(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
レジャービークル(自動二輪車を含む自動車や滑走艇(PWC)等の船舶および不整地走行車両(ATV)等をいう)、例えば自動二輪車には、エンジンの燃焼室から排気ポートを介して排気(燃焼ガス)を外部に排出する「排気通路」が延設されている。前記排気通路の末端部には、消音効果等を目的として、排気マフラーが設けられている。
【0003】
前記排気マフラーは、両端が閉塞された筒状の外観を有するマフラー本体を有する。かかるマフラー本体の内部は、隔壁によって、複数のチャンバーに区切られている。そして、エンジン側から排出された排気を、排気マフラー内部の各チャンバーに順次流入させてゆくことによって、排気音を所定レベルまで低減して、外気側へ排出する。
具体的には、前記マフラー本体は、薄い鋼板を筒状に屈曲したその両端に、端板(鏡板)が溶接等によって取着されることによって、前記両端が閉塞された筒状のマフラー本体が形成される。そして、前記端板のうち、少なくとも一方の端板を一端に溶接する前に、該筒状体の断面形状に対応する形状の隔壁を本マフラー本体内部に挿置して、該隔壁の周囲に形成されている取付用のフランジ部分と前記マフラー本体の側周壁の内周面とをプラグ溶接することによって、隔壁がマフラー本体内に固定される。このように排気マフラーの内部を1枚又は複数の隔壁で区切ることによって、内部空間を複数のチャンバーに区画している(特許文献1参照)。
【0004】
例えば、排気マフラーの内部は、2枚の隔壁によって、前方から後方に向けて、第1のチャンバー、第3のチャンバー、第2のチャンバーからなる3つのチャンバーに区画される。そして、エンジンからの排気が、まず、排気管を介して、流入パイプを通って前記第1のチャンバーに流入し、次に、第1のチャンバーから第2のチャンバーに第1の連通管(連通用パイプともいう)を介して流入し、次に、第2のチャンバーから第3のチャンバーに第2の連通管を介して流入し、最後に、第3のチャンバーから、排気マフラーの外部に排出パイプ(排出管)を介して排気するように構成されているものが知られている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の排気マフラーの場合、前記隔壁の周囲に形成されている取付用のフランジ部分とマフラー本体の側周壁は、専らプラグ溶接によって所定間隔でしか固定されていない。このため、プラグ溶接されていない部分では、これらの間に小さな隙間が生じている。また、かかる隙間が生じる原因は、前記隔壁とマフラー本体の側周壁がプレス加工で製造され、加工精度が機械加工に比べて低いことにもある。
【0007】
このため、前述した排気の流れどおりに全量の排気が流れるのではなく、排気の一部は、前記第2のチャンバーを経ることなく、前記隙間を介して前記第1のチャンバーから第3のチャンバーに直接排気が流入してしまうようなことが生じる。つまり、排気マフラー内において、所定の流路から一部の排気がバイパスし、所望の消音効果を得ることができないという問題がある。
【0008】
この対応策として、前記隔壁のフランジ部分とマフラー本体の内周面との接触部分を全周にわたって連続的に溶接することも考えられるが、かかる場合には、前記マフラー本体や隔壁が薄板で構成されていることから、熱歪みで全体が変形したり、あるいは製造原価を大幅に増加させることになる。また、溶接トーチをマフラー本体内に挿入することができず全周溶接は難しいという問題もある。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みておこなわれたもので、十分な消音効果を得ることができ、且つ、製造コストを無用に増加させることのない排気マフラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるレジャービークル用の排気マフラーは、内部に消音のための膨張空間が形成され両端部が閉塞された筒状のマフラー本体と、
前記マフラー本体の外壁を貫通して排気を内部に流入させる流入パイプと、
前記マフラー本体内の膨張空間を複数のチャンバーに区画する少なくとも1つの隔壁部材と、
前記隔壁部材で区画され該隔壁部材を隔てて両側に位置する各チャンバー間を連通する連通路と、
前記マフラー本体の外壁を貫通して内部の排気を外部へ排出する排気パイプと、
を備えるとともに、
前記少なくとも1つの隔壁部材が、
前記マフラー本体内に収納され、該マフラー本体の長手方向の寸法より短い長さと且つマフラー本体の内部空間の横断面寸法より小さい横断面寸法を有する、筒状の周壁とその一端を閉塞する底壁を備え、該周壁と底壁によって囲まれた凹状の形態を備え、
前記連通路が、
前記隔壁部材の周壁とマフラー本体の内面との間に形成される隙間によって形成されていることを特徴とする。
【0011】
前述のように構成された本発明にかかる排気マフラーによれば、隔壁部材の両側に形成された各チャンバーは、前記周壁と底壁とを備え該周壁と底壁によって囲まれた凹状の隔壁部材を介して区画されおり、該隔壁部材を、1枚の板材(鋼板等)をプレス加工等することによって前記周壁と底壁を形成すれば、周壁と底壁で囲まれた凹状内の空間部分へは、第1のチャンバーあるいは第2のチャンバーをバイパスして排気が流入するようなことはなく、十分な消音効果を得ることができる。
つまり、排気は、例えば上流側に位置する第1のチャンバーがある場合には、該第1のチャンバーから専ら前記隙間からなる連通路を経て下流側となる第2のチャンバーへ流入し、しかる後に第2のチャンバーから前記隔壁部材の反底壁側の開口部分から周壁と底壁で囲まれた凹状の空間部分へ流入することになる。
従って、前記隔壁部材の前記開口部分を狭くして該隔壁部材の凹状の内側に形成される空間部分を独立したチャンバーとした場合、例えば、以下に述べるような、反底壁側の開口部を閉塞部材で塞いで第3のチャンバーを形成し連通用のパイプで前記第2のチャンバーと第3のチャンバーとを接続した形態の排気マフラーとした場合には、最上流側の第1のチャンバーから第3のチャンバーへ排気がバイパスするようなことはない。
そして、本発明のように、各チャンバー(例えば第1のチャンバーと第2のチャンバーと)を連通する連通路が、前記隙間によって構成されていると、従来のものでは必須の構成であった隔壁部材の両側の各チャンバー間を連通させるための連通用のパイプを省略することができる。このため、部品点数を低減し、該パイプを取着するための工数や加工(溶接)も低減することができるという、「一石二鳥」の効果を得ることができる。
このため、現在、限界に近いほど合理化されている、排気マフラーのコストをさらに低減することが可能となる。
【0012】
また、前記排気マフラーにおいて、前記隔壁部材の周壁の長さが、前記マフラー本体の長さの1/10〜1/2の長さであると、この隔壁部材の凹状の内部に形成される空間の容積が膨張空間として十分な大きさとなるとともに、前記隙間によって形成される連通路の長さが十分となって、必要な消音効果を得ることができる構成となる。また、前記隔壁部材の周壁の外周面と前記マフラー本体の内周面との間で溶接箇所以外において仮に微小な隙間が生じていても、前記隔壁部材の長さによる圧力損失によって、実質上、排気がバイパスするのを防止できる構成となる。
また、前記構成の場合、前記排出パイプの上流端をこの隔壁部材の凹状の内部空間に開口させることが好ましい構成となる。
【0013】
また、前記排気マフラーが、さらに、前記隔壁部材の周壁の反底壁側の開口部を閉塞する閉塞部材と、前記閉塞部材を貫通する連通用パイプと、前記閉塞部材で前記隔壁部材の開口部が閉塞されて該隔壁部材内に形成される第3のチャンバーとを備え、前記第3のチャンバーと、前記第1のチャンバー又は第2のチャンバーとを、前記連通用パイプによって排気が流通可能に構成すると、簡単な構成による、3つの膨張室を有する好ましい排気マフラーを実現できる。
【0014】
また、前記マフラー本体の前記両端部がそれぞれ端板によって閉塞されており、一端を閉塞する前記端板を前記流入パイプが貫通して内部に排気を流入可能に構成するとともに、他端を閉塞する前記端板を前記排出パイプが貫通して内部の排気を外部へ排出可能に構成し、前記排出パイプの上流端を前記第3のチャンバー内で開口させ、前記隔壁部材の底面が前記流入パイプの下流端の開口に向き合うように配置するとともに、該隔壁部材の底面と前記一端を閉塞する端板との間に前記第1のチャンバーを形成し、前記流入パイプの下流端から前記第1のチャンバー内に排気を流入させ、該第1のチャンバーから前記隙間からなる連通路を通って前記第2のチャンバーへ排気を流入させ、該第2のチャンバーから前記連通用パイプを通って前記第3のチャンバーへ排気を流入させ、該第3のチャンバーから前記排出パイプを通ってマフラー本体の外方へ排気を排出させるように構成すると、好ましい構成の排気マフラーを実現することができる。
【0015】
また、前記排気マフラーにおいて、前記隔壁部材の底面が尖頭状の形態を有していると、排気の流れを円滑にし、排気通路の背圧を無用に上昇させることのない排気マフラーとなる。
【0016】
また、前記排気マフラーにおいて、前記隔壁部材の底面が凹凸状の面で構成されていると、凹凸部分に排気がぶつかって該排気のエネルギーの一部が消耗され、消音効果の高い排気マフラーとなる。
【0017】
また、前記排気マフラーにおいて、前記隙間が、前記隔壁部材の外周方の異なる部位の複数箇所に形成されていると、連通用のパイプを使用することなくバイパス型の排気マフラーを実現することができる。
【0018】
また、前記隔壁部材が、前記マフラー本体内に長手方向に相互に離間して配置された、第1の隔壁部材と第2の隔壁部材とを含み、前記第1の隔壁部材と前記マフラー本体の上流側の一端との間に、第1のチャンバーを備え、前記第2の隔壁部材と前記マフラー本体の下流側の一端との間に、第2のチャンバーを備え、
さらに、前記第1の隔壁部材と第2の隔壁部材との間に第3のチャンバーと、前記第1のチャンバーから前記第2のチャンバーに排気を流通させる連通パイプと、前記第1のチャンバーと前記第3のチャンバーとを、前記第1の隔壁部材の周壁とマフラー本体の内面との間に形成される隙間により連通させる、第1の連通路と、前記第2のチャンバーと前記第3のチャンバーとを、前記第2の隔壁部材の周壁とマフラー本体の内面との間に形成される隙間により連通させる、第2の連通路と、を備えた構成にすると、簡単な構成と簡単な組立加工でバイパス型の形態をした排気マフラーを実現できる。
【発明の効果】
【0019】
前述のように構成された本排気マフラーによると、十分な消音効果を得ることができ、且つ、製造コストを無用に増加させることのない排気マフラーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例にかかるレジャービークル用の排気マフラーを図面に基づいて具体的に説明する。
【0022】
(実施例1)
図1、
図2において、Aは排気マフラーで、この排気マフラーAは、両端部が閉塞された筒状の形態をしたマフラー本体1と、排気マフラーAの内部へ排気を流入させる流入パイプ2と、内部の排気を排気マフラーAの外部へ排出する排出パイプ3と、マフラー本体1内の膨張空間を複数のチャンバーに区画する隔壁として該マフラー本体1内に配置される隔壁部材4とを有する。かかる
図1,
図2に示す排気マフラーAは、所謂「直流型の排気マフラー」である。
【0023】
前記マフラー本体1は、この実施例の場合、
図2に図示するように、平板状の部材1aを7箇所で屈曲させてその両方の自由端同士を連続的に溶接して、断面視がリング状の側周壁(外壁の一部)1Dを形成し、
図1に図示するように、かかる側周壁1Dの長手方向の一端(上流端)を端板(外壁の一部)1Aで閉塞し、他端(下流端)を端板(外壁の一部)1Bで閉塞して、筒状体の形態に形成されている。そして、かかるマフラー本体1の内部に膨張空間1Cを形成している。
【0024】
前記端板(外壁の一種)1Aには、前記流入パイプ2が貫通して配置され、図示しないエンジン(この実施例の場合、4サイクルエンジン)の燃焼室の排気ポートから排気管を介して、排気が、該流入パイプ2を通ってマフラー本体1内へ流入してくるように構成されている。また、前記流入パイプ2と端板1Aとの接続部分では、該流入パイプ2の外周面が端板1Aの貫通穴の縁部に連続的に溶接され、接続部分での気密性が確保されている。
同様に、前記端板(外壁の一種)1Bには、前記排出パイプ3が貫通して配置され、排気マフラーA内で所定レベルまで消音された排気を外部へ排出するよう構成されている。また、前記排出パイプ3と端板1Bとの接続部分では、前記排出パイプ3の外周面が端板1Bの貫通穴の縁部に連続的に溶接され、接続部分での気密性が確保されている。
【0025】
前記隔壁部材4は、
図1に図示するように、この実施例では周壁が側面視においてストレート状(くびれのない形態)になった「ペイル(pail)缶」状の形態を有している。また、隔壁部材4の長さは前記マフラー本体1の長さより短く、この実施例1ではマフラー本体1の全長の略1/3程度の長さに構成されている。かかる隔壁部材4の長さとしては、例えばマフラー本体1の全長の略1/10〜略1/2である。
また、
図2に図示するように、この隔壁部材4の横断面寸法は、前記マフラー本体1の横断面寸法より小さく、つまり、マフラー本体1の内部に隔壁部材4が収容されるような寸法になっており、この実施例1では、
図2に図示するように全体の横断面寸法が、下端部を除いて、内部にほぼ密着した状態で収容できる程度に小さく構成されている。そして、このマフラー本体1の下端部には、その内周面(前記側周壁1Dの内周面)と前記隔壁部材4の外周面との間に、排気の連通路となる隙間8が形成されている。
図2に図示する前記隙間8の横断面積は、この実施例1の場合、マフラー本体1の横断面積の略1/12〜1/8程度に構成されているが、この横断面積の比率は、所望する消音効果と排気効率等に鑑みて、適宜決定される。従って、前記具体的な値は単なる例示にすぎず、本発明を限定するものではない。前記隙間8からなる連通路の長さは、隔壁部材4の長さと同じ長さとなる。
また、前記隙間8の位置は、この実施例1では、マフラー本体1の下端部に形成されているが、いずれの位置であってもよく、例えば、上端部や側端部であってもよい。
しかし、前述のように、マフラー本体1の下端部を除いて、内部に密着した状態で収容できる程度に小さく構成した場合には、かかる隔壁部材4は、形状的に密接した状態となってマフラー本体1内に遊動することなく係止されるため、該隔壁部材4を固定するためのプラグ溶接部分等の溶接部分には、剥離しようとする大きな負荷が作用することはない。
【0026】
また、前記隔壁部材4は、この実施例の場合、1枚の板材をプレス加工(絞り加工)することによって前述のような筒状の周壁4cとその一端を閉塞する底壁4dが形成され、従って、該周壁4cと底壁4dで形成される凹状の壁部に排気がバイパスするような隙間はない。
そして、
図1に図示するように、前記隔壁部材4の反底壁側(
図1において左側)の開口部は、開口部の形状に対応した略等しい形状の閉塞部材4Bを当接させた状態で、プラグ溶接または全周溶接により閉塞されている。この結果、該隔壁部材4の凹状の部分と閉塞部材4Bで囲まれた内部に、第3のチャンバー12が形成されている。もちろん、前記閉塞部材4Bと前記隔壁部材4の開口部とを、缶詰の蓋部分の接続部分のように、「カシメ」や「はぜ継手」等の機械的な接合構造によって取着(挟着)してもよい。かかる閉塞部材4Bの前記隔壁部材4の開口部への取着構造は、前記以外の種々の形態のものを用いることができる。
また、前記隔壁部材4の底壁4dの外面4bは、
図1に二点鎖線(仮想線)で記載するように、平面でなく尖頭状の形態にしてもよく、あるいは
図3に二点鎖線(仮想線)で記載するように、隔壁部材104の底壁の外面104bの表面に凹凸を形成した形態にしてもよい。
【0027】
また、この実施例1では、前記マフラー本体1の上流側からその全長の略1/2のところに前記隔壁部材4の上流端が位置し、該隔壁部材4の下流端と前記端板1Bとの寸法がマフラー本体1の全長の1/6程度になるように、該隔壁部材4がマフラー本体1内に配置されている。その結果、前記隔壁部材4の上流端側にはマフラー本体の全長の略1/2程度の長さを有する空間(第1のチャンバー10)が、また、該隔壁部材4の下流端側にはマフラー本体1の全長の1/6程度の長さを有する空間(第2のチャンバー11)が形成される。また、この実施例1では、前記隔壁部材4の開口部側(反底壁4d側あるいは閉塞部材4B側)が下流端方を向くように隔壁部材4が横倒しにした状態で配置され、該隔壁部材4の周壁4cとマフラー本体1の側周壁1Dとがプラグ溶接等を用いて 溶接(固定)されている。かかるプラグ溶接に代えて、通常の溶接で固定してもよいし、あるいは耐熱性の接着剤で接着等することによって固定してもよい。
【0028】
前述のように内部に隔壁部材4が配置された前記マフラー本体1内には、該隔壁部材4の前後方向の両側に、二つのチャンバー、即ち、前記第1のチャンバー10と第2のチャンバー11が形成される。そして、かかる第1のチャンバー10から第2のチャンバー11へは、前記隙間8によって形成される連通路を通って、排気が流入するよう構成されている。
【0029】
また、前記閉塞部材4Bには貫通穴が形成され、かかる貫通穴に連通用のパイプ9が貫通するよう配置され、前記第2のチャンバー11から前記第3のチャンバー12へ、排気が流入するように構成されている。
【0030】
また、前記閉塞部材4Bの別の位置には、前記貫通穴とは別の貫通穴が形成され、かかる貫通穴に前記排出パイプ3が貫通して、その上流端が前記第3のチャンバー12内で開口している。このため、前記排出パイプ3を通って、前記第3のチャンバー12から本排気マフラーAの外へ排気を排出することができるように構成されている。
【0031】
ところで、前記流入パイプ2の下流側の開口端2aは、前記端板1Aの略中央部を貫通し、おおむね前記隔壁部材4の底面4bに向き合うように配置されている。
【0032】
前述のように構成された本排気マフラーAは、以下のように排気を消音する。つまり、
前記構成からなる排気マフラーAによれば、前記流入パイプ2からマフラー本体1内に流入した排気は、前記第1のチャンバー10において膨張して所定レベルまで消音され、かかる第1のチャンバー10から前記隙間8からなる連通路を経て、前記第2のチャンバー11に流入し、かかる第2のチャンバー10においても膨張してさらに所定レベルまで消音される。そして、前記第2のチャンバー11から前記連通用のパイプ9を経て、前記第3のチャンバー12に流入して、この第3のチャンバー12においても膨張してさらに消音される。排気はさらに、この第3のチャンバー12から前記排出パイプ3を経て、かかる排気マフラーA内部から外気側に、所定レベルにまで消音された状態で排出される。
【0033】
本実施例にかかる排気マフラーAの場合、前述のように、前記隔壁部材4によって、マフラー本体1内の空間を前後に二つのチャンバー(第1のチャンバー10と第2のチャンバー11)に区画しているため、仮に該隔壁部材4の周壁4cとマフラー本体1の側周壁1Dとの取着(溶接)箇所において、プラグ溶接等や板金加工に起因して、多少の隙間が発生したとしても、前記第1のチャンバー10から第3のチャンバー12に排気がバイパスしてしまうようなことはなく、十分な消音効果を得ることができる。
【0034】
また、前述のように、前記隙間8を第1のチャンバー10と第2のチャンバー11との連通路として利用しているため、従来の排気マフラーではこれら二つのチャンバー間を連通させるために必要であった連通用のパイプを省略することができる。このため、構造が簡素化できる。さらに、組立工数や組立加工も低減できることから、製造コストを低減させることができる。
【0035】
(実施例2)
前記実施例1とは別の実施例(実施例2)として、
図3、
図4に図示するように、隔壁部材104の外周面とマフラー本体101の内周面(側周壁101Dの内周面)との間に、隙間108A,108Bからなる連通路を2箇所に形成してもよい。つまり、前記連通路を構成する隙間108A,108Bが、前記隔壁部材104の外周方の異なる部位の複数箇所に形成されている。例えば、この実施例2の場合、
図3、
図4に図示するように、マフラー本体101の上端部と下端部に前記隙間108Aと隙間108Bを形成している。このように、マフラー本体101の上端部と下端部の複数箇所に隙間108A,108Bを形成すると、第1のチャンバー110から第2のチャンバー111へ、前記隙間108A,108Bを介して二つの流れとなって排気が流入し、かかる第2のチャンバー111内において二つの排気の流れが合流して渦流状態となる。かかる合流によって排気の有するエネルギーが低減され、より高い消音効果を得ることができる。また、この実施例2では、従来の排気マフラーでは必要となる連通用のパイプを、2本削減することができる。
本実施例2にかかる排気マフラー100Aの他の構成については、前記実施例1に記載する構成と基本的に同じ構成であり、実施例1の構成要素と対応する主な構成要素について、実施例1の各構成要素に用いた参照符号に「100」を加えた参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0036】
(実施例3)
前記実施例1、2とは別の実施例(実施例3)として、
図5、
図6に図示するように、隔壁部材204の外周面とマフラー本体201の内周面(側周壁201Dの内周面)との間に、複数箇所、この場合には、取付部分を除く全周にわたって隙間208を形成してそれらを連通路としてもよい。例えば、前記隔壁部材204を前記マフラー本体201内に、全周の複数の箇所で取付部材216を介して固定して、該隔壁部材204の外周面とマフラー本体201の側周壁201Dの内周面との間に、全周にわたって形成されている隙間208からなる連通路を形成してもよい。
【0037】
このように構成すると、第1のチャンバー210から第2のチャンバー211へ、前記隔壁部材204の周囲全体に形成された隙間208を通って排気が流入し、かかる第2のチャンバー211内において、より顕著に渦流状態となって合流する。かかる合流によって排気の有するエネルギーが低減して、さらに高い消音効果を得ることができる構成となる。
本実施例3にかかる排気マフラー200Aの他の構成については、前記実施例1に記載する構成と基本的に同じ構成であり、実施例1の構成要素と対応する主な構成要素について、実施例1の構成要素に用いた参照符号に「200」を加えた参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0038】
(実施例4)
前記実施例1〜3とは別の実施例(実施例4)として、
図7、
図8に図示するように、本発明による所謂「バイパス型の排気マフラー」を、簡単な構成で実現することができる。つまり、
図7,
図8に図示するように、隔壁部材として第1の隔壁部材304Aと第2の隔壁部材304Bを、マフラー本体301内にその長手方向に前後するように且つ各隔壁部材304A,304Bの開口部分304eが対向するように配置する。
また、前記隔壁部材304Aを配置している箇所では、前記マフラー本体301の下端部に該隔壁部材304Aと側周壁301Dとの間に第1の隙間308Aからなる連通路を形成し、前記隔壁部材304Bを配置している箇所では、前記マフラー本体301の上端部にその内周面(側周壁301Dの内周面)と該隔壁部材304Bとの間に第2の隙間308Bからなる連通路を形成する。
また、この実施例4では、前記第1の隔壁部材304Aの凹状の空間部分と前記第2の隔壁部材304Bの凹状の空間部分とで、これらの間に、第3のチャンバー312を形成している。
そして、前記第1の隔壁部材304Aと前記第2の隔壁部材304Bを貫通するよう、連通用のパイプ309を配置して、前記第1の隔壁部材304Aとマフラー本体301の端板301Aとの間に形成される第1のチャンバー310から、前記第2の隔壁部材304Bとマフラー本体301の端板301Bとの間に形成される第2のチャンバー311へ、排気の一部を流入させることができるよう構成されている。
さらに、前記第2の隔壁部材304Bの底壁と前記端板301Bとを貫通するよう、且つ前記第3のチャンバー312に上流端が開口するように、排出パイプ303を配置して、前記第3のチャンバー312から排気マフラー300Aの外方へ排気を排出するよう構成されている。
また、この実施例4では、前記マフラー本体301の断面形状が、
図8に図示するように、楕円形に構成されており、第1の隔壁部材304Aと第2の隔壁部材304Bもこれに対応した断面形状であってその一部(この実施例4では、下端部または上端部)が切り取られたような形態をしている。このように、マフラー本体の断面形状としては、種々の形態にすることができる。
【0039】
前述のように排気マフラー300Aを構成すると、内部の隔壁を形成するために、単に二つの隔壁部材304A,304Bをプラグ溶接等でマフラー本体301の側周壁301Dに固定するだけでよい。つまり、前記実施例1〜3のように、閉塞部材を隔壁部材の開口部に全周溶接する必要がない点で、極めて合理的な構成となる。
【0040】
そして、前記構成にかかる排気マフラー300Aでは、排気は、前記流入パイプ302から前記マフラー本体301内の第1のチャンバー310に流入し、次に排気の一部は、前記連通用のパイプ309を介して第2のチャンバー311へ流入するとともに、他の一部(残り)の排気は、前記第1の隙間308Aで構成される連通路を通って、前記第3のチャンバー312に流入する。
また、前記第2のチャンバー311へ流入した排気は、前記第2の隙間308Bを通って、前記第3のチャンバー312に流入する。そして、第3のチャンバー312内で、二つの流路を通って流入してきた排気が渦流状態となって合流する。かかる合流によって排気の有するエネルギーが低減して、さらに高い消音効果を得ることができる。
そして、前記第3のチャンバー312から前記排出パイプ303を通って外気側に排出される。
【0041】
この実施例4にかかる排気マフラー300Aの場合、前記第1の隔壁部材304Aと第2の隔壁部材304Bを、前記連通用のパイプ309を介して、予めサブアッセンブリしておき、さらには前記排出パイプ303を含めてこれらの部材をサブアッセンブリしておけば、マフラー本体301の端板301Bおよび端板301Aの一方の端板を配設する前に、該マフラー本体301内へ挿入してその内周面に、プラグ溶接等で固定すれば、比較的複雑な流路を有するにも拘わらず、簡単に製造することができる点においても、優れている。
本実施例4にかかる排気マフラー300Aの他の構成については、前記実施例1に記載する構成と基本的に同じ構成であり、実施例1の構成要素と対応する主な構成要素について、実施例1の構成要素で用いた参照符号に「300」を加えた参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0042】
なお、前記各実施例を表した
図1,
図3,
図5,
図7において、先端に矢印を付した曲線は排気の流れを示したものである。
【0043】
このように、本発明は、前記実施例1〜3のような直列型の排気マフラーにも、前記実施例4のようなバイパス型の排気マフラーにも適用することができ、本発明の有する基本的な作用効果を奏することができる。
【0044】
また、前記実施例における各構成については、材質的には言及していないが、一般的には、薄板鋼板が使用される。しかし、各構成は、材質に特に限定されるものでなく、必要に応じてセラミックスや耐熱樹脂等を使用することもできる。
【0045】
また、前記実施例1〜3において、隔壁部材とマラフー本体の断面形状はともに多角形としたが、断面形状の組み合わせはこれに限られるものでなく、例えば、マフラー本体の断面形状を多角形とし、
図2に二点鎖線で示す如く隔壁部材400の断面形状を円形としてもよいし、また、マフラー本体の断面形状を円形とし、隔壁部材の断面形状を多角形としてもよい。
【0046】
また、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に基づく範囲において種々の形態で実施することが可能となることは言うまでもない。