特許第5878780号(P5878780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5878780組合せ秤におけるホッパゲートの駆動方法及び組合せ秤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878780
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】組合せ秤におけるホッパゲートの駆動方法及び組合せ秤
(51)【国際特許分類】
   G01G 19/387 20060101AFI20160223BHJP
【FI】
   G01G19/387 E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-32296(P2012-32296)
(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2013-167594(P2013-167594A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2015年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208444
【氏名又は名称】大和製衡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 忠信
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−7525(JP,A)
【文献】 特開2010−38687(JP,A)
【文献】 特開2009−236579(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/147419(WO,A1)
【文献】 米国特許第4446938(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G19/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物を保持して排出するホッパと、前記ホッパの排出口に設けられたホッパゲートと、パルスに応じて回転して、前記ホッパゲートを開閉駆動するステッピングモータとを備える組合せ秤における前記ホッパゲートの駆動方法であって、
予め、前記ホッパゲートを開閉駆動したときの前記ステッピングモータのトルクを、パルス数に応じて計測する第1ステップと、
前記第1ステップでパルス数に応じて計測した前記トルクに基づいて、前記ホッパゲートを開閉駆動するのに必要なステッピングモータの駆動電流値を前記パルス数に応じて求める第2ステップと、
前記ステッピングモータの駆動電流を、前記第2ステップで求めたパルス数に応じた駆動電流値に制御して、前記ホッパゲートを開閉駆動する第3ステップと、
を備えることを特徴とする組合せ秤におけるホッパゲートの駆動方法。
【請求項2】
前記第2ステップでは、前記第1ステップで前記パルス数に応じて計測した前記トルクの計測データを原計測データとし、この原計測データを、パルス数に対して、複数パルス分、パルス数が少ない方向及びパルス数が多い方向にそれぞれ移動させた計測データを第1,第2移動計測データとし、前記原計測データ及び前記第1,第2移動計測データの内、少なくとも第1,第2移動計測データに基づいて、前記ホッパゲートを開閉駆動するのに必要なステッピングモータの駆動電流値を前記パルス数に応じて求める、
請求項1に記載の組合せ秤におけるホッパゲートの駆動方法。
【請求項3】
前記第2ステップでは、前記ホッパゲートの閉止位置から開放位置への移行開始時、及び、開放位置から閉止位置への移行開始時には、前記ステッピングモータの駆動電流値を補正して大きくする、
請求項1または2に記載の組合せ秤におけるホッパゲートの駆動方法。
【請求項4】
被計量物を保持して排出するホッパと、前記ホッパの排出口に設けられたホッパゲートと、パルスに応じて回転して、前記ホッパゲートを開閉駆動するステッピングモータとを備える組合せ秤であって、
前記ホッパゲートを開閉駆動するのに必要なステッピングモータの駆動電流に関する情報が記憶される記憶部と、該記憶部に記憶された前記情報に基づいて、前記ステッピングモータの駆動電流を、前記パルス数に応じて制御する制御部とを備え、
前記記憶部に記憶される前記情報は、予め計測した前記ホッパゲートを開閉駆動したときの前記ステッピングモータのトルクに基づいて求められる情報である、
ことを特徴とする組合せ秤。
【請求項5】
前記記憶部に記憶される前記情報は、前記パルス数及び該パルス数に対応する前記ステッピングモータの駆動電流値を含む、
請求項4に記載の組合せ秤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータにより開閉駆動されるホッパゲートを備える組合せ秤におけるホッパゲートの駆動方法及びそれを用いた組合せ秤に関する。
【背景技術】
【0002】
被計量物を保持して排出するホッパゲートを備える組合せ秤は、様々な製品の計量包装分野において広く利用されている。ホッパゲートの駆動源としては、エアシリンダやモータなどが用いられる。中でもステッピングモータは、サイズが小形でかつデジタル制御が容易であるために、ホッパゲートの駆動源として好適に使用されている。
【0003】
一般に組合せ秤は、投入された被計量物の重量を計測するための複数の計量ホッパと、複数の各計量ホッパに被計量物をそれぞれ供給するための複数の供給ホッパとを備えている。複数の計量ホッパ及び複数の供給ホッパには、被計量物を保持して排出するためのホッパゲートがそれぞれ備えられており、ステッピングモータによって、前記ホッパゲートの開閉の駆動を行う。例えば、計量ホッパが10個で構成されている10ヘッドの組合せ秤では、供給ホッパ10個と併せて計20個のステッピングモータが必要になる。このため、組合せ秤の消費電力を低減するためには、ステッピングモータの消費電流を減らすことが有効である。
【0004】
例えば、特許文献1,2には、ホッパゲートを閉じた状態で保持する場合のステッピングモータの駆動電流をI1とし、ホッパゲートを開いた状態で保持する場合のステッピングモータの駆動電流をI2とし、ホッパゲートを開放駆動または閉止駆動する場合のステッピングモータの駆動電流をI3として、0≦I1<I2<I3になるようにステッピングモータの駆動電流を制御している。
【0005】
これによって、ホッパゲートを開放駆動または閉止駆動する場合のステッピングモータの駆動電流I3に比べて、ホッパゲートを開いた状態で保持する場合の駆動電流I2を小さくし、ステッピングモータの消費電力を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−38687号公報
【特許文献2】特開2011−120353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ホッパゲートを開閉駆動する場合、ホッパゲートの開閉位置によって、必要なトルクは変化するが、上記特許文献1,2では、ホッパゲートを開閉駆動する場合のステッピングモータの駆動電流は、一定値に制御されており、この一定値は、ホッパゲートを閉止位置(または開放位置)から開放位置(または閉止位置)まで動作させるのに必要な駆動電流の内の最大値となっている。したがって、ホッパゲートの開閉動作中には、ホッパゲートの開閉位置によって必要なトルクが変化するにも拘らず、常に最大の駆動電流をステッピングモータに流し続けており、無駄な電力消費を招いているという課題がある。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、消費電力を低減した組合せ秤におけるホッパゲートの駆動方法及び組合せ秤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、次のように構成している。
【0010】
(1)本発明の組合せ秤におけるホッパゲートの駆動方法は、被計量物を保持して排出するホッパと、前記ホッパの排出口に設けられたホッパゲートと、パルスに応じて回転して、前記ホッパゲートを開閉駆動するステッピングモータとを備える組合せ秤における前記ホッパゲートの駆動方法であって、予め、前記ホッパゲートを開閉駆動したときの前記ステッピングモータのトルクを、パルス数に応じて計測する第1ステップと、前記第1ステップでパルス数に応じて計測した前記トルクに基づいて、前記ホッパゲートを開閉駆動するのに必要なステッピングモータの駆動電流値を前記パルス数に応じて求める第2ステップと、前記ステッピングモータの駆動電流を、前記第2ステップで求めたパルス数に応じた駆動電流値に制御して、前記ホッパゲートを開閉駆動する第3ステップとを備える。
【0011】
本発明の組合せ秤におけるホッパゲートの駆動方法によると、予め、ホッパゲートを開閉駆動したときのステッピングモータのトルクを、パルス数に応じて計測し、この計測したトルクのデータに基づいて、ホッパゲートを開閉駆動するのに必要なステッピングモータの駆動電流値をパルス数に応じて求め、この求めた駆動電流値に制御するので、ホッパゲートを開閉駆動するために必要なトルクに応じてステッピングモータの駆動電流を変化させることができる。したがって、ホッパゲートを開閉駆動するのに必要な最大の駆動電流を常に流してステッピングモータを開閉駆動する従来例に比べて、ステッピングモータの消費電力を低減することができる。ホッパゲートを多数有する組合せ秤では、多数のステッピングモータの消費電力の低減を図ることができ、特に有効である。
【0012】
また、必要なトルクに応じてステッピングモータの駆動電流を制御するので、パルスの間隔を時間制御する構成に比べて、制御用のCPUとして、処理速度の高いCPUや複数のCPUを用いる必要がなく、組合せ秤のコストの低減を図ることができる。
【0013】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記第2ステップでは、前記第1ステップで前記パルス数に応じて計測した前記トルクの計測データを原計測データとし、この原計測データを、パルス数に対して、複数パルス分、パルス数が少ない方向及びパルス数が多い方向にそれぞれ移動させた計測データを第1,第2移動計測データとし、前記原計測データ及び前記第1,第2移動計測データの内、少なくとも第1,第2移動計測データに基づいて、前記ホッパゲートを開閉駆動するのに必要なステッピングモータの駆動電流値を前記パルス数に応じて求めるものである。
【0014】
前記複数パルス分は、パルス数が少ない方向と、パルス数が多い方向とで同数でなくてもよい、すなわち、第1,第2移動計測データは、原計測データからの移動量を異ならせてもよい。
【0015】
ホッパゲートには、例えば、組立ての際に、ステッピングモータの回転動力をホッパゲートに伝達するリンク機構のモータ軸への取付け角度のバラツキ等に起因して個体差が生じ、この個体差によって、第1ステップで計測するステッピングモータのトルクの計測データは、パルス数に対してずれが生じるが、この実施形態では、第1ステップで計測した計測データを原計測データとし、この原計測データを、パルス数に対して、パルス数が少ない方向及びパルス数が多い方向にそれぞれ移動させた第1,第2移動計測データに基づいて、ホッパゲートを開閉駆動するのに必要なステッピングモータの駆動電流値を求めるので、個体差の影響を補正することができる。
【0016】
(3)本発明の他の実施態様では、前記第2ステップでは、前記ホッパゲートの閉止位置から開放位置への移行開始時、及び、開放位置から閉止位置への移行開始時には、前記ステッピングモータの駆動電流値を補正して大きくする。
【0017】
この実施態様によると、ホッパゲートの閉止位置から開放位置への移行開始時、及び、開放位置から閉止位置への移行開始時には、ステッピングモータの駆動電流値を大きくするので、閉止位置または開放位置にあるホッパゲートをその慣性に打ち勝って動作させることができ、起動時の脱調を防止することができる。
【0018】
(4)本発明の組合せ秤は、被計量物を保持して排出するホッパと、前記ホッパの排出口に設けられたホッパゲートと、パルスに応じて回転して、前記ホッパゲートを開閉駆動するステッピングモータとを備える組合せ秤であって、前記ホッパゲートを開閉駆動するのに必要なステッピングモータの駆動電流に関する情報が記憶される記憶部と、該記憶部に記憶された前記情報に基づいて、前記ステッピングモータの駆動電流を、前記パルス数に応じて制御する制御部とを備え、前記記憶部に記憶される前記情報は、予め計測した前記ホッパゲートを開閉駆動したときの前記ステッピングモータのトルクに基づいて求められる情報である。
【0019】
本発明の組合せ秤によると、予め、ホッパゲートを開閉駆動したときのステッピングモータのトルクを計測し、この計測データに基づいて求めたホッパゲートを開閉駆動するのに必要なステッピングモータの駆動電流に関する情報を記憶し、この情報に基づいて、ステッピングモータの駆動電流を制御するので、ホッパゲートを開閉駆動するために必要なトルクに応じてステッピングモータの駆動電流を変化させることができる。したがって、ホッパゲートを開閉駆動するのに必要な最大の駆動電流を常に流してステッピングモータを開閉駆動する従来例に比べて、ステッピングモータの消費電力を低減することができる。ホッパゲートを多数有する組合せ秤では、多数のステッピングモータの消費電力の低減を図ることができ、特に有効である。
【0020】
また、必要なトルクに応じてステッピングモータの駆動電流を制御するので、パルスの間隔を時間制御する構成に比べて、制御用のCPUとして、処理速度の高いCPUや複数のCPUを用いる必要がなく、組合せ秤のコストの低減を図ることができる。
【0021】
(5)本発明の好ましい実施態様では、前記記憶部に記憶される前記情報は、前記パルス数及び該パルス数に対応する前記ステッピングモータの駆動電流値を含むものである。
【0022】
この実施態様によると、記憶部に記憶された情報に基づいて、ステッピングモータの駆動電流を、パルス数に応じて制御することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、ステッピングモータの駆動電流を、ホッパゲートを開閉駆動するために必要なトルクに応じて変化させるので、ホッパゲートを開閉駆動するのに必要な最大の駆動電流を常に流してステッピングモータを開閉駆動する従来例に比べて、ステッピングモータの消費電力を低減することができる。
【0024】
また、必要なトルクに応じてステッピングモータの駆動電流を制御するので、パルスの間隔を時間制御する構成に比べて、制御用のCPUとして、処理速度の高いCPUや複数のCPUを用いる必要がなく、組合せ秤のコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は本発明の一実施形態の組合せ秤の概略構成図である。
図2図2図1のホッパゲート駆動機構の概略構成を示すブロック図である。
図3図3は予め計測したステッピングモータのトルクとパルス数との関係を示す図である。
図4図4図3の計測データと、この計測データから算出したステッピングモータの駆動電流とを示す図である。
図5図5図1の組合せ秤のメモリに記憶されるテーブルを示す図である。
図6図6は本発明の他の実施形態の計測データの処理を説明するための図である。
図7図7は本発明の更に他の実施形態の計測データの処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態の組合せ秤の概略構成を示す図である。
【0028】
この実施形態の組合せ秤1は、中央上部に配設された円錐状のトップコーン2を振動させて、該トップコーン2上の被計量物を放射状に分散させるメインフィーダ3と、トップコーン2の周囲に円形に配置された複数のリニアフィーダパン5をそれぞれ振動させて、トップコーン2から分散供給される被計量物を搬送する複数のリニアフィーダ6と、各リニアフィーダパン5に対応して設けられ、各リニアフィーダパン5から被計量物がそれぞれ供給される複数の供給ホッパ4と、各供給ホッパ4から供給される被計量物をそれぞれ計量する複数の計量ホッパ7と、各ホッパ4,7のホッパゲート12を開閉させるための複数のリンク機構13と、各計量ホッパ7からの被計量物を受けて下方の図示しない包装機へ排出する集合シュート8と、ボディ9を支える複数のフレーム10と、フレーム10を支持するベース11とを備えている。
【0029】
この組合せ秤1では、被計量物が、上方に設けられた図示しない供給経路からトップコーン2上に供給され、トップコーン2は、振動によって被計量物を各リニアフィーダパン5へ搬送する。各リニアフィーダパン5は、振動によって被計量物を各供給ホッパ4へ供給する。供給ホッパ4は、供給された被計量物を保持し、所定のタイミングでホッパゲート12を開いて被計量物を計量ホッパ7へと供給する。計量ホッパ7は、供給ホッパ4から受け取った被計量物を保持して計量する。図示しない制御部は、各計量ホッパ7の計量値の合計が予め設定された目標重量よりも大きく、かつ該目標重量に最も近くなるような計量ホッパ7の組合せを演算により求め、該組合せに選択された計量ホッパ7のホッパゲート12を開いて被計量物を排出する。供給ホッパ4及び計量ホッパ7の各ホッパゲート12の開閉は、図2に示されるホッパゲート駆動機構によって行われる。
【0030】
図2は、ホッパゲート駆動機構の概略構成を示すブロック図である。
【0031】
この実施形態のホッパゲート駆動機構は、制御装置14と、電源15と、制御装置14からの制御信号および電源15からの電力を受け取る駆動部(ドライバ)16と、駆動部16によって回転が制御されるステッピングモータ17と、ステッピングモータ17のモータ軸(回転軸)に取り付けられてステッピングモータ17の回転カを伝達する上述のリンク機構13と、このリンク機構13から伝達された駆動カによって開閉する上述のホッパゲート12とを備えている。
【0032】
制御装置14は、CPU18と、メモリ(記憶部)19とを備えている。CPU18は、駆動部16に対して、駆動用のパルス及び駆動電流を制御するための電流制御信号を出力する。メモリ19には、後述のステッピングモータ17の駆動電流を制御するためのテーブルデータや動作プログラム等が記憶されている。
【0033】
制御装置14から駆動部16に対して出力されるパルスは、ステッピングモータ17を駆動するためのパルス信号であり、1個のパルスが入力される度に、ステッピングモータ17が1ステップ角、この実施形態では、0.9度だけ回転する。
【0034】
したがって、この実施形態では、400個のパルスによってステッピングモータ17のモータ軸は一回転する。ステッピングモータ17の回転は、リンク機構13によってホッパゲート12に連結されており、ステッピングモータ17のモータ軸が一回転することによって、ホッパゲート12の開閉の一連の動作が行われる。このホッパゲート12の開閉に必要なトルクは一定でなく、ホッパゲート12の開閉位置によって変化する。
【0035】
この実施形態では、組合せ秤の省電力化を図るために、ホッパゲート12を開閉駆動するステッピングモータ17の駆動電流を可及的に低減するものである。
【0036】
このため、一つのホッパゲート12について、そのホッパゲート12を開閉駆動したときに、ステッピングモータ17のモータ軸にかかるトルクを、トルク計測器を用いて予め計測する。
【0037】
図3は、この予め計測されたステッピングモータ17のモータ軸にかかるトルクと、ホッパゲート12の開閉位置に対応するパルス数との関係を示す図である。
【0038】
この図3のトルクの計測データは、ステッピングモータ17のモータ軸を9度毎、すなわち、10パルス毎回転して、トルク計測器でリンク機構13が動くのに必要なトルクを計測したものである。
【0039】
この実施形態のステッピングモータ17では、上述のように400パルスでモータ軸が、360度、すなわち一回転してホッパゲート12の一連の開閉動作が行なわれる。したがって、この図3において、パルス数0及びパルス数400は、ホッパゲート12の全閉位置に対応し、パルス数200は、ホッパゲート12の全開位置に対応する。
【0040】
なお、この図3では、ホッパゲート12が、全開位置から全閉位置へ移行するパルス数201から400の計測トルク、すなわち、ホッパゲート12の閉止動作に対応する計測トルクは、その絶対値で示している。
【0041】
ステッピングモータ17のモータ軸にかかるトルクとステッピングモータ17の駆動電流との間には、比例関係が成立するので、上記のようにして計測されたステッピングモータ17のモータ軸にかかるトルクを用いて、比例定数を求める。
【0042】
このため、ホッパゲート12を、全閉位置から全開位置まで開放動作させるのに最低限必要な駆動電流を計測し、また、全開位置から全閉位置まで閉止動作させるのに最低限必要な駆動電流を計測する。
【0043】
ホッパゲート12が全閉位置から全開位置まで開放動作する、パルス数0〜200の区間においては、図3に示すように、パルス数120前後において、計測されたトルクは最大となり、この最大トルクをT1とする。また、ホッパゲート12を全閉位置から全開位置にするための最低限必要な駆動電流、すなわち、ホッパゲート12を全閉位置から全開位置にするための駆動電流の内の最大の駆動電流を計測する。その計測値をI1とすると、パルス数0〜200の区間では、ステッピングモータ17のトルクとステッピングモータ17の駆動電流との間の比例定数α1は、
α1=I1/T1
となる。
【0044】
また、ホッパゲート12が全開位置から全閉位置まで閉止動作する、パルス数201〜400の区間においては、図3に示すように、パルス数280前後において、計測されたトルクは、最大となり、この最大トルクは、上記同じT1である。ホッパゲート12を全開位置から全閉位置にするために最低限必要な駆動電流を計測し、その計測値をI2とする。この実施形態では、リンク機構13には、ホッパゲート12を閉止方向へ付勢するバネが設けられており、このため、ホッパゲート12を全開位置から全閉位置にする閉止動作では、前記バネの付勢力が加わるために、計測値I2は、ホッパゲート12を全閉位置から全開位置まで開放動作する場合の上記計測値I1に比べて小さくなる。このときのステッピングモータ17のモータ軸のトルクとステッピングモータ17の駆動電流との間の比例定数α2は、
α2=I2/T1
となる。
【0045】
したがって、ホッパゲート12の全閉位置から全開位置までのパルス数0〜200の区間においては、ホッパゲート12を開放するのに必要なステッピングモータ17の駆動電流として、計測されたトルクTと比例定数α1とからパルス数に応じたステッピングモータ17の駆動電流Idを次式に従って算出することができる。
【0046】
Id=α1×T ……(1)
同様に、ホッパゲート12の全開位置から全閉位置までのパルス数201〜400の区間においては、ホッパゲート12を閉止するのに必要なステッピングモータ17の駆動電流として、計測されたトルクTと比例定数α2とからパルス数に応じたステッピングモータ17の駆動電流Idを次式に従って算出することができる。
【0047】
Id=α2×T ……(2)
図4は、上記比例定数α1,α2と、計測されたステッピングモータ17のモータ軸にかかるトルクとに基づいて、10パルス毎に算出したステッピングモータ17の駆動電流とパルス数との関係を示す図である。
【0048】
この図4では、予め計測された図3のトルクを破線で示し、上記のようにして算出されたステッピングモータ17の駆動電流を実線で示している。
【0049】
この図4では、10パルス毎に、その間の最大トルクに、比例定数α1またはα2を乗じることによって駆動電流を算出している。
【0050】
この実施形態では、パルス数0〜200及びパルス数201〜400の各区間の駆動電流Idの算出式である上記(1),(2)式には、補正値β1,β2を加算している。
【0051】
すなわち、パルス数0〜200の区間の駆動電流Idは、次式で算出し、
Id=α1×T+β1 ……(3)
パルス数201〜400の区間の駆動電流Idは、次式で算出する。
【0052】
Id=α2×T+β2 ……(2)
この補正値β1,β2としては、例えば、(α1×T),(α2×T)の数%程度の値としてもよい。
【0053】
この実施形態では、以上のようにしてホッパゲート12を開閉駆動するのに必要なステッピングモータ17の駆動電流値を算出し、この算出したステッピングモータ17の駆動電流値を、組合せ秤1のメモリ19にテーブルとして記憶し、ホッパゲート12の開閉駆動時には、このテーブルの駆動電流値を読み出し、その駆動電流値で各ステッピングモータ17をそれぞれ駆動する。
【0054】
図5は、この駆動電流値のテーブルの一例を示す図であり、10パルス毎に1〜400パルスの区間のステッピングモータ17のモータ軸のトルクとステッピングモータ17の駆動電流値が格納されている。なお、トルクは、省略してもよい。
【0055】
また、上述の比例定数α1,α2や補正値β1,β2、あるいは、メモリ19に格納される駆動電流値は、組合せ秤1のタッチパネル等からなる入出力装置(図示せず)から入力できるようにしてもよく、例えばホッパを新しいホッパに交換するような場合には、新しいホッパに対応した駆動電流値等に変更できるようにしてもよい。
【0056】
以上のように、ホッパゲート12を開閉駆動するステッピングモータ17のモータ軸にかかるトルクを、パルス数に応じて予め計測し、計測したトルクに応じたステッピングモータ17の駆動電流を求めてメモリ19にテーブルとして格納し、ホッパゲート12の駆動時には、メモリ19から読み出した駆動電流値でステッピングモータ17を駆動するので、ホッパゲート12を開閉させるのに必要なトルクに応じて駆動電流を変化させることができる。これによって、ホッパゲート12を開閉駆動するのに必要な最大の駆動電流を常に流してステッピングモータ17を開閉駆動する従来例に比べて、ステッピングモータ17の消費電力を低減することができる。
【0057】
ホッパゲート12を多数有する組合せ秤では、多数のステッピングモータ17の消費電力を低減することができ、いわゆる、省エネに有効である。
【0058】
また、多数のステッピングモータ17の駆動を制御する場合、この実施形態では、必要なトルクに応じてステッピングモータ17の駆動電流を制御するので、パルスの間隔を時間制御する構成に比べて、CPU18として、処理速度の高いCPUや複数のCPUを用いる必要がなく、組合せ秤のコストの低減を図ることができる。
【0059】
この実施形態では、10パルス毎にステッピングモータ17のトルクを計測してステッピングモータ17の駆動電流値を算出したけれども、本発明は、10パルスに限らず、任意のパルス数毎に、ステッピングモータ17のトルクを計測し、また、ステッピングモータ17の駆動電流値を算出してもよい。
【0060】
この実施形態では、一つのホッパゲート12を開閉駆動したときのステッピングモータ17のトルクを予め計測し、この計測したトルクのデータに基づいてステッピングモータ17の駆動電流値を算出し、この算出した駆動電流値で各ステッピングモータ17をそれぞれ駆動したけれども、本発明の他の実施形態として、個々のホッパゲート12をそれぞれ開閉駆動する各ステッピングモータ17のトルクをそれぞれ計測し、計測したトルクのデータに基づいて、ステッピングモータ17毎に駆動電流値を算出して駆動するようにしてもよい。
【0061】
(実施形態2)
上述の実施形態では、ホッパゲート12を開閉駆動するステッピングモータ17のモータ軸にかかるトルクを計測し、その計測値に基づいて、ステッピングモータ17の駆動電流を算出したけれども、ホッパゲート12には、組立て等によって個体差が生じる。例えば、ホッパゲートの組立ての際に、ステッピングモータ17のモータ軸へのリンク機構13の取付け角度のバラツキによる個体差が生じる。
【0062】
この個体差によって、図3に示されるパルス数に対するトルクの計測データは、数パルス分程度、パルス数が少ない方向(図3の左方向)またはパルス数が多い方向(図3の右右方向)へずれることになる。
【0063】
そこで、この実施形態では、かかる個体差の影響を補正するために、次のようにしている。
【0064】
すなわち、上述の実施形態と同様に、ホッパゲート12の一つについて、そのステッピングモータ17のモータ軸にかかるトルクを計測して図6の破線で示す図3と同様の計測データを得る。この計測データを原計測データとし、次に、この原計測データを、図6の一点鎖線で示すように、複数パルス分、例えば10パルス分、パルス数が少ない方向(左方向)へ移動させて、すなわち、10パルス分戻して第1移動計測データとし、また、原計測データを、図6の二点鎖線で示すように、パルス数が多い方向(右方向)へ移動させて、すなわち、10パルス分進めて第2移動計測データとする。
【0065】
これら計測データの内、各パルスにおいてトルクが最大となる計測データを抽出して実線で示す抽出計測データとする。
【0066】
この抽出計測データに基づいて、上述の実施形態と同様に、比例定数α1,α2を算出し、上述の実施形態と同様にして、ステッピングモータ17の駆動電流を算出して、メモリ19にテーブルとして格納する。
【0067】
その他の構成は、上述の実施形態と同様である。
【0068】
この実施形態では、第1,第2移動計測データは、原計測データを、いずれも同じパルス数分移動したけれども、異なるパルス数分移動させてもよい。
【0069】
(実施形態3)
図7は、本発明の更に他の実施形態の図6に対応する抽出計測データを示す図である。
【0070】
この実施形態では、上述の図6の抽出計測データを補正したものであり、ホッパゲート12の閉止位置から開放位置への移行開始時、及び、開放位置から閉止位置への移行開始時には、例えば、20パルス分程度、ステッピングモータ17の駆動電流値を補正して大きくする、この例では、最大トルクと同じにトルクに補正し、この補正した抽出計測データに基づいて、上述の各実施形態と同様にしてステッピングモータ17の駆動電流値を求めるものである。
【0071】
これによって、ホッパゲート12の閉止位置から開放動作への移行開始時、及び、開放位置から閉止動作への移行開始時には、ステッピングモータ17の駆動電流値を大きくするので、閉止位置または開放位置にあるホッパゲート12をその慣性に打ち勝って動作させることができ、起動時の脱調を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る組合せ秤および組合せ秤におけるホッパゲートの駆動方法は、消費電力の抑制に有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 組合せ秤
4 供給ホッパ
7 計量ホッパ
12 ホッパゲート
14 制御装置
17 ステッピングモータ
18 CPU
19 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7