特許第5878095号(P5878095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5878095発電システム、その発電変動補完システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878095
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】発電システム、その発電変動補完システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20160223BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   H02J3/46
   H02J3/38 130
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-185406(P2012-185406)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-45544(P2014-45544A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】進士 誉夫
(72)【発明者】
【氏名】緒方 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】田上 誠二
(72)【発明者】
【氏名】田所 真之
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−312797(JP,A)
【文献】 特開2011−114945(JP,A)
【文献】 特開2005−245105(JP,A)
【文献】 特開2005−137109(JP,A)
【文献】 特開2009−284723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 − 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電装置と燃料発電設備とを有する発電システムにおいて、
前記太陽光発電装置の発電電力値を随時取得して、該取得した発電電力値に基づいて前記燃料発電設備の発電量を制御する発電変動補完システムを更に有し、
該発電変動補完システムは、
前記取得した太陽光発電装置の発電電力の短期的な変動成分と、前記燃料発電設備に係わるベース出力値との和に基づいて、前記燃料発電設備の発電量の指令値を決定して前記燃料発電設備へ出力する燃料発電指令値決定手段と、
前記ベース出力値を随時決定して前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力設定手段とを有し、
前記ベース出力設定手段は、
1日のうちの各時間または時間帯に応じた前記ベース出力値の時系列設定データであるベース出力値パターンが、予め記憶されているベース出力値パターン記憶手段と、
該ベース出力値パターン記憶手段に記憶される前記ベース出力値パターンを用いて、現在の時間または時間帯に応じたベース出力値を前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力手段と、
を有することを特徴とする発電システム。
【請求項2】
太陽光発電装置と燃料発電設備とを有する発電システムにおいて、
前記太陽光発電装置の発電電力値を随時取得して、該取得した発電電力値に基づいて前記燃料発電設備の発電量を制御する発電変動補完システムを更に有し、
該発電変動補完システムは、
前記取得した太陽光発電装置の発電電力の短期的な変動成分と、前記燃料発電設備に係わるベース出力値との和に基づいて、前記燃料発電設備の発電量の指令値を決定して前記燃料発電設備へ出力する燃料発電指令値決定手段と、
前記ベース出力値を随時決定して前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力設定手段とを有し、
前記ベース出力設定手段は、
1日のうちの各時間または時間帯に応じた前記ベース出力値の時系列設定データであるベース出力値パターンが、各天気に応じて複数種類、予め記憶されているベース出力値パターン記憶手段と、
天気予報情報を取得する天気予報情報取得手段と、
前記ベース出力値パターン記憶手段に記憶されている前記各天気に応じた複数のベース出力値パターンのなかから、前記天気予報情報取得手段によって取得された天気予報の天気に対応するベース出力値パターンを選択するベース出力値パターン選択手段と、
該ベース出力値パターン選択手段で選択されたベース出力値パターンを用いて、現在の時間または時間帯に応じたベース出力値を前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力手段と、
を有することを特徴とする発電システム。
【請求項3】
前記ベース出力値パターン記憶手段に記憶されるベース出力値パターンは、前記太陽光発電装置の発電電力が、上昇方向の変動量が大きいと想定される時間または時間帯に関しては比較的大きな値となり、下降方向の変動量が大きいと想定される時間または時間帯に関しては比較的小さい値となるように設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の発電システム。
【請求項4】
前記燃料発電指令値決定手段は、前記取得した太陽光発電装置の発電電力値の短周期変動成分を除去するフィルタ部と、該フィルタ部の出力から前記取得した太陽光発電装置の発電電力値を減算する減算器と、該減算器の出力に前記ベース出力値を加算する加算器とを有し、該加算器の出力を前記燃料発電設備の発電量の指令値として前記燃料発電設備へ出力することを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の発電システム。
【請求項5】
太陽光発電装置と燃料発電設備とを有する発電システムにおける、前記太陽光発電装置の発電電力値を随時取得して、該取得した発電電力値に基づいて前記燃料発電設備の発電量を制御する発電変動補完システムであって、
前記取得した太陽光発電装置の発電電力の短期的な変動成分と、前記燃料発電設備に係わるベース出力値との和に基づいて、前記燃料発電設備の発電量の指令値を決定して前記燃料発電設備へ出力する燃料発電指令値決定手段と、
前記ベース出力値を随時決定して前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力設定手段とを有し、
前記ベース出力設定手段は、
1日のうちの各時間または時間帯に応じた前記ベース出力値の時系列設定データであるベース出力値パターンが、予め記憶されているベース出力値パターン記憶手段と、
該ベース出力値パターン記憶手段に記憶される前記ベース出力値パターンを用いて、現在の時間または時間帯に応じたベース出力値を前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力手段と、
を有することを特徴とする発電変動補完システム。
【請求項6】
太陽光発電装置と燃料発電設備とを有する発電システムにおける、前記太陽光発電装置の発電電力値を随時取得して、該取得した発電電力値に基づいて前記燃料発電設備の発電量を制御する発電変動補完システムであって、
前記取得した太陽光発電装置の発電電力の短期的な変動成分と、前記燃料発電設備に係わるベース出力値との和に基づいて、前記燃料発電設備の発電量の指令値を決定して前記燃料発電設備へ出力する燃料発電指令値決定手段と、
前記ベース出力値を随時決定して前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力設定手段とを有し、
前記ベース出力設定手段は、
1日のうちの各時間または時間帯に応じた前記ベース出力値の時系列設定データであるベース出力値パターンが、各天気に応じて複数種類、予め記憶されているベース出力値パターン記憶手段と、
天気予報情報を取得する天気予報情報取得手段と、
前記ベース出力値パターン記憶手段に記憶されている前記各天気に応じた複数のベース出力値パターンのなかから、前記天気予報情報取得手段によって取得された天気予報の天気に対応するベース出力値パターンを選択するベース出力値パターン選択手段と、
該ベース出力値パターン選択手段で選択されたベース出力値パターンを用いて、現在の時間または時間帯に応じたベース出力値を前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力手段と、
を有することを特徴とする発電変動補完システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電の出力変動に対応する補完を行う発電変動補完システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電、風力発電、燃料電池、発電用ガスエンジンといった様々な分散型電源の実用化、導入が進められている。そのような分散型電源をビル内等の自家発電設備として採用することは、地球温暖化ガスの排出量削減が期待でき、電力会社から供給される電力量の削減、あるいは、震災や火災時の自立安定性も確保し易いといった様々な利点がある。したがって、分散型電源を用いた電力供給システムは、今後広く普及するものと予測される。
【0003】
太陽光発電は、再生可能エネルギー利用発電の一例である。よく知られているように、この様な再生可能エネルギー利用発電の発電量は、太陽光量次第であり、コントロール不能な出力変動が生じるものである。
【0004】
なお、ガスエンジンとは、可燃性ガスを燃料として駆動するエンジンである。発電用ガスエンジンは、ガスエンジンによって発電する自家発電設備である。ガス器具・設備での利用としては、熱と電気を発生させるコージェネレーションシステムに多く利用され、そのほとんどが自動車用のガソリンエンジンと同様の原理である。
【0005】
一連の工程は、1.シリンダ内(燃焼室)に燃料ガスと空気をあらかじめ混合して供給し、2.混合気をピストンにより圧縮し、電気火花で点火。3.燃焼後の混合気(=燃焼ガス)が膨張しピストンを押し下げる。4.最後にピストンにより燃焼ガスはシリンダから排出される。この3の膨張工程時ピストンが下がるときに外部に仕事をし(クランク機構を経て回転力に変換)し、接続された発電機を回転させ、発電する。業務用、工業用途のほか、都市ガスで発電し、そのとき出る熱でお湯もつくり、暖房もできる家庭用のガスコージェネレーションシステムとして使われている。
【0006】
またコージェネレーションの動力としては、この他にガスタービンもある。
また、燃料電池は、水素と酸素を化学反応させて電気を生成する電池であり、通常の電池とは異なり、水素と酸素を供給し続けることで継続的に発電しつづけることができる。
【0007】
ところで、上記分散型電源を用いた電力供給システムでは、分散型電源と商用系統(大電力会社の電力網)とを併用(系統連系)して当該分散型電源を運転させると、再生可能エネルギーの出力変動により商用系統に影響が出ることがある。特に、今後、大量導入が見込まれる太陽光発電が分散型電源を用いた電力供給システムに組み込まれる場合、太陽光発電の出力が日射量によって変動し、電力の需要と供給のバランスが崩れるため、商用系統上に周波数変動が生ずる可能性がある。
【0008】
この周波数変動は、周波数の数値に依存して動く機械もあるため、50Hz系統では一般的には±0.2Hz以上の周波数変動が生じるのは好ましくない。また、商用系統における負荷変動の補償を電力会社にばかり求めると、電力会社の負荷変動に対する調整能力に大きな負担が掛かる。
【0009】
したがって、近年では、分散型電源を個別にその負荷に追従させて運転させること、特に太陽光発電が導入される場合、その出力変動を抑制するように運転させることが、求められている。このようにすれば、商用系統にかかる負荷変動抑制の電力会社側の負担を軽減させることができる。
【0010】
また、例えば特許文献1〜4等に記載の従来技術が知られている。
特許文献1には、天然ガス等を燃料とするガスエンジンを用いたエンジンコージェネレーションシステムと、蓄電装置の充放電とによって、太陽光発電装置の出力変動を吸収することが開示されている。特許文献1の発明は、太陽光発電装置の出力変動に対応する応答性を向上して、太陽光発電装置の出力変動を適切に吸収すると共に、発電効率の低下を防止することができる発電システムを提供するものである。例えば、エンジン出力制御では吸収できないような短時間の太陽光発電出力変動に対しては、この変動分を適切に補うように蓄電装置の充放電量を制御するものである。
【0011】
また、特許文献2の発明は、太陽電池の上空の雲率により予測発電量を算出することができ、発電機(エンジン等)の発電量を予め指示することができる。予め指示できることにより、発電機および蓄電池による電力供給により急激な太陽電池の発電量の変化に対応することができ、単独系統における自立安定性の向上を図ることができる。
【0012】
また、特許文献3の発明は、気象条件の急変や系統擾乱時の運転停止等による新エネルギー発電所の出力急変時においても、電力系統を適切に制御できる新エネルギー発電所群の制御システム等を提供するものである。
【0013】
また、特許文献4の発明は、風力発電機等から電力系統に加える電力を安定化する為に二次電池等の電力貯蔵装置を用いるシステムに係わり、運転状態が運転許容範囲の上下限に達した場合、運転状態が運転許容範囲の上下限に張り付き電力補償が出来なくなる時間を短縮できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2012−85468号公報
【特許文献2】特開2011−211877号公報
【特許文献3】特開2012−5310号公報
【特許文献4】特開2007−306669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここで、上記発電用ガスエンジンは、最小出力が決められており、最小出力から最大出力(定格出力)までの範囲内で運転されることになる。仮に、最小出力=50%とした場合、出力50%〜100%の範囲内で運転されることになる。この為、太陽光発電の出力変動に対応する補完を行う為に発電用ガスエンジンを用いる場合、補完量が‘0’ということは無く、最低でも最小出力(=50%)分が太陽光発電量に上乗せされる形で、出力変動補完を行うことになる。尚、上記出力=50%とは、定格出力に対するパーセンテージであり、定格出力の半分の出力値を意味している。
【0016】
また、上記発電用ガスエンジンの制御部は、例えば予め決められている所定の基準出力(例えば上記50%と100%の中間である75%)に対して、太陽光発電量のベースからの変動分を加減算することで、発電用ガスエンジン出力値を決定・制御している。この為、太陽光発電量の変動分が、発電用ガスエンジンの上記の上下限値の範囲内(ここでは50%〜100%の範囲内)に収まっている場合はよいが、そうでない場合、ガスエンジン出力値が上限値または下限値に張り付いてしまうことになり、以って正常な出力変動補完を実現できなくなることになる。
【0017】
この問題に対して、例えば定格出力(最大出力)が大きい発電用ガスエンジンを用いれば、上記問題の発生を防止または減少させることができるが、太陽光発電の変動を吸収するためだけに定格出力が大きい発電用ガスエンジンを用いるのは、現実上、コスト等の観点から実現困難である。
【0018】
本発明の課題は、燃料発電設備の発電出力によって太陽光発電の出力変動を補完するシステムにおいて、天候や時間帯等に応じて適切なベース出力値を用いて燃料発電設備の発電量を調整・制御することができ、以って燃料発電設備の発電量が上限値または下限値に張り付いてしまう可能性を減少させることができ適切な出力変動補完を実現できる発電システム、その発電変動補完システム等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の発電システムは、太陽光発電装置と燃料発電設備とを有する発電システムにおいて、前記太陽光発電装置の発電電力値を随時取得して、該取得した発電電力値に基づいて前記燃料発電設備の発電量を制御する発電変動補完システムを更に有し、該発電変動補完システムは、前記取得した太陽光発電装置の発電電力の短期的な変動成分と、前記燃料発電設備に係わるベース出力値との和に基づいて、前記燃料発電設備の発電量の指令値を決定して前記燃料発電設備へ出力する燃料発電指令値決定手段と、前記ベース出力値を随時決定して前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力設定手段とを有し、前記ベース出力設定手段は、1日のうちの各時間または時間帯に応じた前記ベース出力値の時系列設定データであるベース出力値パターンが、予め記憶されているベース出力値パターン記憶手段と、該ベース出力値パターン記憶手段に記憶される前記ベース出力値パターンを用いて、現在の時間または時間帯に応じたベース出力値を前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力手段とを有する。
【0020】
あるいは、本発明の発電システムは、太陽光発電装置と燃料発電設備とを有する発電システムにおいて、前記太陽光発電装置の発電電力値を随時取得して、該取得した発電電力値に基づいて前記燃料発電設備の発電量を制御する発電変動補完システムを更に有し、該発電変動補完システムは、前記取得した太陽光発電装置の発電電力の短期的な変動成分と、前記燃料発電設備に係わるベース出力値との和に基づいて、前記燃料発電設備の発電量の指令値を決定して前記燃料発電設備へ出力する燃料発電指令値決定手段と、前記ベース出力値を随時決定して前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力設定手段とを有し、前記ベース出力設定手段は、1日のうちの各時間または時間帯に応じた前記ベース出力値の時系列設定データであるベース出力値パターンが、各天気に応じて複数種類、予め記憶されているベース出力値パターン記憶手段と、天気予報情報を取得する天気予報情報取得手段と、前記ベース出力値パターン記憶手段に記憶されている前記各天気に応じた複数のベース出力値パターンのなかから、前記天気予報情報取得手段によって取得された天気予報の天気に対応するベース出力値パターンを選択するベース出力値パターン選択手段と、該ベース出力値パターン選択手段で選択されたベース出力値パターンを用いて、現在の時間または時間帯に応じたベース出力値を前記燃料発電指令値決定手段へ出力するベース出力手段とを有する。
【0021】
上記各発電システムにおいて、例えば、前記燃料発電指令値決定手段は、前記取得した太陽光発電装置の発電電力値の短周期変動成分を除去するフィルタ部と、該フィルタ部の出力から前記取得した太陽光発電装置の発電電力値を減算する減算器と、該減算器の出力に前記ベース出力値を加算する加算器とを有し、該加算器の出力を前記燃料発電設備の発電量の指令値として前記燃料発電設備へ出力する。
【0022】
この様な構成の燃料発電指令値決定手段が用いるベース出力値を、固定ではなく、ベース出力設定手段によって随時決定・入力させる。これは、時間帯等に応じたベース出力値、あるいは天候と時間帯等に応じたベース出力値が、随時決定・入力される。これによって、例えば燃料発電設備の発電量が、下限値/上限値に張り付く事態を、抑止できるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の発電システム、その発電変動補完システム等によれば、燃料発電設備の発電出力によって太陽光発電の出力変動を補完するシステムにおいて、天候や時間帯等に応じて適切なベース出力値を用いて燃料発電設備の発電量を調整・制御することができ、以って燃料発電設備の発電量が上限値または下限値に張り付いてしまう可能性を減少させることができ適切な出力変動補完を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本例の発電変動補完システムの構成図である。
図2】発電システム全体の概略構成図である。
図3】(a)〜(e)は、図1に示す各構成の入力/出力例である。
図4】(a)、(b)は日射量、(c)、(d)は太陽光発電変動例、(e)は太陽光発電電力の変動に対するガスエンジンによる補完のイメージを示す。
図5】GEベース出力設定部の処理フローチャート図である。
図6】(a)〜(c)は、GEベース出力値パターンの一例(その1)を示す図である。
図7】(a)〜(c)は、GEベース出力値パターンの一例(その2)を示す図である。
図8】(a)〜(c)は、天候に応じた太陽光発電の発電量と、それに応じたGEベース出力値パターンの一例を示す図である。
図9】入力設定画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本例の発電変動補完システムの構成図である。
図示の例の発電変動補完システム1は、GE指令値決定部10とGEベース出力設定部20から成る。GE指令値決定部10自体は、従来から存在する既存の構成と見做してよく、本手法では新たにGEベース出力設定部20が追加されたものである。
【0026】
尚、発電システム全体としては、例えば図2に示すように、ガスエンジン発電装置2と太陽光発電装置3とがあり、これらの発電電力が電力系統4(商用系統など)や不図示の負荷に供給される構成となっている。そして、図2に示すように、発電変動補完システム1は、ガスエンジン発電装置2と太陽光発電装置3とに接続しており、少なくとも太陽光発電装置3の発電電力をリアルタイムで随時取得可能な構成となっている。そして、発電変動補完システム1は、取得した太陽光発電電力値に基づいて、ガスエンジン発電装置2の発電量を調整・制御する。また、発電変動補完システム1は、インターネット等のネットワークを介して任意のWebサイト等と通信可能となっており、これより後述する天気予報情報等を取得できる。
【0027】
尚、ガスエンジン発電装置2は、燃料発電設備の一例である。燃料発電設備は、何らかの燃料を燃焼させて発電する装置であり、ガスエンジン発電装置2に限らず、例えばガスタービン発電設備やディーゼルエンジン発電設備等であってもよい。
【0028】
まず、GE指令値決定部10について(既存構成であるので)簡単に説明する。
GE指令値決定部10は、上記太陽光発電装置3の発電電力値をリアルタイムで入力するPV発電電力入力部11と、フィルタ12、減算器13、加算器14等を有する。
【0029】
PV発電電力入力部11で入力された太陽光発電装置3の発電電力値は、フィルタ12に入力される共に、減算器13の−側に入力される。フィルタ12は、例えばローパスフィルタ等であり、例えば図3(a)に示すような発電電力が入力された場合には、その短周期変動成分がカット(除去)されることで、例えば図3(b)に示すような中長期の変動成分のみが生成出力される。
【0030】
フィルタ12の出力は、減算器13の+側に入力される。これより、減算器13において上記中長期の変動成分から太陽光発電電力が減算される形で両者の差分が抽出される。つまり、中長期の変動成分がカットされて、短期的な変動成分の正負反転値が抽出される。
【0031】
図3(c)には、上記図3(a)、(b)の例に応じた減算器13の出力例を示す。
ここで、図3(a)に示す例は、例えば晴れの日の午前中の太陽光発電電力例であり、短期的な変動としては増加と減少を数多く繰り返す形となるが、全体的には太陽光量が増加していく傾向となることから、図中に点線で示すような中長期の変動成分は上昇していくものとなっている。この為、短期的な変動における増加分と減少分とを比較すると、増加分の変動量の方が大きくなり、これが減算器13の−側に入力されることで、図3(c)に示すように減算器13の出力は、減少分の変動量の方が大きくなる。
【0032】
一方、特に図示しないが、晴れの日の午後(特に午後遅く;夕方に近い時間帯等)は、今度は太陽光量が減少していくことになるので、減算器13の出力は、上記とは逆に、増加分の変動量の方が大きくなる。
【0033】
そして、減算器13の出力は、加算器14に入力される。加算器14にはGEベース出力値も入力されて、両者の加算結果(減算器13の出力+GEベース出力値)がガスエンジン発電装置2の出力指令値としてガスエンジン発電装置2へ出力されることになる。
【0034】
ここで、上記GEベース出力値は、従来では予め設定された固定値となっている。仮に、ガスエンジン発電装置2の出力の下限値を50%とした場合(尚、上限値(定格値)は当然100%)、例えばGEベース出力値が85%に設定されていた場合には、加算器14の出力(ガスエンジン出力指令値)は、例えば図3(d)に示すようになる。この例では、図5(c)に示すように増加分の変動量が小さく減少分の変動量が大きいので、図3(d)に示すように、増加分の変動に応じた指令値が上限値に達することはなく(上限値に張り付くことはない)、減少分の変動に応じた指令値が下限値に達することはなく(下限値に張り付くことはない)。
【0035】
尚、例えば下限値に張り付くとは、(下限値未満には出来ないことから)下限値一定となってしまうことを意味する。また、尚、例えば上記50%とは出力定格値(出力100%)の半分の出力を意味する。つまり、出力を定格値に対するパーセンテージで表している(これは上記85%や後述する60%等についても同様である)。
【0036】
尚、特に図示しないが、加算器14の後段には更に上限値・下限値に制限する為の構成が設けられていてもよい。つまり、加算器14の出力が所定の上限値を越えた場合には上記指令値として上限値がガスエンジン発電装置2に出力されるようになっている(上限値に張り付く)。同様に、加算器14の出力が所定の下限値以下となった場合には上記指令値として下限値がガスエンジン発電装置2に出力されるようになっている(下限値に張り付く)。但し、この様な例に限らず、加算器14の出力がそのままガスエンジン発電装置2に出力される構成であっても構わない。
【0037】
一方、仮に、GEベース出力値が60%に設定されていた場合には、加算器14の出力(ガスエンジン出力指令値)は、例えば図3(e)に示すようになる。つまり、この例の場合、減少分の変動量が大きいにも係わらず、GEベース出力値が小さい(下限値に近い)為に、“下限値に張り付く”状況が生じてしまうことになる(少なくともその可能性は高くなる)。
【0038】
このように、太陽光発電電力が図3(a)に示すような例の場合には、GEベース出力値は、少なくとも60%よりは85%の方が望ましいことが分かる。しかしながら、これは、図3(a)に示す例の場合の話である。つまり、例えば上記「晴れの日の午後(特に午後遅く)」の場合には、上記の通り、減算器13の出力である短期変動成分は、増加分の変動量の方が大きいことになる。この為、GEベース出力値を85%に設定していた場合、今度は、増加分の変動量が大きいにも係わらず、GEベース出力値が大きい(上限値に近い)為に、“上限値に張り付く”状況が生じてしまうことになる(少なくともその可能性は高くなる)。
【0039】
上記の問題を、例えば図4(a)〜(e)を参照して更に説明する。
まず、図4(a)、(b)には、日射量の一例を示す。何れも1日分(日中)の日射量の推移を示すものであり(縦軸が日射量で横軸が時間)、図4(a)は晴れの日の日射量、(b)は曇りの日の日射量の推移を示す。図4(a)に示す日射量がピークとなる時間は、お昼頃と見做してよい。これより、図示のように、日射量変動は一般的に晴れでも曇りでも、午前中は上昇傾向、午後は下降傾向となる。これより、太陽光発電量も、午前中は上昇傾向、午後は下降傾向となる。
【0040】
図4(c)は午前中、図4(d)は午後の太陽光発電電力を示す。
図4(c)に示すように、午前中は、出力が落ちる部分も存在するが、上昇方向の変動が大きくなる。その逆に、図4(d)に示すように、午後は、出力が上がる部分も存在するが、下降方向の変動が大きくなる。
【0041】
また、図4(e)には、太陽光発電電力の変動に対するガスエンジン発電装置2による補完のイメージを示す。
図4(e)に実線で示すのが、リアルタイム計測される太陽光発電電力値の一例であり、一日分の太陽光発電電力値の変動パターンを示すものである。通常、図示のように午前中は出力上昇、午後は出力下降という中長期的な変動に加えて、短期的な細かい変動が生じるものである。基本的には、この様な短期的な変動をカットするような補完を行って、図示の点線で示すような中長期的な変動のみとするのであるが、ガスエンジン発電装置2には上記のように出力に下限値があるので、常に下限値以上の出力が上乗せされる形で変動補完が行われ、これより補完後の出力(太陽光発電+ガスエンジン発電)は、例えば図示の一点鎖線で示すようになる。
【0042】
尚、もし仮に太陽光発電電力に短期的な変動が無かった場合、つまり図示の点線で示す出力であった場合には、ガスエンジン出力は常に上記GEベース出力値一定となり、補完後の出力は常に「太陽光発電量+ガスエンジンのGEベース出力)」となることになる。
【0043】
上記問題に対して、本手法では、GEベース出力設定部20を新たに設けることを提案している。GEベース出力設定部20は、上記GEベース出力値を可変として、天候や時間帯等に応じた適切なGEベース出力値を、随時決定して、上記加算器14へ出力するものである。
【0044】
以下、GEベース出力設定部20について説明する。
GEベース出力設定部20は、パターン記憶部21、天気予報取得部22、GEベース出力パターン選定部23、GEベース出力部24を有する。
【0045】
パターン記憶部21には、天候や時間帯等に応じて予め適切と判断されたGEベース出力値のパターンが複数種類(例えば1日分の(日中の;日の出から日の入りまでの)GEベース出力値パターンが天候毎に)、予め記憶されている。尚、GEベース出力値パターンとは、例えば単位時間毎に(例えば10分単位で)GEベース出力値が設定されたものの集合体である。
【0046】
これは、例えば、開発者等が、過去の各天候に応じた太陽光発電量の実績データ等に基づいて作成するものである。パターン記憶部21に記憶されるGEベース出力値パターンは、例えば、下記のように設定される。
【0047】
すなわち、例えば、太陽光発電装置3の発電電力が、上昇方向の変動量の方が大きいと想定される時間/時間帯に関しては、GEベース出力値を比較的大きな値とする。その一方で、太陽光発電装置3の発電電力が、下降方向の変動量の方が大きいと想定される時間/時間帯に関しては、GEベース出力値を比較的小さい値とする。これは、GEベース出力値を、例えば午前中は比較的大きな値とし、午後は比較的小さい値とする。この様なパターンの一例を図6に示し後に説明する。
【0048】
但し、上記のような例に限らない。基本的には、太陽光発電装置3の発電電力の実績データ等に応じて、ガスエンジン発電出力が上限値や下限値に張り付く可能性を少なくするようなGEベース出力値パターンが設定されればよい。例えば一例を図6に示し、他の例を図7に示し、これらについては後に説明する。
【0049】
天気予報取得部22は、天気予報情報を取得する機能部である。天気予報取得部22は、例えばインターネット等のネットワークを介して任意の天気予報サイトに接続して、この天気予報サイトから例えば翌日の天気予報を取得する。これは、例えば、毎日、日没後に行う。日没後は、太陽光発電は発電しないので、その出力変動を補完する処理も必要なくなるからである。尚、この例に限らず、天気予報取得部22は、例えば可搬型記憶媒体(メモリカード等)に記憶された天気予報情報を読み出す機能部、あるいはキーボード等からユーザによる手作業で天気予報情報を入力させる機能部などであってもよい。
【0050】
GEベース出力パターン選定部23は、上記パターン記憶部21に記憶されている複数種類のGEベース出力値パターンのなかから、上記天気予報情報に応じた該当パターンを、例えば翌日のGEベース出力値のパターンとして決定・設定する。
【0051】
GEベース出力部24は、例えば翌日の日の出から日没までの間、上記決定・設定されたGEベース出力値パターンに基づいて、上記加算器14に対してGEベース出力値を出力する。GEベース出力値パターンは、例えば1日のうちの(例えば日の出から日没までの間)の各時間/時間帯に応じた(例えば10分刻みの)GEベース出力値の時系列設定データである。これより、GEベース出力部24は、例えば随時、時計機能等から現在時刻を取得して、上記決定・設定されたGEベース出力値パターンからこの現在時刻(時間/時間帯)に対応するGEベース出力値を取得して、取得したGEベース出力値を上記加算器14へ出力する。
【0052】
図5は、GEベース出力設定部20の処理フローチャート図である。
GEベース出力設定部20は、まず天気予報取得部22が上記のように例えば日没後に翌日の天気予報情報を取得する(ステップS11)。その後、上記GEベース出力パターン選定部23がステップS12以降の処理を実行する。尚、本例では、単純化して、天気予報は“晴れ”、“曇り”、“雨”の何れかであるものとし、これより上記GEベース出力値パターンは、予め“晴れ”、“曇り”、“雨”に応じた3種類作成されてパターン記憶部21に記憶されているものとするが、勿論、この様な例に限るわけではない。
【0053】
GEベース出力パターン選定部23は、上記翌日の天気予報が“晴れ”であった場合には(ステップS12,YES)、パターン記憶部21から“晴れ”のGEベース出力値パターンを取得して(ステップS13)、これを翌日のGEベース出力値パターンとしてセットする(ステップS17)。
【0054】
GEベース出力パターン選定部23は、上記翌日の天気予報が“雨”であった場合には(ステップS12,NOでステップS14,YES)、パターン記憶部21から“雨”のGEベース出力値パターンを取得して(ステップS15)、これを翌日のGEベース出力値パターンとしてセットする(ステップS17)。
【0055】
GEベース出力パターン選定部23は、上記翌日の天気予報が“曇り”であった場合には(ステップS12,S14の両方がNO)、パターン記憶部21から“曇り”のGEベース出力値パターンを取得して(ステップS16)、これを翌日のGEベース出力値パターンとしてセットする(ステップS17)。
【0056】
尚、上記“セット”するとは、例えば不図示のメモリ等の所定の記憶領域に記憶すること等を意味するが、この例に限らない。この例の場合、翌日、上記GEベース出力部24は、この所定の記憶領域を参照することで、上記現在時刻に対応するGEベース出力値の取得と加算器14への出力を実行することになる。
【0057】
尚、GEベース出力設定部20は、例えばパソコン等の汎用コンピュータによって実現される。よって、そのハードウェア構成は、パソコン等の一般的な構成となっている。すなわち、特に図示しないが、例えば、CPU、記憶装置(ハードディスク、メモリ等)、入出力インタフェース、通信機能部等を有しており、更にディスプレイや入力装置(キーボード、マウス等)も有していても良い。
【0058】
上記記憶装置には、所定のアプリケーションプログラムが予め記憶されている。上記CPUがこのアプリケーションプログラムを読出し・実行することにより、GEベース出力設定部20の上記各種処理機能(パターン記憶部21、天気予報取得部22、GEベース出力パターン選定部23、GEベース出力部24)や、図5のフローチャート図の処理などが実現される。
【0059】
図6(a)〜(c)に、GEベース出力値パターンの一例(その1)を示す。
図7(a)〜(c)に、GEベース出力値パターンの一例(その2)を示す。
図6(a)〜(c)と図7(a)〜(c)は、何れも、横軸は時間であり、且つ、一日分(但し夜間は除く)のGEベース出力値の時系列設定データを示している。基本的には、太陽光発電が開始されるとガスエンジン発電も開始され、太陽光発電が終了するとガスエンジン発電も終了する。これに応じて、GEベース出力も、太陽光発電が開始されると出力開始され、太陽光発電が終了すると出力終了する。これは、換言すれば、GEベース出力は、日の出から出力開始され、日の入りによって出力終了する。尚、ここでは、図上真ん中当たり(図6(a)では80%が60%になる時間;図7では極小値となる時間)が、正午であり、従ってそれ以前(図上左側)が午前、それ以後(図上右側)が午後であるものとする。
【0060】
この様な日中の一日分の(日の出から日の入りまでの)GEベース出力のパターンの一例が、図6(a)〜(c)と図7(a)〜(c)にそれぞれ示してある。まず、図6(a)〜(c)について説明する。
【0061】
図6は、上述した“GEベース出力を、午前中は比較的大きな値とし、午後は比較的小さい値とする”例に応じたものである。そして、図6(a)は晴れ、図6(b)は曇り、図6(c)は雨に対応するパターンを示す。
【0062】
図示のように、基本的には、GEベース出力値パターンは、天候に関係なく、午前中は比較的大きく、午後は比較的小さくなっている。これは既に図4等で説明したように、晴れであっても曇りであっても、短期変動は、午前中は増加分の変動量の方が大きく、午後は減少分の変動量の方が大きいことに対応して、ガスエンジン発電出力の上限・下限への張り付きを抑止するためである。
【0063】
その一方で、図示の例では、晴れの場合は、他の天候の場合に比べて、全体的に低めの値となっている。つまり、例えば午前中に関しては、晴れの場合は80%であるが雨の場合は90%となっている。曇りの場合は、晴れと雨の中間的な設定となっている。これは、特に晴れの場合は太陽光発電の出力変動が上下とも比較的大きいことに対応して、ガスエンジン発電出力の上限・下限への張り付きを抑止するためである。
【0064】
つまり、例えば図3で説明したように、太陽光発電出力は、午前中に関しては短期変動は増加分の変動量の方が減少分よりも大きいが、晴れの場合は発電出力値自体が大きいので減少分の変動量も(増加よりは小さいが)大きいものと言える。尚、減少は、例えば雲などによって太陽が隠れるときに生じるものである(「晴れ」であっても、快晴の場合を除けば、多少は雲があるものである)。一方、例えば曇りの場合には、上記減少分の変動量は、晴れの場合よりは小さくなる。よって、図6に示す例のように、晴れに比べて“上げ代を小さく”しても、上限値に張り付く可能性は低いものとなる(午前中に関しては、晴れは80%、曇りは85%となっている)。但し、これは考え方次第であり、「曇り」の場合は晴れに比べて“下げ代も小さくて済む”ので、上記例のように85%へと上げる代わりに逆に75%へと下げるようにすることも考えられる。この点は、考え方次第で開発者等が適宜決定すればよい。
【0065】
上述したように、図6に示す例は1つの考え方による一例であり、他の考え方によれば例えば図7に示す例のように設定してもよい。
図7(a)は晴れ、図7(b)は曇り、図7(c)は雨に対応するGEベース出力値パターンを示す。
【0066】
図示の例では、基本的に、天候に関係なく、日中に極小となるパターンとなっている。午前中は日中に掛けて徐々に低下させていき、日中に極小となった後、午後は徐々に増加させていくパターンとなっている。晴れの場合は、曇りや雨の場合に比べて、日中の極小値が小さくなっている。これは、晴れの場合は、曇りや雨の場合に比べて、当然、太陽光発電出力が大きくなり、日中は発電出力が非常に大きくなるが、その分、太陽に雲がかかった場合等における減少分の変動量が大きくなる為に、上げ代、下げ代共に大きく取る必要があるものと考えられるからである。
【0067】
尚、図7に記載の例1とは、図6に示す例のことである。
ここで、図8に、天候に応じた太陽光発電の発電量と、それに応じたGEベース出力値パターンの一例を示す。
【0068】
図8(a)には晴れの場合、図8(b)には曇りの場合、図8(c)には雨の場合をそれぞれ示す。尚、それぞれ、図上左側に太陽光発電の発電量、図上右側にGEベース出力値パターンを示す。
【0069】
まず、晴れの日について説明する。
図8(a)の図上左側に示すように、晴れの場合には太陽光発電の発電量が多くなり、その分、変動も大きくなる。特に日中は、太陽光発電の発電量がほぼピークに達しており、増加分の変動量は小さくなる一方で、発電量が大きい状態であるが故に雲で太陽が隠れたときの減少量が図示のように大きくなる傾向にある。これより、晴れの場合のGEベース出力値パターンは、図上右側に示すように(あるいは上記図7(a)に示すように)太陽光発電の発電量の変動(特に減少分の変動量が大きくなる変動)に対応し易いように、特に日中は低めに(換言すれば“上げ代を大きくする”)設定されることが考えられる。
【0070】
一方、図8(c)に示すように、雨の場合には太陽光発電の発電量が少なくなり、その分、変動も小さくなる。
図8(b)に示すように、曇りの場合には、晴れと雨の中間的な出力変動特性となる。
【0071】
この様に、例えば図7に示すようなGEベース出力値パターンであっても、ガスエンジン発電出力の上限/下限への張り付きを防止/抑止することが期待できる。
上記GEベース出力値パターンは、例えばユーザがパソコン等において手作業で入力する。図9は、GEベース出力値パターンの設定入力画面の一例である。この画面については特に説明しないが、例えば天候や日の出時刻、日の入り時刻の設定欄や、1日を多数に分割した各時間帯毎に(例えば10分単位で)GEベース出力値を任意に設定入力できる表形式の入力欄等が表示されているものである。ユーザは、この画面上で所望のデータを入力し、入力結果が上記パターン記憶部21に記憶されることになる。
【0072】
以上説明したように、本例の発電システム、その発電変動補完システム1等によれば、燃料発電設備の発電出力によって太陽光発電の出力変動を補完するシステムにおいて、天候や時間帯等に応じて適切なベース出力値を用いて燃料発電設備の発電出力を調整・制御することができ、以って燃料発電設備の発電出力値が上限値または下限値に張り付いてしまう可能性を減少させることができ適切な出力変動補完を実現できる。
【符号の説明】
【0073】
1 発電変動補完システム
2 ガスエンジン発電装置
3 太陽光発電装置
4 電力系統
10 GE指令値決定部
11 PV発電電力入力部
12 フィルタ
13 減算器
14 加算器
20 GEベース出力設定部
21 パターン記憶部
22 天気予報取得部
23 GEベース出力パターン選定部
24 GEベース出力部
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図1
図8
図9