特許第5878425号(P5878425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 5878425-ポリアセタール樹脂組成物、及びその成形体 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878425
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物、及びその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 59/00 20060101AFI20160223BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20160223BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20160223BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20160223BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20160223BHJP
   B29K 59/00 20060101ALN20160223BHJP
   B29K 105/16 20060101ALN20160223BHJP
【FI】
   C08L59/00
   C08K3/26
   C08K5/16
   C08J5/00CFA
   B29C45/00
   B29K59:00
   B29K105:16
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-110463(P2012-110463)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-237742(P2013-237742A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2014年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岩元 隆志
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴章
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 希
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−184551(JP,A)
【文献】 特開平07−196890(JP,A)
【文献】 特開昭57−102943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 59/00
B29C 45/00
C08J 5/00
C08K 3/26
C08K 5/16
B29K 59/00
B29K 105/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(A)と、炭酸カルシウム(B)とを含み、
下記に示す条件で連続成形を実施した際に、1ショット目の成形体と10ショット目の
成形体の色差△Eが1.2以下であり、
水分率が550〜1200ppmである、ポリアセタール樹脂組成物。
<連続成形>
成形機:型締力40〜80tの射出成形機
シリンダー温度:220℃
金型温度:80℃
成形体:平板
<△E測定>
色差計:JIS Z8722に準拠した色差計
【請求項2】
ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)をさらに含む、請求項1に記載のポリア
セタール樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭酸カルシウム(B)の含有量が、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に
対して5〜50質量部である、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
前記ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)の含有量が、前記ポリアセタール樹
脂(A)100質量部に対して0.001〜1質量部である、請求項2又は3に記載のポ
リアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物を含み、L値が93以
上である成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂組成物、及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的強度、耐薬品性、及び摺動性のバランスに優れ、且つその加工性が容易である。そこで、ポリアセタール樹脂は、代表的なエンジニアリングプラスチックスとして、電気機器、電気機器の機構部品、自動車部品、及びその他の機構部品を中心に広範囲に亘って用いられている。中でもフィラーで強化したポリアセタール樹脂は、機械強度が向上するため上記の用途で広く用いられている。
【0003】
フィラー強化されたポリアセタール樹脂組成物として、炭酸カルシウムで補強された樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−7676号公報
【特許文献2】特開平4−345648号公報
【特許文献3】特開平10−298401号公報
【特許文献4】特開2007−91973号公報
【特許文献5】特開2007−51205号公報
【特許文献6】特開2006−306944号公報
【特許文献7】特開2006−45489号公報
【特許文献8】特開2005−325225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、炭酸カルシウムで強化したポリアセタール樹脂は、機械強度が向上するものの、炭酸カルシウムが有する塩基性により、ポリアセタール樹脂の分解が起こり、成形体表面が着色しやすく、例えば歯車等を成形した際に色目が異なり不良品となることがある。この点、前述の先行技術では成形体が着色しないレベルには到達していなかった。また、着色を抑えるために熱安定剤などを加えると、これらが射出成形時に金型に付着することがある(モールドデポジット;MD)。したがって、成形体の着色と金型付着を同時に抑える技術が求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、成形体表面が着色しにくく、かつ金型付着も少ないポリアセタール樹脂組成物、及びその成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂と炭酸カルシウムを含み、特定条件で成形した際の色差が特定範囲であるポリアセタール樹脂組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は下記の通りである。
【0008】
〔1〕
ポリアセタール樹脂(A)と、炭酸カルシウム(B)とを含み、
下記に示す条件で連続成形を実施した際に、1ショット目の成形体と10ショット目の
成形体の色差△Eが1.2以下であり、
水分率が550〜1200ppmである、ポリアセタール樹脂組成物。
<連続成形>
成形機:型締力40〜80tの射出成形機
シリンダー温度:220℃
金型温度:80℃
成形体:平板
<△E測定>
色差計:JIS Z8722に準拠した色差計
〔2〕
ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)をさらに含む、〔1〕に記載のポリア
セタール樹脂組成物。
〔3〕
前記炭酸カルシウム(B)の含有量が、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に
対して5〜50質量部である、〔1〕又は〔2〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔4〕
前記ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)の含有量が、前記ポリアセタール樹
脂(A)100質量部に対して0.001〜1質量部である、〔2〕又は〔3〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔5〕
〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物を含み、L値が93以上である成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連続成形を実施した際に、成形体表面が着色しにくく、かつ金型付着の少ないポリアセタール樹脂組成物、及びその成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例で用いた押出機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。また、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
〔ポリアセタール樹脂組成物〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)と、炭酸カルシウム(B)とを含み、
下記に示す条件で連続成形を実施した際に、1ショット目の成形体と10ショット目の成形体の色差△Eが1.2以下である。
<連続成形>
成形機:型締力40〜80tの射出成形機
シリンダー温度:220℃
金型温度:80℃
成形体:平板
<△E測定>
色差計:JIS Z8722に準拠した色差計
【0013】
[ポリアセタール樹脂(A)]
ポリアセタール樹脂(A)としては、特に限定されないが、具体的には、ポリアセタールホモポリマー、及びポリアセタールコポリマーが挙げられる。ポリアセタールホモポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド単量体、その3量体(トリオキサン)、又は4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる、実質的にオキシメチレン単位のみを有するポリアセタールホモポリマーが挙げられる。また、ポリアセタールコポリマーとしては、特に限定されないが、具体的には、ホルムアルデヒド単量体、その3量体(トリオキサン)、又は4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、及び1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコール、若しくはジグリコールの環状ホルマール等の、環状エーテル及び/又は環状ホルマールと、を共重合させて得られたポリアセタールコポリマーが挙げられる。さらに、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒド単量体又は上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルと、を共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー;ホルムアルデヒド単量体又は上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、多官能グリシジルエーテルと、を共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーも挙げられる。
【0014】
また、両末端若しくは片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば、ポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又は上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマー;同じく、両末端若しくは片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又は上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、環状エーテル、及び/又は環状ホルマールと、を共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーも、ポリアセタール樹脂(A)として挙げられる。上述のとおり、ポリアセタール樹脂(A)として、ポリアセタールホモポリマー、ポリアセタールコポリマーのいずれも用いることが可能である。これらの中では熱安定性と機械物性とのバランスの観点から、ポリアセタールコポリマーが好ましい。ポリアセタール樹脂(A)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
ポリアセタール樹脂(A)が、トリオキサンと上記1,3−ジオキソラン等のコモノマーとのポリアセタールコポリマーである場合、一般的には、トリオキサン1molに対してコモノマーの共重合割合は0.001〜0.6molの範囲であれば、熱安定性が良好となるので好ましい。そのコモノマーの共重合割合は0.001〜0.2molであるとより好ましく、0.0013〜0.1molであるとさらに好ましい。
【0016】
ポリアセタールコポリマーを共重合により得る際に用いられる重合触媒としては、特に制限されないが、具体的には、ルイス酸、プロトン酸、及びそれらのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素、及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン、及びそれらの錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステル又は無水物の具体例としては、特に限定されないが、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、及びトリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。これらのカチオン活性触媒の中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましい。そのようなカチオン活性触媒として、例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテル、及び三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートが重合収率向上の観点から好適である。また、上記ポリアセタールコポリマーを得る際には、カチオン活性触媒に加えて、メチラール等の重合連鎖剤(連鎖移動剤)を適宜用いてもよい。さらにメチラールを用いる際、含有水分量が100ppm以下で含有メタノール量が1質量%以下のものが好ましく、含有水分量が80ppm以下で含有メタノール量が0.8質量%以下のメチラールがより好ましく、含有水分量が50ppm以下で含有メタノール量が0.7質量%以下のものがさらに好ましい。なお、水、メタノールは少ないほど好ましい。
【0017】
ポリアセタールコポリマーの重合方法としては特に制限されないが、従来公知の方法、例えば、米国特許第3027352号明細書、米国特許第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、独国特許発明第1495228号明細書、独国特許発明第1720358号明細書、独国特許発明第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報、特開平7−70267号公報に記載の方法が挙げられる。特公昭55−42085号公報には、洗浄・除去を行う必要のない触媒失活剤として三価のリン化合物が提案されているが、さらに高い熱安定性のポリアセタールコポリマーを得るためには不安定末端の除去が好ましい。
【0018】
上記重合で得られたポリアセタールコポリマーには、熱的に不安定な末端部(−(OCH−OH基)が存在するため、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の実用性を向上させるために、下記に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を施すと好ましい。
【0019】
特定の不安定末端部の分解除去処理(以下、単に「不安定末端部除去処理」という。)とは、例えば下記式(1)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下で、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理する方法である。
【0020】
[Rn− (1)
ここで、式(1)中、R、R、R及びRは、各々独立して、炭素数1〜30の置換若しくは非置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換若しくは非置換アルキル基の少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;炭素数6〜20のアリール基の少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換若しくは非置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を示す。ここで、置換若しくは非置換アルキル基は直鎖状、分岐状、又は環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基であることが好ましい。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基はその水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数を示す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
【0021】
上述の第4級アンモニウム化合物は、上記式(1)で表わされるものであれば特に制限はないが、具体的には、式(1)におけるR、R、R、及びRが、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、さらに、R、R、R、及びRの少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものがより好ましい。このような第4級アンモニウム化合物としては、特に限定されないが、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクタデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物(Xn−=OH);塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;硫酸(Xn−=HSO、SO2−)、硝酸、燐酸、炭酸(Xn−=HCO、CO2−)、ホウ酸(Xn−=B(OH))、塩素酸、ヨウ素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸等のチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩が挙げられる。これらの中でも、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩が好ましい。カルボン酸塩の中では、蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩がより好ましい。そのような第4級アンモニウム化合物としては、例えば、水酸化コリン蟻酸塩(トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート、トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート等)が挙げられる。これら第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で用いられてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いられてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類等を併用してもよい。
【0022】
上記熱処理する方法に用いる第4級アンモニウム化合物の量は、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、0.05〜50質量ppmであると好ましく、1〜30質量ppmであるとより好ましい。このような範囲であれば、分解除去速度向上と色調の悪化抑制のバランスがとれるため好ましい。
【0023】
P×14/Q (2)
ここで、式(2)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマーに対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
【0024】
第4級アンモニウム化合物の添加量が、第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して0.05質量ppm以上であれば不安定末端部の分解除去速度が向上する傾向にあり、50質量ppm以下であれば不安定末端部除去処理後のポリアセタールコポリマーの色調が改善する傾向にある。
【0025】
ポリアセタールコポリマーの不安定末端部除去処理は、そのポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度でポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理することにより達成される。この熱処理に用いる装置としては特に制限はないが、押出機、ニーダー等を用いて熱処理することが好適である。また、分解により発生したホルムアルデヒドは減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物の添加方法には特に制約はなく、重合触媒を失活する工程にて水溶液として加える方法、重合で生成したポリアセタールコポリマーパウダーに吹きかける方法などが挙げられる。いずれの添加方法を用いても、ポリアセタールコポリマーを熱処理する工程で添加されていればよく、押出機の中に注入してもよい。あるいは、ポリアセタール樹脂組成物に押出機等を用いてフィラーやピグメントの配合を行う場合、樹脂ペレットに該化合物を添着し、その後の配合工程で不安定末端部除去処理を行ってもよい。
【0026】
不安定末端部除去処理を、重合により得られたポリアセタールコポリマー中の重合触媒を失活させた後に行ってもよく、重合触媒を失活させずに行ってもよい。重合触媒の失活処理としては特に制限されないが、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法を代表例として挙げることができる。また、重合触媒を失活させずに、ポリアセタールコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にて加熱し、重合触媒を揮発により低減した後、該不安定末端部除去処理を行うことも有効な方法である。
【0027】
不安定末端部除去処理を行うことで、窒素雰囲気下、200℃で50分間加熱したときのホルムアルデヒド発生量が、ポリアセタール樹脂の量に対して100ppm以下のポリアセタール樹脂(A)を得ることができる。
【0028】
[炭酸カルシウム(B)]
本実施形態に用いる炭酸カルシウム(B)としては、特に限定されないが、具体的には、軽質炭酸カルシウムが挙げられる。その粒子の形状としては、特に限定されないが、具体的には、球形、立方形、紡鍾形、薄片形、不定形が挙げられる。これらのうち、射出成形体の異方性低減、機械的強度向上の観点から、立方形のものが好ましく、粒子の平均長径(L)と平均短径(D)との比であるアスペクト比(L/D)が5以下であるものがより好ましく、3以下であるものがさらに好ましい。また、軽質炭酸カルシウムの結晶形態としては、一般的に知られているカルサイト型、アラゴナイト型及びパテライト型のいずれであってもよく、これらのうち、ポリアセタール樹脂(A)との界面密着性、組成物の機械的物性のバランスを向上させる観点から、カルサイト型のものが好ましい。軽質炭酸カルシウムは、人工的に合成されるものであれば特に限定されず、コロイド状炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム又は活性炭酸カルシウムと呼ばれるものが好ましい。これらの中でも、スラリー状の水酸化カルシウムに二酸化炭素を反応させて製造されたものが好ましい。軽質炭酸カルシウムは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0029】
炭酸カルシウム(B)の平均粒径は50nm以上500nm以下であることが好ましく、80nm以上300nm以下であることがより好ましく、80nm以上200nm以下であることがさらに好ましい。炭酸カルシウム(B)の平均粒径が50nm以上であることにより、ポリアセタール樹脂組成物から得られる成形体が高温下に長時間曝された後であっても、その剛性及び靱性を高いレベルで維持することができる。また、炭酸カルシウム(B)の平均粒径が500nm以下であることにより、上記成形体が高温下に長時間曝された後であっても、その靱性及びギア強度を高いレベルで維持することができる。なお、炭酸カルシウム(B)の平均粒径、平均長径及び平均短径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定対象となる炭酸カルシウム粒子のサンプリングを行い、その粒子を倍率1千倍から5万倍で撮影し、得られた画像において無作為に選んだ最低100個の炭酸カルシウム粒子からそれぞれの径を測定し、その相加平均として求めたものである。
【0030】
また、炭酸カルシウム(B)のJIS K5101試験法に準拠した煮沸抽出法によるpHは、9.2以上10.0以下であることが好ましく、9.4以上9.7以下であることがより好ましい。このpHが9.2以上10.0以下であれば、連続成形を実施した際に、成形体表面がより着色しにくく、かつ金型付着のより少ないポリアセタール樹脂組成物となるため好ましい。炭酸カルシウム(B)の水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法による最多確率空隙半径は0.12μm以上0.16μm以下であることが好ましい。その最多確率空隙半径が0.12μm以上であることにより、組成物中で炭酸カルシウムが凝集し難く良分散体が得られるという効果を有し、0.16μm以下であることにより、組成物の成形体が高温下に長時間曝された後であっても、剛性及びギア強度を高いレベルで保持できるという効果を有する。
【0031】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物における炭酸カルシウム(B)の添加量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましく、10〜50質量部であることがより好ましい。5質量部以上であれば、強度等剛性が良好で、50質量部以下であれば、成形体表面の着色が抑制される。
【0032】
本実施形態に係る炭酸カルシウム(B)は、表面処理されたもの、又は表面処理されていないものであってもよい。ここでいう用語「表面処理」とは、炭酸カルシウムの製造工程において、粒子の凝集を防止する目的で、公知の表面処理剤、付着剤又は錯化剤、及び凝集防止剤の少なくとも1種が添加され、その結果、該物質によって炭酸カルシウムの表面が被覆されていることをいう。ここで、表面処理剤、付着剤又は錯化剤、及び凝集防止剤とは、例えば「分散・凝集の解明と応用技術、1992年」(北原文雄監修・(株)テクノシステム発行)の232〜237ページに記載されているようなアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤が挙げられる。また、アミノシラン、エポキシシラン等のシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸)、脂肪族カルボン酸、樹脂酸及び金属セッケンが例示される。炭酸カルシウム(B)が表面処理されていない場合は、上記ポリアセタール樹脂組成物を製造する際に、表面処理剤を添加することも可能である。
【0033】
表面処理されていない炭酸カルシウムを使用する際に添加される、表面処理剤としては、特に限定されないが、具体的には、炭素数12〜30の脂肪酸が挙げられる。炭素数12〜30の脂肪酸は、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基にカルボキシル基が結合した構造の脂肪酸であり、分子内の合計炭素原子数が12〜30のものである。これらの脂肪酸は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。具体的には、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸が挙げられる。
【0034】
なお、これらの脂肪酸は天然のものであっても合成されたものであってもよく、天然のものを用いた場合、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物が、その脂肪酸と他の天然成分との混合物を含んでもよい。脂肪酸は、ヒドロキシ基等の官能基で置換されていてもよい。また、脂肪酸は、合成脂肪族アルコールであるユニリンアルコールの末端をカルボキシル変性した合成脂肪酸であってもよい。
【0035】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、上述の炭酸カルシウム(B)に対する炭素数12〜30の脂肪酸の質量比(脂肪酸)/(炭酸カルシウム(B))は、0.020〜0.060でありることが好ましく、0.025〜0.050であることがより好ましい。0.020以上であれば、脂肪酸による炭酸カルシウム表面の中和が充分であり、0.05以下であれば、成形体表面が着色しにくくなる。
【0036】
[ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)をさらに含むことができる。ここでホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物とは、ホルムアルデヒドと反応可能な窒素原子を分子内に有する重合体又は化合物である。その具体例としては、特に限定されないが、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。より具体的には、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体が挙げられる。さらに、ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物として、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、尿素、尿素誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物、ヒドラジン誘導体も挙げられる。
【0037】
アミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、特に限定されないが、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジンが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、特に限定されないが、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、特に限定されないが、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。尿素誘導体としては、特に限定されないが、例えば、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物が挙げられる。N−置換尿素の具体例としては、特に限定されないが、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素が挙げられる。尿素縮合体の具体例としては、特に限定されないが、尿素とホルムアルデヒドとの縮合体が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、特に限定されないが、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントインが挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、特に限定されないが、アラントインが挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、特に限定されないが、1,3−ジアザ−2,4−シクロペンタジエンが挙げられる。イミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドが挙げられる。ヒドラジン誘導体の具体例としては、特に限定されないが、カルボニルジヒドラジドなどのモノカルボン酸ジヒドラジド、ジカルボン酸モノヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジカルボン酸ジヒドラジド、ポリカルボン酸ポリヒドラジドなどのヒドラジド化合物が挙げられる。これらホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物の中でも、メラミン、及びその誘導体、ベンゾグアナミン、ヒダントイン、ヒドラジド化合物がより好ましい。
【0038】
これらのホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。より好ましくは0.01質量部以上であり、0.05質量部以上であることがさらに好ましい。また、0.5質量部未満であることがより好ましく、0.1質量部未満であることがさらに好ましい。0.001質量部以上であれば、着色の原因物質であるホルムアルデヒドの捕捉能力に優れ、1質量部以下であれば、ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物がモールドデポジット(MD)になりにくくなる。
【0039】
[添加剤]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、用途に応じて適当な添加剤を配合することができる。具体的には、添加剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、蟻酸捕捉剤、離型剤等が挙げられる。なお、ポリアセタール樹脂組成物における各添加剤の配合量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜0.8質量部、より好ましくは0.01〜0.7質量部である。
【0040】
(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。さらに、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が、エージング下でのクラックの抑制改良の観点からより好ましい。これらのヒンダードフェノール系酸化防止剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
(蟻酸捕捉剤)
蟻酸捕捉剤は蟻酸を効率的に中和し得るものであり、特に限定されないが、例えば、上記のアミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えば、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。
【0042】
また、蟻酸捕捉剤として、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウムなどの金属の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。上記カルボン酸塩のカルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水素原子を水酸基で置換されていてもよい。飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸塩の具体的な例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウムが挙げられる。これらの中でも好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、珪酸マグネシウムである。
【0043】
(離型剤)
離型剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール等のグリコール類アルコール、脂肪酸及びそれらの脂肪酸エステルが好ましく用いられるが、より好ましい離型剤としては、エチレングリコールジステアレートが挙げられる。
【0044】
[その他の添加剤]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、さらに適当な公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。具体的には、ヒンダードアミン系やベンゾトリアゾール系の耐候剤、無機充填剤、チッ化ホウ素等の結晶核剤、導電剤、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマー、顔料が挙げられる。
【0045】
(無機充填剤)
無機充填剤としては、特に限定されないが、具体的には、繊維状、粉粒子状、板状及び中空状の無機充填剤が挙げられる。繊維状無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮などの金属繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も繊維状無機充填剤として例示される。
【0046】
粉粒子状無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイトのような珪酸塩;酸化鉄、酸化チタン、アルミナのような金属酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属硫酸塩;炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末が挙げられる。
【0047】
板状無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔が挙げられる。中空状無機充填剤としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーンが挙げられる。これらの無機充填剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの無機充填剤は表面処理を施されていても施されていなくてもよいが、成形体表面の平滑性、機械的特性の観点から表面処理を施されたものが好ましい場合がある。無機充填剤の表面処理に用いられる表面処理剤としては従来公知のものが使用可能である。表面処理剤としては、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤が挙げられる。より具体的には、表面処理剤として、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネートが挙げられる。
【0048】
なお、無機充填剤に加えて/代えて、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質が用いられてもよい。
【0049】
(導電剤)
導電剤としては、特に限定されないが、例えば、導電性カーボンブラック、金属粉末又は繊維が挙げられる。
【0050】
(熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマー)
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂の変性物も熱可塑性樹脂に含まれる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。
【0051】
(顔料)
顔料としては、特に限定されないが、具体的には、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料が挙げられる。無機系顔料とは樹脂の着色用として一般的に使用されているものをいい、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラックが挙げられる。有機系顔料としては、例えば、縮合アゾ系、キノン系、フタロシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ペリレン系、ジオキサジン系の顔料が挙げられる。
【0052】
[連続成形]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、下記条件で連続成形を実施した際に、1ショット目の成形体と10ショット目の成形体の色差ΔEが特定範囲となる。ここで、用語「連続成形」とは、連続的に射出成形を実施することを意味している。連続成形を実施した際の成形体の色差は、連続成形して得られる各成形体の△Eを算出することによって得ることができる。
<連続成形>
成形機:型締力40〜80tの射出成形機
シリンダー温度:220℃
金型温度:80℃
成形体:平板
【0053】
本実施形態の連続成形では、好ましくは水分率が1500ppm以下、より好ましくは水分率が1200ppm以下の組成物(ペレット)を、射出成形機を用いて成形する。組成物の水分率は水分計(例えば三菱化学社製CA200/VA200等)により求めることができる。水分率の調整は、溶融混練後のストランドの冷却条件(冷却時間や、冷却槽・冷却媒体の温度など)によって調整することができ、また水分率の高い組成物を乾燥することによっても調整することができる。
【0054】
用いる射出成形機は型締力が40〜80tクラスのものである。射出成形の条件は、通常のポリアセタール樹脂組成物の射出成形における条件を適用することができるが、本実施形態では、成形体の色調に影響を及ぼしやすいシリンダー温度と金型温度は、それぞれ220℃と80℃で連続成形を行う。△Eを測定する成形体は平板である。
【0055】
[△E]
上述の連続成形を行い、1ショット目と10ショット目の成形体を、JIS Z8722に準拠した色差計(例えば、コニカミノルタ社製CR−200等)で測定して、△Eを求める。
【0056】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上記で得られる△Eが1.2以下であり、より好ましくは1.0以下であり、さらに好ましくは0.7以下である。△Eが1.2以下であると、樹脂組成物を成形して得られる成形体の着色がなく、かつ着色を抑えるために過剰な添加剤を配合する必要がないために、金型付着をも抑えることができる。特定の条件でわずか10ショットでの△Eを得るだけで、成形体(通常は何十ショットも成形される)の色調と金型付着性に優れることが判断できることは驚くべきことである。なお、△Eは水分率を調整することで制御することが可能である。
【0057】
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する方法は特に制限されない。例えば、ポリアセタール樹脂(A)と炭酸カルシウム(B)を、又はポリアセタール樹脂(A)と炭酸カルシウム(B)とホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)と、必要に応じてその他のヒンダードフェノール系酸化防止剤等と、をヘンシェルミキサー、タンブラー、V字型ブレンダーなどで予め混合した後、1軸又は多軸混練押出機等を用いて溶融混練するなど、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法として一般的に知られている方法により製造することができる。それらの中でも、減圧装置を備えた2軸混練押出機を用いる方法が好ましい。
【0058】
各成分の添加方法は任意の方法を使用することができる。各成分を予め混合することなく、定量フィーダーなどで各成分を単独又は数種類ずつまとめて押出機に連続供給することによりポリアセタール樹脂組成物を製造することも可能である。前述の通り、各成分を予め混合した後に添加してもよい。
【0059】
中でも、炭酸カルシウム(B)を溶融したポリアセタール樹脂(A)に添加するのが好ましい。具体的には、押出機の下流(サイドフィード)から炭酸カルシウム(B)を添加するのが好ましい。特に、ポリアセタール樹脂組成物がホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)を含む場合には、炭酸カルシウム(B)を溶融したポリアセタール樹脂(A)に添加するのが好ましい。この際、炭酸カルシウム(B)は、一部のポリアセタール樹脂(A)と同時に添加されてもよい。
【0060】
また、予めポリアセタール樹脂(A)、炭酸カルシウム(B)、ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)及びその他の添加剤を含む高濃度マスターバッチを作製しておき、押出溶融混練時又は射出成形時にポリアセタール樹脂(A)で希釈することによりポリアセタール樹脂組成物を得ることもできる。
【0061】
〔ポリアセタール樹脂組成物の成形方法〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形する方法は特に制限されるものではない。よって、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法のいずれかによってポリアセタール樹脂組成物を成形することができる。また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を含む成形体は、必ずしも上記連続成形条件によって成形されなくてもよい。
【0062】
〔成形体〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体は、色調に優れる。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を含む成形体のL値は、92以上であることが好ましく、93以上であることがより好ましく、94以上であることがより好ましい。このような範囲であればより色調に優れる。
【0063】
[用途]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形体は、様々な用途の成形体に用いることが可能である。そのような成形体としては、例えば、ギア、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、及びガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品;シャーシ、トレー、側板、プリンター、及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、及びデジタルカメラに代表されるカメラ、又はビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk:CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む)、DVD(Digital Video Disk:DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む)、Blu−ray Disc、HD−DVD、その他光デイスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム、及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像、又は情報機器;携帯電話、及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品が挙げられる。
【0064】
また、本実施形態に係る成形体として自動車用の部品も挙げられ、例えば、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、及びクリップ類の部品が挙げられる。さらには、本実施形態に係る成形品として、例えば、シャープペンシルのペン先、及びシャープペンシルの芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、及び排水栓開閉機構部品;自動販売機の開閉部ロック機構、及び商品排出機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、及びボタン;散水用のノズル、及び散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、及び住宅設備機器に代表される工業部品が挙げられる。その中でも、特に自動車用の内装・機構部品、例えば、ドア、サンルーフ、シートベルト、スイッチ、クリップ、シート、及びワイパーが好適であり、より具体的には、インサイド・ハンドル/ベース、キャリアプレート、ウィンドウレギュレーター・プーリー、ドアラッチ部品、スピーカーグリル、サンルーフ部品、プレスボタン、リトラクター部品、シートベルトアジャスタ、ステアリング・コラム、レバー・コントロール、クラスタークリップ、ECUケース、カーテンエアバッグ・クリップ、アシストグリップ・クリップ、スピンドルナット、シートアジャスタ部品、ランバー・サポート、モーターギア部品に好適である。ただし、成形体はこれらに限定されない。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例よって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、各物性の測定法は下記のとおりである。
【0066】
〈ポリアセタール樹脂組成物の連続成形時変色性の評価〉
後述のポリアセタール樹脂組成物を射出成形機(日精製、商品名「PS60E95SE」)を用いて、シリンダー温度を220℃、金型温度を80℃に設定し、射出圧力90MPa、射出時間40秒、冷却時間15秒の射出条件で連続成形して、射出プレートを得た。色差計(コニカミノルタ社製CR−200)でプレートの表裏1点を測定し、L値とb値の平均値をとった。連続成形10ショット目も同様にL値とb値を測定し、1ショット目のプレートとの色差△Eを測定した。
【0067】
〈耐モールドデポジット(MD)性と成形体着色性の評価〉
射出成形機(EC−5P 東芝機械株式会社製)に、直径30mmの歯車(モジュール:0.6,歯数:60個,歯幅:3mm,ゲート数:3点,ゲート形状:0.2mm径ピンポイントゲート)が成形可能な金型を取り付け、成形機シリンダー温度を210℃に、金型温度を30℃に設定し、射出圧力・保圧力とも、100MPaに固定し、成形を実施した。200ショット成形後に、金型キャビティー内部及び周辺を観察し、以下の指標でモールドデポジットによる金型汚染状況を評価した。「A」は、MDが認められないことを示し、「B」は、うっすらとMDが認められることを示し、「C」は、明らかな析出物が認められることを示す。この評価が「A」、「B」、「C」の順で、耐MD性が優れることを示す。また、成形体表面に発生する茶色のスジ(茶スジ)の有無を確認した。茶スジがある場合は成形体着色がしやすく、茶スジがない場合は成形体が着色しにくいと判断した。
【0068】
[ポリアセタール樹脂組成物]
実施例、比較例において、ポリアセタール樹脂組成物に含有される成分には下記のものを用いた。
【0069】
〈ポリアセタール樹脂(a−1)〉
熱媒を通すことができるジャケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整した。次いで、トリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/hr(トリオキサン1molに対して、0.039mol)、連鎖移動剤としてメチラール(水分量1.3%、メタノール量0.99%)をトリオキサン1molに対して1.50×10−3molにて連続的に添加した。さらに、重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10−5molにて連続的に添加し重合を行った。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行った。重合触媒が失活したポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過して分離回収した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合し、さらに120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量の調節は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。上記式(2)で表される水酸化コリン蟻酸塩由来の窒素の量に換算して20質量ppmとなる量の水酸化コリン蟻酸塩を添加した。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中で溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分間で不安定末端部の分解除去処理を行った。不安定末端部が分解されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下で脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押し出され、ペレット化した。こうして、ペレット化したポリアセタール樹脂(a−1)を得た。得られたポリアセタール樹脂(a−1)のメルトインデックスをASTM−D1238に準じて測定したところ、190℃、2169gの条件下で9g/10分であった(メルトインデックスの測定は以下同様。)。
【0070】
〈ポリアセタール樹脂(a−2)〉
メルトインデックスが40g/10分になるように連鎖移動剤のメチラールの量を変更した以外はポリアセタール樹脂(a−1)と同様にして、ポリアセタール樹脂(a−2)を得た。
【0071】
〈ポリアセタール樹脂(a−3)〉
1,3−ジオキソランを42.8g/hr(トリオキサン1molに対して、0.013mol)に変更した以外はポリアセタール樹脂(a−1)と同様にして、ポリアセタール樹脂(a−3)を得た。メルトインデックスは、10g/10分であった。
【0072】
〈ポリアセタール樹脂(a−4)〉
攪拌羽根の付いた連続式にモノマー等を供給できるタンクに脱水したホルムアルデヒドガス100質量部、触媒としてジメチルジステアリルアンモニウムアセテート0.1質量部を投入した。次いで、そこに、分子量調節剤として無水酢酸を、重合後のポリアセタール樹脂のメルトフローレートが10g/10分となるような量で連続的に供給しながら、58℃で重合した。得られた粗ポリオキシメチレン重合体をヘキサンと無水酢酸との1対1混合溶媒に入れ、140℃で2時間、末端基を化学処理した。得られた重合体を120℃、3時間、1mmHgの条件で真空乾燥した。次に、乾燥したポリオキシメチレン重合体100質量部に対して、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.35質量部添加し、ベント付2軸押出機で溶融混練することによりポリアセタール樹脂(a−4)のペレットを得た。
【0073】
〈炭酸カルシウム(B)〉
(B−1):白石工業(株)製、平均粒径150nm、表面未処理、pH=9.4、最多確率空隙半径0.13μm
(B−2):白石工業(株)製、平均粒径150nm、表面未処理、pH=10.2、最多確率空隙半径0.14μm
【0074】
なお、上記の炭酸カルシウムは、下記に示す(A)、(B)及び(C)の3段階の工程を経た石灰乳・炭酸ガス反応法により製造されたものである。
(A)緻密質石灰石を焼成炉で焼成し、二酸化炭素と生石灰とに分解した。
(B)得られた生石灰に水を加えて水化精製し、スラリー状の消石灰とした。
(C)(A)で得られた二酸化炭素を(B)で得られたスラリー状の消石灰に吹き込んで反応させ、炭酸カルシウムを生成した。
【0075】
〈ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)〉
(C−1)日産化学工業(株)製、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、商品名「メラミン」
(C−2)アルドリッチ社製、ベンゾグアナミン
(C−3)アルドリッチ社製、ヒダントイン
(C−4)日本ヒドラジド製、アジピン酸ジヒドラジド、商品名「ADH」
【0076】
[その他の添加剤]
〈脂肪酸〉
川研ファインケミカル(株)製、ステアリン酸、商品名「F−3」(融点64℃)
【0077】
〈脂肪酸のカルシウム塩〉
日東化成(株)製、ステアリン酸カルシウム
【0078】
〈ポリアミド樹脂〉
ナイロン6,6(10%)−コポリマーアセタール:メルトフローレートが30g/10分のポリアセタールコポリマーと、ギ酸相対粘度VRが22のポリアミド6,6とを質量比9:1で混合し、シリンダー温度が260℃に設定された二軸押出機でそれらの混合物の溶融混練を行った。押し出されたストランドはストランドカッターでペレット化し、これをポリアミド樹脂とした。
【0079】
〈酸化防止剤〉
BASF社製トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]
【0080】
[ベント付2軸押出機]
実施例、比較例において、ベント付2軸押出機として東芝機械社製TEM48SSを用いた。
【0081】
(ポリアセタール樹脂組成物の製造方法)
ポリアセタール樹脂組成物を、2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名「TEM−48SS押出機」、L/D=58.4、ベント付き)を用いて製造した。この押出機100の概略図を図1に示す。この押出機100は、上流側から下流側にかけて各々独立したバレルの領域1〜14と、その最下流側に配置されたダイヘッド15と、バレル内のスクリュー(図示せず)を駆動するための押出機モータ16と、最上流側のバレルの領域1に連結した定量フィーダー17と、それとは異なる定量フィーダー18と、その下流のバレルの領域10に連結した定量フィーダー(サイドフィーダー)19と、さらに下流のバレルの領域13から延びている脱気ベント20とを備える。バレルの領域6は、系内のガスを排出するために大気中に開放されている。ポリアセタール樹脂組成物を、図1に示す押出機100を用いて、下記の製造方法A、Bいずれかにより製造した。
【0082】
<製造方法A>
押出機100のバレルの領域1を冷却水により冷却し、バレルの領域2〜4を200℃に、バレルの領域5〜9を210℃に、バレルの領域10を200℃に、バレルの領域11〜14を180℃に、ダイヘッド15を190℃に設定した。この温度条件で、ポリアセタール樹脂(A)を定量フィーダー17から、炭酸カルシウム(B)とステアリン酸との固相状態での混合物を定量フィーダー18からそれぞれ供給した。それと共に、脱気ベント20より真空ポンプ(図示せず)を用いて脱気しながら、スクリュー回転数300rpm、押出量200kg/hの条件で混合物を溶融混練し、ダイヘッド15でダイから溶融混練物を押出し水バスで冷却してポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0083】
<製造方法B>
炭酸カルシウム(B)とステアリン酸との固相状態での混合物を定量フィーダー18に代えて定量フィーダー19から供給した以外は製造方法Aと同様にして、ポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0084】
[実施例1〜7]
各成分を表1に示す割合で配合し、それぞれ表1に示された製造方法により溶融混練を行った。押出されたポリアセタール樹脂組成物を水バスに1.5m浸漬、冷却後にストランドカッターでペレット化した。得られたペレットを三菱化学社製水分計(CA200/VA200)により水分量を測定した(表記は50ppm毎とした)。水分量と得られたペレットについて上述の方法により連続成形した際の色差、MD性を測定した結果を表2に示す。
【0085】
[実施例8、9]
上記実施例に記載の方法で得られたペレットを、マツイ社製乾燥機(PO−120)を用いて80℃、3時間乾燥した。乾燥後、三菱化学社製水分計(CA200/VA200)により水分量を測定した(表記は50ppm毎とした)。水分量と得られたペレットについて上述の方法により連続成形した際の色差、MD性、及び成形体着色性を測定した結果を表2に示す。
【0086】
[比較例1〜3]
水バスに3m浸漬、冷却した以外は、実施例1〜7と同様に実施した。
【0087】
[比較例4]
各成分を表1に示す割合で配合し、表1に示された製造方法により溶融混練を行った。押出されたポリアセタール樹脂組成物を水バスに3m浸漬、冷却後にストランドカッターでペレット化した。得られたペレットを、マツイ社製乾燥機(PO−120)を用いて80℃、3時間乾燥した。乾燥後、三菱化学社製水分計(CA200/VA200)により水分量を測定した(表記は50ppm毎とした)。水分量と得られたペレットについて上述の方法により連続成形した際の色差、MD性、及び成形体着色性を測定した結果を表2に示す。
【0088】
[実施例10〜23]
各成分を表1に示す割合で配合し、それぞれ表1に示された製造方法により溶融混練を行った。押出されたポリアセタール樹脂組成物を水バスに1.5m浸漬、冷却後にストランドカッターでペレット化した。得られたペレットを三菱化学社製水分計(CA200/VA200)により水分量を測定した(表記は50ppm毎とした)。水分量と得られたペレットについて上述の方法により連続成形した際の色差、MD性、及び成形体着色性を測定した結果を表2に示す。
【0089】
[比較例5〜7]
ホルムアルデヒド反応性窒素含有化合物(C)を0.1質量部とし、水バスに3m浸漬、冷却した以外は、実施例17、21,23と同様に実施した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は上述のとおり、ポリアセタール樹脂が持つ機械物性バランスを有し、成形体の着色が抑えられ、金型付着が抑えられるために、自動車、電機電子、その他工業などの分野で好適に利用できる。
【符号の説明】
【0093】
1〜14…バレルの領域、15…ダイヘッド、16…押出機モータ、17〜19…定量フィーダー、20…脱気ベント、100…2軸押出機。
図1