特許第5878564号(P5878564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立マクセル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5878564-電池ユニット 図000002
  • 特許5878564-電池ユニット 図000003
  • 特許5878564-電池ユニット 図000004
  • 特許5878564-電池ユニット 図000005
  • 特許5878564-電池ユニット 図000006
  • 特許5878564-電池ユニット 図000007
  • 特許5878564-電池ユニット 図000008
  • 特許5878564-電池ユニット 図000009
  • 特許5878564-電池ユニット 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878564
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】電池ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20160223BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   H01M2/10 P
   H01M2/10 B
   H01M2/04 G
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-553136(P2013-553136)
(86)(22)【出願日】2012年1月11日
(86)【国際出願番号】JP2012050392
(87)【国際公開番号】WO2013105231
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2014年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(72)【発明者】
【氏名】谷井 恵一
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3159789(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の外装缶と該外装缶の開口側を覆う有底筒状の封口缶とを有し、該外装缶の側壁の開口部側が該封口缶の側壁の外周面上に嵌合された扁平形電池と、
前記封口缶または前記外装缶のいずれか一方の平面部上に配置され、前記平面部側の面に回路部品が実装された基板とを備え、
前記封口缶または前記外装缶のうち、前記基板が配置されていない一方の部材は、正極または負極のうち一方の極性を有する外部端子として機能する、電池ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電池ユニットにおいて、
前記基板には、前記面部側とは反対側の面に正極または負極のうち他方の極性を有する外部端子が形成されている、電池ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池ユニットにおいて、
前記平面部は、前記封口缶の平面部であり、
前記扁平形電池には、前記封口缶の平面部が前記外装缶に対して膨出した膨出部が形成されていて、
前記基板には、前記平面部とは反対側の面に、前記扁平形電池の前記膨出部に対応した凸部が設けられている、電池ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の電池ユニットにおいて、
前記封口缶または前記外装缶のうち前記一方の部材の外周側を露出させつつ、前記基板と、前記封口缶または前記外装缶のうち他方の部材とをそれらの外周側で覆う外装部材をさらに備える、電池ユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の電池ユニットにおいて、
前記基板と前記平面部との間に配置されるスペーサをさらに備え、
前記スペーサの少なくとも一部は、前記基板と前記平面部とを電気的に接続可能で且つ該平面部の面方向には電気的に絶縁可能な異方性導電材料によって構成される、電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平形電池及び基板を備えた電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電池と保護回路等とをユニット化した構成は知られている。このような構成としては、例えば特開2009−152183号公報に開示されるように、コイン形二次電池を、回路部品が実装されていて且つ正負の取り出し電極(外部電極)が形成された基板を有する電池ケース内に、収納する構成が知られている。これにより、コイン形一次電池と同様に、回路部及びコイン形二次電池を有する電池ユニットを機器に対して使用することができる。
【発明の開示】
【0003】
ところで、上述の特開2009−152183号公報に開示される構成の場合、基板の片面に正極及び負極の外部電極が形成されるため、コイン形電池の外装缶及び封口缶にそれぞれ接続する端子を備えた機器の電源として使用することはできない。
【0004】
そのため、本発明の目的は、扁平形電池及び基板を有する電池ユニットにおいて、扁平形電池の外装缶及び封口缶にそれぞれ接触する端子を備えた機器の電源として利用可能な構成を得ることにある。
【0005】
本発明の一実施形態にかかる電池ユニットは、有底筒状の外装缶と該外装缶の開口側を覆う有底筒状の封口缶とを有し、該外装缶の側壁の開口部側が該封口缶の側壁の外周面上に嵌合された扁平形電池と、前記封口缶または前記外装缶のいずれか一方の平面部上に配置され、回路部品が実装された基板とを備え、前記封口缶または前記外装缶のうち、前記基板に対して前記扁平形電池の厚み方向反対側に平面部を有する一方の部材は、正極または負極のうち一方の極性を有する外部端子として機能する(第1の構成)。
【0006】
以上の構成では、扁平形電池の外装缶または封口缶のうち、基板に対して扁平形電池の厚み方向反対側に平面部を有する一方の部材を、そのまま一方の極性を有する外部端子として利用することができる。これにより、電池ユニットに、一方の極性の外部端子を形成する必要がなくなるため、簡単な構成により電池ユニットの一方の外部端子を得ることができる。
【0007】
しかも、上述の構成により、例えば基板に他方の極性の外部端子を形成すれば、扁平形電池の外装缶及び封口缶にそれぞれ接触する端子を備えた機器に対しても、上述の構成を有する電池ユニットを電源として利用することができる。
【0008】
前記第1の構成において、前記基板には、前記平面部側の面に前記回路部品が実装されているとともに、該平面部側とは反対側の面に正極または負極のうち他方の極性を有する外部端子が形成されている(第2の構成)。
【0009】
これにより、扁平形電池の外装缶及び封口缶にそれぞれ接触する端子を備えた機器に対し、電池ユニットを電源として用いることができる。すなわち、基板に形成される外部端子は、電池ユニットの外方に露出するように形成されるため、該基板に形成された外部端子と、外装缶または封口缶のうち該基板に対して扁平形電池の厚み方向反対側に平面部を有する一方の部材とが、電池ユニットの外部端子として機能する。これにより、前記機器において外装缶及び封口缶にそれぞれ接触する端子を、電池ユニットの前記外部端子に接触させることが可能となる。
【0010】
しかも、回路部品は、基板における扁平形電池側の面に実装されるため、回路部品が外部に露出するのを防止できる。これにより、基板上に実装された回路部品を保護することができる。
【0011】
前記第1または第2の構成において、前記平面部は、前記封口缶の平面部であり、前記扁平形電池には、前記封口缶の平面部が前記外装缶に対して膨出した膨出部が形成されていて、前記基板には、前記平面部とは反対側の面に、前記扁平形電池の前記膨出部に対応した凸部が設けられている(第3の構成)。
【0012】
こうすることで、扁平形電池の膨出部に対応して、電池ユニットにも凸部を形成することができる。これにより、機器側に扁平形電池の膨出部が位置付けられる取り付け部が設けられている場合、該取り付け部に電池ユニットの凸部を位置付けることができる。したがって、上述の構成により、前記機器に対して、電池ユニットを扁平形電池と同様に配置することができる。
【0013】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記封口缶または前記外装缶のうち前記一方の部材の外周側を露出させつつ、前記基板と、前記封口缶または前記外装缶のうち他方の部材とをそれらの外周側で覆う外装部材をさらに備える(第4の構成)。
【0014】
こうすることで、封口缶または外装缶のうち基板に対して扁平形電池の厚み方向反対側に平面部を有する一方の部材と、機器側の端子との接触を阻害することなく、基板と封口缶または外装缶のうち他方の部材とを外装部材によって覆うことができる。すなわち、封口缶または外装缶のうち基板に対して扁平形電池の厚み方向反対側に平面部を有する一方の部材の外周側は、外装部材によって覆われることなく露出するため、機器側の端子により確実に接触させることができる。一方、基板と、封口缶または外装缶のうち平面部上に基板が配置される他方の部材とは、それぞれの外周側が外装部材によって覆われるため、それらの外周側を外装部材によって保護することができる。
【0015】
前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成において、前記基板と前記平面部との間に配置されるスペーサをさらに備え、前記スペーサの少なくとも一部は、前記基板と前記平面部とを電気的に接続可能で且つ該平面部の面方向には電気的に絶縁可能な異方性導電材料によって構成される(第5の構成)。
【0016】
これにより、基板と扁平形電池の平面部との間に配置されるスペーサを、該基板と平面部とを電気的に接続するための接続部材として利用することができる。すなわち、スペーサの少なくとも一部は、基板と平面部とを電気的に接続可能な異方性導電材料によって構成されるため、基板と扁平形電池の平面部とを電気的に接続することができる。一方、スペーサの一部を構成する異方性導電材料は、前記平面部の面方向には電気的な絶縁性を有するため、基板と平面部との間に位置する他の部材に対して短絡が生じるのを防止できる。したがって、上述の構成により、基板と平面部との接続構造を簡単な構成によって実現できる。
【0017】
本発明の一実施形態にかかる電池ユニットによれば、封口缶または外装缶のうち基板に対して扁平形電池の厚み方向反対側に平面部を有する一方の部材を、電池ユニットにおける一方の極性の外部端子として用いる。これにより、扁平形電池の封口缶及び外装缶にそれぞれ接触する端子を備えた機器に対して、電源として利用可能な電池ユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態1に係る電池ユニットにおいて、扁平形電池以外の構成部品を断面で示す図である。
図2図2は、扁平形電池において、電極体以外の構成部品を断面で示す図である。
図3図3は、扁平形電池にスペーサ、電池側負極端子及び電池側正極端子を取り付けた状態を示す斜視図である。
図4図4は、図3の構成に回路基板を重ねた状態を示す上面図である。
図5図5は、電池ユニットの製造方法の一例において、製作した回路部の概略構成を示す断面図である。
図6図6は、電池ユニットの製造方法の一例において、回路部に扁平形電池を取り付けた状態を示す図である。
図7図7は、実施形態2に係る電池ユニットの図1相当図である。
図8図8は、実施形態3に係る電池ユニットの図3相当図である。
図9図9は、その他の実施形態に係る電池ユニットの図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態1にかかる電池ユニット1の概略構成を示す図である。この電池ユニット1は、コイン状の扁平形電池2と回路部3とが一体化されたユニットである。電池ユニット1は、例えば、歩数計、補聴器、自動車用の電子キー、ICタグ、センサユニットなど、コイン型電池を使用する小型機器に電源として使用される。なお、この電池ユニット1は、扁平形電池2に充電可能に構成された二次電池のユニットである。
【0021】
具体的には、図1に示すように、電池ユニット1は、扁平形電池2の上面上に、回路部3が積層された状態で固定されている。この回路部3は、扁平形電池2及び回路部3の積層方向から見て、該扁平形電池2の外形と同等の形状及び大きさを有する。これにより、扁平形電池2と回路部3とを厚み方向にコンパクトに配置しつつ、電池ユニット1を扁平形電池2及び回路部3の積層方向から見て該扁平形電池2の外形と同等の形状及び大きさにすることができる。
【0022】
また、詳しくは後述するが、回路部3の回路基板61における扁平形電池2とは反対側の面に、後述する各種端子66〜68が形成されている。これにより、電池ユニット1では、図1に示すように扁平形電池2と回路部3とを組み合わせた状態で、各種端子66〜68が露出した状態となる。
【0023】
さらに、図1に示すように、扁平形電池2と回路部3とを積層した状態で固定することによって構成される積層体の側面の一部は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)など、熱によって収縮する樹脂材料からなるチューブ4(外装部材)によって覆われている。具体的には、チューブ4は、前記積層体の側面において、回路部3及び後述する扁平形電池2の負極缶20に対応する部分に配置される。すなわち、チューブ4は、後述する正極缶10の周壁部12を露出させるように、前記積層体の側面上に配置される。このチューブ4は、積層体の側面の一部だけでなく該積層体の端面を構成する回路基板61の外周側も覆っている。
【0024】
これにより、前記積層体の強度の向上を図れるとともに、該積層体の側面の外観の向上も図れる。また、上述のように、チューブ4を、積層体の側面のうち回路部3及び負極缶20に対応する部分に配置し、正極缶10の周壁部12を露出させることで、該正極缶10の周壁部12に機器の端子を接触させることが可能となる。これにより、正極缶10の周壁部12に接触する端子を備えた機器においても、本実施形態の電池ユニット1を電源として用いることができる。すなわち、正極缶10が電池ユニット1における正極の外部端子として機能する。
【0025】
さらに、上述の構成により、チューブ4の厚みの分だけ、積層体の端面(回路基板61上)に段差が形成されるため、該積層体の端面に位置する回路基板61に形成された各種端子66〜68が、チューブ4よりも積層方向内方に位置する。これにより、各種端子66〜68は損傷を受けにくくなる。
【0026】
以下で、図1から図4を用いて、扁平形電池2及び回路部3の詳しい構成について説明する。
【0027】
(扁平形電池)
扁平形電池2は、図2に示すように、有底円筒状の外装缶としての正極缶10(一方の部材)と、該正極缶10の開口を覆う封口缶としての負極缶20(他方の部材)と、正極缶10の外周側と負極缶20の外周側との間に配置されるガスケット30と、正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間内に収納される電極体40とを備えている。したがって、扁平形電池2は、正極缶10と負極缶20とを合わせることによって、全体が扁平なコイン状となる。正極缶10と負極缶20との間に形成される空間内には、電極体40以外に、非水電解液(図示省略)も封入されている。なお、本実施形態において、扁平形電池2は、リチウムイオン電池として構成されている。
【0028】
正極缶10は、ステンレスなどの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。正極缶10は、円形状の底部11(平面部)と、その外周に該底部11と連続して形成される円筒状の周壁部12(側壁)とを備えている。この周壁部12は、縦断面視(図1に図示した状態)で、底部11の外周端からほぼ垂直に延びるように設けられている。正極缶10は、後述するように、負極缶20との間にガスケット30を挟んだ状態で、周壁部12の開口端側が内側に折り曲げられて、該負極缶20に対してかしめられている。よって、正極缶10の底部11によって、扁平形電池2の底面が構成される。
【0029】
負極缶20も、正極缶10と同様、ステンレスなどの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。負極缶20は、正極缶10の周壁部12よりも外形が小さい円筒状の周壁部22(側壁)と、その一方の開口を塞ぐ円形状の平面部21と、を有している。よって、負極缶20の平面部21によって、扁平形電池2の上面が構成される。
【0030】
負極缶20の周壁部22も、正極缶10と同様、縦断面視で、平面部21に対してほぼ垂直に延びるように設けられている。周壁部22には、平面部21側の基端部22aに比べて径が段状に大きくなる拡径部22bが形成されている。すなわち、周壁部22には、基端部22aと拡径部22bとの間に段部22cが形成されている。図2に示すように、この段部22cに対して、正極缶10の周壁部12の開口端側が折り曲げられてかしめられている。すなわち、正極缶10は、その周壁部12の開口端側が負極缶20の段部22cに嵌合されている。
【0031】
(回路部)
図1に示すように、回路部3は、回路基板61(基板)と、該回路基板61上に実装される複数の回路部品62とを備えている。複数の回路部品62は、回路基板61の一面側にまとめて実装されている。回路部品62としては、例えば、保護回路を構成する保護ICや、充電回路を構成する充電IC、電圧変換を行うDC/DCコンバータなどがある。このDC/DCコンバータを電池ユニット1内に設けることで、扁平形電池2の定格電圧が、使用する電気機器の定格電圧と異なる場合であっても、該電気機器の定格電圧に合わせて電池ユニット1から電圧を出力することが可能となる。よって、様々な定格電圧の扁平形電池を用いて電池ユニット1を構成することが可能になる。なお、詳しくは説明しないが、回路部3は、扁平形電池2の残量検知のために、該扁平形電池2の残容量が少なくなった場合に出力電圧を変更するように構成されている。
【0032】
図1に示すように、回路基板61は、平面視で、扁平形電池2の外形と同等の形状(円形)及び大きさを有するように形成されている。これにより、回路基板61によって電池ユニット1が扁平形電池2の直径よりも大きくなるのを防止できる。
【0033】
図4に示すように、回路基板61には、その外周部分に、略半円状の切り欠き部61aが2箇所設けられている。これらの切り欠き部61aは、回路基板61の外周側に約180度の間隔で設けられている。各切り欠き部61aには、回路基板61の側面に、例えば錫メッキによって基板側端子63が形成されている。各切り欠き部61aに設けられた基板側端子63は、特に図示しないが、回路基板61上に実装された回路部品62によって構成される回路(図示省略)に電気的に接続されている。
【0034】
上述のように、回路基板61に、略半円状の切り欠き部61aを設けることにより、該切り欠き部61a上に形成された基板側端子63と後述する扁平形電池2の電池側負極端子81とを半田付けする際に、半田が行き渡りやすくなる。これにより、回路基板61の基板側端子63と扁平形電池2の電池側負極端子81とを半田によってより確実に接続することができる。
【0035】
なお、各切り欠き部61aは、偏平形電池2及び回路部3の積層体の側面を覆う上述のチューブ4によって覆われている。これにより、切り欠き部61aに設けられた基板側端子63が露出するのを防止できる。
【0036】
図1及び図4に示すように、回路基板61において回路部品62が実装されていない側の面には、GND端子66(外部端子)、充電端子67及び充電表示信号端子68が設けられている。すなわち、回路基板61には、図1に示すように、一面側に複数の回路部品62が実装されている一方、他面側には各種端子66〜68がまとめて設けられている。また、各種端子66〜68は、偏平形電池2及び回路部3の積層体の側面の一部を覆うチューブ4と重ならないように、該積層体の端面に位置するチューブ4よりも回路基板61の径方向内方側に形成されている。なお、各種端子66〜68の配置は、図4以外の配置であってもよい。
【0037】
回路基板61には、複数のスルーホールが形成されていて、該スルーホール内に充填される金属材料によって、該回路基板61上の回路部品62によって形成される回路(図示省略)と各種端子66〜68とが電気的に接続されている。
【0038】
回路基板61上に回路部品62によって構成される回路(図示省略)とGND端子66とを電気的に接続するとともに、上述のように基板側端子63と回路基板61上の回路(図示省略)とを電気的に接続することにより、GND端子66と基板側端子63とを電気的に接続することができる。これにより、後述するように、基板側端子63に扁平形電池2の電池側負極端子81を接続することにより、扁平形電池2とGND端子66とを電気的に接続することができる。
【0039】
充電端子67は、回路部品62によって構成される回路(図示省略)を介して、後述する電池側正極端子82に電気的に接続されている。電池側正極端子82は、扁平形電池2の正極側である外装缶10に電気的に接続されているため、充電端子67は、外装缶10に電気的に接続されている。これにより、扁平形電池2を充電する際には、充電端子67を介して扁平形電池2に充電することができる。
【0040】
回路基板61は、図1に示すように、扁平形電池2の負極缶20上に、スペーサ71を介して保持されている。具体的には、回路基板61は、スペーサ71によって扁平形電池2の負極缶20から所定の間隔を有するように配置された状態で、負極缶20に取り付けられた後述する電池側負極端子81に半田付けされている。このように、扁平形電池2において変形が生じにくい負極缶20に、回路基板61を固定することで、該扁平形電池2が変形を生じた場合でも回路部3と扁平形電池2との電気的な接続を確保することが可能になる。
【0041】
なお、回路基板61と扁平形電池2の負極缶20との間には弾性接着剤を充填してもよい。扁平形電池2と回路部3との接着に弾性接着剤を用いることで、熱変形量が異なる部材同士を接続する場合でも、接着剤によって部材同士をより確実に接着することができる。
【0042】
スペーサ71は、例えばABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)やフェノール樹脂などの樹脂材料からなる部材であり、略ドーナツ形状を有する。また、スペーサ71は、図1に示すように、扁平形電池2の負極缶20と正極缶10との段差部分を埋めるように、該段差部分に沿って外周側部分が肉厚に形成されている。すなわち、スペーサ71は、その外周側部分が、正極缶10における負極缶20とのかしめ部分(以下、肩部ともいう)まで延びるように形成されている。また、スペーサ71は、扁平形電池2と回路基板61との間に回路部品62が扁平形電池2と接触しない所定の間隔が形成されるような厚みを有する(図1参照)。これにより、扁平形電池2の負極缶20上に回路部品20を配置するためのスペースを形成しつつ、該扁平形電池2が変形を生じても回路部品62が該扁平形電池2に接触して損傷を受けるのを防止できる。
【0043】
スペーサ71には、電池側正極端子82が挿入される貫通穴71aが形成されている。具体的には、図1及び図4に示すように、貫通穴71aは、スペーサ71の周方向に180度異なる位置に2箇所設けられていて、該スペーサ71を厚み方向に貫通している。また、貫通穴71aは、図1に示すように、スペーサ71の外周側の肉厚部分に形成されている。なお、電池側正極端子82は、充電端子67及び正極缶10に電気的に接続されていて、扁平形電池2の充電時に電流が流れる端子として機能する。
【0044】
回路基板61は、略ドーナツ状のスペーサ71の内側に回路部品62が位置するように、該スペーサ71に対して重ね合わされる(図1参照)。これにより、回路部品62が実装された回路基板61を、扁平形電池2に対してコンパクトに配置することができる。また、上述のような構成にすることで、回路部品62が電池ユニット1の外に露出しないため、ユーザー等が回路部品62に触れるのを防止できる。
【0045】
(電池側負極端子)
図3に示すように、扁平形電池2の負極缶20の平面部21上には、電池側負極端子81が取り付けられている。この電池側負極端子81は、導電性の金属材料からなる長方形状の板部材を、長手方向中央部分が厚み方向に膨出するように折り曲げることにより形成されている。すなわち、電池側負極端子81は、扁平形電池2の負極缶20の平面部21に接続される電池接続部81aと、該電池接続部81aの両側に位置する基板接続部81bとが一体形成された部材であり、該電池接続部81aが基板接続部81bに対して前記部材の厚み方向に膨出している。この電池接続部81aが基板接続部81bに対して膨出する高さは、扁平形電池2上にスペーサ71を重ねた状態で該扁平形電池2に取り付けられた電池側負極端子81の基板接続部81bが該スペーサ71上に位置するような高さである。
【0046】
電池接続部81aは、扁平形電池2の負極缶20の平面部21上に溶接によって固定されている。詳しくは、電池接続部81aは、電池側負極端子81の基板接続部81bがスペーサ71上に載置されるように、電池側負極端子81の膨出側の面が負極缶20の平面部21の中央部分に溶接固定される。これにより、電池側負極端子81を扁平形電池2に固定できる。しかも、電池接続部81aによって、基板接続部81bよりも凹んだ凹部が形成されるため、回路基板61に実装される回路部品62を該凹部内に配置することができる。したがって、より多くの回路部品62を回路基板61と扁平形電池2との間に配置することができる。
【0047】
基板接続部81bは、半田によって回路基板61と固定される。詳しくは、図4に示すように、基板接続部81bは、その上に、回路基板61の切り欠き部61a内に設けられた基板側端子63を位置付けた状態で、該基板側端子63と半田付けされる。これにより、基板接続部81bは、回路基板61の側面と接続される。
【0048】
以上の構成では、回路基板61の外周側に複数の切り欠き部61aを設けるとともに、該切り欠き部61a内に形成された基板側端子63と扁平形電池2の電池側負極端子81とをそれぞれ電気的に接続した。これにより、回路基板61の側面で、該回路基板61上に形成された回路と扁平形電池2の電池側負極端子81とを電気的に接続できるため、回路基板を端子の先端部分が挿通した状態で半田付けする構成に比べて、電池ユニット1の厚みを小さくすることができる。すなわち、上述の構成では、回路基板から端子の先端部分が突出したり半田によって厚みが厚くなったりすることがないため、電池ユニット1の厚みをより小さくすることができる。
【0049】
(電池ユニットの製造方法)
次に、上述のような構成を有する電池ユニット1の製造方法について、図5及び図6を用いて説明する。
【0050】
まず、図5に示すように、回路基板61の一面側に、複数の回路部品62を実装して回路部3を形成する。このとき、回路基板61の他面側には、各種端子66〜68を形成する。回路基板61に回路部品62を実装する方法や、各種端子66〜68を形成する方法は従来と同様なので、詳しい説明を省略する。
【0051】
一方、扁平形電池2上に弾性接着剤によってスペーサ71を接着固定するとともに、該扁平形電池2の負極缶20の平面部21に対して電池側負極端子81を溶接によって固定する(図3の状態)。
【0052】
その後、図6に示すように、スペーサ71及び電池側負極端子81が取り付けられた扁平形電池2に対して、回路部3の回路基板61を配置する。そして、回路基板61の切り欠き部61aに設けられた基板側端子63と電池側負極端子81とを半田によって接続する。
【0053】
その後、上述のようにして形成された扁平形電池2及び回路部3の積層体の側面の一部に、チューブ4を嵌めて、加熱することにより、該チューブ4を収縮させる。なお、このチューブ4は、積層体の側面に嵌められた状態で、封口缶20及び回路部3に対応する部分を覆うとともに該積層体の端面の外周側の一部も覆うような長さを有する。
【0054】
これにより、図1に示すような構成の電池ユニット1が得られる。
【0055】
(実施形態1の効果)
この実施形態では、扁平形電池2と回路部3とを有する電池ユニット1において、回路部3の回路基板61に負極側の外部端子を設ける一方、扁平形電池2の正極缶10を電池ユニット1の正極の外部端子として利用する。すなわち、扁平形電池2において、回路基板61とは厚み方向反対側に底部11(平面部)を有する正極缶10が正極の外部端子として機能する。これにより、電池ユニット1の厚み方向の一側に正極の外部端子が設けられ、該電池ユニット1の厚み方向の他側に負極の外部端子が設けられる。よって、扁平形電池の上面及び下面にそれぞれ接触する端子を備えた機器に対して、電池ユニット1を電源として利用することが可能になる。
【0056】
しかも、簡単な構成によって、電池ユニット1の正極の外部端子を得ることができる。
【0057】
また、本実施形態では、扁平形電池2及び回路部3を積層してなる積層体の側面上で、且つ、該扁平形電池2の封口缶20及び回路部3に対応する部分を、チューブ4によって覆う一方、扁平形電池2の外装缶10の周壁部12を露出させる。これにより、電池ユニット1の正極の外部端子として機能する外装缶10を露出させることができ、該外装缶10と機器の端子との接触を確保することができる。
【0058】
しかも、回路基板61において扁平形電池2側の面に回路部品62をまとめて実装することで、電池ユニット1の外部に回路部品62等が露出するのを防止できる。これにより、ユーザーが回路部品62等に直接、触れるのを防止できる。
【0059】
[実施形態2]
図7に、本発明の実施形態2に係る電池ユニット100の概略構成を示す。この実施形態2に示す電池ユニット100の構成は、回路基板61上に凸部111を形成している点で実施形態1の構成とは異なる。以下の説明において、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0060】
図7に示すように、回路部110は、回路基板61上に設けられた略円柱状の凸部111を有する。この凸部111は、扁平形電池の封口缶に対応して回路基板61上に形成されている。ここで、扁平形電池は、例えば図2に示すように、封口缶が外装缶に対して膨出した膨出部を有している。凸部111は、この膨出部に対応して電池ユニット100の外方に突出するように形成されている。
【0061】
凸部111は、鉄などの金属材料からなり、回路基板61側の表面にニッケルメッキ及び錫メッキが施されている。これにより、回路基板61上に凸部111を容易に半田付けすることができる。なお、凸部111はGND端子を兼ねていてもよいし、該凸部111とは別にGND端子を回路基板61に設けてもよい。特に図示しないが、充電端子等の他の端子は、凸部111とは別に回路基板61に設けられる。
【0062】
回路基板61上に上述のような凸部111を設けることで、扁平形電池の膨出部が位置付けられる取り付け部を備えた機器に対して、凸部を機器の取り付け部内に配置することが可能となる。
【0063】
(実施形態2の効果)
この実施形態では、回路部110の回路基板61上に、凸部111を設けることにより、電池ユニット100の外形を扁平形電池と同様の形状にすることができる。これにより、扁平形電池の膨出部が位置付けられる取り付け部を備えた機器に対して電池ユニット100を取り付けて、電源として利用することができる。
【0064】
[実施形態3]
図8に、本発明の実施形態3に係る電池ユニットにおいて、扁平形電池2にスペーサ121及び電池側負極端子81を取り付けた状態を示す。この実施形態3に係る電池ユニットは、スペーサ121の一部を電池側負極端子125として利用する点で実施形態1の構成とは異なる。以下の説明において、実施形態1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0065】
図8に示すように、スペーサ121は、円弧状のスペーサ片122,123と円弧状の電池側負極端子125とを有する。スペーサ片122,123は、円の一部を構成するように、互いの端部が所定の間隔を空けて配置される。スペーサ片122,123の間には、電池側負極端子125が、該スペーサ片122,123とともに円環を形成するように、それぞれ配置されている。これにより、スペーサ片122,123及び電池側負極端子125によって、図8に示すような円環が形成される。また、電池側負極端子125は、スペーサ片122,123と同等の厚みを有する。したがって、電池側負極端子125は、スペーサ121の一部として機能する。
【0066】
電池側負極端子125は、その厚み方向と面方向とで導電性が異なる異方性導電ゴムによって構成される。具体的には、電池側負極端子125は、厚み方向にのみ導電性を有し、面方向には絶縁性を有する材料からなる。例えば、電池側負極端子125は、シリコンゴムなどの絶縁性のゴム材料内に、厚み方向に延びる複数の金属細線が埋め込まれた部材によって構成される。これにより、電池側負極端子125は、扁平形電池2の負極缶20と回路部3の回路基板61とを電気的に接続する一方、負極缶20の平面部21の面方向には絶縁性を有する。
【0067】
なお、本実施形態では、電池側負極端子125を、異方性導電ゴムによって構成しているが、この限りではなく、異方性の導電性を有する材料であれば他の材料であってもよい。
【0068】
(実施形態3の効果)
この実施形態では、スペーサ121を、スペーサ片122,123及びスペーサとしても機能する電池側負極端子125によって構成したため、スペーサ及び電池側負極端子をコンパクトな構成によって実現できる。しかも、電池側負極端子125を、異方性導電ゴムによって構成することで、扁平形電池2の負極缶20と回路部3の回路基板61とを電気的に接続しつつ、該負極缶20の平面部21の面方向に存在する部品に対して電流が流れるのを防止できる。したがって、電池側負極端子125をスペーサとして用いつつ、短絡等の発生を防止することができる。
【0069】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0070】
前記各実施形態では、扁平形電池2の電池側負極端子81によって回路基板61を支持しつつ、該回路基板61の切り欠き部61a内に設けられた基板側端子63と電池側負極端子81とを半田によって接続している。しかしながら、扁平形電池2の端子構造は、該扁平形電池2の負極缶20と回路基板61とをそれぞれ電気的に接続可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0071】
前記各実施形態では、回路基板61の切り欠き部61aの形状を略半円状にしているが、円の一部または全部を構成する形状であってもよいし、矩形状など、円以外の形状であってもよい。
【0072】
前記各実施形態では、電池ユニット1の各種端子66〜68を矩形状に形成しているが、円形状など、他の形状であってもよい。
【0073】
前記各実施形態では、回路基板61は扁平形電池2の外形と同等の形状及び大きさを有するが、この限りではなく、回路基板61は、扁平形電池2の上面及び下面よりも小さくても良いし、大きくても良い。
【0074】
前記各実施形態では、回路部3及び扁平形電池2からなる積層体の側面の一部をチューブ4で覆っているが、この限りではなく、チューブ4によって覆わなくてもよい。こうすることで、チューブ4を設けない分、電池ユニットの小型化を図れる。また、前記実施形態のようなチューブを用いるのではなく、前記積層体の側面の一部を樹脂材料によってコーティングしてもよい。
【0075】
前記各実施形態では、回路部3を扁平形電池2の封口缶である負極缶20側に設けているが、この限りではなく、回路部3を外装缶である正極缶10側に配置してもよい。さらに、回路部3の回路部品62を、回路基板61における扁平形電池2側とは反対側の面に実装してもよい。
【0076】
前記各実施形態では、外装缶を正極缶10とし、封口缶を負極缶20としているが、この限りではなく、外装缶を負極缶とし、封口缶を正極缶としてもよい。この場合には、電池側負極端子81を電池側正極端子とし、電池側正極端子82を電池側負極端子とすればよい。また、この場合には、負極缶が、電池ユニットの負極の外部端子として機能する。
【0077】
前記各実施形態では、扁平形電池2をリチウムイオン電池として構成している。しかしながら、扁平形電池2は、充電可能な2次電池であれば、リチウムイオン電池以外の電池であってもよい。また、扁平形電池2は、1次電池であってもよい。扁平形電池2が1次電池の場合には、回路部として例えばキャパシタなどが実装される。扁平形電池2が1次電池の場合には、充電に必要な充電端子67及び充電表示信号端子68が不要になるため、図9に示すように、基板61に円形状の負極端子131(他方の極性の外部端子)を形成すればよい。なお、図9において、図4と同じ構成には同じ符号を付している。
【0078】
前記各実施形態では、電池ユニット1,100内に、充電回路を構成する回路部品62を配置している。しかしながら、充電回路を構成する回路部品62を電池ユニットの外部に設けてもよい。この場合、電池ユニットに充電端子67及び充電表示信号端子68が不要になるため、電池ユニットの端子構造は、上述の図9に示す構成となる。
【0079】
前記実施形態2では、電池ユニット100が扁平形電池と同様の外形を有するように、回路基板61上に設けた凸部111によって、電池ユニット100の凸部を形成しているが、この限りではなく、回路基板61と同じ材料によって凸部を形成してもよい。この場合には、凸部と回路基板61とが同じ熱膨張率になるため、電池ユニット全体の変形を制御しやすい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明による電池ユニットは、回路が形成された基板と小型機器に装着される略円形状の扁平形電池とを備えた構成に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9