(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877906
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】医療用装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/14 20060101AFI20160223BHJP
G05B 9/03 20060101ALI20160223BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
A61M1/14 553
G05B9/03
H04Q9/00 301B
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-537829(P2014-537829)
(86)(22)【出願日】2012年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2012006129
(87)【国際公開番号】WO2014049642
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】畠中 陽子
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第2569892(JP,B2)
【文献】
特開平3−243195(JP,A)
【文献】
特公昭62−11361(JP,B2)
【文献】
特開平6−85714(JP,A)
【文献】
特許第2776117(JP,B2)
【文献】
特開平3−64131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14
G05B 9/03
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用装置であって、
装置のシーケンス制御を司る制御部を有し、前記医療用装置を制御するための第1のコントローラと、
前記第1のコントローラに故障が発生した場合に動作する第2のコントローラと、
前記第1のコントローラと前記第2のコントローラの報知出力の排他論理和により報知出力を行う報知手段とを備え、
前記第2のコントローラは、前記第1のコントローラの報知出力を取得し、前記第1のコントローラの報知出力がオフ状態の場合は自身の報知出力をそのまま出力し、前記第1のコントローラの報知出力がオン状態の場合は自身の報知出力を反転して出力することを特徴とする医療用装置。
【請求項2】
前記報知手段は、報知出力のオン状態で点灯するランプを有することを特徴とする請求項1に記載の医療用装置。
【請求項3】
前記報知手段は、報知出力のオン状態で発音する発音手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の医療用装置。
【請求項4】
複数の報知器を用いた報知を行うために、前記複数の報知器のそれぞれに対して、前記報知手段が独立に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項5】
バイナリコードによる指定された報知を行う報知器を用いて報知を行うために、前記報知器に入力されるバイナリコードを構成する複数のビットのそれぞれに対して、前記報知手段が独立に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項6】
前記第1のコントローラは、前記第2のコントローラの報知出力を取得し、前記第2のコントローラの報知出力がオフ状態の場合は自身の報知出力をそのまま出力し、前記第2のコントローラの報知出力がオン状態の場合は自身の報知出力を反転して出力することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項7】
装置のシーケンス制御を司る制御部を有し、医療用装置を制御するための第1のコントローラと、
前記第1のコントローラに故障が発生した場合に動作する第2のコントローラと、
前記第1のコントローラと前記第2のコントローラの報知出力の排他論理和により警報を行う警報手段とを備えた医療用装置の制御方法であって、
前記第2のコントローラが、前記第1のコントローラの報知出力を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された報知出力がオフ状態の場合は自身の報知出力をそのまま出力し、前記取得工程で取得された報知出力がオン状態の場合は自身の報知出力を反転して出力する出力工程と、を有することを特徴とする医療用装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、医療用装置においては、その複雑な制御がマイコンを含むコントローラにより実現されている。医療用装置の中には、その故障が患者の生命に直接に関わるようなものもあり、そのような装置の一例として体外循環装置が挙げられる。体外循環装置の代表的なものとして、心肺補助に使用される心肺補助装置が知られており、この装置においては、人工肺、遠心式人工心臓(遠心ポンプ)、コントローラ、酸素供給源(酸素ボンベ)等から構成される血液体外循環回路を備えている(特許文献1参照)。心肺補助装置は、患者の心臓、肺に代わって機能するものであり、たとえば手術中に停止するような事態に陥ることがないよう、高い安全性が要求される。
【0003】
そのような医療用装置の安全性を確保するための一手法として、医療用装置を構成する各ユニットを制御するためのコントローラを主、副の二重化構造にすることが挙げられる。この場合、主コントローラが何らかの原因で停止したとしても、副コントローラが制御を継続するため、より安全なシステムを構築できる。その反面、コントローラの二重化は、回路規模が複雑化し、装置の大型化、コストの増大化、消費電力の増大化を招くという課題が有る。これに対し、コンピュータの停止や暴走を検出するマイコン監視装置を設けて、コンピュータの停止や暴走を検出すると警報を出力するように構成することも行われている。この場合、コントローラの二重化で得られるような、システムのほぼ完全なバックアップを達成することはできないが、使用者はコンピュータの故障を直ちに知らせることで、使用者にシステムを迅速に復帰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−14504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療装置の稼働中に出力される各種報知を行なうためのランプやブザー等の報知器は、コントローラの二重化を行なうにしても、上述したようなマイコン監視装置を用いるにしても、共通であることが望ましい。すなわち、主コントローラから副コントローラまたはマイコン監視装置へ制御の主体が切り替えられても、使用する報知器は同一であることが望ましい。コントローラ毎に報知器を設けてしまうと、いたずらに報知器が増えてしまい、使用者が混乱するからである。
【0006】
そのような警報器の共有化を実現するために、一般には、主コントローラの報知出力と副コントローラまたはマイコン監視装置の報知出力はOR接続され、そのOR出力が報知器を駆動する構成が用いられている。しかしながら、このような構成では、仮に主コントローラが報知出力をオンにした状態のまま動作を停止してしまった場合に、報知器のオン状態が維持されてしまい、副コントローラまたはマイコン監視装置などのバックアップ用の装置では報知器の状態を自由に切り替えることができなくなってしまう。
【0007】
特に、医療装置において、機器故障を知らせるアラームシステム(視覚アラーム、聴覚アラーム等)の配備は義務付けられており(医療機器規格のIEC60601−1第3版)、たとえばランプを用いた警告の場合に、その内容や重要度に応じて、色、点滅の速さ、デューティサイクルが規定されている。しかしながら、上述したような警報器の共用を行なった場合に、そのようなアラームを実現できなくなってしまう場合がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コントローラとバックアップ用の装置が報知器を共用する場合に、バックアップ用の装置が警告器への出力状態を自在に切り替えることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の一態様による医療用装置はたとえば以下の構成を備える。すなわち、
医療用装置であって、
装置のシーケンス制御を司る制御部を有し、前記医療用装置を制御するための第1のコントローラと、
前記第1のコントローラに故障が発生した場合に動作する第2のコントローラと、
前記第1のコントローラと前記第2のコントローラの報知出力の排他論理和により報知出力を行う報知手段とを備え、
前記第2のコントローラは、前記第1のコントローラの報知出力を取得し、前記第1のコントローラの報知出力がオフ状態の場合は自身の報知出力をそのまま出力し、前記第1のコントローラの報知出力がオン状態の場合は自身の報知出力を反転して出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コントローラとバックアップ用の装置が警告器を共用する場合に、簡易な構成で、バックアップ用の装置が警告器の状態を自在に切り替えることを可能にすることができる。
【0011】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態による医療用機器の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態によるマイコン監視部による報知出力処理を説明するフローチャートである。
【
図3】実施形態によるマイコン監視部による報知出力をハードウエアで実現する構成の例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態による報知出力を、複数の報知器に対応させた様子を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、実施形態による医療用装置10の概念を説明するブロック図である。医療用装置10としては、たとえば、体外循環装置(人工心肺装置)や人工呼吸器などの生命維持装置が挙げられる。医療用装置10は、コントローラ20と、コントローラ20により制御される医療用装置の構成部30とを有する。コントローラ20において、主コントローラの役割を果たす第1のコントローラとしてのマイコンは、MPU部21、インタフェース部25、不図示のプログラムメモリとしてのROMや作業メモリとしてのRAMなどを有する。MPU部21は、ROMに格納されたプログラムを実行することで医療用装置10における各種制御を実現する。構成部30は、たとえば医療用装置10として体外循環装置を適用した場合には、モータ、遠心ポンプ、人工肺といった、体外循環のためのハードウエア構成ということになる。なお、上記では、構成部30や警報部としてのランプ24のシーケンス制御を司る制御部としてMPU部21を有するマイコンを示したが、これに限られるものではなく、たとえば、マイコンの代わりにFPGAなどを用いたものであってもよい。
【0015】
マイコン監視部22は、MPU部21における停止あるいは暴走といった故障の発生を監視し、故障の発生を検出した際に、必要な処理を行なう第2のコントローラとして機能する。たとえば、マイコン監視部22は、MPU部21の故障時に、その旨を報告するための報知出力を排他論理和回路部23へ提供する。排他論理和回路部23は、MPU部21とマイコン監視部22からの報知出力(オン、オフ)の排他論理和を演算し、その演算結果の信号を報知器としてのランプ24へ出力する。なお、マイコン監視部22に代えて、コントローラを2重化するための副コントローラを用いてもよいことは言うまでもない。また、ランプ24は、MPU部21とマイコン監視部22が装置の稼働状態や警告状態を通知するのに用いられる。また、報知器の一例としてランプ24を示したが、これに限られるものではなく、報知出力に応じて発音と停止を行うブザーなどを用いてもかまわない。
【0016】
MPU部21の入出力は、インタフェース部25に接続されており、MPU部21の各入出力に対して医療用装置10の構成部30の入出力が接続される。また、インタフェース部25には、その他の入出力機器27が接続され、ユーザインターフェースとしての表示部や操作部などが提供される。また、本実施形態では、MPU部21からの排他論理和回路部23への報知出力も、インタフェース部25を介して出力される。さらに、MPU部21からの報知出力は、マイコン監視部22へも入力されるようになっている。同様に、マイコン監視部22からの報知出力は、排他論理和回路部23へ入力されるとともに、MPU部21へも入力されるようになっている。なお、インタフェース部25は、MPU部21に組み込まれていてもよい。
【0017】
MPU部21の停止または暴走といったようなMPU部21の故障時に、マイコン監視部22は、ランプ24へその旨の報知出力(本実施形態では、ランプ24への点灯出力)を行い、使用者に対して警報を報知する。このとき、MPU部21は、その暴走時等において、直前のランプ24への報知出力を維持してしまう場合がある。MPU部21が報知出力オフの状態であればマイコン監視部22からの報知出力のオン/オフが排他論理和回路部23の出力信号に反映されるが、MPU部21が報知出力オンの状態を維持してしまうと、マイコン監視部22からの報知出力が排他論理和回路部23により反転されてしまう。そこで、マイコン監視部22は、MPU部21の報知出力を確認し、MPU部21の報知出力がオンの場合には、自身の報知出力を反転させて出力する。
【0018】
図2は、マイコン監視部22による報知出力の制御を説明するフローチャートである。MPU部21の停止あるいは暴走といったような故障が発生した場合に、マイコン監視部22はこの故障を検出し、自身を有効化して制御を開始し、
図2に示す処理を実行する。なお、
図2に示されるフローチャートは、MPU部21の故障が検出されてマイコン監視部22の制御が開始された後は繰り返し実行される。
【0019】
まず、ステップS201において、マイコン監視部22は、これから出力するべき報知出力のオン/オフを決定する。MPU部21の暴走、停止を報知する場合の点滅周波数やデューティサイクルは予め設定されており、マイコン監視部22はこれにしたがって報知出力のオン/オフを切り換える。
【0020】
マイコン監視部22は、ステップS202において、他方のコントローラであるMPU部21が出力している報知出力を取得し、ステップS203において、ステップS202で取得した、MPU部21の報知出力がオンの状態か否かを判定する。MPU部21の報知出力がオンの場合は、処理はステップS204へ進み、マイコン監視部22はステップS201で決定された警報出力のオン/オフを反転した後、ステップS205において、排他論理和回路部23へ警報出力として出力する。ステップS203において、MPU部21の報知出力がオンではない場合は、処理はそのままステップS205へ進み、マイコン監視部22は、ステップS201で決定された報知出力をそのまま排他論理和回路部23へ出力する。
【0021】
なお、上記では報知出力の反転をソフトウエアにより行なっているがこれに限られるものではない。たとえば、
図2に示した処理と同様の報知出力の反転は
図3に示すような回路構成によっても実現できる。なお、
図3では、図示の簡略化のため、インタフェース部25の記載は省略してある。
図3において、報知出力生成部31は、ステップS201で説明したような処理を実行し、マイコン監視部22が出力する報知出力を生成する。生成された報知出力は、そのままセレクタ33のa端子に接続されるとともに、インバータ32によって反転された出力信号がセレクタ33のb端子に接続される。セレクタ33は、MPU部21からの報知出力を入力し、MPU部21からの報知出力がオフの場合には端子aと端子cとを接続し、MPU部21からの報知出力がオンの場合には端子bと端子cとを接続する。したがって、セレクタ33の端子cからは、MPU部21の報知出力がオフ状態の場合は報知出力生成部31で生成された報知出力がそのまま出力され、MPU部21の報知出力がオン状態の場合は報知出力生成部31で生成された報知出力の反転信号が出力される。もちろん、MPU部21の報知出力においても上述したようなインバータ32やセレクタ33を設けることが可能である。
【0022】
以上のような処理により、MPU部21の報知出力状態がオン、オフのいかなる状態にあっても、マイコン監視部22は自在にランプ24を点灯、消灯させることができ、医療機器規格のIEC60601に規定されているようなアラーム(ランプ)の点滅形態に則った報知を容易に実現できる。また、上述したように、報知器としてランプ24に代えてブザーを用いることもでき、医療機器規格のIEC60601に規定されているような音によるアラーム規格に則った報知を行うことも容易に実現できる。
【0023】
なお、上記実施形態では、マイコン監視部22の報知出力をMPU部21に取り込んでおり、MPU部21においてもマイコン監視部22と同様の報知出力のための制御を行なっている。したがって、マイコン監視部22が非実行中(すなわち、MPU部21が正常動作中)にマイコン監視部22が何らかの信号を出力するような事態が生じても、MPU部21による正しい報知出力を反映させることができる。但し、MPU部21が動作中にマイコン監視部22が報知出力をオフの状態を維持することが保障されているのであれば、マイコン監視部22の報知出力をマイコン側へ取り込む必要はない。
【0024】
また、上記実施形態では、1つのランプまたはブザーへの報知出力の制御を説明したが、報知器は複数のランプあるいはブザーを有していてもよいし、それらが混在していてもよい。その場合、警報器が有する複数のランプやブザーの各々に対応して排他論理和回路部23を設け、それぞれの報知信号を独立して処理するようにすればよい。たとえば、
図4に示されるように、ランプが3つ(ランプ24a、24b、24c)ある場合には、各ランプに接続される3つの排他論理和回路部23a,23b、23cを設け、
図2に示したような報知出力処理、あるいは
図3に示したような報知出力回路を、各ランプに独立に設ければよい。なお、
図4においても、図示の簡略化のためにインタフェース部25は省略してある。
【0025】
また、報知内容(放置状態)がバイナリコードにより指定される報知器を用いてもよい。たとえば、
図4において、報知器が3ビットのバイナリコードを扱うような構成の場合にも適用可能であることは明らかである。この場合、たとえば、報知器の各入力ビットに接続される3つの排他論理和回路部23a,23b、23cを設け、
図2に示したような報知出力処理、あるいは
図3に示したような報知出力回路を、各ビットに独立に設けることになる。
【0026】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。