(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877995
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】フェイスドライバー
(51)【国際特許分類】
B23B 33/00 20060101AFI20160223BHJP
【FI】
B23B33/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-233175(P2011-233175)
(22)【出願日】2011年10月24日
(65)【公開番号】特開2012-91316(P2012-91316A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2014年9月8日
(31)【優先権主張番号】10 2010 060 118.7
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007204
【氏名又は名称】ロェーム ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ショイ
【審査官】
五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−196907(JP,A)
【文献】
実開昭52−080178(JP,U)
【文献】
国際公開第95/004623(WO,A1)
【文献】
米国特許第04125042(US,A)
【文献】
英国特許出願公開第00725439(GB,A)
【文献】
西独国実用新案公開第01703830(DE,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00−33/00
B23B 23/04
B23B 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受入保持体(1)と、センターヘッド(4)を有する支持円柱または支持円筒と、
受入保持体(1)中に配置され、直接または間接的に支持円柱または支持円筒を支持する圧縮バネ(2)と、
支持円柱または支持円筒を取り囲み、ワークピースに突き当てられるように備えられる駆動端ホイール(7)とを備えたフェイスドライバーにおいて、
受入保持体(1)に回転不能に接続された駆動ヘッド(3)と、
駆動ヘッド(3)中にあって、フェイスドライバーの中心軸から外れ、かつ該中心軸に平行に配置された中心軸を有する受入部中に軸方向に可動に配置される複数の支持ピン(5)とを備え、
各支持ピン(5)のヘッド(10)が、駆動端ホイール(7)におけるワークピースとは逆側の面に設けられた、半径方向に延びる凹陥部(8)に噛み合い、
支持ピン(5)が、駆動端ホイール(7)とは逆の側の端部にて、平衡調整ホイール(6)上に支持されており、
前記凹陥部(8)には、ヘッド(10)と組み合わさって作動を行うためのV字谷面領域(9)が備えられることを特徴とするフェイスドライバー。
【請求項2】
ヘッド(10)がボール面状のセンタリング面を備えることを特徴とする請求項1に記載のフェイスドライバー。
【請求項3】
少なくとも3つの支持ピン(5)が備えられ、平衡調整ホイール(6)が、受入支持体(1)に、支持案内部にてボール面状部分同士が突き当てられることにより案内されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフェイスドライバー。
【請求項4】
支持円柱または支持円筒が、平衡調整ホイール(6)の中央の孔を貫いて延びていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフェイスドライバー。
【請求項5】
各支持ピン(5)が、直接、平衡調整ホイール(6)に突き当てられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフェイスドライバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースなどを中心軸の箇所で保持するとともに、回転駆動力を伝えるのに用いられるフェイスドライバー(face driver; Stirnseitenmitnehmer; 端面駆動装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連したフェイスドライバーが、特には、(1)受入保持体と、(2)センターヘッドを備えた支持シリンダー(円柱または円筒)と、(3)受入保持体中に配置されて支持シリンダーを直接または間接的に支持する圧縮バネと、(4)支持シリンダーを取り囲み、ワークピースにあてがわれる駆動端ホイールとからなる。
【0003】
フェイスドライバーは、心押台スピンドルと組み合わさって作動するようにして用いられて、ワークピースをその端面にて締め付けて保持する。フェイスドライバーは、ワークピースの側面や周面を締め付けて保持することができないとき、例えば、側面や周面に加工を施すときに用いられる。端面での締付保持を行うことから、ワークピースへの回転モーメントの伝達も、ワークピースの端面を通じて行う必要がある。また、加工により軸方向または半径方向に作用する応力が、ワークピースの締付保持、及び、位置または姿勢に影響を与えてはならない。
【0004】
導入部で述べたようなフェイスドライバーは、ドイツ特許出願公開DE10056729A1に記載されている。ここで、受入保持体とワークピースとの間には、一方に中間ディスク(17)が配置され、他方に揺れ動きディスク(10)が配置される。これら中間ディスク(17)及び揺れ動きディスク(10)の両者を通じて、スチールロールに対する支持が行われる。
【0005】
バジレ・ゲーエムベーハー(Basile GmbH)の公然実施により知られているフェイスドライバーにおいては、平衡調整機構に、楔(くさび)レバーが用いられ、これにより、4つのドライバーピンによる駆動が可能となっている。ここで、楔レバー本体が、2つの楔レバーピンにより正しい位置及び姿勢に保持される。楔レバーピンは、2つの楔レバー支持部から支持されている。楔レバー本体はに、2つの振れ動き板が備えられ、これらは、2つの弾性部材により楔レバー本体により支持される。4つのドライバーピンは、ドライバーピンヘッドに案内される。センターヘッドは、ドライバーピンに依存せず、積層皿バネからの締付力を受けている。左回り回転の実施様式、及び右回り回転の実施様式のために、ドライバーピンを交換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開DE 10059116A (特開2002-205220)
【特許文献2】ヨーロッパ特許EP0764490B
【特許文献3】ヨーロッパ特許出願公開EP2147734A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底をなす課題は、冒頭部で述べたようなフェイスドライバーについて、次のように構成することにある。すなわち、平衡が取れた遊びのない駆動作用を、左回り回転、及び右回り回転にて実現できる構造形態を、従前のフェイスドライバーに一体に組み込むことができ、同時に、運転コスト及び保守コストを低減できるように構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、冒頭部で述べたようなフェイスドライバーにおいて、以下により解決される。受入保持体に回転不能に接続された駆動ヘッド中に、複数の支柱ピンが配置され、これら支柱ピンは、受入部中に、軸方向に可動に配置され、この受入部の中心軸は、フェイスドライバーの中心軸に平行で、かつ該中心軸からずれている。各支柱ピンのセンタリングヘッドが、駆動端ホイールにおけるワークピースとは逆側の面に設けられた凹陥部に噛み合う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるフェイスドライバーは、非常にシンプルな構造により、際立って優れている。駆動端ホイールの凹陥部に噛み合う支柱ピンを通じて、回転モーメントを、工作機械の作動スピンドルに接続した受入保持体から、駆動端ホイールへと伝えることができる。支柱ピンが軸方向に位置シフト可能であることにより、駆動端ホイールは、周期的な振動、その他の振れ動きを行いつつ同調した従動動作を行う。したがって、駆動端ホイールは、ワークピースにおける斜めに配置された面に合わせることができる。しかも、この際、ワークピースの締付保持及び回転モーメント伝達には悪影響を及ぼさない。ワークピースの側の面には、歯切り部ないしはツメを設けることができる。しかしながら、これについての既知のいずれの変形形態によっても、ワークピースの先端面と、駆動端ホイールとの係合を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明によるフェイスドライバーの縦断面図である。
【
図2A】駆動端ホイールについての、先端のドライバーツメの側から見た斜視図である。
【
図2B】駆動端ホイールについての、根元側から見た斜視図である。
【
図4】フェイスドライバーの使用状態の一例を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の枠内において、支柱ピンが、駆動端ホイールとは逆の側の端部にて、平衡調整ホイールにより支持されているなら好ましい。このようであると、支柱ピン相互の間で、軸方向の位置シフトが、一体に連動した様式にて行われる。また、駆動端ホイールをワークピースの先端面に突き当てる際の平衡調整が、駆動端ホイールに荷重を加える支柱ピンにより実現できる。
【0012】
さらには、少なくとも3つの支柱ピンが備えられ、平衡調整ホイールが、受入保持部に対して、支持搭載部にて、ボール面状に案内されているならば、好ましい。すなわち、平衡調整ホイールの支持面が、一つの球面の部分、その他のボール状の膨出面の一部をなす部分同士が摺動可能に突き当てられてるようにして、例えばボールジョイント状に可動に支持されているならば好ましい。上記のような形態であると、3点での支持は、与えられているのであり、また、受入支持体上で平衡調整ホイールが案内されることにより、支柱ピンにおける駆動端ホイールとは逆側の端部が、少なくとも3点での支持に対応して適切な方向へと向けられる。これに代えて、次のような形態をとることもできる。平衡調整ホイールが受入保持体の側に傾斜面を備え、この傾斜面により、平衡調整ホイールは、平坦面に沿って受入保持体上にて、半径方向へと位置または姿勢をシフトすることで、天秤の動作のような平衡度の調整を行う。
【0013】
本発明によると、上記の凹陥部が、これにあてがわれたセンタリングヘッドと組み合わさって作動を行うべく、V字谷面をなす領域、特には、帯状のショルダー領域をなす。このV字谷面領域により、次のことが実現される。すなわち、支柱ピンが遊びなしに、駆動端ホイールと組み合わさって作動を行うことができ、特には、右回り回転と左回り回転との切換えが、往復動する連れ動かし(ドライブ)作用を損なうことがない。3点支持と、上記の凹陥部におけるV字谷面状、特にはプリズム面状の領域とが組み合わさることにより、駆動端ホイールが、応力の方向及び振り子動作に無関係に回転するのを阻止する。
【0014】
支柱ピンが駆動端ホイールの凹陥部と組み合わさって行う作動を、さらに促進・向上させるためには、センタリングヘッドが、球面状(球面の一部の形状)またはその他のボール面状(ボールなどの一部をなす丸い形状)のセンタリング面を備える。このようにして、支柱ピンは、球面状その他のボール面状をなすセンタリング面により、上記凹陥部におけるV字谷面領域中にて、方向が調整されて適宜な方向を向くようになる。また、この方向の調整は、駆動スピンドルの回転方向とは無関係に行われる。本発明の枠内において、さらには、次のことが想定されている。支持シリンダーが、受入保持体の中央の通し孔中へと延びている。したがって、平衡調整ホイールは、支持シリンダー上に配置され、この限りにおいて、実質上、振れ動き動作を、半径方向への滑り動きなしに行うことができる。
【実施例】
【0015】
図1には、本発明のフェイスドライバーAの縦方向断面図を示す。このフェイスドライバーは、その受入保持体1により、工作機械の作動スピンドルに接続することができる。受入保持体1中には、センターヘッド4を備えた支持シリンダ41を直接または間接的に支持するための、コイルバネからなる圧縮バネ2が配置される。図示の例で、圧縮バネ2はコイルバネであり、センターヘッド4は円錐状のコーンヘッドである。押圧力によりセンターヘッド4の中心応力が適正な値に設定され、また、これにより、センタリング作用を行う際のセンターヘッド4の位置・姿勢が規定されるようにすることができる。フェイスドライバーAが、さらには、支持シリンダ41を取り囲む、駆動端ホイール7と駆動ヘッド3とを備える。駆動端ホイール7は、ワークピースにあてがうためのものであり、駆動ヘッド3中には、複数の支柱ピン5が、フェイスドライバーAの中心軸C1から外れて、かつ該中心軸に平行の中心軸C2を有する受入部31中にて、軸方向に可動に配置されている。駆動ヘッド3は、受入保持体1に、回転不能に、かつ軸方向に位置ズレ不能に、接続されている。このような接続は、図示の実施例において、ネジ8により実現されている。このネジ8は、駆動ヘッド3を貫き、受入保持体1における対応するネジ切り孔に噛み合う。ネジ8は、周方向に均等に分布するように備えられる。各支持ピン5における、球面状のセンタリング面を有するセンタリングヘッド10が、駆動端ホイール7における、半径方向に延びる凹陥部8に噛み合わされる。駆動端ホイール7は、対応するセンタリングヘッドと組み合わさって作動を行うべく、V字谷面状、特にはプリズム状の領域9を備えている。
図2Bに示す例において、V字谷面状領域9は、駆動端ホイール7の根元端面から所定の深さにまで、平面状に面取りした帯状の領域として設けられており、V字谷面状領域9の傾斜角(中心軸に対する角度)は、約50〜80度である。V字谷面状領域9は、場合により、断面から見て丸みを有するように面取りされた部分でも良い。
【0016】
図示の実施例において、支持ピン5は、駆動端ホイール7とは逆側の端部にて、支持搭載部61(受入保持体1の上端のフランジ形成部分における上面内側の部分の上面)に、球面状に、すなわちボールジョイント状に可動に案内されている。図示の実施例は、3つの支柱ピン5を含んでおり、これら支柱ピン5は、3点支持を確実に実現する。支持シリンダー41は、平衡調整ホイール6の中央の通し孔を通り抜けて延びている。
【0017】
本発明によるフェイスドライバーAにおいて、駆動端ホイール7におけるワークピースの側にて歯またはツメ71が形成された面が、ワークピースに突き当てられるのを可能にし、また、駆動端ホイール7の先端面が、作動スピンドル及びフェースドライバー中心軸に対して傾斜して延びている。心押し台主軸C(
図4の参考図)または心押し台スリーブと組み合わさって作動してワークピースB(
図4の参考図)を締付保持すべく、駆動端ホイール7は、ワークピースの先端面に突き当てられている。また、支持ピン5は、平衡調整ホイール6により、平衡を調整すべく位置シフトされる。同様にして、支持ピン5におけるセンタリングヘッド10の球面状のセンタリング面が、凹陥部8中にて、V字谷面領域9に押し付けられる。このようにして、駆動端ホイールは、周期的な往復動といった振れ動きを行いつつ、ワークピースを引き連れて動かす駆動を行うことができる。
【0018】
なお、図示の例において、駆動端ホイール7の下端部の内面と、駆動ヘッド3の上端部の上方への円筒状延在部との間に、Oリング9が配置されている。Oリング9は、駆動端ホイール7内面の周方向溝に収納されており、駆動端ホイール7を嵌め込んだ際に、円筒状延在部の溝に嵌まり込んで、両部材を互いに固定する。また、支持ピン5も、その先端に近い側に設けられた周方向溝にOリング91が配置され、駆動ヘッド3の受入部中にて仮固定される。なお、図示の具体例では、支持ピン5の根元側に、2周分の螺旋溝が設けられており、また、支持ピン5の先端中央には、孔が設けられており、例えば孔中ネジきり部を設けておくことで、支持ピン5の交換を容易にすることができる。一方、図示の例において、駆動シリンダー41は、根元側シリンダー42を介して、圧縮バネ2から押圧力を受けている。圧縮バネ2は、根元側シリンダー42の段部と、受入保持体1の根元端にねじ込まれた押圧力調整用部材43との間に、軸方向から挟みこまれている。
【0019】
図4には、フェイスドライバーAの使用状態の一例について説明するための参考図を示す。
図4は、本発明の特徴を備えないフェイスドライバーについての写真中、その中央の白抜きの楕円で示す箇所を描画により改変し、本発明のものに近づけたものである。
図4中、ワークピースBの上方には、2つの切削工具Dが描かれている。また、心押し台主軸Cには、押圧力の計測具が付属している。
【符号の説明】
【0020】
1 受入保持体 2 圧縮バネ 3 駆動ヘッド
4 センターヘッド 5 支柱ピン 6 平衡調整ホイール
7 駆動端ホイール 8 凹陥部 9 V字谷面領域
10 センタリングヘッド A フェイスドライバー