(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0022】
図1は,傾斜面1に落石,地表崩壊を防止するためのロープ(ワイヤ)4が縦,横(場合によっては斜め)に張設されている様子を示している。ロープ4には必要に応じて金網(図示略)が取付けられる。傾斜面1の内部は岩盤(礫土)3であり,岩盤3は表土層(粘土質層,土砂層)2によって覆われている。岩盤3の一部または岩が表土層2から剥き出している場合もある。
【0023】
ロープ4の両端がアンカー装置5によって止められている。ロープ4の交叉部は互いに締結されて,かつアンカー装置5に止められている。
【0024】
図2および
図3は第1実施例を示すもので,
図2は表土層2内に埋込まれているアンカー装置5の全体を示すものである。
図3は表土層2および岩盤3内に埋込まれているアンカー装置5の全体を示すものである。アンカー装置5はその全体が表土層2内に埋込まれて用いられることもあるし(
図2),表土層2のみならず表土層2の下層の岩盤3にまでわたって埋込まれる場合もある(
図3)。
【0025】
アンカー装置5は,アンカーパイプ10および上記アンカーパイプ10の下部に連続してアンカーパイプ10と同方向にのびるアンカーロッド20を含む。詳細は後述するが,アンカーパイプ10は主に傾斜面1(
図1参照)に沿う方向の力(せん断荷重)に対抗するために用いられる。アンカーロッド20は主に引抜き方向(表土層2に垂直な方向)の力(引抜き荷重)に対抗するために用いられる。アンカーパイプ10およびアンカーロッド20を備えるアンカー装置5は,傾斜面1に沿う方向および引抜き方向のいずれの力に対しても優れた耐力を発揮する。
【0026】
図2および
図3を比較して,アンカーロッド10には標準的な長さのもの(たとえば2m程度)が用いられる。他方,アンカーロッド20の長さ(後述するアンカーロッド孔6の長さ)は,アンカー装置5が設置される地層(表土層2の層厚,岩盤3の有無等)に応じて適宜選択される。たとえば,アンカーロッド20が表土層2内に埋込まれる(定着される)場合には比較的長さの長いアンカーロッド20が用いられる(
図2)。アンカーロッド20が岩盤3内に埋込まれる(定着される)場合には比較的長さの短いアンカーロッド20を用いることができる(
図3)。
【0027】
アンカーパイプ10は鋼製またはステンレス製で,円筒状であり,その上端および下端は開口し,内部が中空である。アンカーパイプ10はその上端部が表土層2の表面(地表)よりも所定長さだけ上方に突出する程度まで埋め込まれる。表土層2の上方に突出しているアンカーパイプ10の上端部に貫通孔があけられており,この貫通孔にピンボルト11が通される。表土層2の表面とピンボルト11との間においてアンカーパイプ10の上端部にロープ4が止められる(たとえば掛けられる)。アンカーパイプ10に掛けられたロープ4のアンカーパイプ10からの抜け(脱落)が,ピンボルト11によって防止される。アンカーパイプ10の上端開口はキャップ12によって覆われる。
【0028】
アンカーロッド20は円柱状の鋼棒であり,その先端(下端)が斜めにカットされている(斜めにカットされている部分を符号21で示す)。鋼棒に代えて高強度樹脂棒を用いることもできるし,比較的径の太いワイヤロープをアンカーロッド20として用いることもできる。ワイヤロープをアンカーロッド20として用いる場合には,ワイヤロープの両端のばらけを防止するために,ワイヤロープの両端には端末定着具(たとえばアルミ合金異形管)が固着される。
【0029】
アンカーロッド20の外径はアンカーパイプ10の内径よりも小さい。詳細は後述するが,アンカーロッド20はアンカーパイプ10の上端開口からアンカーパイプ10の中空内部に挿入され,アンカーパイプ10の中空内部を通してアンカーパイプ10の下部に至る。アンカーパイプ10の下方の表土層2または岩盤3にアンカーロッド孔6があけられ,このアンカーロッド孔6にモルタル,セメント等の凝固剤60が充填される。アンカーパイプ10の中空内部を通して下端開口から外に出たアンカーロッド20が凝固剤60中に埋没するようにしてアンカーロッド孔6内に入れられる。凝固剤60が硬化することでアンカーロッド20は表土層2または岩盤3に定着(固定)する。アンカーロッド20のアンカーロッド孔6内に入る部分の表面にネジ溝を形成し,アンカーロッド20に凝固剤60が付着しやすくしてもよい。
【0030】
図4はアンカーパイプ10とアンカーロッド20の接続部分を拡大して示す断面図である。
【0031】
アンカーパイプ10の下端部において,アンカーパイプ10の内面に円筒状のシュー40が溶接によって固定されている。シュー40の外径はアンカーパイプ10の内径とほぼ一致している。
図4に示すようにシュー40は,その全体をアンカーパイプ10内に収めた状態でアンカーパイプ10の下端部に固定してもよいし,その一部(下部)をアンカーパイプ10の下端開口から外に突出させた状態でアンカーパイプ10に固定してもよい。
【0032】
シュー40は次の2つの目的のために設けられている。
【0033】
その一つは,ハンマーないしドリル(図示略)による表土層2(岩盤3にまで至ることもある)へ穴の形成と同時に,アンカーパイプ10を表土層2中に埋設するためである。アンカーパイプ用の穴を表土層2にあけるためのハンマーはアンカーパイプ10の中空内部を通されて用いられ,このハンマーの先端に設けられるビットに上記シュー40の上端面に係合する凸部が形成されている。この凸部がシュー40の上端面を押すことで,穴を穿孔すると同時にこの穴にアンカーパイプ10を埋設することができる。
【0034】
他の一つは,アンカーパイプ10をその引抜き方向への力に対して対抗させるためである。これについての詳細な説明は後述する。
【0035】
アンカーロッド20の上端部に筒形頭部30が固定されている。
図5は筒形頭部30を拡大して示す斜視図である。
【0036】
筒形頭部30は円盤状の底板部31と,底板部31の周囲から立ち上がる円筒状の側面部32を持つ。筒形頭部30の上端は開口している。筒形頭部30(側面部32)の外径はアンカーパイプ10の内径とほぼ等しい。筒形頭部30の底板部31の中央に貫通孔33があけられており,この貫通孔33にアンカーロッド20の上端部が入れられる。底板部31を上下から挟むようにして2つのナット51,52がアンカーロッド20の上端部にねじ止めされ(アンカーロッド20の上端部にはねじ溝が形成されている),これによりアンカーロッド20の上端部に筒形頭部30が固定される。ナット51,52によるねじ止めに代えて,溶接によってアンカーロッド20の上端部に筒形頭部30を固定してもよい。
【0037】
筒形頭部30の上端開口に近い内面に,互いに平行にのびる2本の吊り上げ丸鋼34が間隔をあけて溶接によって固定されている。吊り上げ丸鋼34の詳細については後述する。
【0038】
上端部に筒形頭部30が固定されたアンカーロッド20が,その下端21から,アンカーパイプ10の中空内部に挿入される。ここでアンカーパイプ10の下端部に固定されているシュー40は,その内径がアンカーロッド20の上端部の筒形頭部30の外径よりも狭く,かつアンカーロッド20の外径よりも広い。アンカーロッド20はシュー40の内側を通過して凝固剤60が充填されているアンカーロッド孔6に入る。アンカーロッド20の挿入を続けると,筒形頭部30(底板部31)がアンカーパイプ10の下端部に固定されているシュー40の上端面(上縁部)に当接し,ここでアンカーロッド20の挿入がストップする。
【0039】
アンカーパイプ10に固定されているシュー40はその内径が筒形頭部30の外径よりも狭いので,アンカーパイプ10に引抜き方向(
図2,
図3,
図4において上方向)の力が加わると,シュー40の上端面が筒形頭部30の底板部31を引抜き方向(上方向)に押すことになる。ここで筒形頭部30は上述のようにアンカーロッド20の上端部に固定されており,アンカーロッド20は凝固剤60によって表土層2中(
図2)または岩盤3中(
図3)に定着されている。このため,アンカーパイプ10に引抜き方向の力が加わってもアンカーパイプ10(アンカー装置5)は表土層2から抜け出しにくい。
【0040】
このように,シュー40は,アンカーパイプ10をその引抜き方向への力に対して対抗させるためにも設けられている。
【0041】
アンカー装置5の設置工程の一例を,以下詳細に説明する。
【0042】
径を縮小/拡大可能な拡縮ビットが先端に固定されたエアハンマーを備える掘削機を表土層2上に概略垂直に設置して表土層2に穴をあける。エアハンマーはアンカーパイプ10の中空内部に挿入されて用いられる。上述したように,エアハンマーの先端のビットにはアンカーパイプ10に固定されているシュー40の上端面に係合する凸部が形成されており,この凸部がシュー40の上端面を押すことで,エアハンマーによる表土層2の掘削と同時にアンカーパイプ10が次第に表土層2中に埋込まれる。アンカーパイプ10の上端部が所定長さだけ表土層2から突出する程度の深さまで穴があけられる。
【0043】
アンカーパイプ用の穴あけに用いたエアハンマーを引抜き,これに代えて標準径ビットが先端に固定されたエアハンマーを設置する。このエアハンマーも表土層2に埋込まれているアンカーパイプ10の中空内部に挿入される。アンカーパイプ10の下端開口を通して外に出たビットが,アンカーパイプ10の下方の表土層2をさらに掘削する。表土層2中にアンカーロッド孔6があく(
図2)。
【0044】
岩盤3にアンカーロッド孔6をあける場合には,エアハンマーに代えて,ハンドハンマーを用いて,表土層2にあけるときのアンカーロッド孔6(
図2)よりも短い長さのアンカーロッド孔6を岩盤3中にあけてもよい(
図3)。これは,表土層2に比べて岩盤3は硬いので,アンカーロッド孔6およびそこに入れられるアンカーロッド20が短くても(アンカーロッド20の周囲の凝固剤60の表面積が小さくても),引抜き方向の力に対して比較的大きな抵抗力を得ることができるからである。岩盤3にアンカーロッド孔6をあける場合には,アンカーパイプ10の中空内部にあらかじめセンタリングスペーサーを挿入し,このセンタリングスペーサーを介してハンドハンマーをアンカーパイプ10中に挿入してもよい。アンカーパイプ10の中空内部の中心とアンカーロッド孔6の中心とを一致させることができる。
【0045】
エアハンマー(ハンドハンマー)を引抜き,アンカーロッド孔6に凝固剤(グラウト材)(モルタル,セメントなど)60を注入する。凝固剤60をアンカーロッド孔6に導くためのガイドパイプをアンカーパイプ10内に挿入し,このガイドパイプを通じて,またはこのガイドパイプ中に通されるホースを通じて,アンカーロッド孔6内に凝固剤60を注入してもよい。凝固剤60入りのカプセル(セメントカプセル,樹脂カプセルなど)を,ガイドパイプを通じてアンカーロッド孔6に入れてもよい。
【0046】
凝固剤60が充填されたアンカーロッド孔6にアンカーロッド20を挿入する。アンカーロッド20をアンカーロッド孔6に挿入するときに,アンカーロッド20の上端部に固定されている筒形頭部30に設けられている吊り上げ丸鋼34が用いられる。
【0047】
図6(A)〜(C)を参照して,先端がT形に形成されているハンガーロッド71が用意される。ハンガーロッド71のT形先端(鉤部)71aが筒形頭部30の上端開口から筒形頭部30内に入れられる。このとき,ハンガーロッド71のT形先端71aは吊り上げ丸鋼34と平行とされる(
図6(A),(B))。ハンガーロッド71を90度回転させるとT型先端71が吊り上げ丸鋼34と交差する(
図6(C))。この状態で,ハンガーロッド71を用いて,アンカーロッド20をアンカーパイプ10の中空内部に挿入していく。ハンガーロッド71(アンカーロッド20)を上下させつつ,アンカーロッド20をアンカーロッド孔6内に徐々に挿入するとよい。アンカーロッド孔6内で凝固剤60が攪拌されるのでアンカーロッド20と凝固剤60との定着が良好なものになる。
【0048】
アンカーロッド20を挿入しつづけると,アンカーロッド20の上端部に固定されている筒形頭部30(底板部31)がアンカーパイプ10の下端部に固定されているシュー40の上端面に当接する。ハンガーロッド71を90度回転させることでT形先端71aと吊り上げ丸鋼34との交差を外し,その後ハンガーロッド70を抜き取る。アンカーロッド20は凝固剤60によって表土層2中または岩盤3中に定着(固定)する。
【0049】
表土層2上に突出しているアンカーパイプ10の上端部にロープ4の端部を掛ける,固定するまたは締結する。たとえば,ロープ4の端部にループを形成し(ロープ4の端部を折り返して締結具で止める),このループをアンカーパイプ10の上端部に掛ける。ピンボルト11をアンカーパイプ10の上端部にあけられている貫通孔に入れて固定する。アンカーパイプ10の上端開口にキャップ12を被せる。ロープ4の端部ないし交差部を止めるアンカー装置5が完成する。
【0050】
アンカーパイプ10はその外径が比較的大きいので,表土層2の土圧がアンカーパイプ10の全周にわたって大きく作用する。このためロープ4およびロープ4を介してアンカーパイプ10に傾斜面1に沿う方向の力(せん断荷重)が加わってもアンカーパイプ10に傾きは生じにくい(引張抵抗が大きい)。これに加えて,アンカーパイプ10の下部に連続するアンカーロッド20が凝固剤60によって表土層2中または岩盤3中に定着しているので,ロープ4およびロープ4を介してアンカーパイプ10に引抜き方向(表土層2に垂直な方向)の力が加わってもアンカーパイプ10は表土層2から抜けにくい(引抜抵抗が大きい)。このように,アンカー装置5は大きな引張抵抗と大きな引抜抵抗とを兼ね備えており,優れた耐力を発揮する。
【0051】
アンカーパイプ10の設置とアンカーロッド20の設置を同時に(連続して)行うことは必ずしも必要とされず,アンカーパイプ10を設置し,後日,アンカーロッド20を設置することも可能である。このようないわゆる後施工によってアンカー装置5を完成させることができるので,現場における急な作業工程の変更(たとえば,アンカーパイプ10のみの設置を予定していたところ,現場において引抜き方向荷重への対処が必要とされることが発覚したときなど)にも柔軟に対処することができる。また,アンカーパイプ10の下端部とアンカーロッド20の上端部を金具等を用いてねじ止め等する必要もないので,後施工によるアンカーロッド20の設置を簡便に行うことができる。
【0052】
図7は他の実施例を示すもので,アンカーパイプ10とアンカーロッド20との接続部分を拡大して示している。
【0053】
アンカーパイプ10の下端部にテーパ部材15が固定されている。テーパ部材15はその内部が中空であり,その外形も,中空内部も,先細の形状を有している。テーパ部材15の上端開口15aおよび下端開口15bはいずれも円形で,上端開口15aの径はアンカーパイプ10の内径にほぼ一致している。上端開口15aの直径が大きく,下端開口15bの直径はそれよりも小さい。下端開口15bはアンカーロッド20が通過する大きさを持つ。
【0054】
アンカーロッド20の上端部に固定された筒形頭部30Aもその側面部32Aがテーパ状の形状を有しており,上述のテーパ部材15の先細の中空内部に合致した外形を持つ。筒形頭部30Aの側面部32Aの外面全体にテーパ部材15の内面全体が係合する。アンカーパイプ10に引抜き方向の力が加わっても,アンカーロッド20の筒形頭部30Aがアンカーパイプ10の下端開口(テーパ部材15の下端開口15b)から抜け出てしまうことはなく,アンカーパイプ10の表土層2上への引き抜きが阻止される。
【0055】
アンカーロッド20の上端部に固定される頭部は,上述した筒形頭部30,30A以外に,様々な形状を持つことができる。
【0056】
図8に示す頭部30Bは,円盤状プレート31と,円盤状プレート31の上面に両端が溶接された,弧状に曲げられた吊り上げ丸鋼35から構成されているものである。頭部30B(円盤状プレート31)の径はシュー40の内径よりも大きい。円盤状プレート31の底面にシュー40の上端面が係合する。吊り上げ鋼35がハンガーロッド71のT字先端71a(
図6参照)に掛けられる。
【0057】
図9に示す頭部30Cは円盤状プレート31のみから構成され,吊り上げ丸鋼を持たないものである。アンカーロッド20の上端部に孔22が貫通してあけられており,この貫通孔22にハンガーロッド71の先端(この場合,T字先端でなくL字先端の鉤部であるのが好ましい)が掛けられる。
【0058】
アンカーパイプ10の下端部にテーパ部材15が固定されているとき(
図7参照)に用いられるアンカーロッド20の上端部に固定される頭部についても,様々な形状のものを採用することができる。
【0059】
図10に示す頭部30Dは,円盤状プレート31と,円盤状プレート31の上面に両端が溶接され,矩形に曲げられた吊り上げ丸鋼36から構成されているものである。円盤状プレート31の外径がテーパ部材15の中空内部の下端開口の径よりも大きい。円盤状プレート31の側縁にテーパ部材15の内面が係合する。
【0060】
図11に示す頭部30Eは,円盤状プレート31のみから構成されているものである。
【0061】
図12は第2実施例のアンカー装置5Aを示している。
【0062】
上述した第1実施例のアンカー装置5は,アンカーロッド20の上端部に固定された頭部30,30A,30B,30C,30Eに,アンカーパイプ10の下端部に固定されたシュー40またはテーパ部材15を係合させることで,アンカーパイプ10の引抜きを阻止している。第2実施例のアンカー装置5Aは,アンカーロッド20の上端部に固定されたまたは上端部と一体に形成された頭部に,アンカーパイプ10の上端部を係合または係止することで,アンカーパイプ10の引抜きを阻止する。
【0063】
図12を参照して,アンカー装置5Aを構成するアンカーロッド20は,その上端部に環状頭部20Aが連続して形成されている。地表上に出ているアンカーパイプ10の上端部の貫通孔に通されるピンボルト11が,上記アンカーロッド20の環状頭部20Aに通される。第2実施例において,アンカーロッド20の長さはアンカーパイプ10の長さよりも長く,アンカーパイプ10の中空内部のほぼ全体にわたってその内部に位置する。アンカーパイプ10の下端開口から外に出たアンカーロッド20の部分が凝固剤60が充填されたアンカーロッド孔6内に入れられるのは第1実施例と同様である。
【0064】
アンカーロッド20は凝固剤60によって表土層2中(または岩盤3中)に定着しているので,引抜き方向(表土層2に垂直な方向)の力が加わっても抜けは生じにくい。このようなアンカーロッド20の上端部の環状頭部20Aがピンボルト11によってアンカーパイプ10の上端部に止められている。したがって,アンカーパイプ10も引抜き方向(表土層2に垂直な方向)の力が加わっても抜けが生じにくい。第1実施例のアンカー装置5と同様に,アンカー装置5Aも大きな引張抵抗と大きな引抜抵抗とを兼ね備え,優れた耐力を発揮する。
【0065】
図13に示すように,アンカーロッド20の頭部はジョー型の頭部20Bであってもよい。
図14に示すように,アンカーロッド20としてワイヤロープを用いる場合には,その端部を折り返してループ状頭部20Cを形成して折返し部分を締結具22で止めてもよい。アンカーロッド20の頭部20B,20Cが,ピンボルト11によってアンカーパイプ10の上端部に止められる。
【0066】
さらに,
図15に示すように,アンカーロッド20の上端部の環状頭部20Aに,アンカーパイプ10の上端開口の径を超える長さを持つピン13を通し,このピン13の両端部分をアンカーパイプ10の上端開口の縁部上に置くようにしてもよい。アンカーロッド20は引抜き方向(表土層2に垂直な方向)の力が加わっても抜けが生じくく,このアンカーロッド20の環状頭部20Aに通されたピン13によってアンカーパイプ10の上端開口の縁部がその上方から押さえられているので,アンカーパイプ10も抜けが生じにくい。アンカーロッド20の上端部の頭部は,環状頭部20Aに代えて,ジョー型頭部20Bまたはループ状頭部20Cであってもよい。
【0067】
図16に示すように,アンカーロッド20の上端に,アンカーロッド20と垂直に延び,アンカーパイプ10の上端開口の径を超える長さを持つバー20Dを溶接し,このバー型頭部20Dをアンカーパイプ10の上端開口の縁部上に置くようにしてもよい。
【0068】
さらに,
図17に示すように,アンカーパイプ10の上端開口に被せられるキャップ12を,アンカーロッド20の頭部に止めるようにしてもよい。
図17に示す例では,キャップ12の底面にU型金具14が固定され,このU型金具14がアンカーロッド20の環状頭部20Aに通されている。キャップ12によってアンカーパイプ10の上端縁部が押さえられるので,アンカーパイプ10の抜けは生じにくい。