【実施例】
【0044】
<屈折率調整塗料の作製>
下記のようにして、屈折率調整塗料1〜4を作製した。
【0045】
(屈折率調整塗料1)
平均粒径5nmの酸化ジルコニウムの分散液“SZR−K”(堺化学社製、固形分濃度:30質量%)を100質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート“KAYARAD DPHA”(日本化薬社製の紫外線硬化型樹脂)を10質量部、及び光重合開始剤“イルガキュア184”(BASF社製)を0.3質量部、をディスパーにて配合し、屈折率調整塗料1を作製した。作製した屈折率調整塗料1の硬化物の550nmにおける屈折率を測定したところ1.71であった。
【0046】
(屈折率調整塗料2)
“KAYARAD DPHA”の使用量を7.5質量部、“イルガキュア184”の使用量を0.2質量部に変更した以外は、屈折率調整塗料1と同様にして屈折率調整塗料2を作製した。作製した屈折率調整塗料2の硬化物の550nmにおける屈折率を測定したところ1.75であった。
【0047】
(屈折率調整塗料3)
超微粒子酸化チタン“TTO−V−3”(石原産業社製)を30質量部、分散剤として“SOLSPERSE36000”(日本ルーブリゾール社製)を5質量部、プロピレングルコールモノメチルエーテルを65質量部、をポリ容器に量りとり、直径0.1mmのジルコニアビーズを添加して酸化チタンの平均粒径が30nmになるようペイントシェーカ―(東洋精機社製)で分散を行い、最後にジルコニアビーズを濾過により除去して、酸化チタンスラリーを作製した。
【0048】
作製した上記酸化チタンスラリーを100質量部、“KAYARAD DPHA”を7質量部、“イルガキュア184”を0.3質量部、をディスパーにて配合し、屈折率調整塗料3を作製した。作製した屈折率調整塗料3の硬化物の550nmにおける屈折率を測定したところ1.92であった。
【0049】
(屈折率調整塗料4)
“KAYARAD DPHA”を30質量部、“イルガキュア184”を0.9質量部、メチルエチルケトン(MEK)を70質量部、をディスパーにて配合し、屈折率調整塗料4を作製した。作製した屈折率調整塗料4の硬化物の550nmにおける屈折率を測定したところ1.53であった。
【0050】
次に、上記屈折率調整塗料1〜4を用いて、下記のようにして透明導電性フィルムを作製した。
【0051】
(実施例1)
両面に易接着処理を施した透明基材である東レ社製のPETフィルム“ルミラーQT−D0”(厚さ:125μm)の一方の低屈折率易接着層面(易接着層の屈折率:1.58)にアンチブロッキングハードコート剤“Z−739”(アイカ工業社製)を乾燥後の厚さが2μmとなるようマイクログラビアコーターにて塗工し、高圧水銀灯にて紫外線を300mJ/cm
2の光量で照射し硬化させ、機能付与層としてアンチブロッキングハードコート層を形成し、アンチブロッキングハードコート処理フィルムを作製した。
【0052】
上記アンチブロッキングハードコート処理フィルムの、アンチブロッキングハードコート層を形成した面とは反対側の高屈折率易接着層面(易接着層の屈折率:1.65)の上に屈折率調整塗料1を乾燥後の厚さが2μmとなるよう塗工し、高圧水銀灯にて紫外線を300mJ/cm
2の光量で照射し硬化させて屈折率調整層を形成し、屈折率調整ハードコートフィルムAを作製した。
【0053】
(実施例2)
屈折率調整塗料1に代えて、屈折率調整塗料2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、屈折率調整ハードコートフィルムBを作製した。
【0054】
(実施例3)
実施例1にて作製した屈折率調整ハードコートフィルムAの屈折率調整層の上にマグネトロンスパッタリング法にて酸化ケイ素を積層して、低屈折率層(屈折率:1.40、厚さ:10nm)を形成した。その後、上記低屈折率層の上にマグネトロンスパッタリング法にてインジウムドープ酸化錫(ITO)を積層して、透明導電層(屈折率:2.0、厚さ:15nm)を形成した後、その透明導電層に対してフォトリソグラフィー法にてパターニング処理を行い、パターン部と非パターン部を有する透明導電性フィルムAを作製した。
【0055】
(実施例4)
屈折率調整ハードコートフィルムAに代えて、屈折率調整ハードコートフィルムBを用いたこと以外は、実施例3と同様にして透明導電性フィルムBを作製した。
【0056】
(実施例5)
両面に易接着処理を施した透明基材として帝人デュポンフィルム社製のPETフィルム“KEB−03W”(厚さ:125μm、両面の易接着層の屈折率:1.60)を用いたこと以外は、実施例1及び3と同様にして透明導電性フィルムCを作製した。
【0057】
(実施例6)
透明導電層の厚さを20nmとしたこと以外は、実施例3と同様にして透明導電性フィルムDを作製した。
【0058】
(比較例1)
屈折率調整塗料1に代えて、屈折率調整塗料3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして屈折率調整ハードコートフィルムCを作製した。
【0059】
(比較例2)
両面に易接着処理を施した透明基材として東レ社製のPETフィルム“ルミラーU34”(厚さ:125μm、両面の易接着層の屈折率:1.51)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして屈折率調整ハードコートフィルムDを作製した。
【0060】
(比較例3)
屈折率調整ハードコートフィルムAに代えて、屈折率調整ハードコートフィルムCを用いたこと以外は、実施例3と同様にして透明導電性フィルムEを作製した。
【0061】
(比較例4)
屈折率調整塗料1に代えて、屈折率調整塗料4を用い、両面に易接着処理を施した透明基材として東レ社製のPETフィルム“U48”(厚さ:125μm、両面の易接着層の屈折率:1.58)を用いたこと以外は、実施例1及び3と同様にして透明導電性フィルムFを作製した。
【0062】
(比較例5)
屈折率調整ハードコートフィルムAに代えて、屈折率調整ハードコートフィルムDを用いたこと以外は、実施例3と同様にして透明導電性フィルムGを作製した。
【0063】
(比較例6)
屈折率調整層の厚さを0.1μmとしたこと以外は、実施例1及び3と同様にして透明導電性フィルムHを作製した。
【0064】
(比較例7)
アンチブロッキングハードコート剤“Z−739”に代えて、屈折率調整塗料4を用いて機能付与層を形成し、実施例1及び3と同様にして透明導電性フィルムを作製しようとしたが、屈折率調整層の塗工の巻き取りの際にフィルムの貼り付きが発生し、その後のフィルムの製造ができなかった。
【0065】
上記実施例1〜6及び比較例1〜6の各フィルムの各層の屈折率は下記のように測定した。
【0066】
<屈折率の測定>
屈折率調整層の屈折率については、各屈折率調整塗料を100μmのPETフィルム(東洋紡社製の“コスモシャインA4100”)の易接着未処理面にバーコーターを用いて乾燥後の膜厚が500nmになるよう塗工、乾燥させた後、紫外線を高圧水銀灯にて300mJ/cm
2の光量にて照射して塗膜を硬化させた。次に、塗膜を形成した側とは反対のフィルム面の全面に黒テープを貼り付け、反射分光膜厚計(大塚電子社製の“FE−3000”)を用いて塗膜面側の絶対反射率を測定し、反射スペクトルから屈折率を測定した。
【0067】
また、透明基材の易接着層の屈折率については、易接着層が形成された側とは反対側のフィルム面の全面に黒テープを貼付け、上記と同様にして上記反射分光膜厚計を用いて測定した。透明基材の両面に易接着層が形成されている場合も一方のフィルム面に黒テープを貼り付けて上記と同様にして易接着層の屈折率を測定した。
【0068】
また、透明導電層及び低屈折率層の屈折率については、上記PETフィルムにマグネトロンスパッタリング法にて厚さが20nmになるよう各層を形成した後、上記と同様の方法にて各層の屈折率を測定した。
【0069】
次に、上記実施例1〜6及び比較例1〜6で形成した各フィルムの評価を下記のとおり行った。
【0070】
<反射色度の測定>
作製した各透明導電性フィルムの透明導電層を形成した面とは反対面に黒テープを貼り付け、マルチチャンネル型分光光度計(大塚電子社製の“MCPD−3700”)を用いて、透明導電層のパターン部と非パターン部の反射スペクトルを測定し、色演算モード(光源:D65、視野:2度)にて反射色のL
*a
*b
*をそれぞれ解析し、前述した下記式により透明導電層のパターン部と非パターン部との色差△Eを計算した。
△E=(△L
*2+△a
*2+△b
*2)
1/2
【0071】
<フィルムの外観>
作製した各フィルムを、3波長蛍光灯(光量:3000LUX)を備えた検反台に載置して目視にて外観を観察し、ハードコートフィルム単体での干渉ムラ及び透明導電層に及ぼす屈折率調整層の干渉ムラの影響について下記基準で下記のように評価した。
【0072】
干渉ムラによる色ムラが非常に薄い場合:良好
干渉ムラによる色ムラがやや判別できる場合:不十分
干渉ムラによる色ムラがはっきりと判別できる場合:不可
【0073】
<加熱後のカール性>
作製した各フィルムを100mm×100mmのサイズに切り出し、切り出したものを150℃に加温した恒温槽に30分放置した後に取り出し、取り出してから2時間後のフィルムカールの高さを4隅でそれぞれ測定し、最も数値の高い点をカールの大きさとした。また、実施例3〜6及び比較例3〜6の透明導電性フィルムの場合、透明導電層側を上にした時に凸状にカールした場合はカールの大きさをマイナス(−)表記とした。
【0074】
<フィルム加工性>
各フィルムの作製時において、屈折率調整塗料をマイクログラビアコーターにて塗工した際、及び作製したフィルムを巻き取りした際の加工性について評価した。具体的には、下記基準により、下記のように評価した。
【0075】
不具合なく、塗工・巻き取りが可能であった場合:良好
一部、塗工・巻き取り時に問題があった場合:不十分
塗工・巻取りが不可能であった場合:不可
【0076】
以上の評価結果を表1〜表4に示す。また、表1〜表4では、各フィルムの構成も合わせて示した。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
表1から、実施例1及び2では、易接着層の屈折率及び屈折率調整層の屈折率を最適化することで外観的にも干渉ムラの少ない屈折率調整ハードコートフィルムが得られたことが分かる。
【0082】
また、表2から、実施例3〜6では、透明導電層のパターン部と非パターン部との反射色差が抑えられたことが分かる。その結果、実施例3〜6の透明導電性フィルムではパターニング痕の不可視化が確認できた。また、実施例3〜6では、外観については易接着層と屈折率調整層の屈折率を最適化することにより干渉ムラも抑制することができたことが分かる。更に、実施例3〜6では、加熱後のカールも抑制され、フィルム加工性も問題のない透明導電性フィルムが得られたことが分かる。
【0083】
一方、表3から、比較例1及び2では、易接着層の屈折率及び屈折率調整層の屈折率が最適でなく、外観を確認したところ、干渉ムラによる色ムラがはっきりと判別でき、干渉ムラが悪化したことが分かる。
【0084】
比較例3では、屈折率調整層の屈折率が高すぎるため、透明基材及び易接着層との屈折率差が大きくなり、透明導電層を積層した場合でも干渉ムラによる色ムラがはっきりと判別された。
【0085】
比較例4では、屈折率調整層の屈折率が低すぎるため、パターン部と非パターン部との反射色差が5を超え、パターニング痕が十分に認識された。
【0086】
比較例5では、易接着層の屈折率が低すぎるため屈折率調整層との屈折率差が大きくなり、透明導電層を積層した場合でも干渉ムラによる色ムラがはっきりと判別された。
【0087】
比較例6では、屈折率調整層の厚さが薄すぎるため、反対側の機能付与層との厚さバランスが崩れ加熱処理後にフィルムが大きくカールした。また、ハードコート性も不十分であり、フィルム走行時に若干キズが入り、フィルム加工性も不十分であった。
【0088】
比較例7では、機能付与層にアンチブロッキング性のない材料を用いたため、前述のとおりフィルムの製造ができなかったため、比較例7については表4には示していない。