定化された固相支持体を抗体と接触させる工程、
b)本明細書で報告される融合ポリペプチドとの抗体のキネティクス特性を決定する工程、
c)予め規定された閾値レベルを超える見かけの複合体安定性を有する抗体を選択する工程、
を含む前記方法である。
【0083】
本明細書で報告される1つの局面は、X1のアミノ酸配列が、構造-機能の関係を決定したいポリペプチドを含む、構造-機能の関係を決定するための、本明細書で報告される融合ポリペプチドの使用である。
【0084】
本明細書で報告される1つの局面は、X1のアミノ酸配列がポリペプチドを含む、ポリペプチドをその正確な2次および/または3次構造で提示するための、本明細書で報告される融合ポリペプチドの使用である。
【0085】
本明細書で報告される1つの局面は、スクリーニング方法における、本明細書で報告される融合ポリペプチドの使用である。
【0086】
1つの態様において、スクリーニング方法は、X1に特異的に結合する分子を同定または選択するためのスクリーニング方法である。1つの態様において、分子は、低分子またはポリペプチドである。1つの態様において、ポリペプチドは、抗体または抗体フラグメントまたは抗体融合ポリペプチドである。
【0087】
本明細書で報告される1つの局面は、リボソームディスプレイにおける、本明細書で報告される融合ポリペプチドの使用である。
【0088】
本明細書で報告される1つの局面は、ファージディスプレイにおける、本明細書で報告される融合ポリペプチドの使用である。
【0089】
本明細書で報告される1つの局面は、細胞表面ディスプレイにおける、本明細書で報告されるポリペプチドの使用である。1つの態様において、細胞は、原核生物細胞である。1つの態様において、該原核生物細胞は、細菌細胞である。1つの態様において、細胞は、真核生物細胞である。1つの態様において、該真核生物細胞は、CHO細胞、またはHEK細胞、またはBHK細胞、またはSp2/0細胞、またはNS0細胞、または酵母細胞である。
【0090】
本明細書で報告される1つの局面は、本明細書で報告される方法によって製造される抗体である。
【0091】
本明細書で報告される1つの局面は、本明細書で報告される融合ポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的調合物である。
【0092】
本明細書で報告される1つの局面は、検出可能な標識に結合された本明細書で報告される融合ポリペプチドを含む診断用調合物である。
【0093】
本明細書で報告される1つの局面は、医薬の製造における本明細書で報告される融合ポリペプチドの使用である。
【0094】
本明細書で報告される1つの局面は、疾患の処置のための、本明細書で報告される融合ポリペプチドの使用である。
【0095】
本明細書で報告される1つの局面は、個体を処置する方法であって、有効量の本明細書で報告される融合ポリペプチドを個体に投与する工程を含む、前記方法である。
[本発明1001]
式Iのポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、
NH2-S2-X1-S1-COOH (式I)
式中、
X1は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかを含み、
S2およびS1は、第2ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であり、
-はペプチド結合を表し、
ここで、該第2ポリペプチドは、ペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性(PPIase活性)を有するポリペプチドであるかまたはFKBPフォールドドメインファミリー由来であり、かつ
X1は、第2ポリペプチドのインサート・イン・フラップ(insert-in-flap)ドメイン(IFドメイン)の位置に挿入されている、
前記融合ポリペプチド。
[本発明1002]
融合ポリペプチドが式IIのポリペプチドを含むことを特徴とし、
NH2-S4-X2-S3-S2-X1-S1-S0-COOH (式II)
式中、
X1は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかを含み、
S2およびS1は、どちらも第2ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であり、
S3およびS0は、存在しないかまたは第3ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であるかのいずれかであり、
S4は、存在しないかまたは第4ポリペプチド由来のアミノ酸配列であるかのいずれかであり、
X2は、存在しないかまたはペプチド性リンカー配列であるかのいずれかであり、
ここで、該第2ポリペプチドおよび該第3ポリペプチドおよび該第4ポリペプチドは、互いに異なっており、かつペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性(PPIase活性)を有するポリペプチドであるおよび/またはFKBPフォールドドメインファミリー由来であり、かつ
X1は、該第2ポリペプチドのインサート・イン・フラップドメイン(IFドメイン)の位置に挿入されている、
本発明1001の融合ポリペプチド。
[本発明1003]
X1がIFドメインの場合、S2-X1-S1ポリペプチドが、天然に存在するポリペプチドのフラグメントまたは天然に存在するポリペプチドの全長であることを特徴とする、前記本発明のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1004]
前記第2ポリペプチドが、SlyDであることを特徴とする、前記本発明のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1005]
前記第2ポリペプチドが、好熱菌由来のポリペプチドであることを特徴とする、前記本発明のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1006]
好熱菌が、好熱性細菌または好熱性古細菌であることを特徴とする、本発明1005の融合ポリペプチド。
[本発明1007]
好熱菌が、サーマス(Thermaceae)科由来であることを特徴とする、本発明1005〜1006のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1008]
好熱菌が、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)であることを特徴とする、本発明1005〜1007のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1009]
好熱性古細菌が、超好熱性古細菌であることを特徴とする、本発明1005〜1006のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1010]
好熱菌が、サーモコッカス(Thermococci)綱由来であることを特徴とする、本発明1005〜1006および1009のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1011]
好熱菌が、サーモコッカス・ガンマトレランス(Thermococcus gammatolerans)であることを特徴とする、本発明1005〜1006および1009〜1010のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1012]
X1が、隠れたエピトープに対応するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、前記本発明のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1013]
前記第2ポリペプチドおよび前記第3ポリペプチドおよび前記第4ポリペプチドが、異なる種由来であることを特徴とする、本発明1002〜1012のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1014]
前記第2および/または第3ポリペプチドが、少なくとも60℃の最適成長温度を有する好熱菌由来のポリペプチドであることを特徴とする、前記本発明のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1015]
好熱菌が、サーマス・サーモフィルスまたはサーモコッカス・ガンマトレランスであることを特徴とする、本発明1014の融合ポリペプチド。
[本発明1016]
X1が、式IIIのポリペプチドであることを特徴とし、
XaXbXcXd-X0-XeXfXgXh (式III)
式中、X0は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかであり、
Xa〜Xhの各々はアミノ酸残基を表し、かつXa〜hのいずれも個々に存在しても存在しなくてもよい、
前記本発明のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1017]
X1が、
GS-X0-GSS (式VI)、
AGS-X0-GSS (式V)、
CG-X0-GC (式VI)、
C-X0-GC (式VII)、
G-X0-G (式VIII)、
S-X0-GSS (式IX)、
GG-X0-GG (式X)、
G-X0-TGG (式XI)、
GGGS-X0-GGGS (式XII)、
GGNP-X0-GPT (式XIII)、
からなる群より選択されるポリペプチドであり、式中、X0は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかであることを特徴とする、前記本発明のいずれかの融合ポリペプチド。
[本発明1018]
実験動物においてX1に対する免疫応答を惹起するための、本発明1001〜1017のいずれかの融合ポリペプチドの使用。
[本発明1019]
実験動物において、あるポリペプチドに対する免疫応答を惹起する方法であって、実験動物に対して、X1が該ポリペプチドのアミノ酸配列である本発明1001〜1017のいずれかの融合ポリペプチドを少なくとも1回投与する工程を含む、前記方法。
[本発明1020]
以下の工程を含む、標的抗原に特異的に結合する抗体を製造する方法:
a)実験動物に対して、X1のアミノ酸配列が該標的抗原のアミノ酸配列を含む本発明1001〜1017のいずれかの融合ポリペプチドを少なくとも1回投与する工程、
b)最後のポリペプチド投与の3〜10日後の実験動物から、該標的抗原に特異的に結合する抗体を産生するB細胞を回収する工程、および
c)該標的抗原に特異的に結合する抗体をコードする核酸を含む細胞を培養し、細胞または培養培地から抗体を回収し、それによって標的抗原に特異的に結合する抗体を製造する工程。
[本発明1021]
以下の工程を含む、標的抗原に特異的に結合する抗体を製造する方法:
a)本発明1001〜1017のいずれかの融合ポリペプチドの投与後の実験動物から、X1のアミノ酸配列に特異的に結合する抗体を産生するB細胞を回収する工程、および
b)X1のアミノ酸配列に特異的に結合する抗体をコードする核酸を含む細胞を培養し、細胞または培養培地から抗体を回収し、それによって標的抗原に特異的に結合する抗体を製造する工程。
[本発明1022]
X1のアミノ酸配列がエピトープを含む本発明1001〜1017のいずれかの融合ポリペプチドの、エピトープマッピングのための使用。
[本発明1023]
以下の工程を含む、標的抗原に特異的に結合する抗体を選択する方法:
a)本発明1001〜1017のいずれかの融合ポリペプチドのX1のアミノ酸配列が該標的抗原のアミノ酸配列を含む、固定化された標的抗原に対する複数の抗体の結合親和性を決定する工程、
b)予め規定された閾値レベルを超える見かけの複合体安定性を有する抗体を選択する工程。
[本発明1024]
標的抗原に特異的に結合する抗体を選択する方法であって、抗体を生成するための動物の免疫処置が、サーマス・サーモフィルス(Thermo thermophilus)SlyD-インサートを含む融合ポリペプチドおよびサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-インサートを含む融合ポリペプチドを抗体の選択に用いて行われる、前記方法。
[本発明1025]
標的抗原に特異的に結合する抗体を選択する方法であって、抗原に特異的に結合する抗体の選択が、サーマス・サーモフィルスSlyD-インサートを含む融合ポリペプチドおよびサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-インサートを含む融合ポリペプチドを抗体の生成(免疫処置)に用いて行われる、前記方法。
[本発明1026]
本発明1019〜1021および1023〜1025のいずれかの方法により得られる抗体。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】SlyD/FKBP12対照ポリペプチドのSDS PAGE(クマシー染色)およびウェスタンブロット(抗オクタhisタグ抗体との10秒間のインキュベーション)。
図2】A:ERCC1(PDB 1Z00):円で囲まれている部分はヘリックスターンヘリックスモチーブ(IAASREDLALSPGLGPQKARRLFD, C274S)である;B:FKBP12 C22A:円で囲まれた配列が置換された;FKBP12キメラはC末端で大腸菌SlyDに融合された。
図3】SlyD/FKBP12-ERCC1ポリペプチドのSDS PAGE(クマシー染色)および抗hisタグウェスタンブロット(10秒間暴露)。M - Novex Sharp標準;1〜2.5μg SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチド;2〜5.0μg SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチド;3〜10μg SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチド;M* - Magic Mark。
図4】300nm〜600nmの波長スキャンを600nm/分で行い、25℃、35℃、45℃、55℃、85℃でのSlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドの蛍光発光強度を記録した。
図5】FK-506に対するSlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドの結合を決定するためのBIAcoreアッセイのスキーム。
図6】溶液中分析物としての300nM SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドおよび300nM 野生型FKBP12 対 センサー表面に提示されたビオチニル化リガンドbi-FK506。
図7】SlyD/FKBP12-対照融合ポリペプチドの分析用HPLCのクロマトグラム。Ni-NTA精製の後、SlyD/FKBP12-対照がモノマーピークとして溶出している。
図8】SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドの分析用HPLCのクロマトグラム。Ni-NTA精製の後、SlyD/FKBP12-ERCC1がモノマーピークとして溶出している。
図9】溶液中分析物としてSlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドおよび300nM SlyD/FKBP12-対照を用いるBIAcore結合アッセイキネティクススクリーニングのスキーム。CM5センサー、Capture RAMFCy:ウサギ抗マウスFcガンマ捕捉抗体。
図10】溶液中分析物としてSlyD/FKBP12-ERCC1を用いたキネティクススクリーニングにより決定された、抗ERCC1抗体のキネティクス特性を示す最終安定(Stability Late)/最終結合(Binding Late)プロット。すべてのクローンが最終結合値>40RUで10-5 l/sの傾向線上に存在しており、このことは並外れた抗原複合体安定性を示している。SlyD/FKBP12-対照に対する結合は検出できない。
図11】キネティクススクリーニングにより決定された抗ERCC1抗体の特性。最終結合/抗体捕捉レベルプロットは、傾向線による結合価のコリドー(corridor)を示している。すべての5.00X.35姉妹クローン(円で囲まれたもの)は、この結合価のコリドー上のモル比=0.5からモル比=1の間に存在し、これらをさらなる処理のために選択した。
図12A】キネティクススクリーニングによって決定された抗ERCC1抗体のキネティクス特性の表。BL:最終結合、SlyD/FKBP12-ERCC1の結合フェーズの終点におけるシグナルの振幅の高さを相対反応単位で表したもの。SL:最終安定、SlyD/FKBP12-ERCC1の解離フェーズの終点のシグナルの振幅の高さを相対反応単位で表したもの。kd:解離フェーズのラングミュアフィットにしたがう解離速度定数(l/s)。t1/2 diss:t1/2 diss = ln(2)/(60*kd)の式にしたがい算出される、抗体-SlyD/FKBP12-ERCC1複合体の半減期を分で表したもの。
図12B】キネティクススクリーニングによって決定された抗ERCC1抗体のキネティクス特性の表。BL:最終結合、SlyD/FKBP12-ERCC1の結合フェーズの終点におけるシグナルの振幅の高さを相対反応単位で表したもの。SL:最終安定、SlyD/FKBP12-ERCC1の解離フェーズの終点のシグナルの振幅の高さを相対反応単位で表したもの。kd:解離フェーズのラングミュアフィットにしたがう解離速度定数(l/s)。t1/2 diss:t1/2 diss = ln(2)/(60*kd)の式にしたがい算出される、抗体-SlyD/FKBP12-ERCC1複合体の半減期を分で表したもの。
図13】溶液中分析物としてSlyD/FKBP12-ERCC1を用いた、クローン<ERCC1>M-5.3.35の例示的な抗ERCC1抗体単一濃度キネティクス。
図14】クローン<ERCC1>M-5.1.35を用いたウェスタンブロット。5μgのOVCAR-3およびHEK293細胞溶解産物をNuPAGE SDSゲル(Invitrogen)の各レーンに充填した。37kDaの特異的なERCC1バンドを検出した。
図15】SCLC癌サンプルのFFPE包埋ヒト癌組織におけるERCC1の免疫組織化学検出。白色の矢印は、より暗色に見える、上昇したERCC1レベルを有する細胞を示している。
図16】IGF-1(PDB:1PMX)およびIGF-2(PDB:1IGL)PyMOL1.4を重ねたもの。IGF-1およびIGF-2の配列アラインメント(clustalW)。黒枠は、IGF-1(74-90)およびIGF-2(53-65)のヘアピン配列を表している。
図17】サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドのSDS PAGE(クマシー染色)および抗hisタグウェスタンブロット(10秒間暴露)。M - Novex Sharp標準;1〜2.5μgサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチド;2〜5.0μgサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチド;3〜10μgサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチド;M* - Magic Mark。
図18】サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドの分析用HPLCのクロマトグラム。
図19】SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)を用いたNMRIマウスの12週免疫処置後にELISAにより決定された血清力価。mE:ミリ吸光度、IGF-1:ネイティブヒトIGF-1(Peprotech)。
図20】Balb/CおよびNMRIマウスの12週免疫処置後にELISAにより決定された血清力価。mE:ミリ吸光度、IGF-1:ネイティブヒトIGF-1(Peprotech)。
図21】IGF-1、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドおよびサーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチドに対する結合シグナルによる初代培養物のELISAスクリーニング。mE:ミリ吸光度、IGF-1:ネイティブヒトIGF-1(Peprotech)。
図22】IGF-1、IGF-2、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドおよびサーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチドに対する初代培養物<IGF-1>M-11.0.15の例示的なBIAcoreキネティクススクリーニング。
図23】IGF-1、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドおよびサーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチドに対するクローン培養物上清のELISAスクリーニング。IGF-1およびサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドに対して上昇した結合吸収シグナルが検出できた。
図24】IGF-1、IGF-2、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチド、サーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチド、サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD野生型ポリペプチド、サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチド、サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-IGF-2(53-65)融合ポリペプチドに対する、スキャホールドにより構築された<IGF-1>M-11.11.17-IgGのBIAcore測定。
図25】融合ポリペプチドにより構築された抗IGF-1抗体の結合キネティクスの表。mAb:モノクローナル抗体;RU:センサー上に捕捉されたモノクローナル抗体の相対反応単位;Antigen:溶液中の抗原:kDa:溶液中分析物として注入された抗原の分子量;ka:結合速度定数;kd:解離速度定数;t1/2 diss:t1/2 diss = ln(2)/60*kdの式にしたがい算出された抗体・抗原複合体の半減期;KD:解離定数;RMAX:90nM分析物注入の結合フェーズの終点における結合シグナル;MR:モル比;Chi2:測定失敗;n.d.:検出できず。
図26】DSC測定、10℃〜95℃の温度勾配でSlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドを融解させる2回の実施を重ねてプロットしたもの。SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドは、可逆的にフォールディングする。
図27】サーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチド、サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチド(FKBP)およびサーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドの近UV CDスペクトル。20℃ですべてのポリペプチドがそれらのネイティブ構造にフォールディングする。
図28】サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチドの温度依存的なCDスペクトル。加熱冷却の繰り返しは、サーマス・サーモフィルスSlyDのFKBPドメインが可逆的にフォールディングすることを示す。サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチドは、65℃まで安定であり、85℃でアンフォールディングする。
図29】サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドの温度依存的なCDスペクトル。100℃では低シグナル側のプラトーに達せず、このことは、この融合ポリペプチドがなおも完全にアンフォールディングしていないことを示している。この融合ポリペプチドは80℃まで安定でありフォールディングしている。
図30】モノマー性のサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドを含む画分を、凍結解凍サイクルの繰り返しおよび温度ストレス試験の後に再クロマトグラフィーした。100μlの50mM K2HPO4/KH2PO4、pH 7.0、100mM KCl、0.5mM EDTA中のサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドの0.75ml/分でのNi-NTA溶出画分300μgの280nm SUX 200プロフィール。
図31】サーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチドのSDS PAGE(クマシー染色)およびウェスタンブロット(抗オクタhisタグ抗体との10秒間のインキュベーション)。
図32A】このキネティクススクリーニングアプローチの抗IGF-1抗体に関する定量。空白のセルは、それぞれの値が検出できなかった/決定できなかったことを表す。
図32B】このキネティクススクリーニングアプローチの抗IGF-1抗体に関する定量。空白のセルは、それぞれの値が検出できなかった/決定できなかったことを表す。
図33】IGF-1の結合に関する12個のクローン培養物上清のキネティクス。
図34】大腸菌で発現させたFKBP12/13融合ポリペプチドのSDS PAGE(クマシー染色)。
図35】FKBP12/13融合ポリペプチド:Ni-NTA精製物のHPLC SEC溶出プロフィール。FKBP12/13融合ポリペプチドは大部分がモノマーである。
図36】SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドの分析用HPLCのクロマトグラム。
図37】クマシー染色したネイティブNovex(登録商標)8-16% Tris-Glycine Mini Gel(Invitrogen) BM:BenchMark(商標)Pre-Stained Protein Ladder(Invitrogen)。F4〜f10:サイズ排除クロマトグラフィーの溶出画分。画分8および画分9は、37kDaの単一の明確なタンパク質バンドを示している。
図38】異なる温度におけるSlyD-FKBP12/13-CSF1Rの蛍光発光。
図39】サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチドのSDS PAGE(クマシー染色)および抗hisタグウェスタンブロット(10秒間暴露)。タンパク質バンドは黒色の矢印で示されている。M - Novex Sharp標準;1〜2.5μgサーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチド;2〜5.0μgサーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチド;3〜10μgサーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチド;M* - Magic Mark。
図40】Ni-NTAクロマトグラフィー精製されたSlyD-FKBP12-CD81のSDSページ(左)およびウェスタンブロット(右)。M:Novex Sharp標準、1:SlyD/FKBP12-CD81;2.5μg MW:36kD、2:SlyD/FKBP12-CD81;5.0μg、3:SlyD/FKBP12-CD81;10μg M*:Magic Mark。
【発明を実施するための形態】
【0097】
発明の詳細な説明
概して、例えばX1のアミノ酸配列中に含まれる、抗原または抗原性もしくは免疫原性アミノ酸配列は、本明細書で報告される融合ポリペプチドの第2ポリペプチドのSlyD部分のインサート・イン・フラップドメイン(IFドメイン)の位置に挿入される。
【0098】
本明細書で報告されるすべての局面のうちの1つの態様において、X0は、天然に存在するポリペプチドのフラグメントから選択されるかまたはランダムなアミノ酸配列である。1つの態様において、天然に存在するポリペプチドは、ヒトポリペプチドである。
【0099】
X1アミノ酸配列を含む融合ポリペプチドは、一方では抗体生成のための動物の免疫処置に、他方ではランダム化によりまたは免疫処置後に得られる抗体ライブラリのスクリーニングに、使用することができる。任意のスクリーニングおよびディスプレイ技術、例えば、リボソームディスプレイ、ファージディスプレイ、細胞表面ディスプレイ、ウイルスディスプレイおよび本明細書で報告される融合ポリペプチドベースのディスプレイを用いることで、特異的結合因子を同定することもできる。
【0100】
サーマス・サーモフィルスSlyDおよびサーモコッカス・ガンマトレランス(Thermococcus gammadurans)SlyDは、それらのフラップドメインが外来アミノ酸挿入物X1で置き換えられた場合でさえも可逆的にフォールディングする能力を有する高安定性タンパク質である。これらの分子は、基本的にMattheakis, L. C., et al. Proc. Natl. Acad. Sci USA 91 (1994) 9022-9026)の方法にしたがい、リボソームディスプレイにおいて、サーマス・サーモフィルスSlyDまたはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyDのフレーム内でポリペプチド配列X1をディスプレイするために使用することができる。いわゆる三元複合体は、(3)リボソーム提示される融合ポリペプチドの遺伝子情報をコードする(2)mRNAに付加された(1)リボソームサブユニットからなる。
【0101】
三元複合体は、X1アミノ酸配列を特異的に認識する抗体または抗体フラグメントに対するパンニング手順において使用することができる。
【0102】
本明細書で報告される融合ポリペプチドは、本明細書で報告される融合ポリペプチドを用いた動物の免疫処置により得られる抗体のスクリーニング/選択に使用することができ、ここで動物の免疫処置に使用される融合ポリペプチドおよび得られる抗体のスクリーニングに使用される融合ポリペプチドは同一のX1アミノ酸配列を有し、そして残りのアミノ酸配列は異なっている。これにより、スキャホールドに特異的に結合し免疫原性ペプチドX1には特異的に結合しない抗体を除外することができる。
【0103】
1つの態様において、免疫処置に使用される融合ポリペプチドとスクリーニングに使用される融合ポリペプチドは、20%未満の配列同一性を有する。1つの態様において、配列同一性は、10%未満である。
【0104】
本明細書は、1つの局面として、そのN末端にサーマス・サーモフィルスSlyDポリペプチドのN末端フラグメント(SEQ ID NO:10)、すなわちサーマス・サーモフィルスSlyDポリペプチドの残基2〜64を含む融合ポリペプチドを報告する(番号付けは、SEQ ID NO:09のMを残基1として開始したものである)。その後に、X1に含まれる免疫原性配列が挿入される。融合ポリペプチドのC末端は、サーマス・サーモフィルスSlyDポリペプチドのアミノ酸残基123〜149(SEQ ID NO:11)およびアミノ酸配列
を有する任意の精製タグによって形成される。
【0105】
本明細書は、1つの局面として、そのN末端にサーモコッカス・ガンマトレランスSlyDポリペプチドのN末端フラグメント(SEQ ID NO:106)、すなわちサーモコッカス・ガンマトレランスSlyDポリペプチドの残基2〜85を含む融合ポリペプチドを報告する(番号付けは、SEQ ID NO:107のMを残基1として開始したものである)。その後に、X1に含まれる免疫原性配列が挿入される。融合ポリペプチドのC末端は、サーモコッカス・ガンマトレランスSlyDポリペプチドのアミノ酸残基137〜156(SEQ ID NO:108)およびアミノ酸配列
を有する任意の精製タグによって形成される。
【0106】
本明細書は、1つの局面として、そのN末端に大腸菌SlyDポリペプチドのN末端フラグメント、すなわち大腸菌SlyDポリペプチドの残基1〜165を含むポリペプチドを報告する(番号付けは、Mを残基1として開始したものである)。その後に、大腸菌SlyDフラグメントのC末端とヒトFKBP12ポリペプチドのN末端のフラグメント、すなわちヒトFKBP12ポリペプチドの残基2〜84、を接続するリンカーが挿入される(番号付けは、Mを残基1として開始したものである)。その後に、5〜500個のアミノ酸残基のアミノ酸配列が挿入され得る。ポリペプチドのC末端は、ヒトFKBP12ポリペプチドのアミノ酸残基97〜108およびアミノ酸配列
を有する精製タグによって形成される。
【0107】
本明細書で報告される1つの局面は、本明細書で報告される融合ポリペプチドの変種体であって、親ポリペプチドに対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ親ポリペプチドと比較して高い融点を有する変種体である。1つの態様において、融点は、少なくとも55℃である。1つの態様において、融点は、少なくとも60℃である。1つの態様において、融点は、少なくとも65℃である。
【0108】
「ポリペプチドに由来する」という用語は、それぞれのポリペプチドの全長アミノ酸配列のフラグメントであって、全長ポリペプチド内のそれぞれの配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するものが示されていることを表す。
【0109】
X1およびX0アミノ酸配列は、それぞれ、それが少なくとも5アミノ酸残基長である限り、自由に選択できる。例えば、挿入される配列は、白血球マーカー、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD11a、b、c、CD13、CD14、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD27およびそのリガンド、CD28およびそのリガンドB7.1、B7.2、B7.3、CD29およびそのリガンド、CD30およびそのリガンド、CD40およびそのリガンドgp39、CD44、CD45およびそのアイソフォーム、CDw52(キャンパス抗原)、CD56、CD58、CD69、CD72、CTLA-4、LFA-1およびTCR;組織適合抗原、MHCクラスIまたはII、ルイスY抗原、SLex、SLey、SLeaおよびSLeb;インテグリン、VLA-1、VLA-2、VLA-3、VLA-4、VLA-5、VLA-6、αVβ3およびLFA-1、Mac-1およびp150,95、αVβ1、gpIIbIIIa、αRβ3、α6β4、αVβ5、αVβ6およびαV 62 7;セレクチン、L-セレクチン、P-セレクチンおよびE-セレクチンならびにそれらの対抗受容体VCAM-1、ICAM-1、ICAM-2およびLFA-3;インターロイキン、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14およびIL-15; IL-1R、IL-2R、IL-3R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-7R、IL-8R、IL-9R、IL-10R、IL-11R、IL-12R、IL-13R、Il-14RおよびIL-15Rからなる群より選択されるインターロイキン受容体;PF4、RANTES、MIP1α、MCP1、NAP-2、Groα、GroβおよびIL-8からなる群より選択されるケモカイン;TNFアルファ、TGFベータ、TSH、VEGF/VPF、VEGFA、VEGFB、VEGF111、VEGF121、VEGF165、VEGF189、VEGF206、PTHrP、EGFファミリー、FGF、PDGFファミリー、エンドセリン、フィブロシン(FSF-1)、ヒトラミニンおよびガストリン放出ペプチド(GRP)、PLGF、HGH、HGHRからなる群より選択される成長因子;TNFアルファR、RGFベータR、TSHR、VEGFR/VPFR、FGFR、EGFR、PTHrPR、PDGFRファミリー、EPO-R、GCSF-Rおよび他の造血受容体からなる群より選択される成長因子受容体;IFNCαR、IFNβRおよびIFNλRからなる群より選択されるインターフェロン受容体;IgE、FcγRIおよびFcγRIIからなる群より選択されるIgおよびその受容体;her2-neu、ムチン、CEAおよびエンドシアリンからなる群より選択される腫瘍抗原;チリダニ抗原、lol p1(草)抗原およびウルシオールからなる群より選択されるアレルゲン;CMV糖タンパク質B、HおよびgCIII、HIV-1エンベロープ糖タンパク質、RSVエンベロープ糖タンパク質、HSVエンベロープ糖タンパク質、HPVエンベロープ糖タンパク質、肝炎ファミリー表面抗原からなる群より選択されるウイルスポリペプチド;緑膿菌内毒素およびオステオポンチン/ウロポンチン、ヘビ毒、クモ毒およびハチ毒コノトキシンからなる群より選択される毒素;補体C3b、補体C4a、補体C4b-9、Rh因子、フィブリノゲン、フィブリンおよびミエリン関連成長阻害因子からなる群より選択される血液因子;ならびにコレステロールエステル転移ポリペプチド、膜結合マトリクスメタロプロテアーゼおよびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)からなる群より選択される酵素、由来であり得る、すなわち、それらのフラグメントを含み得る。
【0110】
「ペプチド性リンカー配列」という用語は、天然および/または合成起源のペプチドリンカーを表す。これらは、20個の天然に存在するアミノ酸がモノマー基本単位となる直線状のアミノ酸鎖からなる。この鎖は10〜50アミノ酸、特に10〜30アミノ酸の長さを有する。リンカーは、反復するアミノ酸配列または天然に存在するポリペプチド、例えば、ヒンジ機能を有するポリペプチド、の配列を含み得る。1つの態様において、ペプチド性リンカーアミノ酸配列は、グリシン、グルタミンおよび/またはセリン残基が豊富なように設計された「合成性リンカーアミノ酸配列」である。これらの残基は、例えば、最大5アミノ酸の小さな反復単位、例えば、
として配置される。この小さな反復単位は、マルチマー単位を形成するよう、2〜6回繰り返され得る。マルチマー単位のアミノおよび/またはカルボキシ末端には、最大6つの追加、任意の、天然に存在するアミノ酸が付加され得る。他の合成性ペプチド性リンカーは、10〜20回繰り返されかつそのアミノおよび/またはカルボキシ末端に最大6つの追加、任意の、天然に存在するアミノ酸を含み得る単一のアミノ酸、例えば、リンカー
においてはセリンから構成される。特定のリンカーアミノ酸配列が、以下の表に示されている。1つの態様において、リンカーアミノ酸配列は、
から選択される。すべてのペプチド性リンカーは、核酸分子によってコードされ得、したがって組み換え発現させることができる。
【0111】
(表)
【0112】
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列のアラインメントを行いそして必要な場合に最大のパーセント配列同一性を達成するようギャップを導入した後の、かつあらゆる保存的置換を配列同一性の一部として考慮しない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率と定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野の技術範囲内の様々な方法で、例えば公開されているコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを用いて達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にまたがって最大のアラインメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントに適したパラメータを決定することができる。しかし、本明細書における目的上、%アミノ酸配列同一性の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech, Inc.の著作物であり、そのソースコードは、U.S. Copyright Office, Washington D.C., 20559にユーザー文書と共に提出され、U.S. Copyright Registration第TXU510087号の下で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc., South San Francisco, Californiaから公開されたものを利用可能である、またはそのソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムで利用されるようコンパイルされるはずである。すべての配列比較パラメータはALIGN-2プログラムによって設定されており、それは異ならない。
【0113】
アミノ酸配列の比較にALIGN-2が利用される場合、所定のアミノ酸配列Bに対する所定のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(あるいは、所定のアミノ酸配列Bに対して特定の%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所定のアミノ酸配列Aということもできる)は、以下の通りに計算され:
分数X/Yの100倍
ここで、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2により、AとBのプログラムによるアラインメントにおいて一致と記録されたアミノ酸残基の数であり、ここで、Yは、Bのアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性は、Aに対するBの%アミノ酸配列同一性と等しくならないことが理解されるであろう。それ以外のことが具体的に示されていない限り、本明細書で使用されるすべての%アミノ酸配列同一性の値は、直前の段落に記載されたようにALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られたものである。
【0114】
「動物」という用語は、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ハムスター、カニクイザルおよびチンパンジーからなる群より選択される動物を表す。特に、動物は、マウスまたはウサギまたはハムスターまたはラットである。1つの態様において、動物は、非ヒト動物である。
【0115】
1つの態様において、「回収(する)」という用語は、(a)(i)標的抗原で免疫処置された動物由来のB細胞を不死化すること、および(ii)得られた不死化細胞を、標的抗原に特異的に結合する抗体の分泌についてスクリーニングすること、または(b)(i)フィーダー細胞の存在下で単細胞捕集されたB細胞を共培養すること、および(ii)その培養上清を、標的抗原に特異的に結合する抗体の存在についてスクリーニングすること、を含む。
【0116】
「標的抗原に特異的に結合する」という用語は、抗体が標的抗原に対して、少なくとも10-8 mol/lの解離定数(= K解離)、特に少なくとも10-10 mol/lのK解離で結合することを表す。同時に、標的抗原に特異的に結合しないという特性は、10-7 mol/lまたはそれより悪い、例えば10-5 mol/lのK解離により担保される。
【0117】
「薬学的調合物」という用語は、その中に含まれる活性成分の生物学的活性を有効にすることができる形態にあり、かつその調合物を投与される対象に対して許容されない毒性を示す追加の成分を含まない調製物を表す。
【0118】
「薬学的に許容される担体」は、薬学的調合物中の、活性成分以外の、対象に対して非毒性の成分を表す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定化剤または保存剤が含まれるがこれらに限定されない。
【0119】
「大腸菌SlyD」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表す。
【0120】
「以下のアミノ酸配列を有するポリペプチドを表す」という用語は、与えられたアミノ酸配列のポリペプチドを表し、またX1に関してそのポリペプチドと同じ特性を有するその変種体も包含する。1つの態様において、この用語は、少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを表す。1つの態様において、この用語は、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを表す。1つの態様において、この用語は、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを表す。1つの態様において、この用語は、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを表す。1つの態様において、この用語は、少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを表す。
【0121】
ポリペプチドが大腸菌内で生産されるまたは大腸菌由来である場合、そのアミノ末端メチオニン残基は通常、プロテアーゼによって効果的に切断されず、したがってそのアミノ末端メチオニン残基が生産されるポリペプチドに部分的に存在している。これをふまえて、すべての配列は、開始メチオニン残基を含めて示されている。
【0122】
「サーマス・サーモフィルスSlyD」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表す。
【0123】
「サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表す。
【0124】
「ヒトFKBP12」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表す。
【0125】
「シロイヌナズナFKBP13」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表す。
【0126】
「FKBP12融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このFKBP12融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0127】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0128】
「SlyD-FKBP12融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このSlyD-FKBP12融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列であり、そしてX2は、リンカーのアミノ酸配列である。
【0129】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0130】
「FKBP12/13融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このFKBP12/13融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0131】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0132】
「SlyD-FKBP12/13融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このSlyD-FKBP12/13融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列であり、そしてX2は、リンカーのアミノ酸配列である。
【0133】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0134】
「サーマス・サーモフィルスSlyD融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このサーマス・サーモフィルスSlyD融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0135】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0136】
「SlyD-サーマス・サーモフィルスSlyD融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このSlyD-サーマス・サーモフィルスSlyD融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列であり、そしてX2は、リンカーのアミノ酸配列である。
【0137】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0138】
「サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0139】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0140】
「SlyD-サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このSlyD-サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列であり、そしてX2は、リンカーのアミノ酸配列である。
【0141】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0142】
「サーマス・サーモフィルスSlyD-FKBP13融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このサーマス・サーモフィルスSlyD-FKBP13融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0143】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0144】
「SlyD-サーマス・サーモフィルスSlyD-FKBP13融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このSlyD-サーマス・サーモフィルスSlyD-FKBP13融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列であり、そしてX2は、リンカーのアミノ酸配列である。
【0145】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0146】
「シロイヌナズナFKBP13融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このシロイヌナズナFKBP13融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0147】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0148】
「SlyD-シロイヌナズナFKBP13融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このSlyD-シロイヌナズナFKBP13融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列であり、そしてX2は、リンカーのアミノ酸配列である。
【0149】
このアミノ酸配列およびその変種体は、本明細書で報告される個別の局面である。
【0150】
「SlyD-FKBP12/13融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表し、ここで、X1は、このSlyD-FKBP12/13融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列であり、そしてX2は、リンカーのアミノ酸配列である。
【0151】
上記局面の1つの態様において、X2は、アミノ酸配列
を有する。
【0152】
直接検出の場合、検出可能な標識は、任意の公知の検出可能なマーカー基、例えば色素、発光標識基、例えば化学発光基、例えばアクリジニウムエステルまたはジオキセタン、または蛍光色素、例えばフルオレセイン、クマリン、ローダミン、オキサジン、レソルフィン、シアニンおよびそれらの誘導体、から選択され得る。検出可能な標識の他の例は、発光金属錯体、例えばルテニウムまたはユーロピウム錯体、酵素、例えばELISAまたはCEDIA(クローン酵素ドナー免疫アッセイ)に使用される酵素、および放射性同位元素である。電気化学発光によって検出できる金属キレートもまた、1つの態様において、検出可能な標識として使用されるシグナル発生基であり、特に好ましいのはルテニウムキレートである。1つの態様において、標識基は、ルテニウム(ビスピリジル)32+キレートである。
【0153】
間接検出システムは、例えば、検出試薬、例えば検出抗体が結合対の第1パートナーで標識されているものを含む。適当な結合対の例は、ハプテンまたは抗原/抗体、ビオチンまたはビオチンアナログ、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチン/アビジンまたはストレプトアビジン、糖/レクチン、核酸または核酸アナログ/相補的核酸、および受容体/リガンド、例えばステロイドホルモン受容体/ステロイドホルモン、である。1つの態様において、第1の結合対メンバーは、ハプテン、抗原およびホルモンから選択される。1つの態様において、ハプテンは、ジゴキシンおよびビオチンならびにそれらのアナログから選択される。そのような結合対の第2パートナー、例えば抗体、ストレプトアビジン等は、通常、例えば上記のような標識により、直接検出が可能なように標識される。
【0154】
本明細書で報告される融合ポリペプチドは、FKBPドメインタンパク質ファミリー(すなわち、PPIase活性を有するタンパク質)、例えば、ヒトFKBP12(Handschumacher, R.E., et al., Science 226 (1984) 544-547)またはシロイヌナズナFKBP13または大腸菌SlyDまたはサーマス・サーモフィルス(Thermos thermophilus)SlyDまたはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD由来のポリペプチドに基づいている。本明細書で報告される融合ポリペプチドは、X1のアミノ酸配列に含まれるポリペプチドの提示のためのスキャホールドである。
【0155】
X1のアミノ酸配列は、FKBP12部分のフラップドメイン(アミノ酸残基A85〜A96)およびベータ・バルジ(アミノ酸残基S39〜P46)ならびに/またはSlyD部分のIFドメイン(アミノ酸残基G69〜D120)と置き換えることができる。それによって、全長タンパク質免疫原の組み換えによる調製および精製に要する時間を省略することが可能となる。
【0156】
本明細書で報告される融合ポリペプチドにおける、ポリペプチドX1またはX0のそれぞれの挿入アミノ酸配列および/またはそれに関連する構造モチーフの明確な提示は、X1およびX0のそれぞれに含まれる免疫原性アミノ酸配列の、十分な量、質での、かつ正確な3次元構造での、効率的かつ経済的な生産を可能にする。
【0157】
ヘリックス、ヘリックス・ターン・ヘリックスモチーフ、コイルドコイル構造、ヘリックスバンドル、ターン・ループモチーフ、ベータ・ヘアピン構造、ベータ・シート、シート・ヘリックスモチーフ、シート・ターン・シートモチーフ等の任意のアミノ酸配列を挿入することができる。規定のネイティブの3次構造、多ドメインポリペプチドの個々のドメインまたはサブドメイン、結合ドメイン、抗体フラグメント、酵素等を提示することも可能である。
【0158】
免疫原性ポリペプチドは、X1またはX0のそれぞれのアミノ酸配列の由来となった全長ポリペプチドと比較して、例えば、溶解性および/または可逆的フォールディング(正常化/非正常化)に関して改善され得る。本明細書で報告される融合ポリペプチドは、抗体を得ようとするポリペプチドに由来するX1のアミノ酸配列を挿入するスキャホールドを提供し、かつ立体配座のエントロピーを減少させることでX1およびX0のそれぞれのアミノ酸配列の構造を安定させる。
【0159】
存在する場合、N末端のSlyDは、シャペロン機能を媒介し、融合ポリペプチド全体をモノマー性、可溶性かつ安定なポリペプチドとして維持する。さらに、それは融合ポリペプチドの分子量を増やし、これはSPR測定のような質量感受性の分析に使用する際に有益である。
【0160】
融合ポリペプチドのSlyD由来ポリペプチド部分は、FKBP12およびそのフラップ領域の存在に非依存的に、正確な(ネイティブの)3次元立体配座にフォールディングする。融合ポリペプチドのキメラFKBP12ドメインは、正確にフォールディングされないようである。320nmで固有のTrp蛍光発光ピークを示す野生型FKBP12ポリペプチドと異なり、SlyD-FKBP12融合ポリペプチドの蛍光分光分析は、320nmでピークを示さず、350nmにおいて典型的な外的Trp発光シフトを示した。350nmピークは幅広となる。SlyD-FKBP12融合ポリペプチド中の単一のTrp部分は、溶媒暴露される。このことは、SlyD-FKBP12融合ポリペプチド内のFKBPドメインが部分的または完全にアンフォールディングしていることを示す。
【0161】
SlyD-FKBP12融合ポリペプチド誘導体 対 固定化bi-FK506のBIAcore結合アッセイもまた、結合活性の非存在を示し、このことも、本明細書で報告されるポリペプチド中のFKBP12由来部分の構造-機能の喪失を示している。
【0162】
学説に制約されずにこれらの知見に基づいて言うと、本発明のSlyD-FKBP12挿入構造モデルは、このポリペプチドが、十分にフォールディングされたSlyD部分と、少なくともその単一のコアTrp残基を溶媒に提供する構造的障害のあるFKBP12フォールドからなる、というものである。このポリペプチドは、モノマー性であり、可溶性であり、可逆的にフォールディングし、そしてその応用に十分な熱安定性を示す。
【0163】
したがって、本明細書で報告される融合ポリペプチドは、挿入されたペプチドの2次構造モチーブが独自の自律的なフォールディング構造としてフォールディングしない限り、ペプチドの2次構造モチーブの構造複数性(structural plurality)を模倣するのに適したスキャホールドである。
【0164】
ペプチドの2次構造モチーブの構造複数性は、例えば、免疫組織化学実験においてパラフィン包埋、ホルマリン固定された組織で示されると考えられる(Abe, et al., Anal. Biochem. 318 (2003) 118-123)。
【0165】
X1またはX0のそれぞれのアミノ酸配列は、X1またはX0のそれぞれのアミノ酸配列の構造完全性に対する影響を避けるために第2ポリペプチドのアミノ酸配列に対して十分な距離および柔軟性を確保するよう、G3Sリンカー配列を隣接させることができる。
【0166】
本明細書で報告される融合ポリペプチドは、少なくとも15kDaの分子量を有する。これにより、このポリペプチドを担体タンパク質(例えばKLHもしくは粒子)または免疫処置用物質に結合する必要性がなくなり、KLHへの結合によるネオエピトープの発生が減る。
【0167】
とはいうものの、結合する必要がある場合、これは配列モチーフ
中のリジン残基を選択的に活性化させることによって可能であり、それはLC-SPDP(スクシンイミジル 6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート)を有する隣接ヒスチジンおよびアルギニン残基により活性化させることができる。
【0168】
免疫組織化学分析条件下での構造的なもしくは部分的/完全な変形またはネオエピトープの発生は、通常、タンパク質性免疫原の調製中には認識されない。特に、ホルマリン処理中に、アミノ酸残基Lys、Tyr、HisおよびCysの側鎖が架橋される。加えて、ポリペプチドの3次および4次構造が、組織固定試薬を用いる組織調製手順、(加熱)インキュベーション、パラフィン包埋およびアルコール処理による組織の脱水の間に歪められる(例えば、Fowler, C.B., et al., Lab. Invest. 88 (2008) 785-791を参照のこと)。抗原回復プロセスがネイティブの立体配座のタンパク質構造を回復させるようホルマリンにより誘導された架橋を完全に除去できるかどうかは不明である。したがって、回復プロセス後でさえも新しい2次構造が形成され得、ネオエピトープが発生または残存し得る。
【0169】
これらの新規かつ非ネイティブの構造は、免疫処置キャンペーン中には存在しない。IHCに適した抗体は、従来的な抗体構築技術を使用することによって得ることができないかまたは得ることができるとしても限定的な数しか得ることができない。
【0170】
加えて、溶液中の遊離ポリペプチドは、大きな立体配座エントロピーを有しており、これは規定のエンタルピーの2次構造のエピトープに対する免疫応答を困難にする遷移構造をもたらす(例えば、Scott, K.A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104 (2007) 2661-2666; Gamacho, C.J., et al., PLoS Comput. Biol. 4 (2008) e1000231 1-8を参照のこと)。免疫原として使用される遊離ペプチドは、各ペプチドの末端に対する抗体しか構築できない。
【0171】
動物の免疫処置および免疫応答の誘導における使用に加えて、本明細書で報告される融合ポリペプチドは、抗体エピトープ、例えば、直線状または立体配座エピトープのマッピングに使用することができる。X1またはX0のそれぞれのアミノ酸配列(= エピトープ性、抗原性(免疫原性)アミノ酸配列)と共に異なる構造モチーフを提示することができる。これらの異なる構造モチーフは、X1またはX0のそれぞれのアミノ酸配列に対する特異性を有する免疫組織化学(IHC)に適した抗体の生成にも使用することができる。この目的のために、X1のアミノ酸配列は、ホルマリン処理中に限定的な数のネオエピトープしか形成されないことが期待され得るよう選択される。特に、リジン、チロシン、ヒスチジンおよびシステイン残基の数は、適切な配列を選択することにより最小限にされ得る。単一の残基、例えばシステイン残基を、セリン残基で置換することも可能である。X1配列として、例えば、それらの立体配座生成構造に再フォールディングする可能性が高い小さな2次構造モチーフを使用することができる。X1をFKBPドメイン内に移植することにより、挿入されたポリペプチドの末端はもはや遊離状態およびアクセス可能ではなく、構造エンタルピーが高くなる。
【0172】
本明細書で報告される1つの局面は、式Iの融合ポリペプチドであり、
NH2-S2-X1-S1-COOH (式I)
式中、
X1は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかを含み、
S2およびS1は、第2ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であり、
-はペプチド結合を表し、
ここで、該第2ポリペプチドは、ペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性(PPIase活性)を有するポリペプチドであるかまたはFKBPドメインファミリーのメンバーである。
【0173】
1つの態様において、ペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性を有するポリペプチドは、SlyDである。
【0174】
1つの態様において、第2ポリペプチドは、好熱菌由来のポリペプチドである。
【0175】
1つの態様において、好熱菌は、好熱性細菌である。1つの態様において、該好熱性細菌は、サーマス科由来である。1つの態様において、好熱菌は、サーマス・サーモフィルスである。
【0176】
1つの態様において、好熱菌は、好熱性古細菌である。1つの態様において、該好熱性古細菌は、超好熱性古細菌である。1つの態様において、好熱菌は、サーモコッカス網由来である。1つの態様において、好熱菌は、サーモコッカス・ガンマトレランスである。
【0177】
1つの態様において、好熱菌は、少なくとも60℃の最適成長温度を有する。
【0178】
本明細書で報告される1つの局面は、式IIの融合ポリペプチドであり、
S4-X2-S3-S2-X1-S1-S0 (式II)
式中、
X1は、ランダムなアミノ酸配列または第1ポリペプチド由来のアミノ酸配列のいずれかであり、
S2およびS1はどちらも、第2ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であり、
S3およびS0は、存在しないかまたは第3ポリペプチド由来の重複しないアミノ酸配列であるかのいずれかであり、
S4は、存在しないかまたは第4ポリペプチド由来のアミノ酸配列であるかのいずれかであり、
X2は、存在しないかまたはペプチド性リンカー配列であるかのいずれかであり、
-はペプチド結合を表し、
ここで、該第2ポリペプチドおよび該第3ポリペプチドおよび該第4ポリペプチドは、互いに異なっており、かつペプチジル-プロリル シス/トランス-イソメラーゼ活性(PPIase活性)を有するポリペプチドであるかまたはFKBPドメインファミリーのメンバーである。
【0179】
1つの態様において、本明細書で報告される融合ポリペプチドは、アミノ酸配列タグを含む。
【0180】
1つの態様において、アミノ酸配列タグは、ポリhisタグ、Avitag、ポリgluタグ、ポリargタグ、Strepタグ、ストレプトアビジン結合ペプチド、エピトープタグおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0181】
1つの態様において、アミノ酸配列タグは、オクタヒスチジンタグである。
【0182】
「アミノ酸配列タグ」という用語は、ペプチド結合を通じて相互に接続された、特異的な結合特性を有するアミノ酸残基の配列を表す。1つの態様において、アミノ酸配列タグは、親和性タグまたは精製タグである。1つの態様において、アミノ酸配列タグは、Argタグ、Hisタグ、Flagタグ、3xFlagタグ、Strepタグ、Nanoタグ、SBPタグ、c-mycタグ、Sタグ、カルモジュリン結合ペプチド、セルロース結合ドメイン、キチン結合ドメイン、GSTタグまたはMBPタグから選択される。さらなる態様において、アミノ酸配列タグは、
から選択される。これまでに報告されたすべての局面のうちの1つの態様において、アミノ酸配列タグは、SEQ ID NO:62〜SEQ ID NO:80から選択されるアミノ酸配列を有する。1つの態様において、アミノ酸配列タグは、SEQ ID NO:16またはSEQ ID NO:64またはSEQ ID NO:68のアミノ酸配列を有する。
【0183】
ポリペプチドが大腸菌株で生産される場合、そのアミノ末端メチオニン残基は通常、プロテアーゼによって効果的に切断されず、したがってそのアミノ末端メチオニン残基が生産されるポリペプチドに部分的に存在している。したがって本明細書に示されるすべての配列は、単離されたポリペプチドにこの残基が存在しないとしても、そのN末端メチオニン残基を含むものとして列挙されている。そうであるものの、N末端メチオニンを含むアミノ酸配列は、このメチオニンが欠失しているアミノ酸配列をも包含するものである。
【0184】
X1またはX0のそれぞれのアミノ酸配列が非らせん構造を有する場合、X0またはX1のそれぞれのアミノ酸配列のN末端およびC末端に追加のGGGSリンカー(SEQ ID NO:81)が導入され得る。
【0185】
X1またはX0のそれぞれのアミノ酸配列がらせん構造を有する場合、X0またはX1のそれぞれのアミノ酸配列のN末端にGGGSGGNPリンカー(SEQ ID NO:82)、およびGPTGGGSリンカー(SEQ ID NO:83)が挿入され得る。
【0186】
SlyD/FKBP12-抗原、サーマス・サーモフィルスSlyD-抗原およびサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドは、抗原を提示するために使用することができる。
【0187】
サーマス・サーモフィルスSlyD(Loew, C., et al., J. Mol. Biol. 398 (2010) 375-390)は、古細菌サーマス・サーモフィルスを起源とするものである。サーモコッカス・ガンマトレランスSlyDは、古細菌サーモコッカス・ガンマトレランスを起源とするものである。両タンパク質は、ヒトFKBP12、FKBP13、キメラFKBP12/13および大腸菌SlyDとは異なり、高い熱力学的安定性を示す。N末端大腸菌SlyD由来ポリペプチド(すなわち、第4ポリペプチドが大腸菌SlyDである場合)は、本明細書で報告される融合ポリペプチド中にサーマス・サーモフィルスSlyDまたはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyDが含まれる場合、省略することができる。
【0188】
概ね、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列タグを含むFKBP12-抗原融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有し、ここで、X1は、このFKBP12-抗原融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0189】
ヒトFKBP12由来ポリペプチドは、大腸菌SlyD由来ポリペプチドとN末端で融合され得る。
【0190】
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列タグを含むSlyD/FKBP12-抗原融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有し、ここで、X1は、このSlyD/FKBP12-抗原融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0191】
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列タグを含むSlyD/FKBP12-対照ポリペプチド(SDSおよびウェスタンブロットについては図1を参照のこと)は、以下のアミノ酸配列:
を有する。
【0192】
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列タグを含むサーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有し、ここで、X1は、このサーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0193】
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列タグを含むサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有し、ここで、X1は、このサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0194】
サーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドおよびサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-融合ポリペプチドは、N末端大腸菌SlyDシャペロンドメインを必要としない。これらの融合ポリペプチドにおいて、免疫原性配列(抗原配列)挿入物は、抗原ループの幹部分のジスルフィド結合によって安定化され得、これは本明細書で報告される1つの態様である。サーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドにおいては、スキャホールドとインサートの間の接続を最適化するために、2つのシステイン変異がH66CおよびA70Cのアミノ酸位置に設定され得、各々にグリシン残基が導入され得る。
【0195】
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列タグを含むジスルフィド安定化サーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有し、ここで、X1は、このジスルフィド安定化サーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0196】
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列タグを含むジスルフィド安定化サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有し得、ここで、X1は、このサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドによって表されるリンカーまたはペプチドまたは抗原または2次もしくは3次構造のアミノ酸配列である。
【0197】
IHC用途に適した抗ERCC1抗体
SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドを、ERCC1のC末端ドメイン内のヘリックス・ループ・ヘリックス領域を標的とする、IHC染色に適した抗ERCC1抗体の開発においてスクリーニング試薬として使用した(ERCC = 除去修復交差相補(Excision Repair Cross Complementing); Tripsianes, K., et al., Structure 13 (2005) 1849-1858)。
【0198】
ERCC1ポリペプチドの機能は、主として、損傷したDNAのヌクレオチド除去修復である(Aggarwal, C., et al., J. Natl. Compr. Canc. Netw. 8 (2010) 822-832; Rahn, J.J., et al., Environment. Mol. Mutagen. 51 (2010) 567-581; Westerveld, A., et al., Nature 310 (1984) 425-429)。
【0199】
ERCC1は、診断的に関連する、様々な疾患兆候と緊密に結びつく予測・予後マーカーである(Gandara, D.R., et al., J. Thorac Oncol. 5 (2010) 1933-1938; Hwang, I.G., et al., Cancer 113 (2008) 1379-1386; Azuma, K., et al., Cancer Chemother. Pharmacol. 64 (2009) 565-573)。
【0200】
一般に、IHC条件下では、ホルマリンにより誘導される架橋現象によってネオエピトープが発生する可能性がある(Lin, W., et al., J. Histochem. Cytochem. 45 (1997) 1157-1163, Webster, J.D., et al., J. Histochem. Cytochem. 57 (2009) 753-761)。真の構造は、組織の調製およびその後の抗原の回復のプロセス中の厳しい条件によって部分的もしくは完全に変性し得、または少なくとも構造的に改変される(Rait, V.K., et al., Lab. Invest. 84 (2004) 300-306)。エピトープ領域が、直線状の合成生産されたペプチドによっては十分に表され得ない複数の不安定な1次または2次構造のようになる可能性が高い。したがって、これらすべての作業に対応することができかつ同時に安定および生化学的に堅牢(robust)である免疫原または適当な抗体スクリーニング試薬が使用されなければならない。
【0201】
SlyD/FKBP12-ERCC1スキャホールドは、IHC用途で想定されるような、直線化、完全変性、部分変性、部分再フォールディングまたはインタクトという2次構造モチーフの構造複数性をシミュレートすることができる。同時に、このスキャホールドは、熱力学的安定性および堅牢な操作を保証する。
【0202】
SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドを、直線状ペプチド免疫処置ストラテジーによって得られた複数の抗体からの、IHC用途に適した抗ERCC1抗体のスクリーニングに使用した。
【0203】
ヘリックス ループ ヘリックスの2次構造モチーブを、ERCC1(PDB 1Z00)構造から抽出した(図2)。C末端ERCC1ドメインは、構造的に、主にらせん状のポリペプチドと特徴づけることができる。これは、直線状ペプチドを用いる免疫処置アプローチにおいて従来的に使用されている連続的な直線状エピトープの同定を困難にする。意図した配列モチーフを特異的に認識する抗体を得るため、直線状のKHL結合ペプチドを動物の免疫処置に使用した。
【0204】
抽出されたヒトERCC1 C274S配列は、アミノ酸配列
である。この配列は、ヘリックス・ターン・ヘリックスモチーフを表している。挿入される配列の11位(SEQ ID NO:89の下線部)に本来存在するシステイン残基は、酸化による凝集を避けるために、セリン残基に変換された。
【0205】
挿入される配列はヘリックス立体配座を有するので、挿入されるアミノ酸配列のN末端に追加のアミノ酸配列GGGSGGNP(SEQ ID NO:82)を導入し、かつ挿入されるアミノ酸配列のC末端にアミノ酸配列GPTGGGS(SEQ ID NO:83)を導入した。そのようにして、末端隣接モチーブGGGGSGGNPおよびGPTGGGSを得た。そのようなモチーフは、学説に制約されずに言うと、プロリンヘリックスキャップ配列モチーブを通じてヘリックス傾向を促進すると考えられる。
【0206】
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列タグを含むFKBP12-ERCC1融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有する。
【0207】
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列タグを含むSlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有する。
【0208】
SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドおよびSlyD/FKBP12対照ポリペプチドを、抗ERCC1抗体を産生する細胞クローンを同定するスクリーニングアプローチにおいて使用した。
【0209】
SlyD/FKBP12対照ポリペプチドは、SEQ ID NO:86のアミノ酸配列を有する。
【0210】
概ね、融合ポリペプチドの精製のために、親和性クロマトグラフィー工程を、カオトロピック剤存在下の変性条件下で使用した。融合ポリペプチドを、親和性マトリクス上に捕捉した。このカラムを生理学的緩衝溶液で洗浄することにより、カオトロピック緩衝液をネイティブ緩衝条件に移行させた。それによって、SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドの大腸菌SlyD部分を再フォールディングさせた。再フォールディングさせた融合ポリペプチドを、親和性クロマトグラフィーカラムから生理学的緩衝液中に回収した。
【0211】
親和性精製した融合ポリペプチドを、透析およびろ過した(SDSゲルについては図3を参照のこと)。SlyD/FKBP12-ERCC1を、UV/Vis分光により定量した。タンパク質蛍光測定を使用し、SlyD/FKBP12-ERCC1の立体配座の性質を試験した(図4)。FKBP12変異体C22Aは、単一のFKBP12 Trp部分をFKBP12部分の構造完全性の決定に使用することができるため、ポリペプチド挿入のための担体として特に有用である(Scholz, C., et al., J. Biol. Chem. 271 (1996) 12703-12707; Russo, A.T., et al., J. Mol. Biol. 330 (2003) 851-866)。FKBP12 C22Aは、そのネイティブ構造において、320nmで単一の蛍光発光ピークを示す(Zoldak, G., et al., J. Mol. Biol. 386 (2009) 1138-1152)。
【0212】
学説に制約されずに言うと、350nmの固有のTrpソルバトクロミック蛍光発光は、フォールディングしたFKBP12タンパク質環境では強く消光され、FKBP12のアンフォールディングによって増大するであろう。25℃〜85℃の温度スクリーニングは、さらなる蛍光発光ピークを示さなかったが、350nmの発光の温度依存的な蛍光消光を示した。FKBP12の構造完全性の指標であるの320nmの発光は、検出できなかった(図4を参照のこと)。
【0213】
センサー表面提示リガンドであるbi-FK506に対する溶液中分析物として融合ポリペプチドSlyD/FKBP12-ERCC1を用いたBIAcore結合アッセイ(図5および6)は、FK506結合活性を示さず、これによりこの融合ポリペプチドにおけるFKBP12部分の構造-機能の喪失が示された。対照ポリペプチドFKBP12(C22A)は、FK506結合活性を示した。
【0214】
固定化されたFK-506に対するSlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドの非結合は、SlyD/FKBP12-ERCC1の構造がFKBP12(C22A)の立体配座のそれとは異なっている証拠を提供する。これは、キメラFKBP12ドメインの結合活性の喪失を伴うものである。
【0215】
蛍光測定およびFK506結合アッセイは、SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドの構造-機能の喪失の証拠を提供する。N末端大腸菌SlyDドメインは、融合タンパク質をその可溶性かつモノマー性の状態で維持する。これは、SlyD/FKBP12-ERCC1およびSlyD/FKBP12-対照融合ポリペプチドのHPLC分析(図7および8を参照のこと)によって証明された。
【0216】
マウスを、ヒトERCC1(除去修復交差相補タンパク質)のアミノ酸219〜245を網羅するKHL結合ペプチドを用いた腹腔内免疫処置に供した。ハイブリドーマ初代培養物の作製は、KoehlerおよびMilsteinによる手順にしたがい行った。記載されるようにしてこのハイブリドーマを単離し、ELISA法により抗原結合についてスクリーニングした。ELISAにおいてペプチドERCC1[219-245]に対して陽性の発色を示した初代ハイブリドーマ細胞培養物をキネティクススクリーニングに移行させた(図9〜12を参照のこと)。IHCに不適合な抗体を選択しないよう、スクリーニングを、本明細書で報告される融合ポリペプチドを用いて行った。SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドおよびSlyD/FKBP12対照ポリペプチドを、ERCC1アミノ酸配列モチーフに結合する抗体の同定のためのキネティクススクリーニングアプローチに使用した。適当な初代培養物をさらにクローン培養物に増殖させた。選択された細胞クローンの特性が、図12に示されている。図13は、クローン<ERCC1>-M-5.3.35を用いたBIAcore測定を例示的に示している。SlyD/FKBP12-ERCC1の相互作用は、高度に特異的である。SlyD/FKBP12対照サンプルによる相互作用は検出されなかった。非特異的結合は検出できなかった。相互作用は、ラングミュアキネティクスモデルによるものである。
【0217】
ウェスタンブロットのために、OVCAR-3またはHEK293細胞溶解産物をSDSゲルのレーンに充填した。図14は、クローン<ERCC1>-M-5.1.35のウェスタンブロットの結果を示している。37kDaのERCC1特異的なバンドが検出される。
【0218】
FFPE包埋ヒト癌におけるERCC1の免疫組織化学検出のために、SCLC癌サンプルの組織切片を調製した。図15は、陽性のIHC染色パターンを示している。白色の矢印は、ERCC1の特異的染色位置を示している。同様のスクリーニングおよび選択プロセスを、SEQ ID NO:89のポリペプチドを単独で使用して、すなわち、本明細書で報告される融合ポリペプチドに統合されていないポリペプチドを単独で使用して実施した。このペプチドベースのスクリーニングにおける14個の同定された候補細胞クローンから、9個が両スクリーニングアプローチによって選択されるであろう。このポリペプチドベースのスクリーニングアプローチからの5個のヒットは、BIAcoreチップ上で同一の捕捉レベルであってもSlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドに結合しない。
【0219】
大腸菌SlyD-FKBP12-抗原融合ポリペプチドおよびサーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチド(例えば、Kang, C.B., et al., Neurosignals 16 (2008) 318-325を参照のこと)およびサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドは、これらのポリペプチド中に含まれる抗原を標的とするエピトープ特異的モノクローナル抗体の開発において、免疫原兼スクリーニングツールとして使用できることが見出された。
【0220】
さらに、大腸菌SlyD-FKBP12/13-抗原融合ポリペプチドおよびサーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドおよびサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドはすべて同様に翻訳後修飾され得、そしてその後に、これらのポリペプチド中に含まれる翻訳後修飾を標的とする翻訳後部位特異的モノクローナル抗体の開発において、免疫原兼スクリーニングツールとして使用できることが見出された。1つの態様においては、本明細書で報告される融合ポリペプチドの1つが抗体を作製するために使用され、そして本明細書で報告される第2の異なる融合ポリペプチドが第1の融合ポリペプチドを用いて得られた抗体を選択するために使用され、ここで、両融合ポリペプチドは異なっているが、同じ抗原アミノ酸配列を含んでいる、すなわち、X1またはX0のいずれかは両融合ポリペプチドで同一である。
【0221】
本明細書で報告される融合ポリペプチドは、構造模倣またはスキャホールド技術を用いる標的化エピトープアプローチにより機能性抗体を作製するために使用することができる。特に従来的な免疫処置キャンペーンではアクセス可能でない抗原(いわゆる隠れたエピトープ)に対する抗体の作製に関して、本明細書で報告される融合ポリペプチドは特に適している。
【0222】
抗IGF-1抗体:
ヒトIGF-1およびIGF-2は、67%のアミノ酸配列相同性および高い構造相同性を示す(図16を参照のこと)。血清中では、IGF-2は、IGF-1の500倍過剰に存在する(Jones, J.I. and Clemmons, D.R., Endocrin. Rev. 16 (1995) 3-34)。
【0223】
したがって、IGF-1特異的抗体、すなわち、IGF-2に対して交差反応を示さない抗体の作製は、困難なことである。IGF-1とIGF-2との間の、小さな配列の相違が、そのシグナルおよびプロペプチドで数え始めて、IGF-1のターン・ループモチーフ内のIGF-1アミノ酸位置74〜90(UniProtKBエントリーP05019、IGF1_human)に存在する。対応するアミノ酸配列
を、本明細書で報告されるSlyD/FKBP-12融合ポリペプチドまたはサーマス・サーモフィルスSlyD融合ポリペプチドまたはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD融合ポリペプチドにおけるアミノ酸配列X0として挿入することができる。
【0224】
アミノ酸配列
を含む融合ポリペプチドを、このターン・ループモチーフに特異的に結合する抗体を得るための動物の免疫処置のために、使用することができる。
【0225】
免疫原性ポリペプチドの提示を改善するため、IGF-1のターン・ループモチーフを、そのアミノ酸配列のN末端およびC末端でGGGSリンカー(SEQ ID NO:81)に、またはIGF-1アミノ酸配列のN末端でHGジペプチド、およびIGF-1アミノ酸配列のC末端でGAジペプチドに、のいずれかに隣接させることができる。
【0226】
SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドを、
のIGF-1アミノ酸配列に特異的に結合する抗IGF-1抗体の開発のための免疫原として使用し、スクリーニング試薬としても使用した。
【0227】
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列タグを含むFKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有し得る。
【0228】
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列タグを含むSlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有し得る。
【0229】
SEQ ID NO:16のC末端アミノ酸配列タグを含むサーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有する。
【0230】
サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチド(SDS Pageおよびウェスタンブロットについては図17を参照のこと)を、
のIGF-1アミノ酸配列を標的とする抗IGF-1抗体の開発のための免疫原として使用し、スクリーニング試薬としても使用した。
【0231】
SEQ ID NO:16のC末端アミノ酸配列タグを含むサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチド(SDSおよびウェスタンブロットについては図3を参照のこと)は、アミノ酸配列:
またはアミノ酸配列:
を有し得る。
【0232】
スクリーニングおよび特異性試験のために、サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチドを作製した。サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチドは、IFドメインを欠いており、これは短いアミノ酸配列モチーフで置き換えられた。
【0233】
SEQ ID NO:16のC末端アミノ酸配列タグを含むサーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチドは、アミノ酸配列:
を有し得る。
【0234】
スクリーニングおよび特異性試験のために、構造的に相同なIGF-2(53-65)ヘアピンが挿入されたサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD融合ポリペプチドを作製した。
【0235】
SEQ ID NO:16のC末端アミノ酸配列タグを含むサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-IGF-2(53-65)融合ポリペプチドは、アミノ酸配列:
を有し得る。
【0236】
すべての融合ポリペプチドを、大腸菌で生産した。すべての融合ポリペプチドを、本明細書に記載されるような実質的に同一のプロトコルを使用して精製および再フォールディングした。マウスを、SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドおよびサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドを用いた腹腔内免疫処置に供した。免疫処置の10週後に抗体力価をELISAによって決定した(図19および図20)。SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドで免疫処置されたマウスは、IGF-1に対して、拘束されたIGF-1(74-90)ペプチドのループに対して、SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドに対して、およびSlyD/FKBP12対照ポリペプチドに対して、低い力価を示した。1匹のマウスのみが十分高いIGF-1力価を提供し(図19のK1576M1)、これをハイブリドーマの作製に使用した。
【0237】
サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドで免疫処置されたマウスは、SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドに対するよりもサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドに対して高い力価を示すことが見出された(図19および図20を参照のこと)。
【0238】
ハイブリドーマ初代培養物の作製は、KoehlerおよびMilsteinの手順にしたがい行った。初代ハイブリドーマを限界希釈により単離し、ELISAにより抗原結合についてスクリーニングした。ELISAにおいてSlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチド、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドおよびIGF-1に対する陽性の発色ならびにサーモフィルスSlyD野生型ポリペプチドおよびSlyD/FKBP12対照ポリペプチドに対する低いシグナルを示した初代ハイブリドーマ細胞培養物を、キネティクススクリーニング法を用いてさらに評価した。
【0239】
SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドを用いた免疫処置キャンペーンからの初代培養物の2つのみが、IGF-1に対して陽性のELISAシグナルを有することが見出された。クローン培養物を樹立した後、表面プラズモン共鳴(SPR)分析では、キネティクス結合シグナルは検出できなかった。いくつかの初代培養物は、IGF-1およびサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドに対して適当なELISA結合シグナルを示したがサーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチドに対しては低いシグナル強度であることが見出された(図21を参照のこと)。
【0240】
この初代培養物を、ネイティブIGF-1に対して、ネイティブIGF-2に対して、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドに対して、およびサーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチドに対して、キネティクススクリーニング法により分析した(図22)IGF-1特異的抗体を生産する初代培養物が検出され、そしてクローン培養物を得るためにこれを限界希釈によって増殖させた。
【0241】
このクローン培養物を、ELISAにより、IGF-1に対する特異的結合について分析した(図23を参照のこと)。図24には、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチド免疫処置キャンペーンから得られた抗IGF-1抗体の例示的なBIAcore測定が示されている。この抗体は、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドおよびネイティブIGF-1に、10pMの結合親和性で特異的に結合する。ネイティブIGF-2および野生型サーマス・サーモフィルスSlyDには結合しない(図25を参照のこと)。
【0242】
IGF-1特異的抗体の作製においては、IGF-1のターン・ループモチーフを強固なエンタルピースキャホールドによって安定化させ、そのネイティブのフォールディングを維持することが重要であることが見出された。FKBP12のような準安定のポリペプチドスキャホールド上に提示される場合、学説に制約されずに言うと、配列NKPTGYGSSSRRAPQTG(SEQ ID NO:18)は回転自由度が高すぎると考えられる。最後に、ネイティブIGF-1結合抗体は得られなかった。
【0243】
近UV-CD分光測定により、SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチド中のFKBP-12部分がアンフォールディングしていることが見出された。HPLC分析は、SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドがモノマーであることを示した。DSC測定は、この融合ポリペプチドが、可逆的にフォールディングおよびアンフォールディングできることを示した。学説に制約されずに言うと、C末端FKBPドメインが部分的または完全にアンフォールディングしている場合でさえも、可逆的にフォールディングできるN末端大腸菌SlyDドメインが、融合ポリペプチドを溶液中で安定的にかつモノマーとして維持している(図26を参照のこと)。
【0244】
SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドですでに見出されているように、SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドは、直線状、完全変性、部分変性、部分再フォールディングまたはインタクトという2次構造モチーフの構造複数性を示し得る。
【0245】
ネイティブIGF-1結合抗体の開発のためには、ポリペプチド挿入物をそのネイティブの立体配座で提示するスキャホールドが使用されなければならないことが見出された。したがって、提示用の融合ポリペプチドは、安定的にフォールディングするポリペプチドである必要がある。これは、サーマス・サーモフィルスSlyDまたはサーモコッカス・ガンマトレランスSlyDのような、極限性(すなわち、好熱性)生物由来のFKPBドメインを用いることによって達成できることが見出された。
【0246】
本明細書で報告される融合ポリペプチドが近UV領域においてフォールディングされた立体配座のCDスペクトルを示すかどうかを試験した。近UV-CDは、ポリペプチド中の芳香族残基の非対称性環境を決定し、したがって秩序のある3次構造の高感度試験である。ネイティブSlyDは、近UV領域で典型的なCDの形跡(signature)を有する。したがって、IFドメインにおける挿入に起因する構造の歪みまたは立体的な衝突が、近UV CDスペクトルで可視化されるはずである。図27には、野生型サーマス・サーモフィルスSlyD、IFドメインを欠く野生型サーマス・サーモフィルスSlyD(サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチド)のFKBPドメインおよびヒト細胞外受容体フラグメント由来の22アミノ酸挿入配列が挿入されたサーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドのスペクトルが重ねて示されている。サーマス・サーモフィルスIFドメインの置換は残りのIFドメインの全体構造を変化させないことが見出された。スペクトルの形跡が類似することを読み取ることができる。アンフォールディングはあらゆる近UV CDシグナルを消滅させるので、この結果は、融合ポリペプチドにおいてネイティブ様のフォールディングが保持されている証拠を提供する。
【0247】
サーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドは、ヒト成長因子受容体の細胞外ドメイン(ECD)由来の22アミノ酸のベータヘアピン2次構造挿入物を含む融合ポリペプチドである。そのCDの形跡は、20℃ですべてのポリペプチドがそれらのネイティブ構造によくフォールディングされることを実証している。
【0248】
図28は、サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチドの温度依存的なCDスペクトルを示している。温度により誘導されたアンフォールディングの後、サーマス・サーモフィルスSlyD FKBPドメインは、再度冷却することで再フォールディングすることができる。このため、この融合ポリペプチドは、オン・カラム(on colum)の再フォールディングにより親和性精製することができ、そしてさらに、SlyD-FKBP12-IGF-1融合ポリペプチドにおける発見と異なり、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドは、IGF-1の2次構造モチーブをFKBPドメイン上に安定的な立体配座で提示する構造安定性を有している。サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドの温度依存的な近UV CDスペクトルは、サーマス・サーモフィルス-抗原融合ポリペプチドと比較してより高い安定性を示す(図29を参照のこと)。両スキャホールドは、ヒト成長因子受容体ECD由来の同じ22アミノ酸のベータヘアピン2次構造挿入物を保持している。サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原は、可逆的にフォールディングおよびアンフォールディングする。所定の物理的条件下では、100℃の温度でさえも、サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドの完全なアンフォールディングが起こらない場合があることが見出された。
【0249】
古細菌FKBPドメインは安定であるため、それらのIFドメインとの置換により免疫原性ポリペプチドを移植することが可能であり、同時に新たに生成するキメラスキャホールドタンパク質の全体安定性が保たれることが見出された。
【0250】
サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドを、安定かつモノマー性のポリペプチドとして精製した(図18を参照のこと)。
【0251】
サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドのモノマー画分を、凍結解凍サイクルの繰り返しおよび温度ストレス試験の後に、再クロマトグラフィーした(図30を参照のこと)。
【0252】
マウスを、SEQ ID NO:96のポリペプチドで免疫処置した。得られたB細胞を、ELISAを用いて分析した。サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチド、サーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチド、IGF-1およびIGF-2を、対照として使用した。
【0253】
SEQ ID NO:16のC末端アミノ酸配列タグを含むサーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチド(SDSおよびウェスタンブロットについては図31を参照のこと)は、以下のアミノ酸配列:
を有する。
【0254】
すべてのクローン培養物上清(CCS)は、37℃でIGF-1およびサーマス・サーモフィルス(Thermo Thermophilus)SlyD-IGF-1融合ポリペプチドと安定な複合体を形成する。サーマス・サーモフィルスSlyD野生型ポリペプチドとの交差反応は、いずれのCCSにおいても検出できなかった。IGF-2との交差反応は、1つのクローンを除いて検出できなかった(図32を参照のこと)。図33から、最初の8つのクローン培養物上清が2分のt/2-解離を有し、分析物IGF-1は、最後の4つのクローン培養物上清に、より素早く結合し、そしてよりゆっくりと解離することを、読み取ることができる。これは40分を超えて複合体にとどまる。図22には、1つのクローンの例示的なセンサーグラムが示されている。この抗体がIGF-1およびサーマス・サーモフィルス-IGF-1融合ポリペプチドに結合し、IGF-1およびサーマス・サーモフィルス野生型ポリペプチドに対する結合は検出できないことを、読み取ることができる。
【0255】
したがって、サーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドおよびサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原融合ポリペプチドは、これらのポリペプチド中に含まれる免疫原を標的とするエピトープ特異的モノクローナル抗体の開発において、免疫原兼スクリーニングツールとして使用できる。
【0256】
図25は、スキャホールド由来のモノクローナル抗体<IGF-1>M-11.11.17および<IGF-1>M-10.7.9が、IGF-1に対してピコモルの親和性を有することを示している。モノクローナル抗体<IGF-1>M-11.11.17は、t1/2 diss = 560分のIGF-1複合体安定性を示す。IGF-2、野生型サーマス・サーモフィルスSlyD、野生型サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD、サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIFおよびサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-IGF-2(53-65)に対する交差反応は検出できなかった。
【0257】
モノクローナル抗体M-2.28.44は、組み換えヒトIGF-1を用いた従来的なマウスの免疫処置によって得られた。この抗体はIGF-1に対して30pMの結合親和性を有するが、IGF-2に対する交差反応性も有する(500pMの結合親和性)。分析物としてサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドおよびサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-IGF-2(53-65)融合ポリペプチドを用いることで、交差反応性のIGF-2エピトープがIGF-1/2のヘアピン領域に存在しないことが示され得る。
【0258】
このことは、直線状エピトープマッピングによって確認された(例えば、Frank, R. and Overwin, H., Methods in Molecular Biology 66 (1996) 149-169を参照のこと。クローン11.11.17および11.9.15の直線状IGF-1結合寄与部分は、両方ともエピトープTGYGSSSR(SEQ ID NO:124)を認識する。クローン10.7.9の直線状物結合部分は、エピトープPTGYGSSSR(SEQ ID NO:125)に結合する。これらのエピトープは、IGF-1ヘアピン構造の上部に位置し、したがってIGF-2には存在しない。
【0259】
概して、本明細書で報告される融合ポリペプチドは、構造模倣を用いる標的化エピトープアプローチによる機能性抗体の作製に使用することができる。特に組み換え免疫原を用いる従来的な免疫処置キャンペーンでは容易にアクセス可能でない抗原に対する抗体の作製に関して、本明細書で報告される融合ポリペプチドは特に適している。ネイティブタンパク質の立体配座の内側に埋もれているいわゆる隠れたエピトープは、本明細書で報告される融合ポリペプチドにおける挿入物として十分に提示されることで、免疫原として使用できることが見出された。特に、アロステリックなリガンドにより誘導される立体配座変化の際にしか標的化が可能でないネオエピトープは、これらの構造を本明細書で報告される融合ポリペプチドに移植することによって、免疫原として使用することができる。
【0260】
キメラFKBP12/13スキャホールド:
本明細書で報告されるいくつかの融合ポリペプチドは、ヒトFKBP12部分およびシロイヌナズナFKBP13部分を含む融合ポリペプチドに基づいている。ヒトFKBP12の少なくとも一部およびシロイヌナズナFKBP13の少なくとも一部を含む融合ポリペプチドを免疫原として使用できることが見出された。この融合ポリペプチドにおいて、ヒトFKBP12由来部分は、スキャホールドとして熱力学的に安定化される。FKBP13は、IFドメインを安定化させるジスルフィド結合を含んでいる。この配列を、融合ポリペプチドを安定化させるために、ヒトFKBP12由来部分に移植した。
【0261】
SEQ ID NO:16のC末端アミノ酸配列タグを含むFKBP12/13融合ポリペプチドは、アミノ酸配列:
を有する。
【0262】
FKBP12/13融合ポリペプチドを、大腸菌(図34を参照のこと)において可溶性タンパク質として発現させた。HPLC分析(図35を参照のこと)は、FKBP12/13融合ポリペプチドがモノマーであることを示した。CD分光測定を、上記のようにして行った。CDスペクトルは、FKBP12/13融合ポリペプチドが20℃でフォールディングされることを示した。サーマス・サーモフィルスおよびサーモコッカス・ガンマトレランスベースのスキャホールドは、FKBP12/13融合ポリペプチドよりも高い温度安定性を示す。
【0263】
抗PLGF抗体:
この例における挿入アミノ酸配列はターン・ループモチーフを有し、IHCに適した抗体が作製される。そのインサートは、アミノ酸配列
を有する。免疫原のC末端システイン残基は、セリン残基に変更されている。
【0264】
SEQ ID NO:16のC末端アミノ酸配列タグを含むFKBP12-PLGF融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有する。
【0265】
C末端アミノ酸配列タグを含むSlyD/FKBP12-PLGF融合ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有する。
【0266】
マウスを、PLGF(60-76)の配列を含む免疫原で免疫処置した。その後にハイブリドーマを作製し、ELISAおよびキネティクススクリーニングを行った。
【0267】
キネティクススクリーニングプロセスでは、SlyD/FKBP12-PLGF融合ポリペプチドおよびストレプトアビジン上に単独移植したビオチニル化PLGF(60-76)ペプチドを使用して、PLGF(60-76)に対する結合活性を有する初代培養物上清を同定した。両分析物とも1:1ラングミュアキネティクスを示したが、融合ポリペプチドは、SAプローブ移植ビオチニル化PLGFペプチドよりも低いchi2値のより良い解離フィットを示した。したがって、融合ポリペプチドベースのスクリーニングアプローチは、SA-プローブと比較して、融合ポリペプチド中の免疫原のモノマーの状態および改善されたエピトープアクセス性を有効利用するものである。
【0268】
クローン53.4.1等の、このアプローチにより開発された抗体は、ウェスタンブロットにおいてPLGFを特異的に検出することができた。
【0269】
SlyD-FKBP12/13-CSF1R融合ポリペプチド:
「SlyD-FKBP12/13-CSF1R融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表す。
【0270】
このポリペプチドを、本明細書に記載されるようにして大腸菌で発現させ、そして本明細書に記載されるようにして精製した。Ni-NTA親和性精製の後、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。融合ポリペプチドを、HiLoad 26/60 SuperdexTM 75 pgカラムに充填した。その溶出画分を、ネイティブSDSゲルを用いて分析した(図37を参照のこと)。
【0271】
抗体の作製に使用したX1アミノ酸配列は、CSF1R細胞内キナーゼインサートドメインに対応する。Srcキナーゼ、EGF1RおよびCSF1Rそれ自体が、チロシン残基、特にキナーゼドメインループ構造中の、スレオニンおよびバリンに隣接するチロシン残基をリン酸することができる(イタリック体および下線でも示されている、SEQ ID NO:119の297位のY残基を参照のこと)。
【0272】
精製後、融合ポリペプチドを、適当なキナーゼを用いてリン酸化させることができる。したがって、翻訳後修飾を有するX1アミノ酸配列を提供することが可能であり、したがって本明細書で報告される融合ポリペプチドを用いることで、翻訳後修飾されたポリペプチドに対する抗体を作製することが可能である。この融合ポリペプチドは、スクリーニング、特異性試験のような異なる用途でまたは免疫原として使用することができる。概ね、酵素的な翻訳後修飾または化学修飾の基質であるペプチドは、X1アミノ酸配列としてこのスキャホールドに挿入することができる。タンパク質蛍光測定を使用して、SlyD/FKBP12/13-CSF1R融合ポリペプチドの立体配座の性質を試験した。20℃および25℃での300nm〜425nmのスキャンは、305nmのピークを示した(図38を参照のこと)。FKBP12ドメイン中の単一のトリプトファン部分は、それがFKBP12ドメインの疎水性コアに埋もれているときの、典型的な固有のトリプトファン・ソルバトクロミック蛍光発光を示す。したがって、FKBP12/13-CSF1Rポリペプチド部分はフォールディングしていると考えられる。50℃で発光ピークは344nmにシフトし、これはこのトリプトファン部分がこの時点では水性環境中にあり、FKBPドメインが一部または完全にアンフォールディングしている証拠である。30℃および40℃で、フォールディングしたタンパク質とアンフォールディングしたタンパク質の中間状態を決定することができる。
【0273】
融合ポリペプチド中のFKBP12ドメインは、FKBP12を、FKBP12のフラップドメインがFKBP13構造およびCSF1R受容体由来のループ構造モチーフを含むジスルフィドで置換されたFKBP12/13融合ポリペプチドに加工することによって、安定化させることが可能であることが見出された。
【0274】
この融合ポリペプチドは、40℃ですでに、大腸菌SlyDがトリプトファンを含まないため主としてFKBP12/13-CSF1Rドメインと称される、有意なアンフォールディングしたタンパク質部分を示す。
【0275】
免疫原として正確にフォールディングされたネイティブの2次または3次構造を提示するためのスキャホールドとしてキメラFKBPドメインを使用する上で、この発見は、キメラFKBP12をさらに安定化させ非準安定スキャホールドを形成する必要性があることを示している。さらに、発現が劇的に減少することから(データ示さず)、融合ポリペプチド中の大腸菌SlyDドメインを省略することはできない。
【0276】
エピトープマッピング:
SlyD-FKBP融合ポリペプチドはまた、例えばジスルフィド結合を含む2次構造のような、複雑なアミノ酸挿入モチーフを保有することができる。この融合ポリペプチドはシステインを含まないので、適切な条件下でのオン・カラム再フォールディングは、挿入物内での正確なジスルフィド結合の形成を促し、これはさらにSlyD自体のシャペロン機能によっても支援される。
【0277】
融合ポリペプチドSlyD-FKBP12-CD81およびSlyD-FKBP12-対照を、エピトープマッピングの目的で使用した。ヒトCD81は、C型肝炎ウィルスのエンベロープE2糖タンパク質の受容体である。CD81は、テトラスパニンファミリーに属する膜貫通タンパク質である。CD81は、90アミノ酸長のホモダイマータンパク質であり、いわゆるマッシュルーム様構造を示す(PDB 1IV5)。ウィルスの結合に関与することが公知となっている残基は、いわゆる35アミノ酸長の「ヘッドサブドメイン(head subdomain)」にマッピングすることができ、これが抗ウィルス薬およびワクチンの設計上の基礎を提供する。ウィルス結合部位のヘッドサブドメイン配列は、わずか35アミノ酸長なので、従来的なクロスブロッキング実験を用いて10kDaのCD81タンパク質上の抗体エピトープをマッピングするのは困難である。
【0278】
このマッシュルーム様ヘッドドメインに直接結合する抗体を、単にCD81LEL構造の近傍またはその他の場所に結合する抗体から区別するのは困難である。これらの抗体はすべて、標的構造であるヘッドドメインに特異的に結合せずとも、HCV E2エンベロープタンパク質との競合効果を示すであろう。したがって、このヘッドドメイン構造をFKBPに移植し連続的にエピトープマッピングするのが有利な方法である。第1に、CD81LELタンパク質に関連する、このタンパク質自体がオリゴマー化する傾向があることに起因するいくつかの生化学的問題が、回避される。第2に、これは、単に全長CD81タンパク質に結合する多数の抗体から抗体エピトープを選択するのに適している。
【0279】
SlyD-FKBP12-CD81融合ポリペプチド:
「SlyD-FKBP12-CD81融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表す。
【0280】
SlyD-FKBP12-対照融合ポリペプチド(図1を参照のこと):
「SlyD-FKBP12-対照融合ポリペプチド」という用語は、以下のアミノ酸配列:
を有するポリペプチドを表す。
【0281】
BIAcore CM5センサーがシステムに搭載されたBIAcore 2000機器(GE Healthcare)を25℃で使用した。各タンパク質リガンドを、EDC/NHS化学によってフローセル2、3および4に固定化した。フローセル1を、参照として使用した。以下の物質をセンサーに固定化した:フローセル2:SlyD-FKBP12対照、フローセル3:SlyD-FKBP12-CD81、およびフローセル4:CD81LEL。31個の抗体分析物を注入した。センサーグラムを参照シグナル2-1、3-1および4-1としてモニターし、BIAcore評価ソフトウェア4.1を用いて評価した。分析物の注入の終了時に、最大の分析物結合シグナルを定量するための報告点を設定した。データを正規化するため、最高の分析物結合シグナルを100%に設定した。正規化された抗体結合反応は、30個の試験された抗CD81-LEL抗体のうちの6個のみがCD81ヘッドドメイン上のエピトープに対する結合を示すことを示した。陰性対照のポリペプチドであるSlyD-FKBP12対照は結合しなかった。陽性対照のポリペプチドであるCD81-LELは、これは同時に免疫原でもあるが、すべての抗体に結合した。Slyd-FKBP12-CD81は、抗体エピトープがマッシュルームドメインに位置する場合にのみ結合した。
【0282】
X線結晶分析によるエピトープマッピング結果の確認
抗体K05およびK04のFabフラグメントを、CD81-LELタンパク質を用いて公知の方法によって共結晶化させ、これをx線回折分析によって分析した(Seth Harris, Palo Alto)。得られた解像度は、2.15Åであった。K04は標的エピトープ配列を直接認識するのに対して、K05は標的外に結合する。したがって、x線分析は、スキャホールドベースのエピトープマッピングアプローチと正相関している。
【0283】
以下の実施例、図面および配列は、本発明の理解を助けるために提供されるものであり、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に示されている。本発明の精神から逸脱することなく示されている手順に変更が加えられ得ることが理解される。
【実施例】
【0284】
実施例1
発現および精製
ポリペプチドを、公知の方法にしたがい、大腸菌(pQE80Lベクター/大腸菌BL21 CodonPlus-RP細胞株)中で生産した。
【0285】
粗ポリペプチドの精製のために、親和性クロマトグラフィー工程を、ネイティブ条件下またはカオトロピック剤存在下の変性条件下のいずれかで使用した。SlyD部分を含む融合ポリペプチドには、大腸菌細胞から融合タンパク質の総量を単離することができるカオトロピック剤の存在下での精製が特に適している。加えて、融合ポリペプチド全体がランダムコイルの立体配座で得られる。親和性クロマトグラフィー物質に結合している融合ポリペプチドを、カラムを生理学的塩溶液で洗浄することによってネイティブ条件に移す。融合ポリペプチドのSlyDおよびFKBP12部分の自発的なフォールディングのため、挿入されたアミノ酸配列もそのネイティブの立体配座に移行する。再フォールディングした融合ポリペプチドを、生理学的緩衝液中のイミダゾール勾配により、親和性クロマトグラフィーカラムから回収した。
【0286】
実施例2
化学誘導体化
C末端リジン残基を、酸性条件(pH 6)下でLC-SPDP(スクシンイミジル 6-(3-[2-ピリジルジチオ]-(プロピオンアミド)ヘキサノエート))((Pierce, Cat.:68181-17-9)を用いて活性化させた。
【0287】
アルギニンおよびリジンは、リジンのアルキルアンモニウム基のプロトンを取り込むことができる塩基である。遊離アミノは、任意のヒドロキシルスクシンイミジル活性化炭酸によって誘導体化することができる。
【0288】
実施例3
ホルマリン処理
誘導体化された融合ポリペプチドを、ホルマリン溶液で処理することができる。その後、固定された誘導体化融合ポリペプチドを、規定のオリゴマー化状態(モノマー、オリゴマー、マルチマー)の組成物を得るため、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製することができる。
【0289】
実施例4
抗体産生クローン培養物上清のBIAcoreによる特徴付け
BIAcore CM5センサーがシステムに搭載されたBIAcore T100機器(GE Healthcare)を使用した。センサーを、100μl/分の0.1% SDS、50mM NaOH、10mM HClおよび100mM H3PO4の1分間の注入によって事前調整した。
【0290】
システム緩衝液は、HBS-ET(150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%(w/v) Tween(登録商標)20を補充した10mM HEPES (pH 7.4))とした。サンプル緩衝液は、システム緩衝液とした。
【0291】
BIAcore T100システムを、制御ソフトウェアV1.1.1の下で運用した。ポリクローナルウサギIgG抗体<IgGFCγM>R(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.)を、製造元の指示にしたがい、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.5)中30μg/mlで、フローセル1、2、3および4のそれぞれに6500 RUとなるよう、EDC/NHS化学を通じて固定化した。最後に、センサー表面を、1Mエタノールアミン溶液でブロックした。実験全体を25℃で実施した。
【0292】
それぞれの抗体を35nM〜190nM含むクローン培養物上清を、5μl/分の流速で1分間、<IgGFCγM>R表面に捕捉した。溶液中分析物として、組み換え抗原、ビオチニル化ジスルフィド架橋組み換え抗原、SlyD/FKBP12-抗原、サーマス・サーモフィルスSlyD-抗原、SlyD/FKBP12-対照、および/またはサーマス・サーモフィルスSlyD-野生型融合ポリペプチドを使用した。各分析物を、90nM、30nM、10nM、3.3nM、1.1nMおよび0nMの異なる濃度段階で注入した。結合フェーズを、100μl/分の流速で3.5分間モニターした。解離を、100μl/分の流速で15分間モニターした。このシステムを、10mMグリシン緩衝液(pH 1.7)を用いて再生させた。キネティクスを、BIAcore 評価ソフトウェアを用いて評価した。
【0293】
実施例5
IHCサンプルの調製
マトリックスに固定化したLC-SPDP融合ポリペプチドを、有機溶媒で処理し、加熱し、そして酸性緩衝液で処理した。その後、マトリックスに結合したポリペプチドを還元条件下で回収した。規定の組成の物質を得るため、サイズ排除クロマトグラフィーを実施することができる。それによって得られる物質は、規定のオリゴマー状態(モノマー、オリゴマーおよびポリマー)を有し、実験動物の免疫処置のための免疫原として使用することができるが、これは抗体の選択およびスクリーニングのための試験抗原としても使用することができる。
【0294】
実施例6
免疫処置
事前に処方しておいた免疫原性融合ポリペプチドを、異なる用量で、実験動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヒツジまたはハムスターに腹腔内投与する。B細胞の回収の前に、ブースト免疫処置を行う。B細胞ハイブリドーマは、KoehlerおよびMillsteinの方法にしたがい得ることができる(Kohler, G. and Milstein, C., Nature 256 (1975) 495-497)。得られるハイブリドーマを、マルチウェルプレートのウェルに、単クローンまたは単細胞として捕集する。分泌された抗体による抗体結合に関して陽性と判定された初代ハイブリドーマ培養物を、キネティクススクリーニング法によってさらにスクリーニングする。
【0295】
実施例7
抗IGF-1抗体
4匹の免疫処置したNMRIマウスから得られた細胞を、ELISAを用いて分析した。Nunc Maxisorb Fマルチウェルプレートを、1mlあたり0.41μgのポリペプチドを含む溶液を適用することによって、SlyD/FKBP12-IGF-1、SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1、SlyD/FKBP12-対照またはサーマス・サーモフィルスSlyD-野生型でコーティングした。単離された抗原IGF-1を、90ng/mlのビオチニル化IGF-1または500ng/mlのビオチニル化IGF-1-ペプチドループを含む溶液を適用することによって、StreptaWell High Bind SAマルチウェルプレートのウェルに固定化した。
【0296】
その後、遊離状態の結合部位を、室温で1時間、PBS中1%のRPLAを含む溶液を適用することによってブロックした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。サンプルとして、PBSで1:50希釈したマウス血清を使用した。任意のさらなる希釈を、1:819,200の最終希釈率になるまで、1:4ずつ行った。インキュベーション時間は、室温で1時間とした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。検出抗体として、ペルオキシダーゼに結合した標的抗体の定常ドメインに対するポリクローナル抗体を使用した(PAK<M-Fcγ>S-F(ab')2-POD)。検出抗体を、1%(w/v) RSA含有PBS中80ng/mlの濃度で適用した。インキュベーション時間は、室温で1時間とした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。その後、ウェルを、室温で15分間、ABTS溶液と共にインキュベートした。発色の強さを、測光により決定した。例示的な結果が以下の表に示されている。
【0297】
(表)
-:ELISAにおいて結合は検出できず
【0298】
実施例8
ハイブリドーマ培養物上清のキネティクススクリーニング
IHCに適した抗体の選択のために、37℃における標的複合体半減期を10分に設定する。
【0299】
キネティクススクリーニングを、BIAcore A100において、ソフトウェアバージョンV1.1の制御下で行った。BIAcore CM5チップを機械に搭載し、製造元の指示にしたがい流体力学的に構成し、そしてその後にチップを調整する。泳動緩衝液としてHBS-EP緩衝液を使用する(10mM HEPES (pH 7.4)、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%(w/v) P20)。10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.5)中30μg/mlの濃度のポリクローナル抗IgG Fc捕捉抗体組成物を、フローセル1、2、3および4のスポット1、2、4および5に事前に濃縮する。抗体を、NHS/EDCを通じて共有結合により10,000 RUとなるよう固定化する。その後にセンサーを、1Mエタノールアミン溶液による飽和により不活性化する。スポット1および2を決定のために使用し、スポット2および4を参照として使用した。センサーチップに適用する前に、ハイブリドーマ培養物上清をHBS-EP緩衝液で1:5希釈した。希釈した溶液を、30μl/分の流速で1分間適用した。直後に抗原を30μl/分の流速で2分間注入した。その後にシグナルをさらに5分間記録する。センサーを、10mMグリシン-HCl溶液(pH 1.7)を2分間、30μl/分の流速で注入することによって再生した。抗原の注入の終点の直前に記録されたシグナルを、最終結合(BL)とする。解離の記録の終点の直前に記録されたシグナルを、最終安定(SL)とする。それらを用いて、見かけの複合体安定性を、次式:
(1 - [BL(RU) - SL(RU)/BL(RU)]
により計算する。
【0300】
キネティクススクリーニングにおいて選択されたハイブリドーマ細胞を、FACS(FACSAria (Becton Dickinson)、ソフトウェアV4.1.2)によって単細胞として捕集した。モノクローナル性のクローンを、24ウェルプレートまたは100mlスピナーフラスコにおいて、RPMI-1640培養培地中で培養する。
【0301】
実施例9
免疫組織化学分析
IHC分析を、手作業で、またはVentana Benchmark XTもしくはDiscovery XT 8R機器において自動で、のいずれかで行った。抗体を、適当な、陽性または陰性(genitive)の、ホルマリン固定されたまたは凍結保存された組織または細胞において試験した。
【0302】
あるいは、細胞を、標的ポリペプチドをコードする核酸でトランスフェクトする。トランスフェクトした細胞を溶解し、ウェスタンブロットによる陽性または陰性対照としてのそれらの適性について試験する。
【0303】
実施例10
SlyD/FKB12-抗原スキャホールドにより支援する抗ERCC1抗体の生産
免疫処置
8〜12週齢のSJLマウスを、ヒトERCC1(除去修復交差相補)のアミノ酸219〜245を網羅する100μgのKHL結合ERCC1由来ペプチドによる腹腔内免疫処置に供した。ECRR1誘導体は、ペプチド合成により合成的に作製した。
【0304】
マウスを3回(開始時および開始ブーストから6週および10週後に)免疫処置した。1回目の免疫処置は、完全フロイントアジュバントを用いて行い、2回目および3回目の免疫処置は、不完全フロイントアジュバントを用いて行った。最終ブーストを、ハイブリドーマ融合を行う3日前に、100μgのKLH結合ペプチド抗原を用いて静脈内注射で行った。ハイブリドーマ初代培養物の生産を、KohlerおよびMilsteinにしたがい行った(Kohler, G. and Milstein, C., Nature 256 (1975) 495-497)。ハイブリドーマを、限界希釈によって96ウェルMTPに単離し、ELISAにより抗原結合についてスクリーニングした。ELSIAは、ファームウェア:V 3.15 19/03/01;XREAD PLUS バージョン:V 4.20の下で動作するTecan Sunriseによって運用した。ELISAにおいて、アミノ酸219〜245を網羅するビオチニル化ERCC1由来ペプチドに対する結合により陽性の発色を示した初代ハイブリドーマ細胞培養物を、本明細書に記載されるキネティクススクリーニングプロセスに移した。
【0305】
IHCに適さない、単に直線状ペプチドに結合する抗体の選択を避けるために、スキャホールドベースのアプローチを用いてさらなるスクリーニング作業を行った。このスキャホールドアプローチにより、免疫原性ペプチドの末端に結合する抗体がさらに除外された。
【0306】
SlyD/FKBP12-ERCC1の生産
SlyD/FKBP12-ERCC1およびSlyD/FKBP12-対照をコードする合成遺伝子を、Sloning Biotechnology GmbH(Germany)から購入し、pQE80L発現ベクターにクローニングした。ポリペプチドを、大腸菌BL21 CodonPlus-RPにおいて、大腸菌コドン最適化遺伝子コンストラクトとして産生させた(図3および図8を参照のこと)。
【0307】
粗融合ポリペプチドの精製のために、親和性クロマトグラフィー工程を、カオトロピック剤存在下の変性条件下で使用した。SlyD部分を含む融合ポリペプチドについては、融合ポリペプチドの総量を大腸菌細胞から単離できるカオトロピック剤の存在下での精製が特に使用されている。加えて、融合ポリペプチド全体をランダムコイルの立体配座で得た。親和性クロマトグラフィー物質に結合している融合ポリペプチドを、カラムを生理学的塩溶液で洗浄することによって、ネイティブ条件に移行させた。融合ポリペプチドのSlyDおよびFKBP12部分の自発的なフォールディングのため、挿入されたアミノ酸配列もそのネイティブの立体配座に移行することができる。再フォールディングした融合ポリペプチドを、生理学的緩衝液中のイミダゾール勾配により、親和性クロマトグラフィーカラムから回収した。SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドのSDSゲルおよびウェスタンブロットが、図3に示されている。<His6>ウェスタンブロットは、この融合ポリペプチドのC末端の完全性を示している。他のポリペプチドのバンドは検出できなかった。
【0308】
蛍光測定
親和性精製された融合ポリペプチドを、75mM HEPES緩衝液(pH 7.5、150mM NaCl、6.5%(w/v)スクロース、10mMシステイン)に対して透析し、ろ過した。SlyD/FKBP12-ERCC1を、35380.301Daのポリペプチドについて計算された減衰係数を用いて、UV/Vis分光により7.4 mg/mlと定量した(図4)。220nm〜340nmの波長スクリーニングにおいて、単一のFKBP12 Trp由来の280nm吸収ピークを得た。340nm吸収は検出できなかった。
【0309】
タンパク質蛍光測定を使用して、SlyD/FKBP12-ERCC1の立体配座の性質を試験した。FKBP12 C22Aは、単一のFKBP12 Trp部分をFKBP12部分の構造完全性の診断に使用することができるため、ポリペプチド挿入物の担体として特に有用である(Scholz, C., et al., J. Biol. Chem. 271 (1996) 12703-12707; Russo, A.T., et al., J. Mol. Biol. 330 (2003) 851-866)。FKBP12 C22Aは、そのネイティブ構造において、320nmで単一の蛍光発光ピークを示す(Zoldak, G., et al., J. Mol. Biol. 386 (2009) 1138-1152)。
【0310】
250μlのHBS-E緩衝液(pH 7.4)中2.5mg/mlのSlyD/FKBP12-ERCC1を、異なる温度で分析した。Cary Eclipse機器を、スキャンソフトウェアバージョン:1.1(132)の下で、励起および発光について5nmのバンド幅で使用した。300nm〜600nmの波長スキャンを、600nm/分で行った。固有のトリプトファン蛍光の励起を、294nmに設定した。350nmにおける幅広のピークを得た(図4)。学説通り、350nmにおける固有のTrpのソルバトクロミックな蛍光発光は、フォールディングされたFKBP12タンパク質環境で強く消光され、FKBP12のアンフォールディングに伴い増加するであろう。25℃〜85℃の温度スクリーニングは、さらなる蛍光発光ピークを示さなかったが、350nm発光の温度依存的な蛍光消光を示した。FKBP12の構造完全性の指標である320nm発光は、検出できなかった。
【0311】
したがって、SlyD/FKBP12-ERRC1融合ポリペプチド中の単一のTrp残基は、25℃ですでに溶媒に露出しており、このことは、SlyD-FKBP12の背景の下でキメラFKBP12が部分的または完全にアンフォールディングしていることを示している。
【0312】
したがって、このスキャホールドは、免疫組織化学実験下のパラフィン包埋、ホルマリン固定された組織において典型的に起こる不安定なペプチドの立体配座の構造複数性の模倣および提示のための理想的なプラットフォームである(Abe, M., et al., Anal. Biochem. 318 (2003) 118-123)。
【0313】
FK506のBIAcore結合アッセイ
ソフトウェアバージョンV4.1の制御下のBIAcore 3000機器に、製造元の指示にしたがいセンサーSAchipを搭載した。泳動緩衝液として、HBS-EP緩衝液を使用した(10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%(w/v) P20(非イオン性界面活性剤Polysorbate 20(Tween 20)の10%水溶液)。1213RUのbi-リンカー-FK506結合体(Roche Diagnostics Mannheim, Germany)を、フローセル4で捕捉した。
【0314】
300nMの精製SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドおよび300nMのSlyD/FKBP12対照ポリペプチドを、30μl/分で、3分間の結合時間および3分間の解離時間、システムに注入した。
【0315】
センサーを、30μl/分の流速で2分間、10mMグリシン-HCl溶液(pH 1.7)を注入することによって再生させた。
【0316】
センサー表面に提示されたリガンドbi-FK506に対する溶液中分析物として300nMの融合ポリペプチドSlyD/FKBP12-ERCC1を用いたBIAcore結合アッセイ(図5)は、結合活性を示さず(図6)、これによりこのキメラ融合ポリペプチドにおけるFKBP12部分の構造-機能の喪失が示された。対照ポリペプチドFKBP12(C22A)は、結合活性を示した。
【0317】
SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドがFK-506に結合できないことは、SlyD/FKBP12-ERCC1の構造がFKBP12(C22A)の立体配座のそれと異なっている別の証拠を提供する。これは、キメラFKBP12ドメインの結合活性の喪失を伴うものである。
【0318】
分析用HPLCクロマトグラフィーによる分析
融合ポリペプチドのオリゴマー状態を分析するため、この融合ポリペプチドの分析用HPLCクロマトグラフィーによる分析を行った。
【0319】
Chromeleon Dionex HPLC装置を、製造元が推奨するように、25℃で、HBS-E緩衝液(pH7.4)で平衡化されたTSK3000SWXLカラムにより使用した。緩衝液の流れは、0.7ml/分とした。100μlのSlyD/FKBP12-ERCC1を含む溶液(7.4 mg/ml)をシステムに注入した(図8を参照のこと)。別の実験として、SlyD/FKBP12対照を含む溶液(9.5 mg/ml)をシステムに注入した(図7を参照のこと)。別の実験として、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)を含む溶液(3 mg/ml)をシステムに注入した(図18を参照のこと)。別の実験として、SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)を含む溶液(5.4 mg/ml)をシステムに注入した(図36を参照のこと)。UV/VIS検出器を280nmに設定した。データを、製造元の指示にしたがい、Dionexソフトウェアバージョン6.80 SP2 Build 2284を用いて評価した。システムを、分子標準Oriental Yeast、Cat 46804000を用いて較正した。
【0320】
図8は、Ni-NTA親和性精製されたSlyD/FKBP12-ERCC1のカラム溶出プロフィールを示している。完全溶出プロフィールの面積積分結果の91.5%が、12.37分の保持時間で溶出するピーク5番(1310.319 mAU)に局在することを見出すことができる。このプロフィールは、モノマー性のSlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドを示している。モノマー性の融合ポリペプチドは、ごく最初のNi-NTA精製工程の後にすでに得られるものであった。
【0321】
キネティクススクリーニングの使用
SlyD/FKBP12-ERCC1融合ポリペプチドを、SPR結合分析において使用した。ラングミュアモデルにしたがい抗体結合のキネティクスを決定する上で、モノマー性かつ1価の溶液中分析物を使用することが有益である。さらに、SPR測定では、測定の質量感受性を向上させるために、増大した、すなわち高い分子量を有する分析物を使用することが有益である。同時に、エピトープアクセス性が得られなければならない。
【0322】
BIAcoreスクリーニングアッセイのスキームは、図9に示されている。
【0323】
キネティクススクリーニングを、BIAcore A100機器において、ソフトウェアバージョンV1.1の制御下で行った。BIAcore CM5チップを機械に搭載し、製造元の指示にしたがい流体力学的に構成した。その後にチップを調整した。泳動緩衝液としてHBS-EP緩衝液を使用する(10mM HEPES、 pH 7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%(w/v) P20)。10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.5)中30μg/mlの濃度の抗IgG Fc捕捉抗体のポリクローナル組成物を、フローセル1、2、3および4のスポット1、2、4および5に事前に濃縮した。抗体を、NHS/EDC化学を通じて共有結合により10,000 RUとなるよう固定化した。その後にセンサーを、1Mエタノールアミン溶液を用いて不活性化させた。スポット1および2を決定のために使用し、スポット2および4を参照として使用した。センサーチップに適用する前に、ハイブリドーマ上清をHBS-EP緩衝液で1:5希釈した。希釈した溶液を、30μl/分の流速で1分間適用した。直後に処方された抗原、例えばFKBP12融合ポリペプチドを、30μl/分の流速で2分間注入した。その後にシグナルをさらに5分間記録する。センサーを、10mMグリシン-HCl溶液(pH 1.7)を2分間、30μl/分の流速で注入することによって再生させた。抗原の注入の終点の直前に記録されたシグナルを、最終結合(BL)とする。解離の記録の終点の直前に記録されたシグナルを、最終安定(SL)とする。両データ点を、相互に対してプロットする。選択された抗体は、最終安定値と等しい最終結合値を有するものである。これらの抗体は、同プロットにおいてBL=SLを示す傾向線付近の領域に存在する。
【0324】
図10は、選択された抗ERCC1抗体に関するデータを示している。SlyD/FKBP12-ERCC1の相互作用が高度に特異的であることを読み取ることができる。SlyD/FKBP12対照サンプルとの相互作用は検出できない。全体として、非特異的な結合は見られない。
【0325】
図11は、抗体の結合価分析を示している。反応単位で表される、表面提示抗体(捕捉レベル、RU)を飽和させる抗原の量(最終結合、RU)が示されている。図11の傾向線および矢印は、表面提示抗体の結合価(モル比)を示している。すべての姉妹クローン(クローンID 5.00x.35)は、MR 0.5〜MR 1.0の結合価のコリドーに存在し、一方、その他のすべてのクローンは、MR 0.5より下のコリドーに存在し、これは機能性が低いことを示している。SlyD/FKBP12対照に対する機能的結合は検出できなかった。
【0326】
図12は、このキネティクススクリーニングアプローチによる定量を示している。6つすべての姉妹クローン(5.001.35〜5.006.35)は、適当な最終結合および最終安定値を示している。解離速度kd(1/s)は、IHCに適した抗体の要件を満たす、高い抗原複合体安定性を示している。算出されたt1/2diss抗原複合体安定性半減期は、6つすべての姉妹クローンで204分である。
【0327】
図13は、分析物SlyD/FKBP12-ERCC1およびSlyD/FKBP12対照に対するクローン5.003.35のキネティクススクリーニングの形跡を例示的に示している。SlyD/FKBP12-ERCC1は安定、可溶性かつモノマー性の分析物なので、これは1:1ラングミュア解離モデル(赤色の解離の生データ中の黒色の線)に完全にフィットする。非特異的結合は検出できなかった。SlyD/FKBP12対照に対する相互作用は検出されなかった。
【0328】
ウェスタンブロット
図14は、クローン5.001.35を用いたウェスタンブロット実験を示している。ウェスタンブロットは、抗体の最新のIHCへの適性の指標として使用することができる。
【0329】
ウェスタンブロットのために、5μgのOVCAR-3および5μgのHEK-293細胞溶解産物を、4〜12% NuPAGE SDSゲル(Invitrogen)のゲルレーンに充填した。両細胞株は、例えば放射線またはシスプラチンによる前処理を行わなかった。
【0330】
ウェスタンブロットは、標準的なプロトコルにしたがい、NuPAGE緩衝液および試薬(Invitrogen)を用いて行った。抗体5.001.35は、50 ng/mlの濃度で使用した。1次抗体のインキュベーションは、室温(RT)で30分間行った。LumiImagerをLumiLight試薬と共に製造元の指示にしたがい用いて膜を現像した(Roche Applied Science, Mannheim, Germany)。ウェスタンブロットにおいて、内因性の基準ERCC1レベルを単一の37kDaバンドとして特異的に検出した。
【0331】
IHC実験
図15は、FFPEヒト癌組織におけるERCC1のIHC検出を示している。免疫組織化学検出のために、SCLC癌サンプルの2μm切片を準備した。すべての染色手順を、Ventana Benchmark XT自動IHC染色機において、Ventana緩衝液および試薬を製造元の標準的操作に関する指示にしたがい用いて行った。1次抗体(クローン<ERCC1>M-5.1.35)を、5μg/mlの濃度で使用した。1次抗体を、37℃で32分間、切片上でインキュベートした。1次抗体を、Ventana iView(商標)検出キットを製造元の推奨するように使用して検出した。白色の矢印は、より暗色に見える、上昇したERCC1レベルを有する細胞を示している。
【0332】
まとめ
低分子量のERCC1ペプチド(2 kDa)と異なり、本明細書で使用されるスキャホールドは、高分子量分析物(36 kDa)であり、これによりSPRベースのキネティクススクリーニングアプローチにおけるシグナルが増幅する。
【0333】
ペプチドベースのスクリーニング試薬は、そのペプチドの末端を認識する抗体を選択する危険をはらんでいるが、これは本明細書で報告される、そのペプチドがN末端およびC末端ポリペプチドとの関係で埋め込まれているスキャホールドアプローチを用いることで完全に回避される。このスキャホールド融合ポリペプチドは、複数の準安定なペプチド挿入物を提供するにもかかわらず、全体として安定であり、可溶性であり、そしてモノマー性である。1:1ラングミュアキネティクスは、バイオセンサーによって容易に測定することができる。
【0334】
融合ポリペプチドのこの設定での使用は、FFPE IHCの状況をシミュレートするのに非常に適しており、したがってこれは、IHCに適した抗体の開発に非常に適したスクリーニング試薬である。
【0335】
学説に制約されずに言うと、この融合ポリペプチドは、SlyD/FKBP12-ERCC1で示されているように、フォールディングしたSlyD由来部分と、少なくともその単一のコアTrp残基を溶媒接触に提供するアンフォールディングまたは部分的にアンフォールディングしたヒトFKBP12由来部分を含んでいる。SlyDは可逆的にフォールディングし、技術的応用に十分な熱安定性を示す。
【0336】
SlyD/FKBP-12スキャホールドは、免疫組織化学実験におけるパラフィン包埋、ホルマリン固定された組織に存在するような、複数のペプチド2次構造モチーブを模倣するのに適したプラットフォームである(Abe, et al. (2003)、前記を参照のこと)。
【0337】
この融合ポリペプチドは、例えば溶解性、可逆的フォールディング(正常化/非正常化)および正確に形成されるべきジスルフィド結合の非存在の点で、挿入される(免疫原性)アミノ酸配列の由来となった全長ポリペプチドよりも免疫原として特に適している。本明細書で報告される融合ポリペプチドは、免疫原性アミノ酸配列を挿入するスキャホールドを提供する。それは挿入される免疫原性アミノ酸配列の構造を(学説に制約されずに言うと、立体配座のエントロピーを減少させることにより)安定化させる。学説に制約されずに言うと、N末端SlyD融合ポリペプチドは、完全キメラ融合ポリペプチドを、可溶性でありかつ熱力学的に安定性であるが部分的にアンフォールディングした形態で維持する。
【0338】
Rebuzzini, G.(University of Milano-Bicocca(Italy)におけるPhD研究(2009))は、C型肝炎ウイルスNS3ヘリカーゼドメインの化学発光免疫アッセイへの応用に関する研究を報告している。Rebuzziniは、彼の研究の中で、Knappe, T.A.ら(J. Mol. Biol. 368 (2007) 1458-1468)にしたがい挿入配列を有するNS3ヘリカーゼドメインの提示のための免疫原として使用したキメラFKBP12が、熱力学的に不安定であることを報告している。これは、SlyD-FKBP12-抗原融合ポリペプチドのキメラFKBP12部分が部分的または完全にアンフォールディングしているという我々の知見と関連している。Rebuzziniの知見と異なり、SlyD/FKBP12-抗原融合ポリペプチドは、本願において、モノマーかつ安定であることが見出された。
【0339】
実施例11
IGF-1(74-90)特異的抗体の生産
抗原特異的抗体を、キメラサーマス・サーモフィルスSlyD-抗原融合ポリペプチドを用いたマウスの免疫処置によって得た。スキャホールドの表面上で複数のエピトープを標的化することができ、その中から標的抗原に結合する抗体を、陰性対照としての野生型サーマス・サーモフィルスSlyDに対するまたは陽性対照としてのネイティブ組み換え抗原(IGF-1)に対するディファレンシャルスクリーニングによって同定することができる。以下では、古細菌SlyD誘導体の特性が、潜在的に準安定性のヒトFKBP12との比較で例証されている。サーマス・サーモフィルスSlyDは、エンタルピー性、剛性かつ安定な構造の提示が可能であり、したがってネイティブタンパク質構造に対するモノクローナル抗体の開発に適している。
【0340】
サーマス・サーモフィルスSlyD融合ポリペプチドの生産
グアニジン塩酸塩(GdmCl)(A級)を、NIGU(Waldkraiburg, Germany)から購入した。Complete(登録商標)EDTAフリープロテアーゼインヒビタータブレット、イミダゾールおよびEDTAを、Roche Diagnostics GmbH(Mannheim, Germany)から入手し、その他すべての化合物は、Merck(Darmstadt, Germany)から分析等級のものを入手した。限外ろ過膜(YM10、YM30)を、Amicon(Danvers, MA, USA)から、微小透析膜(VS/0.025μm)および限外ろ過ユニット(Biomaxウルトラフリーフィルターデバイス)を、Millipore(Bedford, MA, USA)から、購入した。粗溶解産物のろ過用の硝酸セルロースおよび酢酸セルロース膜(1.2μm、0.45μmおよび0.2μm孔サイズ)は、Sartorius(Goettingen, Germany)から入手した。
【0341】
発現カセットのクローニング
サーマス・サーモフィルス由来のSlyDポリペプチドの配列は、SwissProtデータベース(アクセッション番号Q72H58)で検索した。サーモコッカス・ガンマトレランス由来のSlyDポリペプチドの配列は、Prositeデータベース(アクセッション番号C5A738)で検索した。サーマス・サーモフィルスSlyD、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)およびサーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIFをコードする合成遺伝子を、Sloning Biotechnology GmbH(Germany)から購入し、pQE80L発現ベクターにクローニングした。そのコドン出現頻度を、大腸菌宿主細胞中での発現に最適化させた。サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD、サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-IGF-2(53-65)、サーマス・サーモフィルスSlyD-抗原およびサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原をコードする合成遺伝子を、Geneart(Germany)から購入し、pET24発現ベクター(Novagen, Madison, Wisconsin, USA)にクローニングした。そのコドン出現頻度を、大腸菌宿主細胞における発現に最適化した。
【0342】
加えて、固定化された金属イオン交換クロマトグラフィーによって融合ポリペプチドの親和性精製を行うために、GSリンカー(GGGS、SEQ ID NO:81)およびHisタグをそのカルボキシ末端に融合した。
【0343】
IGF-1フラグメント74〜90(アミノ酸配列
)に特異的に結合するモノクローナル抗体を生成するために、それぞれのペプチドのアミノ酸配列を、元タンパク質のアミノ酸68〜120を欠失させることによってサーマス・サーモフィルス由来の分子シャペロンSlyDに融合した。IGF-1インサートの角度調整のために、70位のAspおよび88位のLeuをGlyで置換した(D70GおよびL88G)。したがって融合タンパク質は、アミノ酸配列:
を有する。
【0344】
対照として、サーマス・サーモフィルス由来のネイティブ野生型SlyD:
を使用した。
【0345】
スクリーニングおよび特異性試験のために、サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチドを生産した。サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチドは、IFドメインを欠いており、これがアミノ酸配列モチーフAGSGSSによって置換されており、そしてSEQ ID NO:16のC末端アミノ酸配列タグを含む。
【0346】
対照として、SEQ ID NO:16のC末端アミノ酸配列タグを含むサーモコッカス・ガンマトレランス由来のネイティブSlyD:
を使用した。
【0347】
交差反応の対照として、ヒトIGF-2(53-65)由来の構造的に相同なヘアピン配列を、サーモコッカス・ガンマトレランスSlyDに挿入し、そのC末端でGSリンカーおよびヘキサヒスチジンタグと融合させた。
【0348】
融合ポリペプチドの発現、精製および再フォールディング
すべてのSlyDポリペプチドは、ほぼ同一のプロトコルを用いることによって精製および再フォールディングすることができる。特定の発現プラスミドを保持する大腸菌BL21(DE3)細胞を、選択的生育のための各抗生物質(カナマイシン30μg/mlまたはアンピシリン(100μg/ml))を含むLB培地中、37℃で、OD600が1.5になるまで生育させ、1mMイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)を添加することによって細胞質での過剰発現を誘導した。誘導から3時間後、細胞を遠心分離(5,000gで20分間)によって収集し、凍結し、-20℃で保存した。細胞の溶解のために、凍結ペレットを、7M GdmClおよび5mMイミダゾールを補充した50mM冷リン酸ナトリウム緩衝液(pH 8.0)に再懸濁した。その後にこの懸濁物を、細胞溶解が完了するよう氷上で2〜10時間撹拌した。遠心分離(25,000g、1h)およびろ過(硝酸セルロース膜、8.0μm、1.2μm、0.2μm)の後、溶解産物を、溶解緩衝液で平衡化させたNi-NTAカラムに適用した。その後の洗浄工程において、イミダゾール濃度を(7M GdmCl、5.0mM TCEPを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 8.0)中)10mMに上昇させ、そしてチオール部分を還元型で維持し早熟なジスルフィド架橋を防ぐために5mM TCEPを添加した。少なくとも15〜20倍量の還元洗浄緩衝液を適用した。その後、マトリックスに結合したSlyD融合ポリペプチドの立体配座の再フォールディングを誘導するため、GdmCl溶液を、100mM NaCl、10mMイミダゾールおよび5mM TCEPを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 8.0)に置き換えた。同時に精製されたプロテアーゼの再活性化を回避するため、プロテアーゼインヒビターカクテル(Complete(登録商標)EDTAフリー、Roche)を再フォールディング緩衝液に添加した。一晩の手順の中で、合計で15〜20カラム量の再フォールディング緩衝液を適用した。その後、TCEPおよびComplete(登録商標)EDTAフリーインヒビターカクテルの両方を、100mM NaClおよび10mMイミダゾールを含む10カラム量の50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 8.0)で洗浄することによって除去した。最後の洗浄工程において、残存する混入物質を除去するためにイミダゾール濃度を30mM(10カラム量)に上昇させた。ネイティブポリペプチドを、同じ緩衝液中250mMのイミダゾールを適用することによって溶出させた。タンパク質含有画分を、Tricine-SDS-PAGEによって純度について評価し(Schaegger, H. and von Jagow, G., Anal. Biochem. 166 (1987) 368-379)、これを集めた。その後、タンパク質を、緩衝系としてリン酸カリウム(50mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、100mM KCl、0.5mM EDTA)を用いるサイズ排除カラムクロマトグラフィー(SuperdexTM HiLoad、Amersham Pharmacia)に供した。最後に、タンパク質含有画分をAmiconセル(YM10)に集め、約5mg/mlの濃度に濃縮した。
【0349】
UV分光測定
タンパク質濃度測定を、UVIKON XL 2光線分光光度計を用いて行った。SlyD変種体のモル減衰係数(ε280)を、Paceにしたがい計算した(Pace, C.N., et al., Protein Sci. 4 (1995) 2411-2423)。
【0350】
CD分光測定
本発明にしたがうキメラ融合タンパク質が、フォールディングした立体配座を有しているかどうかを試験するため、近UV領域でCDスペクトルを測定した。A JASCO J-720機器およびJASCOソフトウェアを製造元の推奨にしたがい用いて、CDスペクトルを記録し、評価した。0.2cmの経路を有する石英キュベットを使用した。この機器を解像度1℃、帯域幅1nm、感度5mdegおよび蓄積モード1に設定した。サンプル緩衝液は、50mMリン酸カリウムpH7.5、100mM NaCl、1mM EDTAとした。各分析におけるタンパク質分析物の濃度は、36μMのサーマス・サーモフィルスSlyD野生型、23μMのサーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF、16μMのサーマス・サーモフィルスSlyD-抗原、19μMのサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD野生型および16μMのサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原とした。0.5nmの解像度および毎分20nmのスキャンにより、20℃で、250nm〜330nmの間のCDシグナルを記録した。その後の実験態様では、CDシグナルを、277nmの一定波長の下、サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD誘導体についてはそれぞれ(20℃〜100℃)および(100℃〜20℃)、サーマス・サーモフィルスSlyD誘導体については(20℃〜85℃)および(85℃〜20℃)の温度勾配下で決定した。温度勾配は、毎分1℃で変化させた。
【0351】
図27は、サーマス・サーモフィルスSlyD野生型、サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIFおよびサーマス・サーモフィルスSlyD-抗原の融合ポリペプチドの3つのCDスペクトルを重ねてプロットしたものを示している。これらのCDの形跡は、IFドメインが欠失しているまたはアミノ酸移植により置き換えられている場合でさえも、20℃ですべての融合ポリペプチドがそれらのネイティブ構造にフォールディングすることを示している。
【0352】
図28は、20℃〜85℃の温度勾配下でのサーマス・サーモフィルスSlyD-抗原の融合ポリペプチドの温度依存的な近UV CDスペクトルを示している。サーマス・サーモフィルスSlyD-抗原は、可逆的にアンフォールディングおよび再フォールディングする。
【0353】
所定の物理的条件下で、サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原の完全なアンフォールディングは、100℃でさも、達成することができなかった(図29を参照のこと)。古細菌FKBPドメインの並外れた安定性は、それらのIFドメインの置き換えによるポリペプチドの移植を可能にし、同時に新たに生成されるキメラスキャホールドタンパク質の全体安定性が保たれる。
【0354】
サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)を用いたマウスの免疫処置およびIGF-1に対するモノクローナル抗体の開発
8〜12週齢のBalb/cおよびNMRIマウスを、100μgのサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)を用いた反復腹腔内免疫処置に供した。マウスを、3回、最初の免疫処置の6週後および10週後の時点で、免疫処置した。1回目の免疫処置は、完全フロイントアジュバントを用いて行うことができ、2回目および3回目の免疫処置は、不完全フロイントアジュバントを用いて行った。ネイティブ組み換えIGF-1およびサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)に対するマウスの血清力価を、12週後に、以下に記載されるようにしてELISA法によって試験した。12週後に、血清力価を、ELISAを用いて分析した。ELSIAは、ファームウェア:V 3.15 19/03/01;XREAD PLUS バージョン:V 4.20の下で動作するTecan Sunriseによって運用した。Nunc Maxisorb Fマルチウェルプレートを、1mlあたり0.5μgのポリペプチドを含む溶液を適用することによって、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)でコーティングした。単離された抗原IGF-1を、90ng/mlのビオチニル化IGF-1を含む溶液を適用することによって、StreptaWell High Bind SAマルチウェルプレートのウェルに固定化した。その後、遊離状態の結合部位を、室温で1時間、PBS中1%のRPLAを含む溶液を適用することによってブロックした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。サンプルとして、PBSで1:50希釈したマウス血清を使用した。任意のさらなる希釈を、1:819,200の最終希釈率になるまで、1:4ずつ行った。インキュベーション時間は、室温で1時間とした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。検出抗体として、ペルオキシダーゼに結合した標的抗体の定常ドメインに対するポリクローナル抗体を使用した(PAK<M-Fcγ>S-F(ab')2-POD)。検出抗体を、1%(w/v) RSA含有PBS中80ng/mlの濃度で適用した。インキュベーション時間は、室温で1時間とした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。その後、ウェルを、室温で15分間、ABTS溶液と共にインキュベートした。発色の強さを、測光により決定した。図20は、得られたマウスの血清力価を示している。
【0355】
脾細胞の調製および骨髄腫細胞株との融合の3日前に、最後のブースト免疫処置を、100μgのサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドの静脈内注入により行った。ハイブリドーマ初代培養物の作製は、KoehlerおよびMilsteinの手順にしたがい行うことができる(Koehler, G. and Milstein, C., Nature. 256 (1975) 495-497)。
【0356】
ELISAスクリーニング
初代培養物上清を、免疫原であるサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)、ビオチニル化ネイティブIGF-1および野生型サーマス・サーモフィルスSlyDのそれぞれならびにブランクプレートに対する反応性について、ELISAにより試験した。Elisaは、Tecan SUNRISE、ファームウェア:V 3.15 19/03/01;XREAD PLUS バージョン:V 4.20によって運用した。Nunc Maxisorb FマルチウェルELISAプレートを、5μg/mlのSlyD-融合ポリペプチドでコーティングした。StreptaWell High Bind SAマルチウェルプレートを、125 ng/mlの組み換えビオチニル化IGF-1抗原でコーティングした。その後、遊離状態の結合部位を、室温で1時間、PBS中1%のRPLAによってブロックした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。RPMI 1640培地中の未希釈のハイブリドーマ上清をサンプルとして使用した。インキュベーション時間は、室温で1時間とした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。検出抗体として、ペルオキシダーゼに結合した標的抗体の定常ドメインに対するポリクローナル抗体を使用した(PAK<M-Fcγ>S-F(ab')2-POD)。検出抗体を、1%(w/v) RSA含有PBS中80ng/mlの濃度で適用した。インキュベーション時間は、室温で1時間とした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。その後、ウェルを、室温で15分間、ABTS溶液と共にインキュベートした。発色の強さを、t 405nmで測光により決定した。参照波長は、492nmとした。ELISAにおいて組み換えIGF-1、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)に結合した際に速くかつ強い発色を示し、サーマス・サーモフィルスSlyDに対する結合が少ない初代ハイブリドーマ上清を、以下に記載されるキネティクススクリーニングプロセスに移した。
【0357】
SPRベースのキネティクススクリーニング
サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)、ネイティブ組み換えIGF-1、ネイティブ組み換えIGF-2、野生型サーマス・サーモフィルスSlyDおよびサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)を、SPRベースのキネティクススクリーニング分析に使用した。SPR分析においては、ラングミュアモデルにしたがい抗体の結合キネティクスを決定するために、モノマー性かつ1価の溶液中分析物を使用するものと一般に受け止められている。さらに、SPR測定においては、SPRは質量感受性の分析であるため、測定の感度を向上させるためにより高い分子量を有する分析物を使用することがより有益である。
【0358】
キネティクススクリーニングを、BIAcore A100機器において、ソフトウェアバージョンV1.1の制御下で行った。BIAcore CM5チップを機械に搭載し、製造元の指示にしたがい流体力学的に構成、調整した。泳動緩衝液としてHBS-EP緩衝液を使用した(10mM HEPES (pH 7.4)、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%(w/v) P20)。ポリクローナルウサギ抗マウスIgG Fc捕捉抗体を、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.5)中30μg/mlで、フローセル1、2、3および4のスポット1、2、4および5に、10,000RUとなるよう固定化する(図23)。抗体を、NHS/EDC化学を通じて共有結合により固定化する。その後にセンサーを、1Mエタノールアミン溶液を用いて不活性化させた。スポット1および5を決定のために使用し、スポット2および4を参照として使用した。センサーチップに適用する前に、ハイブリドーマ上清をHBS-EP緩衝液で1:2希釈した。希釈した溶液を、30μl/分の流速で1分間適用した。直後に分析物、例えばサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)融合ポリペプチドを、30μl/分の流速で2分間注入した。その後にシグナルを5分間の解離時間の間記録する。センサーを、10mMグリシン-HCl溶液(pH 1.7)を2分間、30μl/分の流速で注入することによって再生させる。最終結合(BL)として表される、抗原注入の終点の直前に記録されたシグナルおよび解離時間の終点の直前に記録されたシグナルである最終安定(SL)の2つの報告点を、キネティクススクリーニングにおける性能を特徴づけるために使用した。
【0359】
さらに、解離速度定数kd(1/s)を、ラングミュアモデルにしたがい計算し、抗体/抗原複合体半減期を、ln(2)/(60*kd)の式にしたがい分単位で計算することができる。
【0360】
抗体を、抗原であるサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)を用いた免疫処置ならびにサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)、サーマス・サーモフィルスSlyD野生型、ネイティブIGF-1およびネイティブIGF-2を用いたスクリーニングにより得た。スキャホールドベースのスクリーニングアプローチは、規定のIGF-1ヘアピンエピトープに結合する抗体を特異的に開発することができる。
【0361】
初代培養物上清をさらに、公知の方法により、限界希釈によってクローン培養物上清へと増殖させた。このクローン培養物上清を、機能アッセイにおいて、親和性および特異性について試験した。
【0362】
抗体産生クローン培養物上清のBIAcore特徴づけ
BIAcore CM5センサーをシステムに搭載したBIAcore T200機器(GE Healthcare)を使用した。センサーは、0.1% SDS、50mM NaOH、10mM HClおよび100mM H3PO4を100μl/分で1分間注入することによって事前調整した。
【0363】
システム緩衝液は、PBS-DT(10mM Na2HPO4、0.1mM KH2PO4、2.7mM KCl、137mM NaCl、0.05% Tween(登録商標)20、5% DMSO)とした。サンプル緩衝液は、システム緩衝液とした。
【0364】
BIAcore T200システムを、制御ソフトウェアV1.1.1の下で運用した。ポリクローナルウサギIgG抗体<IgGFCγM>R(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.)を、製造元の指示にしたがい、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.5)中30μg/mlで、フローセル1、2、3および4のそれぞれにおいて6500 RUとなるよう、EDC/NHS化学を通じて固定化した。最後に、センサー表面を、1Mエタノールアミン溶液でブロックした。実験全体を25℃で実施した。
【0365】
それぞれの抗体をおよそ40nM含むクローン培養物上清を、5μl/分の流速で2分間、<IgGFCγM>R表面に捕捉させた。溶液中分析物として、組み換えネイティブIGF-1、組み換えネイティブIGF-2、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)、組み換え野生型サーマス・サーモフィルスSlyD、組み換えサーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF、組み換え野生型サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD、組み換えサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-IGF-2(53-65)融合ポリペプチドを使用した。サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIFが、唯一、IFドメインを欠くサーマス・サーモフィルスSlyDのFKBPドメインである。サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-IGF-2(53-65)は、IGF-2ヘアピンインサートではなくIGF-1ヘアピンに対する特異性をカウンタースクリーニングおよび調査するために使用した。それぞれの分析物を、90nM、30nM、10nM、3.3nM、1.1nMおよび0nMの異なる濃度段階で注入した。結合フェーズを、100μl/分の流速で3分間モニターした。解離を、100μl/分の流速で10分間モニターした。このシステムを、10mMグリシン緩衝液(pH 1.7)を用いて再生させた。キネティクスを、BIAcore評価ソフトウェアを用いて評価した。
【0366】
以下の用語が本明細書で使用されている:mAb:モノクローナル抗体;RU:センサー上に捕捉されたモノクローナル抗体の相対反応単位;抗原:溶液中の抗原:kDa:溶液中分析物として注入された抗原の分子量;ka:結合速度定数;kd:解離速度定数;t1/2 diss:t1/2 diss = ln(2)/60*kdの式にしたがい算出された抗体・抗原複合体の半減期;KD:解離定数;RMAX:90nMの分析物の注入の結合フェーズの終点における結合シグナル;MR:モル比;Chi2:測定失敗;n.d.:検出できず。
【0367】
図25は、IGF-1に対してピコモルの親和性を有するスキャホールド由来モノクローナル抗体M-11.11.17およびM-10.7.9が構築されたことを示している。IGF-2に対する交差反応も、野生型サーマス・サーモフィルスSlyDに対する交差反応も、野生型サーモコッカス・ガンマトレランスSlyDに対する交差反応も、サーマス・サーモフィルスSlyD-ΔIF融合ポリペプチドに対する交差反応も、サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-IGF-2(53-65)融合ポリペプチドに対する交差反応も、検出できなかった。
【0368】
M-2.28.44は、組み換えヒトIGF-1を用いた従来的なマウスの免疫処置によって得られたモノクローナル抗体である。この抗体がIGF-1に対して30pMの親和性を示すという事実にもかかわらず、IGF-2に対して500pMの交差反応性が検出され得る。分析物としてサーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)およびサーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-IGF-2(53-65)を使用することで、交差反応性のIGF-2エピトープがIGFヘアピン領域でないことを読み取ることができる。
【0369】
実施例12
抗PLGF抗体の作製
マウスを、PLGF(60-76)の配列を含む免疫原で免疫処置した。その後にハイブリドーマを作製し、ELISAおよびキネティクススクリーニングを行った(手順全般の詳細については実施例10および11を参照のこと)。
【0370】
キネティクススクリーニングプロセスでは、SlyD/FKBP12-PLGFおよびストレプトアビジン上に単独移植したビオチニル化ペプチドPLGF(60-76)-biを使用して、PLGF(60-76)に対する結合活性を有する初代培養物上清を同定した。両分析物とも1:1ラングミュアキネティクスを示したが、スキャホールドは、SA-プローブ移植bi-ペプチドよりも低いchi2値のより良い解離フィットを示した。学説に制約されずに言うと、スキャホールドベースのスクリーニングアプローチは、手間をかけて調製されたSA-プローブと比較して、スキャホールドのモノマーの状態および改善されたエピトープアクセス性を有効利用するものである。
【0371】
クローン53.4.1等の、このアプローチにより開発された抗体は、ウェスタンブロットにおいてPLGFを特異的に検出することができた。
【0372】
実施例13
SlyD-FKBP12-IGF-1(74-90)を用いて生産された抗IGF-1抗体
SlyD/FKPB12-IGF-1(74-90)(図2および図8を参照のこと)ならびにSlyD/FKBP12-対照(図7を参照のこと)融合ポリペプチドを、公知の方法にしたがい大腸菌(pQE80Lベクター/大腸菌BL21 CodonPlus-RP細胞株)で生産した。8〜12週齢のBalb/cおよびNMRIマウスを、100μgのSlyD/FKPB12-IGF-1(74-90)を用いた反復腹腔内免疫処置に供した。
【0373】
10週後に、血清力価を、ELISAを用いて分析した。Nunc Maxisorb Fマルチウェルプレートを、1mlあたり0.41μgのポリペプチドを含む溶液を適用することによって、SlyD/FKPB12-IGF-1(74-90)でコーティングした。単離された抗原IGF-1を、90 ng/mlのビオチニル化IGF-1を含む溶液を適用することによって、StreptaWell High Bind SAマルチウェルプレートのウェルに固定化した。その後、遊離状態の結合部位を、室温で1時間、PBS中1%のRPLAを含む溶液を適用することによってブロックした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。サンプルとしてPBSで1:50希釈したマウス血清を使用した。任意のさらなる希釈を、1:819,200の最終希釈率になるまで、1:4ずつ行った。インキュベーション時間は、室温で1時間とした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。検出抗体として、ペルオキシダーゼに結合した標的抗体の定常ドメインに対するポリクローナル抗体を使用した(PAK<M-Fcγ>S-F(ab')2-POD)。検出抗体を、1%(w/v) RSA含有PBS中80ng/mlの濃度で適用した。インキュベーション時間は、室温で1時間とした。ウェルを、0.9%(w/v)塩化ナトリウムおよび0.05%(w/v) Tweenを含む溶液で3回洗浄した。その後、ウェルを、室温で15分間、ABTS溶液と共にインキュベートした。発色の強さを、測光により決定した。図19は、得られたマウス血清力価を示している。SlyD/FKBP12-IGF-1(74-90)を用いて得られた力価は、サーマス・サーモフィルスSlyD-IGF-1(74-90)を用いた免疫処置と比較して低かった(図20)。実施例12に記載されるようにしてさらなる抗体の開発を行った。最後に、上記のように、BIAcoreキネティクススクリーニングアプローチにおいて、IGF-1に対する結合を示す抗体は選択され得なかった。
【0374】
実施例14
FKBP12/13融合ポリペプチドを用いて作製された抗体
本明細書で報告されかつ本実施例で使用される融合ポリペプチドは、ヒトFKBP12由来の部分およびシロイヌナズナFKBP13由来の部分を含む。ヒトFKBP12由来の少なくとも1つのアミノ酸配列およびシロイヌナズナFKBP13由来の少なくとも1つのアミノ酸配列からなる融合ポリペプチドは、スキャホールドとしてのヒトFKBP12を熱力学的に安定化させることができ、FKBP12のN末端に大腸菌SlyDを融合させなくともよい。生来的に、FKBP13は、ジスルフィド結合を含んでいる。このFKBP13配列を、さらなる配列移植アプローチとしてキメラポリペプチドを安定化させるために、FKBP12に移植した。
【0375】
SEQ ID NO:16のC末端アミノ酸配列タグを含むキメラFKBP12/13融合ポリペプチドは、配列:
を有する。
【0376】
FKBP12/13融合ポリペプチドを、上記のようにして大腸菌において、可溶性かつモノマー性のタンパク質として発現させた。CD分光測定を、実施例12に記載されているようにして行った。このCDスペクトルは、FKBP12/13融合ポリペプチドが20℃でフォールディングすることを示した。
【0377】
実施例15
SlyD-FKBP12/13-CSF1R融合ポリペプチドの作製
ポリペプチドを上記のようにして大腸菌中で発現させ、そして上記のようにして精製した。Ni-NTA親和性精製の後、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。50mgのタンパク質を、HiLoad 26/60 SuperdexTM 75pg(GE Healthcare)に充填した。その溶出画分をネイティブゲルに充填し、公知の方法にしたがい分離した。
【0378】
親和性精製された融合ポリペプチドを、100mM KClおよび0.5mM EDTAを含む50mM KH2PO4緩衝液、pH 7.0に対して透析し、そして0.22μmフィルターを通してろ過した。SlyD/FKBP12/13-CSF1Rを、39744.9 Daポリペプチドについて計算された減衰係数 e = 20525 L・mol-1・cm-1を用い、UV/Vis分光により1.19mg/mlと定量した。
【0379】
タンパク質蛍光測定を使用して、SlyD/FKBP12/13-CSF1Rの立体配座の性質を試験した。ポリペプチド挿入のための担体としてのFKBP12 C22Aは、単一のFKBP12 Trp部分をFKBP12部分の構造完全性の診断に使用することができるため、参照として使用することができる(Scholz, C., et al., J. Biol. Chem. 271 (1996) 12703-12707; Russo, A.T., et al., J. Mol. Biol. 330 (2003) 851-866)。FKBP12 C22Aは、そのネイティブ構造において、320nmで単一の蛍光発光ピークを示す(Zoldak, G., et al., J. Mol. Biol. 386 (2009) 1138-1152)。
【0380】
250μlのKH2PO4緩衝液pH7.0中1.19 mg/mlのSlyD-FKBP12/13-CSF1Rを、異なる温度で分析した。KH2PO4緩衝液pH7.0を参照として使用した。Cary Eclipse機器を、スキャンソフトウェアバージョン1.1(132)の下で、励起および発光について5nmのバンド幅で使用した。300nm〜425nmの波長スキャンを、120nm/分で行った。固有のトリプトファン蛍光の励起波長を、280nmに設定した。
【0381】
実施例16
抗原結合抗体の選択におけるスキャホールドベースのカウンタースクリーニングアプローチ
6週齢のNMRIマウスを、サーモコッカス・ガンマトレランスSlyD-抗原(TgSlyD-抗原)の要素を含む100μgの組み換えキメラ融合ポリペプチドを用いた3回の腹腔内免疫処置に供した。10週後に、このマウスを、25μgのTgSlyD-抗原を用いて2回ブーストした。ハイブリドーマ細胞を公知の方法にしたがい作製した。初代ハイブリドーマを、限界希釈によって単離し、ELISAにより抗原結合についてスクリーニングした。
【0382】
50 ng/mlのTgSlyD-抗原融合ポリペプチド、50 ng/mlのTgSlyDΔIFおよび1μg/mlの単離された抗原を各々、4℃で一晩、30x 384ウェル(Nunc)プレートにコーティングした。コーティング緩衝液は、1個の炭酸-重炭酸タブレット(Sigma、C3041-100CAP99)を100mlの2重蒸留H2O(ddH2O)に溶解させることによって、新しく調製した。100μlの洗浄緩衝液(1 lのdH2O中に150mM NaCl、10ml Tween 20(Sigma)、40ml Bromidox L(Roche))。ウェルを、BioTek洗浄機を用いて、100μlの洗浄緩衝液(1 lのdH2O中に150mM NaCl、10ml Tween 20(Sigma)、40ml Bromidox L(Roche))を用いて3回洗浄した。このウェルを、RTで1時間、30μlのブロッキング緩衝液(1LのddH2O中に10g BSA、10 x PBSペレット(Gibco))を用いてブロックし、その後に100μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。30μlの1:1000希釈ハイブリドーマ上清を、Liquidatorを用いてウェルに移し、RTで1時間インキュベートした。陽性対照として、抗原陽性血清を使用した。ウェルを100μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。ペルオキシダーゼ結合F(ab')2フラグメントヤギ抗マウスIgG抗体(Dianova)をブロッキング緩衝液で1:30000希釈し、30μlを各ウェルに移した。RTで1時間のインキュベーションの後に、100μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。各ウェルにおいて、30μlの直接使用可能ABTS基質をRTで30分間インキュベートした。405 nm/492 nmの吸収シグナルを、参照シグナルとして、PowerWave XS Reader(BioTek)を用いてモニターした。TgSlyD-抗原を含む融合ポリペプチドおよび単離された抗原に対して陽性のELISAシグナルを示し、TgSlyDΔIFを含む融合ポリペプチドに対してシグナルを示さなかった15個のハイブリドーマ培養物を選択し、これらをさらに培養した。
【0383】
初代ハイブリドーマ上清を単離し、上記と同じ方法で実施した第2 ELISAカウンタースクリーニングによって抗原結合についてスクリーニングした。第2スクリーニングにおいては、抗体を含む培養物上清の特異性を正確に知るために追加のスクリーニング試薬を使用した。
【0384】
50 ng/mlのTgSlyD-抗原融合ポリペプチド、50 ng/mlのTgSlyDΔIF、500 ngのttSlyD-抗原融合ポリペプチドおよび1 μg/mlの単離された抗原を、室温(RT)で1時間、384ウェル(Nunc)プレートにコーティングした。ELISAを上記のようにして行った。T.th.SlyDとT.g.SlyDは、起源となる種が異なるため、わずかな配列相同性しか示さない。アミノ酸の36%のみが同一であり、ブロッサム62の計算によれば配列類似性はわずか48%である。TgSlyDΔIFは、挿入物を完全に欠いている。したがって、このポリペプチドは、ELISAカウンタースクリーニングにおける使用に非常に適している。
【0385】
このように、スキャホールド代理ポリペプチドを用いた免疫処置を行うことにより、ネイティブ抗原ドメイン内の特定のエピトープを事前に標的化することができた。
【0386】
実施例17
エピトープマッピング
SlyD-FKBP融合ポリペプチドはまた、例えばジスルフィド結合を含む2次構造のような、複雑なアミノ酸挿入モチーフを保有することができる。この融合ポリペプチドはシステインを含まないので、適切な条件下でのオン・カラム再フォールディングは、挿入物内での正確なジスルフィドの形成を促し、これはさらにSlyD自体のシャペロン機能によっても支援される。SlyD-FKBP融合ポリペプチドを、上記のようにして大腸菌中で発現させ、オン・カラム再フォールディングさせた。SlyD-FKBP12対照を、150mM NaCl、6.5%(w/v)サッカロース、10mMシステインを含む75mM HEPES緩衝液(pH 7.5)中9.5 mg/mlの濃度となるよう透析した。構造機能関連性を有する2つのジスルフィド結合を形成する4つのシステインを含むCD81挿入物内でのジスルフィドシャッフリングを避けるため、1 mg/ml量のSlyD-FKBP12-CD81融合ポリペプチドを、100mM NaCl、1mM EDTAを含む50mMリン酸カリウム緩衝液pH7.0中で透析した。融合ポリペプチドSlyD-FKBP12-CD81およびSlyD-FKBP12対照を、エピトープマッピングの目的で使用した。
【0387】
ヒトCD81は、C型肝炎ウィルスのエンベロープE2糖タンパク質の受容体である。CD81は、テトラスパニンファミリーに属する膜貫通タンパク質である。CD81は、90アミノ酸長のホモダイマータンパク質であり、いわゆるマッシュルーム様構造を示す(PDB 1IV5)。ウィルスの結合に関与することが公知となっている残基は、いわゆる35アミノ酸長の「ヘッドサブドメイン」にマッピングすることができ、これが抗ウィルス薬およびワクチンの設計上の基礎を提供する。ウィルス結合部位のヘッドサブドメイン配列は、わずか35アミノ酸長なので、従来的なクロスブロッキング実験を用いて10kDaのCD81タンパク質上の抗体エピトープをマッピングするのは困難である。この関連するマッシュルーム様ヘッドドメインに特異的に直接結合する抗体を、CD81LEL構造の近傍またはその他の箇所に結合する抗体から区別するのは困難である。すべての抗体が、標的構造、すなわちヘッドドメインに特異的に結合せずとも、それらの結合部位に非依存的に、HCV E2エンベロープタンパク質との競合効果を示すであろう。したがって、この関連するヘッドドメイン構造をFKBPに移植し連続的にエピトープマッピングするのが、様々な理由で有用な方法である。第1に、CD81LELタンパク質に関連する、このタンパク質自体がオリゴマー化する傾向があることに起因するいくつかの生化学的問題が、回避される。第2に、これはむしろ、すべて全長CD81タンパク質に結合する多数の抗体から抗体エピトープを同定するのに適している。
【0388】
図40には、Ni-NTAクロマトグラフィー精製されたSlyD-FKBP12-CD81のSDSページ(左)およびウェスタンブロット(右)が示されている。
【0389】
BIAcore CM5センサーがシステムに搭載されたBIAcore 2000機器(GE Healthcare)を25℃で使用した。センサーを、0.1% SDS、50mM NaOH、10mM HClおよび100mM H3PO4を100μl/分で1分間注入することにより事前調整した。泳動緩衝液としてHBS-EP緩衝液を使用した(10mM HEPES (pH 7.4)、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%(w/v) P20)。サンプル緩衝液は、システム緩衝液とした。各タンパク質リガンドを、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.0)中30μg/mlで、EDC/NHS化学を通じて、フローセル2、3および4に固定化した。フローセル1を、参照として使用した。センサーを、1MエタノールアミンpH 8.0溶液を用いて不活性化させた。以下の反応単位(RU)の物質をセンサーに固定化した:フローセル2:1800 RU SlyD-FKBP12対照(32.8 kDa)、フローセル3:SlyD-FKBP12-CD81(35.8 kDa)、フローセル4:900 RU CD81LEL(10 kDa)。各々50nMの31個の抗体分析物を、3分間の結合フェーズおよび3分間の解離フェーズの間、30μl/分で注入した。30個の抗体は、10 kDaのCD81LELタンパク質を用いた免疫処置キャンペーンからを得た。センサー表面を、20μl/分で100mM HClを用いて、20μl/分の3回連続の30秒間の注入により、再生させた。センサーグラムを、参照シグナル2-1(フローセル2からフローセル1を差し引く)、3-1および4-1としてモニターし、これをBIAcore評価ソフトウェア4.1を用いて評価した。分析物注入の終点に、最大分析物結合シグナルを定量するための報告点を設定した。データの正規化のため、最高の分析物結合シグナルを100%に設定した。
【0390】
以下の表には、正規化された抗体結合反応が示されている。30個の試験された<CD81-LEL>M-抗体のうちの6個のみ(太字)がCD81ヘッドドメイン上の正確なエピトープを示している。陰性対照のポリペプチドであるSlyD-FKBP12対照は結合しなかった。陽性対照のポリペプチドであるCD81-LELは、これは同時に免疫原でもあるが、すべての抗体によって認識された。Slyd-FKBP12-CD81は、抗体エピトープがマッシュルーム様ドメインに正確に位置する場合にのみ結合した。
【0391】
(表)
【0392】
X線結晶分析によるエピトープマッピング結果の確認
抗体K05およびK04のFabフラグメントを、CD81-LELタンパク質を用いて共結晶化させ、これをx線回折分析によって分析した(Seth Harris, Palo Alto)。得られた解像度は、2.15Åであった。抗体K05はマッシュルームドメインに結合するのに対して、抗体K04はマッシュルーム配列の部位から外れたエピトープに結合する。
図1
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]