(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1領域と前記第1領域を囲む第2領域とを有する第1面と、前記第1面とは逆側の面である第2面と、を有し、平面視における外形線が第1辺を含む配線基板を準備する工程と、
前記第1領域上に半導体素子を搭載する工程と、
前記半導体素子が搭載された前記配線基板を、第1金型と、前記第1金型に対向して配置された第2金型と、により型締めする工程と、
型締めされた状態の前記配線基板上の前記半導体素子を封止樹脂により封止する工程と、
を備え、
前記第2金型は、前記第2領域と接する平坦部と、前記第1領域と対向する位置に形成された凹部と、前記平坦部における前記凹部から離間した位置に形成され前記第1金型の側に突出し且つ前記第1辺に沿って延在する突起部と、を有し、
前記配線基板を型締めする工程は、
前記第1金型に前記第2面が接するように、前記配線基板を前記第1金型上に配置する工程と、
前記配線基板を前記第1金型と前記第2金型とで挟み込んで型締めし、前記平坦部及び前記突起部を前記第2領域に接触させる工程と、
を含み、
前記半導体素子を封止樹脂により封止する工程では、前記凹部内に樹脂を充填し、前記凹部と対応する形状の前記封止樹脂を前記第1領域上に形成し、
前記配線基板は、
複数のスルーホールが形成された基材と、
前記基材上、且つ、前記第1面側に形成された第1配線と、
前記第1配線上に形成された第1絶縁膜と、
を有し、
前記複数のスルーホールは、平面視において前記第2領域内かつ前記突起部よりも前記第1領域の側に位置する第1のスルーホールを含み、
前記突起部は、型締め時に前記第1絶縁膜を押圧して前記第1絶縁膜に圧痕を形成する半導体装置の製造方法。
前記半導体素子を封止樹脂により封止する工程では、前記突起部と前記第1領域との間の前記第2領域上に前記樹脂の薄バリを形成し、前記突起部よりも前記第1辺側の前記第2領域上には前記薄バリを形成しないことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
前記圧痕と前記第1領域との間の前記第2領域上に樹脂の薄バリが形成され、且つ、前記圧痕よりも前記第1辺側の前記第2領域上には前記薄バリが形成されていないことを特徴とする請求項11〜18のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0017】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る半導体装置用金型の構成を示す断面図である。
図2は第1の実施形態に係る半導体装置用金型の上金型(第2金型)51の一例を示す底面図である。
図3は第1の実施形態に係る半導体装置用金型の上金型51の他の例を示す底面図である。なお、
図2及び
図3においては、突起部23の位置が分かりやすいように、突起部23に網掛けを付している。
【0018】
本実施形態に係る半導体装置用金型は、半導体チップ56が搭載された配線基板57の裏面(第2面)に対し、型締め時に接触する第1金型(例えば、下金型52)と、第1金型と対向する第2金型(例えば、上金型51)と、を有し、第2金型は、型締め時に半導体チップ56を包囲するキャビティ50を構成する凹部53と、型締め時にキャビティ50の周囲において配線基板57の表面(第1面)に接触する平坦部60と、を有し、平坦部60には、キャビティ50から離間した位置において、配線基板57側へ突出する突起部23が、キャビティ50の周囲を囲む環状の形状に延在するように設けられている。
【0019】
下金型52は、例えば、本体部52aと、キャビティブロック54と、皿バネ55と、を有している。
本体部52aは、上端が開口した半筐体状に形成されている。
キャビティブロック54は、この本体部52aの内周に沿って上下に摺動可能となるように、本体部52a内に配置されている。
皿バネ55は、複数個が積層された状態で、本体部52aの中空の底面と、キャビティブロック54の下面との間に配置され、キャビティブロック54を上方に付勢している。
【0020】
このキャビティブロック54と皿バネ55とによって圧力逃げ機構(フローティング機構)が構成されている。配線基板57の厚さがばらついても、配線基板57の厚みばらつきがフローティング機構によって吸収され、適切な荷重で配線基板57を型締めすることが可能となっている。
【0021】
上金型51は、上述のように、凹部53と、平坦部60と、を有している。
【0022】
凹部53の形状は、例えば、平面視矩形状であり、台形の断面形状となっている。
【0023】
この平坦部60には、配線基板57側へ突出する突起部23が、キャビティ50の周囲を囲む環状の形状に延在するように設けられている。なお、本実施形態の場合、上金型51は、例えば、突起部23を含む全体が金属により一体形成されている。
【0024】
ここで、上金型51において、後述する封止樹脂形成領域64の短辺と対向する領域の少なくとも一部分には、突起部23の非形成領域が存在している。また、平坦部60からの突起部23の突出長は、後述する配線71a上におけるソルダレジスト72の厚さよりも小さい。
【0025】
ここで、
図10は、配線基板57の断面図である。
図10に示すように、配線基板57は、基材70と、この基材70上に形成された配線71(後述する機能配線66)及びスルーホール63と、これら配線71及びスルーホール63を覆うソルダレジスト(絶縁性樹脂)72と、を有している。
【0026】
配線基板57の表面には、例えば
図10に示すように、配線71等の形状を反映したミクロ的な凹凸がある。ソルダレジスト72は、液状状態でロールコーターもしくは印刷スクリーンにて、表面に配線71がパターン形成された基材70上に塗布され、その後硬化される。塗布時には一定の平坦性を有していても硬化時にソルダレジスト中の溶剤揮発や反応収縮により体積が小さくなる。このとき配線71が存在しない領域におけるソルダレジスト72の厚みは、配線71上のソルダレジスト72の厚みより大きいため、より大きく体積収縮する。このため、配線71等の凹凸形状を反映した形状となる。上記フローティング機構ではマクロ的な基板の厚みばらつきしか吸収できないため、平坦部60に突起部23が形成されていない上金型51を用いると、
図11に示すように上金型51の平坦部60と配線基板57との間に隙間が生じてしまう。この隙間が上金型51に形成された凹部(キャビティ)53の内部領域から外部領域へ延伸する場合、隙間に沿って発生する樹脂漏れを抑制することが困難である。また、型締め荷重を強くして樹脂漏れを抑制しようとすると、配線基板57のミクロ的な凹凸における凸部に応力が集中し、配線基板57にクラック(ソルダレジスト72のクラック、或いは、配線71の断線等)が発生してしまう。
【0027】
このような事情に対し、本実施形態では、上金型51の平坦部60に突起部23が形成されている。型締め時には、平坦部60とともに突起部23が配線基板57の表面に押し付けられ、配線基板57において突起部23と当接する領域では、配線基板57において平坦部60と当接する領域よりも大きなクランプ圧力が加えられることになる。これにより、上述の配線71の形状を反映した隙間が上金型51に形成された凹部53の内部領域から外部領域へ延伸する場合であっても、突起部23と配線基板57との接触箇所よりも外側への樹脂漏れが抑制されるようになっている。
【0028】
また本実施形態において、上金型51は、その平坦部60が配線基板57に当接するとともに、その突起部23が配線基板57に当接する。上金型51が突起部23のみにおいて配線基板57に当接する場合、配線基板57がマクロ的な基板の厚みばらつきを有するときに、突起部23の当接領域のみでクランプ圧(例えば板バネ55の抗力)を受ける形となるため、局所的に大きな圧力が加わり配線基板57の破壊の虞がある。これに対し、突起部23とともに平坦部60が配線基板57に当接して、配線基板57をクランプすることにより、クランプ圧を広い面積で受けることが可能となり、クランプ圧による配線基板57の破壊を抑制できる。
【0029】
配線基板57と上金型51との当接面積のうち、平坦部60と上金型51との当接面積を、突起部23と上金型51との当接面積よりも大きくすることが、樹脂漏れ抑制と配線基板破壊抑制の双方から好ましい。
【0030】
また、突起部23は、キャビティ50から離間した位置に設けられているので、突起部23が配線基板57の機能配線(詳細後述)を損傷してしまうことが抑制される。
【0031】
また、突起部23と上金型51との当接領域の内側及び外側の双方に、平坦部60と上金型51との当接領域が存在するように、突起部23が配置されていても良い。特に、平坦部60は、突起部23よりも内側の部分と、突起部23よりも外側の部分と、が同一の平面に含まれるように形成することが好ましい。これにより、平坦部60における突起部23よりも内側の部分と、平坦部60における突起部23よりも外側の部分と、の圧力のバラツキを抑制することができる。
【0032】
図2又は
図3に示すように、上金型51には、キャビティ50内に樹脂を注入する際の導入口となるゲート59と、樹脂注入時にキャビティ50内の空気を逃がす排出口となるエアベント58と、が形成されている。
なお、
図2に示すのは、ゲート59が上部に形成された、いわゆるトップゲート型の上金型51である。この例では、4つのエアベント58が、キャビティ50(
図1)を構成する凹部53の4つのコーナー(隅)にそれぞれ連通するように形成されている。
また、
図3に示すのは、ゲート59が側部に形成された、いわゆるサイドゲート型の上金型51である。この例では、凹部53の4つのコーナーのうちの1つにゲート59が連通し、3つのエアベント58が、残りの3つのコーナーにそれぞれ連通するように形成されている。
上金型51においてエアベント58及びサイドゲート型におけるゲート59は平坦部60に形成された溝として構成されている。ゲート59を構成する溝はエアベント58を構成する溝よりも深い。また、ゲート59を構成する溝はエアベント58を構成する溝よりも平坦部60における幅は広く形成されていて良い。
本実施形態においてエアベント58の形成箇所においては、突起部23が途切れている。このようにエアベント58の形成箇所の少なくとも一部において、突起部23が存在しないようにすることにより、樹脂注入時に押し出される空気の逃げを確実にすることができる。
なお、トップゲート型の場合に、ゲート59は必ずしも平面視における凹部53の中央に配置されていなくても良い。同様に、サイドゲート型の場合に、ゲート59は必ずしも凹部53のコーナーに配置されていなくても良い。
【0033】
図4を用いて本実施形態に係る半導体装置を説明する。
図4(a)は本実施形態に係る半導体装置の平面図、
図4(b)は半導体装置の断面図、
図4(c)は
図4(a)のA部を拡大した模式図、
図4(d)は
図4(c)のX―X線における断面図である。尚、
図4(c)では後述する封止樹脂80とソルダレジスト72を透過させ配線71aを示している。
【0034】
本実施形態に係る半導体装置は、配線基板57と、半導体チップ(半導体素子)56と、封止樹脂80と、はんだボール(外部端子)68と、圧痕69と、を有する。
配線基板57は、第1面(上面)と、第1面とは逆側の面である第2面(裏面)と、を有している。配線基板57の平面視における外形線は、第1辺を含む。具体的には、配線基板57は、四角形となっており、配線基板57の平面視における外形線は、4つの辺を含む。尚、第1辺とその隣接辺との交点(四角形の角部)では必ずしも直角に交差する形状である必要はなく切り欠き形状を備えていても良い。
第1面は、第1領域(封止樹脂形成領域64)と、第1領域を囲む第2領域(周辺領域73)と、を有している。半導体チップ56は、封止樹脂形成領域64上に搭載されている。封止樹脂80は、周辺領域73上には形成されず封止樹脂形成領域64上に形成されて、半導体チップ56を封止している。はんだボール68は、配線基板57の裏面に形成されている。
圧痕69は、周辺領域73において、封止樹脂形成領域64から離間した位置に形成され、配線基板57の第1辺に沿って延在している。
以下、詳細に説明する。
【0035】
本実施形態に係る半導体装置は、封止樹脂形成領域64と封止樹脂形成領域64を囲む周辺領域73とを上面に備える配線基板57、配線基板57の封止樹脂形成領域64内に搭載された半導体チップ56、配線基板57の封止樹脂形成領域64上に形成され半導体チップ56を覆う封止樹脂80を備える。周辺領域73の表面には、配線基板57の外縁に沿って圧痕69が形成されている。圧痕69は、封止樹脂80を封止する際に用いる樹脂封止金型の、配線基板57との当接面に形成された突起部23が転写されたものである。
【0036】
本実施形態において封止樹脂形成領域64は角部がC面取りされた四角形であり、この四角形の4辺は矩形の配線基板57の辺と略平行に形成され、コーナー部(C面取り領域)は配線基板の角部と対向する位置に配置される。換言すると、封止樹脂形成領域64は、長辺と短辺とを交互に有する八角形であり、互いに対向する長辺の対を2つと、互いに対向する短辺の対を2つ有している。対向する長辺同士は互いに平行に延在し、対向する短辺どうしは互いに平行に延在している。長辺は配線基板57の四辺の各々と平行に延在し、短辺は配線基板57のコーナー部と対向している。
【0037】
平面視において、封止樹脂形成領域64の八角形の第1の長辺と、配線基板57の第1辺とは、封止樹脂形成領域64を基準として同じ側に位置し、且つ、互いに平行であり、圧痕69と第1の長辺とが互いに平行に延在している。第1の長辺と圧痕69との間の距離は、配線基板57の第1辺と圧痕69との間の距離よりも大きい。
配線基板57において、封止樹脂形成領域64の短辺と対応する領域の少なくとも一部分には、圧痕69の非形成領域が存在している。
【0038】
封止樹脂形成領域64は上金型51の凹部53によって規定される。より具体的には、凹部53の側面と平坦部60とが交わる線によって規定される。配線基板57の上面において封止樹脂形成時に上金型51の凹部53に対向する領域が封止樹脂形成領域64である。配線基板57の上面において上金型51の平坦部60及び突起部23と接する領域が周辺領域73である。封止樹脂80は断面が台形状であり、その台形状における下底が封止樹脂形成領域64に対応する。周辺領域73には封止樹脂80が形成されない。
【0039】
配線基板57は例えばガラスエポキシ板のような絶縁材料からなる基材70、基材70の上面(封止樹脂80が形成される側)に形成された導体からなる配線71a、基材70を貫通する貫通孔とその貫通孔の内壁に形成された導体とを有する複数のスルーホール63、基材70上及び配線(第1配線)71a上に形成されたソルダレジスト(第1絶縁膜)72を備える。圧痕69は、配線基板57の上面側のソルダレジスト72に形成されている。圧痕69の深さは、配線71a上におけるソルダレジスト72の厚さよりも浅い。
【0040】
基材70の下面には配線(第2配線)71bが形成されており、配線71aと配線71bはスルーホール63を介して相互に電気的に接続されている。基材70の下面にも配線71bを覆うようにソルダレジスト(第2絶縁膜)72が形成されている。本実施形態において配線71a、71bやスルーホール63を構成する導体はCu(銅)またはCuを主成分とする合金である。
【0041】
配線基板57の上面においてソルダレジスト72の一部は開口(除去)されており配線71aの一部が露出することでステッチ(第1の電極端子)62を構成している。ステッチ62表面には後述するボンディングワイヤ61との接合性に優れた金属膜(図示略)が形成されている。この金属膜は、配線71a上に電解めっきで形成されたNi(ニッケル)めっき層と、その上に形成されたAu(金)めっき層と、からなる。
【0042】
配線基板57には、複数のスルーホール63が形成されている。これらスルーホール63は、配線71a(後述する機能配線66)を介して、それぞれ対応するステッチ62と接続されている。これらステッチ62には、ボンディングワイヤ61の一端がボンディングされ、ボンディングワイヤ61の他端は半導体チップ56の上面の電極パッド(図示略)に対してボンディングされている。ボンディングワイヤ61はAuまたはCuを主成分とする金属細線である。
【0043】
配線基板57の下面においてもソルダレジスト72の一部が開口(除去)されており配線71bの一部が露出することでボールランドが形成されている。ボールランド上には半導体装置と他の電子機器との接続に用いられるはんだボール(外部端子)68が形成されている。ボールランドとはんだボール68の接合界面にはボンディングフィンガの金属膜形成時に形成された電解Niめっき層からなるバリアメタルを有していても良い。
つまり半導体チップ56の電極パッドは、ボンディングワイヤ61、配線71a、スルーホール63及び配線71bを介して、はんだボール68に電気的に接続されている。
【0044】
平面視において、最外周に位置するはんだボール68は、圧痕69よりも封止樹脂形成領域64側に位置している。換言すると圧痕69と配線基板57の第1の辺との間にははんだボール68が形成されない。
【0045】
また、配線基板57は複数のスルーホール63を備え、複数のスルーホール63の中には、例えば、封止樹脂形成領域64内に位置するものと(
図4(c)における下側のスルーホール63)、周辺領域73内に位置するもの(
図4(c)における上側のスルーホール63)とがある。
複数のスルーホール63は、平面視において周辺領域73内かつ圧痕69よりも封止樹脂形成領域64の側に位置する第1のスルーホールを含む。
【0046】
配線基板57は、封止樹脂形成領域64にステッチ62を備え、配線71aは、ステッチ62から第1のスルーホールに亘って延在している。配線基板57は、更に、第1のスルーホールから、配線基板57の第1辺に達するめっき線65を周辺領域73に備える。
【0047】
次に、配線71aと突起部23のより具体的な配置の例について説明する。
【0048】
図4(c)に示すように配線71aはステッチ62とスルーホール63との間を接続する機能配線(第1配線)66と、スルーホール63から配線基板57の外縁(上面視における配線基板57の辺)に達する位置まで延伸するめっき線(第2配線)65とを含む。機能配線66は、半導体装置が動作する上で必要な配線であり、外部端子であるはんだボール68と、半導体チップ56の電極パッド(図示略)と、を電気的に接続する経路の一部を構成する。めっき線65はステッチ62に電解めっきで前述の金属膜を形成する際にめっき用の給電をするための配線であり、めっき後は不要な配線となる。
【0049】
本実施形態においては、半導体装置は、圧痕69と交差しない機能配線66と、圧痕69と交差するめっき線65とを備える。圧痕69、つまり上金型51の突起部23と当接することによって変形した領域は、平坦部60と当接する領域よりも大きな圧力が加えられている。この領域には損傷しても半導体装置の動作上問題とならないめっき線65を配置し、これより内側の領域にのみ機能配線66を配置することにより、配線基板57上の面積を有効に利用しつつ、信頼性の高い半導体装置を得ることが出来る。
【0050】
ここで、突起部23を有しない封止金型(半導体装置用金型)を用いた場合は、半導体装置において金型と当接する領域の全域において配線損傷の虞があった。特に周辺領域73と封止樹脂形成領域64との境界では金型の凹部の縁があたるため損傷の虞が大きく、ここを通過する機能配線が損傷すると半導体装置が動作しなくなる。配線と圧痕69とを上記のように配置することにより、バリ抑制と半導体装置の信頼性とを両立できる。
【0051】
ここで、圧痕69に囲まれた領域を有効配線エリアと称することとする。
有効配線エリアは、突起部23ではなく平坦部60と接触するため、配線損傷リスクが小さい領域となる。このため有効配線エリアを広くする(圧痕69の形成領域を配線基板57の外縁に近づける)ほど、高い信頼性を少ない設計制約で実現可能となる。
【0052】
圧痕69は略平坦に形成されたソルダレジスト72に突起部23を押しつけることで転写形成されたものである。このとき突起部23の高さによってはソルダレジスト72に微細なクラックが発生し、場合によっては導体の一部が露出することもある。導体が露出すると隣接導体間での電気的な短絡リスクが大きくなるため、導体が露出しない程度が好ましい。
【0053】
図5(a)は本実施形態に係る半導体装置の作用効果を説明するための模式平面図であり、
図5(b)は
図5(a)におけるY−Y線における断面図である。配線基板57の4つの角部のうち、図の左上の角部にはゲートパタンが形成されている。ゲートパタンはソルダレジストが形成されず金属膜が露出しているため、基本的に圧痕69は形成されないが部分的な接触痕は形成されていても良い。残る3つの角部にはエアベントが形成されている。エアベント部はソルダレジストが形成されるため圧痕69を形成しても良いが、本実施形態では圧痕69を形成しないことによって封止時の空気逃げを確保している。
【0054】
全てのスルーホール63が周辺領域73にめっき線65を備えている必要はなく、例えば配線基板の下面に形成したり(図示略)、スルーホールよりステッチに近い領域、つまり機能配線から分岐していても良い(図示略)。
【0055】
また、配線基板57の導体層数は2層に限定されず、3層またはそれ以上の層数の配線基板でも良い。この場合、配線基板のチップに一番近い側の導体層が第1配線を含む層となる。
【0056】
圧痕69から配線基板端74までの距離は100μm以上とし、300μm以上が好ましい。封止金型は加温されていることが一般的であるため、配置された配線基板57も熱による変形を伴う。本実施形態において突起部23が配線基板57上とずれた位置(特に後述する工程基板のスリット位置)と重なると薄バリ75(
図6)の発生を抑制できないが、上記距離を確保することにより、スリットを備えた配線基板57であっても突起部23を確実に配線基板57と当接することが出来る。
【0057】
上金型の平坦部60には、キャビティ50から離間した位置において、配線基板57側へ突出する突起部23が、キャビティ50の周囲を囲む環状の形状に延在するように設けられている。
【0058】
或いは、突起部23は、配線基板57上の最外周のスルーホール63(
図4のスルーホール63a)よりも外側の部分に接触する位置に配置されていることがより好ましい。このことによっても、突起部23が有効配線エリアの機能配線66を損傷してしまうことが抑制される。
ここで、原則として、機能配線66は、最外周のスルーホール63aの外側には配置されていない。ただし、設計上の制約から、複数の機能配線66の中には、
図5(a)の機能配線66aのように、その一部分が最外周のスルーホール63aよりも外側において引き回されているものもある。
【0059】
或いは、突起部23は、キャビティ50を構成する凹部53から0.5mm以上離れた位置に配置されていることが好ましい。つまり、
図4に示す封止樹脂形成領域64よりも0.5mm以上外側の位置に配置されていることが好ましい。このことによっても、突起部23が機能配線エリアの機能配線66を損傷してしまうことが抑制される。
【0060】
次に、平坦部60からの突起部23の突出量について説明する。
【0061】
平坦部60は、鏡面加工されている場合と、梨地加工されている場合とがある。
平坦部60が鏡面加工されている場合、平坦部60の表面粗さ(十点平均粗さRz)は、例えば、1μm程度であり、この場合の突起部23の突出量は1μm以上であることが好ましい。
また、平坦部60が梨地加工されている場合、平坦部60の表面粗さ(十点平均粗さRz)は、例えば、5〜10μm程度であり、突起部23の突出量は5μm以上であることが好ましい。
このような場合であっても突起部23が延伸(連続して形成)していることで識別可能であり、少なくとも突起部23の形成領域では突起部23を配線基板57に対して十分な力で押し付けることができ、突起部23と配線基板57との隙間からの樹脂漏れを抑制することができる。
【0062】
突起部23の平坦部60からの突出量は、封止対象となる配線基板の、配線上のソルダレジスト厚より低くすることが好ましい。これにより配線がソルダレジストから露出することが防止される。
また、突起部23の突出量は30μm以下であることが好ましい。これにより、配線基板57の変形やクラック等を抑制することができる。
【0063】
なお、
図5(a)には、上金型51のゲート59と対向する領域であるゲート対向領域83と、上金型51のエアベント58と対向する領域であるエアベント対向領域84と、がそれぞれ点線で示されている。
【0064】
図6は変形例に係る半導体装置を説明する図である。
図6(a)は平面図、
図6(b)は
図6(a)のZ−Z線に沿った断面図である。突起部23が配線基板57と当接する領域まで延伸する薄バリ75が形成されている点のみが他の実施形態と異なる。圧痕69と封止樹脂形成領域64との間の周辺領域73上に樹脂の薄バリ75が形成され、且つ、圧痕69よりも配線基板57の第1辺側の周辺領域73上には薄バリ75が形成されていない。平坦部60と配線基板57の当接圧力を小さくすることにより、本実施形態の半導体装置を得ることが可能である。薄バリ75は封止樹脂80がもれることによって形成される。ただし、封止樹脂80中に含まれる酸化Si(シリコン)などからなるフィラーの密度(例えば任意の断面にて観察される単位面積あたりのフィラー面積比)が、薄バリ75においては、封止樹脂形成領域64上の封止樹脂80よりも小さい。フィラーが平坦部60と配線基板57との隙間には進入しにくいためである。あるいは封止樹脂形成領域64上の封止樹脂80よりも、薄バリ75における平均フィラー径が小さい。
【0065】
平面視において、薄バリ75の一部は突起部23と配線基板57とが当接する線である突起部当接線76(圧痕69に相当)まで達しており、この領域において、薄バリ75は、配線基板57の辺に平行な直線部を有する。
【0066】
本実施形態においては配線基板57の周辺領域73上に広く薄バリ75の形成を許容しつつ、突起部当接線76よりも外側への薄バリ75の拡大を確実に抑制できる。他の実施形態よりも突起部23領域に印可する圧力を小さくできるため、例えば導体上のソルダレジスト72が20μmよりも薄い場合などであっても、配線基板57の損傷を確実に抑制することが出来る。
【0067】
本実施形態においては圧痕69が形成されていてもいなくても良い。圧痕69が形成されない程度の圧力(ソルダレジスト72の弾性変形で吸収できる程度の押し込み量)であっても、突起部当接線76に圧力が集中するためそれより外側への薄バリ75の拡大は確実に抑制できる。
尚、薄バリ75が厚すぎる場合は封止樹脂80と近い色調を呈するため固体の外観も変化してしまう。このため薄バリ75の厚さは、好ましくは10μm以下になるようにし、5μm以下がより好ましい。
【0068】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
この製造方法は、配線基板57を準備する工程と、配線基板57の封止樹脂形成領域64上に半導体チップ56を搭載する工程と、半導体チップ56が搭載された配線基板57を型締めする工程と、半導体チップ56を封止樹脂80により封止する工程を備える。
配線基板57は、封止樹脂形成領域64と封止樹脂形成領域64を囲む周辺領域73とを有する上面と、上面とは逆側の面である裏面と、を有している。配線基板57の平面視における外形線は、第1辺を含む。
配線基板57を型締めする工程では、下金型(第1金型)52と、下金型52に対向して配置された上金型(第2金型)51と、により配線基板57を挟み込んで型締めする。
上金型51は、周辺領域73と接する平坦部60と、封止樹脂形成領域64と対向する位置に形成された凹部53と、平坦部60における凹部53から離間した位置に形成され下金型52の側に突出し且つ配線基板57の第1辺に沿って延在する突起部23とを有している。
配線基板57を型締めする工程は、下金型52に裏面が接するように配線基板57を下金型52上に配置する工程と、配線基板57を下金型52と上金型51とにより挟み込んで型締めし、平坦部60及び突起部23を周辺領域73に接触させる工程を含む。
半導体チップ56を封止樹脂80により封止する工程では、凹部53内に樹脂を充填し、凹部53と対応する形状の封止樹脂80を封止樹脂形成領域64上に形成する。
以下、詳細に説明する。
【0069】
先ず、
図7に示す工程基板を準備する。工程基板は、後に個々の半導体装置の配線基板57となる複数の製品領域77と、製品領域77を囲み且つ製品領域77間を接続する枠部78と、からなる。コーナーゲートの場合は、各製品領域77毎にゲートとなるゲートパターン79がキャビティ内に対応する位置から枠部78にかけて工程基板の上面(チップ搭載面)に形成されている。
【0070】
次に、配線基板57上に半導体チップ56を搭載(マウント)する。次に、半導体チップ56の上面の電極パッド(図示略)と配線基板57上のステッチ62とをボンディングワイヤ61を介してワイヤボンディングしておく。より具体的には機能配線66の先端が接続されているステッチ62と半導体チップ56上の電極パッドとをワイヤボンディングしておく。
【0071】
次に、このようにして得られた構造体を、配線基板57が下側となるように下金型52のキャビティブロック54上に載置し、更に、この配線基板57の上面に対して上金型51の平坦部60を押し付けて、配線基板57を型締めする(
図1の状態)。
工程基板は複数の配線基板57(製品領域)を有するため、上金型は、配線基板57毎のそれぞれ対応する、独立したキャビティを複数備える。
【0072】
次に、ゲート59(
図2、
図3)を介してキャビティ50内に封止樹脂を充填した後、樹脂を硬化させることにより、封止樹脂80(
図5参照)を形成する。更に、上金型51と下金型52とを離間させ、それらの間から上面に封止樹脂80が形成された工程基板を取り出す。
【0073】
次に、配線基板57の裏面側の電極上に、はんだボール68を形成する。すなわち、半導体チップ56を封止樹脂80により封止する工程の後で、配線基板57の裏面に複数のはんだボール68を形成する工程を行う。ここで、平面視において、最外周に位置するはんだボール68は、配線基板57において型締め時に突起部23が接触する部位よりも封止樹脂形成領域64側に形成する。
【0074】
次に配線基板57毎に切断分離し個片化することで、個々の半導体装置を得る。個片化工程は、ブレードダイシングによって配線基板57を切断分離してもよく、あるいは配線基板57の角部に支持領域を残した形で配線基板57の辺に沿って予めスリットが形成された工程基板を準備し、はんだボール68の形成工程の後に金型などで支持領域を切断することで個片化しても良い。上述のように工程基板は複数の製品領域77を有している。配線基板57の裏面に複数のはんだボール68を形成する工程の後で、工程基板を個々の製品領域77に個片化する工程を行う。
こうして、本実施形態に係る半導体装置を得ることができる。
【0075】
ここで、本実施形態に係る製造方法により製造された半導体装置は、以下の特徴を有している。すなわち、上金型51と下金型52とにより配線基板57を型締めする際に、突起部23が配線基板57の上面に押圧されるため、配線基板57の上面には、突起部23が押し付けられたことによる圧痕69が形成されている。
なお、はんだボール68は、圧痕69よりも内側にのみ形成されていることが好ましい。
【0076】
なお、本実施形態に係る製造方法は、突起部23が接触する部位よりも内側(封止樹脂80側)の配線基板57表面上への樹脂漏れまでも抑制することを目的とするものではない。このため、突起部23が接触する部位よりも内側においては、配線基板57と平坦部60との隙間に樹脂が漏れ出す結果、配線基板57表面上に樹脂の薄い皮膜(薄バリ75)が形成される場合がある。ただし、この薄バリ75は、配線基板57の表面上において、突起部23が接触する部位よりも外側には、形成されることが抑制される。つまり、圧痕69の形成箇所を境界として、内側には薄バリ75が存在し得るが、外側には、薄バリ75の形成が抑制されている。
半導体チップ56を封止樹脂80により封止する工程では、突起部23と封止樹脂形成領域64との間の周辺領域73上に樹脂の薄バリ75を形成し、突起部23よりも配線基板57の第1辺側の周辺領域73上には薄バリ75を形成しないようにしても良い。
【0077】
本実施形態に係る半導体装置は、配線基板57と、配線基板57上に搭載された半導体チップ56と、半導体チップ56を覆うように配線基板57上に設けられた封止樹脂80と、を有し、配線基板57には、封止樹脂80の周囲を囲む環状の形状に延在する圧痕69が、封止樹脂80から離間した位置に形成され、且つ、1)圧痕69が配線基板57上の機能配線エリアよりも外側に形成されているという第1条件と、2)圧痕69が配線基板57上の最外周のスルーホール63(63a)よりも外側に形成されているという第2条件と、3)圧痕69よりも封止樹脂80側には配線基板57上に薄バリ75が存在し、圧痕69よりも外側の配線基板57上には薄バリ75が存在しない、という第3条件と、のうちの少なくとも何れか1つの条件を満たしている。
【0078】
以上のような第1の実施形態によれば、上金型51の平坦部60には、配線基板57側へ突出する突起部23が、キャビティ50の周囲を囲む環状の形状に延在するように設けられている。このため、型締め時には、突起部23が配線基板57の表面に押し付けられるので、突起部23と配線基板57との接触箇所よりも外側への樹脂漏れが抑制される。
しかも、突起部23は、キャビティ50から離間した位置に設けられているので、突起部23が配線基板57の機能配線エリアを損傷してしまうことが抑制される。
要するに、封止樹脂80の形成時における樹脂漏れの抑制と、配線基板57の機能配線エリアの損傷の抑制と、を両立させることができる。
なお、機能配線エリア外であれば、配線基板57にクラックが生じたとしても、機能配線66が存在しないため、断線による電気特性不良を気にする必要がない。
なお、突起部23は上金型51の平坦部60に設けられているので、上金型51と下金型52とを相対的に移動させる移動機構の他には、突起部23を移動させる移動機構を設ける必要がない。
【0079】
ここで、封止樹脂形成領域64に隣接して突起部23を配置すると、少なくとも突起部23のキャビティ50側では配線基板57に当接し該配線基板57を押圧するものがないため、突起部23の領域に圧力が集中し配線損傷が発生しやすい。本実施形態では、配線基板57と当接する平坦部60をキャビティ50と突起部23との間に備えることにより、このような課題を解決することができる。さらに圧力集中領域を配線基板57の周縁部に配置できることから、機能配線66の損傷リスクが低減された半導体装置を得ることが出来る。配線基板57において、キャビティ50と突起部23との間の平坦部60が接する領域には、封止樹脂が形成されない。つまり封止樹脂形成領域64(キャビティ50)、封止樹脂無し領域(平坦部60)、圧痕69の順に形成された半導体装置のため樹脂漏れと基板損傷との抑制が両立された半導体装置が得られる。
【0080】
また、配線基板57は、複数のスルーホール63が形成された基材70と、基材70上且つ上面側に形成された配線71aと、配線71a上に形成されたソルダレジスト72と、を有し、圧痕69はソルダレジスト72に形成されている。そして、複数のスルーホール63は、平面視において周辺領域73内かつ圧痕69よりも封止樹脂形成領域64の側に位置する第1のスルーホールを含む。
これにより、機能配線エリア内にスルーホール63が配置可能となり、半導体装置の信頼性向上とともに配線基板57の設計上の制約を小さくすることができる。
【0081】
また、圧痕69の深さは、配線71a上におけるソルダレジスト72の厚さよりも浅いので、配線71aの損傷が抑制された構造の半導体装置が得られる。
【0082】
また、配線基板57は、封止樹脂形成領域64にステッチ62を備え、配線71bは、ステッチ62から上記の第1のスルーホールに亘って延在している。そして、配線基板57は、更に、第1のスルーホールから配線基板57の第1辺に達するめっき線65を周辺領域73に備える。つまり、配線71a(機能配線)は配線基板57において突起部23と当接する領域よりも内側に延伸し、損傷しても半導体装置の動作に直接影響のないめっき線65は配線基板57において突起部23と当接する領域を横切る配置としている。これにより、半導体装置の信頼性向上とともに配線基板57の設計上の制約を小さくすることができる。
【0083】
また、封止樹脂形成領域64は、長辺と短辺とを交互に有する八角形であり、平面視において、その八角形の第1の長辺と、配線基板57の第1辺とは、封止樹脂形成領域64を基準として同じ側に位置し、且つ、互いに平行である。そして、圧痕69と第1の長辺とが互いに平行に延在している。つまり、圧痕69は、配線基板57の外縁に沿って直線状に延在している。これにより、圧痕69の形成領域を、配線基板57の最外周の狭い領域に限定でき、且つ、圧痕69を第1辺からの距離が一定の領域に形成でき、圧痕69がスルーホール63にかかることを抑制することができる。
また、封止樹脂形成領域64の長辺と配線基板57の外縁までの距離は、封止樹脂形成領域64の短辺と配線基板57の端部までの距離よりも小さいため、同じ長さの薄バリ75が形成される場合でも、配線基板57の端部にかかりやすい。薄バリ75が端部にかかると製造工程でのバリ落下リスクが大きくなる。またスリットが形成された配線基板57では、薄バリ75が下金型52に達すると配線基板57の裏面に薄バリ75が形成されたり、下金型62の機能を損なう可能性がある。本実施形態では、これらの問題を抑制することができる。
また、圧痕69を第1の辺と平行に延伸させることにより広い機能配線エリアを確保することができるとともに、複数の製品間で同一の金型を共用し易くなるというメリットもある。
【0084】
また、封止樹脂形成領域64の第1の長辺と圧痕69との距離は、配線基板57の第1辺と圧痕69との距離よりも大きい。これにより、圧痕69が配線基板57の第1辺(外縁)寄りに形成されるため、機能配線66の損傷リスクを低減でき、広い機能配線エリアを確保することができる。
【0085】
また、配線基板57において、封止樹脂形成領域64の短辺と対応する領域の少なくとも一部分には、圧痕69の非形成領域が存在する。これにより、封止樹脂形成領域64の短辺にゲート59やエアベント58などを形成しても、樹脂や空気の流動性を確保することができる。
【0086】
また、半導体装置は複数のはんだボール68を備え、平面視において、最外周に位置するはんだボール68は、圧痕69よりも封止樹脂形成領域64側に位置している。これにより、圧痕69が配線基板57の第1辺(外縁)寄りに形成されるため、機能配線66の損傷リスクを低減でき、広い機能配線エリアを確保することができる。
【0087】
なお、突起部23の長さは、突起部23の幅(太さ)の10倍以上であることが好ましい。これにより、機能配線エリアをなるべく広く確保できるとともに、突起部23における圧力集中効果が得られる(突起部23が太すぎると圧力集中効果が得られない)。また、突起部23の長さは、封止樹脂形成領域64の長辺の長さよりも長いことも好ましい。
【0088】
〔第2の実施形態〕
図8は第2の実施形態に係る半導体装置用金型の第2金型(例えば、上金型51)を示す断面図である。
【0089】
上記の第1の実施形態では、突起部23を含む上金型51の全体が金属により一体形成されている例を説明した。
【0090】
これに対し、第2の実施形態では、
図8に示すように、突起部23は、上金型51よりも弾性率が小さい材質により構成され、平坦部60に取り付けられている。なお、本実施形態の場合、突起部23は、キャビティ50から離間している必要は無く、キャビティ50と隣接する位置に配置されていても良い。
【0091】
突起部23は、例えば、Oリングなどにより構成され、上金型51の平坦部60の下面に形成された取付凹部81内に嵌め込まれて固定されている。なお、突起部23は、例えば、平坦部60側が平坦に形成され(例えば、断面半円形状などに形成され)、平坦部60に対して接着されていても良い。
【0092】
ここで、配線基板57を構成する材料の中で最も低弾性率な材料は、ソルダレジスト72であり、25℃のときに2〜5GPaであるため、突起部23は、それよりも低弾性の材料であることが好ましい。より具体的には、突起部23の弾性率は1GPa以下であることが好ましい。また、突起部23は、樹脂注入時の熱でも溶融しない程度の耐熱性を有している。具体的には、突起部23は、例えば、ポリイミド、シリコーンゴム、フッ素ゴム等により構成することができる。
【0093】
また、突起部23は、取付凹部81に対して着脱自在であることが好ましい。これにより、製造する半導体装置の種類等に応じて、異なる突出量の突起部23を取り付けることができる。なお、同じ形状の取付凹部81に対し、異なる突出量の突起部23を取り付けるためには、例えば、相対的に突出量が小さい断面円形の突起部23と、相対的に突出量が大きい断面長円形の突起部23と、を選択的に取り付けることが挙げられる。
【0094】
以上のような第2の実施形態によれば、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
なお、本実施形態の場合、型締め時には、配線基板57よりもむしろ突起部23が変形することによって、配線基板57の表面の微小な凹凸を吸収し、これにより、樹脂漏れ及び配線基板57のクラック等を抑制することができる。
また、本実施形態の場合、突起部23はキャビティ50から離間している必要は無く、突起部23を機能配線エリア内に配置することができるため、上記の第1の実施形態と比べて配線基板57の機能配線エリアを拡大することも可能である。
【0095】
〔第3の実施形態〕
図9(a)は第3の実施形態に係る半導体装置用金型の第2金型(例えば、上金型51)を示す断面図であり、
図9(b)は
図9(a)におけるA部の拡大図である。
【0096】
上記の第2の実施形態では、突起部23のみが上金型51と別部材である例を説明したが、第3の実施形態では、突起部23が、取付ベース部材90を介して上金型51に取り付けられている。ここで、取付ベース部材90は、上金型51に対して着脱自在であることが好ましい。
【0097】
取付ベース部材90は、例えば、断面形状が矩形状であり、平面形状は、例えば矩形枠状となっている。取付ベース部材90は、上金型51に形成された凹部82に取り付けられている。
【0098】
取付ベース部材90の下面の位置は、平坦部60よりも上であっても良いし(
図9の例)、或いは、平坦部60よりも下であっても良い。ただし、何れの場合にも、突起部23は、平坦部60よりも下方に突出している。平坦部60からの突起部23の突出量は、凹部82と取付ベース部材90との間に適切な厚みのシム(スペーサー)を介装することによって調節することができる。
【0099】
図9(b)に示すように、上金型51において、突起部23の周辺の部分は、一段低くても良いが、型締め時に配線基板57と当接する。
【0100】
上金型51に対する取付ベース部材90の固定は、特に限定されないが、例えば、ボルト等の止着部材を用いて固定するや、締まり嵌めにより固定することが挙げられる。
【0101】
以上のような第3の実施形態によれば、上記の第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、取付ベース部材90を選択することによって、突起部23の突出量を調節することができる。
【0102】
上記の各実施形態では、突起部23が断面円形(突出している部分の形状は断面半円形状)である例を説明したが、突起部23の断面形状は、楕円形、長円形、台形、三角形或いは四角などの多角形状であっても良い。
【0103】
また、上記の各実施形態では、エアベント58の形成箇所以外では、突起部23が連続的な環状に配置されている例を説明した。ただし、突起部23は、エアベント58の形成箇所以外においても、必ずしも連続的に配置する必要は無く、例えば、突起部23にはその延在方向において間欠的にブランクが存在していても良い。
【0104】
また、上記の各実施形態では、突起部23が一重に配置されている例を説明したが、キャビティ50を複数重に取り囲むように突起部23が配置されていても良い。
【0105】
また、上記の第2及び第3の実施形態では、突起部23の全体が、上金型51よりも弾性率が小さい材料により構成されている例を説明したが、上記の第1の実施形態と同様に上金型51の一部として形成された突起部の表層に、上金型51よりも弾性率が小さい材料のコーティングを施すことにより、突起部23の(表層の)弾性率を上金型51よりも小さくしても良い。
【0106】
また、上記の各実施形態では、上金型51に凹部53及び平坦部60が形成され、この平坦部60に突起部23が設けられている例を説明したが、上金型51の構成と、下金型52の構成とが逆転していても良い。すなわち、上金型51が第1金型であり、下金型52が第2金型であっても良い。
また、上記の各実施形態では、ワイヤ接続の例を示したが半導体チップの表面に形成されたバンプをはんだを介して配線基板に接続する、所謂フリップ接続でも良い。
【0107】
なお、上記実施形態には以下の発明が開示されている。
(付記1)
半導体チップが搭載された配線基板の裏面に対し、型締め時に接触される第1金型と、
前記第1金型と対向する第2金型と、
を有し、
前記第2金型は、
前記型締め時に前記半導体チップを包囲するキャビティを構成する凹部と、
前記型締め時に、前記キャビティの周囲において前記配線基板の表面に接触される平坦部と、
を有し、
前記平坦部には、前記キャビティから離間した位置において、前記配線基板側へ突出する突起部が、前記キャビティの周囲を囲む環状の形状に延在するように設けられていることを特徴とする半導体装置用金型。
(付記2)
前記突起部は、前記配線基板上の機能配線エリアよりも外側の部分に接触する位置に配置されていることを特徴とする付記1に記載の半導体装置用金型。
(付記3)
前記突起部は、前記配線基板上の最外周のスルーホールよりも外側の部分に接触する位置に配置されていることを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置用金型。
(付記4)
前記突起部は、前記凹部から0.5mm以上離れた位置に配置されていることを特徴とする付記1乃至3の何れか1つに記載の半導体装置用金型。
(付記5)
前記突起部は、前記第1金型と一体形成されていることを特徴とする付記1乃至4の何れか1つに記載の半導体装置用金型。
(付記6)
前記突起部は、前記第1金型よりも弾性率が小さい材料により構成され、前記平坦部に取り付けられていることを特徴とする付記1乃至5の何れか1つに記載の半導体装置用金型。
(付記7)
半導体チップが搭載された配線基板の裏面に対し、型締め時に接触される第1金型と、
前記第1金型と対向する第2金型と、
を有し、
前記第2金型は、
前記型締め時に前記半導体チップを包囲するキャビティを構成する凹部と、
前記型締め時に、前記キャビティの周囲において前記配線基板の表面に接触される平坦部と、
を有し、
前記平坦部には、前記第1金型よりも弾性率が小さい材料により構成され、前記配線基板側へ突出する突起部が、前記キャビティの周囲を囲む環状の形状に延在するように取り付けられていることを特徴とする半導体装置用金型。
(付記8)
前記突起部は、前記平坦部に対して着脱自在であることを特徴とする付記6又は7に記載の半導体装置用金型。
(付記9)
前記突起部の弾性率は1GPa以下であることを特徴とする付記6乃至8の何れか1つに記載の半導体装置用金型。
(付記10)
前記平坦部は鏡面加工され、前記突起部の突出量は1μm以上であることを特徴とする付記1乃至9の何れか1つに記載の半導体装置用金型。
(付記11)
前記平坦部は梨地加工され、前記突起部の突出量は5μm以上であることを特徴とする付記1乃至9の何れか1つに記載の半導体装置用金型。
(付記12)
前記突起部の突出量は30μm以下であることを特徴とする付記1乃至11の何れか1つに記載の半導体装置用金型。
(付記13)
前記突起部が複数重に配置されていることを特徴とする付記1乃至12の何れか1つに記載の半導体装置用金型。