特許第5878740号(P5878740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5878740シールドコネクタ付き電線及びシールドコネクタ付き電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878740
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】シールドコネクタ付き電線及びシールドコネクタ付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/648 20060101AFI20160223BHJP
【FI】
   H01R13/648
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-258038(P2011-258038)
(22)【出願日】2011年11月25日
(65)【公開番号】特開2013-12457(P2013-12457A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2014年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2011-124437(P2011-124437)
(32)【優先日】2011年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 元
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−234422(JP,A)
【文献】 特開2005−317257(JP,A)
【文献】 特開2010−282924(JP,A)
【文献】 特開2003−197037(JP,A)
【文献】 特開2004−171952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/648
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する電線の両端に、前記電線の導体に接続された端子と、該端子を保持する絶縁材料製のハウジングと、該ハウジングの外側を覆うシールドシェルとからなるシールドコネクタが取り付けられると共に、これら両端のシールドコネクタ間の前記電線の外側を覆うようにシールドカバーが設けられたシールドコネクタ付き電線において、
前記電線の外側を覆うシールドカバーとして、2つの筒状の金属板製のシールドカバーが使用され、該2つの筒状のシールドカバーの各一端が、前記電線の両端の各シールドコネクタのシールドシェルにそれぞれ固着され、これらシールドカバーの各他端がそれぞれ自由端とされ、これらシールドカバーの自由端が互いに突き合わせられるか、あるいは、相互にラップさせられることにより、両方の筒状のシールドカバーの自由端間のシールド性が確保されていることを特徴とするシールドコネクタ付き電線。
【請求項2】
前記2つの筒状のシールドカバーが、それぞれ側縁同士を互いにラップさせた2つの半筒体の組み合わせにより構成されており、これら2つの半筒体のうちのいずれか一方の半筒体が前記シールドシェルに固着され、他方の半筒体が前記シールドシェル又は前記一方の半筒体に着脱自在に固定されていることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のシールドコネクタ付き電線。
【請求項3】
前記2つの筒状のシールドカバーの自由端の間に、該自由端の間の隙間をシールドすると共に自由端同士の直接接触を避ける導電性弾性部材が介在されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシールドコネクタ付き電線。
【請求項4】
請求項2に記載のシールドコネクタ付き電線の製造方法であって、
前記2つの筒状のシールドカバーの自由端が相互にラップさせられており、これら2つの筒状のシールドカバーの自由端のラップ部分において内側となる一方の筒状のシールドカバーの外側にラップされる他方の筒状のシールドカバーの2つの半筒体のうち、前記側縁同士のラップ部分において内側となる半筒体が、自由状態において該半筒体と前記一方の筒状のシールドカバーとの間に隙間を確保し得る寸法に形成され、前記他方の筒状のシールドカバーの2つの半筒体のうち、前記側縁同士のラップ部分において外側となる半筒体が、自由状態の前記内側の半筒体に対して後から側縁同士を互いにラップさせるように嵌合されることによって、前記内側の半筒体を内方に押圧変形させて前記隙間を無くし該内側の半筒体を前記一方のシールドカバーに押圧密着させることを特徴とするシールドコネクタ付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、2つの機器間をつなぐために両端にシールドコネクタが取り付けられたシールドコネクタ付き電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11及び図12に示す従来のシールドコネクタ付き電線101においては、可撓性を有する電線130の両端に、電線130の導体に接続された端子116、126と、端子116、126を保持する絶縁材料製のハウジング111、121と、ハウジング111、121の外側を覆うシールドシェル112、122とからなるシールドコネクタ110、120が取り付けられている。また、両端のシールドコネクタ110、120間に露出した電線130の外側を覆うように、シールドカバーとして編組140が設けられており、編組140の両端が、各シールドコネクタ110、120のシールドシェル112、122の筒状部に、シールドリング150を加締めることで固定されている。編組140を用いるのは、両端のシールドコネクタ110、120間に若干の可動性を確保するためである。
【0003】
この種のシールドコネクタ付き電線の例は、例えば、特許文献1、2に開示されている。
【0004】
また、2つのシールドコネクタ間の電線を編組で覆う代わりに、電線をシールドパイプで覆う構成が例えば特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−282924号公報
【特許文献2】特開2003−197037号公報
【特許文献3】特開2004−171952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来のシールドコネクタ付き電線101では、電線130の外側をシールドするためのシールドカバーとして編組140を用い、その編組140の両端をシールドシェル112、122に固定するためにシールドリング150を加締めているので、シールドリング150が必要である分だけ部品点数が多くなると共に、組付作業工数が増えるという問題があった。また、機器や車両の振動等により編組140が他の部品に衝突した場合、強度的に金属板製のシールドシェル112、122などより弱い編組140が損傷するおそれがあった。
【0007】
また、シールドパイプで電線を覆う構成では、電線を保護するプロテクタが不要であるが、シールドパイプのような別に製造する部品が新たに必要となる。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、両端のシールドコネクタ間のシールド性と可動性を確保しながら、部品点数の削減と組付工数の削減を図ることができると共に、振動等により電線の外側を覆うシールドカバーが他の部品と衝突した場合にも損傷のおそれがなく、更に新たに製造する別部品を必要としないシールドコネクタ付き電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 可撓性を有する電線の両端に、前記電線の導体に接続された端子と、該端子を保持する絶縁材料製のハウジングと、該ハウジングの外側を覆うシールドシェルとからなるシールドコネクタが取り付けられると共に、これら両端のシールドコネクタ間の前記電線の外側を覆うようにシールドカバーが設けられたシールドコネクタ付き電線において、
前記電線の外側を覆うシールドカバーとして、2つの筒状の金属板製のシールドカバーが使用され、該2つの筒状のシールドカバーの各一端が、前記電線の両端の各シールドコネクタのシールドシェルにそれぞれ固着され、これらシールドカバーの各他端がそれぞれ自由端とされ、これらシールドカバーの自由端が互いに突き合わせられるか、あるいは、相互にラップさせられることにより、両方の筒状のシールドカバーの自由端間のシールド性が確保されていることを特徴とするシールドコネクタ付き電線。
【0010】
(2) 前記2つの筒状のシールドカバーが、それぞれ側縁同士を互いにラップさせた2つの半筒体の組み合わせにより構成されており、これら2つの半筒体のうちのいずれか一方の半筒体が前記シールドシェルに固着され、他方の半筒体が前記シールドシェル又は前記一方の半筒体に着脱自在に固定されていることを特徴とすることを特徴とする上記(1)に記載のシールドコネクタ付き電線。
【0011】
(3) 前記2つの筒状のシールドカバーの自由端の間に、該自由端の間の隙間をシールドすると共に自由端同士の直接接触を避ける導電性弾性部材が介在されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のシールドコネクタ付き電線。
【0012】
(4) 上記(2)に記載のシールドコネクタ付き電線の製造方法であって、
前記2つの筒状のシールドカバーの自由端が相互にラップさせられており、これら2つの筒状のシールドカバーの自由端のラップ部分において内側となる一方の筒状のシールドカバーの外側にラップされる他方の筒状のシールドカバーの2つの半筒体のうち、前記側縁同士のラップ部分において内側となる半筒体が、自由状態において該半筒体と前記一方の筒状のシールドカバーとの間に隙間を確保し得る寸法に形成され、前記他方の筒状のシールドカバーの2つの半筒体のうち、前記側縁同士のラップ部分において外側となる半筒体が、自由状態の前記内側の半筒体に対して後から側縁同士を互いにラップさせるように嵌合されることによって、前記内側の半筒体を内方に押圧変形させて前記隙間を無くし該内側の半筒体を前記一方のシールドカバーに押圧密着させることを特徴とするシールドコネクタ付き電線の製造方法。
【0013】
上記(1)の構成のシールドコネクタ付き電線によれば、両端のシールドコネクタ間の電線の外側が2つの筒状のシールドカバーで覆われているので、シールドコネクタ間に露出した電線のシールド性を確保することができる。
【0014】
また、2つの筒状のシールドカバーは互いに分断されているものの、自由端を互いに突き合わせるか、あるいは、相互にラップさせているので、自由端間の隙間のシールド性を確保することができ、シールド漏れ箇所を無くすことができる。
【0015】
また、2つの筒状のシールドカバーは、金属板で構成されていて、各一端がシールドコネクタのシールドシェルに固着されているので、従来のように可撓性を有する編組をシールドリングでシールドシェルに加締め固定するなどの面倒な作業が必要なく、部品点数の削減と作業工数の削減を図ることができる。
【0016】
また、2つの筒状のシールドカバーは、互いに結合されているわけでなく、相対的にある程度はそれぞれ自由に動くことができるものであるから、両端のシールドコネクタ間の可動性を必要程度に確保することができ、シールドコネクタの接続の際に必要な若干の移動に支障を来すことがない。
【0017】
また、筒状のシールドカバーは金属板でできているから、機器や車両の振動等により他の部品に衝突しても損傷するおそれがない。
【0018】
また、シールドシェルを改造して製造するだけなので、新たに金型を起こして別部品を製造する必要がない。
【0019】
上記(2)の構成のシールドコネクタ付き電線によれば、2つの筒状のシールドカバーが、それぞれ側縁同士を互いにラップさせた2つの半筒体の組み合わせにより構成されているので、半筒体を開いた状態にすることにより、シールドコネクタを電線の両端に取り付けた後から、電線の外側にシールドカバーを装着することができる。従って、組付作業の自由度を確保することができる。
【0020】
上記(3)の構成のシールドコネクタ付き電線によれば、導電性弾性部材を2つの筒状のシールドカバーの自由端間に配したので、導電性弾性部材によりシールドカバーの自由端間の隙間を埋めることができ、シールド漏れを確実に無くすことができる。
【0021】
また、導電性弾性部材を介して2つの筒状のシールドカバー同士を互いに導通させることができるので、一方のシールドコネクタ側のシールドシェル又はシールドカバーをアースするだけで、他方のシールドコネクタ側のシールドシェルやシールドカバーのシールド性を確保することができる。
【0022】
また、導電性弾性部材により金属板製のシールドカバー同士の直接の接触を避けることができるので、機器の振動に伴う金属板同士の接触による傷付きや異音の発生を防止することができる。
【0023】
上記(4)の構成のシールドコネクタ付き電線の製造方法によれば、2つの筒状のシールドカバーの自由端の相互にラップする部分において外側となる他方の筒状のシールドカバーの2つの半筒体のうち、側縁同士のラップ部分において内側となる半筒体が、自由状態において該半筒体と前記一方の筒状のシールドカバーとの間に隙間を確保し得る寸法に形成されているので、最外側の半筒体を組み付ける前の状態においては、その隙間があることによって、内側の半筒体と一方の筒状のシールドカバーとの間に擦り合い(摺動)を発生しないようにすることができる。従って、2つの筒状のシールドカバーの自由端の相互ラップ部分の動きをスムーズにすることができる。
【0024】
また、最外側の半筒体を組み付けた状態では、その隙間を無くすように前記内側の半筒体を内側に押圧変形させて一方の筒状のシールドカバーに押圧密着させることができるので、両方の筒状のシールドカバーを確実に相互導通した状態に維持することができ、高いシールド性能を発揮することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、編組の代わりに用いた2つの筒状の金属板製のシールドカバーにより、両端のシールドコネクタ間に露出した電線を確実にシールドすることができる。
【0026】
また、2つの筒状のシールドカバーは、金属板で構成されていて、各一端がシールドコネクタのシールドシェルに固着されているので、従来のように編組をシールドリングでシールドシェルに加締め固定するなどの面倒な作業が必要なく、部品点数の削減と作業工数の削減を図ることができる。
【0027】
また、2つの筒状のシールドカバーは、相対的にある程度はそれぞれ自由に動くことができるので、両端のシールドコネクタ間の可動性を必要程度に確保することができる。
【0028】
また、筒状のシールドカバーは金属板でできているから、機器や車両の振動等により他の部品に衝突しても損傷するおそれがない。
【0029】
また、シールドシェルを改造して製造するだけなので、新たに金型を起こして別部品を製造する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態のシールドコネクタ付き電線の外観斜視図である。
図2図2(a)は同シールドコネクタ付き電線の断面図、図2(b)はその要部拡大図である。
図3図3(a)は同シールドコネクタ付き電線の組立途中の状態を示す断面図、図3(b)はその要部拡大図である。
図4】本発明の第2実施形態のシールドコネクタ付き電線の上側コネクタの分解斜視図である。
図5】同シールドコネクタ付き電線の下側コネクタの分解斜視図である。
図6】同シールドコネクタ付き電線の上側コネクタと下側コネクタとを接続した状態の正面図である。
図7図6のX−X断面図である。
図8】本発明の第3実施形態のシールドコネクタ付き電線の分解斜視図である。
図9】同シールドコネクタ付き電線の斜視図であり、図9(a)は最外側の半筒体を装着する前の状態を示す図、図9(b)は最外側の半筒体を装着した後の完成状態を示す図である。
図10図10(a)は図9(a)のYa矢視方向から見た一部正面図、図10(b)は図9(b)のYb矢視方向から見た一部正面図である。
図11】従来のシールドコネクタ付き電線の外観斜視図である。
図12】同シールドコネクタ付き電線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態のシールドコネクタ付き電線の外観斜視図、図2(a)は同シールドコネクタ付き電線の断面図、(b)はその要部拡大図、図3(a)は同シールドコネクタ付き電線の組立途中の状態を示す断面図、(b)はその要部拡大図である。
【0032】
このシールドコネクタ付き電線1は、可撓性を有する電線30の両端に、電線30の導体に接続された端子16、26と、端子16、26を保持する絶縁材料製のハウジング11、21と、ハウジング11、21の外側を覆うシールドシェル12、22とからなるシールドコネクタ10、20を取り付け、これら両端のシールドコネクタ10、20間に露出した電線30の外側を覆うようにシールドカバー13、23を設けたものである。
【0033】
各シールドコネクタ10、20の端子16、26の基端部17、27は、圧着等の手段により電線30の導体の端末に接続されてハウジング11、21内部に収容され、端子16、26の先端側は、ハウジング11、21の外に露出して、機器側のコネクタ端子(図示せず)と相互に接続できるようになっている。また、シールドシェル12、22には、コネクタの取付孔を有するアース端子12a、22aが一体に設けられている。ここでは、図1図3において、上側のシールドコネクタ10を上側コネクタ、下側のシールドコネクタ20を下側コネクタと呼んで区別する。図1及び図2(a)に示すように、上側コネクタ10は、図示しない機器側コネクタに対する接続方向を側方に向けて配置されており、下側コネクタ20は、図示しない機器側コネクタに対する接続方向を下方に向けて配置されている。また、両シールドコネクタ10、20間を接続する電線30は、途中でへの字状に屈曲している。
【0034】
電線30の外側を覆うシールドカバーとしては、上側と下側の2つの筒状の金属板製のシールドカバー13、23が使用されている。上側のシールドカバー13の上端は、上側コネクタ10のシールドシェル12に固着されており、上側のシールドカバー13の下端は自由端とされている。また、下側のシールドカバー23の下端は、下側コネクタ20のシールドシェル22に固着されており、下側のシールドカバー23の上端は自由端とされている。そして、上側のシールドカバー13の下端である自由端と、下側のシールドカバー23の上端である自由端が、互いに突き合わせられるか、あるいは、相互にラップさせられることにより、上下に分割された上側と下側の筒状のシールドカバー13、23の自由端間のシールド性が確保されている。
【0035】
この場合、上側と下側の各シールドカバー13、23は、組立性を考慮して、それぞれ側縁同士を互いにラップさせた2つの半筒体14、15、24、25の組み合わせにより構成されている。上側のシールドカバー13を構成する2つの半筒体14、15のうち、一方の半筒体15は、上側コネクタ10のシールドシェル12の外側に嵌合されることで、シールドシェル12に着脱自在に固着されており、他方の半筒体14は、ハウジング11に着脱自在に嵌合されると共に、一方の半筒体15の側縁の内面に着脱自在に嵌合されて固定されている。また、下側のシールドカバー23を構成する2つの半筒体24、25のうち、一方の半筒体24は、下側コネクタ20のシールドシェル22に一体化されて固着されており、他方の半筒体25は、ハウジング21に着脱自在に嵌合されると共に、一方の半筒体24の側縁の外面に着脱自在に嵌合されて固定されている。
【0036】
これらシールドカバー13、23は、電線30の配索経路に沿った湾曲形状に形成されており、互いに自由端側が近接している。そして、シールドカバー13、23の自由端の間に、自由端の間の隙間をシールドすると共に自由端同士の直接接触を避ける導電性弾性部材40が介在されている。この場合、導電性弾性部材40は、シールドカバー13、23の自由端のいずれかに予め固着されている。
【0037】
このように構成したシールドコネクタ付き電線1によれば、両端のシールドコネクタ10、20間の電線30の外側が2つの筒状のシールドカバー13、23で覆われているので、シールドコネクタ10、20間に露出した電線30のシールド性を確保することができる。
【0038】
また、2つの筒状のシールドカバー13、23は互いに分断されているものの、自由端を互いに突き合わせるか、あるいは、相互にラップさせているので、自由端間の隙間のシールド性を確保することができ、シールド漏れ箇所を無くすことができる。
【0039】
また、2つの筒状のシールドカバー13、23は、金属板で構成されていて、各一端がシールドコネクタ10、20のシールドシェル12、22に固着されているので、従来のように可撓性を有する編組をシールドリングでシールドシェルに加締め固定するなどの面倒な作業が必要なく、部品点数の削減と作業工数の削減を図ることができる。
【0040】
また、2つの筒状のシールドカバー13、23は、互いに結合されているわけでなく、相対的にある程度はそれぞれ自由に動くことができるものであるから、両端のシールドコネクタ10、20間の可動性を必要程度に確保することができ、シールドコネクタ10、20の接続の際に必要な若干の移動に支障を来すことがない。
【0041】
また、筒状のシールドカバー13、23は金属板でできているから、機器や車両の振動等により他の部品に衝突しても損傷するおそれがない。
【0042】
また、本実施形態のシールドコネクタ付き電線1では、2つの筒状のシールドカバー13、23を、それぞれ側縁同士を互いにラップさせた2つの半筒体14、15、24、25の組み合わせで構成しているので、半筒体14、15、24、25を開いた状態にすることにより、シールドコネクタ10、20を電線30の両端に取り付けた後から、電線30の外側にシールドカバー13、23を装着することができ、組付作業の自由度を確保することができる。
【0043】
また、導電性弾性部材40を2つの筒状のシールドカバー13、23の自由端間に配したので、導電性弾性部材40によりシールドカバー13、23の自由端間の隙間を埋めることができ、シールド漏れを確実に無くすことができる。
【0044】
また、導電性弾性部材40を介して2つの筒状のシールドカバー13、23同士を互いに導通させることができるので、一方のシールドコネクタ10(20)側のシールドシェル12(22)又はシールドカバー13(23)をアースするだけで、他方のシールドコネクタ20(10)側のシールドシェル22(12)やシールドカバー23(13)のシールド性を確保することができる。
【0045】
また、導電性弾性部材40により金属板製のシールドカバー13、23同士の直接の接触を避けることができるので、機器の振動に伴う金属板同士の接触による傷付きや異音の発生を防止することができる。
【0046】
また、本実施形態のシールドコネクタ付き電線1によれば、シールドカバー13、23の設計変更で容易に製造することができ、従来使用していたパイプシールドのような別部品を新たに作る必要がなく、金型を新たに起こす必要もない。
【0047】
また、上側シールドカバー13と下側シールドカバー23の組み合わせにより、接続向きを多種設定することができ、接続形態のバリエーションを増やすことができる。
【0048】
図4図7は本発明の第2実施形態を表す。この第2実施形態は、上記第1実施形態の構成のうち、導電性弾性部材40を省略した構成である。従って、第2実施形態の外観斜視図は図1と同じである。第2実施形態において、第1実施形態と同じ部材については同符号を付すことで、その説明は省略又は簡略化する。
【0049】
図4は上側コネクタの分解斜視図、図5は下側コネクタの分解斜視図、図6は上側コネクタと下側コネクタとを接続した状態の正面図、図7図6のX−X断面図である。
【0050】
第2実施形態のシールドコネクタ付き電線1Aによれば、両端のシールドコネクタ10、20間の電線30の外側が2つの筒状のシールドカバー13、23で覆われているので、シールドコネクタ10、20間に露出した電線30のシールド性を確保することができる。また、2つの筒状のシールドカバー13、23は互いに分断されているものの、自由端を互いに突き合わせるか、あるいは、相互にラップさせているので、自由端間の隙間のシールド性を確保することができ、シールド漏れ箇所を無くすことができる。
【0051】
また、2つの筒状のシールドカバー13、23は、金属板で構成されていて、各一端がシールドコネクタ10、20のシールドシェル12、22に固着されているので、従来のように可撓性を有する編組をシールドリングでシールドシェルに加締め固定するなどの面倒な作業が必要なく、部品点数の削減と作業工数の削減を図ることができる。
【0052】
また、2つの筒状のシールドカバー13、23は、互いに結合されているわけでなく、相対的にある程度はそれぞれ自由に動くことができるものであるから、両端のシールドコネクタ10、20間の可動性を必要程度に確保することができ、シールドコネクタ10、20の接続の際に必要な若干の移動に支障を来すことがない。また、筒状のシールドカバー13、23は金属板でできているから、機器や車両の振動等により他の部品に衝突しても損傷するおそれがない。
【0053】
また、本実施形態のシールドコネクタ付き電線1Aでは、2つの筒状のシールドカバー13、23を、それぞれ側縁同士を互いにラップさせた2つの半筒体14、15、24、25の組み合わせで構成しているので、半筒体14、15、24、25を開いた状態にすることにより、シールドコネクタ10、20を電線30の両端に取り付けた後から、電線30の外側にシールドカバー13、23を装着することができ、組付作業の自由度を確保することができる。
【0054】
また、本実施形態のシールドコネクタ付き電線1Aによれば、シールドカバー13、23の設計変更で容易に製造することができ、従来使用していたパイプシールドのような別部品を新たに作る必要がなく、金型を新たに起こす必要もない。
【0055】
また、上側シールドカバー13と下側シールドカバー23の組み合わせにより、接続向きを多種設定することができ、接続形態のバリエーションを増やすことができる。
【0056】
図8図10は本発明の第3実施形態を表す。この第3実施形態は、上記第2実施形態の構成のうち、上側シールドカバー13の半筒体14、15の寸法に特別な設定をした構成である。従って、第3実施形態において、第1実施形態及び第2実施形態と同じ部材については同符号を付すことで、その説明は省略又は簡略化する。
【0057】
図8はシールドコネクタ付き電線の分解斜視図、図9はシールドコネクタ付き電線の斜視図であり、図9(a)は最外側の半筒体を装着する前の状態を示す図、図9(b)は最外側の半筒体を装着した後の完成状態を示す図、図10(a)は図9(a)のYa矢視方向から見た一部正面図、図10(b)は図9(b)のYb矢視方向から見た一部正面図である。
【0058】
第3実施形態のシールドコネクタ付き電線1Bでは、上側と下側の2つの筒状のシールドカバー13、23の自由端が、互いに突き合わせられているのではなく、適当な寸法だけ相互にラップさせられている。
【0059】
そして、これら2つの筒状のシールドカバー13、23の自由端のラップ部分において内側となる図中下側の筒状のシールドカバー23の外側にラップされる図中上側の筒状のシールドカバー13の2つの半筒体14、15のうち、側縁14a、15a同士のラップ部分において内側となる半筒体14の両側縁14a間の寸法が、図9(a)及び図10(a)に示すように、自由状態(外側の半筒体15を嵌合する前の状態)において該半筒体14と下側の筒状のシールドカバー23(外側の半筒体25の側縁25aの外面)との間に隙間Sを確保し得る寸法に形成されている。図9(a)及び図10(a)においてP1で囲った部分が、隙間Sがあることを示している。
【0060】
また、上側の筒状のシールドカバー13の2つの半筒体14、15のうち、側縁14a、15a同士のラップ部分において外側となる半筒体15の両側縁15a間の寸法が、自由状態の内側の半筒体14に対して後から側縁14a、15a同士を互いにラップさせるように嵌合されることによって、内側の半筒体14の側縁14aを内方に押圧変形させて前記隙間Sを無くし該内側の半筒体14の側縁14aを下側のシールドカバー23に押圧密着させることの可能な寸法に形成されている。図9(b)及び図10(b)においてP2で囲った部分が、図10(a)の隙間Sが無くなって、外側と内側の半筒体15、14の側縁15a、14aが、下側のシールドカバー23に押圧密着していることを示している。
【0061】
第3実施形態のシールドコネクタ付き電線1Bによれば、両端のシールドコネクタ10、20間の電線30の外側が2つの筒状のシールドカバー13、23で覆われているので、シールドコネクタ10、20間に露出した電線30のシールド性を確保することができる。また、2つの筒状のシールドカバー13、23は互いに分断されているものの、自由端を相互にラップさせているので、自由端間の隙間のシールド性を確保することができ、シールド漏れ箇所を無くすことができる。
【0062】
また、2つの筒状のシールドカバー13、23は、金属板で構成されていて、各一端がシールドコネクタ10、20のシールドシェル12、22に固着されているので、従来のように可撓性を有する編組をシールドリングでシールドシェルに加締め固定するなどの面倒な作業が必要なく、部品点数の削減と作業工数の削減を図ることができる。
【0063】
また、2つの筒状のシールドカバー13、23は、互いに結合されているわけでなく、相対的にある程度はそれぞれ自由に動くことができるものであるから、両端のシールドコネクタ10、20間の可動性を必要程度に確保することができ、シールドコネクタ10、20の接続の際に必要な若干の移動に支障を来すことがない。また、筒状のシールドカバー13、23は金属板でできているから、機器や車両の振動等により他の部品に衝突しても損傷するおそれがない。
【0064】
また、本実施形態のシールドコネクタ付き電線1Bでは、2つの筒状のシールドカバー13、23を、それぞれ側縁同士を互いにラップさせた2つの半筒体14、15、24、25の組み合わせで構成しているので、半筒体14、15、24、25を開いた状態にすることにより、シールドコネクタ10、20を電線30の両端に取り付けた後から、電線30の外側にシールドカバー13、23を装着することができ、組付作業の自由度を確保することができる。
【0065】
また、本実施形態のシールドコネクタ付き電線1Bによれば、シールドカバー13、23の設計変更で容易に製造することができ、従来使用していたパイプシールドのような別部品を新たに作る必要がなく、金型を新たに起こす必要もない。
【0066】
また、上側シールドカバー13と下側シールドカバー23の組み合わせにより、接続向きを多種設定することができ、接続形態のバリエーションを増やすことができる。
【0067】
さらに、本実施形態のシールドコネクタ付き電線1Bによれば、2つの筒状のシールドカバー13、23の自由端の相互にラップする部分において外側となる上側の筒状のシールドカバー13の2つの半筒体14、15のうち、側縁14a、15a同士のラップ部分において内側となる半筒体14が、自由状態において該半筒体14と下側の筒状のシールドカバー23との間に隙間Sを確保し得る寸法に形成されているので、最外側の半筒体15を組み付ける前の状態においては、その隙間Sがあることによって、内側の半筒体14と下側の筒状のシールドカバー23との間に擦り合い(摺動)を発生しないようにすることができる。従って、2つの筒状のシールドカバー13、23の自由端の相互ラップ部分の動きをスムーズにすることができる。
【0068】
また、最外側の半筒体15を組み付けた状態では、その隙間Sを無くすように内側の半筒体14を内側に押圧変形させて下側の筒状のシールドカバー23に押圧密着させることができるので、両方の筒状のシールドカバー13、23を確実に相互導通した状態に維持することができ、高いシールド性能を発揮することができる。
【0069】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0070】
1,1A,1B シールドコネクタ付き電線
10,20 シールドコネクタ
11,21 ハウジング
12,22 シールドシェル
13,23 筒状のシールドカバー
14,15,24,25 半筒体
14a,15a,25a 側縁
16,26 端子
30 電線
40 導電性弾性部材
S 隙間
図1
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図7
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図12