特許第5878800号(P5878800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878800
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】シャッタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20160223BHJP
   E06B 9/02 20060101ALI20160223BHJP
【FI】
   B60R7/04 C
   E06B9/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-58915(P2012-58915)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-189175(P2013-189175A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文俊
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−024099(JP,A)
【文献】 米国特許第06478204(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対のガイドレールに沿ってスライドするよう配設されるシャッタにおいて、
スライド方向に互いに離間するよう並べて設けられた複数の支持体部と、
各支持体部における前記ガイドレールに臨む端部の夫々に、前記スライド方向に並べて該支持体部と一体形成され、対応のガイドレールにスライド可能に係合する一対の当接部と、
前記シャッタの表側を構成すると共に前記支持体部よりも柔軟な材料から形成されて可撓性を有する被覆体において、隣り合う前記支持体部の間を繋ぐように設けられたヒンジ部とを備え、
前記各支持体部は、
前記被覆体との固定部分となる板部と、この板部から裏側へ向けて延出すると共に該板部の幅方向に亘って互いに平行に延在するよう形成され、両端部に前記当接部が形成された一対の梁部と、両梁部の間を繋ぎ、前記板部の幅方向に離間して複数箇所に設けられた連設部とを備え、
前記各支持体部は、前記一対の梁部および連設部により剛性を有する構造体として構成されると共に、1つの支持体部に合計4つの前記当接部を備えている
ことを特徴とするシャッタ。
【請求項2】
前記一対の当接部は、前記支持体部におけるスライド方向の中央を挟んで対称に形成された請求項1記載のシャッタ。
【請求項3】
前記支持体部は、前記ヒンジ部より裏側へ突出するよう形成されると共に、前記一対の当接部は、該ヒンジ部より裏側に設けられ、
前記ヒンジ部を挟んで隣り合う前記当接部は、シャッタの平坦状態において、互いに相対する面が、該ヒンジ部から離れるにつれてスライド方向へ互いに離れるよう形成された請求項1または2記載のシャッタ。
【請求項4】
前記各支持体部は、前記スライド方向と直交する厚み方向の寸法が、前記一対のガイドレールの対向方向における両端部側で最小となり、該対向方向における中央部が両端部より大きく形成された請求項1〜3の何れか一項に記載のシャッタ。
【請求項5】
前記各当接部は、前記ガイドレールに当接する面が曲面状に形成されて、該ガイドレールに対し点接触するよう構成された請求項1〜4の何れか一項に記載のシャッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向配置した一対のガイドレールに沿ってスライド可能に配設されたシャッタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の乗員室内に設置されるフロアコンソールには、上方に開口した物品収納部がコンソール本体の内部に画成されている。この物品収納部の上部開口を開閉する蓋部材としては、スライド式のシャッタ80を採用したものが知られている(例えば特許文献1参照)。シャッタ80は、物品収納部を挟んで左右に対向して配設された一対のガイドレールL1,L2に、該シャッタ80の端部の夫々に設けた軸部90を係合させることで、該ガイドレールL1,L2に沿って前後方向のスライドが可能になっている。
【0003】
前記シャッタ80は、物品収納部の上部開口を覆った状態では、コンソール本体の上面に略水平かつ平坦状に延在する。また、上部開口を開放した状態では、コンソール本体の後側内部に湾曲状態で収納される。また、シャッタ80は、上部開口を覆った状態において、上面に物品や腕(肘)を載せたり、乗員室への乗降に際し手をつく等、表側(上方)から荷重が加えられることがある。このため、シャッタ80は、平坦状態と湾曲状態とに変形し得る可撓性と、ある程度の荷重を支える剛性との両方を備える必要がある。そこで、シャッタ80は、図7および図8に示すように、軟質樹脂(熱可塑性エラストマ等)で成形されたプレート部材82と、この軟質樹脂よりも硬い硬質樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、ポリカーボネート等)で成形された軸受け部材88とから構成される。
【0004】
前記プレート部材82は、セル部84と、該セル部84より薄いヒンジ部86とがスライド方向に交互に形成され、各セル部84および各ヒンジ部86において湾曲変形が可能になっている。また、各軸受け部材88は、各セル部84に対してスライド方向に互いに離間して複数固着され、各端部に1つの軸部90が突出形成されている。このように、シャッタ80は、各軸受け部材88が、スライド方向で互いに個々が分離してセル部84に配設されており、ヒンジ部86だけでなくセル部84でも湾曲変形が許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−24099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したシャッタ80は、図8に示すように、各端部に1つずつ形成された軸部90が対応のガイドレールL1,L2に夫々引っ掛かることで、軸受け部材88の夫々が支持されている。すなわち、各軸受け部材88は、図8に示すように、両軸部90,90による2点支持の形態で、ガイドレールL1,L2に支持される。また、軸部90は、ガイドレールL1に相対する面が弧状に形成されて、ガイドレールL1,L2に対する当接ポイントPが点接触となる。このため、シャッタ80は、表側から加重が加わった際に、各軸部90の中心を幅方向に通るラインB1を軸として、各軸受け部材88が回転変位することがある。図8(b)に示すように、ヒンジ部86に表側から荷重が加わった場合には、このヒンジ部86を挟んで隣接する2つの軸受け部材88,88が、前記ラインB1を軸として互いに反対方向に回転変位するようになる。また、図8(b)に示すように、セル部84に表側から荷重が加わった場合には、このセル部84に隣接配置された2つの軸受け部材88,88が、前記ラインB1を軸として互いに反対方向に回転変位するようになる。このため、ヒンジ部86およびセル部84における隣接する軸受け部材88,88の間に応力が集中して、ヒンジ部86またはセル部84が破断するおそれがある。また、軸受け部材88が転倒した状態でシャッタ80の表側から荷重が加わると、軸受け部材88が設計通りの剛性を示さず、軸受け部材88自体が破損するおそれがある。
【0007】
本発明では、荷重が加わることによる破損を防止したシャッタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に記載の発明は、
対向配置された一対のガイドレールに沿ってスライドするよう配設されるシャッタにおいて、
スライド方向に互いに離間するよう並べて設けられた複数の支持体部と、
各支持体部における前記ガイドレールに臨む端部の夫々に、前記スライド方向に並べて該支持体部と一体形成され、対応のガイドレールにスライド可能に係合する一対の当接部と、
前記シャッタの表側を構成すると共に前記支持体部よりも柔軟な材料から形成されて可撓性を有する被覆体において、隣り合う前記支持体部の間を繋ぐように設けられたヒンジ部とを備え、
前記各支持体部は、
前記被覆体との固定部分となる板部と、この板部から裏側へ向けて延出すると共に該板部の幅方向に亘って互いに平行に延在するよう形成され、両端部に前記当接部が形成された一対の梁部と、両梁部の間を繋ぎ、前記板部の幅方向に離間して複数箇所に設けられた連設部とを備え、
前記各支持体部は、前記一対の梁部および連設部により剛性を有する構造体として構成されると共に、1つの支持体部に合計4つの前記当接部を備えていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、各支持体部は、シャッタに荷重が加わった際に、各端部の夫々にスライド方向に並べて2つずつ形成された計4つの各当接部で一対のガイドレールに支持されるため、シャッタの表側からの荷重により、該支持体部はスライド方向と直交する幅方向に延在する軸線を中心として回転変位することが防止される。このように、シャッタは、各支持体部にシャッタの表側から荷重が加わった際に、該支持体部を繋ぐヒンジ部に応力が集中し難く、よって各支持体部よりも柔軟な材料で可撓性を有するヒンジ部を形成することができる。特に、各支持体部が、一対の梁部および両梁部を繋ぐ連設部によりリブ構造体となるので、想定される荷重を受けても撓み変形および捻り変形を生じ難い剛性を得ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記一対の当接部は、前記支持体部におけるスライド方向の中央を挟んで対称に形成されたことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、支持体部に対して、該支持体部におけるスライド方向の中央からずれた位置に荷重が加わっても、当該支持体部は、スライド方向と直交する幅方向に延在する軸線を中心とした回転変位が起こり難い。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記支持体部は、前記ヒンジ部より裏側へ突出するよう形成されると共に、前記一対の当接部は、該ヒンジ部より裏側に設けられ、
前記ヒンジ部を挟んで隣り合う前記当接部は、シャッタの平坦状態において、互いに相対する面が、該ヒンジ部から離れるにつれてスライド方向へ互いに離れるよう形成されたことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、シャッタは、ヒンジ部の変形により、隣り合う支持体部がスライド方向で近接した湾曲状態に変形する。そして、ヒンジ部を挟んで隣り合う当接部は、シャッタの平坦状態において、互いに相対する面が該ヒンジ部から離れるにつれてスライド方向へ互いに離れるよう形成されるので、支持体部に設けた一対の当接部のスライド方向における間隔を大きく設定してもシャッタが湾曲状態に変形する際に接触せず、該シャッタが湾曲状態へ変形することを規制しない。また、支持体部に設けた一対の当接部のスライド方向における間隔を大きくできるので、シャッタの平坦状態において荷重が加わった際の支持体部の安定性を高めることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記各支持体部は、前記スライド方向と直交する厚み方向の寸法が、前記一対のガイドレールの対向方向における両端部側で最小となり、該対向方向における中央部が両端部より大きく形成されたことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、支持体部に荷重が加わっても、該支持体部がスライド方向と直交する厚み方向へ撓み変形し難くなり、ヒンジ部に対して応力が集中することが防止される。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記各当接部は、前記ガイドレールに当接する面が曲面状に形成されて、該ガイドレールに対し点接触するよう構成されたことを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、各当接部はガイドレールと点接触するので、スライド方向に並べて設けた一対の当接部は常にスライド方向に離れた位置で当接するので、支持体部がガイドレールに対して安定的に支持される。また、各当接部とガイドレールとの摩擦抵抗が小さくなるので、軽い力でシャッタをスライド移動させることができ、該シャッタの開閉時の操作性を向上し得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシャッタによれば、荷重が加わることによる変形や破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は実施例に係るシャッタを示す平面図であり、(b)は実施例のシャッタを示す側面図である。
図2】実施例に係るシャッタを示す概略斜視図である。
図3】実施例の支持体部の1つを示す概略斜視図である。
図4】実施例のシャッタの要部を示す平面図である。
図5】実施例のシャッタの要部を示す側面図である。
図6】実施例のシャッタが配設されたフロアコンソールを示す説明斜視図である。
図7】(a)は従来のシャッタの平面図であり、(b)は従来のシャッタの側面図である。
図8】(a)は、各軸受け部材の一端部に設けた軸部および他端部に設けた軸部による2点支持により、該軸受け部材が一対のガイドレールに支持されることを示す説明図であり、(b)は、(a)の状態を側面から見た説明図であって、上方から外力が加わることで軸受け部材が幅方向に延在する軸線を中心として回転変位することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係るシャッタにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下に説明する。実施例では、図6に示すように、フロアコンソールFCの蓋部材として使用されるシャッタを例示するが、本願のシャッタが実施される対象は、このフロアコンソールFCに限定されない。なお、実施例では、図2に示すように、シャッタSが水平かつ平坦な状態において、該シャッタSのスライド方向を「長さ方向」、スライド方向と水平に直交する方向(両ガイドレールL1,L2の対向方向)を「幅方向」、スライド方向と垂直に直交する方向を「厚み方向」と指称する。
【実施例】
【0016】
図6に示すように、フロアコンソールFCは、コンソール本体100における前後方向の後側内部に、上方に開口した物品収納部102が画成されている。コンソール本体100には、物品収納部102の上部開口104を挟んで該コンソール本体100の左右方向に対向するよう、一対のガイドレールL1,L2が配設される。コンソール本体100には、実施例に係るシャッタSが両ガイドレールL1,L2にスライド可能に配設され、シャッタSを両ガイドレールL1,L2に沿ってスライドすることで、上部開口104を開閉し得るようになっている。なお、シャッタSにおいて、乗員室側に臨む側を表側といい、物品収納部102側に臨む側を裏側という。
【0017】
図6に示すように、各ガイドレールL1,L2は、上部開口104の側縁に前後方向へ水平に延在する直線部110と、該直線部110の後部から後方へ凸となる円弧状に湾曲し、物品収納部102の後側から下側にかけて延在する曲線部112とを備えている。なお、両ガイドレールL1,L2は、幅方向において対称形状に形成される。また、各ガイドレールL1,L2は、互いに対向する内側面に、直線部110から曲線部112に亘って延在する溝部114が形成されている。シャッタSは、両ガイドレールL1,L2の直線部110,110に係合した領域が平坦状態となって上部開口104を覆うように構成される(図2参照)。また、シャッタSは、両ガイドレールL1,L2の曲線部112,112に係合した領域が湾曲状態(図1(b)参照)となって物品収納部102とボックス本体との間に収納される。
【0018】
実施例のシャッタSは、図1図5に示すように、当該シャッタSに加わる荷重を支える複数の支持体部10と、この支持体部10の端部の夫々に形成された摺動支持部20と、隣り合う支持体部10,10の間を繋ぐように設けられたヒンジ部30とを備えている。実施例のシャッタSでは、該シャッタSの表側を構成する被覆体28において、隣り合う支持体部10,10の間の領域がヒンジ部30となっている。シャッタSは、支持体部10および摺動支持部20,20が一体形成されると共に、支持体部10および摺動支持部20,20よりも柔軟な材料で、ヒンジ部30(被覆体28)が支持体部10および摺動支持部20,20と別体に形成される。なお、支持体部10および摺動支持部20,20は、1種類の材料によりインジェクション成形等によって一体成形される。そして、支持体部10および摺動支持部20,20を構成する樹脂材料としては、軟質樹脂発泡体やTPOなどのエラストマよりも硬い硬質樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリカーボネート(PC)等)が好適に採用される。
【0019】
前記シャッタSには、長さ方向(スライド方向)に互いに離間して複数(実施例では18本)の支持体部10が被覆体28の裏側に並べて設けられている。各支持体部10は、幅方向中央を挟んで対称な形状に形成される(図3参照)。各支持体部10は、図3に示すように、幅方向に長手が延在する細長い形状に形成され、両ガイドレールL1,L2の離間間隔よりも僅かに短く設定されている(図4参照)。各支持体部10は、被覆体28との固定部分となる板部12と、この板部12から裏側へ向けて延出すると共に板部12の幅方向に亘って延在するよう形成された一対の梁部14,16とを備えている。支持体部10は、一対の梁部14,16が長さ方向に離間して平行に延在するように形成されると共に、両梁部14,16の間を繋ぐ連設部18が幅方向に離間して複数箇所に設けられる。このように、支持体部10は、被覆体28に対して梁部14,16が交差する裏側へ向けて突出すると共に第1梁部14と第2梁部16との間に空間が画成された所謂梯子状のリブ構造体として構成される。
【0020】
前記第1梁部14および第2梁部16は、図5に示すように、板部12の長さ方向中央を挟んで対称な形状に形成されている。各梁部14,16は、図5に示すように、長さ方向の幅(G)がヒンジ部30側(板部12に連なる側)で最大(G1)となっており、板部12から離れるにつれて徐々に小さくなり、板部12と反対側の延出端で最小(G2)となっている。第1梁部14および第2梁部16は、隣りに位置する支持体部10に臨む外側面が、ヒンジ部30側から離れるにつれて互いに近づくように斜めに傾斜形成され、隣り合う支持体部10,10の間が裏側へ向けて広がるように拡開している。また、各梁部14,16は、厚み方向の寸法が端部と比べて中央部が大きくなるよう形成される(図3参照)。実施例の各梁部14,16は、幅方向中央部の所定範囲に亘って厚み方向の寸法が最大(H1)になり、両端部において厚み方向の寸法が最小(H2)になっている。そして、各梁部14,16は、両方の端部から幅方向中央に向けた所定範囲が、中央部側から各端部に近づくにつれて、厚み寸法が徐々に小さくなるよう傾斜状に形成される。なお、各梁部14,16は、長さ方向の寸法に対して厚み方向の寸法が大きく設定されている。このように構成された支持体部10は、両梁部14,16間が硬質樹脂で埋まったブロック形状と同等の剛性が確保されており、表側から荷重が加わっても両梁部14,16が接離する方向に変形し難く、幅方向での撓み変形や捻れ変形が発現し難くなっている。
【0021】
前記支持体部10は、図5に示すように、長さ方向の寸法が、ヒンジ部30側(板部12)で最大(W1)となっている。また、支持体部10の長さ方向の寸法は、ヒンジ部30から離れるにつれて徐々に小さくなり、ヒンジ部30と反対側の端部が最小(W2)となっている。すなわち、支持体部10は、シャッタSの幅方向の外方から見た形状が、ヒンジ部30から離れるにつれて先細となる略台形形状になっている。
【0022】
図1図5に示すように、摺動支持部20は、各支持体部10の幅方向の一端部および他端部に設けられている。なお、支持体部10の両端部に設けられた対をなす摺動支持部20,20は、支持体部10の幅方向中央を挟んで対称な形状に形成される。摺動支持部20は、支持体部10におけるヒンジ部30に繋がる部位よりも裏側に位置して設けられる。摺動支持部20は、第1梁部14の端部に設けられた第1当接部22と、第2梁部16の端部に設けられた第2当接部24とから構成される。実施例の摺動支持部20は、第1当接部22と第2当接部24とが長さ方向に互いに離間して設けられ、第1当接部22と第2当接部24とが独立している(図1参照)。ここで、各支持体部10には、該支持体部10における長さ方向の中央を挟んで各端部に一対の当接部22,24が対称な関係で設けられる。各当接部22,24は、対応の梁部14,16の端部から幅方向外側方へ延出するように形成された腕部25と、この腕部25の延出端に形成された摺接部26とを備えている(図3参照)。腕部25は、縦断面形状が略矩形で、かつ対応の梁部14,16との接続部分において厚み方向のサイズが大きく形成され、長さ方向および厚み方向の変形が起こり難くなっている。
【0023】
前記摺接部26は、図4および図5に示すように、長さ方向から見た形状が該長さ方向に延在する中心線Jを中心とする略円形に形成されている。すなわち、摺接部26の先端面26aは、外側方へ向けて凸となる円弧状に形成され、該先端面26aがガイドレールL1,L2における溝部114の側壁面114Aに対して接触する際に点接触となるよう構成される。また、摺接部26は、厚み方向裏側に臨む端面(裏端面という)26bが、厚み方向裏側へ向けて凸になる円弧状に形成されると共に、厚み方向表側に臨む端面(表端面という)26cが、厚み方向表側へ向けて凸となる円弧状に形成される。このように、摺接部26の裏端面26bは、ガイドレールL1,L2における溝部114の裏壁面114Bに対して接触する際に点接触となるよう構成される。また、摺接部26の表端面26cは、ガイドレールL1,L2における溝部114の表壁面114Cに対して接触する際に点接触となるよう構成される。摺接部26は、裏端面26bの頂点と表端面26cの頂点との間の厚み方向寸法が、溝部114の裏壁面114Bと表壁面114Cとの間隔と同じあるいは僅かに小さく設定される。摺接部26は、溝部114の裏壁面114Bと表壁面114Cとの間において、裏端面26bおよび表端面26cの少なくとも一方が対向する溝部114の側面114B,114Cに引っ掛かり、厚み方向の変位が規制される。また、摺接部26は、先端面26aが溝部114の側壁面114Aに当接することで、幅方向の変位が規制される。
【0024】
前記摺接部26は、図5に示すように、該摺接部26が形成された支持体部10の台形形状に合わせて、ヒンジ部30側から該ヒンジ部30と離れた側へ向けて先細となる形状に形成されている。すなわち、第1当接部22の摺接部26は、第2当接部24と反対側の側面におけるヒンジ部30から離れた部位が、第1梁部14の傾斜した外壁に合わせて傾斜状に形成される。同様に、第2当接部24の摺接部26は、第1当接部22と反対側の側面におけるヒンジ部30から離れた部位が、第2梁部16の傾斜した外壁に合わせて傾斜状に形成される。これにより、隣り合う一方の支持体部10に形成された摺動支持部20の第1当接部22と他方の支持体部10に形成された摺動支持部20の第2当接部24との間隔は、シャッタSが平坦な状態において、ヒンジ部30側よりも該ヒンジ部30から離れた側が大きくなっている。従って、ヒンジ部30の弾性的な変形によって隣り合う支持体部10,10が近接するよう姿勢変位する際に、隣り合う摺動支持部20,20の第1当接部22と第2当接部24とが接触することが防止される。
【0025】
前記シャッタSは、各支持体部10の一端部に設けた摺動支持部20の第1当接部22および第2当接部24を、一方のガイドレールL1の溝部114に挿入すると共に、各支持体部10の他端部に設けた摺動支持部20の第1当接部22および第2当接部24を、他方のガイドレールL2の溝部114に挿入している。これにより、シャッタSは、コンソール本体100に対してスライド可能に配設される。そして、支持体部10の夫々は、図3,図4および図5に示すように、一方の摺動支持部20の第1当接部22および第2当接部24と、他方の摺動支持部20の第1当接部22および第2当接部24との合計4つの当接部22,24のうち、少なくとも3つの当接部22,24がガイドレールL1,L2に支持された状態で表側からの荷重を受けるよう構成される。各支持体部10の一端部には、一方の摺動支持部20における一対の当接部22,24が一方のガイドレールL1の溝部114に当接する当接ポイントP,Pが、長さ方向に離間して2つ設けられる。また、各支持体部10の他端部には、他方の摺動支持部20における一対の当接部22,24が他方のガイドレールL2の溝部114に当接する当接ポイントP,Pが、長さ方向に離間して2つ設けられる。そして、個々の支持体部10は、互いに結んだラインBが平面視で四角形または三角形をなす関係に配置された当接ポイントPで溝部114に引っ掛かって支持される。
【0026】
前記ヒンジ部30を備えた被覆体28は、図2および図5に示すように、支持体部10と別体な板状体であり、可撓性を有するウレタン等の軟質発泡体から構成されている。例えば、シャッタSは、摺動支持部20が形成された支持体部10をセットした型内に発泡材料を注入して、被覆体28をなす軟質発泡体を発泡成形すると共に支持体部10と被覆体28とを接合して形成される。なお、シャッタSは、別々に形成した支持体部10と被覆体28とを接着剤などにより接合して形成してもよい。図5に示すように、支持体部10は、被覆体28の裏側に板部12を埋め込むように配設され、支持体部10と被覆体28との接合面積を大きく確保している。なお、被覆体28を軟質ウレタン樹脂発泡体で形成する場合は、支持体部10を、ABSまたはPC、あるいはそれらのアロイによって形成すると、被覆体28と支持体部10との接着性が良好になるので好ましい。
【0027】
前記被覆体28は、図1図3に示すように、長さ方向で隣り合う支持体部10,10間をヒンジ部30によって繋ぎ、複数の支持体部10を横並び状に連設している。ヒンジ部30は、シャッタS全体が厚み方向に凹または凸になるように、弾性的な撓曲変形または折曲変形が可能となっている。なお、ヒンジ部30は、隣り合う支持体部10,10が互いに近接して、隣り合う一方の支持体部10の第1梁部14と他方の支持体部10の第2梁部16とが接触するまで変形が許容される。
【0028】
実施例のシャッタSでは、フロアコンソールFCの前側となる支持体部10の板部12に、該支持体部10の長さ方向の寸法と略同じ寸法で幅方向に延在して上方へ突出する把持部32が設けられている。従って、把持部32を指先で把持することで、シャッタSのスライド操作を簡易に行い得る。
【0029】
前記シャッタSは、物品収納部102の上部開口104に臨む位置において、支持体部10の摺動支持部20,20が各ガイドレールL1,L2の直線部110に位置し、一枚の平板の如く平坦状態となって上部開口104を全体的に覆蓋する(図4参照)。シャッタSは、表側から厚み方向に荷重を受けた際に、4つの当接部22,24のうちの少なくとも3つの当接部22,24の裏端面26b,26bが溝部114の裏壁面114Bに当接し、各支持体部10にかかる荷重がこれらの当接部22,24に分散して支持される。梁部14(16)を挟んで対称に形成された当接部22,22(24,24)の当接ポイントP,P間を結んだ軸線を中心に回転変位する方向へ力が加わっても、長さ方向に離間配置された組をなす当接部24(22)が溝部114に引っ掛かるので、支持体部10の回転変位が規制される。特に、隣り合う支持体部10,10のヒンジ部30に集中してシャッタSの表側から厚み方向に荷重を受けても、ヒンジ部30を挟む第1当接部22および第2当接部24が溝部114の裏壁面114Bに引っ掛かると共に、各支持体部10において組をなす第2当接部24および第1当接部22が溝部114の表壁面114Cに引っ掛かる。これにより、ヒンジ部30を挟んで隣り合う支持体部10,10の回転変位が規制される。また、各支持体部10の梁部14,16間に表側から厚み方向に荷重が集中してかかった場合であっても、支持体部10が剛体として構成されているので、梁部14,16間が柔軟な被覆体28で覆われていても撓むことを防止できる。このように、表側から厚み方向に荷重を受けた各支持体部10は、一方の摺動支持部20の第1当接部22および第2当接部24と、他方の摺動支持部20の第1当接部22および第2当接部24との計4つのうち、少なくとも3つ以上が各ガイドレールL1,L2における溝部114に当接するようになるので、幅方向に延在する軸線を中心に回転変位することなく安定的に姿勢保持される。また各支持体部10は、第1梁部14、第2梁部16および連設部18からなるリブ構造体をなし剛性を有しているから、板部12の上方から荷重が加わっても、幅方向での撓み変形および捻り変形を低減できる。従って、シャッタSは、上部開口104を覆蓋した平坦状態において、上方を向いている表側に物品や乗員の腕を載せたり、手をつく等して上方からある程度の荷重が加わった際でも、平坦状態が適切に維持される。
【0030】
しかも、摺動支持部20の第1当接部22および第2当接部24が、支持体部10における長さ方向の中央を挟んで一端部および他端部に設けられているから、該支持体部10に対して長さ方向の中央からずれた位置(中央よりヒンジ部30に近い位置)に表側から荷重が加わっても、当該支持体部10は幅方向に延在する軸線を中心とした回転変位が起こり難い。
【0031】
前記シャッタSは、上部開口104を覆蓋した状態からコンソール本体100の後方に向けてスライドすると、長さ方向における後側の支持体部10から各ガイドレールL1,L2の曲線部112に移動するようになる。支持体部10が各ガイドレールL1,L2の曲線部112に移動すると、該支持体部10に設けた各摺動支持部20における第1当接部22の表端面26cと、第2当接部24の表端面26cとが、各ガイドレールL1,L2の溝部114の表壁面114Cに当接するようになる。これにより、各ガイドレールL1,L2の曲線部112に移動した隣り合う支持体部10,10は、両支持体部10,10間のヒンジ部30が弾性的に変形することで、一方の支持体部10に対して他方の支持体部10が姿勢変位する。そして図1(b)に示すように、シャッタSは、各ヒンジ部30が弾性的に変形することで、各ガイドレールL1,L2の曲線部112に沿って湾曲状態に変形する。
【0032】
このように、シャッタSは、各支持体部10に表側から荷重が加わった際に、該支持体部10を繋ぐヒンジ部30に応力が集中し難いので、ヒンジ部30を支持体部10および摺動支持部20よりも柔軟な材料である軟質発泡体等で形成することができる。また、シャッタSは、特定の箇所に応力が集中し難いので、支持体部10と被覆体28とを接合して構成しても、両者10,28が剥離し難い。そして、ヒンジ部30を柔軟な材料で形成することで、軽い力でシャッタSをスライド移動させることができ、該シャッタSの開閉時の操作性を向上できる。また、当接部22,24が溝部114に対して点接触するよう構成されているので、該溝部114との摩擦抵抗が小さく抑えられ、軽い力でシャッタSをスライド移動させることができ、該シャッタSの開閉時の操作性が向上している。しかも、被覆体28は、隣り合う支持体部10,10間に位置するヒンジ部30が曲がるだけでなく、支持体部10の表側を覆う領域も伸縮するので、シャッタSの操作性をより向上できる。また、シャッタSは、表面を柔軟な軟質発泡体からなる被覆体28で構成することで、触れた際の感触がよく、アームレストなどとしても用いることができる。
【0033】
隣り合う摺接部26,26のヒンジ部30を挟んで互いに相対する面の下部は、シャッタSの平坦状態において、ヒンジ部30から離れるにつれて長さ方向へ互いに離れるように形成されている。従って、摺動支持部20における第1当接部22および第2当接部24は、長さ方向における間隔を大きく設定しても、シャッタSが湾曲状態に変形する際に接触せず、該シャッタSの湾曲状態への変形を規制しない。そして、摺動支持部20における第1当接部22および第2当接部24の長さ方向における間隔を大きくできるので、シャッタSの平坦状態において荷重が加わった際にも、支持体部10の安定性を高めることができる。
【0034】
また、各支持体部10が、長さ方向に並ぶ第1梁部14および第2梁部16と、両梁部14,16を繋ぐ連設部18とによりリブ構造体となるので、想定される荷重を受けても撓み変形および捻り変形を生じ難い剛性を得ることができる。特に、各支持体部10の第1梁部14および第2梁部16は、幅方向の中央部分の高さを大きく設定してあるので、シャッタSに表側から加わった荷重を、撓み変形を抑えて適切に受けることができる。また、各支持体部10は、長さ方向の寸法が、厚み方向でヒンジ部30から離間するにつれて先細となる台形形状に形成されているから、該ヒンジ部30の変形によるシャッタSの湾曲状態への変形が規制されない。
【0035】
(変更例)
(1)支持体部10の配設数は、実施例に例示の数に限定されず、上部開口104の開口サイズに応じて増減させることができる。
(2)各摺動支持部20の第1当接部22および第2当接部24は、例えば互いの腕部25,25が一体に連設された単一部材として形成し、各摺接部26,26の各当接ポイントPがガイドレールL1,L2の溝部114に対して夫々点接触するように構成してもよい。
(3)本願のシャッタSは、実施例で例示した自動車に設置されるフロアコンソールFC以外に、種々の蓋部材、区画部材または遮蔽部材等として実施可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 支持体部,12 板部,14 第1梁部(梁部),16 第2梁部(梁部)
18 連設部,22 第1当接部(当接部),24 第2当接部(当接部),28 被覆体
30 ヒンジ部,H 厚み方向の寸法,L1,L2 ガイドレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8