特許第5878635号(P5878635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878635
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】家具ヒンジの可動取り付けプレート
(51)【国際特許分類】
   E05D 3/18 20060101AFI20160223BHJP
   E05D 7/10 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   E05D3/18 A
   E05D7/10
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-531042(P2014-531042)
(86)(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公表番号】特表2014-526626(P2014-526626A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】AT2012000216
(87)【国際公開番号】WO2013040610
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2014年7月24日
(31)【優先権主張番号】A1359/2011
(32)【優先日】2011年9月21日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥバッチ,フレディ
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−139765(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02070129(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 1/00−9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジアーム(11)と、ヒンジカップ(12)と、前記ヒンジアーム(11)に可動に取り付けられ、少なくとも二つのレバー(13)によって前記ヒンジアーム(11)に連結され、別のレバー(15)によって前記ヒンジカップ(12)に連結される中間部分(10)と、を備えた家具ヒンジ(1)と、
前記家具ヒンジ(1)を固定するための取付装置(9)と、
を備え、
前記取付装置(9)は、
家具枠体の側壁(2)に固定されるベースプレート(8)と、
前記ヒンジアーム(11)前記取付装置(9)に固定する固定装置(5)と、
を含み、
前記固定装置(5)は前記ベースプレート(8)に可動に取り付けられており、
前記取付装置(9)は接続要素(6)を有し、前記接続要素(6)は、少なくとも一つのヒンジレバー(7a、7b)によって前記ベースプレート(8)に対して可動に取り付けられ、かつ、前記中間部分(10)に固定可能であり
前記固定装置(5)は、前記ヒンジレバー(7a、7b)によって前記ベースプレート(8)に対して可動であることを特徴とする構造体
【請求項2】
前記ヒンジアーム(11)は前記固定装置(5)によって前記取付装置(9)に解除可能に固定されることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記接続要素(6)は、前中間部分(10)の上側に固定されることを特徴とする請求項1または2に記載の構造体
【請求項4】
前記接続要素(6)は、前記家具ヒンジ(1)の前記中間部分(10)にクリップ留めできることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の構造体
【請求項5】
前記接続要素(6)は、前記家具ヒンジ(1)の取り付け状態において前記中間部分(10)に接するか、または少なくとも部分的に前記中間部分(10)を包囲するプレート形状部材を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の構造体
【請求項6】
前記接続要素(6)は、2つのレバー(18a、18b)の形態であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の構造体
【請求項7】
前記固定装置(5)は、略プレート形態であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の構造体
【請求項8】
前記固定装置(5)は、前記ヒンジレバー(7a、7b)にヒンジ式に接続されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の構造体
【請求項9】
前記固定装置(5)は、少なくとも一つの別のヒンジレバー(26a、26b)によって、前記ベースプレート(8)に対して可動に取り付けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の構造体
【請求項10】
前記ベースプレート(8)には、前記ヒンジレバー(7a、7b)が回転可能に取り付けられた、少なくとも一つの取付ラグ(23a、23b)が配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の構造体
【請求項11】
前記少なくとも一つのヒンジレバー(7a、7b)は、ギヤまたはギヤ部分(32)によって、前記ベースプレート(8)に回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の構造体
【請求項12】
前記ベースプレート(8)には、前記ギヤまたはギヤ部分(32)が噛合う少なくとも一つの歯型バー(33)が配置されていることを特徴とする請求項11記載の構造体
【請求項13】
前記ベースプレート(8)に対する前記固定装置(5)の動作をガイドするために、前記ベースプレート(8)にガイド装置(34、35)が配置されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の構造体
【請求項14】
前記ヒンジレバー(7a、7b)と前記接続要素(6)、前記ヒンジアーム(11)に可動に取り付けられ、かつ、少なくとも二つのレバー(13)によって前記ヒンジアーム(11)に連結された中間部分(10)に、前記接続要素(6)を固定するために適合された寸法であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の構造体
【請求項15】
家具枠体と、前記家具枠体に旋回可能に取り付けられた家具扉(3)と、を含んだ家具であって、
請求項1から14のいずれか1項に記載の構造体を含み、前記取付装置(9)は前記家具枠体に取り付けられており、前記家具ヒンジ(1)は前記家具扉(3)を開閉させるために前記取付装置(9)に固定可能であることを特徴とする家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具ヒンジを固定するための取り付け装置に関する。この装置は、家具部分、特に家具枠体の側壁に固定されるベースプレートと、ヒンジを取付装置に好適には解除可能に固定する固定装置と、を含んでおり、固定装置はベースプレートに可動に取り付けられる。
【背景技術】
【0002】
閉位置から開位置へと、ヒンジ手段による互いに対して旋回可能に接続された家具部分の旋回動作では、基本的に、隣接する家具部分との衝突が発生するリスクが存在する。これは特に、ヒンジ手段によって旋回可能であり、家具枠体を閉じるために提供され、開閉時に隣接する家具扉またはその他の突出した家具部分と衝突する可能性がある家具扉を含んでいる。
【0003】
この問題を解決するため、AT369107は、特別に製造された広角ヒンジを開示しており、これによって、家具扉の開動作中に家具枠体の端縁部から扉を旋回させるために持ち上げ動作を達成することが可能である。この場合には、互いに前後に配置され、かつ、ヒンジアームに取り付けられたピンが可動に取り付けられている2つのスロットを有する取付ハウジングが家具枠体に固定されており、これによってヒンジアームは移動可能に、および部分的に旋回可能にガイドされる。この状況では、互いに対して可動な2つの歯型ラックと噛合うギヤ(歯車)がヒンジアームを駆動し、それによって後者が家具枠体に固定された取付ハウジングに対して移動し、家具扉のさらに大きな開動作が達成される。
【0004】
DE4318607も広角ヒンジを開示しており、隣接する家具扉との衝突を回避するよう、開動作中に扉は家具枠体から離れるように旋回される。家具枠体に固定された取付ハウジング内には、ヒンジアームに接続されたピンが移動可能に取り付けられた複数のスロットが配置されており、ヒンジアームを駆動するよう、ヒンジカップ内に引き込み手段が固定されており、この引き込み手段は一定のストレス状態(応力印加状態)に保持される。
【0005】
前述のヒンジは、構造が複雑であるため故障しやすいという欠点を有する。このようなヒンジは全ての家具扉に必要ではないので、この種のヒンジの製造に関与する複雑性とコストは過剰である。
【0006】
増加した開動作を達成する別な可能な方法は、WO2006/053364に開示されている。ここで解説されているヒンジは、ヒンジカップとヒンジアームとの間に中間部分を有しており、この中間部分は2つのレバーによってヒンジアームに確実に連結され、これらのレバーは、中間部分とヒンジアームの両方に適切なスピンドルによって回転可能に取り付けられる。ヒンジアームに対して可動な中間部分は、家具扉が家具枠体から外れる方向に増加した動作成分を有するようにしている。
【0007】
DE3407174C2は、2つの部分からなるヒンジアームによる増加した開動作が可能なクロスリンクヒンジも開示している。このヒンジアームの下方部分は、家具枠体の取付プレートに固定される。下方部分の歯型バー(棒体)と噛合うギヤ部分を有するヒンジレバーが、ヒンジアームの可動に取り付けられた上方部分に配置されている。このヒンジレバーはクロスリンクヒンジのヒンジアームに接続されており、よってヒンジアームと上方部分との動作連結を可能にする。増加した開ストローク(往復)運動はクロスリンクヒンジにのみ可能であるという欠点に加えて、ヒンジアームは、複雑な固定装置で複雑な構造体のベースプレートを接続せねばならず、よって組み立てが特に複雑で費用がかかる。さらにこの装置は、可動に取り付けられた別の小型部品が、ヒンジに既に存在し、かつ、互いに対して可動な部品に加えられるという欠点を有しており、よってヒンジの複雑性と故障の可能性を増加させる。
【0008】
これらのタイプのヒンジの欠点は、それらが特定の使用目的のためにのみ設計されていることであり、よってヒンジ製造者と組立作業者は、利用できるすべての可能なタイプのヒンジを常に用意しなければならず、非常に複雑で費用がかかる。
【0009】
しかしながら、ヒンジから独立し、かつ、非常に小さい開動作の場合に、衝突の問題を解決できる装置が望まれ、その装置は多くの商業的に入手可能なヒンジと共に利用できる。
【0010】
他方、ヒンジとリンクする開動作の増加程度は多くの使用形態において小さすぎる。この状況では、開動作を追加的に増加させる装置の提供が必要であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明の目的は、前述の欠点を回避し、ヒンジによって旋回可能な家具部分の場合に衝突問題の解決策を提供する、ヒンジ自体から可能な限り独立した装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
家具ヒンジが固定される取付装置は、この目的を達成するために提供される。取付装置自体は、例えばネジまたはその他の固定手段によって家具部分に固定されるベースプレートを有する。特にこのベースプレートは、家具枠体の側壁に固定され、この場合には、家具ヒンジは家具扉の開閉のために提供される。
【0013】
取付装置は、ヒンジが取付装置に固定される固定装置をさらに含んでいる。好適にはここでは、ヒンジが解除可能に固定され、よって取付装置が既にそこに固定されているとき、ヒンジの簡単な装着および取り外しが可能になる。ヒンジは取付装置に装着部分で固定される。この装着部分は、例えばヒンジのヒンジアームであってもよい。
【0014】
固定装置自体はベースプレートに可動に取り付けられ、よって固定装置に取り付けられたヒンジもベースプレートに可動に取り付けられる。
【0015】
取付装置はベースプレートに可動に取り付けられた接続要素をさらに含んでおり、この接続要素は少なくとも一本のヒンジレバーによって可動である。固定装置に加え、接続要素は取付装置にヒンジを接続するために提供される。この目的のため、接続要素はヒンジの開閉動作において可動な部分に固定できる。ヒンジに接続された状態では、接続要素は、ヒンジの開閉動作時に動かされるヒンジの部分に固定されており、その動きの最中にヒンジの可動部分と共にも動く事実により、接続要素と、接続要素に固定され得るヒンジの可動部分との動作は連結される。
【0016】
固定装置がヒンジレバーによってベースプレートに対して可動であり、接続要素がヒンジレバーによってベースプレートに可動に取り付けられる場合に限り、ヒンジの動作に連動する接続要素の動作は固定装置に伝達される。固定装置の動作の範囲と方向は、固定装置の動作を制御する接続要素の動作に依存している。
【0017】
ヒンジを取り付けた状態では、ヒンジは固定装置の動きによってベースプレートに対して固定装置と共に移動し、その動作は接続要素によってガイドおよび制御される。したがって、装着されたヒンジの開ストローク運動中に、ヒンジの可動な部分が家具枠体内で外側に移動するなら、その連結効果は、固定装置と固定装置に固定されたヒンジも外側に移動することでヒンジの開ストローク運動が増加することを意味する。この場合には、故障し易い複雑な引き込み手段またはスロット内にガイドされるピン構造体が存在しなくとも、その少なくとも一つのヒンジレバーがその動作の連結(連動)およびガイドの構造的に単純な方法を提供する。
【0018】
取付装置と取付装置に固定されるヒンジは分離した部材であるので、増加した開ストローク運動はヒンジから独立して取付装置によって達成される。それ自体が既に増加した開ストローク運動を有するヒンジが使用されると、開動作の増加が追加され、全体的にさらに大きな開動作を提供する。本発明による取付装置は、増加した開動作がない、商業的に普通に使用されるヒンジに関しても使用でき、よって開ストローク運動の増加は取付装置によってもたらされ、ヒンジ自体から独立して提供される。
【0019】
開ストローク運動の増加はベースプレートに対する固定装置の可動性によるものである限り、固定装置が商業的に普通に使用されるヒンジの固定用に設計されている限り、商業的に普通に使用されるヒンジの大部分をそのような固定装置に接続できる。旋回される家具部分に関するそれぞれの一般的な要因に応じて、取付装着者は、商業的に普通に使用される非可動である取付装置か、または可動な固定装置を備えた本発明による取付装置のいずれを使用するかを決定できる。しかしながら、両方の場合において、同じタイプのヒンジを使用することが可能であり、それによって製造の複雑性と費用および取付の複雑性と費用が減少する。
【0020】
本発明の別な有利な形態は従属請求項において定義されている。
【0021】
本発明の1好適実施態様では、接続要素を、ヒンジの可動部分の外側、好適にはヒンジの可動部分の上側に提供できる。これによって、特に単純な取り付けと、ヒンジレバー用の可能な限り大きなレバーアームとが可能になり、接続要素はレバーアームによって可動となる。ヒンジが、例えばヒンジアームで固定装置に装着されると、接続要素が可動なヒンジ部分の外側に接続され、それによって接続要素と固定装置との間の連結がヒンジレバーによって単純に実行される。一般的に、好適形態で、接続レバーがヒンジの可動部分の上側に固定される場合、ヒンジレバーのレバーアームがヒンジの可動部分の上側とヒンジの下側との間のスペースに達するように、固定装置はヒンジの下側に配置される。
【0022】
本発明の1実施態様では、取付状態においてヒンジが開いているか閉じているとき、ヒンジレバーによってベースプレートに対して可動である固定装置は線状部材と共にベースプレートに対して移動する。線状部材によって、家具扉の開動作中に線状動作部材と共に、固定装置は例えば家具枠体内で外側に移動でき、よって家具枠体の閉縁部に対する家具扉のスペースが増加する。逆の閉動作では、そのスペースは家具枠体の内部への固定装置の線状運動によって減少する。
【0023】
本発明の1好適実施態様では、ヒンジアームを固定装置にクリップ留めできる。この目的のため、固定装置は、従来技術において知られており、かつ、ヒンジアーム上で対応する保持要素または拘束要素に係合できるラッチ要素を有しており、よってスナップ式接続を提供する。クリップ留めできるヒンジは、取付装置へヒンジを特に簡単に固定させる。ラッチ要素または拘束要素は弾性的であるか、またはバネ付勢されていてもよい。好適にはヒンジ内には、ヒンジを取付装置から簡単に取り外せるよう、スナップ式接続を再び解除させる解除装置が配置されている。ラッチ要素への接続を解除する解除ボタンが、例えば解除装置として提供される。この目的のため、拘束要素は解除ボタンにより軸周囲で部分的に回転できる。ヒンジを取付プレートに固定するための、この種の解除可能なスナップ式接続は従来技術で知られている。
【0024】
本発明の1好適実施態様では、接続要素はヒンジの可動部分にクリップ留めできる。この目的のため、ヒンジまたは接続要素は、それぞれの他の部分にて対応する拘束要素に係合するラッチ要素を有し、これらの部分を接続させる。ラッチ要素および/または拘束要素は弾性的であるか、またはバネ付勢されており、解除装置が存在できる。しかし、接続要素は、ヒンジの可動部分にネジ留めされるか、またはその他の方法で固定される。
【0025】
本発明の1好適実施態様では、接続要素は、領域的(面積的)関係でヒンジの可動部分に接するよう、プレート形状部分もしくは輪郭(プロファイル)形状部分を有しているか、または、少なくとも部分的にプレート形状もしくは輪郭形状形態である。輪郭形状部分はヒンジの可動部分を少なくとも部分的に包囲できる。これにより、接続要素を効率的かつ簡単に固定できる。同時に、ヒンジ運動は接続要素に均一に伝達される。
【0026】
別な実施態様では、固定装置は実質的にはプレート形状である。プレート形状からのずれは、例えばヒンジレバーを可動に取り付けるための取付ラグによって提供され、ヒンジレバーによって接続要素は固定装置またはヒンジを固定するためのラッチ要素もしくは拘束要素に連結される。しかしながら固定装置は、ヒンジの装着部分を固定できる受領プレートを有することもできる。受領プレートは実質的にプレート形態である固定装置の一部であってもよい。ヒンジアームを固定する場合には、受領プレートは好適にはヒンジアームの形状に適合する長形である。
【0027】
本発明の1好適実施態様では、接続要素はレバー形状である。好適にはこの点において、2部型(2つの部分からなる)レバーが使用され、ヒンジレバーと共に所望の動力学的関係を提供し、ヒンジレバーによって接続要素は固定装置に接続される。
【0028】
1実施態様では、固定装置は少なくとも一本のヒンジレバーにヒンジ式に接続される。この目的のため、その少なくとも一本のヒンジレバーのための取付ラグが存在し、ヒンジレバーは取付ラグに回転可能に取り付けられる。接続要素はヒンジレバーによって固定装置に旋回可能に取り付けられる。
【0029】
ヒンジレバーをベースプレートに可動に固定するため、ヒンジレバーが回転可能に取り付けられる取付ラグも存在できる。
【0030】
ベースプレートに少なくとも一本のヒンジレバーを可動に取り付ける別な方法では、ヒンジレバーをベースプレートに回転可能に取り付けるギヤ(歯車)またはギヤ部分が関与する。この場合には、ヒンジレバーはギヤまたはギヤ部分によって回転可能でかつ直進運動可能に取り付けられる。
【0031】
ベースプレートに配置されたギヤまたはギヤ部分に対応する部分として、ギヤまたはギヤ部分と噛合い、かつ、ベースプレートにヒンジレバーを可動に取り付けるために提供される少なくとも一本の歯型バーが存在する。
【0032】
ベースプレートに固定装置を可動に取り付けるため、少なくとも一本の別なヒンジレバーが提供される。追加的にまたは代わりに、ガイド装置がベースプレートに配置され、ガイド装置によって固定装置の運動がベースプレートに対してガイドされる。
【0033】
ヒンジが取り付けられた状態での開閉運動中に、内部でヒンジアームが移動するヒンジのため、取付装置は接続要素をヒンジアームに固定できる形態でよい。
【0034】
さらに、ヒンジは従来技術で知られており、そこにはヒンジアーム上に可動に取り付けられ、かつ、好適には少なくとも2本のレバーによってヒンジアームに連結された中間部分が存在する。ヒンジの取り付け状態では、その中間部分は家具枠体に固定式に結合されたヒンジアームに対して移動する。この場合の取付装置は、接続要素をヒンジの可動部分である中間部分に接続させる設計である。
【0035】
この目的のため、その少なくとも一本のヒンジレバーと接続要素の寸法は、ヒンジアームの寸法、またはヒンジアームに可動に取り付けられた中間部分の寸法と配置に適合されている。
【0036】
本発明は、ヒンジ、特に広角ヒンジと、前述の取付装置とを有する構造体にも関する。
【0037】
1実施態様では、ヒンジは固定装置に固定可能なヒンジアームを有する。さらに、ヒンジアームに取り付けられた、好適には少なくとも2本のレバーによってヒンジアームに連結される中間部分が存在できる。この場合には、接続要素を中間部分に固定できる。
【0038】
本発明は、家具枠体と家具枠体に可動に取り付けられた家具扉とを備えた家具にも関し、前述の取付装置は家具枠体に取り付けられ、家具扉の開閉のためのヒンジ、好適には広角ヒンジが取付装置に固定される。
【0039】
本発明のさらなる詳細と利点は、以降にて図面に関連する詳細な説明によってさらに詳細に解説されている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1a図1aは、開位置にある固定ヒンジを備えた従来技術で知られた取付装置の平面図である。
図1b図1bは、開位置にある固定ヒンジを備えた従来技術で知られた取付装置の平面図である。
図1c図1cは、開位置にある固定ヒンジを備えた従来技術で知られた取付装置の平面図である。
図1d図1dは、開位置にある固定ヒンジを備えた従来技術で知られた取付装置の平面図である。
図2a図2aは、2つの異なる開位置における従来技術による取付装置に固定されたヒンジの斜視図の1つである。
図2b図2bは、2つの異なる開位置における従来技術による取付装置に固定されたヒンジの斜視図の1つである。
図2c図2cは、2つの異なる開位置における従来技術による取付装置に固定されたヒンジの部材を分離した図である。
図3a図3aは、開位置に固定された広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第1実施例の平面図である。
図3b図3bは、開位置に固定された広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第1実施例の平面図である。
図3c図3cは、開位置に固定された広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第1実施例の平面図である。
図3d図3dは、開位置に固定された広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第1実施例の平面図である。
図4a図4aは、開位置に固定された広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第1実施例の斜視図である。
図4b図4bは、開位置に固定された広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第1実施例の斜視図である。
図5図5は、固定された広角ヒンジとそれに閉位置にて固定された家具扉とを備えた、家具枠体に取り付けられた第1実施例の取付装置を示している。
図6a図6aは、動作位置にある本発明による取付装置の第1実施例の斜視図である。
図6b図6bは、動作位置にある本発明による取付装置の第1実施例の斜視図である。
図6c図6cは、動作位置にある本発明による取付装置の第1実施例の関連する分解図である。
図7a図7aは、開位置にある広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第2実施例の平面図である。
図7b図7bは、開位置にある広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第2実施例の平面図である。
図7c図7cは、開位置にある広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第2実施例の平面図である。
図7d図7dは、開位置にある広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第2実施例の平面図である。
図8a図8aは、開位置にある広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第2実施例の斜視図である。
図8b図8bは、開位置にある広角ヒンジを備えた、本発明による取付装置の第2実施例の斜視図である。
図9図9は、固定された広角ヒンジとそれに閉位置にて固定された家具扉とを備えた、家具枠体に取り付けられた第2実施例の取付装置を示している。
図10a図10aは、開位置にある、本発明による取付装置の第2実施例の斜視図を示している。
図10b図10bは、開位置にある、本発明による取付装置の第2実施例の斜視図を示している。
図10c図10cは、開位置にある、本発明による取付装置の第2実施例の関連する分解図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1aは、家具枠体の側壁2に取り付けられた、従来技術の取付プレート4の平面図である。取付プレート4には広角ヒンジ1が固定されており、広角ヒンジ1によって家具扉3は開閉可能となっている。隣接する家具扉3のように、家具扉3は幅広い厚みdを有する。ヒンジ1は、閉位置によって画定された端部位置にある。
【0042】
この場合には、広角ヒンジ1は、第1の装着部分(ここではヒンジアーム11)で取付プレート4に固定されている。第2の装着部分(ここではヒンジカップ12)で、ヒンジは側壁に対して旋回可能に取り付けられた2つの家具扉3に取り付けられている。
【0043】
中間部分10は、2本のレバー13によってヒンジアーム11に対して可動であり、かつ、レバー13によってヒンジアームにしっかりと連結され、レバー13は中間部分10とヒンジアームの両方に適切なスピンドル14によって回転可能に取り付けられる。中間部分10によって、家具部分2と3は互いに旋回可能であるだけでなく、互いの間隔を旋回運動で増加させることもでき、すなわち増加した開ストローク運動を提供することも可能である。この目的のため、中間部分10は、図1aに示す第1の端部位置にてヒンジアーム11を越えてレバー13によって旋回され、完全開位置を画定する図1dに示す端部位置にまでそれを延ばす。すなわち、それら2つの装着部分11と12とが2つの端部位置で異なる程度、互いに離れるように移動することを意味する。同じ機能原理を備えた、ヒンジ1に非常に類似するヒンジは、WO2006/053364に開示されている。
【0044】
図1bと図1dに示すように、厚みdは非常に大きく、ヒンジ1の増加した開ストローク運動にもかかわらず隣接する家具扉3と3aとの間で衝突が発生する。開ストローク運動をさらに増加させたい場合には、ヒンジの大きさは著しく増加されなければならず、家具枠体内の貴重なスペースが失われる。
【0045】
図1a、1b、1cおよび1dは固定された家具扉と共にヒンジ1の開運動の時系列を表す。図1dに図示される家具扉3と3aとの間における衝突の結果、ヒンジ1の理論的に可能な最大開角度である約170°には到達できない。
【0046】
図2aは、従来技術の取付プレート4に接続されている状態のヒンジ1の斜視図である。ヒンジ1は閉位置にある。ヒンジのヒンジレバー15のリム(肢部)16aと16bは完全に折り畳まれた状態である。
【0047】
図2bは、ヒンジ1が完全に開いた第2の端部位置にあるヒンジ1の斜視図を示している。ヒンジレバー15のリム16aと16bは互いに完全に離れるように旋回している。中間部分10も、ヒンジアーム11に対してヒンジレバー13によって画定される端部位置にあり、これによって最大の開ストローク運動が達成される。
【0048】
図2cは、ヒンジから分離された、従来技術の取付プレート4を備えた図2bを示している。この場合には、取付プレート4は、ヒンジアーム11が取付プレート4に簡単にクリップ留めされるような設計形態であり、これによってスナップ式接続を提供する。取付プレート4自体は、ネジで家具枠体に固定される。
【0049】
図3aは、図1図2のヒンジ1に実質的に対応するヒンジ1の平面図である。ヒンジ1はヒンジカップ12によって家具扉3に固定され、かつ、家具枠体の側壁2にヒンジアーム11を介して固定されている。この場合には、ヒンジアーム11は家具枠体に直接的には固定されないが、本発明による取付装置9を介して固定されている。
【0050】
既に前述したように、ヒンジ1自体は増加した開ストローク運動を有しており、一般的な要因に関し、家具扉3、3aの厚みdによって、それは開動作中の衝突を防ぐほど十分ではない。接続要素6はヒンジレバー13を介してヒンジアーム11に対して可動に取り付けられた中間部分10に固定されおり、本実施例では、接続要素6は、スピンドル19によって互いに回転可能に接続されたレバーアーム18aと18bとを備えた2部型(2つの部分からなる)レバーの形態である。ヒンジレバー7aと7bとは、スピンドル17によって接続要素6に回転可能に接続されている。さらにヒンジレバー7aと7bとは、スピンドル20によって固定装置5に回転可能に取り付けられている。固定装置5に配置された取付ラグ(取付突出部)21a、21bはこの目的のために提供される。
【0051】
さらに、ヒンジレバー7aと7bとは、スピンドル22によってベースプレート8に回転可能に取り付けられている。取付ラグ23a、23bもこの目的のためにベースプレート8に配置されている。固定装置5には、別の取付ラグ24a、24bも配置されており、これらの取付ラグにはそれぞれ別のヒンジレバー26a、26bが取り付けられている。別のヒンジレバー26a、26bはベースプレート8にそれらの他方の端部にて回転可能に取り付けられており、別の取付ラグ25a、25bはこの目的のため、ベースプレート8上に提供されている。
【0052】
図3a、3b、3cおよび3dは、ヒンジ1の開動作の時系列に対応する。図3bと図3dに特に明示するように、ヒンジによって既に増加した開ストローク運動は、隣接する家具扉3と3aとの間で衝突が発生しないよう、およびヒンジ1が、その端部位置である最大開角度にまで開くよう、取付装置9によってさらに増加される。ベースプレート8に対する固定装置5の動作は、ベースプレート8の取付ラグ25a、25bに対する、固定装置5の取付ラグ24a、24bの動作によって明示されている。
【0053】
図4aは、本発明による取付装置9の第1実施例に接続された状態の、閉位置にあるヒンジ1を示している。接続要素6は、レバーアーム18aと18bとを備えた2部型(2つの部分からなる)レバーの形態である。接続要素6のレバーアーム18aは部分的にプレート形態であり、ヒンジ1に接続された状態で中間部分10の上側に対して平面で接する。接続要素6は、接続要素6を固定するためにヒンジ1の対応する拘束または保持要素と係合する、この図には示していないラッチ要素を有している。この点で、図2bと2cに示す中間部分10の一方または両方の開口部42は拘束要素として提供され、開口部は、接続要素6に配置され、かつ、弾性であるか又はバネ付勢されたラッチ要素とラッチ係合し、かくしてそれらはスナップ式作用接続を形成できる。あるいは、接続要素6の穴部45にフィットできる1つ又は複数のネジで固定させることも可能である。
【0054】
さらに、レバーアーム18aは、スピンドル19によって第2のレバーアーム18bおよびヒンジ1にヒンジ式に接続される2つの舌部28を有している。この構造では、舌部28はヒンジ1のわずかに突出したピン部分27にクリップ留めされ、これによって簡単で解除可能なスナップ作用接続を提供する。
【0055】
図4bは、完全開位置にある取付装置9を備えたヒンジ1を示しており、ヒンジ1と取付装置9の全体的な開ストローク運動を利用している。
【0056】
図5は、家具枠体の側壁2に固定された取付装置9の第1実施例の斜視図である。閉位置にあるヒンジ1は、取付装置9によって側壁2に接続され、ヒンジカップ12によって家具扉3aに接続されている。
【0057】
図6aと図6bは、閉位置(図6a)と開位置(図6b)のヒンジ1が存在しない取付装置9を示している。別のヒンジレバー26a、26bを備えた固定装置5が平行レバー構造体を形成している状態が示されている。接続要素6は、ヒンジ1の開閉動作中に移動する中間部分10に接続される。固定装置5は、ヒンジレバー7a、7bを介して作動され、この場合には、固定装置5は、ヒンジ1の開閉過程中にヒンジ運動に連動する接続要素6の動作によってベースプレート8に対して移動する。開動作では、固定装置5はベースプレート8に対して矢印Aの方向に移動する。接続要素6は、従来技術で知られており、かつ、図6aから図6cには図示されていないラッチ要素によってヒンジ1に固定され、それによって接続要素6は中間部分10にクリップ留めされ得る。
【0058】
ヒンジ1のヒンジアーム11は、固定装置4にクリップ留めされており、弾性ラッチ要素29a、29bはこの目的のために提供されており、ヒンジアームの対応する拘束要素に係合する。ヒンジ自体は解除装置を有しており、その解除装置によって取付装置9への接続を再び解除することができる。
【0059】
家具扉3が開くとき、固定装置5はヒンジ1と、これに固定された家具扉3aと共に弧を描くように家具枠体外側に移動し、隣接する家具扉3a周囲を通過する。ストローク運動と直線運動の組合せは、図3bから図3dに明示されている。図6bに示す端部位置では、固定装置5に配置された取付ラグ24a、24bは、図6aに示す端部位置に対して、ベースプレート8上で取付ラグ25a、25bに対して前方に移動している。
【0060】
図6cは、取付装置9の分解図と、それに固定されたヒンジ1の斜視図である。ベースプレート8は、3つのプレート状要素8a、8b、8cを含んでおり、ベースプレート8はベースプレート8ために提供された穴部44に適合するネジ(図示せず)で家具枠体に固定されている。部材8bは、ベースプレート8が構造的にコンパクトな高さとなるよう、部材8aに部材8bのために提供された開口部41に適合する。部材8cは、固定装置5の架橋形状部分の下に適合する。固定装置5の相対的動作は部材8cの脚部によって制限される。取付ラグ25a、25bは、ベースプレート要素8a内のスロット形状の開口部40a、40bに適合する。
【0061】
ベースプレート8は、高さと深さの調節のための調節手段を有する。開口部43aと43bに適合する偏心部30aと30bはこの目的のためにそれぞれ提供される。
【0062】
図7aから図7dは、本発明による取付装置9の第2実施例に固定されたヒンジ1の開動作の時系列の平面図である。ヒンジ1に対して増加した開ストローク運動が再び図示されており、これによって隣接する家具扉3aとの衝突を防止できる。本実施例では、接続要素6は開口部45の一つに適合するネジ31で中間部分10に固定される。ヒンジレバー7aと7bは、スピンドル20によって固定装置5の取付ラグ21a、21bに回転可能に取り付けられる。
【0063】
しかしながら本実施例の取付装置では、ヒンジレバー7a、7bは、固定されたジョイントによってベースプレート8に接続されているわけではなく、それらの端部において、ベースプレート8の対応する歯型バー33と噛合うギヤ部分32をそれぞれ有している。この結果、ヒンジレバー7a、7bは、図7aから図7dに示す歯型バー33に対するギヤ部分32の位置のシフトに基づいて明示されているように、ベースプレートに対するヒンジ1の動作中に、回転するだけでなく、直進運動形態で移動する。
【0064】
図8aは、ヒンジ1と、ヒンジ1の閉位置にある接続された取付装置9とを示している。ヒンジレバー7a、7bのギヤ部分32は、家具枠体の内側の歯型バー33の端部に配置されている。
【0065】
図8bは、ヒンジ1の完全開位置と、取付装置9の完全開位置とを示している。ギヤ部分32は、枠体の外側である歯型バー33の端部に配置されており、これはベースプレート8に対する固定装置5の最大移動度に対応している。
【0066】
図9は、ヒンジ1と、図8aの取付装置9とを示しており、取付装置9は家具枠体の側壁2に取り付けられており、ヒンジ1は家具扉3にヒンジカップと共に取り付けられている。
【0067】
図10aは、取付装置9の第2実施例の斜視図である。ベースプレート8の部材8cは、開口部35上方に架橋形状接続部34を有しており、これは固定装置5用のガイド装置として提供される。第1実施例の平行レバー構造体の代わりに、ギヤ部分によって制御されるヒンジレバー7aは、図7aから図7dに示すように、固定装置5がベースプレート8に対して直線状にのみ移動し、追加的なストローク運動を必要とはしないという利点を有している。
【0068】
図10bは、完全開位置にある取付装置9の斜視図であり、これによってヒンジ1による開ストローク運動に関する最大の追加的な開ストローク運動を提供する。
【0069】
ベースプレート8が3つの部材8a、8b、8cで再び構成されていることが、図10cの取付装置9の分解図とヒンジ1の斜視図に示されている。家具枠体に固定されたベースプレート8の高さおよび深さに関する調節は、偏心部30aおよび30bと、開口部43aおよび43bとによって可能である。第1実施例では、別のヒンジレバー26a、26bがベースプレート8からの固定装置の持ち上げを防止するが、本実施例ではこの目的は、架橋形状接続部34と、ベースプレート8の部材8aに固定でき、固定装置5内のスロット形状開口部38で移動可能にガイドされる突出するピン部分39によって達成される。この目的は、部材8bに固定され、スロット36に移動可能に取り付けられたピン部分37によって達成される。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図9
図10a
図10b
図10c