特許第5878744号(P5878744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5878744-端子接続構造 図000002
  • 特許5878744-端子接続構造 図000003
  • 特許5878744-端子接続構造 図000004
  • 特許5878744-端子接続構造 図000005
  • 特許5878744-端子接続構造 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878744
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】端子接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/22 20060101AFI20160223BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   H01R4/22
   H01R4/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-270340(P2011-270340)
(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公開番号】特開2013-122843(P2013-122843A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 謙治
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−054182(JP,A)
【文献】 特開2011−198708(JP,A)
【文献】 特開2004−207172(JP,A)
【文献】 特開2012−018888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18 − 4/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線の端部において絶縁被覆層が剥がされて露出された露出導体に被さる有底筒状の導体被嵌部と、前記導体被嵌部の開口端から延出して前記露出導体の根本側の絶縁被覆層の上に被さる筒状の被覆層被嵌部と、前記導体被嵌部と前記被覆層被嵌部との間のテーパ管状のつなぎ目部分と、を備えた金属製キャップと、
前記被覆層被嵌部と前記絶縁被覆層との間を止水する防水手段と、
前記導体被嵌部の外周に加締め付けられた導体加締め爪と、相手の端子接続部に接続するための接続端子部と、を備えた金属製の端子金具と、
を備え、
前記金属製キャップを介して前記端子金具が前記露出導体に圧着接続された状態にある端子接続構造であって、
前記防水手段として、前記被覆層被嵌部と該被覆層被嵌部の手前の前記絶縁被覆層とに跨がって嵌合装着されて前記被覆層被嵌部と前記絶縁被覆層との接続部を止水する防水チューブを備えると共に、
前記端子金具、前記防水チューブの外周に加締め付けられて前記端子金具を前記絶縁被覆層に固定する被覆加締め爪を備えると共に、前記導体加締め部爪と前記被覆加締め爪との間を連結する連結部を備え、
前記連結部は、前記つなぎ目部分を収容保持する形状であることを特徴とする端子接続構造。
【請求項2】
前記防水チューブの外周には、周方向に沿って延設された位置決め溝が設けられ、
前記被覆加締め爪が、前記位置決め溝に加締め付けられていることを特徴とする請求項1に記載の端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具に接続される被覆電線端部に高い止水性を確保するために、金属製キャップを介して前記端子金具が前記被覆電線の端部の露出導体に圧着接続される端子接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図3図5は、下記の特許文献1に開示された端子接続構造を示したものである。
この端子接続構造は、図3及び図4に示すように被覆電線110の端部において絶縁被覆層111が剥がされて露出された露出導体112に金属製キャップ120を被せた後、図4及び図5に示すように金属製キャップ120に金属製の端子金具130を加締め付けることで、端子金具130が露出導体112に圧着接続された状態にする。
【0003】
金属製キャップ120は、図3に示すように、露出導体112に被さる有底筒状の導体被嵌部121と、導体被嵌部121の開口端から延出して露出導体112の根本側の絶縁被覆層111の上に被さる筒状の被覆層被嵌部122と、導体被嵌部121よりも大径の筒状で、導体被嵌部121と被覆層被嵌部122とのつなぎ目はテーパ管状になっている。
【0004】
図示はしていないが、被覆層被嵌部122が被さる絶縁被覆層111の外周面には、被覆層被嵌部122と絶縁被覆層111との間を止水する防水手段として、リング状のパッキン又は隙間を塞ぐ充填材が装備される。
【0005】
端子金具130は、金属板のプレス成形品で、図4に示すように、導体被嵌部121の外周に加締め付ける導体加締め爪131と、相手の端子接続部に接続するための接続端子部132と、を備えている。端子金具130は、図5に示すように、導体被嵌部121の上に加締め付けることで、導体被嵌部121を介して露出導体112に圧着接続された状態にされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−207172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1における端子接続構造では、端子金具130と被覆電線110との間の機械的接続が、導体加締め爪131による圧着部のみである。
そのため、端子金具130に圧着接続された被覆電線110に外部から捩り力や曲げ力が作用して被覆電線110が捩られた場合、圧着部に応力が集中することにより、導体被嵌部121と被覆層被嵌部122との間で金属製キャップ120に破断が生じ易く、金属製キャップ120の破断により止水性能が低下するおそれがあった。
【0008】
また、特許文献1では、防水手段は単純に被覆層被嵌部122と絶縁被覆層111との間に挟まっているだけのため、被覆電線110が捩られたときに、防水手段と被覆電線110との間、あるいは被覆層被嵌部122と防水手段との間に隙間が生じて、防水手段による防水性能が損なわれるおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、端子金具に圧着接続された被覆電線に外部から捩り力や曲げ力が作用した場合でも、金属製キャップに破断が生じ難く、金属製キャップの破断による止水性能の低下を防止することができる端子接続構造を提供することにある。更に、本発明の目的は、被覆電線に外部から捩り力や曲げ力が作用した場合でも、被覆電線の絶縁被覆層と金属製キャップとの間を止水する防水手段の防水性が低下し難く、防水手段による防水性能を安定維持することのできる端子接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)被覆電線の端部において絶縁被覆層が剥がされて露出された露出導体に被さる有底筒状の導体被嵌部と、前記導体被嵌部の開口端から延出して前記露出導体の根本側の絶縁被覆層の上に被さる筒状の被覆層被嵌部と、前記導体被嵌部と前記被覆層被嵌部との間のテーパ管状のつなぎ目部分と、を備えた金属製キャップと、
前記被覆層被嵌部と前記絶縁被覆層との間を止水する防水手段と、
前記導体被嵌部の外周に加締め付けられた導体加締め爪と、相手の端子接続部に接続するための接続端子部と、を備えた金属製の端子金具と、
を備え、
前記金属製キャップを介して前記端子金具が前記露出導体に圧着接続された状態にある端子接続構造であって、
前記防水手段として、前記被覆層被嵌部と該被覆層被嵌部の手前の前記絶縁被覆層とに跨がって嵌合装着されて前記被覆層被嵌部と前記絶縁被覆層との接続部を止水する防水チューブを備えると共に、
前記端子金具、前記防水チューブの外周に加締め付けられて前記端子金具を前記絶縁被覆層に固定する被覆加締め爪を備えると共に、前記導体加締め部爪と前記被覆加締め爪との間を連結する連結部を備え、
前記連結部は、前記つなぎ目部分を収容保持する形状であることを特徴とする端子接続構造。
【0011】
(2)前記防水チューブの外周には、周方向に沿って延設された位置決め溝が設けられ、
前記被覆加締め爪が、前記位置決め溝に加締め付けられていることを特徴とする上記(1)に記載の端子接続構造。
【0012】
上記(1)の構成によれば、端子金具と被覆電線との間の機械的接続は、導体加締め爪による圧着部と、被覆加締め爪による加締め部と、の2箇所で行われ、端子金具と被覆電線との間に介在する金属製キャップにおける導体被嵌部と被覆層被嵌部との双方がしっかりと被覆電線に固定される。
【0013】
そのため、端子金具に圧着接続された被覆電線に外部から捩り力や曲げ力が作用して被覆電線が捩られた場合でも、圧着部に応力が集中することがなく、金属製キャップの導体被嵌部と被覆層被嵌部との間に破断が生じ難い。従って、金属製キャップの破断による止水性能の低下を防止することができる。
【0014】
また、金属製キャップの被覆層被嵌部と被覆電線の絶縁被覆層との間を止水する防水手段が前記被覆層被嵌部と該被覆層被嵌部の手前の前記絶縁被覆層とに跨がって嵌合装着される防水チューブで、該防水チューブは、端子金具の被覆加締め爪による加締め付けによって、しっかりと絶縁被覆層に締結固定される。そのため、被覆電線に外部から捩り力や曲げ力が作用して被覆電線が捩られた場合でも、防水手段と被覆電線との間、及び被覆層被嵌部と防水手段との間のいずれにも、隙間が生じ難い。従って、被覆電線の絶縁被覆層と金属製キャップとの間を止水する防水手段の防水性が低下し難く、防水手段による防水性能を安定維持することができる。
【0015】
上記(2)の構成によれば、端子金具の被覆加締め爪が防水チューブ外周の位置決め溝に加締め付けられているため、防水チューブは、端子金具や被覆電線における径方向及び軸方向のいずれにも相対移動が規制される。従って、被覆電線に外部から捩り力や曲げ力が作用して被覆電線が捩られた場合でも、防水手段としての防水チューブの位置ずれに起因した隙間の発生を防止することができ、防水手段における防水性に対する信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による端子接続構造によれば、端子金具に被覆加締め爪が装備されたことによって、端子金具と被覆電線との間に介在する金属製キャップにおける導体被嵌部と被覆層被嵌部との双方がしっかりと被覆電線に固定される。
【0017】
そのため、端子金具に圧着接続された被覆電線に外部から捩り力や曲げ力が作用して被覆電線が捩られた場合でも、圧着部に応力が集中することがなく、金属製キャップの導体被嵌部と被覆層被嵌部との間に破断が生じ難い。従って、金属製キャップの破断による止水性能の低下を防止することができる。
【0018】
また、金属製キャップの被覆層被嵌部と被覆電線の絶縁被覆層との間を止水する防水手段が前記被覆層被嵌部と該被覆層被嵌部の手前の前記絶縁被覆層とに跨がって嵌合装着される防水チューブで、該防水チューブは、端子金具の被覆加締め爪による加締め付けによって、しっかりと絶縁被覆層に締結固定される。そのため、被覆電線に外部から捩り力や曲げ力が作用して被覆電線が捩られた場合でも、防水手段と被覆電線との間、及び被覆層被嵌部と防水手段との間のいずれにも、隙間が生じ難い。従って、被覆電線の絶縁被覆層と金属製キャップとの間を止水する防水手段の防水性が低下し難く、防水手段による防水性能を安定維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る端子接続構造の一実施形態の端子接続構造の平面図である。
図2図1に示した端子接続構造の側面図である。
図3】従来の端子接続構造における被覆電線の端部と金属製キャップとの関係を示す斜視図である。
図4】従来の端子接続構造における金属製キャップと端子金具との関係を示す斜視図である。
図5】従来の端子接続構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る端子接続構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1及び図2は本発明に係る端子接続構造の一実施形態を示したもので、図1は本発明に係る端子接続構造の一実施形態の端子接続構造の平面図、図2図1に示した端子接続構造の側面図である。
【0022】
この一実施形態の端子接続構造は、被覆電線1と、被覆電線1の端部に被嵌装着される金属製キャップ10と、防水チューブ20と、端子金具30と、で構成される。
【0023】
被覆電線1は、予めその端部において導体の周囲を覆っている絶縁被覆層2が剥がされて、端部に所定長の露出導体(不図示)が突出した形態に端部処理される。
【0024】
金属製キャップ10は、被覆電線1の端部の露出導体(不図示)に被さる有底円筒状の導体被嵌部11と、導体被嵌部11の開口端から延出して前記露出導体の根本側の絶縁被覆層2の上に被さる円筒状の被覆層被嵌部12と、を備えている。
【0025】
導体被嵌部11は、内径が被覆電線1の露出導体の外径よりも僅かに大きく設定された有底円筒状である。被覆層被嵌部12は被覆電線1の導体被嵌部11の外径よりも僅かに大きく設定された円筒状である。導体被嵌部11と被覆層被嵌部12との間のつなぎ目部分13はテーパ管状になっている。
【0026】
金属製キャップ10は、被覆電線1の露出導体や端子金具30との接触によって電食が発生し難い金属材料により一体形成されている。
【0027】
防水チューブ20は、被覆層被嵌部12と絶縁被覆層2との間を止水する防水手段として装備されるもので、被覆層被嵌部12と該被覆層被嵌部12の手前の絶縁被覆層2とに跨がって嵌合装着されて被覆層被嵌部12と絶縁被覆層2との接続部を止水する。
【0028】
防水チューブ20は、内面が被覆層被嵌部12や絶縁被覆層2に密着するように、内径が被覆層被嵌部12や絶縁被覆層2の外径よりも僅かに小さく設定されている。
【0029】
また、本実施形態の防水チューブ20は、外周に、周方向に沿って延設された位置決め溝21が設けられている。位置決め溝21は、防水チューブ20の外周を周回する環状溝になっている。
【0030】
本実施形態の端子金具30は、導体被嵌部11の外周に加締め付ける導体加締め爪31と、相手の端子接続部に接続するための接続端子部32と、防水チューブ20の外周に加締め付けられて端子金具30を絶縁被覆層2に固定する被覆加締め爪33と、導体加締め爪31と被覆加締め爪33との間を連結する連絡部34と、を備えている。
【0031】
被覆加締め爪33は、幅寸法が、前述の位置決め溝21に対応して設定されていて、位置決め溝21に加締め付けられる。
【0032】
連絡部34は、被覆層被嵌部12及びつなぎ目部分13を収容する半円筒状(樋状)に形成されている。
【0033】
端子金具30は、導体加締め爪31を導体被嵌部11の外周に加締め付けることにより、導体被嵌部11を介して端子金具30が被覆電線1の露出導体に圧着接続された状態にされる。更に、端子金具30は、被覆加締め爪33を防水チューブ20の位置決め溝21に加締め付けることで、端子金具30の端部が被覆電線1の絶縁被覆層2に固定された状態にされる。
【0034】
以上に説明した一実施形態における端子接続構造によれば、端子金具30と被覆電線1との間の機械的接続は、導体加締め爪31による圧着部と、被覆加締め爪33による加締め部と、の2箇所で行われ、端子金具30と被覆電線1との間に介在する金属製キャップ10における導体被嵌部11と被覆層被嵌部12との双方がしっかりと被覆電線1に固定される。
【0035】
そのため、端子金具30に圧着接続された被覆電線1に外部から捩り力や曲げ力が作用して被覆電線1が捩られた場合でも、圧着部に応力が集中することがなく、金属製キャップ10の導体被嵌部11と被覆層被嵌部12との間に破断が生じ難い。従って、金属製キャップ10の破断による止水性能の低下を防止することができる。
【0036】
また、金属製キャップ10の被覆層被嵌部12と被覆電線1の絶縁被覆層2との間を止水する防水手段が被覆層被嵌部12と該被覆層被嵌部12の手前の絶縁被覆層2とに跨がって嵌合装着される防水チューブ20であり、該防水チューブ20は、端子金具30の被覆加締め爪33による加締め付けによって、しっかりと絶縁被覆層2に締結固定される。そのため、被覆電線1に外部から捩り力や曲げ力が作用して被覆電線1が捩られた場合でも、防水手段と被覆電線1との間、及び被覆層被嵌部12と防水手段との間のいずれにも、隙間が生じ難い。従って、被覆電線1の絶縁被覆層2と金属製キャップ10との間を止水する防水手段の防水性が低下し難く、防水手段による防水性能を安定維持することができる。
【0037】
更に、以上に説明した一実施形態における端子接続構造によれば、端子金具30の被覆加締め爪33が防水チューブ20外周の位置決め溝21に加締め付けられているため、防水チューブ20は、端子金具30や被覆電線1における径方向及び軸方向のいずれにも相対移動が規制される。従って、被覆電線1に外部から捩り力や曲げ力が作用して被覆電線1が捩られた場合でも、防水手段としての防水チューブ20の位置ずれに起因した隙間の発生を防止することができ、防水手段における防水性に対する信頼性を向上させることができる。
【0038】
なお、本発明の端子接続構造において、端子金具における接続端子部の具体的形状、及び導体加締め爪や被覆加締め爪の具体的形状や大きさ等は、上記実施形態に限定されるものでなく、適宜、変形、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 被覆電線
2 絶縁被覆層
10 金属製キャップ
11 導体被嵌部
12 被覆層被嵌部
20 防水チューブ
21 位置決め溝
30 端子金具
31 導体加締め爪
32 接続端子部
33 被覆加締め爪
34 連絡部
図1
図2
図3
図4
図5