(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878075
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】電線の外部導体端子の接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20160223BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-105123(P2012-105123)
(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-232384(P2013-232384A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100120053
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 元
(72)【発明者】
【氏名】遠峰 和洋
(72)【発明者】
【氏名】宮島 貴晃
【審査官】
前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−218622(JP,A)
【文献】
特開2002−216915(JP,A)
【文献】
特開2011−253776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の内部導体の絶縁被覆の外周を包囲して設けられた撚り線からなる外部導体と、該外部導体の外周面を覆って設けられた保護被覆とを備えてなる電線の前記外部導体に接続する外部導体端子の接続構造において、
前記外部導体端子は、一端部に平板の端子部と、他端部に筒体部とを有してなり、
前記保護被覆から前記外部導体が露出した部位の前記絶縁被覆の外周に前記外部導体端子の筒体部が位置し、該筒体部の外周面に前記外部導体の撚り線が接して位置し、前記端子部に開き部が位置し、前記筒体部の外周面に接した前記撚り線の外周に位置するC型リングにより前記筒体部に前記撚り線を固定してなる外部導体端子の接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の外部導体端子の接続構造において、
前記C型リングは、前記開き部の先端縁がリング外側に向けて突出しているリップ部を有することを特徴とする外部導体端子の接続構造。
【請求項3】
請求項2に記載の外部導体端子の接続構造において、
前記リップ部は、前記外部導体端子の端子部と固着していることを特徴とする外部導体端子の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の外部導体端子の接続構造に係り、単線又は複線の外周を包囲して巻き付けられた外部導体に接続する外部導体端子の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、単線の外周に巻き付けられた外部導体を有する同軸電線は、内部導体と、内部導体の絶縁被覆と、絶縁被覆の外周面に撚り線を巻き付けてなる外部導体と、外部導体の保護被覆(又は絶縁被覆)とを備えて構成されている。このような同軸電線の外部導体をシールド導体等として用いる場合は、一般に、電線端部の保護被覆を剥離して露出させた外部導体に外部導体端子を接続し、その外部端子を接地電位などの外部回路に接続するようにしている。
【0003】
このような同軸電線の外部導体端子の接続構造の一例として、特許文献1に記載のシールド電線の端末処理構造が提案されている。これによれば、板材を折り曲げて端子部と筒体部を形成した外部導体端子を、保護被覆を剥離して露出させた外部導体側から電線に嵌め込み、外部導体の露出部を外部導体端子の筒体部の外周面に折り返し、折り返した外部導体の上から締め付けリングを外部導体端子の筒体部の外周面に圧着して、外部導体に外部導体端子を接続する構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−218622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の外部導体端子の接続構造によれば、筒体部の軸方向長さが締め付けリングの分だけ長くなるから、外部導体端子の接続部の体格(形態)が大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、外部導体端子の接続部の体格を小さくすることができる電線の外部導体端子の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、1又は複数の内部導体の絶縁被覆の外周を包囲して設けられた撚り線からなる外部導体と、該外部導体の外周面を覆って設けられた保護被覆とを備えてなる電線の前記外部導体に接続する外部導体端子の接続構造において、前記外部導体端子は、
一端部に平板の端子部と、他端部
に筒体部とを有してなり、前記保護被覆
から前記外部導体が露出
した部位の前記絶縁被覆の外
周に前記外部導体端子の筒体部が
位置し、該筒体部の外周面に前記外部導体の撚り線が接して
位置し、前記端子部に開き部
が位置し、前記筒体部の外周面に接し
た前記撚り線の外周に位置するC型リング
により前記筒体
部に前
記撚り線
を固定してなる外部導体端子の接続構造を提案する。
【0008】
本発明によれば、電線の端部に被冠する外部導体端子の筒体部の外周面に外部導体の撚り線を接して配置し、その撚り線の外周にC型リングを被冠し、C型リングをかしめて筒体部の外周面に外部導体の撚り線を圧着接続するようにしたので、筒体部の軸方向長さを短くできるから、外部導体端子の接続部の体格を小さくすることができる。つまり、外部導体端子の接続部の軸方向長さは、内部導体の露出長と、絶縁被覆の露出長と、外部導体端子の撚り線の露出長と重なる筒体部の長さとを加算した長さに止められる。これに対して、特許文献1に記載の外部導体端子の接続部の軸方向長さは、さらに締め付けリングの軸方向長さを加えた長さになる。
【0009】
この場合において、前記C型リングは、前記開き部の先端縁がリング外側に向けて折り曲げて形成されたリップ部を有するものとすることができる。また、この場合、前記リップ部は、前記外部導体端子の端子部に超音波溶接することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部導体端子の接続部の体格を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明の電線の外部導体端子の接続構造に係る実施例1の製造手順の前半を示す図である。
【
図1B】本発明の電線の外部導体端子の接続構造に係る実施例1の製造手順の後半を示す図である。
【
図2】
図1B(e)、(f)の外部導体端子の接続部の断面図である。
【
図3】本発明の電線の外部導体端子の接続構造に係る実施例1の変形例の斜視外観図である。
【
図4】本発明の電線の外部導体端子の接続構造に係る実施例1の他の変形例の斜視外観図である。
【
図5A】本発明の電線の外部導体端子の接続構造に係る実施例2の製造手順の前半を示す図である。
【
図5B】本発明の電線の外部導体端子の接続構造に係る実施例2の製造手順の後半を示す図である。
【
図6】
図5B(f)、(g)の外部導体端子の接続部の断面図である。
【
図7】本発明の電線の外部導体端子の接続構造に係る実施例2の変形例の斜視外観図である。
【
図8】本発明の電線の外部導体端子の接続構造に係る実施例2の他の変形例の斜視外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電線の外部導体端子の接続構造について、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1A及び
図1Bに、本発明の電線の外部導体端子の接続構造に係る実施例1の製造手順を示す。本実施例は、同軸電線の外部導体端子の接続構造に本発明を適用したものであるが、本発明はこれに限らず複数の電線の絶縁被覆の外周を包囲して設けられた外部導体に接続される外部導体端子の接続構造に適用できる。
図1A(a)に示すように、電線1は、内部導体である芯線2と、芯線2の絶縁被覆3と、絶縁被覆3の外周に複数の撚り線を巻き付けて形成された外部導体4と、外部導体4の外周面を覆って設けられた保護被覆5を有して形成されている。なお、保護被覆5は必要な絶縁性能を備えて形成することができる。また、同軸の電線1は、例えば、内部導体である芯線2を陽電位Pとし、外部導体4を負電位Nとして直流回路に用いることができる。しかし、これに限らず、複数の芯線2を備えて3相交流あるいは単相3線式の回路に用いることができる。
【0014】
図1A(a)〜(c)、
図1B(d)〜(f)を参照して、本実施例の外部導体端子の接続構造を、製造手順に従って説明する。電線1の外部導体4を外部回路に接続するため、電線1の端部等において外部導体4に外部導体端子を電気的に接続して外部に引き出すのが一般である。同図(a)に示すように、電線1の一端の保護被覆5を一定に長さにわたって剥ぎ取り、さらに芯線2の先端部に信号端子などを接続するために絶縁被覆3を剥ぎ取る。さらに、先端部の芯線2と外部導体4との間の絶縁距離を確保して、外部導体4の先端位置を決めるとともに、外部導体端子10を接続するために、保護被覆5を剥ぎ取って外部導体4の先端部を露出させる。ここで、本実施例の外部導体端子10は、帯板状の平板を用いて形成され、帯板の一端部に形成された端子部11と、他端部を折り曲げて形成された円筒状の筒体部12を有して形成されている。筒体部12の折り曲げ端は端子部11の基端部に適宜間隔を明けて位置されている。また、筒体部12の内径は、絶縁被覆3の外径に嵌合するように形成されている。
【0015】
次いで、同図(b)に示すように、外部導体4の撚り線の撚りをほどいて傘状に広げ、外部導体端子10の筒体部12を電線1の端部側から芯線2と絶縁被覆3に被冠し、傘状に広げた外部導体4と絶縁被覆3の間に挿入する。そして、同図(c)に示すように、外部導体4の撚り線を外部導体端子10の筒体部12の外周面に接触させた状態に保持する。なお、図から理解できるように、保護被覆5を剥ぎ取って外部導体4の先端部を露出させる長さは、外部導体端子10の筒体部12の軸方向長さに合わせることが好ましい。
【0016】
次いで、
図1B(d)に示すように、C型リング20を電線1の端部側から芯線2と絶縁被覆3に被冠する。このとき、C型リング20の開き部21を外部導体端子10の端子部11の方位に位置させて、同図(e)に示すように、筒体部12の外周面に接して配置された撚り線からなる外部導体4の外周にC型リング20を被冠する。そして、C型リング20の外周面側から外部導体端子10の筒体部12に向かってかしめることにより、同図(f)に示すように、筒体部12の外周面に外部導体4の撚り線が圧着接続される。また、同図(f)に示すように、外部導体端子10を接続した後、芯線2の露出部に例えば信号端子30を超音波溶接することができる。
【0017】
なお、C型リング20の開き部21の両側の先端縁を、リング外側に向けて折り曲げてリップ部22を形成することができる。これによれば、C型リング20の開き部21の先端縁と外部導体端子10の筒体部12との接合部の接触が良好になる。また、
図2(a)と(b)に、それぞれ、
図1B(e)と
図1B(f)の外部導体端子10の筒体部12の軸に直交する方向の接続部の断面図を示す。同図からわかるように、同図(a)はC型リング20をかしめる前の断面状態であり、同図(b)はC型リング20をかしめた後の断面状態である。
【0018】
以上説明したように、本実施例1によれば、電線1の端部に被冠する外部導体端子10の筒体部12の外周面に外部導体4の撚り線を接して配置し、その撚り線の外周にC型リング20を被冠し、C型リング20をかしめて筒体部12の外周面に外部導体4の撚り線を圧着接続するようにしたから、筒体部12の軸方向長さを短くできる。つまり、外部導体端子10の接続部の軸方向長さは、内部導体である芯線2の露出長と、絶縁被覆3の露出長と、外部導体端子10の撚り線の露出長と重なる筒体部12の長さとを加算した長さに止められる。その結果、特許文献1に記載の外部導体端子の接続部の体格を小さくすることができる。
【0019】
実施例1において、C型リング20をかしめて外部導体端子10の筒体部12に圧着接続するようにしたが、これに加えて、リップ部22の長さを
図3に示すリップ部23のように長く形成して、リップ部23を端子部11に超音波溶接することができる。
また、実施例1では、外部導体端子10の端子部11の形状を単純な平板状に形成したものを示したが、本発明はこれに限らず、
図4に示すように、接続対象の相手端子の形状に合わせて、曲折して形成された平板状の端子35と端子36を連結した形状の外部導体端子にも適用できる。
【実施例2】
【0020】
図5A及び
図5Bに、本発明の電線の外部導体端子の接続構造に係る実施例2の製造手順を示す。本実施例が実施例1と異なる点は、実施例1では外部導体端子10の筒体部12を外部導体4と絶縁被覆3の間に挿入してC型リング20で圧着したのに対し、本実施例2では外部導体端子10の筒体部14を保護被覆5の外周面に被冠し、露出された外部導体4を保護被覆5の外周面側に折り返して筒体部14の外周面に接触させて設置し、その上からC型リング25で圧着するようにしたことにある。したがって、外部導体端子10の筒体部14の内径を保護被覆5の外径に合わせて大きくし、また、これに合わせてC型リング25の内径を大きく形成したことが異なる。その他の点は、実施例1と同様であることから、同一部品には同一符号を付して説明を省略する。
【0021】
図5A(a)〜(d)、
図5B(e)〜(g)を参照して、実施例2の製造手順を説明する。同図(a)に示すように、電線1の端末部を加工する前に、外部導体端子10の内径の大きい筒体部14を電線1の端部側から電線1に被冠しておく。次いで、同図(b)に示すように、絶縁被覆3を剥ぎ取り、必要な長さの芯線2を露出させ、さらに保護被覆5を剥ぎ取って外部導体4を必要な長さ露出させる。そして、同図(c)に示すように、外部導体端子10の筒体部14を保護被覆5の端部に位置させて、外部導体4の撚り線を広げ、同図(d)に示すように、広げた撚り線を外部導体端子10の筒体部14側に折り返して筒体部12の外周面に接触させた状態に保持する。次いで、
図5B(e)に示すように、内径の大きいC型リング25を電線1の端部側からの筒体部14の外周面に折り返した外部導体4の外周に被冠する。このとき、同図(f)に示すように、C型リング25の開き部21を外部導体端子10の端子部11の方位に合わせるとともに、C型リング25と筒体部14の外周面との間に外部導体4の撚り線が挿入されるようにC型リング25を装着する。そして、C型リング25の外周面側から外部導体端子10の筒体部14に向かってかしめることにより、同図(g)に示すように、筒体部14の外周面に外部導体4の撚り線が圧着接続される。また、外部導体端子10を接続した後、芯線2の露出部2aに例えば信号端子30を超音波溶接することができる。
【0022】
なお、実施例1と同様、C型リング25の開き部21の両側の先端縁を、リング外側に向けて折り曲げてリップ部22を形成することができる。これによれば、C型リング25の開き部21の先端縁と外部導体端子10の筒体部14との接合部の接触が良好になる。また、
図6(a)と(b)に、それぞれ、
図5B(f)と
図5B(g)の外部導体端子10の筒体部14の軸に直交する方向の接続部の断面図を示す。同図からわかるように、同図(a)はC型リング25をかしめる前の断面状態であり、同図(b)はC型リング25をかしめた後の断面状態である。
【0023】
以上説明したように、本実施例2によれば、実施例1と同様に、筒体部14の軸方向長さを短くできる。つまり、外部導体端子10の接続部の軸方向長さは、内部導体である芯線2の露出長と、絶縁被覆3の露出長と、外部導体端子10の撚り線の露出長と重なる筒体部14の長さとを加算した長さに止められる。その結果、特許文献1に記載の外部導体端子の接続部の体格を小さくすることができる。
【0024】
実施例2において、C型リング25をかしめて外部導体端子10の筒体部14に圧着接続するようにしたが、これに加えて、リップ部22の長さを
図7に示すリップ部23のように長く形成して、リップ部23を端子部11に超音波溶接することができる。
また、実施例2では、外部導体端子10の端子部11の形状を単純な平板状に形成したものを示したが、本発明はこれに限らず、
図8に示すように、接続対象の相手端子の形状に合わせて、曲折して形成された平板状の端子35と端子36を連結した形状の外部導体端子にも適用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 電線
2 芯線
3 絶縁被覆
4 シールド導体
5 保護被覆
10 外部導体端子
12 筒体部
20 C型リング
21 開き部
22 リップ部